特許第6913282号(P6913282)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6913282-半導電性ローラ 図000012
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6913282
(24)【登録日】2021年7月14日
(45)【発行日】2021年8月4日
(54)【発明の名称】半導電性ローラ
(51)【国際特許分類】
   G03G 15/02 20060101AFI20210727BHJP
   G03G 15/08 20060101ALI20210727BHJP
   F16C 13/00 20060101ALI20210727BHJP
【FI】
   G03G15/02 101
   G03G15/08 235
   F16C13/00 B
【請求項の数】4
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2017-129302(P2017-129302)
(22)【出願日】2017年6月30日
(65)【公開番号】特開2019-12207(P2019-12207A)
(43)【公開日】2019年1月24日
【審査請求日】2020年4月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002310
【氏名又は名称】特許業務法人あい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 大二朗
【審査官】 堀川 あゆ美
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−109500(JP,A)
【文献】 特開2017−109859(JP,A)
【文献】 特開2001−074036(JP,A)
【文献】 特開2000−194190(JP,A)
【文献】 特開2017−076005(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 15/02
F16C 13/00
G03G 15/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴムとしてのエピクロルヒドリンゴムおよびジエン系ゴム、ならびに
ポリプロピレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、エチレン−アクリル酸エチル共重合樹脂、エチレン−メタクリル酸メチル共重合樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂、および(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合物からなる群より選ばれた少なくとも1種の樹脂を構成する繰り返し単位を分子中に含むシリコーン系共重合体、
を含むゴム組成物の架橋物からなるローラ本体を備えた半導電性ローラ。
【請求項2】
前記シリコーン系共重合体は、ポリプロピレン、低密度ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂、および(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合物からなる群より選ばれた少なくとも1種の樹脂を構成する繰り返し単位を分子中に含むシリコーン系共重合体である請求項1に記載の半導電性ローラ。
【請求項3】
前記共重合体を、前記ゴムの総量100質量部あたり1質量部以上、30質量部以下の割合で含む請求項1または2に記載の半導電性ローラ。
【請求項4】
電子写真法を利用した画像形成装置に組み込んで、帯電ローラまたは現像ローラとして用いる請求項1ないし3のいずれか1項に記載の半導電性ローラ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導電性ローラに関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子写真法を利用した画像形成装置においては、コロナ放電に比べて低い電圧で感光体の表面を帯電できることから、帯電方式として、感光体の表面に、帯電ローラを直接に接触させて帯電させる接触帯電方式が普及しつつある。
また、電子写真法を利用した画像形成装置においては、現像方式として非磁性1成分現像方式が主流になりつつある。
【0003】
非磁性1成分現像方式では、トナーを、現像ローラとトナー量規制ブレードとの間を通過させて摩擦帯電させながら現像ローラの表面に担持させることで、当該表面にトナー層を形成する。次いで、形成したトナー層を、静電潜像を形成した感光体の表面に直接に接触させることで、トナーを、トナー層から静電潜像に選択的に移行させてトナー像に現像する。あるいはトナー層と感光体の表面とを、非接触の状態を維持しながら近接させることで、トナーを、トナー層から静電潜像に選択的に移行(飛翔)させて、トナー像に現像する場合もある。
【0004】
上記帯電ローラや現像ローラとしては、特に、感光体の表面との当接のニップを十分に確保して、それぞれのローラとしての機能を良好に発現させるために、半導電性のゴム組成物を筒状に成形して架橋させたローラ本体を備えた、半導電性ローラが好適に用いられる。
また半導電性ローラのローラ抵抗値を、上記帯電ローラや現像ローラとして適した範囲に調整するため、ゴム組成物のもとになるゴムとしては、例えばエピクロルヒドリンゴム等のイオン導電性ゴムを使用する場合がある。
【0005】
またゴムとしては、ゴム組成物に良好な加工性を付与したり、成形し、架橋させて形成したローラ本体の機械的強度や耐久性等を向上したり、あるいはローラ本体にゴムとしての良好な特性、すなわち柔軟で、しかも圧縮永久ひずみが小さくヘタリを生じにくい特性を付与したりするため、イオン導電性ゴムとともに、ジエン系ゴムを併用する場合もある。
【0006】
ところが、ゴム組成物からなるローラ本体の外周面は摩擦係数が大きいため、当該ローラ本体を備えた半導電性ローラを、例えば帯電ローラとして使用した場合には、感光体の表面に残留したトナーや、あるいはトナーの流動性、帯電性等を改善するべくトナーに外添されるシリカや酸化チタン等の外添剤がローラ本体の外周面に付着し、蓄積されて、形成画像に、帯電の不均一による縦スジ状や点状の濃度ムラを生じる場合がある。また、直接に接触する感光体の表面に影響を及ぼすおそれもある。
【0007】
そのため帯電ローラにおいては、ローラ本体の外周面の低摩擦化を図るべく、当該外周面をコーティング膜で被覆することが検討されている(例えば特許文献1等参照)。
一方、ゴム組成物からなり、外周面の摩擦係数が大きいローラ本体を備えた半導電性ローラを、例えば現像ローラとして、トナー量規制ブレードと組み合わせてトナーを摩擦帯電させると、摩擦によってトナーが粉砕されて、形成画像がガサつくおそれがある。
【0008】
また外添剤の微小粒子が、摩擦によってトナー粒子中に埋没し、トナーの流動性が損なわれて、形成画像に濃度ムラを生じたり、トナー量規制ブレードが、いわゆるスリップスティックを起こして、形成画像に縦スジ状の濃度ムラを生じたりする場合がある。
