(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6913191
(24)【登録日】2021年7月13日
(45)【発行日】2021年8月4日
(54)【発明の名称】光造形装置
(51)【国際特許分類】
B29C 64/259 20170101AFI20210727BHJP
B29C 64/124 20170101ALI20210727BHJP
B29C 64/393 20170101ALI20210727BHJP
B33Y 30/00 20150101ALI20210727BHJP
B33Y 40/00 20200101ALI20210727BHJP
B33Y 50/02 20150101ALI20210727BHJP
B29C 64/321 20170101ALI20210727BHJP
【FI】
B29C64/259
B29C64/124
B29C64/393
B33Y30/00
B33Y40/00
B33Y50/02
B29C64/321
【請求項の数】14
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2020-8301(P2020-8301)
(22)【出願日】2020年1月22日
(65)【公開番号】特開2020-116950(P2020-116950A)
(43)【公開日】2020年8月6日
【審査請求日】2020年1月22日
(31)【優先権主張番号】19153519.4
(32)【優先日】2019年1月24日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】596032878
【氏名又は名称】イボクラール ビバデント アクチェンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100064012
【弁理士】
【氏名又は名称】浜田 治雄
(72)【発明者】
【氏名】ゼノ ヨーン
(72)【発明者】
【氏名】ロレンツ ヨーゼフ ボンデルアー
【審査官】
坂本 薫昭
(56)【参考文献】
【文献】
特表2018−538187(JP,A)
【文献】
特表2016−533285(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 64/10,64/124,64/20,64/259,
64/321,64/393
B33Y 10/00,30/00,40/00,50/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷原料を収容するための交換可能なボトルを備えていて、そのボトルをボトル支承部内あるいは上に支承可能で、また前記ボトルから装置側のボトルソケットを介して光造形装置内に印刷原料を取り込み可能である光造形装置であり、充填レベルセンサ(58)をボトルソケット上のボトル(10)の側方に設置してその充填レベルセンサによってボトル(10)内の印刷原料(50)の充填レベルを検出可能にし、ボトル(10)に小型メモリ(38)を割り当ててボトル(10)上に取り付け、その小型メモリ内に光造形装置(12)がボトル(10)内に存在する印刷原料(50)に関する情報である充填レベルを記録し、ボトル(10)上のRFIDタグ(36)との双方向の通信のために形成されていて光造形装置(12)の制御装置(74)に接続されるRFIDアンテナを備えることを特徴とする光造形装置。
【請求項2】
スライスされた面積に基づいて印刷原料消費を、20%より良好な精度で計算する制御装置(74)を光造形装置(12)が備えることを特徴とする請求項1記載の光造形装置。
【請求項3】
小型メモリ(38)がボトルに取り付けられたRFIDタグ(36)内あるいは上に形成されることを特徴とする請求項1または2記載の光造形装置。
【請求項4】
ボトル(10)はボトルソケット上であるいはボトルソケットと共に旋回可能に光造形装置(12)内で支承され、ボトル(10)が垂直である旋回状態においてRFIDアンテナとRFIDタグ(36)との間の双方向通信が動作することを特徴とする請求項1ないし3のいずれか記載の光造形装置。
【請求項5】
