(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記弁部の外周側に、前記作動流体に接し、法線が前記付勢部による付勢方向と反対方向の成分を有する受圧面が設けられている請求項1から3の何れか一項に記載のバルブ。
前記連通部が前記弁体の回転軸芯に対する周方向に沿って複数設けられ、夫々の前記連通部は前記回転軸芯から離間するほど前記周方向における一方側に偏位する状態に延出している請求項1から4の何れか一項に記載のバルブ。
前記開口が、前記弁体の回転軸芯に対する周方向に沿って複数設けられ、夫々の前記開口が前記回転軸芯から離間するほど前記周方向における一方側に偏位する状態に延出している請求項1から6の何れか一項に記載のバルブ。
前記付勢部がコイル状のバネであり、前記弁体と前記コイル状のバネとの間にこれらと相対回転可能なリング部材が設けられている請求項1から7の何れか一項に記載のバルブ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に示されるような振動ダンパも含めて、作動流体の流量を制御可能な弁体を備えた振動ダンパにおいては、減衰機能を改善するためには弁体の動作応答性を高める必要がある。ただし、特許文献1に開示された弁体をはじめ通常の減衰機構に設けられた弁体では、弁体の外周面が当該弁体を保持するケーシングの内面と摺動するものが多い。このため両者の間に一定の摩擦力が発生し、特に、静摩擦力が大きい場合には、弁体の初動が遅れがちとなり緩衝装置の動作が緩慢なものとなる。
【0008】
このような不都合を解消するためには、弁体の外周面とケーシングの内面との隙間を拡張することも考えられる。しかし、作動流体の漏洩を防止するためには隙間寸法を拡大するにも一定の限界がある。そのため、弁体の動作応答性を改善するには、部品の加工精度を高めたり、使用温度が変化しても熱膨張や変形が生じ難い材料を用いたりするなど、製品の高コスト化を招いてしまう。
【0009】
このような問題に鑑み、従来から、動作応答性に優れた圧力減衰機能を備え低コストに構成されるバルブが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(特徴構成)
本発明に係るバルブの特徴構成は、
作動流体を収容するケースと、
前記ケースの内部を第1流体室と第2流体室とに仕切り、前記第2流体室に連通する円筒空間を内部に有する有底筒状のハウジングと、
前記円筒空間に配置され、前記ハウジングの一部に設けた弁座に当接する弁部を有し、前記弁部が前記弁座に当接した閉じ位置を端点として当該閉じ位置から前記ハウジングの底側に前記円筒空間の内面に沿って往復移動する弁体と、
前記ハウジングに設けられ、前記弁体を前記閉じ位置に向けて付勢する付勢部とを備え、
前記ハウジングの壁部に、前記弁部および前記弁座の当接位置と前記第1流体室とを連通する開口が設けられるとともに、
前記弁部および前記弁座の少なくとも何れか一方に、前記弁体が前記閉じ位置にある状態で前記第1流体室と前記円筒空間とを連通する連通部が形成され、
前記弁体の外面に、前記連通部を介して流動する作動流体によって前記弁体を回転させる回転駆動部が設けられている点にある。
【0011】
(効果)
本構成のバルブは、ケースに設けたハウジングの内部を作動流体が流動する際に、ハウジングの内部に設けた弁体の動作によって、第1流体室と第2流体室とに亘る作動流体の流量を制御するものである。
【0012】
弁体は、ハウジングの内部で所定の距離に亘って移動可能であり、常時は、付勢部によって開口を絞る閉じ位置にある。この状態で、例えば第2流体室の圧力が高まると、弁体が当該作動流体に押されて弁体が開き動作し、開口を介して第2流体室から第1流体室に作動流体が流動する。このとき作動流体の流量が弁部と弁座との隙間の開口面積に応じて規制されバルブの減衰機能が発揮される。
【0013】
本構成のバルブでは作動流体の流れによって弁体が回転する。これにより、ハウジングの円筒空間の内面と弁体との摩擦を低減することができる。このため、特に弁体の往復移動の開始や反転移動が俊敏なものとなり、作動流体の圧力変動に対する減衰応答性が極めて良好なものとなる。
【0014】
また、弁体が回転することで弁体の姿勢が安定する。よって、弁体が円筒空間の内面を往復移動する際に弁体の角部が円筒空間の内面に噛み込むことがなく、弁体の往復移動が円滑なものとなる。
【0015】
(特徴構成)
本発明に係るバルブにあっては、前記回転駆動部が前記弁部の内周側に設けられた第1羽根部を備えていると好都合である。
【0016】
(効果)
第1羽根部が弁部の内周側に設けられている場合、この第1羽根部は第2流体室の作動流体に接している。第2流体室の圧力が高まり、第2流体室の作動流体が連通部を介して第1流体室に流出する際には、作動流体は弁部の内周側を必ず通過する。よって、第1羽根部は作動流体の運動エネルギーを受けて弁体を回転させることとなる。このように本構成であれば、特に、第2流体室の圧力が高まった場合に弁体の動作開始が機敏なものとなる。
【0017】
(特徴構成)
本発明に係るバルブにおいては、前記回転駆動部が前記弁部の外周側に設けられた第2羽根部を備えるものであっても良い。
【0018】
(効果)
第2羽根部が弁部の外周側に設けられている場合、この第2羽根部は第1流体室の作動流体に接している。第1流体室の圧力が高まり、第1流体室の作動流体が連通部を介して第2流体室に流出する際には、作動流体は弁部の外周側を必ず通過する。よって、第2羽根部は作動流体の運動エネルギーを受けて弁体を回転させることとなる。このように本構成であれば、特に、第1流体室の圧力が高まった場合に、弁体の動作開始が機敏なものとなる。
【0019】
(特徴構成)
本発明に係るバルブにおいては、前記弁部の外周側に、前記作動流体に接し、法線が前記付勢部による付勢方向と反対方向の成分を有する受圧面が設けられていると好都合である。
【0020】
(効果)
