(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
カーボン繊維によって形成されたカーボンシートの表裏両面に樹脂層が設けられ、且つ前記カーボンシートの表面に設けられた前記樹脂層に前記カーボンシートの一部が露出する切欠き凹部が設けられた外装本体部と、
前記樹脂層の前記切欠き凹部を覆って保護する保護部材と、
を備えていることを特徴とする外装部材。
請求項1に記載の外装部材において、前記樹脂層は、前記カーボンシートの前記表面に設けられて前記カーボンシートの一部が露出する前記切欠き凹部が設けられた第1樹脂層と、前記カーボンシートの裏面に設けられた第2樹脂層と、を備えていることを特徴とする外装部材。
請求項1または請求項2に記載の外装部材において、前記カーボンシートは、ほぼリング状に形成されており、前記外装本体部の前記切欠き凹部に対応する前記カーボンシートの前記一部には、切込部および連結部が設けられていることを特徴とする外装部材。
請求項3に記載の外装部材において、前記カーボンシートの前記一部は、前記カーボンシートの外周側に前記切込部が設けられ、前記カーボンシートの内周側に前記連結部が設けられていることを特徴とする外装部材。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、
図1〜
図8を参照して、この発明を腕時計に適用した一実施形態について説明する。なお、腕時計の表示面側を上、表示面の反対側の面側を下側として説明を行う。
この腕時計は、
図1に示すように、腕時計ケース1を備えている。この腕時計ケース1の12時側と6時側とには、時計バンド2が取り付けられるバンド取付部3がそれぞれ設けられている。また、この腕時計ケース1の2時側、3時側、4時側、6時側、8時側および10時側には、押釦スイッチ4がそれぞれ設けられている。
【0012】
この腕時計ケース1の上部開口部には、
図2に示すように、時計ガラス5がパッキン5aを介して取り付けられている。この時計ガラス5の下側に位置する腕時計ケース1の内部には、見切り部材6が設けられている。また、この腕時計ケース1の下部には、裏蓋7が防水リング7aを介して取り付けられている。
【0013】
この腕時計ケース1の内部には、
図2に示すように、時計モジュール8が設けられている。この時計モジュール8は、図示しないが、指針を運針させる時計ムーブメント、時刻などの情報を電気光学的に表示する表示パネル、これらを電気的に駆動する回路部などの時計機能に必要な各種の部品を備えている。
【0014】
ところで、この腕時計ケース1は、
図1および
図2に示すように、ケース本体10と外装ケース11とを備えている。ケース本体10は、例えばポリアミド樹脂にガラス繊維またはカーボン繊維を混入させた合成樹脂によって形成され、内部に金属製の補強部10aが埋め込まれた構成になっている。このケース本体10は、ほぼ円筒状に形成され、ケース本体10の外周部における12時側と6時側とには、バンド取付部3の一対の取付突起部3aがそれぞれ設けられている。
【0015】
本実施形態において、外装ケース11は、
図1〜
図5に示すように、ケース本体10の上部外周を覆って取り付けられるように構成されている。そして、この外装ケース11は、ほぼリング状に形成された外装本体部12と、この外装本体部12の所定箇所に設けられた複数の保護部材13と、を備えている。外装本体部12は、ケース本体10の上面および時計ガラス5の外周部における縁部の上面を覆うと共に、ケース本体10の外周面における上部側を覆うように構成されている。
【0016】
この場合、外装本体部12の一面である上面には、
図1〜
図4に示すように、複数の切欠き凹部12aが、ケース本体10の一対の取付突起部3aに対応して設けられている。複数の切欠き凹部12aには、複数の保護部材13がそれぞれ配置される。
【0017】
本実施形態において、複数の保護部材13は、
図1〜
図4に示すように、外装本体部12の4箇所にそれぞれ設けられた複数の切欠き凹部12aにそれぞれ配置されるように構成されている。これら複数の保護部材13それぞれは、ウレタン樹脂などの合成樹脂によって形成され、外部からの衝撃を緩衝するように構成されている。また、これら複数の保護部材13は、複数のねじ部材14によってそれぞれケース本体10に取り付けられることにより、外装本体部12をケース本体10に固定するように構成されている。