ボトル(10)は回転ずれが防止されるようにしてボトル支承部内に支承され、注ぎ口を下にして支承されることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか記載の光造形装置。
【請求項6】
ボトルネック(14)の方向に延在しかつボトルネックから突立する補強リブをボトル(10)の注ぎ口が備え、(注ぎ口が下方にある位置で見て)前記補強リブの上方に充填レベルセンサ(54)が取り付けられることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか記載の光造形装置。
【請求項7】
装置側のボトル支承部の収容部が印刷原料(50)を充填可能な槽(42)への流体接続を有し、その槽の中に光造形装置(12)の成形プラットフォームを浸漬可能であることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか記載の光造形装置。
【請求項8】
槽(42)への流体接続は家畜給水装置方式の給入口を介して形成し、槽の充填レベルが低下した際に前記家畜給水装置方式の給入口を介してボトル(10)から印刷原料(50)を自動的に補充可能にすることを特徴とする請求項7記載の光造形装置。
【請求項9】
ボトル(10)の印刷原料(50)の残量が10cm3未満になった場合に充填レベルセンサ(54)が作動し、また少なくとも1本の歯列、あるいは少なくとも3本の歯列をスライスするために充分な印刷原料(50)が請求項7または8に係る槽内に存在する間に充填レベルセンサが作動することを特徴とする請求項1ないし8のいずれかに記載の光造形装置。
【請求項10】
ボトル(10)および/または槽(42)内に充分な印刷原料(50)が存在していないことを充填レベルセンサ(54)が示した場合に光造形装置(12)の制御装置が印刷工程の開始を禁止することを特徴とする請求項1ないし9のいずれか記載の光造形装置。
【請求項11】
充填レベルセンサ(54)を容量式センサとして形成し、そのセンサをボトル(10)の下端に隣接してボトル(10)から約1ないし20mm離間するように光造形装置(12)内あるいは上に取り付けることを特徴とする請求項1ないし10のいずれか記載の光造形装置。
【請求項12】
制御装置がRFIDアンテナとRFIDタグ(36)との間の通信に基づいてボトル(10)の種類と、ボトル(10)内に存在する印刷原料(50)の種類と、ボトル(10)の大きさと、ボトル(10)内の印刷原料(50)の製造日と、ボトル(10)からの印刷原料(50)の使用開始と、印刷原料(50)の種類および/またはボトル(10)の最終使用を記録することを特徴とする請求項1ないし11のいずれか記載の光造形装置
。
【請求項13】
ボトル(10)内に存在する印刷原料(50)の重要な特性を記録したQRコード(登録商標)あるいはバーコードをRFIDタグ(36)に加えてボトル(10)上に設置することを特徴とする請求項1ないし12のいずれか記載の光造形装置。
【請求項14】
光造形装置のボトルソケット内に装填可能な光造形装置用のボトルあるいはその他の液体容器であり、ボトル(10)が、容量式の、充填レベルセンサ(54)に対して透過性であるような壁厚を有していてそれが2mm未満、あるいは1mm未満であり、ボトル(10)の壁部が少なくともボトル注ぎ口に隣接する位置において非金属でかつ金属製の被覆を有しておらず、さらにボトル(10)がRFIDタグの形式の小型メモリ(38)を備え、それがボトル(10)の壁部上に取り付けられることを特徴とするボトルあるいはその他の液体容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、請求項1前文に記載の光造形装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光造形機器あるいは装置において印刷原料を含んだカセット形式のボトルを使用することが古くから知られている。その種のボトルあるいはカセットは、自由に開放可能な印刷原料の容器に比べて汚染し難くまた特にモノマーの遊離基が印刷原料による周囲環境の汚染につながり得ない点で有利である。
【0003】
通常印刷原料は特に貯蔵に際して極めて感光性である。従ってボトルが黒く着色され、そのためボトルの充填レベルが外側から目視不可能になる。
【0004】
