(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1のような従来の車いすにあっては、介護者が高齢なため非力であったり、荷物を持っていたりする場合に、手で操作レバーをうまく操作できない場合があった。また、このような操作レバーでは、ブレーキ状態を維持させて車いすを駐車しておくことが困難であった。
【0005】
そこで本発明は、従来のサーボブレーキやドラムブレーキが装着されている車いすに後から容易に装着可能であり、当該ブレーキを足で操作することのできるフットペダルブレーキ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、ブレーキレバー片を有するブレーキ付き車いすの車輪の回転を、前記ブレーキを用いて停止させるために当該車いすに取り付けられるフットペダルブレーキ装置であって、ベース部材を備え、前記車いすの前記ブレーキに係る車軸の車軸部に固定される固定部が、前記ベース部材の一端部に 設けられており、前記ベース部材の他端部に、フットペダルが傾動自在に軸支されていると共に、さらに前記ベース部材には、前記フットペダルが傾動するのに伴い当該ベース部材に対して変位するブレーキレバー片当接部材が支持されており、前記ベース部材が車いすの前記車軸部に固定された状態で、前記ブレーキレバー片当接部材は、前記ブレーキに変位自在に取り付けられて前記ブレーキを制御する前記ブレーキレバー片に当接しており、前記フットペダルが傾動すると前記ブレーキレバー片当接部材が変位して前記ブレーキレバー片が変位することを特徴とするフットペダルブレーキ装置である。
【0007】
かかる構成にあって、前記ベース部材は、前記固定部と前記フットペダルとを兼ね備えた構造となっているため、構造が簡素化されており、前記ブレーキの付いた従来の車いすに前記フットペダルブレーキ装置を後から容易に装着することができる。そして、前記フットペダルブレーキ装置が車いすに装着された状態では、前記フットペダルを足で傾動させることによって前記ブレーキレバー片当接部材が変位し、これによって前記ブレーキレバー片が変位して前記ブレーキが制御される。したがって前記ブレーキを手で操作する必要がなくなり、しかも介護者が非力な場合でもフットペダルであれば体重をかけて踏み込むだけで操作できるため、介護者の負担を大幅に低減することができる。加えて、前記固定部は、前記ドラムブレーキに係る車輪の車軸部に取り付けられる構成であるため、 車いすに当該フットペダルブレーキ装置を装着した状態で各部材をコンパクトに配置することができるようになり、無駄のないフットペダルブレーキ構造を実現することができる。
【0008】
なお、本発明におけるブレーキは、いわゆるサーボブレーキや、いわゆるドラムブレーキ等を含むものである。
【0009】
さらに、前記ベース部材は、互いに離間した第1軸受け部と第2軸受け部とを備え、前記第1軸受け部と前記第2軸受け部との間に前記フットペダルの傾動軸を構成する軸部材が差し渡されていると共に、前記第1軸受け部と前記第2軸受け部との間で前記フットペダルが傾動自在に支持されていることが望ましい。
【0010】
かかる構成とすることにより、前記フットペダルにおける支持構造の強度を大幅に向上させることが可能となり、車いすに装着されて足で踏み込まれた場合にも十分に強度を確保することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明のフットペダルブレーキ装置は、既存の車いすに対して容易に後付けすることができるため、新規に車いすを買い換える等の無駄なコストがかからない効果がある。また、車いすに装着された際には、介護者の操作負担を大幅に低減することができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施例にかかるフットペダルブレーキ装置を装着した車いすの側面図 である。
【
図2】フットペダルブレーキ装置が非作動状態となっている車いすの後方を示す部分拡大説明図である。
【
図3】フットペダルブレーキ装置の部分横断面図である。
【
図4】車いすに装着されたフットペダルブレーキ装置の横断面を示す部分拡大説明図である。
【