【0018】
すなわち、本実施形態において、これら複数の保護部材13それぞれは、
図1〜
図3に示すように、外装本体部12の切欠き凹部12aおよび切欠き凹部12aの周縁部を覆って配置される本体部15と、ケース本体10の一対の取付突起部3aの外面を覆うカバー部16と、を備えている。切欠き凹部12aは本体部15と一体に形成されている。
【0019】
本体部15には、
図2および
図3に示すように、ねじ部材14のねじ部14aが挿入する挿入孔15aが本体部15の上面から下面に亘って貫通して設けられている。この挿入孔15aの上部には、ねじ部材14の頭部14bが配置される座ぐり部15bが設けられている。この場合、ケース本体10の上部には、ねじ部材14のねじ部14aが螺合するねじ穴10bが本体部15の挿入孔15aに同一軸上に対応して設けられている。
【0020】
これにより、
図2に示すように、外装本体部12がケース本体10の上部外周に配置されて、外装本体部12の切欠き凹部12aに保護部材13の本体部15が配置されると共に、保護部材13のカバー部16がケース本体10の一対の取付突起部3aの外面に配置される。この状態で、複数の保護部材13それぞれがねじ部材14によってケース本体10に取り付けられることにより、複数の保護部材13は外装本体部12をケース本体10に固定させる。
【0021】
すなわち、これら複数の保護部材13それぞれは、
図2に示すように、外装本体部12に配置された保護部材13の本体部15に設けられた挿入孔15aがケース本体10のねじ穴10bに同一軸上に対応した状態で、ねじ部材14のねじ部14aが挿入孔15aを通してねじ穴10bに螺合することにより、ケース本体10に取り付けられるように構成されている。
【0022】
また、
図2に示すように、ねじ部材14のねじ部14aがケース本体10のねじ穴10bに螺合して締め付けられた際に、ねじ部材14の頭部14bが本体部15の座ぐり部15bに配置される。そして、複数の保護部材13の本体部15が外装本体部12の切欠き凹部12aをケース本体10に押し付ける。これにより、複数の保護部材13は、外装本体部12をケース本体10に固定させると共に、外装本体部12の切欠き凹部12aを補強して強度を確保する。
【0023】
ところで、本実施形態において、外装本体部12は、
図4および
図5に示すように、カーボン繊維によって形成されたカーボンシート17と、このカーボンシート17の一面である上面に設けられて、カーボンシート17の一部が露出する切欠き凹部12aが設けられた第1樹脂層18と、カーボンシート17の上面と反対側の他面である下面に設けられた第2樹脂層19と、を備える。また、外装本体部12はほぼリング状に形成されている。
【0024】
この場合、カーボンシート17は、カーボン繊維を布状に編んで複数積層させて樹脂でコーティングしたものである。このカーボンシート17は、ケース本体10の上面および時計ガラス5の外周部における縁部の上面を覆うと共に、ケース本体10の外周面における上部側を覆う。また、このカーボンシート17は、
図6に示すように、ように、断面形状がほぼ山形形状のリング状に形成されている。カーボンシートの断面形状は、ほぼ山形に限定されず、実施するケースの形状に合わせたものであって良い。
【0025】
このカーボンシート17は、
図6(a)および
図6(b)に示すように、ケース本体10の一対の取付突起部3aに対応する箇所、つまり複数の切欠き凹部12aに対応する箇所に複数の切込部17aと複数の連結部17bとが設けられている。複数の切込部17aは、カーボンシート17の外周側に設けられている。
【0026】
本実施形態の複数の連結部17bは、
図6(a)および
図6(b)に示すように、複数の切込部17aが設けられた位置に対応してカーボンシート17の内周側に設けられている。これにより、カーボンシート17は、複数の切込部17aが設けられていても、複数の連結部17bによって連結されていることにより、全体がほぼリング状に形成されている。
【0027】
本実施形態の第1樹脂層18は、
図4および