印刷原料は比較的高価である。従って、ボトル内に存在する印刷原料を可能な限り完全に使い切るよう努力されている。そのため印刷原料が、ボトルから液状の印刷原料のための所定の貯蔵容積を形成するボウルあるいは槽内に誘導される。しかしながら、光造形に際してスライスを可能にするために槽内の所定の充填レベルが不可欠である。そのため成形プラットフォームを印刷原料内に浸漬可能にし、スライスに際してZ方向に移動可能にする必要がある。
【0005】
スライス中に印刷原料の使用量を計算することも知られている。しかしながら、光造形による印刷は極めて複雑な工程であり、従って実用上印刷原料の使用量は著しく理論値から逸脱する。
【0006】
別の問題点は、一般的に少なくとも3種類の印刷原料が必要とされることである。例えば歯科分野における多様な対象要求あるいは指示に対応して多様な原料が使用され、それらが混合されると意図しない材料特性が発生する可能性がある。
【0007】
それらの材料は相互に不親和であり、従って相互汚染を回避することが重量である。通常そのことは、ボトルあるいは槽を異なった色で標記することによって考慮される。
【0008】
しかしながら、光造形装置において相互汚染を完全に防止することは容易でない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従って本発明の目的は、著しい追加コストを生じさせることなく組織的な工程の観点において光造形を大幅に改善させる、請求項1前文に記載の光造形装置ならびに請求項15前文に記載のボトルを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記の課題は本発明に従って請求項1あるいは請求項15によって解決される。好適な追加構成が従属請求項によって定義される。
【0011】
本発明によれば、印刷原料の充填レベルを直接ボトル内で検出する。その検出はボトル上あるいはボトル近傍で実施することができ、その充填レベルは特別なメモリ内に記録される。そのメモリは光造形装置内の任意の箇所、特にボトルに近接して設置され、さらにボトル内に存在する印刷原料に関する情報も記録される。それには原料自体の種類と最新の充填レベルが含まれる。
【0012】
小型メモリは、メモリの一部、具体的には印刷原料の種類に関する部分が変更不可能で、一方別の部分、特に充填レベルに関する部分は変更可能であるように構成される。
【0013】
本発明は実質的にボトルの使用に限定されることはなく;それに代えて閉鎖型あるいは略閉鎖型である他の任意の容器を本発明に従って使用することも可能である。
【0014】
本発明は、特許文献1に係る光造形装置と組み合わせて適用することが好適であり、従ってこの文献を全体的に引用する。
【0015】
本発明によれば、ボトル内に所与の残量が存在している際に充填レベルセンサが正確に検知することが極めて好適である。勿論、充填レベルセンサは正確な充填レベルを表示および記録する目的でも具現可能である。しかしながら本発明によれば、所定の充填レベルの上方で第1の信号を発信し、所定の充填レベルの下方では第2の信号を発信するセンサのようなスイッチングセンサが好適である。その際第1の信号がボトルにまだ充分な印刷原料が充填されていることを示し、第2の信号はボトルの充填レベルが充分でなく従ってボトルを交換する必要があることを示す。
【0016】
本発明によれば、ボトルに割り当てられた小型メモリが光造形装置によって読み取り可能かつ分析可能である。このことは、小型メモリ内に記録された充填レベルおよび/またはボトル内に存在する印刷原料に関するその他の情報を光造形装置が検知し得ることを意味する。
【0017】
従って、光造形装置が小型メモリ用の読み取り装置を備え、その読み取り装置が情報の書き込み装置と結合可能であることが好適であり、その際前記書き込み装置は例えばボトルの充填レベルに関する情報を小型メモリ内に記録する。
【0018】
本発明によれば、同時に充填レベルインジケータがボトルの充填レベルを正確に再現し、従って充填レベル、すなわちボトル内に存在する印刷原料が要求されている造形作業を実行するために充分であるかを光造形装置が制御装置を用いて自動的に決定することができることが好適である。
【0019】