またローラ本体の外周面の両端部は、当該外周面に担持させたトナーが、現像ローラを組み込んだ現像装置の外へ漏出するのを防止するべく、シール部材によってシールされる場合がある。シール部材は、例えばフェルト等によって形成され、現像装置の筐体等に固定された状態で、回転する現像ローラの、ローラ本体の外周面の両端部に摺接される。
【0009】
ところが画像形成を繰り返すと、シール部材によってシールされたはずの両端部からトナーが漏れやすくなる。この原因は、ローラ本体の外周面の両端部の付近が、シール部材との摺接によって摩耗して、当該シール部材との間に隙間を生じることにある。
そこで、現像ローラにおいても、ローラ本体の外周面の低摩擦化を図ってこれらの不良が生じるのを抑制するべく、当該外周面をコーティング膜で被覆することが検討されている(例えば特許文献2等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2000−267394号公報
【特許文献2】特開2001−222163号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ところがコーティング膜は、そのもとになるバインダ樹脂を含む液状のコーティング剤を、スプレー法、ディッピング法等の塗布方法によってローラ本体の外周面に塗布したのち、乾燥させて形成されるため、上記形成過程においてホコリ等の異物の混入、厚みムラの発生等の様々な不良を生じやすいという課題がある。
また、コーティング剤を調製するには、バインダ樹脂を溶解する有機溶剤が必要であるが、有機溶剤の使用は環境に対する負荷が大きく、近年の低VOC(揮発性有機化合物)化の流れに逆行することになるという課題もある。
【0012】
さらに、バインダ樹脂の種類によってはコーティング膜が硬くなって、当該コーティング膜が厚みを有することと相まって、感光体の表面が傷ついたりしやすいという課題もある。
本発明の目的は、コーティング膜を省略した簡単な構造を維持しながら、なおかつ現状よりも外周面が低摩擦化されたローラ本体を備えた半導電性ローラを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、ゴムとしてのエピクロルヒドリンゴムおよびジエン系ゴム、ならびにポリプロピレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、エチレン−アクリル酸エチル共重合樹脂、エチレン−メタクリル酸メチル共重合樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂、および(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合物からなる群より選ばれた少なくとも1種の樹脂を構成する繰り返し単位を分子中に含むシリコーン系共重合体、を含むゴム組成物の架橋物からなるローラ本体を備えた半導電性ローラである。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、コーティング膜を省略した簡単な構造を維持しながら、なおかつ現状よりも外周面が低摩擦化されたローラ本体を備えた半導電性ローラを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の半導電性ローラの、実施の形態の一例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、ゴムとしてのエピクロルヒドリンゴムおよびジエン系ゴム、ならびにポリプロピレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、エチレン−アクリル酸エチル共重合樹脂、エチレン−メタクリル酸メチル共重合樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂、および(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合物からなる群より選ばれた少なくとも1種の樹脂を構成する繰り返し単位を分子中に含むシリコーン系共重合体、を含むゴム組成物の架橋物からなるローラ本体を備えた半導電性ローラである。
本発明によれば、例えば黒鉛や二硫化モリブデンなどの、ゴム用の通常の固体潤滑剤に比べて摩擦係数の低減効果に優れるものの、極性が低いため上記ゴムに相溶しないシリコーンの分子中に、当該ゴムとの相溶性のよい上記少なくとも1種の樹脂を構成する繰り返し単位を導入することで、上記摩擦係数の良好な低減効果を維持しながら、ゴムとの相溶性を向上したシリコーン系共重合体を得ることができる。
【0017】
そのため、上記シリコーン系共重合体をゴム組成物中に配合することにより、当該ゴム組成物の架橋物からなるローラ本体の、ゴムとしての良好な特性を損なうことなしに、当該ローラ本体の外周面を、現状に比べて低摩擦化できる。
すなわち本発明によれば、前述した種々の問題を生じるおそれのあるコーティング膜を省略した簡単な構造を維持しながら、なおかつ現状よりも外周面が低摩擦化されたローラ本体を備えた半導電性ローラを提供できる。
【0018】
そして、かかる本発明の半導電性ローラを、例えば帯電ローラとして使用して画像を形成した場合には、感光体の表面に残留したトナーや外添剤がローラ本体の外周面に付着し、蓄積されて、形成画像に、帯電の不均一による縦スジ状や点状の濃度ムラを生じたり、直接に接触する感光体の表面に影響を及ぼしたりするのを抑制して、良好な画像を形成することが可能となる。
【0019】
また本発明の半導電性ローラを、例えば現像ローラとして使用して画像を形成した場合には、摩擦によってトナーが粉砕されて形成画像がガサついたり、外添剤の微小粒子がトナー粒子中に埋没し、トナーの流動性が損なわれて形成画像の濃度ムラを生じたり、トナー量規制ブレードがスリップスティックを起こして形成画像に縦スジ状の濃度ムラを生じたり、画像形成を繰り返した際に、シール部材によってシールされた両端部が摩耗してトナーの漏れが発生したりするのを抑制して、良好な画像を形成することが可能となる。
【0020】
《ゴム組成物》
〈ゴム〉
ゴムは、上述したようにエピクロルヒドリンゴム、およびジエン系ゴムを含む。
(エピクロルヒドリンゴム)
エピクロルヒドリンゴムとしては、繰り返し単位としてエピクロルヒドリンを含み、イオン導電性を有する種々の重合体が使用可能である。
【0021】
エピクロルヒドリンゴムとしては、例えばエピクロルヒドリン単独重合体、エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド二元共重合体(ECO)、エピクロルヒドリン−プロピレンオキサイド二元共重合体、エピクロルヒドリン−アリルグリシジルエーテル二元共重合体、エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル三元共重合体(GECO)、エピクロルヒドリン−プロピレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル三元共重合体、エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド−プロピレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル四元共重合体等の1種または2種以上が挙げられる。