図5に示すように、例えばポリアミド樹脂にガラス繊維またはカーボン繊維を混入させた合成樹脂によって、カーボンシート17の一面である上面に形成されている。この第1樹脂層18には、複数の保護部材13がそれぞれ配置される複数の切欠き凹部12aがカーボンシート17の複数の切込部17aおよび複数の連結部17bに対応して設けられている。
【0028】
本実施形態の場合、複数の切欠き凹部12aは、
図4〜
図6に示すように、複数の切込部17aに対応するカーボンシート17の外周側からカーボンシート17の内周側に亘って設けられている。これにより、カーボンシート17の外周側に設けられた複数の切込部17aと複数の切込部17aに対応してカーボンシート17の内周側に設けられた複数の連結部17bは露出される。
【0029】
本実施形態の第2樹脂層19は、
図4および
図5に示すように、例えばポリアミド樹脂にガラス繊維またはカーボン繊維を混入させた合成樹脂によって、カーボンシート17の第1樹脂層18が設けられた面と反対側の他面である下面に形成されている。すなわち、この第2樹脂層19は、カーボンシート17の下面に設けられていると共に、複数の切欠き凹部12aに対応する箇所、つまりカーボンシート17の複数の切込部17aおよび複数の連結部17bに対応する箇所にも設けられている。
【0030】
これにより、
図2に示すように、第1樹脂層18の複数の切欠き凹部12aに複数の保護部材13の各本体部15が配置された際に、その各本体部15の下面が、複数の切欠き凹部12aに対応する第2樹脂層19の上面と、複数の切欠き凹部12aに露出したカーボンシート17の複数の連結部17bの上面と、に押し当てられて配置される。
【0031】
第1樹脂層18の複数の切欠き凹部12aに複数の保護部材13の各本体部15が配置された際に、複数の切欠き凹部12aに露出したカーボンシート17の複数の連結部17bに複数の保護部材13の各本体部15が押し当てられていることにより、カーボンシート17は、複数の保護部材13によってカーボンシート17の複数の連結部17bが補強される。
【0032】
本実施形態の場合、カーボンシート17の複数の切込部17aに対応する箇所の第2樹脂層19には、
図4に示すように、複数のねじ部材14の各ねじ部14aが挿入される複数の挿入部19aが設けられている。これら複数の挿入部19aは、カーボンシート17の外周側に設けられた切欠き部である。
【0033】
また、これら複数の挿入部19aは、
図4および
図5に示すように、第1樹脂層18の複数の切欠き凹部12aに複数の保護部材13の各本体部15が配置された際に、各本体部15の挿入孔15aに同一軸上に対応すると共に、外装本体部12がケース本体10の上部外周に配置された際に、ケース本体10のねじ穴10bに同一軸上に対応するように設けられている。
【0034】
次に、
図7および
図8を参照して、このような腕時計の外装ケース11の製造方法について説明する。
この外装ケース11の製造方法は、カーボンシート17を1次成形金型20内に固定し、カーボンシート17の一面である上面に第1樹脂層18を形成して1次成形品21を成形する第1の工程と、この1次成形品21を2次成形金型22内に配置させて、カーボンシート17の他面である下面に第2樹脂層19を形成して外装本体部12である2次成形品を成形する第2の工程と、2次成形品である外装本体部12に保護部材13を配置する第3の工程と、を備えている。
【0035】
すなわち、第1の工程では、
図7(a)および
図7(b)に示すように、まず、カーボンシート17の一部、つまりカーボンシート17に設けられた複数の切込部17aにそれぞれ対応する複数の連結部17bを1次成形金型20内で挟み、カーボンシート17を1次成形金型20内に固定する。
【0036】
この場合、1次成形金型20は、
図7(a)および
図7(b)に示すように、上金型23と第1下金型24とを備えている。第1下金型24は、その内面がカーボンシート17の下面とほぼ同じ形状に形成されていると共に、カーボンシート17に設けられた複数の切込部17a内に食い込んで配置されて上金型23の内面に押し当てられるように形成されている。
【0037】
また、この第1下金型24は、
図7(a)および