前述の第2流体室の作動流体が弁体の端面を押圧する場合には、作動流体が圧力を及ぼす方向と弁体が動く方向とが一致するため弁体は開き動作し易い。しかし、第1流体室の内圧が高まった場合にも弁体を開き動作させるためには、弁体が第2流体室から第1流体室に向けて動くよう、弁体における作動流体が圧力を及ぼす部位の形状に工夫が必要である。そこで、本構成では、弁部の外周側に、作動流体に接し、法線が付勢部による付勢方向と反対方向の成分を有する受圧面を設けている。これにより、第1流体室の作動流体の圧力によって弁体が開き動作し易くなり、良好な減衰機能を発揮することができる。
【0021】
(特徴構成)
本発明に係るバルブとしては、前記連通部が前記弁体の回転軸芯に対する周方向に沿って複数設けられ、夫々の前記連通部は、前記回転軸芯から離間するほど前記周方向における一方側に偏位する状態に延出したものであれば好都合である。
【0022】
(効果)
連通部は第1流体室と第2流体室との境界位置にあり、特に、弁体が閉じ位置にある場合には、双方の流体室の圧力差に応じて作動流体は必ず連通部を流動する。本構成では、連通部を流動する作動流体によって弁体の回転を促進させるように、連通部の延出方向を回転軸芯から離間するほど周方向における一方側に偏位させている。
【0023】
仮に、連通部が弁体の弁部に設けられている場合には、連通部を流通する作動流体の反力によって弁体が回転する。一方、弁座に連通部が設けられている場合でも、連通部を流通する作動流体が弁体に設けられた第1羽根部あるいは第2羽根部に作用して弁体を回転させることができる。
【0024】
(特徴構成)
本発明に係るバルブにおいては、前記連通部を前記弁部に設けたスリットで構成することができる。
【0025】
(効果)
連通部を弁体の弁部に設けることで、連通部を流動する作動流体が弁体に直接作用するから、弁体の回転がより促進されることとなる。また、連通部がスリットであれば、例えば、弁部の端面に切欠きを加工すればよく、このような加工は極めて容易である。さらに、溝幅の設定も自在であり、回転効率の良い弁体を合理的に構成することができる。
【0026】
(特徴構成)
本発明に係るバルブにおいては、前記開口が、前記弁体の回転軸芯に対する周方向に沿って複数設けられ、夫々の前記開口が前記回転軸芯から離間するほど前記周方向における一方側に偏位する状態に延出していると好都合である。
【0027】
(効果)
当該開口は、第1流体室と円筒空間とを連通し、作動流体の円滑な流れを形成するために、弁部と弁座との当接位置の近くに形成される。当該開口を流通する作動流体は適度な流速を維持しているため、この作動流体の運動エネルギーを効率よく弁体の回転に利用できれば好都合である。そこで本構成のごとく、開口の延出状態を弁体の回転軸芯から離間するほど周方向における一方側に偏位したものとしている。
【0028】
これにより、例えば第1流体室から開口を経て弁体に衝突する作動流体は、弁体に対して周方向の速度成分を維持しつつ衝突する。よって、弁体は速やかに回転し始めることとなり、弁部の開閉動作も円滑なものとなって減衰応答性のよいバルブを得ることができる。
【0029】
(特徴構成)
本発明に係るバルブにおいては、前記付勢部がコイル状のバネであり、前記弁体と前記コイル状のバネとの間にこれらと相対回転可能なリング部材が設けられていると好都合である。
【0030】
(効果)
弁体は回転する構成である一方、弁体を弁座の側に付勢するコイル状のバネは必ずしもハウジングに対して回転可能に取り付けられるものではなく、むしろハウジングに対しては固定して設けられるのが簡便である。しかしこの場合、コイル状のバネと弁体との間に摩擦が生じ、弁体の回転が損なわれる。そこで、本構成の如くリング部材を設けることでコイル状のバネと弁体との間の摩擦力が軽減され、弁体の回転抵抗が低減化される。これにより弁体の動作がさらに機敏なものとなる。
【発明を実施するための形態】
【0032】
〔第1実施形態〕
(概要)
本実施形態に係るバルブGVは、自動車の緩衝器等に用いられるものであり、例えばケースCの内面C1に対してハウジングHが摺動し、ハウジングHの内部を流通する作動流体の流量を変更することでハウジングHの移動速度を調節する。
【0033】
ハウジングHの内部を流通する作動流体は、ハウジングHの内部で往復移動する弁体Vによって流量制御され、バルブGVの減衰応答性はこの弁体Vの動作特性に大きく影響を受ける。本発明は弁体Vの動作特性を改善するために、弁体VがハウジングHの内部で回転できるように構成したものである。以下、本実施形態に係るバルブGVの第1実施形態について
図1乃至
図4を参照しながら説明する。
【0034】
本実施形態のバルブGVは、作動流体を収容するケースCと、このケースCの内部を第1流体室1と第2流体室2とに仕切るハウジングHとを備えている。ハウジングHは有底筒状であり、内部に第2流体室2に連通する円筒空間を備えている。ハウジングHの内部には第1弁体V1が配置される。第1弁体V1は、ハウジングHの一部に設けた第1弁座H11に当接する第1弁部V11を有し、第1弁部V11が第1弁座H11に当接した閉じ位置を端点として当該閉じ位置からハウジングHの底側にハウジングHの内面に沿って往復移動する。さらにハウジングHの内部のうち第1弁体V1の裏側の空間には、第1弁体V1を閉じ位置に向けて付勢する付勢部Sとしての第1バネS1が設けてある。
【0035】
ハウジングHの壁部H12には、第1弁部V11および第1弁座H11の当接位置と第1流体室1とを連通する開口Pである第1ポートP1が設けてある。第1弁部V11と第1弁座H11とは第1ポートP1に近い位置に設けてあり、第1弁体V1が開き動作した際には、第1流体室1と第2流体室2との間で作動流体が円滑に流れるように構成してある。第1弁部V11および第1弁座H11のうち少なくとも何れか一方には、第1弁体V1が閉じ位置にある状態で第1流体室1とハウジングHの内部とを連通するように連通部7が形成されている。さらに、第1弁体V1の外面には、連通部7を介して流動する作動流体によって第1弁体V1を回転させる回転駆動部8が設けられている。以下、各構成につきさらに詳細に説明する。