【0022】
中でもジエン系ゴムと併用した際に、例えば帯電ローラや現像ローラとしての使用に適した範囲まで半導電性ローラのローラ抵抗値を低下させる効果の点で、エチレンオキサイドを含む共重合体、特にECOおよび/またはGECOが好ましい。
上記両共重合体におけるエチレンオキサイド含量は、いずれも30モル%以上、特に50モル%以上であるのが好ましく、80モル%以下であるのが好ましい。
【0023】
エチレンオキサイドは、半導電性ローラのローラ抵抗値を下げる働きをする。しかしエチレンオキサイド含量がこの範囲未満では、かかる働きが十分に得られないため、ローラ抵抗値を十分に低下できないおそれがある。
一方、エチレンオキサイド含量が上記範囲を超える場合には、エチレンオキサイドの結晶化が起こり、分子鎖のセグメント運動が妨げられるため、逆に半導電性ローラのローラ抵抗値が上昇する傾向がある。また架橋後のローラ本体が硬くなりすぎたり、架橋前のゴム組成物の、加熱溶融時の粘度が上昇してゴム組成物の加工性が低下したりするおそれもある。
【0024】
ECOにおけるエピクロルヒドリン含量は、エチレンオキサイド含量の残量である。すなわち、エピクロルヒドリン含量は20モル%以上であるのが好ましく、70モル%以下、特に50モル%以下であるのが好ましい。
また、GECOにおけるアリルグリシジルエーテル含量は0.5モル%以上、特に2モル%以上であるのが好ましく、10モル%以下、特に5モル%以下であるのが好ましい。
【0025】
アリルグリシジルエーテルは、それ自体が側鎖として自由体積を確保するために機能することにより、エチレンオキサイドの結晶化を抑制して、半導電性ローラのローラ抵抗値を低下させる働きをする。しかし、アリルグリシジルエーテル含量がこの範囲未満では、かかる働きが十分に得られないため、ローラ抵抗値を十分に低下できないおそれがある。
一方、アリルグリシジルエーテルはGECOの架橋時に架橋点として機能するため、アリルグリシジルエーテル含量が上記の範囲を超える場合には、GECOの架橋密度が高くなりすぎることによって分子鎖のセグメント運動が妨げられて、却ってローラ抵抗値が上昇する傾向がある。
【0026】
GECOにおけるエピクロルヒドリン含量は、エチレンオキサイド含量、およびアリルグリシジルエーテル含量の残量である。すなわち、エピクロルヒドリン含量は10モル%以上、特に19.5モル%以上であるのが好ましく、69.5モル%以下、特に60モル%以下であるのが好ましい。
なおGECOとしては、先に説明した3種の単量体を共重合させた狭義の意味での共重合体の他に、エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド共重合体(ECO)をアリルグリシジルエーテルで変性した変性物も知られており、本発明ではこのいずれのGECOも使用可能である。
これらエピクロルヒドリンゴムの1種または2種以上を使用できる。
【0027】
(ジエン系ゴム)
前述したようにジエン系ゴムは、ゴム組成物に良好な加工性を付与したり、ローラ本体の機械的強度や耐久性等を向上したり、あるいはローラ本体にゴムとしての良好な特性、すなわち柔軟で、しかも圧縮永久ひずみが小さくヘタリを生じにくい特性を付与したりするために機能する。
【0028】
また、ローラ本体の外周面に酸化膜を形成する場合があるが、ジエン系ゴムは、当該紫外線照射によって酸化されて、上記酸化膜を形成する材料ともなる。
ジエン系ゴムとしては、例えば天然ゴム、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、クロロプレンゴム(CR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)等の1種または2種以上が挙げられる。
中でも、SBRを単独でエピクドルヒドリンゴムと併用するか、あるいはSBR、CRおよびNBRの3種をエピクロルヒドリンゴムと併用するのが好ましい。
【0029】
(SBR)
SBRとしては、スチレンと1,3−ブタジエンとを乳化重合法、溶液重合法等の種々の重合法によって共重合させて合成され、なおかつ架橋性を有する種々のSBRが、いずれも使用可能である。
【0030】
またSBRとしては、スチレン含量によって分類される高スチレンタイプ、中スチレンタイプ、および低スチレンタイプのSBRが、いずれも使用可能である。
さらにSBRとしては、伸展油を加えて柔軟性を調整した油展タイプのものと、加えない非油展タイプのものとがあるが、半導電性ローラを帯電ローラや現像ローラとして使用する場合は、トナーや感光体の汚染を防止するために、ブリード物質となりうる伸展油を含まない、非油展タイプのSBRを用いるのが好ましい。
これらSBRの1種または2種以上を使用できる。
【0031】
(CR)
CRは、クロロプレンを乳化重合させて合成されるもので、その際に用いる分子量調整剤の種類によって、硫黄変性タイプと非硫黄変性タイプとに分類される。
このうち硫黄変性タイプのCRは、クロロプレンと、分子量調整剤としての硫黄とを共重合させたポリマを、チウラムジスルフィド等で可塑化して所定の粘度に調整することで合成される。
【0032】
また非硫黄変性タイプのCRは、例えばメルカプタン変性タイプ、キサントゲン変性タイプ等に分類される。
このうちメルカプタン変性タイプのCRは、例えばn−ドデシルメルカプタン、tert−ドデシルメルカプタン、オクチルメルカプタン等のアルキルメルカプタン類を分子量調整剤として使用すること以外は、硫黄変性タイプのCRと同様にして合成される。
【0033】
またキサントゲン変性タイプのCRは、アルキルキサントゲン化合物を分子量調整剤として使用すること以外は、やはり硫黄変性タイプのCRと同様にして合成される。
またCRは、その結晶化速度に基づいて、当該結晶化速度が遅いタイプ、中庸であるタイプ、および速いタイプに分類される。
本発明においては、いずれのタイプのCRを用いてもよいが、中でも非硫黄変性タイプで、かつ結晶化速度が遅いタイプのCRが好ましい。
【0034】
またCRとしては、クロロプレンと他の共重合成分との共重合体を用いてもよい。かかる他の共重合成分としては、例えば2,3−ジクロロ−1,3−ブタジエン、1−クロロ−1,3−ブタジエン、スチレン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、イソプレン、ブタジエン、アクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸、およびメタクリル酸エステル等の1種または2種以上が挙げられる。
【0035】
さらにCRとしては、やはり伸展油を加えて柔軟性を調整した油展タイプのものと、加えない非油展タイプのものとがあるが、半導電性ローラを帯電ローラや現像ローラとして使用する場合は、トナーや感光体の汚染を防止するために、ブリード物質となりうる伸展油を含まない、非油展タイプのCRを用いるのが好ましい。
これらCRの1種または2種以上を使用できる。
【0036】
(NBR)
NBRとしては、アクリロニトリル含量が24%以下である低ニトリルNBR、25〜30%である中ニトリルNBR、31〜35%である中高ニトリルNBR、36〜42%である高ニトリルNBR、43%以上である極高ニトリルNBRのいずれを用いてもよい。
【0037】