図7(b)に示すように、その内面がカーボンシート17の複数の切込部17a内に食い込んで配置されて上金型23の内面に押し当てられた状態で、これらに対応するカーボンシート17の複数の連結部17bを上金型23に押し当てるように形成されている。上金型23は、その内面の一部がカーボンシート17の複数の連結部17bを第1下金型24の内面に押し当てるように構成されている。
【0038】
このため、1次成形金型20は、
図7(a)および
図7(b)に示すように、第1下金型24内にカーボンシート17を配置させた状態で、第1下金型24上に上金型23を配置させて重ね合わせた際に、第1下金型24の内面の一部がカーボンシート17の複数の切込部17a内に食い込んで配置されて上金型23の内面に押し当てられた状態で、これらに対応するカーボンシート17の複数の連結部17bを第1下金型24の内面と上金型23の内面の一部とで挟む。
【0039】
これにより、カーボンシート17の複数の連結部17bが上金型23の内面の一部と第1下金型24の内面との間に挟まれて、カーボンシート17が1次成形金型20内に固定される。このときには、
図7(a)および
図7(b)に示すように、1次成形金型20内においてカーボンシート17の上面と上金型23の内面との間にキャビティと称する1次空間25が上金型23の一部、つまり複数の切込部17aおよび複数の連結部17bに対する箇所を除いて設けられる。
【0040】
この状態で、1次成形金型20内の1次空間25に樹脂を流し込んで、カーボンシート17の上面に第1樹脂層18を形成する。この場合には、上金型23の一部である複数の切込部17aおよび複数の連結部17bに対する箇所に樹脂が流れ込まないので、第1樹脂層18に複数の切欠き凹部12aが形成される。このため、これら複数の切欠き凹部12aには、カーボンシート17の複数の切込部17aおよび複数の連結部17bが対応し、これらが第1樹脂層18の上側に露出する。これにより、1次成形品21が形成される。
【0041】
第2の工程では、
図8(a)および
図8(b)に示すように、1次成形金型20で形成された1次成形品21を2次成形金型22内に配置して、カーボンシート17の下面に第2樹脂層19を形成して外装本体部12である2次成形品を成形する。この場合、2次成形金型22は、1次成形金型20と同じ上金型23と、1次成形金型20と異なる第2下金型26と、を備えている。この場合、第2下金型26の内面には、複数の切込部17aに対応する箇所に挿入部19aを形成するための複数の型抜き部(図示せず)が設けられている。
【0042】
このため、1次成形金型20の上金型23と第1下金型とを離型した際には、1次成形品21を上金型23内に残した状態で、第1下金型24を取り外す。この状態で、1次成形品21が配置された上金型23を第2下金型上に配置させて重ね合わせる。このときには、1次成形品21のカーボンシート17の下面と第2下金型26の内面との間にキャビティと称する2次空間27が複数の型抜き部(図示せず)を除いて形成される。
【0043】
この状態で、2次成形金型22内の2次空間27に樹脂を流し込んで、カーボンシート17の下面に第2樹脂層19を形成して、2次成形品である外装本体部12を形成する。このときには、カーボンシート17の複数の切込部17aに対応する上金型23の内面、および上金型23の内面によって押え付けられたカーボンシート17の複数の連結部17bの下面にも2次空間27が複数の型抜き部(図示せず)を除いて設けられているので、これらの箇所にも第2樹脂層19が形成される。
【0044】
この状態では、第2樹脂層19がカーボンシート17の下面の全域、つまり1次成形品21の複数の切欠き凹部12aにおける複数の切込部17aに対応する箇所、および複数の連結部17bの下面に第2樹脂層19が形成される。このときには、複数の切込部17aに対応して形成された第2樹脂層19に、第2下金型26の複数の型抜き部(図示せず)によって複数の挿入部19aが形成される。また、このときには、複数の連結部17bの各内周側が第1、第2樹脂層18、19から内周側に突出して露出する。
【0045】
これにより、本実施形態では、