【0036】
(ケース・ハウジング)
図1に示すように、ケースCは例えば円筒形状である。このケースCの内部には、ケースCの内面C1に当接しつつ、ケースCの軸芯Xの方向に往復移動可能なハウジングHが設けられている。ハウジングHはロッド6の先端に取り付けられており、例えば、ロッド6の他方の端部が車両のフレームに接続され、ケースCの端部が車輪のサスペンションに接続される。ハウジングHにより、ケースCの内部空間が第1流体室1と第2流体室2とに仕切られる。
【0037】
ハウジングHは、ケースCの軸芯Xの方向に沿って隣接する第1ハウジングH1と第2ハウジングH2とを備えている。第1ハウジングH1には、第1弁体V1など作動流体に直に触れる部材等が設けられている。一方、第2ハウジングH2には、第1弁体V1の動作範囲を制御するアクチュエータ4などが設けられている。第1ハウジングH1と第2ハウジングH2とは螺合や嵌合により互いに連結されている。
【0038】
(第1ハウジング)
第1ハウジングH1には、第1流体室1と第2流体室2とを連通する開口Pとしての第1ポートP1が設けられている。合わせて、第1ハウジングH1の内部には、第1流体室1と第2流体室2とに亘って流通する作動流体の流量を調節してハウジングHの動作速度を制御する制御機構5が備えられている。
【0039】
第1ハウジングH1の内部には略筒状のリテーナRが第1ハウジングH1に対して二重構造となるように設けられている。このリテーナRには弁体Vの一つとして後述する第2弁体V2が収納される。また、第1ハウジングH1とリテーナRとの間の空間には後述する第1弁体V1が収納される。第1ハウジングH1とリテーナRとの間の空間は第1パイロット室PR1が形成され、第1オリフィスOR1を介して第1流体室1と連通する。この第1オリフィスOR1は所定の開口面積に設定されており、ここを通過する作動流体の流量が所定量に制限される。
図1に示す如く、例えば第1オリフィスOR1は第1ハウジングH1の円筒状の壁部H12に径方向に向けて開口している。
【0040】
第1ポートP1は、
図1および
図4に示すように、第2弁体V2の回転軸芯X(ケースCの軸芯Xと同軸芯であるため以降においては「回転軸芯X」を優先的に使用する)に対する周方向に沿って複数設けられている。第1ポートP1は、第1流体室1と第1ハウジングH1の内部とを連通し、作動流体の円滑な流れを形成するために、第1弁部V11と第1弁座H11との当接位置の近くに形成される。夫々の第1ポートP1は回転軸芯Xから離間するほど周方向における一方側に偏位する状態に延出している。
【0041】
これにより、例えば第1流体室1から第1ポートP1を経て第1弁体V1に衝突する作動流体は、第1弁体V1に対して周方向の速度成分を維持しつつ衝突する。この作動流体は適度な流速を維持しているため、この作動流体の運動エネルギーが第1弁体V1に伝達され、第1弁体V1を回転させることができる。
【0042】
第1弁座H11は、
図1に示すように、第1ハウジングH1の内部であって第1ポートP1に対して径方向内側の位置に設けておく。そのために、第1ハウジングH1の内面に筒状の弁座部材H13を螺合などにより設けておく。第1ハウジングH1に対する弁座部材H13の螺合位置を調節することで第1ポートP1に対する第1弁座H11の位置を設定することができる。この弁座部材H13の先端部に環状の第1弁座H11が形成される。
【0043】
第1弁座H11は、第1弁体V1の第1弁部V11と当接離間を繰り返すうえ第1弁部V11が相対回転する。よって、第1弁座H11は、耐摩耗性に優れた材料や摩擦係数の小さな材料で構成するのが好ましい。例えば、硬質の一般鋼材やステンレス鋼材の他、硬質の樹脂材料も使用可能である。尚、これらの材料の上にポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等の摩擦係数の低い部材を取り付けることもできる。
【0044】
(リテーナ)
リテーナRの内部には、リテーナRの内部空間を二つに仕切る筒状の第2弁体V2が配置されている。第2弁体V2は、略円筒形状の本体部V21と、この本体部V21から径外方向に張り出した環状のフランジ部V22とを備えている。第2弁体V2は、フランジ部V22をリテーナRの内面に摺動させながら回転軸芯Xの方向に沿って所定の距離だけ往復移動可能である。
【0045】
リテーナRの側壁には、第2ハウジングH2に近い側から第2ポートP2と第3ポートP3とが回転軸芯Xの方向に沿って離間した状態で設けられている。リテーナRの両端部のうち回転軸芯Xの方向において後述するソレノイド4aの側には、後述するプランジャ3aが挿通されてプランジャ3aのガイドとなるガイド穴R1が形成されている。一方、これとは反対側の端部には回転軸芯Xの方向に貫通する底穴R2が形成されている。底穴R2には、第2弁体V2の本体部V21の端部が当接する環状の第2弁座R3が形成されている。
【0046】
これらリテーナRと第1ハウジングH1との間の空間には、第1パイロット室PR1が形成される。第1パイロット室PR1は、第1オリフィスOR1を介して第1流体室1と連通する。一方、リテーナRの周壁に設けられた第2ポートP2および第3ポートP3は、リテーナRの内部の第3パイロット室PR3と第1パイロット室PR1とを連通する。さらに、リテーナRの底部に設けられた底穴R2は、リテーナRの外部に設けられた第2パイロット室PR2に連通している。
【0047】
(アクチュエータ)
