特許第6913150号(P6913150)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6913150
(24)【登録日】2021年7月13日
(45)【発行日】2021年8月4日
(54)【発明の名称】複数の部品からなる装置
(51)【国際特許分類】
   A61H 31/00 20060101AFI20210727BHJP
   A61M 16/00 20060101ALI20210727BHJP
【FI】
   A61H31/00
   A61M16/00 370Z
【請求項の数】9
【外国語出願】
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2019-207078(P2019-207078)
(22)【出願日】2019年11月15日
(65)【公開番号】特開2021-78592(P2021-78592A)
(43)【公開日】2021年5月27日
【審査請求日】2020年4月7日
(31)【優先権主張番号】10 2019 130 809.7
(32)【優先日】2019年11月14日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】519392638
【氏名又は名称】イノテック クンストシュトフテヒニク ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】INOTECH KUNSTSTOFFTECHNIK GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】特許業務法人 ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】グライクスナー、ヨーゼフ
【審査官】 小原 一郎
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2017/0312170(US,A1)
【文献】 国際公開第2018/160709(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2016/0128898(US,A1)
【文献】 特表2015−530186(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2019/0374429(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61H 31/00
A61M 16/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
心停止の場合の人体の心肺蘇生のための装置のベースプレート(3)にばねシステム(4、5、8)を介して作用する外力(K)が第1の力伝達手段(2)へ加えられたときに明瞭に聴き取ることができる音を発生させるための複数の部品からなる装置(1)であって、
外側の幾何学的寸法および形状が、胸部の付近の胸骨の身体構造特性に合わせられており、前記ばねシステム(4、5、8)が、少なくとも1つの振動要素(8)に作用する信号を発生させ、前記ばねシステム(4、5)は、前記第1の力伝達手段(2)と前記ベースプレート(3)との間に配置され、少なくとも1つのばね要素(4)および1つの平ばね要素(5)を備え、前記ばね要素(4)が円錐ばね要素であることを特徴とする、複数の部品からなる装置(1)。
【請求項2】
前記少なくとも1つのばね要素(4)は、前記平ばね要素(5)の傍らに円形の経路に沿って配置されていることを特徴とする、請求項1に記載の複数の部品からなる装置(1)。
【請求項3】
前記平ばね要素(5)の傍らにそれぞれ配置された少なくとも2つのばね要素(4)を備えることを特徴とする、請求項1または2に記載の複数の部品からなる装置(1)。
【請求項4】
前記ばね要素(4)の各々は、円錐ばね要素(4)であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の複数の部品からなる装置(1)。
【請求項5】
