特許第6913285号(P6913285)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6913285
(24)【登録日】2021年7月14日
(45)【発行日】2021年8月4日
(54)【発明の名称】ライフカウンター管理システム
(51)【国際特許分類】
   B41J 29/38 20060101AFI20210727BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20210727BHJP
【FI】
   B41J29/38 204
   B41J2/01 451
   B41J2/01 301
【請求項の数】3
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2018-98343(P2018-98343)
(22)【出願日】2018年5月22日
(65)【公開番号】特開2019-202456(P2019-202456A)
(43)【公開日】2019年11月28日
【審査請求日】2020年3月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006150
【氏名又は名称】京セラドキュメントソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114971
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 修
(72)【発明者】
【氏名】山本 武徳
【審査官】 牧島 元
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−125442(JP,A)
【文献】 特開2017−058438(JP,A)
【文献】 特開2008−250087(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0127105(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 29/38
B41J 2/01−2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の装置の装置本体と、
前記装置本体に着脱可能な交換ユニットとを備え、
前記装置本体は、不揮発性メモリーである本体メモリーと、ライフカウンター管理部とを備え、
前記交換ユニットは、不揮発性メモリーであるローカルメモリーを備え、
前記ライフカウンター管理部は、(a)前記交換ユニットが前記装置本体に装着されたときに、当該交換ユニットのローカルメモリーに記憶されている本体識別子基準値と当該交換ユニットが装着された当該装置本体の本体識別子とが異なる場合、(a1)当該装置本体の本体識別子を前記本体識別子基準値として当該交換ユニットのローカルメモリーに書き込み、(a2)当該装置本体の本体メモリーに記憶されているライフカウンター値を、マスターカウンター基準値として当該ローカルメモリーに書き込み、(a3)当該ローカルメモリーに記憶されているライフカウンター値を、ライフカウンター基準値として別途当該ローカルメモリーに書き込み、(b)当該装置本体の1回の所定動作に対して、前記本体メモリーのライフカウンター値をカウントアップし、(c)当該装置本体の所定複数回数の前記所定動作に対して、前記ローカルメモリーのライフカウンター値を1回カウントアップし、(d)前記本体メモリーの現時点のライフカウンター値と前記マスターカウンター基準値との差分と、前記ライフカウンター基準値および前記所定複数回数の積との和に基づいて、当該交換ユニットのライフカウント値を特定すること、
を特徴とするライフカウンター管理システム。
【請求項2】
前記ライフカウンター管理部は、前記交換ユニットに関するゼロクリア要求を受け付けると、(a)当該装置本体の本体メモリーに記憶されているライフカウンター値を、マスターカウンター基準値として当該ローカルメモリーに書き込み、(b)当該交換ユニットのローカルメモリーに記憶されているライフカウンター基準値をゼロにリセットすることを特徴とする請求項1記載のライフカウンター管理システム。
【請求項3】
前記複数の装置は、複数のインクジェット画像形成装置であって、
前記交換ユニットは、前記インクジェット画像形成装置のヘッド部であって、
前記動作は、1ページの印刷であること、