図4に示すように、カーボンシート17の上面に第1樹脂層18が形成され、この第1樹脂層18の4箇所に、カーボンシート17の複数の切込部17aおよび複数の連結部17bが露出する複数の切欠き凹部12aが形成され、カーボンシート17の下面に第2樹脂層19が形成され、この第2樹脂層19に複数の挿入部19aが複数の切込部17aに対応して形成された2次成形品である外装本体部12が得られる。
【0046】
第3の工程では、2次成形品である外装本体部12の複数の切欠き凹部12aおよびその各周縁部に複数の保護部材13をそれぞれ対応させて配置する。すなわち、複数の保護部材13の各本体部15を外装本体部12の複数の切欠き凹部12aおよびその各周縁部に配置して、カーボンシート17の複数の切込部17aおよび複数の連結部17bを覆って保護する。このときには、複数の保護部材13の各カバー部16をケース本体10に設けられたバンド取付部3の一対の取付突起部3aの外面に配置する。
【0047】
2次成形品である外装本体部12の複数の切欠き凹部12aおよびその各周縁部に複数の保護部材13をそれぞれ対応させて配置した状態では、複数の保護部材13の各本体部15に設けられた挿入孔15aが、外装本体部12の複数の切欠き凹部12aに対応する第2樹脂層19に設けられた複数の挿入部19aに同一軸上に対応すると共に、ケース本体10に設けられた複数のねじ穴10bにも同一軸上で対応する。
【0048】
この状態で、複数の保護部材13を複数のねじ部材14によってケース本体10にそれぞれ取り付ける。このときには、複数の保護部材13の各本体部15の挿入孔15aにその上方から複数のねじ部材14の各ねじ部14aをそれぞれ挿入させ、この挿入された各ねじ部14aを外装本体部12の第2樹脂層19に設けられた複数の挿入部19aに挿入させて、ケース本体10の複数のねじ穴10bにそれぞれ螺入させる。
【0049】
そして、複数のねじ部材14の各ねじ部14aをケース本体10の複数のねじ穴10bに螺合させて締め付けると、複数のねじ部材14の各頭部14bが複数の保護部材13の各本体部15の挿入孔15aの座ぐり部15bに配置されて、各本体部15が外装本体部12の切欠き凹部12aをケース本体10に押し付ける。
【0050】
これにより、外装本体部12が複数の保護部材13によってケース本体10に固定されると共に、外装本体部12の複数の切欠き凹部12aが複数の保護部材13によって補強される。すなわち、カーボンシート17は、複数の保護部材13によってカーボンシート17の複数の切欠き凹部12aにおける複数の切込部17aに対応する第2樹脂層19および複数の連結部17bが保護されると共に、複数の切込部17aに対応する第2樹脂層19および複数の連結部17bの強度が補強される。
【0051】
このように、この腕時計における外装ケース11の製造方法によれば、カーボン繊維によって形成されたカーボンシート17の一部を1次成形金型20内に挟み付けてカーボンシート17を固定し、この状態でカーボンシート17の上面に第1樹脂層18を形成して、第1樹脂層18にカーボンシート17の一部が露出する切欠き凹部12aが設けられた1次成形品21を成形する第1の工程と、この1次成形品21を2次成形金型22内に配置させて、カーボンシート17の下面に第2樹脂層19を形成して外装本体部12である2次成形品を成形する第2の工程と、この外装本体部12の切欠き凹部12aにカーボンシート17の一部を覆って保護する保護部材13を配置する第3の工程と、を備えていることにより、外装ケース11を良好に製作することができる。
【0052】
すなわち、この外装ケース11の製造方法では、第1の工程でカーボンシート17の一部を1次成形金型20内に挟み付けてカーボンシート17を固定しているので、1次成形金型20内に樹脂を流し込んで、カーボンシート17の上面に第1樹脂層18を形成する際に、1次成形金型20内に流し込まれた樹脂によってカーボンシート17がめくれることがない。
【0053】
このため、この外装ケース11の製造方法では、第1の工程でカーボンシート17の上面に第1樹脂層18を確実にかつ良好に形成することができると共に、第2の工程でカーボンシート17の下面に第2樹脂層19を確実にかつ良好に形成することができるので、外装本体部12である2次成形品を精度良く良好に成形することができる。
【0054】