リテーナRのうち、第2弁座R3の周囲には例えばコイル状の第2バネS2が設けられており、第2弁体V2のフランジ部V22をプランジャ3aの側に常に付勢している。このプランジャ3aは、第2ハウジングH2に設けられたアクチュエータ4としての例えばソレノイド4aによって駆動され、回転軸芯Xに沿う方向の第2弁体V2の位置を変更して作動流体の流量を調節する調節機構3を構成するものである。これにより、第2弁体V2は第2弁座R3から離れる側に常に付勢される。第2弁体V2のうち回転軸芯Xの方向に沿った他方の端部はプランジャ3aの先端に当接している。第2バネS2によって付勢される第2弁体V2はプランジャ3aの端部に常に当接しており、回転軸芯Xの方向に沿ったプランジャ3aの位置変更に応じて第2弁体V2の位置も移動する。
【0048】
プランジャ3aがソレノイド4aの側に引退するほど、第2弁体V2と第2弁座R3との間隔が広がり、第1パイロット室PR1と、リテーナRの底穴R2を介して連通する第2パイロット室PR2とに亘って流通する作動流体の流量が増大する。一方、プランジャ3aが第3パイロット室PR3に押し出されると第2弁体V2の他方の端部が第2弁座R3に当接する。ただし、第2弁体V2とプランジャ3aとの少なくとも何れか一方に、径方向に延出する第2スリットV25が形成されており、一定量の作動流体が流通できるように構成してある。本実施形態では、第2スリットV25は第2弁体V2に形成してある。第2弁体V2がこの位置にある場合、作動流体の流通量が最少となり、ハウジングHの摺動を減衰する効果が最大となる。
【0049】
本実施形態では、プランジャ3aが棒状部材3bを備えている。このような棒状部材3bは、ソレノイド4aから所定の距離だけ離れた位置にある第2弁体V2にソレノイド4aの駆動効果を伝え易い。棒状部材3bが主に回転軸芯Xの方向に沿った駆動力の伝達を行う場合、棒状部材3bの外径寸法はソレノイド4aや第2弁体V2の外径寸法に比べて小さく構成することができる。つまり、第2ハウジングH2の内部において棒状部材3bの周囲は、棒状部材3bのガイド部として利用されるものの棒状部材3bが比較的細いため他のスペースの確保が容易である。よって、本構成であれば、後述する逆止弁V3の設置スペースが確保し易くなり、よりコンパクトなバルブGVを得易くなる。
【0050】
(第2弁体)
図1および
図2に示すように、第2弁体V2の本体部V21の一方の端部には円錐部V23を形成してある。プランジャ3aが第3パイロット室PR3に向けて所定長さだけ突出している状態では、第2弁体V2は第2バネS2によってプランジャ3aに押し付けられ、第2弁体V2と第2弁座R3との間には一定間隔の隙間が形成される。
【0051】
円錐部V23を形成しておくことで、ハウジングHが第2流体室2の側に押され、第2パイロット室PR2の内圧が第3パイロット室PR3の内圧よりも高くなった場合、円錐部V23の内面に作動流体の圧力が作用して第2弁体V2はプランジャ3aに押し付けられる。一方、ハウジングHが第1流体室1の側に引かれ、第3パイロット室PR3の内圧が第2パイロット室PR2の内圧よりも高くなった場合、円錐部V23の外面に作動流体の圧力が作用して第2弁体V2は第2弁座R3に押し付けられる。このように、円錐部V23の内面と外面とを所定形状として第2弁体V2が何れかの側に押し付けられる構成とすることで、ハウジングHが押される場合と引かれる場合とで夫々個別の受圧面積を設定することができ最適な減衰特性を得ることができる。
【0052】
(逆止弁)
第1ハウジングH1の底部には逆止弁V3が設けられている。第1ハウジングH1の底部のうち第1パイロット室PR1に面する位置には、回転軸芯Xの方向に貫通する第4ポートP4が回転軸芯Xを中心にして周方向に分散配置されている。第4ポートP4は、回転軸芯Xの方向に対向する第1ハウジングH1と第2ハウジングH2との間に形成された環状空間V31に連通している。この環状空間V31はさらにここから第2ハウジングH2の壁部H22を径方向に貫通した第5ポートP5を介して第1流体室1に連通している。第5ポートP5も第2ハウジングH2の壁部H22に対して周方向に分散して配置されている。
【0053】
環状空間V31の内部であって、第4ポートP4が開口する位置には、これら第4ポートP4を塞ぐよう例えば薄板状の逆止弁V3が設けられている。逆止弁V3は、自身が弾性を有する例えば環状の材料で構成されており、環状の固定部材V32を介して第1ハウジングH1と第2ハウジングH2との間に固定される。
【0054】
(第1弁体)
本実施形態の第1弁体V1は作動流体の流れによって回転する。これにより、第1ハウジングH1の内面と第1弁体V1との摩擦を低減し、特に第1弁体V1の往復移動の開始や反転移動を俊敏なものとし、作動流体の圧力変動に対するバルブGVの減衰応答性を高めようとするものである。
【0055】
また、第1弁体V1が回転することで第1弁体V1の姿勢が安定する。よって、第1弁体V1が第1ハウジングH1の内面を往復移動する際に第1弁体V1の角部が第1ハウジングH1の内面に噛み込むことがなく、第1弁体V1の往復移動が円滑なものとなる。
【0056】
具体的には、
図1および
図2に示すように、第1弁体V1は第1ハウジングH1の壁部H12とリテーナRとの間に設けられる。第1弁体V1は略カップ形状であり、円筒状の外周面が壁部H12の内面に案内されて回転する。よって、第1弁体V1の中心位置に特段の軸部等は備えていない。第1弁体V1は、特に固定の第1ハウジングH1の内部で回転軸芯Xに沿って所定の範囲を往復移動する。これにより、第1弁座H11との隙間を増減させ、第1流体室1と第2流体室2とに亘る作動流体の流量を変更して減衰効果を調節する。後述する如く、第1弁体V1は、ケースCに対するハウジングHの移動速度が速く第1パイロット室PR1と第2パイロット室PR2との内圧差が所定値以上に大きくなった際に移動し、第1流体室1と第2流体室2とに亘る作動流体の流量を増大させる。
【0057】
第1ハウジングH1の底面(
図1では上方)と第1弁体V1の端面V15との間には付勢部Sとしてのコイル状の第1バネS1が設けられており、第1弁体V1は第1弁座H11の側に常に付勢される。第1バネS1と第1弁体V1の端面V15との間には、両者の摩擦を軽減するリング部材9を設けておく。
【0058】