を特徴とする請求項1または請求項2記載のライフカウンター管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ライフカウンター管理システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
あるシステムでは、(a)装置本体に対して着脱可能な交換ユニットに書換可能な第1不揮発性メモリーが設けられ、装置本体に書換可能な第2不揮発性メモリーが設けられており、(b)第2不揮発性メモリーには、当該装置の動作時間などのライフカウンター値が格納され、(c)当該交換ユニット装着時に、一度だけ、その時点の装置本体のライフカウンター値が第1不揮発性メモリーに書き込まれ、(d)第2不揮発性メモリーにおけるライフカウンター値と第1不揮発性メモリーにおけるライフカウンター値との差分(つまり、交換ユニットが装着された時点からカウントされたカウント値)が所定閾値以上になると、交換ユニットの交換要求が発行されている(例えば特許文献1参照)。さらに、このシステムでは、交換ユニットの第1不揮発性メモリーにフラグが設けられ、フラグが初期値である場合のみ、当該交換ユニット装着時にライフカウンター値が第1不揮発性メモリーに書き込まれ、その後、フラグが別の値に変更され、第1不揮発性メモリーへのライフカウンター値の再度の書き込みが禁止されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−125442号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のシステムでは、上述の差分として、交換ユニットのライフカウント値が特定され、第1不揮発性メモリーへの書き込みは1回(装着時)のみであるので、交換ユニットのライフカウント値を管理するために必要な第1不揮発性メモリーへの書き込みは、第1不揮発性メモリーの書込上限回数を超えることはない。
【0005】
しかしながら、上述のシステムでは、ある装置の装置本体に装着され使用された交換ユニットが取り外され、別の装置の装置本体に装着された場合、元の装置と別の装置とで本体側のライフカウンター値が通常異なるため、上述の差分では、別の装置において、当該交換ユニットのライフカウント値を適切に管理することは困難である。
【0006】
本発明は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、1つの交換ユニットが複数の装置で使用されても、当該交換ユニットのライフカウント値を適切に管理するライフカウンター管理システムを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るライフカウンター管理システムは、複数の装置の装置本体と、前記装置本体に着脱可能な交換ユニットとを備える。前記装置本体は、不揮発性メモリーである本体メモリーと、ライフカウンター管理部とを備える。前記交換ユニットは、不揮発性メモリーであるローカルメモリーを備える。そして、前記ライフカウンター管理部は、(a)前記交換ユニットが前記装置本体に装着されたときに、当該交換ユニットのローカルメモリーに記憶されている本体識別子基準値と当該交換ユニットが装着された当該装置本体の本体識別子とが異なる場合、(a1)当該装置本体の本体識別子を前記本体識別子基準値として当該交換ユニットのローカルメモリーに書き込み、(a2)当該装置本体の本体メモリーに記憶されているライフカウンター値を、マスターカウンター基準値として当該ローカルメモリーに書き込み、(a3)当該ローカルメモリーに記憶されているライフカウンター値を、ライフカウンター基準値として別途当該ローカルメモリーに書き込み、(b)当該装置本体の1回の所定動作に対して、前記本体メモリーのライフカウンター値をカウントアップし、(c)当該装置本体の所定複数回数の前記所定動作に対して、前記ローカルメモリーのライフカウンター値を1回カウントアップし、(d)前記本体メモリーの現時点のライフカウンター値と前記マスターカウンター基準値との差分と、前記ライフカウンター基準値および前記所定複数回数の積との和に基づいて、当該交換ユニットのライフカウント値を特定する。


【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、1つの交換ユニットが複数の装置で使用されても、当該交換ユニットのライフカウント値を適切に管理するライフカウンター管理システムが得られる。