またNBRとしては、やはり伸展油を加えて柔軟性を調整した油展タイプのものと、加えない非油展タイプのものとがあるが、半導電性ローラを帯電ローラや現像ローラとして使用する場合は、トナーや感光体の汚染を防止するために、ブリード物質となりうる伸展油を含まない、非油展タイプのNBRを用いるのが好ましい。
これらNBRの1種または2種以上を使用できる。
【0038】
(ゴムの配合割合)
ゴムの配合割合は、半導電性ローラに求められる各種の特性、特にローラ抵抗値やローラ本体の柔軟性等に応じて任意に設定できる。
ただし、エピクロルヒドリンゴムの配合割合は、ゴムの総量100質量部中の15質量部以上、特に30質量部以上であるのが好ましく、90質量部以下、特に80質量部以下であるのが好ましい。
【0039】
エピクロルヒドリンゴムの配合割合がこの範囲未満では、半導電性ローラのローラ抵抗値を、帯電ローラや現像ローラとしての使用に適した範囲まで十分に低下できないおそれがある。
一方、エピクロルヒドリンゴムの配合割合が上記の範囲を超える場合には、相対的にジエン系ゴムの割合が少なくなるため、ゴム組成物に良好な加工性を付与したり、ローラ本体に、前述したゴムとしての良好な特性を付与したりできないおそれがある。
【0040】
これに対し、エピクロルヒドリンゴムの配合割合を上記の範囲とすることにより、ジエン系ゴムを併用することによる上記の効果を維持しながら、半導電性ローラのローラ抵抗値を、帯電ローラや現像ローラとしての使用に適した範囲まで十分に低下できる。
ジエン系ゴムの配合割合は、エピクロルヒドリンゴムの残量である。すなわちエピクロルヒドリンゴムの配合割合を所定の範囲に設定し、さらにジエン系ゴムを加えたゴムの総量が100質量部となるように、当該ジエン系ゴムの配合割合を設定すればよい。
【0041】
シリコーン系共重合体〉
シリコーン系共重合体としては、前述したようにその分子中に、ゴムと相溶する下記の少なくとも1種の樹脂を構成する繰り返し単位を含む、種々のシリコーン系の共重合体が使用可能である。
リプロピレン(PP)、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、エチレン−アクリル酸エチル共重合樹脂(EEA)、エチレン−メタクリル酸メチル共重合樹脂(EMMA)、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂(EVA)、(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合
【0042】
シリコーン系共重合体としては、例えば、上記樹脂の主鎖の末端に、もしくは側鎖として、ポリシロキサン等のシリコーン部分が結合した構造を有するブロック共重合体、またはグラフト共重合体、あるいはポリシロキサン等のシリコーンの主鎖の末端に、もしくは側鎖として、上記樹脂に該当する部分が結合した構造を有するブロック共重合体、またはグラフト共重合体等の1種または2種以上が挙げられる。
【0043】
シリコーン系共重合体の具体例としては、例えば樹脂に、反応性ポリオルガノシロキサンをグラフト重合して合成された、東レ・ダウコーニング(株)製のBY27−201〔樹脂:PP、シリコーン含有量:40%〕、BY27−201C〔樹脂:PP、シリコーン含有量:40%〕、BY27−202H〔樹脂:LDPE、シリコーン含有量:60%〕、BY27−213〔樹脂:LLDPE、シリコーン含有量:40%〕、BY27−218〔樹脂:EEA、シリコーン含有量:50%〕、BY27−219〔樹脂:EMMA、シリコーン含有量:60%〕、BY27−220〔樹脂:EVA、シリコーン含有量:60%〕等が挙げられる。
【0044】
またシリコーン系共重合体の具体例としては、例えばポリアルキルシロキサンと(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合物とのグラフト共重合体である、日信化学工業(株)製のシャリーヌ(登録商標)R−170〔シリコーン含有量:70%、不定形パウダー状、平均粒径350μm、一次粒子径:0.2〜0.3μm〕、R−170S〔シリコーン含有量:70%、球形、平均粒径30μm、一次粒子径:0.2〜0.3μm〕等も挙げられる。
【0045】
これらシリコーン系共重合体の1種または2種以上を使用できる。
シリコーン系共重合体の配合割合は、ゴムの総量100質量部あたり1質量部以上であるのが好ましく、40質量部以下、特に30質量部以下であるのが好ましい。
シリコーン系共重合体の配合割合がこの範囲未満では、当該シリコーン系共重合体を配合することによる、コーティング膜を省略した簡単な構造を維持しながら、なおかつ現状よりもローラ本体の外周面を低摩擦化する効果が十分に得られないおそれがある。
【0046】
そして、本発明の半導電性ローラを帯電ローラとして使用して画像を形成した場合には、感光体の表面に残留したトナーや外添剤がローラ本体の外周面に付着し、蓄積されて、形成画像に、帯電の不均一による縦スジ状や点状の濃度ムラを生じたり、直接に接触する感光体の表面に影響を及ぼしたりするおそれがある。
また、本発明の半導電性ローラを現像ローラとして使用して画像を形成した場合には、摩擦によってトナーが粉砕されて形成画像がガサついたり、外添剤の微小粒子がトナー粒子中に埋没し、トナーの流動性が損なわれて形成画像の濃度ムラを生じたり、トナー量規制ブレードがスリップスティックを起こして形成画像に縦スジ状の濃度ムラを生じたり、画像形成を繰り返した際に、シール部材によってシールされた両端部が摩耗してトナーの漏れが発生したりするおそれがある。
【0047】
一方、シリコーン系共重合体の配合割合が上記の範囲を超える場合には、相対的にゴムの割合が少なくなるため、ゴム組成物の加工性が低下して、押出成形した筒状体の、外周面の押出肌が荒れやすくなる傾向がある。
そして押出肌が荒れると、その後の工程で外周面を研磨しているにも拘らず、例えば現像ローラとして使用して画像形成した際に、形成画像に濃度ムラを生じたりしやすくなるおそれがある。
【0048】
また、半導電性ローラのローラ抵抗値を、特に現像ローラとしての使用に適した範囲まで十分に低下できず、形成画像の濃度が低下するおそれもある。
これに対し、シリコーン系共重合体の配合割合を上述した範囲とすることにより、これら種々の問題が生じるのを抑制して、さらに良好な画像を形成することが可能となる。
〈架橋成分〉
ゴム組成物には、ゴムを架橋させるための架橋成分を含有させる。架橋成分としては、チオウレア系架橋剤、および硫黄系架橋剤を併用するのが好ましい。
【0049】
(チオウレア系架橋剤)
チオウレア系架橋剤としては、分子中にチオウレア構造を有し、主にECOおよび/またはGECOの架橋剤として機能しうる種々のチオウレア化合物が使用可能である。
チオウレア系架橋剤としては、例えばエチレンチオウレア、N,N′−ジフェニルチオウレア、トリメチルチオウレア、式(1):
(C2n+1NH)C=S (1)
〔式中、nは1〜12の整数を示す。〕で表されるチオウレア、テトラメチルチオウレア等の1種または2種以上が挙げられる。特にエチレンチオウレアが好ましい。
【0050】
チオウレア系架橋剤の配合割合は、ローラ本体に、前述したゴムとしての良好な特性を付与すること等を考慮すると、ゴムの総量100質量部あたり0.1質量部以上であるのが好ましく、1質量部以下であるのが好ましい。
(架橋促進剤)