少なくとも1つのばね要素(4)が、前記第1の力伝達手段(2)と前記ベースプレート(3)との間に、前記ばね要素(4)のばね断面が前記第1の力伝達手段(2)から前記ベースプレート(3)に向かって円錐状に増加または減少するように円錐形の様相で配置されていることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の複数の部品からなる装置(1)。
【請求項6】
ただ1つの単一のばね要素(4)を有しており、半径方向(R)において、前記ベースプレート(3)に接続された前記ばね要素(4)の端部が、前記平ばね要素(5)を囲み、前記半径方向(R)において前記平ばね要素(5)に隣接していることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載の複数の部品からなる装置(1)。
【請求項7】
前記第1の力伝達手段(2)に接続された前記単一のばね要素(4)の端部は、該端部が半径方向(R)において前記ばね要素(8)を囲んで前記ばね要素(8)に隣接するような半径方向断面を有することを特徴とする、請求項6に記載の複数の部品からなる装置(1)。
【請求項8】
さらなるばね要素(8)である前記ばね要素(8)は、外部から前記第1の力伝達手段(2)へ加えられる圧力が少なくとも部分的に前記ばね要素(8)を介して前記平ばね要素(5)へ伝えられるように、前記平ばね要素(5)と前記第1の力伝達手段(2)との間に配置されていることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一項に記載の複数の部品からなる装置(1)。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか一項に記載の装置のベースプレート(3)にばねシステム(4、5、8)を介して作用する外力(K)が第1の力伝達手段(2)へ加えられたときに明瞭に聴き取ることができる音を発生させるための、前記装置の作動方法であって、
前記ばねシステム(4、5、8)の相互作用によって、調整可能な限界圧力Kmaxに達したときに、明瞭に聴き取ることができる信号(S)が発生し、振動要素(8)へ伝えられることを特徴とする、作動方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、心停止の場合の制御された心肺蘇生のための複数の部品からなる装置であって、人体の胸部に作用する力が限界力に達したときに明瞭に聴き取ることができる信号を有する装置に関し、とくには急性の用途における患者の処置を容易にする特別なばねの設計および形状を有する装置に関する。さらに、本出願は、明瞭に聴き取ることができる音を発生させるための方法であって、とくには請求項10の冒頭部分に記載の方法に関する。
【背景技術】
【0002】
そのような装置は、国際公開第2014/071915号パンフレットからの先行技術において知られている。この刊行物は、心停止の場合の心肺蘇生のための装置であって、少なくとも1つの圧力伝達手段と、少なくとも1つの圧力受け止め要素と、機械的な限界圧力(Fmax)に達したときに人間の感覚器にとって知覚可能な信号を発生させる圧力インジケータとを有する装置を開示している。2つの異なるばねを有するばねシステムが、少なくとも1つの圧力伝達手段と少なくとも1つの圧力受け止め要素との間に配置され、2つのばねの一方が所定の限界圧力に達したときに聞き取り可能な第1のクリック信号を発生させ、限界圧力が低下したときに第2のクリック信号を発生させる。この発明の欠点は、生じた信号が外部への伝達時に大きな減衰を被るため、クリック信号の伝達が充分に明瞭には聞こえないことである。
【0003】
独国特許出願公開第10 2014 014 074号明細書が、制御された心肺蘇生のための装置であって、心停止の場合に人体の迅速かつ複雑でない蘇生を実行することができる装置を示している。本発明による装置の幾何学的寸法は、比較的小さく、おおむね直径が約10〜25cmの間であり、高さが約6〜12cmの間である。使用時に、力Kが第1の圧力伝達手段に周期的に加えられ、第1の力伝達手段とベースプレートとの間に実質的に配置されたばね要素の相互作用の結果として、最大力の印加Kmaxに達したときに明瞭に聴き取ることができる信号が発生する。
【0004】
しかしながら、第1の力伝達手段への外力(K)の作用の結果として明瞭に聴き取ることができる音を発生させるこの装置は、必要な構造空間に関する限りにおいて、ときに空間を消費しすぎる。
【0005】