【0009】
本発明の上記又は他の目的、特徴および優位性は、添付の図面とともに以下の詳細な説明から更に明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本発明の実施の形態に係るライフカウンター管理システムが適用されたインクジェット画像形成装置の機械的な内部構成を説明する側面図である。
図2図2は、図1に示す画像形成装置の平面図である。
図3図3は、本発明の実施の形態に係るライフカウンター管理システムの構成を示すブロック図である。
図4図4は、初期状態での装置動作開始時の、図3に示すライフカウンター管理システムの動作について説明する図である。
図5図5は、所定回数の装置動作時の、図3に示すライフカウンター管理システムの動作について説明する図である(1/2)。
図6図6は、所定回数の装置動作時の、図3に示すライフカウンター管理システムの動作について説明する図である(2/2)。
図7図7は、図5は、非初期状態でヘッド部11−iが新品に交換された時の、図3に示すライフカウンター管理システムの動作について説明する図である。
図8図8は、図5は、非初期状態でヘッド部11−iが新品に交換された後の、図3に示すライフカウンター管理システムの動作について説明する図である。
図9図9は、非初期状態でヘッド部11−iが中古品に交換された時の、図3に示すライフカウンター管理システムの動作について説明する図である。
図10図10は、非初期状態でヘッド部11−iが中古品に交換された後の、図3に示すライフカウンター管理システムの動作について説明する図である。
図11図11は、特定のヘッド部11−iのライフカウント表示値のゼロクリアが要求された時の、図3に示すライフカウンター管理システムの動作について説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図に基づいて本発明の実施の形態を説明する。
【0012】
図1は、本発明の実施の形態に係るライフカウンター管理システムが適用されたインクジェット画像形成装置の機械的な内部構成を説明する側面図である。図2は、図1に示す画像形成装置の平面図である。なお、この実施の形態では、各インクジェット画像形成装置は、装置本体に対して着脱可能な交換ユニットとしてヘッド部を備える。
【0013】
この実施の形態に係る画像形成装置は、プリンター、コピー機、ファクシミリ機、複合機などといった装置であり、ライン型のインクジェット方式のカラー印刷機構を有する。
【0014】
図1に示す画像形成装置は、シアン、マゼンタ、イエロー、およびブラックという4つのインク色に対応するライン型のインクジェット記録部1a〜1dと、印刷用紙を搬送する環状の搬送ベルト2と、搬送ベルト2を懸架される駆動ローラー3および従動ローラー4と、搬送ベルト2ととともに印刷用紙をニップする吸着ローラー5と、排出ローラー対6とを有する。
【0015】
駆動ローラー3および従動ローラー4は、搬送ベルト2を周回させる。そして、図示せぬ搬送系によって給紙トレイなどから搬送されてきた印刷用紙を吸着ローラー5がニップし、ニップされた印刷用紙は、搬送ベルト2によってインクジェット記録部1a〜1dの印刷位置へ順番に搬送されていき、インクジェット記録部1a〜1dによりそれぞれの色の画像を印刷される。そして、カラー印刷完了後の印刷用紙が排出ローラー対6によって、図示せぬ排紙トレイなどに排出される。
【0016】
また、図2に示すように、この実施の形態では、各インクジェット記録部1a,1b,1c,1dは、複数(ここでは3個)のヘッド部11−1〜11−Nを有する。それらのヘッド部11−1〜11−Nは、主走査方向に沿って配列されており、装置本体に対して着脱可能になっている。つまり、各ヘッド部11−i(i=1,・・・,N)は、新品または使用開始済みのヘッド部と交換可能になっている。なお、各インクジェット記録部1a,1b,1c,1dのヘッド部11−iは、1つでもよい。
【0017】
図3は、本発明の実施の形態に係るライフカウンター管理システムの構成を示すブロック図である。図3に示すように、各ヘッド部11−iは、複数(ここでは、4個)のヘッドユニット21を有している。したがって、ここでは、1つのインクジェット記録部1a,1b,1c,1dにつき(1つのインク色につき)、12個のヘッドユニット21が設けられている。
【0018】