チオウレア系架橋剤には、当該チオウレア系架橋剤によるECOおよび/またはGECOの架橋反応を促進する種々の架橋促進剤を併用してもよい。
【0051】
かかる架橋促進剤としては、例えば1,3−ジフェニルグアニジン、1,3−ジ−o−トリルグアニジン、1−o−トリルビグアニド等のグアニジン系促進剤などの1種または2種以上が挙げられる。特に1,3−ジ−o−トリルグアニジンが好ましい。
架橋促進剤の配合割合は、架橋反応を促進する効果を十分に発現させることを考慮すると、ゴムの総量100質量部あたり0.1質量部以上であるのが好ましく、1質量部以下であるのが好ましい。
【0052】
(硫黄系架橋剤)
主にジエン系ゴムやGECOを架橋させるための硫黄系架橋剤としては、例えば粉末硫黄、オイル処理粉末硫黄、沈降硫黄、コロイド硫黄、分散性硫黄等の硫黄や、あるいはテトラメチルチウラムジスルフィド、N,N−ジチオビスモルホリン等の有機含硫黄化合物などが挙げられ、特に硫黄が好ましい。
【0053】
硫黄の配合割合は、ローラ本体に、前述したゴムとしての良好な特性を付与すること等を考慮すると、ゴムの総量100質量部あたり1質量部以上であるのが好ましく、2質量部以下であるのが好ましい。
なお、例えば硫黄としてオイル処理粉末硫黄、分散性硫黄等を使用する場合、上記配合割合は、それぞれの中に含まれる有効成分としての硫黄自体の割合とする。
【0054】
また、架橋剤として有機含硫黄化合物を使用する場合、その配合割合は、分子中に含まれる硫黄の、ゴムの総量100質量部あたりの割合が上記の範囲となるように調整するのが好ましい。
(架橋促進剤)
硫黄系架橋剤には、当該硫黄系架橋剤によるジエン系ゴム等の架橋反応を促進する種々の架橋促進剤を併用してもよい。
【0055】
かかる架橋促進剤としては、例えばチアゾール系促進剤、チウラム系促進剤、スルフェンアミド系促進剤、ジチオカルバミン酸塩系促進剤等の1種または2種以上が挙げられる。中でも、チアゾール系促進剤とチウラム系促進剤を併用するのが好ましい。
チアゾール系促進剤としては、例えば2−メルカプトベンゾチアゾール、ジ−2−ベンゾチアゾリルジスルフィド、2−メルカプトベンゾチアゾールの亜鉛塩、2-メルカプトベンゾチアゾールのシクロヘキシルアミン塩、2−(N,N−ジエチルチオカルバモイルチオ)ベンゾチアゾール、2−(4′−モルホリノジチオ)ベンゾチアゾール等の1種または2種以上が挙げられる。特にジ−2−ベンゾチアゾリルジスルフィドが好ましい。
【0056】
またチウラム系促進剤としては、例えばテトラメチルチウラムモノスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィド、テトラブチルチウラムジスルフィド、テトラキス(2-エチルヘキシル)チウラムジスルフィド、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド等の1種または2種以上が挙げられる。特にテトラメチルチウラムモノスルフィドが好ましい。
【0057】
上記2種の架橋促進剤の併用系において、架橋反応を促進する効果を十分に発現させることを考慮すると、チアゾール系促進剤の配合割合は、ゴムの総量100質量部あたり0.1質量部以上、1質量部以下であるのが好ましい。またチウラム系促進剤の配合割合は、ゴムの総量100質量部あたり0.1質量部以上、1質量部以下であるのが好ましい。
【0058】
〈導電剤〉
特に帯電ローラを形成するゴム組成物には、さらに導電剤としての、分子中にフルオロ基およびスルホニル基を有する陰イオンと、陽イオンとの塩(イオン塩)を配合してもよい。
導電剤としてイオン塩を配合することにより、ゴム組成物のイオン導電性をさらに向上して、帯電ローラのローラ抵抗値をより一層低下できる。
イオン塩を構成する、分子中にフルオロ基およびスルホニル基を有する陰イオンとしては、例えばフルオロアルキルスルホン酸イオン、ビス(フルオロアルキルスルホニル)イミドイオン、トリス(フルオロアルキルスルホニル)メチドイオン等の1種または2種以上が挙げられる。
【0059】
このうちフルオロアルキルスルホン酸イオンとしては、例えばCFSO、CSO等の1種または2種以上が挙げられる。
またビス(フルオロアルキルスルホニル)イミドイオンとしては、例えば(CFSO)、(CSO)、(CSO)(CFSO)N、(FSO)(CFSO)N、(C17SO)(CFSO)N、(CFCHOSO)、(CFCFCHOSO)、(HCFCFCHOSO)、[(CF)CHOSO]等の1種または2種以上が挙げられる。
【0060】
さらにトリス(フルオロアルキルスルホニル)メチドイオンとしては、例えば(CFSO)、(CFCHOSO)等の1種または2種以上が挙げられる。
また陽イオンとしては、例えばナトリウム、リチウム、カリウム等のアルカリ金属のイオン、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム等の第2族元素のイオン、遷移元素のイオン、両性元素の陽イオン、第4級アンモニウムイオン、イミダゾリウム陽イオン等の1種または2種以上が挙げられる。
【0061】
イオン塩としては、特に陽イオンとしてリチウムイオンを用いたリチウム塩、またはカリウムイオンを用いたカリウム塩が好ましい。
中でも、ゴム組成物のイオン導電性を向上して帯電ローラのローラ抵抗値を低下させる効果の点で、(CFSO)NLi〔リチウム・ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドLi−TFSI〕、および/または(CFSO)NK〔カリウム・ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、K−TFSI〕が好ましい。
【0062】
イオン塩の配合割合は、ゴムの総量100質量部あたり0.5質量部以上であるのが好ましく、7質量部以下であるのが好ましい。
〈その他〉
ゴム組成物には、さらに必要に応じて、各種の添加剤を配合してもよい。添加剤としては、例えば架橋促進助剤、受酸剤、充填剤、可塑剤、加工助剤、劣化防止剤等が挙げられる。
【0063】
このうち架橋促進助剤としては、例えば酸化亜鉛(亜鉛華)等の金属化合物;ステアリン酸、オレイン酸、綿実脂肪酸等の脂肪酸その他、従来公知の架橋促進助剤の1種または2種以上が挙げられる。
架橋促進助剤の配合割合は、個別に、ゴムの総量100質量部あたり0.1質量部以上であるのが好ましく、7質量部以下であるのが好ましい。
【0064】
受酸剤は、架橋時にエピクロルヒドリンゴムやCRから発生する塩素系ガスの、ローラ本体内への残留と、それによる架橋阻害や感光体の汚染等を防止するために機能する。
受酸剤としては、酸受容体として作用する種々の物質を用いることができるが、中でも分散性に優れたハイドロタルサイト類またはマグサラットが好ましく、特にハイドロタルサイト類が好ましい。
【0065】
また、ハイドロタルサイト類等を酸化マグネシウムや酸化カリウムと併用すると、より高い受酸効果を得ることができ、感光体の汚染をさらに良好に防止できる。
受酸剤の配合割合は、ゴムの総量100質量部あたり0.1質量部以上であるのが好ましく、7質量部以下であるのが好ましい。
充填剤としては、例えば酸化亜鉛、シリカ、カーボンブラック、クレー、タルク、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化アルミニウム等の1種または2種以上が挙げられる。