本発明によれば小型メモリの二重機能が極めて好適であり、その小型メモリは充填レベルを記録するばかりでなく、該当する印刷原料についておよび必要に応じて製造年月日、使用期限等のボトル内に存在する印刷原料に関する他の個別情報も同時に記録する。従って、光造形装置がそれの制御装置を介して当該印刷原料が要求されている造形作業に適しているかどうかを判定することができる。
【0020】
本発明によれば、ボトルの交換に際して該当する情報を取得し得る点が極めて好適である。光造形装置のソケット内にボトルが接近するとボトル上の小型メモリと対応する光造形装置内の小型メモリ用送受信装置との間にデータ接続が形成される。新たな小型メモリの読み取りが実行され、従ってどの印刷原料ならびにどれくらいの量の印刷原料が利用可能で、また例えば使用期限を超過していないかどうかについての情報が光造形装置に提供される。
【0021】
変更された構成形態によれば、小型メモリと呼称することもできる同等なメモリが光造形装置自体の中に存在する。ボトル上の一義的なコード、例えばQRコード(登録商標)を介してボトルの識別が実行され、従ってボトルを挿入した場合に当該ボトルに対応する小型メモリ内の記憶領域を読み取ることができる。
【0022】
しかしながら、ボトル上に小型メモリを設けることが好適であり、なかでもNFC通信に適していて印刷原料に関する情報をボトル上で自律的に検出するRFIDタグを設けることが好適である。
【0023】
RFIDタグの取り付けは、NFCを介した送受信に適する任意の適宜な箇所で実施することができる。ボトルの送受信装置は適宜なアンテナを備えることが好適であり、それを介してRFIDタグとの双方向通信が可能になる。
【0024】
好適な構成形態によればボトルが旋回可能に収容され、それに関しても前述した特許文献1を引用することができる。ボトルは垂直な状態において使用可能で、印刷原料の放出が可能になる。その状態においてRFIDアンテナとRFIDタグとの間の通信も可能になり、ボトルから槽内に印刷原料が放出される間にボトルの充填レベルが監視される。
【0025】
充填レベルセンサも任意の適宜な方式で取り付けられる。充填レベルセンサは容量式センサとして形成することが好適であり、そのセンサがボトルの下端でセンサに隣接して印刷原料が存在するか否か、すなわち空気が存在するかどうかを検出する。
【0026】
本発明の別の好適な構成形態によれば、元々RFIDタグとの通信用に構成されている光造形装置の制御装置が別のRFIDアンテナと結合される。そのアンテナが成形プラットフォームのZ軸、すなわち垂直動作を捕捉し、そのために成形プラットフォーム上に別のRFIDタグが取り付けられる。そのため成形プラットフォームが開始位置にあることを判定することができ、そのことが成形プラットフォームの推進の制御のために有効となる。
【0027】
別の好適な構成形態によれば、充填レベルセンサを介して充填レベルを検出することに加えてスライス中の印刷原料の消費が計算される。それによっていつ印刷原料が不足するかのおおよその予測が可能になる。
【0028】
計算の結果所定の消費の閾値に到達した場合、すなわち理論的な判定の結果例えばボトル内の印刷原料の半分が消費されたと判断し得る場合にのみボトル上のRFIDタグを制御に取り込むことが可能である。
【0029】
ボトル上の検出は周期的に実行することが好適である。例えば状態が変化したかどうかを1秒間に複数回制御装置が測定することができる。このことはカセットの位置の検出、すなわちボトルが垂直であるかあるいは横たわっているかの検出にも有効である。また充填レベルセンサも短い間隔で照会することが好適である。
【0030】
本発明に係る解決方式によれば、安全装置の具現も可能である。それによって例えばボトルの位置に不正が生じていて液密な取り付けが達成されていないことをセンサが示した場合に印刷原料の放出を遮断する。その場合アラーム信号を発信することが好適である。
【0031】
安全機能によって特に、少なくともボトルと槽、さらには成形プラットフォームが適正な位置にあって動作可能であり従って放出を実行可能である場合に初めて成形プロセスが開始されることが保証される。
【0032】
好適な構成形態によれば、小型メモリ内のボトルの情報の制御装置への信号送信に加えてボトル内にどの原料が存在するかが表示装置によって表示される。