ヘッドユニット21は、ヘッド31および駆動回路32を有する。ヘッド31は、インクを吐出するノズルおよび駆動電圧に応じてインクを吐出する圧電素子を有する。なお、ヘッド31には、図示せぬインクタンクが接続されており、インクタンクからインクが供給される。また、駆動回路32は、ヘッド31の圧電素子に駆動電圧を印加してインクを吐出させる回路である。
【0019】
さらに、各ヘッド部11−iは、ローカルメモリー22を備える。ローカルメモリー22は、フラッシュメモリーなどの書換可能な不揮発性メモリーである。例えば、ローカルメモリー22に使用される不揮発性メモリーには、書込上限回数が100万回程度の256バイトのNAND型フラッシュメモリーが使用される。
【0020】
ローカルメモリー22には、当該ヘッド部11−iのライフカウント値を管理するためのデータが記憶される。なお、ライフカウント値は、初期状態から現時点までの当該ヘッド部11−iの動作回数や動作時間(ここでは印刷ページ数)などを示すカウント値である。また、ローカルメモリー22には、ライフカウント値を管理するためのデータ以外のデータ(ヘッド部11−iの属性データなど)も記憶されるようにしてもよいし、そのようなデータを記憶されないようにしてもよい。
【0021】
他方、装置本体12は、図1および図2に示す機械的構成(ヘッド部11−1〜11−Nを除く)の他、通紙検知部41、操作パネル42、および制御部43を備える。
【0022】
通紙検知部41は、印刷動作時に、印刷用紙の搬送路(例えばインクジェット記録部1a〜1dの前段または後段)の所定の位置で印刷用紙の通過を検知する。通紙検知部41は、例えば光学式センサーで、搬送されてくる印刷用紙を検知する。
【0023】
操作パネル42は、装置本体12の筐体表面に配置され、液晶ディスプレイなどの表示装置、およびハードキー、タッチパネルなどの入力装置を備え、その表示装置でユーザーに対して各種メッセージを表示し、その入力装置でユーザー操作を受け付ける。
【0024】
制御部43は、ヘッド部11−1〜11−Nに対して設けられ電気的に接続されている。制御部43は、印刷動作のために各ヘッド部11−iを制御するとともに、各ヘッド部11−iのライフカウント値の管理を行う。
【0025】
制御部43は、CPU(Central Processing Unit)51、RAM(Random Access Memory)52、本体メモリー53などを備えるコンピューターを内蔵する。
【0026】
CPU51は、本体メモリー53、図示せぬROM(Read Only Memory)などからRAM52にロードされたプログラムを実行して、各種処理部として動作する。本体メモリー53は、フラッシュメモリーなどの書換可能な不揮発性メモリーであり、ローカルメモリー22より大きい容量を有する。
【0027】
ここでは、CPU51は、ライフカウンター管理部51aとして動作する。ライフカウンター管理部51aは、(a)ヘッド部11−iが当該装置本体12に装着されたときに、当該ヘッド部11−iのローカルメモリー22に記憶されている本体識別子(シリアル番号などといった当該装置に固有のデータ)と当該ヘッド部11−iが装着された当該装置本体12の本体識別子とが異なる場合、(a1)当該装置本体12の本体識別子を当該ヘッド部11−iのローカルメモリー22に書き込み、(a2)当該装置本体12の本体メモリー53に記憶されているライフカウンター値(つまり、当該装置本体12のライフカウント値)を、マスターカウンター基準値として当該ローカルメモリー22に書き込み、(a3)当該ローカルメモリー22に記憶されているライフカウンター値を、ライフカウンター基準値として別途当該ローカルメモリー22に書き込み、(b)当該装置本体12の動作に従って、本体メモリー53のライフカウンター値をカウントアップし、(c)当該装置本体12の動作に従って、ローカルメモリー22のライフカウンター値をカウントアップし、(d)本体メモリー53の現時点のライフカウンター値とローカルメモリー22のマスターカウンター基準値との第1差分と、ローカルメモリー22の現時点のライフカウンター値とライフカウンター基準値との第2差分とに基づいて、当該ヘッド部11−iのライフカウント値を特定する。
【0028】
これにより、上述の第1差分によって、当該ヘッド部11−iが現在装着されている装置(装置本体)でのカウント値が示され、上述の第2差分によって、当該ヘッド部11−iが過去に装着されていた装置(装置本体)でのカウント値が示されるため、上述の第1差分および第2差分によって、当該ヘッド部11−iのライフカウント値が特定される。