【0066】
充填剤を配合することにより、帯電ローラや現像ローラの機械的強度等を向上できる。
また、充填剤として導電性カーボンブラックを用いると、ローラ本体に電子導電性を付与できる。
導電性カーボンブラックとしては、例えばアセチレンブラック等が挙げられる。
導電性カーボンブラックの配合割合は、ゴムの総量100質量部あたり1質量部以上であるのが好ましく、10質量部以下であるのが好ましい。
【0067】
可塑剤としては、例えばジブチルフタレート、ジオクチルフタレート、トリクレジルホスフェート等の各種可塑剤や、極性ワックス等の各種ワックス等が挙げられる。また加工助剤としては、例えばステアリン酸亜鉛等の脂肪酸金属塩などが挙げられる。
可塑剤および/または加工助剤の配合割合は、ゴムの総量100質量部あたり3質量部以下であるのが好ましい。
【0068】
劣化防止剤としては、各種の老化防止剤や酸化防止剤等が挙げられる。
このうち老化防止剤は、帯電ローラや現像ローラのローラ抵抗値の環境依存性を低減するとともに、連続通電時のローラ抵抗値の上昇を抑制する働きをする。老化防止剤としては、例えばジエチルジチオカルバミン酸ニッケル、ジブチルジチオカルバミン酸ニッケル等が挙げられる。
【0069】
老化防止剤の配合割合は、ゴムの総量100質量部あたり0.1質量部以上であるのが好ましく、1質量部以下であるのが好ましい。
また添加剤としては、さらにスコーチ防止剤、滑剤、顔料、帯電防止剤、難燃剤、中和剤、造核剤、共架橋剤等の各種添加剤を、任意の割合で配合してもよい。
【0070】
《半導電性ローラ》
図1は、本発明の半導電性ローラの、実施の形態の一例を示す斜視図である。
図1を参照して、この例の半導電性ローラ1は、上記各成分を含むゴム組成物によって、非多孔質でかつ単層構造の筒状に形成されたローラ本体2を備えるとともに、当該ローラ本体2の中心の通孔3に、シャフト4が挿通されて固定されたものである。
シャフト4は、例えばアルミニウム、アルミニウム合金、ステンレス鋼等の金属によって一体に形成されている。
【0071】
シャフト4は、例えば導電性を有する接着剤を介して、ローラ本体2と電気的に接合されるとともに機械的に固定されるか、あるいは通孔3の内径よりも外径の大きいものを通孔3に圧入することで、ローラ本体2と電気的に接合されるとともに機械的に固定される。
ローラ本体2の外周面5には、図示していないが、酸化膜を形成してもよい。
【0072】
酸化膜を形成すると、当該酸化膜が誘電層として機能して、半導電性ローラ1の誘電正接を低減できる。また酸化膜が低摩擦層として機能するため、外周面5をより一層低摩擦化できる可能性がある。
ただし本発明では、ローラ本体2を形成するゴム組成物中に、前述したシリコーン系共重合体を配合することで、当該ローラ本体2の外周面5を良好に低摩擦化できるため、半導電性ローラの構造および製造工程をより一層簡略化するために、酸化膜は省略してもよい。
【0073】
半導電性ローラ1を製造するには、まず調製したゴム組成物を、押出機を用いて筒状に押出成形し、次いで所定の長さにカットして加硫缶内で加圧、加熱して架橋させる。
次いで、架橋させた筒状体を、オーブン等を用いて加熱して二次架橋させ、冷却したのち所定の外径となるように研磨してローラ本体2を形成する。
研磨方法としては、例えば乾式トラバース研磨等の種々の研磨方法が採用可能である。
【0074】
また、研磨工程の最後に鏡面研磨、あるいは湿式研磨をして仕上げてもよい。その場合は、外周面5の離型性を向上して、当該外周面5をより一層低摩擦化できる。また感光体等の汚染を有効に防止できる。
シャフト4は、筒状体のカット後から研磨後までの任意の時点で、通孔3に挿通して固定できる。
【0075】
ただしカット後、まず通孔3にシャフト4を挿通した状態で二次架橋、および研磨をするのが好ましい。これにより、二次架橋時の膨張収縮によるローラ本体2の反りや変形を抑制できる。また、シャフト4を中心として回転させながら研磨することで当該研磨の作業性を向上し、なおかつ外周面5のフレを抑制できる。
シャフト4は、先に説明したように、通孔3の内径よりも外径の大きいものを通孔3に圧入するか、あるいは導電性を有する熱硬化性接着剤を介して、二次架橋前の筒状体の通孔3に挿通すればよい。
【0076】
前者の場合は、シャフト4の圧入と同時に電気的な接合と機械的な固定が完了する。
また後者の場合は、オーブン中での加熱によって筒状体が二次架橋されるのと同時に熱硬化性接着剤が硬化して、当該シャフト4がローラ本体2に電気的に接合されるとともに、機械的に固定される。
非多孔質でかつ単層構造の半導電性ローラ1は、ローラ本体2のタイプAデュロメータ硬さが52以上であるのが好ましく、56以下であるのが好ましい。
【0077】
タイプAデュロメータ硬さがこの範囲未満では、ローラ本体2の圧縮永久ひずみが大きくなってヘタリを生じやすくなるおそれがある。
一方、タイプAデュロメータ硬さが上記の範囲を超える場合には、ローラ本体2が硬くなりすぎるため、例えば帯電ローラでは、直接に接触する感光体の表面が傷ついたりしやすくなるおそれがある。また現像ローラでは、トナーが粉砕されて形成画像がガサついたり、外添剤の微小粒子がトナー粒子中に埋没し、トナーの流動性が損なわれて形成画像の濃度ムラ等を生じたりしやすくなるおそれがある。
【0078】
これに対し、タイプAデュロメータ硬さを上記の範囲とすることにより、ローラ本体2の圧縮永久ひずみが小さくヘタリを生じにくい上、柔軟で、トナーを粉砕したり感光体の表面を傷つけたりしにくい半導電性ローラ1を得ることができる。
タイプAデュロメータ硬さを上記の範囲に調整するためには、前述した各成分の種類および配合割合を、前述した範囲で適宜変更すればよい。
【0079】
本発明の半導電性ローラ1は、例えばレーザープリンタ、静電式複写機、普通紙ファクシミリ装置、およびこれらの複合機等の、電子写真法を利用した画像形成装置において、帯電ローラや現像ローラとして好適に使用できるほか、例えば転写ローラ、クリーニングローラ等として用いることもできる。
【実施例】
【0080】
以下に本発明を、実施例、比較例に基づいてさらに説明するが、本発明の構成は、これら実施例、比較例によって限定されるものではない。
《帯電ローラ》
〈実施例1−1〉
(ゴム組成物の調製)
ゴムとしては、GECO〔日本ゼオン(株)製のHYDRIN(登録商標)T3108〕40質量部、SBR〔JSR(株)製のJSR(登録商標)1502、乳化重合法、非油展〕40質量部、CR〔昭和電工(株)製のショウプレン(登録商標)WRT、非油展〕10質量部、およびNBR〔日本ゼオン(株)製のNipol(登録商標)DN401LL、低ニトリルNBR、アクリロニトリル含量:18%、非油展〕10質量部を配合した。
【0081】
そして4種のゴムの総量100質量部を、バンバリミキサを用いて素練りしながら、シリコーン系共重合体〔東レ・ダウコーニング(株)製のBY27−220、樹脂:EVA、シリコーン含有量:60%〕7質量部と、下記の各成分とを配合して混練した。
【0082】
【表1】
【0083】
表1中の各成分は下記のとおり。また表中の質量部は、ゴムの総量100質量部あたりの質量部である。