さらに、米国特許第4,554,910号明細書が、コイルばねとして設計され、第2のばねのほぼ中央に配置されたU字型の板ばねによって第1および第2の音響クリック信号を発生させる圧力ゲージを有する別の蘇生装置を開示している。このような心停止の場合の心肺蘇生のための装置について認識される欠点は、所望の蘇生効果を達成するために、機械的な圧力が常に圧力伝達手段の中心に作用しなければならないことである。これは、実際の使用では不可能である。
【0006】
中国実用新案第201304070号明細書が、やはり2つの圧力伝達手段を有し、2つの圧力伝達手段の間にコイルばねが配置され、しきい値圧力に達したときに聴き取り可能な信号を発生させることで、圧力伝達手段への圧力を緩めるようにユーザに知らせる同様の細長い装置を開示している。この装置の欠点は、緊急時に胸部において安定した位置を得ることが難しいことである。
【0007】
さらに、国際公開第2006/101400号パンフレットが、人体の胸郭へと手動で圧力を発生させるための装置を開示している。この装置は、所定の圧力に達したときに音を発生させる機械式の音発生器を有する。この目的のために、プレートが、プレートを湾曲したプレストレス状態に保持するホルダへと持ち込まれ、プレートに圧力が加えられたときに音が発生する。圧力測定自体は、国際公開第2004/056303号パンフレットに詳しく説明されている別の機構によって実行される。このような心肺マッサージのための装置の欠点は、このような装置の絶対的な信頼性要件ゆえに、すべての機械的な構成要素の相互作用が複雑すぎて、所望の信頼性を確保できないように思われる点にある。
【0008】
さらに、独国特許出願公開第1491611号明細書から、ベースプレートと、ベースプレートの上方に配置されたラムとで構成され、ラムが空気式の機構によって周期的に駆動されて人体の胸部に作用する可搬の心臓マッサージ装置が知られている。
【0009】
一般に、心停止の場合、可能な限り迅速に蘇生を行うことが重要であるため、利用可能な装置は多くの場合に取り扱いおよび操作が複雑すぎ、人体の蘇生に必要な貴重な時間が失われ、広範囲に影響が及ぶ可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】国際公開第2014/071915号パンフレット
【特許文献2】独国特許出願公開第10 2014 014 074号明細書
【特許文献3】米国特許第4,554,910号明細書
【特許文献4】中国実用新案第201304070号明細書
【特許文献5】国際公開第2006/101400号パンフレット
【特許文献6】国際公開第2004/056303号パンフレット
【特許文献7】独国特許出願公開第1491611号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
したがって、本発明の目的は、先行技術の欠点を回避し、素人でも使いやすく、一方では制御された確実な圧力を人体の胸部に周期的に作用させることができ、他方では単純な手段によって明確に聴き取ることができる信号を発生させることができる心肺蘇生のための単純な装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この目的は、主たる請求項を特徴付ける特徴によって達成される。本発明に不可欠な他の特徴を、従属請求項および詳細な説明において見つけることができる。
【0013】
本発明により、制御された心肺蘇生のための装置であって、心停止の場合に人体の迅速かつ複雑でない蘇生を実行することができ、構造が単純であるだけでなく、きわめて場所を取らない装置が提示される。
【0014】
さらに、本発明の発明者は、これまでに知られている装置が、線形なばね特性に従うばねを有することに気が付いた。漸減のばね特性に従う装置も知られている。しかしながら、どちらの設計も、大きな始動トルクを有することがある。これは、ユーザが、ばねのたわみを開始させることができるように、過度に大きい初期圧力を加えなければならない可能性を意味する。
【0015】
したがって、本発明のさらなる目的は、始動トルクを、とくには初期において可能な限り小さく、かつ圧力およびたわみ運動の過程において徐々に大きくなるように、設定可能にすることである。
【0016】