【0029】
この実施の形態では、具体的には、ライフカウンター管理部51aは、(b)当該装置本体12の1回の所定動作(ここでは、1ページの印刷)に対して、本体メモリー53のライフカウンター値を1回カウントアップし、(c)当該装置本体12の所定複数回数の所定動作(例えば100ページの印刷)に対して、ローカルメモリー22のライフカウンター値を1回カウントアップし、(d)上述の第1差分と、上述の第2差分および上述の所定複数回数の積との和に基づいて、当該ヘッド部11−iのライフカウント値を特定する。
【0030】
なお、ライフカウンター管理部51aは、印刷動作時において、通紙検知部41により1枚の印刷用紙が検知されると、1ページの印刷が実行されたと判定する。
【0031】
これにより、ローカルメモリー22内のライフカウンター値を記憶するメモリー領域のサイズが小さくて済むとともに、ローカルメモリー22内のライフカウンター値の書換回数(書換頻度)が少なくなる。
【0032】
さらに、この実施の形態では、ライフカウンター管理部51aは、特定のヘッド部11−iに関するゼロクリア要求を受け付けると、(a)当該装置本体の本体メモリー53に記憶されているライフカウンター値を、マスターカウンター基準値として当該ローカルメモリー22に書き込み、(b)当該ヘッド部11−iのローカルメモリー22に記憶されているライフカウンター基準値をゼロにリセットする。
【0033】
次に、当該実施の形態のライフカウンター管理システムの動作について説明する。
【0034】
(a)装置の初期状態での動作開始時
【0035】
工場出荷後などの初期状態での装置動作開始時の、当該実施の形態のライフカウンター管理システムの動作について説明する。図4は、初期状態での装置動作開始時の、図3に示すライフカウンター管理システムの動作について説明する図である。なお、図4では、ヘッド部11−1〜11−Nの数Nは、説明のために3としているが、特に限定されるものではない。
【0036】
図4に示すように、装置本体12の本体メモリー53には、本体識別子およびマスターカウンター(つまり、装置本体12のライフカウント値のためのカウンター)のカウント値のメモリー領域が確保されており、そのメモリー領域に、本体識別子およびマスターカウンターのカウント値がそれぞれ記憶される。
【0037】
また、図4に示すように、各ヘッド部11−iのローカルメモリー22には、ライフカウンター(つまり、当該ヘッド部11−iのライフカウント値のためのカウンター)のカウント値および履歴データのメモリー領域が確保されており、そのメモリー領域に、ライフカウンターのカウント値および履歴データがそれぞれ記憶される。ここで、履歴データは、少なくとも本体識別子基準値、マスターカウンター基準値、およびライフカウンター基準値からなる。
【0038】
本体識別子基準値は、当該ヘッド部11−iが現時点で装着されている装置本体12(あるいは装置)の本体識別子を示す。マスターカウンター基準値、およびライフカウンター基準値は、当該ヘッド部11−iが装置本体12に装着された時点のマスターカウンターのカウント値およびライフカウンターのカウント値を示す。
【0039】
つまり、ライフカウントの対象となる動作(ここでは印刷)に伴って、マスターカウンターのカウント値およびライフカウンターのカウント値は、カウントアップされていくが、マスターカウンター基準値およびライフカウンター基準値は、装着時に更新され、上述の動作に伴って更新されない。
【0040】
そして、初期状態では(つまり、未使用状態では)、マスターカウンターおよびライフカウンターのカウント値はゼロに設定されており、属性データの本体識別子基準値は、いずれの装置の本体識別子にも一致しない値(ここでは、NULL)に設定され、属性データのマスターカウンター基準値およびローカルカウンター基準値はゼロに設定されている。
【0041】
この状態で、装置本体12の電源が投入されると、制御部43は、初期化動作を開始し、ライフカウンター管理部51aは、まず、各ヘッド部11−iのローカルメモリー22内の本体識別子基準値および本体メモリー53内の本体識別子を読み出し、両者が互いに一致するか否かを判定する。
【0042】
初期状態で初期化動作が実行されると、各ヘッド部11−iの本体識別子基準値は、NULLになっているため、装置本体12の本体識別子には一致しない。
【0043】