イオン塩:カリウム・ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド〔三菱マテリアル電子化成(株)製のEF−N112、K−TFSI〕
架橋促進助剤:酸化亜鉛2種〔堺化学工業(株)製〕
受酸剤:ハイドロタルサイト類〔協和化学工業(株)製のDHT−4A(登録商標)−2〕
充填剤:導電性カーボンブラック〔電気化学工業(株)製のデンカブラック(登録商標)、アセチレンブラック、粒状〕
次いで混練を続けながら、下記の架橋成分を配合してさらに混練してゴム組成物を調製した。
【0084】
【表2】
【0085】
表2中の各成分は下記のとおり。また表中の質量部は、ゴムの総量100質量部あたりの質量部である。
チオウレア系架橋剤:エチレンチオウレア〔川口化学工業(株)製のアクセル(登録商標)22−S、2−メルカプトイミダゾリン〕
促進剤DT:1,3−ジ−o−トリルグアニジン〔三新化学工業(株)製のサンセラー(登録商標)DT、グアニジン系促進剤〕
硫黄系架橋剤:5%オイル入り硫黄〔鶴見化学工業(株)製〕
促進剤DM:ジ−2−ベンゾチアゾリルジスルフィド〔大内新興化学工業(株)製のノクセラー(登録商標)DM、チアゾール系促進剤〕
促進剤TS:テトラメチルチウラムモノスルフィド〔三新化学工業(株)製のサンセラーTS、チウラム系促進剤〕
(帯電ローラの製造)
調製したゴム組成物を押出機に供給して、外径φ11.0mm、内径φ5.0mmの筒状に押出成形し、架橋用の仮のシャフトに装着して加硫缶内で160℃×1時間架橋させた。
【0086】
次いで、架橋させた筒状体を、外周面に導電性の熱硬化性接着剤(ポリアミド系)を塗布した外径φ6.0mmの金属シャフトに装着し直して、オーブン中で160℃に加熱して当該金属シャフトに接着させた。
そして両端を整形し、次いで外周面を、円筒研磨機を用いてトラバース研磨したのち、湿式研磨により外径がφ9.50mm(公差0.05)になるように仕上げて、シャフトと一体化されたローラ本体を形成して、帯電ローラを製造した。
【0087】
〈実施例1−2〉
シリコーン系共重合体として、東レ・ダウコーニング(株)製のBY27−202H〔樹脂:LDPE、シリコーン含有量:60%〕を同量配合したこと以外は実施例1−1と同様にしてゴム組成物を調製し、帯電ローラを製造した。
〈実施例1−3〉
シリコーン系共重合体として、東レ・ダウコーニング(株)製のBY27−201〔樹脂:PP、シリコーン含有量:40%〕を同量配合したこと以外は実施例1−1と同様にしてゴム組成物を調製し、帯電ローラを製造した。
【0088】
〈実施例1−4〉
シリコーン系共重合体として、日信化学工業(株)製のシャリーヌR−170S〔シリコーン含有量:70%、球形、平均粒径30μm、一次粒子径:0.2〜0.3μm〕を同量配合したこと以外は実施例1−1と同様にしてゴム組成物を調製し、帯電ローラを製造した。
【0089】
〈実施例1−5、1−6、1−7〉
シリコーン系共重合体としての、東レ・ダウコーニング(株)製のBY27−202H〔樹脂:LDPE、シリコーン含有量:60%〕の配合割合を、ゴムの総量100質量部あたり1質量部(実施例1−5)、30質量部(実施例1−6)、40質量部(実施例1−7)としたこと以外は実施例1−2と同様にしてゴム組成物を調製し、帯電ローラを製造した。
【0090】
〈実施例1−8〉
ゴムとして、GECO〔日本ゼオン(株)製のHYDRIN T3108〕80質量部と、SBR〔JSR(株)製のJSR1502、乳化重合法、非油展〕20質量部の2種を用いたこと以外は実施例1−2と同様にしてゴム組成物を調製し、帯電ローラを製造した。
〈比較例1−1〉
シリコーン系共重合体を配合しなかったこと以外は実施例1−1と同様にしてゴム組成物を調製し、帯電ローラを製造した。
【0091】
〈比較例1−2〉
シリコーン系共重合体に代えて、黒鉛〔日本黒鉛工業(株)製のUP−5N、薄片状〕を同量配合したこと以外は実施例1−1と同様にしてゴム組成物を調製し、帯電ローラを製造した。
〈比較例1−3〉
黒鉛の配合割合を、ゴムの総量100質量部あたり30質量部としたと以外は比較例1−2と同様にしてゴム組成物を調製し、帯電ローラを製造した。
【0092】
〈比較例1−4〉
シリコーン系共重合体に代えて、二硫化モリブデン〔住鉱潤滑剤(株)製のモリパウダーPS〕を同量配合したこと以外は実施例1−1と同様にしてゴム組成物を調製し、帯電ローラを製造した。
〈比較例1−5〉
二硫化モリブデンの配合割合を、ゴムの総量100質量部あたり30質量部としたと以外は比較例1−4と同様にしてゴム組成物を調製し、帯電ローラを製造した。
【0093】
〈加工性評価〉
実施例、比較例において、ゴム組成物を押出成形して形成した筒状体の、外周面の押出肌を観察して、荒れが見られなかったものを良好(○)、荒れが見られたものを不良(×)として評価した。
〈実機試験〉
感光体と、当該感光体の表面に常時接触させて配設された帯電ローラとを備え、レーザープリンタの本体に着脱自在とされた新品のフォトコンダクタユニット〔レックスマーク インターナショナル社製〕の、純正の帯電ローラに代えて、実施例、比較例で製造した帯電ローラを組み込んだ。
【0094】
そして組み立てたフォトコンダクタユニットを、カラーレーザープリンタ〔レックスマーク インターナショナル社製のカラーレーザープリンタCS510de〕に装填して、30%濃度、300lpiの黒ベタの画像を、2枚/25秒間の速度で30000枚に亘って連続形成し、形成した30000枚の画像に、1枚でも帯電の不均一による縦スジ状や点状の濃度ムラが生じたものを不良(×)、全く生じなかったものを良好(○)と評価した。
【0095】
また連続画像形成後に帯電ローラを取り出し、外周面を目視によって観察して、トナーや外添剤の付着による白化が生じていたものを不良(×)、白化が生じていなかったものを良好(○)と評価した。
以上の結果を表3〜表5に示す。
【0096】
【表3】
【0097】
【表4】
【0098】
【表5】
【0099】
表3〜表5の実施例1−1〜1−8、比較例1−1〜1−5の結果より、従来の固体潤滑剤である黒鉛や二硫化モリブデンに代えて、ゴムと相溶する前述した少なくとも1種の樹脂を構成する繰り返し単位を分子中に含むシリコーン系共重合体を配合することによって、帯電ローラのローラ本体の、外周面の摩擦係数を大きく低減して、感光体上に残留したトナーや外添剤がローラ本体の外周面に付着し、蓄積されて、形成画像に、帯電の不均一による縦スジ状や点状の濃度ムラを生じたりするのを抑制できることが判った。
【0100】
また、特に実施例1−1、1−5〜1−7の結果より、ゴム組成物の良好な加工性を維持して上記の効果をより一層向上することを考慮すると、上記シリコーン系共重合体の配合割合は、ゴムの総量100質量部に対して1質量部以上であるのが好ましく、40質量部以下、特に30質量部以下であるの好ましいことが判った。
《現像ローラ》
〈実施例2−1〉
(ゴム組成物の調製)
ゴムとしては、GECO〔日本ゼオン(株)製のHYDRIN T3108〕40質量部、SBR〔JSR(株)製のJSR1502、乳化重合法、非油展〕40質量部、CR〔昭和電工(株)製のショウプレンWRT、非油展〕10質量部、およびNBR〔日本ゼオン(株)製のNipol DN401LL、低ニトリルNBR、アクリロニトリル含量:18%、非油展〕10質量部を配合した。
【0101】