第1弁体V1は回転する構成である一方、第1弁体V1を第1弁座H11の側に付勢する第1バネS1は、必ずしも第1ハウジングH1に対して相対回転可能に設けられるものではない。むしろ、第1ハウジングH1に対して固定して設けるのが簡便である。しかしこの場合、第1バネS1と第1弁体V1との間に摩擦が生じ、第1弁体V1の回転が損なわれる。そこで、本構成の如くリング部材9を設けることで第1バネS1と第1弁体V1との間の摩擦力が軽減され、第1弁体V1の回転抵抗が低減化される。これにより第1弁体V1の動作がさらに機敏なものとなる。
【0059】
このリング部材9としては、通常の耐摩耗性を有する金属材料や、摩擦係数の小さなPTFE等で形成されたワッシャなどを利用すると良い。
【0060】
第1弁体V1の底部のうち、第2流体室2の側に向く面の外縁部には、第1弁部V11として環状の立壁部が設けられる。第1弁部V11には連通部7としての第1スリットV14が、第1弁部V11の周方向に沿って分散配置されている。これにより、
図1に示すように、第1弁部V11が第1弁座H11に当接した状態でも第1流体室1と第2流体室2とに亘って作動流体が僅かに流通することができる。後述するように、これら第1弁座H11と第1弁部V11との距離に応じて、第1流体室1と第2流体室2とに亘って流通する作動流体の流量が変更され減衰効果が調節される。
【0061】
図1および
図4に示すように、第1スリットV14は第1流体室1と第2流体室2との境界位置にあり、第1弁体V1の回転軸芯Xに対する周方向に沿って複数設けてある。第1弁体V1が閉じ位置にある場合には、第1流体室1と第2流体室2との圧力差に応じて作動流体は必ず第1スリットV14を流動する。本構成では、第1スリットV14を流動する作動流体によって第1弁体V1の回転を促進させるように、第1スリットV14の延出方向を回転軸芯Xから離間するほど周方向の一方側に偏位させ、略渦巻状に形成してある。
【0062】
このように第1スリットV14が第1弁部V11に設けられている場合には、第1スリットV14を流通する作動流体の反力によって第1弁体V1が回転し易いものとなる。ただし、第1スリットV14を流通する作動流体が第1弁体V1に作用して第1弁体V1を回転させ得る限り、第1スリットV14は第1弁座H11に設けられていてもよい。
【0063】
また、連通部7としてこのような第1スリットV14で構成するには、例えば、
図3および
図4に示すように第1弁部V11の端面に切欠きを加工すればよく、このような加工は極めて容易である。さらに、第1スリットV14の幅の設定も自在であり、回転効率の良い第1弁体V1を合理的に構成することができる。
【0064】
(第1弁体の第1羽根部)
図3に示すように、第1弁体V1には、回転駆動部8としての第1羽根部81を設けてある。第1羽根部81は、第1弁部V11の内周側に設けてあり、第2流体室2の側から回転軸芯Xに沿って見たとき、法線方向Fが回転軸芯Xに対して傾斜しつつ回転軸芯Xを中心とした周方向成分を持つ傾斜面を複数備えている。例えば、
図3に示すように、船等のスクリュー状のものや、ターボチャージャーのタービンブレードのような形状に構成することができる。
【0065】
第1羽根部81が第1弁体V1の外面のうち、第1弁部V11の内周側に形成されていると、作動流体が回転軸芯Xに沿って第1弁体V1に衝突する場合に有利である。つまり、主に第2流体室2の圧力が高まった場合に、作動流体の流れを回転軸芯Xに沿った方向から径方向に変更しつつ第1弁体V1を回転させる。
【0066】
図1乃至
図3に示すように、第1羽根部81の表面を窪ませておき、さらに第1弁体V1の底部の外面V16にも凹みを形成しておく。これにより、回転軸芯Xの方向に第1羽根部81に衝突した作動流体を径方向に円滑に誘導することができる。
【0067】
第1弁体V1を回転させることで、第1ハウジングH1の壁部H12の内面と第1弁体V1の外周面との摩擦が低減される。つまり、互いに相対移動していない状態で作用する静止摩擦力に比べて、相対移動しているときの動摩擦力は小さい。そのため、特に第1弁体V1が開き移動を開始する際や動作方向を反転する際の動作特性が俊敏なものとなり、作動流体の圧力変動に対するバルブGVの減衰応答性が極めて良好なものとなる。
【0068】
また、第1弁体V1が回転することで第1弁体V1の姿勢が安定する。よって、第1弁体V1が第1ハウジングH1の内面を往復移動する際に第1弁体V1の角部が内面に噛み込むようなことがなく第1弁体V1の往復移動が円滑なものとなる。
【0069】
その他にも、第1弁体V1が回転することで、第1ハウジングH1の壁部H12の内面と第1弁体V1の外周面との間に作動流体が液膜を形成し易くなり、作動流体による潤滑作用の向上も期待できる。
【0070】
尚、第1弁体V1の回転摩擦を低減するために、第1ハウジングH1の内面および第1弁体V1の外周面のうち少なくとも何れか一方に、例えばPTFE等の摩擦低減効果のある材料を設けても良い。
【0071】
(第1弁体の第2羽根部)
図1乃至
図4に示すように、第1弁体V1のうち第1弁部V11の外周側には回転駆動部8としての第2羽根部82が設けてある。第2羽根部82は、特に、第1弁体V1が閉じ位置にあるとき、第1流体室1の作動流体が第1スリットV14を介して第2流体室2に流入する際に作動流体の流れを受け止めるものである。
【0072】
第1弁部V11の外周側には、円筒状の外側面V11aと、この外側面V11aに略直角な受圧面V11bとが形成されている。尚、受圧面V11bは、第1流体室1の作動流体の圧力を受けて第1弁体V1を開き作動させるものであるから、
図1、
図3のように必ずしも外側面V11aに直角でなくても良く、法線が第1バネS1の付勢方向の成分を持つような面で構成されていればよい。
【0073】
図3および