この目的は、とりわけ、円錐形のばねを使用することで達成できる。したがって、肋骨構造が増加する圧力に徐々に適応して慣れることができるため、人体の肋骨の骨折をきわめて効果的な様相で防止することができる。
【0017】
少なくとも1つの実施形態によれば、心停止の場合の人体の制御された心肺蘇生のための装置のベースプレートにばねシステムを介して作用する外力が第1の力伝達手段へ加えられたときに明瞭に聴き取ることができる音を発生させるための複数の部品からなる装置において、外側の幾何学的寸法および形状が、胸部の付近の胸骨の身体構造特性に合わせられており、とくには、ばねシステムは、少なくとも1つの振動要素に作用する信号を発生させ、ばねシステムは、第1の力伝達手段とベースプレートとの間に配置され、実質的に少なくとも1つのばね要素および1つの平ばね要素で構成され、さらにとくには、ばね要素は円錐ばね要素である。
【0018】
少なくとも1つの実施形態によれば、少なくとも1つのばね要素は、とくにはクリック板である平ばね要素の傍らに円形の経路に沿って配置される。
【0019】
少なくとも1つの実施形態によれば、装置は、平ばね要素の傍らにそれぞれ配置された少なくとも2つ、好ましくは少なくとも3つ、とくに好ましくは少なくとも4つのばね要素を備える。本発明の文脈において、「・・・の傍らに配置される」は、平ばね要素のたわみ方向に垂直な方向のばね要素の配置であってよい。したがって、円形の経路は、好ましくは、平ばね要素のたわみ方向に垂直な平面に沿って、その平面内を延びる。複数の部品からなる装置の少なくとも1つの実施形態によれば、ばね要素の各々は、円錐ばね要素である。
【0020】
円錐ばね要素の使用により、始動トルクを、このトルクが初期においてはできるだけ小さく、かつ圧力およびたわみ運動の過程において徐々に大きくなるように、設定することが可能になる。
【0021】
したがって、肋骨構造が増加する圧力に徐々に適応して慣れることができるため、人体の肋骨の骨折をきわめて効果的な様相で防止することができる。複数の部品からなる装置の少なくとも1つの実施形態によれば、少なくとも1つのばね要素が、ばね要素のばね断面が力伝達手段からベースプレートの方向に円錐状に増加または減少するように、第1の力伝達手段とベースプレートとの間に円錐状に配置される。これにより、構造空間を、とくには水平方向(円形の経路が延びることができる範囲)についても、きわめて効果的に削減することができる。
【0022】
少なくとも1つの実施形態によれば、複数の部品からなる装置は、ただ1つの単一のばね要素を有し、半径方向において、ベースプレートに接続されたばね要素の端部が、平ばね要素を囲み、半径方向において平ばね要素に隣接する。好ましくは、このばね要素は、水平方向において、このばね要素のばね断面が平ばね要素を完全に囲むように、平ばね要素のたわみ軸に沿って配置される。したがって、好ましくは、両方のばね要素のたわみ軸が完全に重なり合い、したがって互いに平行に配置される。換言すると、ばね要素は、水平方向において平ばね要素を囲む。したがって、単一のばね要素のばね断面は、平ばね要素が単一のばね要素のばね断面へとはまり込むように、少なくともいくつかの場所において平ばね要素のばね断面よりも大きい。したがって、ベースプレートに接続された単一のばね要素の端部は、平ばね要素のばね断面よりも大きい。この文脈において、ばねのばね断面とは、たわみ方向に垂直な方向のばねの広がりを指す。したがって、単一のばね要素は、中央ばね要素を形成する。複数の部品からなる装置の少なくとも1つの実施形態によれば、さらなるばね要素であるばね要素は、外部から力伝達手段へと加えられる圧力が少なくとも部分的にばね要素を介して平ばね要素へと伝えられるように、平ばね要素と力伝達手段との間に配置される。この実施形態は、平ばね要素および単一のばね要素に加えて、少なくとも1つのさらなるばね要素を組み込むことができることを示しているが、上述の構造上の制限は存在する。
【0023】
複数の部品からなる装置の少なくとも1つの実施形態によれば、力伝達手段へと接続された単一のばね要素の端部は、この端部が半径方向においてばね要素を囲んでばね要素に隣接するような半径方向断面を有する。上述のように、中央ばね要素は、このように構成される。したがって、中央ばね要素は、単一のばね要素であることができる。
【0024】
複数の部品からなる装置の少なくとも1つの実施形態によれば、装置は、平ばね要素を通過する対称軸を半径方向に越えるさらなるばね要素を持たない。