また、この外装ケース11の製造方法では、第3の工程で2次成形品である外装本体部12の切欠き凹部12aに、カーボンシート17の一部を覆って保護する保護部材13を配置するので、外装本体部12の切欠き凹部12aが設けられていても、この切欠き凹部12aを保護部材13によって確実にかつ良好に保護することができ、これにより外装ケース11が外部から衝撃を受けても複数の保護部材13によって衝撃を緩衝することができるので、外装本体部12の中で強度の低い複数の切欠き凹部12aの破損を防ぐことができる。
【0055】
本実施形態の場合、この外装ケース11の製造方法では、第1の工程におけるカーボンシート17がほぼリング状に形成されており、このカーボンシート17の一部は、外周側に切込部17aが設けられ、内周側に一次成形金型20で挟まれる連結部17bが設けられていることにより、第1の工程でカーボンシート17の上面に第1樹脂層18を形成する際に、カーボンシート17の連結部17bを1次成形金型20内で挟み付けてカーボンシート17を確実にかつ良好に固定することができる。
【0056】
すなわち、この外装ケース11の製造方法では、1次成形金型20が上金型23と第1下金型24とを備え、第1下金型24の内面が、カーボンシート17に設けられた複数の切込部17a内に食い込んで配置されて上金型23の内面に押し当てられた状態で、これらに対応するカーボンシート17の複数の連結部17bを上金型23の内面に押し当てるので、1次成形金型20内においてカーボンシート17の上面と上金型23の内面との間にキャビティと称する1次空間25を設けても、1次成形金型20内にカーボンシート17を確実にかつ良好に固定することができる。
【0057】
この場合、この外装ケース11の製造方法では、1次成形金型20の第1下金型24内にカーボンシート17が配置された状態で、第1下金型24上に上金型23が配置されて重ね合わされた際に、第1下金型24の内面がカーボンシート17の複数の切込部17a内に食い込んで配置されて上金型23の内面に押し当てられた状態で、これらに対応するカーボンシート17の複数の連結部17bを第1下金型24の内面と上金型23の内面との間に挟み付けることができるので、1次成形金型20内にカーボンシート17を確実にかつ良好に固定することができる。
【0058】
また、この外装ケース11の製造方法では、1次成形金型20と2次成形金型22とが、それぞれ第1金型である上金型23と第2金型である第1、第2下金型24、26とを備え、カーボンシート17の上面における一部、つまりカーボンシート17の連結部17bの上面を押える上金型23が1次成形金型20と2次成形金型22と同じ金型であることにより、金型の簡素化を図ることができると共に、製造工程の簡素化を図ることができる。
【0059】
すなわち、この外装ケース11の製造方法では、上金型23を1次成形金型20と2次成形金型22とに共通化させることができるので、金型製作の簡素化を図ることができると共に、第1の工程で1次成形品21を成形して1次成形金型20を離型する際に、1次成形金型20の上金型23内に1次成形品21を残した状態で、この上金型23を2次成形金型22の第2下金型26に重ね合わせて2次成形品である外装本体部12を形成することができるので、製造工程の簡素化を図ることができる。
【0060】
また、この外装ケース11の製造方法では、第3の工程で外装本体部12の切欠き凹部12aに配置された保護部材13をケース本体10にねじ部材14によって取り付けて、外装本体部12をケース本体10に固定する。これにより、保護部材13によって外装本体部12の切欠き凹部12aに露出したカーボンシート17の連結部17bを覆って保護することができる。また、外装本体部12の切欠き凹部12aを保護部材13によって補強することができるので、外装本体部12の中で切欠き凹部12aの強度を確保して強度の低い切欠き凹部12aの破損を防ぐことができる。
【0061】
本実施形態の場合、この外装ケース11の製造方法では、ウレタン樹脂などの合成樹脂によって形成された保護部材13が、外装本体部12の切欠き凹部12aおよびその周縁部を覆って配置される本体部15と、ケース本体10の一対の取付突起部3aの外面を覆うカバー部16と、を備えているので、保護部材13の本体部15を外装本体部12の切欠き凹部12aおよびその周縁部に配置させると共に、保護部材13のカバー部16をケース本体10に設けられたバンド取付部3の一対の取付突起部3aの外面に配置させた状態で、本体部15をねじ部材14によってケース本体10に確実に固定することができる。