図4に示すように、第2羽根部82は、外側面V11aから径外方向に突出しており、周方向に沿って複数形成されている。例えば、回転軸芯Xに沿って見たとき、略三角形状の凸部で形成することができる。つまり、外側面V11aから径外方向に向けて突出する第1面82aが形成され、第1面82aの最外縁部から外側面V11aに漸近するように斜面した第2面82bを設ける。この場合第1面82aが作動流体を受け止める面となる。よって、この第2羽根部82の形状によって回転方向が限定される。この回転方向および第1面82aの向きは、
図4に示すように第1ポートP1から流入した作動流体が第1面82aに直角に近い角度で衝突するように設定しておくのが好ましい。尚、第1面82aは直角よりもやや傾斜させておき、第1面82aの基端部に形成した第1スリットV14に作動流体を誘導するように構成しておくのが好ましい。
【0074】
尚、回転方向を限定しない場合には、第2羽根部82は外側面V11aから径外方向に突出した板状部等とし、これを周方向に沿って複数設けるものでもよい。
【0075】
図3および
図4に示すように、この第2羽根部82の場合、第1スリットV14は、第1面82aの基部に開口するように構成すると好都合である。つまり、作動流体は第2羽根部82に圧力を加えつつ第1面82aとその近傍の外側面V11aとの隅部に集中するから、ここに第1スリットV14を設けておくことで作動流体を第1スリットV14に誘導し易くなる。
【0076】
この場合、
図4(a)(b)に示すように、第1スリットV14の方向と第1ポートP1の開口方向とは同じ向きに整合させておくと作動流体の流れが円滑になり、作動流体の運動エネルギーを第1弁体V1に伝え易くなる。
【0077】
図4(a)は、第1羽根部81から第2羽根部82に作動流体が流出する状態を示している。このように第1スリットV14と第1ポートP1との角度が一致するように構成しておくと、特に作動流体が第2流体室2に排出されるときに好都合である。
【0078】
一方、
図4(b)は、第2羽根部82から第1羽根部81の側に作動流体が流入する状態を示している。この場合は、第1ポートP1から第1弁体V1の外側面V11aの表面に流入した作動流体が第1ハウジングH1の壁部H12の内側に流れ込み、第1面82aを確実に押圧して第1弁体V1を回転させる。
【0079】
尚、第1弁体V1の中央部には回転軸芯Xの方向に貫通する第2オリフィスOR2が設けられている。この第2オリフィスOR2は、第2パイロット室PR2と第2流体室2とを連通する。この第2オリフィスOR2および第1オリフィスOR1は、所定量の作動流体が流通できるよう予め設定した開口面積に設定されている。
【0080】
第1弁体V1は、各種材料を用いて構成することができる。ただし、回転特性や回転軸芯Xの方向に沿った動作を機敏にするために軽い材料で構成するのが好ましい。例えば、各種の樹脂材料のほか、アルミニウム材や、マグネシウム合金、チタン等で構成することができる。
【0081】
(動作態様・押込み動作)
図1は、例えばロッド6が下方に押し下げられる場合を示している。ハウジングHが第2流体室2を圧縮し始めると、第2流体室2の作動流体は、
図1中に破線で示したように第2オリフィスOR2から第2パイロット室PR2に流入し、プランジャ3aと第2弁体V2との間の第2スリットV25あるいは第2弁体V2と第2弁座R3との隙間を介して第3パイロット室PR3に至り、さらに第2ポートP2および第3ポートP3を介して第1パイロット室PR1、第1オリフィスOR1を通り第1流体室1に排出される。
【0082】
このとき、作動流体は、
図1に細い破線で示すように、第1弁体V1に設けた第1スリットV14および第1ポートP1を介して第1流体室1にも流出する。第1弁体V1が閉じ位置にある状態でも、作動流体は第2流体室2から第1スリットV14を介して第1流体室1に流出する。この作動流体の流れによって第1羽根部81が回転力を受け第1弁体V1が回転を始める。この結果、第1弁体V1と第1ハウジングH1の壁部H12との摩擦力が低下した状態となる。
【0083】
ハウジングHが下降するとき、第2オリフィスOR2を介して流入する作動流体によって第2パイロット室PR2の内圧が上昇する。ただし、第2オリフィスOR2を通過する作動流体の流量は一定量に制限されるから、第2パイロット室PR2の内圧の上昇速度は所定の速度に押さえられる。しかし、ハウジングHの下降速度が速い時には、第1弁体V1の底部の外面V16に作用する作動流体の圧力が急激に増大するから、当該外面V16に作用する圧力が、第2パイロット室PR2の内部で第1弁体V1の底部の内面V17に作用する圧力よりも大きくなる。よって、第1弁体V1は第1バネS1の付勢力に抗って第1弁座H11から離間し、ここに生じた隙間を介して作動流体は第1流体室1に向けて流動する。これにより、ハウジングHに下向きの大きな力が作用する場合にはハウジングHを比較的速く下降させることができる。
【0084】
第2流体室2の圧力がさらに高まると、第1弁体V1そのものが第1ハウジングH1の底側に押され、開き動作を開始する。その結果、第1弁体V1と第1弁座H11との間に隙間が生じ、作動流体の流速が高まる。この流速の高まりによって第1弁体V1の回転速度がさらに高まり、回転状態が安定したものとなる。
【0085】
第1弁体V1を開き動作させるために必要な圧力は、プランジャ3aの位置によって決定される。プランジャ3aが第3パイロット室PR3の側に突出しているほど、第2弁体V2と第2弁座R3との隙間が小さくなる。よって、第2パイロット室PR2から第3パイロット室PR3に流出する作動流体が絞られることになり、作動流体が第2オリフィスOR2を介して第2パイロット室PR2に流入するときの第2パイロット室PR2の内圧の高まりが早くなる。この場合、第1弁体V1の底部の外面V16に作用する圧力との差が小さく、第1弁体V1は開き動作し難くなる。この結果、第2流体室2から第1流体室1に排出される作動流体の流量が制限されてハウジングHの動作に伴う減衰効果が高まる。
【0086】
(動作態様・引上げ動作)
一方、
図2はロッド6が