【0025】
しかしながら、単一のばね要素に加えて、少なくとも1つのさらなるばね要素を装置に組み込むことができるが、その場合、この少なくとも1つのさらなるばね要素は、平ばね要素のたわみ軸に平行に、平ばね要素のたわみ軸上に配置され、この場合に、(単一のばね要素のように)平ばね要素を囲むことはなく、平ばね要素のたわみ軸を越えて装置内に配置されることもない。
【0026】
複数の部品からなる装置の少なくとも1つの実施形態によれば、ばね要素は、所定のたわみに一方向において達したときにクリック音が自然に発生するように、信号発生ユニットを形成し、あるいは少なくともその一部である。
【0027】
さらに、本発明は、とくには上記の装置を使用して明瞭に聴き取ることができる音を発生させるための方法に関する。したがって、本明細書に記載の装置について開示された特徴はすべて、本明細書に記載の方法についても相応に開示され、その逆も同様である。
【0028】
少なくとも1つの実施形態によれば、心停止の場合の人体の制御された心肺蘇生のための装置のベースプレートにばねシステムを介して作用する外力Kが第1の力伝達手段へと加えられたときに明瞭に聴き取ることができる音を発生させるための方法は、明瞭に聴き取ることができる信号が、調整可能な限界圧力Kmaxに達したときにばねシステムの相互作用によって発生し、振動要素へと伝えられることを特徴とする。
【0029】
平たく、とくには一枚のばね要素が、機械的な力Kが加えられたときに調整可能な限界力Kmaxの検出を可能にし、力Kの解放時にばね要素の元の出発位置へと自然に跳ね戻り、限界Kmaxへの到達時および出発位置への復帰時の両方において、明瞭に聴き取ることができる信号が鳴り、ばね要素を支持する周囲に機械的および音響的に作用することが好都合である。
【0030】
さらに、信号発生ユニットが、少なくとも1つの振動要素が作用する少なくとも1つの湾曲部を有する任意の所与の形態の少なくとも1つのクリック板を備えることが好都合である。
【0031】
さらに、クリック板の外形が、例えば長円形、多角形、ハート形、好ましくは円形など、任意の所与の形態をとることができると好都合である。
【0032】
また、一方向の所定のたわみに達したときにクリック板がクリック音を自然に発生させると好都合である。
【0033】
さらなる利点を、第1の力伝達手段上の周辺振動リッジの配置に見て取ることができる。
【0034】
また、クリック板が、力の解放時に自動的に弾性的に跳ね戻り、第1の力伝達手段と同軸に配置されることも好都合である。
【0035】
さらに、少なくとも1つのばね要素が平ばね要素の傍らに配置されると好都合である。
【0036】
別の利点は、ベースプレートの平面の少なくとも1つの突出部と、第1の力伝達手段の内側の少なくとも1つの突起とが、互いに係合するように協働し、少なくとも1つのばね要素に所定の予荷重を持たせるという事実である。
【0037】
また、ベースプレートの少なくとも1つの突出部および第1の力伝達手段の内側の少なくとも1つの突起が、少なくとも1つの圧縮ばねを収容すると好都合である。
【0038】
好都合な実施形態を、突出部および突起が、一方では第1の力伝達手段の行程を規定し、他方では第1の力伝達手段を回転せぬように確実に固定するガイド要素として設計されることに見て取ることができる。
【0039】
また、クリック板が、クリック板の縁部の少なくとも3つの細い支持点において緩く当接すると好都合である。
【0040】
さらなる利点を、横振動リッジが、例えば、角形または弓形などのさまざまな形状を有する凹部を有するという事実に見て取ることができる。
【0041】
また、冠状表面を有する成形発泡体がベースプレートの外側に配置されると好都合である。
【0042】
また、第1の力伝達手段の上面が凹状であると好都合であり、上面は少なくとも1つの湾曲部を有することができる。
【0043】
さらに、心停止の場合の人体の制御された心肺蘇生のための装置のベースプレートにばねシステムを介して作用する外力Kが第1の力伝達手段へと加えられたときに明瞭に聴き取ることができる音を発生させるための方法は、明瞭に聴き取ることができる信号Sが、調整可能な限界圧力Kmaxに達したときにばねシステムの相互作用によって発生し、振動要素へと伝えられることを特徴とすると好都合である。
【0044】