【0062】
すなわち、この外装ケース11の製造方法では、保護部材13の本体部15の挿入孔15aにその上方からねじ部材14のねじ部14aを挿入させ、この挿入されたねじ部14aを外装本体部12の第2樹脂層19に設けられた挿入部19aに挿入させて、ケース本体10のねじ穴10bに螺合させて締め付けると、ねじ部材14の頭部14bが保護部材13の本体部15における挿入孔15aの座ぐり部15bに配置されて、本体部15が外装本体部12の切欠き凹部12aをケース本体10に確実に押し付けることができる。
【0063】
これにより、この外装ケース11の製造方法では、外装本体部12を保護部材13によってケース本体10に確実にかつ良好に固定することができると共に、外装本体部12の切欠き凹部12aを保護部材13によって確実に補強することができる。すなわち、カーボンシート17は、複数の保護部材13によってカーボンシート17の切欠き凹部12aにおける切込部17aに対応する第2樹脂層19および連結部17bを保護することができると共に、切込部17aに対応する第2樹脂層19および連結部17bを補強して、外装本体部12の中で強度の低い切欠き凹部12aの破損を防ぐことができる。
【0064】
また、この外装ケース11によれば、カーボン繊維によって形成されたカーボンシート17の上下両面に第1、第2樹脂層18、19が設けられ、且つカーボンシート17の上面に設けられた第1樹脂層18にカーボンシート17の一部が露出する切欠き凹部12aが設けられた外装本体部12と、第1樹脂層18の切欠き凹部12aに配置されてカーボンシート17の一部を覆って保護する保護部材13と、を備えていることにより、外装ケース11を確実に且つ良好に製作することができると共に、外装本体部12の切欠き凹部12aを良好に保護することができる。
【0065】
すなわち、この外装ケース11では、外装本体部12に切欠き凹部12aが設けられているので、外装ケース11を確実に且つ良好に製作することができると共に、外装本体部12に切欠き凹部12aを設けても、この切欠き凹部12aを保護部材13によって保護することができ、これにより外装ケース11が外部から衝撃を受けても保護部材13によって衝撃を緩衝することができるので、外装本体部12の中で強度の低い切欠き凹部12aの破損を確実に防ぐことができる。
【0066】
本実施形態の場合、この外装ケース11では、カーボンシート17の上下両面に設けられた樹脂層が、カーボンシート17上面に設けられてカーボンシート17の一部が露出する切欠き凹部12aが設けられた第1樹脂層18と、カーボンシート17の下面に設けられた第2樹脂層19と、を備えていることにより、カーボンシート17の上下両面を第1樹脂層18と第2樹脂層19とによって良好に保護することができ、これによりカーボンシート17が軽くて強度が高く、かつ脆い性質であっても、カーボンシート17の破損を防ぐことができる。
【0067】
また、この外装ケース11では、カーボンシート17がほぼリング状に形成されており、外装本体部12の切欠き凹部12aに対応するカーボンシート17の一部は、外周側に切込部17aが設けられ、内周側に連結部17bが設けられていることにより、外装本体部12の切欠き凹部12aに対応する箇所のカーボンシート17に切込部17aが設けられていても、連結部17bによってカーボンシート17をほぼリング状に連結させて形成することができる。
【0068】
さらに、この外装ケース11では、保護部材13がねじ部材14によってケース本体10に取り付けられて外装本体部12をケース本体10に固定することにより、保護部材13によって外装本体部12の切欠き凹部12aに露出したカーボンシート17の連結部17bを保護することができるほか、外装本体部12の切欠き凹部12aを保護部材13によって補強することができるので、外装本体部12の中で切欠き凹部12aの強度を確保して強度の低い切欠き凹部12aの破損を防ぐことができる。