図1の上方に引き上げられる場合を示している。ハウジングHが第1流体室1を圧縮し始めると、第1流体室1の作動流体は、
図2中の破線の方向に流動し、第1オリフィスOR1から第1パイロット室PR1に流入し、第1ポートP1および第2ポートP2を介して第3パイロット室PR3に至り、さらに、プランジャ3aと第2弁体V2との間の第2スリットV25あるいは第2弁体V2と第2弁座R3との隙間を介して第2パイロット室PR2、第2オリフィスOR2を通り第2流体室2に排出される。
【0087】
このとき第1弁体V1が閉じ位置にある状態でも、作動流体は第1ポートP1および第1弁体V1に設けた第1スリットV14を介して第2流体室2に流動する。尚、
図2は第1弁体V1が開いた状態を示している。この作動流体の流れによって第2羽根部82が回転力を受け第1弁体V1が回転を始める。この結果、第1弁体V1と第1ハウジングH1の壁部H12との間の摩擦力が低下した状態となる。
【0088】
ハウジングHが
図1において上昇するとき、第1オリフィスOR1を介して流入する作動流体によって第1パイロット室PR1の内圧が上昇する。ただし、第1オリフィスOR1を通過する作動流体の流量は一定量に制限されるから、第1パイロット室PR1の内圧の上昇速度は所定の速度に押さえられる。しかし、ハウジングHの上昇速度が速い時には、第1ポートP1に作用する作動流体の圧力が急激に増大するから、第1弁体V1の受圧面V11bに作用する圧力が、第1パイロット室PR1の内部で第1弁体V1の端面V15に作用する圧力よりも大きくなる。よって、第1弁体V1は第1バネS1の付勢力に抗って第1弁座H11から離間し、
図2に破線で示したように、ここに生じた隙間を介して作動流体は第2流体室2に流入する。このとき、作動流体の流速が高まり、第2羽根部82に作用する力も増大して第1弁体V1の回転速度がさらに高まり回転状態が安定したものとなる。
【0089】
尚、第1弁体V1が開き動作を開始するタイミングはプランジャ3aの位置によって決定される。プランジャ3aが第3パイロット室PR3の側に突出しているほど、第2弁体V2と第2弁座R3との隙間が小さくなり、第3パイロット室PR3から第2パイロット室PR2に流出する作動流体が絞られる。この結果、作動流体が第1オリフィスOR1を介して第1パイロット室PR1に流入したときの第1パイロット室PR1の内圧の高まりが速くなる。この場合、第1弁体V1の底部の外面V16に作用する圧力と第1弁体V1の端面V15に作用する圧力の差が小さく、第1弁体V1は開き動作し難くなる。この結果、第1流体室1から第2流体室2に排出される作動流体の流量が制限されてバルブGVの減衰効果が高まる。
【0090】
尚、ソレノイド4aが故障した場合には制御機構5は以下のように動作する。
プランジャ3aは第2バネS2の付勢力によって第2弁体V2に押され、第2ハウジングH2の側に引退する。この結果、第2弁体V2が第1ハウジングH1の底部に当接する位置まで移動し、第2ポートP2が第2弁体V2のフランジ部V22によって遮蔽される。これにより、第1パイロット室PR1と第3パイロット室PR3とは第3ポートP3のみを介して連通する。第3ポートP3の開口面積は所定のサイズとなるように設定形成されており、第1オリフィスOR1の開口面積あるいは第2弁体V2と第2弁座R3との隙間の面積よりも小さく設定されている。よって、ソレノイド4aが故障した場合には、第3ポートP3によって作動流体の流動が制御される。
【0091】
〔第2実施形態〕
本発明のバルブGVは
図5に示すように構成することもできる。尚、本実施形態に含まれる構成で、上記第1実施形態と共通の構成については、第1実施形態と同様の構成・機能を備えているものとする。また、構成部品の参照符号は上記実施形態と同じものについては同じ番号を用いている。
【0092】
本実施形態では、第2弁体V2や第1パイロット室PR1などを無くし、ハウジングHと弁体Vと付勢部Sだけの単純な構成としている。ここでもハウジングHは有底筒状であり、内部に円筒状の空間を備えている。ハウジングHの内部には弁体Vが配置される。弁体Vは、ハウジングHの一部に設けた弁座H11に当接する弁部V11を有し、この弁部V11が弁座H11に当接した閉じ位置を端点として当該閉じ位置からハウジングHの底側に往復移動する。さらにハウジングHの内部のうち弁体Vの裏側の空間H14には、弁体Vを閉じ位置に向けて付勢する付勢部Sとしてのバネ機構が設けてある。
【0093】
(ハウジング)
ハウジングHには、上記第1の実施形態と同様に開口Pとしての第1ポートP1が周方向に沿って複数設けられている。この第1ポートP1も回転軸芯Xから離間するほど周方向における一方側に偏位する状態に延出している。これにより、例えば第1流体室1から第1ポートP1を経て弁体Vに衝突する作動流体は、弁体Vに対して周方向の速度成分を維持しつつ衝突する。この作動流体の運動エネルギーが弁体Vに伝達されて弁体Vが回転する。
【0094】
ハウジングHには、弁体Vと当接する弁座H11が設けられている。弁座H11は、第1ポートP1に対して径方向内側の位置で第1ポートP1の近くであって、弁体Vが開き動作した際に第1流体室1と第2流体室2との間で作動流体が円滑に流動する位置に設けてある。弁座H11は、ハウジングHの内面に例えば螺合により設けられた弁座部材H13の先端に設けてあり、この螺合部により第1ポートP1に対する弁座H11の位置を調節することができる。
【0095】
(弁体)
図5に示すように、この弁体Vも略カップ形状であり、円筒状の外周面がハウジングHの壁部H12の内面に案内されて回転する。底部の外面V16には環状の弁部V11が突出形成され、弁部V11を挟んで内周側には第1羽根部81が形成され、外周側には第2羽根部82が形成されている。また、弁部V11には第1実施形態と同様に連通部7として渦巻状のスリットV14が形成されている。尚、このスリットV14は弁座H11の側に設けられていても良い。
【0096】
(付勢部)