本発明に不可欠な他の特徴を、明細書および従属請求項において見つけることができる。
【0045】
以下で、本発明を、図面を参照してさらに詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0046】
図1A】本明細書に記載の装置の第1の実施形態の横断面図を示している。
図1B図1Aの実施形態の概略の斜視断面図を示している。
図1C図1Aおよび図1Bの実施形態の平面図を示している。
図1D図1Aおよび図1Bの実施形態の平面図を示している。
図2A】さらなる実施形態の斜視側面図を示している。
図2B】さらなる実施形態の斜視側面図を示している。
図2C図2Aおよび図2Bのこのさらなる実施形態の平面図を示している。
【発明を実施するための形態】
【0047】
図1A図1Dの実施形態とは対照的に、図2においては、単一の中央ばねだけを見て取ることができる。
【0048】
図1Aが、本明細書に記載の装置1の第1の実施形態を示している。
【0049】
詳しくは、複数の部品からなる装置1であって、心停止の場合の人体の制御された心肺蘇生のための装置のベースプレート3にばねシステム4、5、8を介して作用する外力(K)が第1の力伝達手段2へ加えられたときに明瞭に聴き取ることができる音を発生させるための装置1が、外側の幾何学的寸法および形状が胸部の付近の胸骨の身体構造特性に適合するように設計され、とくには、ばねシステム4、5、8が少なくとも1つの振動要素8に作用する信号を発生させ、実質的に少なくとも1つのばね要素4および1つの平ばね要素5で構成されるばねシステム4、5が、第1の力伝達手段2とベースプレート3との間に配置され、さらには、ばね要素4が円錐ばね要素であることを、見て取ることができる。
【0050】
より正確には、合計4つのばね要素4が、とくにはクリック板5である平ばね要素5の傍らに、円形の経路に沿って配置されている。ばね要素4の各々は、円錐形である。
【0051】
さらに、すべてのばね要素4は、ばね要素4のばね断面が力伝達手段2からベースプレート3に向かう方向に円錐状に減少するように、第1の力伝達手段2とベースプレート3との間に円錐状に配置されている。
【0052】
さらに、さらなるばね要素8であるばね要素8は、外部から力伝達手段2へと加えられた圧力が少なくとも部分的にばね要素8を介して平ばね要素5へと伝達されるように、平ばね要素5と力伝達手段2との間に配置されている。
【0053】
図1Bから図1Dが、図1Aの装置の概略の斜視図である。
【0054】
第1の力伝達手段2に加えられる力Kは、一般に、35〜45kg、好ましくは約40kgであり、これは心肺の活動の蘇生に効果的に使用されるために必要である。好ましい実施形態においては、所定の円形の経路にてクリック板5の周囲に配置された4つのコイルばね4が存在する。ばね要素4のばね定数またはばねレートRは、約8861N/mmであってよい。コイルばね4は、ベースプレート3および第1の力伝達手段2において定めらされた支持面を得るために、上部および下部支持体に据えられている。
【0055】
ばね要素4が配置される円形の経路の直径は、人体の胸部の身体構造の寸法と、操作の確実性とによって実質的に決定される装置全体の幾何学的寸法が大きくなりすぎないように、100mmを超えてはならない。
【0056】
平たいクリック板5の直径は、おおむね30mm〜55mmの間であり、周辺の縁部領域22において、ベースプレート3の平面から突出する少なくとも3つの基本的に尖った形状の支持点10によって支持されている。
【0057】
クリック板5は、中央領域に少なくとも1つの湾曲部7を有し、その上部に少なくとも1つの第2の振動要素8、すなわちさらなるばね要素8の一方の端部が配置されている。
【0058】
他方の端部は、第1の力伝達手段2の下面に圧力嵌めにて支持されている。
【0059】
第1の力伝達手段2は、断面が基本的にU字形であり、U字形の断面の2つの脚部および/または突出部が、クリック板5が発生させる音波を捕捉し、外部へと伝える少なくとも1つのとくには音響の振動部8(以下を参照)として、第1の力伝達手段2の下側の平面から突出している。
【0060】