【0069】
なお、上述した実施形態では、外装ケース11がほぼリング状であったため、カーボンシート17もほぼリング状としたが、カーボンシート17の形状はこれに限定されない。カーボンシートは外装ケースの形状に合わせた形で配置されてよく、その場合も樹脂を流入する際にカーボンシートがめくれないよう金型で挟み、樹脂流入後カーボンシートが露出した部分を覆う保護部材を設ければよい。また、外装ケースとカーボンシートが似た形状をとらなくても良い。例えば、外装ケースの補強したい部分の形に合わせてカーボンシートの形状を適宜変更させても良い。
【0070】
また、上述した実施形態では、カーボンシート17の複数の連結部17bはカーボンシート17の内周側に設けられていたが、これに限定されない。例えば外周側に設けても良い。
【0071】
また、上述した実施形態では、複数の保護部材13は合計で4箇所に設けられていたが、設ける数はこれに限定されない。例えば、製造時にカーボンシートが露出される部分がさらに複数箇所あるのであれば、適宜追加されても良い。さらに、保護部材の配置に関しても、上述した実施形態に限定されず、カーボンシートが露出される部分により変形しても良い。また、上述した実施形態では、複数の保護部材13にはカバー部16が備わっていたが、これに限定されない。カーボンシートが露出される部分を覆うことができれば良い。
【0072】
また、上述した実施形態では、複数の保護部材13をねじ部材14で固定しているが、固定方法はこれに限定されない。同様の目的が達成される範囲内であれば、変更があっても良い。
【0073】
さらに、上述した実施形態では、腕時計に適用した場合について述べたが、この発明は必ずしも腕時計である必要はなく、例えばトラベルウオッチ、目覚まし時計、置き時計、掛け時計などの各種の時計に適用することができる。
【0074】
以上、この発明の一実施形態について説明したが、この発明は、これに限られるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲を含むものである。
以下に、本願の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
【0075】
(付記)
請求項1に記載の発明は、カーボン繊維によって形成されたカーボンシートの表裏両面に樹脂層が設けられ、且つ前記カーボンシートの表面に設けられた前記樹脂層に前記カーボンシートの一部が露出する切欠き凹部が設けられた外装本体部と、前記樹脂層の前記切欠き凹部を覆って保護する保護部材と、を備えていることを特徴とする外装部材である。
【0076】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の外装部材において、前記樹脂層は、前記カーボンシートの前記表面に設けられて前記カーボンシートの一部が露出する前記切欠き凹部が設けられた第1樹脂層と、前記カーボンシートの裏面に設けられた第2樹脂層と、を備えていることを特徴とする外装部材である。
【0077】
請求項3に記載の発明は、請求項1または請求項2に記載の外装部材において、前記カーボンシートは、ほぼリング状に形成されており、前記外装本体部の前記切欠き凹部に対応する前記カーボンシートの前記一部には、切込部および連結部が設けられていることを特徴とする外装部材である。
【0078】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の外装部材において、前記カーボンシートの前記一部は、前記カーボンシートの外周側に前記切込部が設けられ、前記カーボンシートの内周側に前記連結部が設けられていることを特徴とする外装部材である。
【0079】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜請求項4のいずれかに記載の外装部材において、前記保護部材は、ねじ部材によってケース本体に取り付けられることを特徴とする外装部材である。
【0080】
請求項6に記載の発明は、請求項1〜請求項5のいずれかに記載された外装部材を備えていることを特徴とするケースである。
【0081】
請求項7に記載の発明は、請求項6に記載されたケースを備えていることを特徴とする時計である。