したがって、ライフカウンター管理部51aは、両者が互いに一致しないと判定し、図4に示すように、現時点のマスターカウンターのカウント値を読み出し、本体メモリー53内の本体識別子および現時点のマスターカウンターのカウント値で、ヘッド部11−iのローカルメモリー22内の本体識別子基準値およびマスターカウンター基準値を更新する。
【0044】
(b)ヘッド部11−1〜11−Nが交換されず初期状態から、ライフカウントの対象動作が繰り返し実行された時
【0045】
ヘッド部11−1〜11−Nが交換されず上述の初期状態から印刷が繰り返し実行された場合の、当該実施の形態のライフカウンター管理システムの動作について説明する。図5は、所定回数の装置動作時の、図3に示すライフカウンター管理システムの動作について説明する図である(1/2)。図6は、所定回数の装置動作時の、図3に示すライフカウンター管理システムの動作について説明する図である(2/2)。
【0046】
1ページの印刷が実行されるごとに、ライフカウンター管理部51aは、マスターカウンターのカウント値を1だけカウントアップするとともに、式(1)で得られるヘッド部11−iのライフカウンター演算値CN1を導出する。
【0047】
CN1=rounddown((CNmaster−CNmaster_ref)/Nc)+CNlife_ref ・・・(1)
【0048】
ここで、rounddown()は、小数点以下を切り捨てる関数であり、CNmasterは現時点のマスターカウンターのカウント値であり、CNmaster_refは、マスターカウンター基準値であり、CNlife_refは、ライフカウンター基準値であり、Ncは、カウントアップの頻度を示す定数である。例えばNc=100とされ、その場合、100ページの印刷ごとに、ライフカウンターのカウント値が1だけ増加する。
【0049】
そして、ライフカウンター管理部51aは、ライフカウンター演算値CN1がローカルメモリー22内のライフカウンターのカウント値と異なる場合には、ライフカウンター演算値CN1で、ローカルメモリー22内のライフカウンターのカウント値を更新する(つまり、カウントアップする)。つまり、ライフカウンター演算値CN1がローカルメモリー22内のライフカウンターのカウント値に一致する場合には、ライフカウンター演算値CN1が、ローカルメモリー22に書き込まれ、ライフカウンター演算値CN1がローカルメモリー22内のライフカウンターのカウント値と異なる場合には、ライフカウンター演算値CN1は、ローカルメモリー22に書き込まれない。
【0050】
また、ライフカウンター管理部51aは、式(2)に従って、各ヘッド部11−iの現時点のライフカウント表示値CN(i)を導出し、操作パネル42に表示する。
【0051】
CN(i)=(CNmaster−CNmaster_ref)+CNlife_ref×Nc ・・・(2)
【0052】
例えば図5に示すように、初期状態から105ページの印刷が実行された場合、その時点では、ライフカウンターのカウント値は、式(1)に基づき、1になり(ここで、Nc=100)、また、ヘッド部11−iのライフカウント表示値は、式(2)に基づき、105になる(ここで、Nc=100)。
【0053】
その後、260ページがさらに印刷され、初期状態から365ページの印刷が実行された場合、図6に示すように、その時点では、ライフカウンターのカウント値は、式(1)に基づき、3になり(ここで、Nc=100)、また、ヘッド部11−iのライフカウント表示値は、式(2)に基づき、365になる(ここで、Nc=100)。
【0054】
なお、この場合において、例えば、所定ページの印刷完了後に装置本体12の電源が遮断され、その後、装置本体12の電源が投入され、さらに印刷が実行されても、ライフカウンター管理部51aは、電源オン時に、ローカルメモリー22内の本体識別子基準値および本体メモリー53内の本体識別子が互いに一致するため、ローカルメモリー22内の履歴データ(本体識別子基準値、マスターカウンター基準値、およびライフカウンター基準値)の更新を行わない。
【0055】
(c)非初期状態でヘッド部11−iが新品に交換された時
【0056】
上述の初期状態から印刷が実行された後にヘッド部11−iが新品に交換された場合の、当該実施の形態のライフカウンター管理システムの動作について説明する。図7は、図5は、非初期状態でヘッド部11−iが新品に交換された時の、図3に示すライフカウンター管理システムの動作について説明する図である。図8は、図5は、非初期状態でヘッド部11−iが新品に交換された後の、図3に示すライフカウンター管理システムの動作について説明する図である。