組み立てられた状態において、ベースプレート3と第1の力伝達手段2との間に配置されたばね要素4、5、8はすべて、端部にスナップ閉じ部14を備えた突出部13、13’をそれぞれ有する第1の力伝達手段2およびベースプレート3によって生み出される特定の予荷重を有する。スナップ閉じ部14は、突出部13のフックが移動する長手方向の自由度を有するガイドをさらに備えてもよい。
【0061】
第1の力伝達手段2とベースプレート3とが互いに近付けられるとき、組み立てられた状態の個々のばね要素4、5、8のすべてが特定の所定の予荷重を有し、最終的には個々のばね要素の間の相互作用によってクリック板5をクリック板5の「ポップ」の限界まで案内するために必要な約40kgの結果としての圧力を有するように、それぞれの突出部の2つの端部が所定の停止位置まで互いに引っ掛かり、「ポップ」の限界点においてクリック板5が明瞭に知覚することができる音を発生させ、これが第1の力伝達手段2上の側方の振動部へと実質的に伝わり、振動部9上の音波の変調によって増幅され、これらの音波は、約40kgの所定の力Kmaxに達したときに明瞭に聴き取ることができる信号が結果として鳴るように、異なる波領域の重ね合わせゆえに可聴領域において増幅される。第1の力伝達手段2に加えられた力Kが取り除かれるとき、クリック板5または信号発生ユニット5は、さらなる信号を発しつつ出発位置へと自動的に跳ね戻る。
【0062】
成形部品16が、ベースプレート3の下面15に配置される。成形部品16は、一方では弾性要素として機能し、他方では水分を吸収する発泡ゴムなどの適切な発泡体で構成され、その材料特性および孔径の結果として、患者の処置にきわめて有益な素肌への特定の付着性を有する。
【0063】
成形部品16の発泡体の弾性効果ゆえに、このばね力は、第1の可聴信号を発生させるための約40kgの全体としての力の計算に含まれなければならない。患者の素肌に当接する成形部品16の表面は、胸骨の領域の胸部の身体構造に実質的に合わせられる。
【0064】
成形部品16は、平面図において西洋梨の形状であり、発泡体部品16の細い方の端部17’は、患者の蘇生において最適な効果を達成するために、患者の処置時におおむね胸骨の下端の位置に対応すべきである。
【0065】
本明細書に記載の装置1のさらなる実施形態が、図2に概略的に示されている。
【0066】
図1とは対照的に、図2に示される装置1が、単一のばね要素4、すなわち平ばね要素5を囲む単一の中央ばね要素4を有することを、見て取ることができる。しかしながら、上述のように、すなわち図1に見られるように、ばね要素8は組み込まれている。
【0067】
中央ばね要素4のばね断面積は、ベースプレート3から出発して力伝達要素2に向かって先細りである。
【0068】
ベースプレート3へと接続される端部が、スカート31にはめ込まれ、結果として、この端部がスカート31によって半径方向R(水平方向に平行)に制限され、したがって機械的に安定化される。結果として、ばね要素4の下端は、外側へと滑ることも、半径方向Rに移動することもできない。
【0069】
ばね要素4のさらなる端部は、内側スカート22によって固定される。この実施形態において、内側スカート22は、ばね断面の内側に配置されている。しかしながら、スカート22および31はどちらも、半径は異なるが円形の経路をたどる。とくには、この実施形態において、スカート22の円形の経路の半径は、スカート31の半径よりも小さい。しかしながら、両方のスカートは、同じ対称軸を共有する。この場合の対称軸は、半径方向に垂直であり、したがって、すべてのばねのたわみ方向E1に平行である。
【0070】
図2B図2Cが、図2Aの実施形態の概略の斜視図である。
【0071】
本発明は、実施形態に関する説明によって限定されるものではない。むしろ、本発明は、とくには特許請求の範囲に記載の特徴の任意の組み合わせなど、各々の新規な特徴および特徴の任意の組み合わせを、たとえその特徴またはその組み合わせ自体が特許請求の範囲または実施形態において明示的には述べられていなくても包含する。
【符号の説明】
【0072】
1 装置
2 力伝達手段
3 ベースプレート
4 ばね要素
5 平ばね要素/クリック板/信号発生ユニット
7 湾曲部
8 振動ばね要素
9 振動部
10 支持点
13 突出部
13’ 突出部
14 スナップ閉じ部
15 下面
16 成形部品
17’ 細い方の端部
22 縁部領域/内側スカート
31 スカート
R 半径方向
K 力
E1 たわみ方向
図1A
図1B
図1C
図1D
図2A
図2B
図2C