【0033】
別の好適な構成形態によれば、該当するボトルあるいはその中の印刷原料が制御装置内において造形作業に割り当てられ、そのことが記録される。この解決方式により、不良な造形作業が実行された場合に使用された原料を追跡することが可能になる。それによって必要に応じて原料製造者の責任を問うことができる。本発明に係る光造形装置上にユーザインタフェースのための表示装置および入力装置が存在する場合、特定の造形作業のために別のボトルとそれに伴って別のあるいは新しい印刷原料を使用する必要がある場合に使用者に指示を表示することもできる。
【0034】
RFIDタグは短い到達範囲を有するRFIDアンテナと組み合わせることもできる。その場合ボトルが誤って使用されると通信が不可能になって造形作業が停止される。そのことが追加的に光造形装置の操作の安全性に寄与する。
【0035】
本発明によれば、印刷原料のための専用ボトルを使用することが極めて好適である。そのボトルは実質的に正方形の基礎構造を有していて緩やかに先細りのボトル注ぎ口を備える。ネジ蓋に適合するように形成されていて従って雄のネジ山を有するボトル閉鎖口の領域が、先細り部上に突出するリブによって側方で補強される。
【0036】
ボトルをボトルソケット内に押し込むことにより、リブによるボトルソケット上の確実な接合と加えて液密な接合を保証することができる。
【0037】
本発明によればその箇所に容量式の近接センサである近接センサを配置することもできる。前記の配置は例えば、ボトル注ぎ口の約2cm上方に存在する近接センサあるいは充填レベルセンサが液面レベルに応答するように実施される。
【0038】
加えて、容量式の近接センサは使用される印刷原料に従って調節可能である。
【0039】
そのためRFIDタグあるいは小型メモリをボトル上の任意の適宜な箇所に配置することができ、例えば側壁面上に配置することができる。
【0040】
充填レベルセンサの有効性のためには比較的小さな壁厚とすることが重要である。実際にはこの構成はボトルの液密な取り付けに必要なボトルの安定性に相反するが;ボトル注ぎ口の側方補強リブによって相反する両方の要求を両立させることができる。
【0041】
好適な構成形態によれば、使用期限に加えてボトルの最終使用がRFIDタグ内に記録される。最終使用が所定の期間、例えば2週間よりも前である場合、印刷原料中の沈殿物および/または粒子の均一性を確保するためにボトルを振盪することを光造形装置のディスプレイを介して使用者に対して要求することができる。
【0042】
本発明によれば、長期間貯蔵された原料を混合するために槽とその中に浸漬された成形プラットフォームとの間の相対動作を介して混錬動作を実行するように光造形装置を制御することができる。混錬時間は多様な貯蔵時間に応じて目標値として設定することができ、その際その情報をシステムによって自動的に設定するか、あるいは原料の貯蔵時間に従って計算することができる。
【0043】
原料の混錬を実行できるようにするために、少なくとも1個のZ方向に移動可能な成形プラットフォームとXおよびY方向に移動可能な槽あるいはカセットが必要であるか、またはZ方向および/またはXおよびY方向に移動可能な成形プラットフォームとXあるいはY方向に移動可能な槽あるいはカセットが必要である。
【0044】
ここで、可倒式の成形プラットフォーム66および/または可倒式の槽42あるいはカセット42との組み合わせ、あるいはその他の組み合わせによる構成も考えられる。
【0045】
ボトルを旋回可能に取り付ける場合、RFIDタグを充填レベルセンサの領域内、すなわちボトルの注ぎ口側下端部に設置することが好適である。その理由は、RFIDアンテナの到達範囲が限られており、前記のような構成であればボトルの旋回に際してのRFIDタグの移動距離が短くなってRFIDアンテナの到達範囲内に留まることができるためである。
【0046】
センサに対して短い距離を実現できるようにRFIDタグを設置することが好適である。ここでは5mmの数値が好適であることが判明しており、その数値は個体格差とボトルソケット内におけるボトルの取り付け遊びを考慮しているが、確実な評価および通信を可能にするものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0047】