本実施形態では、ハウジングHの内部であって弁体Vの裏側の空間H14に付勢部Sを設けてある。具体的に付勢部Sは、弁体Vを裏側から押圧する芯部材S31と、この芯部材S31を弁体Vの裏面に押し付けるバネ部材S32とを備えている。
【0097】
芯部材S31は、回転する弁体Vの裏面を押すために先細の先端部を備えており、弁体Vの裏面のうち回転中心となる位置に当接する。これにより、弁体Vと芯部材S31とに生じる摩擦抵抗が低減される。
【0098】
ハウジングHの底面には芯部材S31をスライド自在に収納するガイド筒S33が設けてある。ガイド筒S33の内部には、芯部材S31の端面とハウジングHの底面とに当接し互いを離間する方向に付勢するように例えばコイル状のバネ部材S32が設置されている。このバネ部材S32は、弁体Vが開き移動させる際の作動流体の液圧などに応じてバネ定数を設定する。バネ部材S32の付勢力が大きいほど弁体Vの開きタイミングは遅くなる。尚、部材の摩耗を防止するために弁体Vの裏面あるいは芯部材S31の先端部には硬質の材料を配置するとよい。
【0099】
(逆止弁)
付勢部Sの付勢力と、弁体Vの外面V16に作用する作動流体の液圧との関係で、弁体VはハウジングHの内部に押し込まれる必要があるが、そのためハウジングHには作動流体を第1流体室1に排出する逆止弁V3を設けるとともに弁体Vの底面に呼吸穴V18を設けてある。
【0100】
弁体Vが稼働する際には、作動流体がハウジングHの壁部H12と弁体Vの外周面との隙間を介して弁体Vの裏側の空間H14に流入する。よって、通常、弁体Vの裏側の空間H14は作動流体によって満たされた状態となる。そのため、弁体Vの押し込み動作が阻害されないように当該作動流体を適宜排出する必要がある。そのために、例えばハウジングHの背面に逆止弁V3を設ける。
【0101】
逆止弁V3としては、弁体Vの裏側の空間H14と第1流体室1とを連通する排出孔を少なくとも一つ設ける。
図5では、回転軸芯Xの周りに複数の第4ポートP4を分散配置し、環状空間V31を介して複数の第5ポートP5から作動流体を排出するように構成してある。環状空間V31には、環状の固定部材V32を用いて環状の弾性部材からなる逆止弁V3が固定されている。
【0102】
尚、弁体Vは付勢部Sの付勢力によって位置制御されるべきであるから、弁体Vの動作が空間H14の作動流体の圧力に影響されることがないよう第4ポートP4の開口面積は十分に大きく設定しておく。
【0103】
弁体Vに設けた呼吸穴V18は、第2流体室2の作動流体によって押し込まれた弁体Vを弁座H11に対する閉じ位置まで押し戻す際に、第2流体室2から弁体Vの裏側の空間H14に作動流体を流入させるものである。そのために呼吸穴V18の開口面積は所定の値に設定しておく。つまり、弁体Vが押し込まれる際には、弁体Vの裏側の空間H14の圧力が第2流体室2の圧力よりも低く維持されるよう作動流体の流通を制限する必要がある。
【0104】
一方、弁体Vがバネ部材S32によって押し戻される際には、弁体Vの底部の外面V16には第2流体室2から特段の加圧がない状態であるから、弁体Vがバネ部材S32によって押し戻される速さは緩やかでも構わない。よって、呼吸穴V18のサイズは、弁体Vが押し込まれるときの空間H14の圧力上昇の程度と弁体Vの戻り速度との関係で決定されると良い。
【0105】
尚、ハウジングHが第1流体室1の側に引かれて第1流体室1の圧力が高まる場合にも弁体Vは押し込まれる。この時は、作動流体の圧力が弁体Vの外周に設けた受圧面V11bに作用し、受圧面V11bに作用する圧力と空間H14の圧力との比較になるから呼吸穴V18は特に働かない。ただし、第1流体室1からの加圧が無くなって弁体Vが押し戻される場合には上記と同様に呼吸穴V18が機能する。
【0106】
本構成のバルブGVであれば、ハウジングHがケースCの何れかの方向に移動して第1流体室1と第2流体室2との間で作動流体が流動するとき、弁体Vが閉じ位置にある状態でも、スリットV14を流通する作動流体によって弁体Vは回転を始める。この結果、弁体VとハウジングHの壁部H12との摩擦力が低下した状態となる。よって、弁体Vが引き続き開き動作する際の弁体Vの動作が機敏となる。これにより、減衰応答性の良いバルブGVを得ることができる。
【0107】
〔その他の実施形態〕
付勢部Sは、上記各実施形態のものの他、例えば、
図5におけるコイル状のバネ部材S32を板バネに替え、この板ばねをハウジングHの底部に固定するものであっても良い。板バネであれば、自身の設置スペースが少なくて済み、コンパクトなバルブGVを得ることができる。
【0108】
また、付勢部Sとして磁力を利用するものであっても良い。例えば、
図6に示すように、ハウジングHの壁部H12のうち第1ポートP1の近傍に磁石10を設けておき、弁体Vはこの磁石10に吸引される金属部材などで構成しておく。因みにハウジングHの壁部H12は、磁石10の磁力線が回り込むのを防止するために非磁性の金属材料や樹脂材料で構成しておくのが好ましい。これにより弁体Vを常に弁座H11の側に引き付けることが可能である。この場合、弁体Vに接触する付勢部Sの構成部品はなく、回転抵抗の少ない弁体Vを得ることができる。
【0109】
さらに、付勢部Sの別の構成としては、図示は省略するが、弁体Vの裏側の空間H14に所定圧の空気を充填しておき、空気の膨張・収縮特性を利用して弁体Vを付勢するものであっても良い。本構成であれば、回転する弁体Vに付勢部Sの如何なる部材も当接しないから、弁体Vの回転抵抗を最小に留めることができ、極めて応答性の良いバルブGVを得ることができる。
【0110】
上記実施形態では、ハウジングHがケースCに対して往復移動する構成を示したが、ハウジングHがケースCの内部で固定されるものであっても良い。例えば、ケースCの内部を第1流体室1と第2流体室2とに仕切る状態に当該バルブGVが設けられており、ケースCの内部に設けられた別のピストンなどによって作動流体が第1流体室1と第2流体室2とを行き来するような構成とすることもできる。