そして4種のゴムの総量100質量部を、バンバリミキサを用いて素練りしながら、シリコーン系共重合体〔東レ・ダウコーニング(株)製のBY27−220、樹脂:EVA、シリコーン含有量:60%〕7質量部と、下記の各成分とを配合して混練した。
【0102】
【表6】
【0103】
表6中の各成分は下記のとおり。また表中の質量部は、ゴムの総量100質量部あたりの質量部である。
架橋促進助剤:酸化亜鉛2種〔堺化学工業(株)製〕
受酸剤:ハイドロタルサイト類〔協和化学工業(株)製のDHT−4A−2〕
充填剤:導電性カーボンブラック〔電気化学工業(株)製のデンカブラック、アセチレンブラック、粒状〕
次いで混練を続けながら、下記の架橋成分を配合してさらに混練してゴム組成物を調製した。
【0104】
【表7】
【0105】
表7中の各成分は下記のとおり。また表中の質量部は、ゴムの総量100質量部あたりの質量部である。
チオウレア系架橋剤:エチレンチオウレア〔川口化学工業(株)製のアクセル22−S、2−メルカプトイミダゾリン〕
促進剤DT:1,3−ジ−o−トリルグアニジン〔三新化学工業(株)製のサンセラーDT、グアニジン系促進剤〕
硫黄系架橋剤:5%オイル入り硫黄〔鶴見化学工業(株)製〕
促進剤DM:ジ−2−ベンゾチアゾリルジスルフィド〔大内新興化学工業(株)製のノクセラーDM、チアゾール系促進剤〕
促進剤TS:テトラメチルチウラムモノスルフィド〔三新化学工業(株)製のサンセラーTS、チウラム系促進剤〕
(現像ローラの製造)
調製したゴム組成物を押出機に供給して、外径φ20.0mm、内径φ7.0mmの筒状に押出成形し、架橋用の仮のシャフトに装着して加硫缶内で160℃×1時間架橋させた。
【0106】
次いで、架橋させた筒状体を、外周面に導電性の熱硬化性接着剤(ポリアミド系)を塗布した外径φ7.5mmの金属シャフトに装着し直して、オーブン中で160℃に加熱して当該金属シャフトに接着させた。
そして両端を整形し、次いで外周面を、円筒研磨機を用いてトラバース研磨したのち、鏡面研磨により外径がφ20.00mm(公差0.05)になるように仕上げて、シャフトと一体化されたローラ本体を形成して、現像ローラを製造した。
【0107】
〈実施例2−2〉
シリコーン系共重合体として、東レ・ダウコーニング(株)製のBY27−202H〔樹脂:LDPE、シリコーン含有量:60%〕を同量配合したこと以外は実施例2−1と同様にしてゴム組成物を調製し、現像ローラを製造した。
〈実施例2−3〉
シリコーン系共重合体として、東レ・ダウコーニング(株)製のBY27−201〔樹脂:PP、シリコーン含有量:40%〕を同量配合したこと以外は実施例2−1と同様にしてゴム組成物を調製し、現像ローラを製造した。
【0108】
〈実施例2−4〉
シリコーン系共重合体として、日信化学工業(株)製のシャリーヌR−170S〔シリコーン含有量:70%、球形、平均粒径30μm、一次粒子径:0.2〜0.3μm〕を同量配合したこと以外は実施例2−1と同様にしてゴム組成物を調製し、現像ローラを製造した。
【0109】
〈実施例2−5、2−6、2−7〉
シリコーン系共重合体としての、東レ・ダウコーニング(株)製のBY27−202H〔樹脂:LDPE、シリコーン含有量:60%〕の配合割合を、ゴムの総量100質量部あたり1質量部(実施例2−5)、30質量部(実施例2−6)、40質量部(実施例2−7)としたこと以外は実施例2−2と同様にしてゴム組成物を調製し、現像ローラを製造した。
【0110】
〈実施例2−8〉
ゴムとして、GECO〔日本ゼオン(株)製のHYDRIN T3108〕80質量部と、SBR〔JSR(株)製のJSR1502、乳化重合法、非油展〕20質量部の2種を用いたこと以外は実施例2−2と同様にしてゴム組成物を調製し、現像ローラを製造した。
〈比較例2−1〉
シリコーン系共重合体を配合しなかったこと以外は実施例2−1と同様にしてゴム組成物を調製し、現像ローラを製造した。
【0111】
〈比較例2−2〉
シリコーン系共重合体に代えて、黒鉛〔日本黒鉛工業(株)製のUP−5N、薄片状〕を同量配合したこと以外は実施例2−1と同様にしてゴム組成物を調製し、現像ローラを製造した。
〈比較例2−3〉
黒鉛の配合割合を、ゴムの総量100質量部あたり30質量部としたと以外は比較例2−2と同様にしてゴム組成物を調製し、現像ローラを製造した。
【0112】
〈比較例2−4〉
シリコーン系共重合体に代えて、二硫化モリブデン〔住鉱潤滑剤(株)製のモリパウダーPS〕を同量配合したこと以外は実施例2−1と同様にしてゴム組成物を調製し、現像ローラを製造した。
〈比較例2−5〉
二硫化モリブデンの配合割合を、ゴムの総量100質量部あたり30質量部としたと以外は比較例2−4と同様にしてゴム組成物を調製し、現像ローラを製造した。
【0113】
〈加工性評価〉
実施例、比較例において、ゴム組成物を押出成形して形成した筒状体の、外周面の押出肌を観察して、荒れが見られなかったものを良好(○)、荒れが見られたものを不良(×)として評価した。
〈実機試験〉
トナーを収容したトナー容器、感光体、および感光体と接触させた現像ローラを備え、レーザープリンタの本体に着脱自在とされた新品のカートリッジ〔ブラザー工業(株)製〕の、純正の現像ローラに代えて、実施例、比較例で製造した現像ローラを組み込んだ。
【0114】
そして組み立てたカートリッジをレーザープリンタ〔ブラザー工業(株)製のHL−6180D〕に装填して、温度23±1℃、相対湿度55±1%の環境下、普通紙に5%濃度の画像を6500枚連続して形成し、形成した6500枚の画像に、1枚でもガサつき、濃度ムラ、または縦スジ状の濃度ムラの不良が見られたものを不良(×)、全く見られなかったものを良好(○)と評価した。
【0115】
また6500枚目の形成画像の、黒ベタ部の濃度を、反射濃度計〔エックスライト(X−Rite)社製のモデル939〕を用いて測定して、下記の基準で濃度を評価した。
○:濃度は1.3以上であった。良好。
△:濃度は1.2以上、1.3未満であった。中間レベル。
×:濃度は1.2未満であった。不良。
【0116】
さらに、6500枚の画像形成後にカートリッジを観察して、下記の基準でトナーの漏れを評価した。
○:トナーの漏れは見られなかった。良好。
×:トナーの漏れが見られた。不良。
以上の結果を表8〜表10に示す。
【0117】
【表8】
【0118】
【表9】
【0119】
【表10】
【0120】
表8〜表10の実施例2−1〜2−8、比較例2−1〜2−5の結果より、従来の固体潤滑剤である黒鉛や二硫化モリブデンに代えて、ゴムと相溶する前述した少なくとも1種の樹脂を構成する繰り返し単位を分子中に含むシリコーン系共重合体を配合することによって、現像ローラのローラ本体の、外周面の摩擦係数を大きく低減して、形成画像にガサつき、濃度ムラ、縦スジ状の濃度ムラ等が生じるのを抑制できるとともに、トナーの漏れが発生するのを抑制できることが判った。
【0121】
また、特に実施例2−1、2−5〜2−7の結果より、ゴム組成物の良好な加工性を維持して上記の効果をより一層向上するとともに、形成画像の濃度の低下を抑制することを考慮すると、上記シリコーン系共重合体の配合割合は、ゴムの総量100質量部に対して1質量部以上であるのが好ましく、40質量部以下、特に30質量部以下であるの好ましいことが判った。
【符号の説明】
【0122】
1 半導電性ローラ
2 ローラ本体
3 通孔
4 シャフト
5 外周面
図1