【特許文献1】欧州特許出願第18162320.8号明細書
【0048】
本発明のその他の詳細、特徴、ならびに利点は、添付図面を参照しながら以下に記述する本発明の複数の実施形態の説明によって明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【
図1】本発明に係る光造形装置内で使用するための本発明に係るボトルを示した概略説明図である。
【
図2】光造形装置のボトルソケットと付属するカセット内におけるボトルの取り付けを示した説明図である。
【
図3】本発明に係る光造形装置を概略的に示した立体図である。
【
図4】本発明に係る光造形装置の別の実施形態を示した説明図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0050】
図1に示されたボトル10は例えば
図3に示された光造形装置12内に収容されるように提供される。
図1においてボトルは充填中の状態で示されているが、使用中は例えば
図2および
図3に示されるように頭を下にして装填される。ボトル10は、実質的に正方形である。ボトルは、周知の方式のようにボトルネック14とネジ山付きの注ぎ口16を備え、この実施例においては周知の方式の蓋18によって閉鎖される。
【0051】
ボトル10は比較的壁薄の材料から形成される。(
図1において上側に示された)ボトルの下方セクション20はボトルネック14まで先細りになっている。そのセクションは
図2に示されるように錐形に形成するか、または
図1および
図3に示されるように実質的に平坦に形成することができる。そのセクションがいずれも補強リブ22および24を備えることが好適であり、その補強リブはボトル10をボトルソケット30(
図2および
図3参照)内に挿入する際に生じる応力を吸収してボトル10の壁部32に伝道するように機能する。
【0052】
図1の実施例においてボトル10は追加的に強化リブ34を備えているが、
図2および
図3の構成形態においては設けられていない。
【0053】
1つの壁部32に本発明に係るRFIDタグ36が配置される。RFIDタグ36は小型の記憶装置からなり、小型メモリ38と、外部との通信を行う小型アンテナ40と、図示されていない制御回路を有する。RFIDタグ自体は周知である。
【0054】
RFIDタグ36はボトル10の狭い方の壁部に取り付けられる。この配置は、一般的に狭い方の壁部が広い方の壁部に比べていくらか低弾力性であるため有効である。RFIDタグは、壁縁部および側部に極めて隣接しており;その位置も四角形のボトルにおいて比較的高剛性である。
【0055】
図示された実施例においてRFIDタグはボトルの高さの略中央に取り付けられる。しかしながら、実施形態によっては上述した利点のためいくらか下方(
図1においては上方)に配置することも好適であり得る。
【0056】
いずれの場合も、図示されていないRFIDタグ36用のアンテナがそのタグに極めて近接してボトルソケット30内あるいは上に設置される。
【0057】
図1の実施形態においてはRFIDタグ36が縦長に取り付けられているが、必要に応じて横長に取り付けることも可能であることが理解される。
【0058】
取り付けは周知の方式に従ってボトルの外面上への接着によって行われ、従ってRFIDタグ36は紛失し得ないようにボトル10と結合される。
【0059】
図2には、ボトルソケット30を有するカセット40内のボトル10の考えられる配置が示されている。この構成においてボトル10は錐形のセクション20を備え、そのセクションが側壁32とボトルネック14の間に延在する。注ぎ口16はボトル10のソケット30内へ挿入される。このソケットは回転弁41を備える。ボトル10が
図2の位置に存在する場合に回転弁41が開放される。その位置に対してボトル10が右に90°旋回して槽42の上方で横になる状態になると、回転弁が閉鎖される。カセット40が下方に旋回した位置が運搬位置に相当する。上方に旋回した状態において、印刷原料50がボトル10から注ぎ口16と回転弁41を介して槽42内に流入する。
【0060】
槽42内の液面52を適正に保持するために周知の任意の措置が講じられる。その一例として槽42内に液体を注入するいわゆる家畜用自動給水弁の方式が適している。
【0061】