図5】非作動状態となっているフットペダルブレーキ装置の側方を示し、(a)は部分拡大説明図であり、(b)は一部省略拡大説明図である。
【
図6】非作動状態となっているフットペダルブレーキ装置であって、(a)は
図4におけるA−A線で切断した状態を示す説明図であり、(b)は
図4におけるB−B線で切断した状態を示す説明図である。
【
図7】非作動状態となっているフットペダルブレーキ装置であって、
図4におけるC−C線で切断した状態を示す説明図である。
【
図8】フットペダルブレーキ装置が作動状態となっている車いすの後方を示す部分拡大説明図である。
【
図9】作動状態となっているフットペダルブレーキ装置の側方を示し、(a)は部分拡大説明図であり、(b)は一部省略拡大説明図である。
【
図10】作動状態となっているフットペダルブレーキ装置であって、(a)は
図4におけるA−A線で切断した状態を示す説明図であり、(b)は
図4におけるB−B線で切断した状態を示す説明図である。
【
図11】作動状態となっているフットペダルブレーキ装置であって、
図4におけるC−C線で切断した状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明のフットペダルブレーキ装置を既存のサーボブレーキ付き車いすに適用した実施例を詳細に説明する。なお、本発明は、下記に示す実施例に限定されることはなく、適宜設計変更が可能である。
【0014】
まず、車いす1の概要について説明する。
図1に示すように、車いす1は、金属製パイプで構成された本体フレーム部10を備えている。本体フレーム部10は、左右一対の側枠10A,10Aを備えており、側枠10Aは、前後方向に形成されたベースフレーム部11と、ベースフレーム部11の後端部から上方へ向かって立ち上がる後脚フレーム部12と、後脚フレーム部12の上端部からさらに上方に延出された背フレーム部13と、後脚フレーム部12の上端部から前方へかつ水平に差し出された上フレーム部15とを有している。
【0015】
また、後脚フレーム部12には、本発明における車輪としての後車輪2の車軸を支持する車軸部3が配設されている。さらに、車軸部3には、サーボブレーキ4が配設されている。
【0016】
また、サーボブレーキ4からは、ブレーキレバー片としての板片状のサーボブレーキレバー片5が後側へ向かって突き出されている。そして、サーボブレーキレバー片5の先端部にはワイヤ6の一端が固定されている。なお、サーボブレーキ4の内部構造は、従来から用いられているものが好適に採用できるため、詳細な説明は省略する。
【0017】
また、ベースフレーム部11には、左右の側枠10A,10Aを互いに接続する前側X枠21と、後側X枠22とが接続されている。前側X枠21は、互いに回動自在に軸支された一対の前側X杆19,19によって構成され、後側X枠22は、互いに回動自在に軸支された一対の後側X杆20,20によって構成されている。
【0018】
また、前側X杆19,19及び後側X杆20,20の上端部には前後方向に伸びる座フレーム部23が取り付けられている。座フレーム部23は、車いす1が使用状態にあるときは上フレーム部15に設けられた座フレーム受け24に載置されて下側から支持されている。かかる構成により、車いす1が折り畳み可能となっている。
【0019】
さらに、ベースフレーム部11、及び上フレーム部15の前端部には前フレーム部25が上下方向に差し渡されており、前フレーム部25の下端にはキャスター26が取り付けられている。そして前フレーム部25から前側に向かってフットフレーム部27が取り付けられ、フットフレーム部27にはフットレスト部28が取り付けられている。
【0020】
また、背フレーム部13の上端部は後側へ向かって湾曲しており、その湾曲部分には、介護者が車いす1を移動させる際に手で掴むハンドル部30と、サーボブレーキ4を操作するワイヤ6の他端が固定されたブレーキレバー31が取り付けられている。
【0021】
以下、本発明の要部について説明する。
【0022】
図2に示すように、後脚フレーム部12における車軸部3の内側面(後車輪2とは反対側の面)に、フットペダルブレーキ装置40が後付けされている。さらに詳述すると、フットペダルブレーキ装置40は、板形状のベース部材50を備え、ベース部材50の前端部(一端部)に、車軸部3に固定される固定部53が形成されている。