【0057】
ヘッド部11−iが新品の状態では、当該ヘッド部11−iのローカルメモリー22に記憶されているライフカウンターおよび履歴データは、図4に示すような初期値となっている。
【0058】
ヘッド部11−iが新品に交換された場合、その後、装置本体12の電源が投入されると、ライフカウンター管理部51aは、電源オン時に、ローカルメモリー22内の本体識別子基準値および本体メモリー53内の本体識別子が互いに一致しないため、ローカルメモリー22内の履歴データ(本体識別子基準値、マスターカウンター基準値、およびライフカウンター基準値)を上述のようにして更新する。
【0059】
例えば図7に示すように、100503ページの印刷が完了した後に、ヘッド部11−2が新品に交換された場合、交換後の最初の電源オン時に、ヘッド部11−2のローカルメモリー22の履歴データが更新される。これにより、ヘッド部11−2のライフカウント表示値は、式(2)に従って、ゼロになる。
【0060】
その後、さらに1126ページの印刷が実行されると、図8に示すように、マスターカウンターがカウントアップされるとともに、ライフカウンターが式(1)に従って11までカウントアップされる。また、交換後のヘッド部11−2のライフカウント表示値は、式(2)に従って、1,126となり、交換されていないヘッド部11−1のライフカウント表示値は、式(2)に従って、101,629となる。
【0061】
(d)非初期状態でヘッド部11−iが中古品(使用開始済みの製品)に交換された時
【0062】
他方、上述の初期状態から印刷が実行された後にヘッド部11−iが中古品に交換された場合の、当該実施の形態のライフカウンター管理システムの動作について説明する。図9は、非初期状態でヘッド部11−iが中古品に交換された時の、図3に示すライフカウンター管理システムの動作について説明する図である。図10は、非初期状態でヘッド部11−iが中古品に交換された後の、図3に示すライフカウンター管理システムの動作について説明する図である。
【0063】
ヘッド部11−iが使用開始済みの状態では、当該ヘッド部11−iのローカルメモリー22に記憶されているライフカウンターおよび履歴データは、図4に示すような初期値ではなく、ライフカウンターは、それまで使用されていた装置の装置本体12により書き込まれたライフカウンターのカウント値を有し、本体識別子基準値は、それまで使用されていた装置の本体識別子となっており、マスターカウンター基準値は、それまで使用されていた装置に装着された時点のマスターカウンターのカウント値となっており、ライフカウンター基準値は、それまで使用されていた装置に装着された時点のライフカウンターのカウント値となっている。
【0064】
ヘッド部11−iが中古品に交換された場合、その後、装置本体12の電源が投入されると、ライフカウンター管理部51aは、電源オン時に、ローカルメモリー22内の本体識別子基準値および本体メモリー53内の本体識別子が互いに一致しないため、ローカルメモリー22内の履歴データ(本体識別子基準値、マスターカウンター基準値、およびライフカウンター基準値)を上述のようにして更新する。
【0065】
例えば図9に示すように、100503ページの印刷が完了した後に、ヘッド部11−2が中古品に交換された場合、交換後の最初の電源オン時に、ヘッド部11−2のローカルメモリー22の履歴データが更新される。その際、併せて、中古品のライフカウンターのカウント値で、ライフカウンター基準値が更新される。これにより、ヘッド部11−2のライフカウント表示値は、式(2)に従って、358,800になる。
【0066】
その後、さらに597ページの印刷が実行されると、図10に示すように、マスターカウンターがカウントアップされるとともに、ライフカウンターが式(1)に従って3588から3593カウントアップされる。また、交換後のヘッド部11−2のライフカウント表示値は、式(2)に従って、359,397となり、交換されていないヘッド部11−1のライフカウント表示値は、式(2)に従って、101,100となる。
【0067】
(e)特定のヘッド部11−iのライフカウント表示値のゼロクリアが要求された時
【0068】
図11は、特定のヘッド部11−iのライフカウント表示値のゼロクリアが要求された時の、図3に示すライフカウンター管理システムの動作について説明する図である。