図2によればボトル10の後方に充填レベルセンサ54が配置される。そのセンサは容量式でそのセンサに隣接するボトル10の位置に液体が存在するか否かを計測する。センサはボトルソケット30上に取り付けられ、特にセクション20の直ぐ上方あるいはセクション20上に取り付けられる。
【0062】
そのことは、ボトル10内の印刷原料50の液面56がその位置を下回った場合にセンサが作動することを意味する。その場合、未だいくらかの印刷原料50がボトル10内で使用可能である。その際に、光造形によって槽42内の印刷原料50からさらに少なくとも3個の構成部材、すなわち例えば上顎義歯に相当する構成部材を製造、すなわちスライスするためにいずれにしても充分であるかどうかが計算される。
【0063】
この方式によって、槽42内の液面52が常に高品質の光造形のために充分なようにされる。
【0064】
図3により、光造形装置12の例示的な構成が示される。光造形装置12は表示装置と操作盤62との組み合わせ有するハウジング60を備える。カセット40はハウジング60上に装着され、これは
図2のものと同様であるが
図3においては顕著に概略的に示されている。
【0065】
ボトル10は注ぎ口16を下向きにしてソケット30内に収容され、従って印刷原料50を槽42内に放出することが可能になる。
【0066】
槽42の上方には、
図3に図示されていない成形プラットフォーム66(
図4)のための保持アーム64が延在する。この保持アームは駆動装置68によって垂直、すなわちZ軸の方向に移動可能である。
【0067】
ボトル10に隣接してRFIDタグ36を捕捉するためにアンテナ70および72が設けられる。それらのアンテナはボトル10のソケット30上に取り付けられる。加えて、充填レベルセンサ54がボトル10の注ぎ口16に隣接して配置される。
【0068】
稼働中は、点線で示された制御装置74によってボトル10のRFIDタグ36上の小型メモリ38の状態が読み取られる。従って、制御装置74にボトル10内の印刷原料50に関する種々の情報が提供される。
【0069】
さらに、充填レベルセンサ54によってボトル10内の印刷原料50の充填レベルが検出される。
【0070】
全ての数値が適正で目的とされる造形作業に適合する場合、そのことが表示装置に表示されて使用者の認証後に当該造形作業が開始される。
【0071】
造形作業の間継続的に充填レベルセンサ54が照会される。造形作業の間にボトル10内の印刷原料50の充填レベルが所与の値未満に低下しても、ボトル10内の印刷原料50にはまだ一定の予備が有るため造形作業が最後まで遂行される。
【0072】
しかしながら、後続する造形作業は許可されず;むしろ使用者にボトル交換が要求される。
【0073】
制御装置74がボトル交換を記録してボトル10内の印刷原料50が槽42内に存在する印刷原料50に適合するかを検査し、適合しない場合は交換を停止する。
【0074】
それによって相互汚染も防止される。既に原料が槽内に流れ込んでいて相互汚染を完全に防止することができない場合でも、相互汚染を即座に認識して警報が発せられる。
【0075】
適正な印刷原料50、すなわち適正なボトル10がソケット30内に挿入されると初めて次の造形作業が許可される。
【0076】
図4には本発明に係る光造形装置12の別の構成形態が示されている。ここで他の図面と同等な構成要素には同じ参照符号を付して示す。この実施形態においてボトル10のソケット30が、RFIDタグ36のためのアンテナ70とさらに追加的に充填レベルセンサ58を備える。ボトル10が横になって配置されている場合のボトル10上のRFIDタグ36との通信のために設定された別のアンテナ71を備える。
【符号の説明】
【0077】
10 ボトル
12 光造形装置
14 ボトルネック
16 注ぎ口
18 蓋
20 下方セクション
22,24 補強リブ
30 ボトルソケット
32 壁部
34 強化リブ
36 RFIDタグ
38 小型メモリ
40 小型アンテナ
40 カセット
41 回転弁
42 槽
50 印刷原料
52 液面
54 充填レベルセンサ
56 液面
58 充填レベルセンサ
60 ハウジング
62 操作盤
64 保持アーム
66 成形プラットフォーム
68 駆動装置
70,72 アンテナ
74 制御装置