【0069】
例えば、ユーザーが、特定のヘッド部11−i(図11ではヘッド部11−2)のライフカウント表示値のゼロクリアを要求するために、所定の操作を操作パネル42に対して行うと、ライフカウンター管理部51aは、その操作を操作パネル42で検出し、その操作でユーザーにより指定された特定のヘッド部11−iのライフカウント表示値のゼロクリアを実行する。
【0070】
具体的には、ライフカウンター管理部51aは、そのヘッド部11−iに関するゼロクリア要求を受け付けると、(a)当該装置本体12の本体メモリー53に記憶されている現時点のマスターカウンターのカウント値を、マスターカウンター基準値として当該ローカルメモリーに書き込み、(b)当該ヘッド部11−iのローカルメモリー22に記憶されているライフカウンター基準値をゼロにリセットする。これにより、ゼロクリア後のヘッド部11−2のライフカウント表示値は、式(2)に従って、0となる。
【0071】
以上のように、上記実施の形態に係るライフカウンター管理システムは、複数の装置の装置本体12と、装置本体12に着脱可能な交換ユニットとしてのヘッド部11−iを備える。装置本体12は、不揮発性メモリーである本体メモリー53と、ライフカウンター管理部51aとを備える。ヘッド部11−iは、不揮発性メモリーであるローカルメモリー22を備える。そして、ライフカウンター管理部51aは、(a)ヘッド部11−iが装置本体12に装着されたときに、当該ヘッド部11−iのローカルメモリー22に記憶されている本体識別子基準値と当該ヘッド部11−iが装着された当該装置本体12の本体識別子とが異なる場合、(a1)当該装置本体12の本体識別子を本体識別子基準値として当該ヘッド部11−iのローカルメモリー22に書き込み、(a2)当該装置本体12の本体メモリー53に記憶されているライフカウンター値を、マスターカウンター基準値として当該ローカルメモリー22に書き込み、(a3)当該ローカルメモリー22に記憶されているライフカウンター値を、ライフカウンター基準値として別途当該ローカルメモリー22に書き込み、(b)当該装置本体12の動作に従って、本体メモリー53のライフカウンター値をカウントアップし、(c)当該装置本体12の動作に従って、ローカルメモリー22のライフカウンター値をカウントアップし、(d)本体メモリー53の現時点のライフカウンター値とマスターカウンター基準値との差分と、ローカルメモリー22の現時点のライフカウンター値とライフカウンター基準値との差分とに基づいて、当該ヘッド部11−iのライフカウント値を特定する。
【0072】
これにより、1つのヘッド部11−iが複数の画像形成装置で使用されても、当該ヘッド部11−iのライフカウント値が適切に管理される。
【0073】
なお、上述の実施の形態に対する様々な変更および修正については、当業者には明らかである。そのような変更および修正は、その主題の趣旨および範囲から離れることなく、かつ、意図された利点を弱めることなく行われてもよい。つまり、そのような変更および修正が請求の範囲に含まれることを意図している。
【0074】
例えば、上記実施の形態では、ライフカウンター管理システムをインクジェット画像形成装置に適用しているが、電子写真方式の画像形成装置に適用してもよい。その場合、感光体ドラムユニット、現像ユニット、中間転写ベルトユニット、定着器ユニットなどが交換ユニットとしてライフカウント値を管理される。また、ライフカウンター管理システムが別の種別の電子機器に適用されてもよい。
【0075】
また、上記実施の形態において、ローカルメモリー22に記憶される履歴データにおいて、本体識別子基準値が本体識別子に一致せず更新される際に、更新前の本体識別子基準値、マスターカウンター基準値およびライフカウンター基準値が消去または上書きされずに、保存されるようにしてもよい。これにより、ヘッド部11−iが過去に装着されていた装置およびその装置でのカウント値が上述の履歴データから特定される。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明は、例えば、画像形成装置に適用可能である。
【符号の説明】
【0077】
11−1〜11−N ヘッド部
12 装置本体
21 ヘッドユニット
22 ローカルメモリー
51a ライフカウンター管理部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11