【0023】
具体的にベース部材50は、
図3に示すように、折り曲げられた一対の板材からなる第1ベース板部51及び第2ベース板部52で構成されている。そして、第1ベース板部51及び第2ベース板部52の前端部には、各々貫通孔51A,52Aが形成された凹段部形状の固定部53が設けられている。そして、
図4に示すように、固定部53の貫通孔51A,52Aに車軸となる固定ボルト33が挿通されることによって、固定部53が車軸部3に外嵌して面接触し、互いに固定されている。
【0024】
一方、
図3に示すように、ベース部材50の後端部(他端部)には、第1ベース板部51及び第2ベース板部52の板厚方向(車いす1の左右方向)に沿って互いに離間して対向している第1軸受け部54及び第2軸受け部55が形成されている。そして、第1軸受け部54と第2軸受け部55との間には、傾動軸を構成する軸部材としての傾動軸ピン56が差し渡されており、かかる軸受構造によって、ペダル部材60(
図2参照)が支持されている。具体的には、ペダル部材60の下端部(一端部)が、傾動軸ピン56に傾動自在に取り付けられている。
【0025】
さらに、ペダル部材60の詳細と、ペダル部材60周辺のリンク機構について説明する。
ペダル部材60は、
図3〜
図7等に示すように、共に略L字形状に折り曲げられた板材からなる第1ペダル部61及び第2ペダル部62が重ねられて構成されている。そして、ペダル部材60の下端部において、車いす1の左右方向に沿って重ねられている第1ペダル部61と第2ペダル部62との隙間の部分に、
図6,7に示すような側面視で略「く」の字形状のリンク部材70が介装されている。そして、このリンク部材70の上端部(一端部)が、第1リンクピン71を介してペダル部材60(第1ペダル部61及び第2ペダル部62)に軸支されている。
【0026】
また、
図2,3,
図5(b)に示すように、第1軸受け部54及び第2軸受け部55には、略コの字部材からなるブレーキレバー片当接部材80が当接部材用軸ピン81を介して軸支されている。具体的には、ブレーキレバー片当接部材80は、上方に向けて開放しており、かつ第1軸受け部54及び第2軸受け部55の外側を覆うように配置されている。また、このブレーキレバー片当接部材80には、車いす1の左右方向に沿うようにして第2リンクピン72が差し渡されている。
【0027】
そして、第2リンクピン72には、
図6,7に示すように、上述したリンク部材70の下端部(他端部)が軸支されている。
【0028】
また、
図3に示すように、ブレーキレバー片当接部材80における後車輪2側に向く側面部には、後車輪2に向かって突出した突出部85が設けられている。さらに、突出部85には調節ボルト86が螺着されている。
【0029】
そして、
図4,
図5(a)に示すように、当該フットペダルブレーキ装置40が車軸部3に固定された状態では、調節ボルト86の頭部が、サーボブレーキ4のサーボブレーキレバー片5の先端部に下から当接している。
【0030】
また、
図5等に示すように、ペダル部材60の上端部(他端部)であって、第1ペダル部61及び第2ペダル部62が上下方向に積層されている部分は、合成樹脂製のカバー65によって被覆されてフットペダル64が構成されている。なお、かかるフットペダル64は、通常、略水平位置となる方向に弾性部材であるコイルバネ(図示省略)によって付勢されている。
【0031】
次に、フットペダルブレーキ装置40の動作態様について説明する。
【0032】
図1〜
図7に示すように、フットペダルブレーキ装置40のフットペダル64が略水平位置となる非作動状態αにあっては、ブレーキレバー片当接部材80に取り付けられた調節ボルト86の頭部がサーボブレーキレバー片5の先端部に下から当接しているのみとなる。かかる状態では、サーボブレーキレバー片5は操作されておらず、サーボブレーキ4は作動しないため、後車輪2は回転自在である。
【0033】
また、
図7に示すように、このときペダル部材60の前側を向いた第1縁部66が、当接部材用軸ピン81に当接する。このため、フットペダル64の傾動範囲が規制されて、フットペダル64が略水平状態を越えて前側へ過剰に傾動することが抑制される。
【0034】
一方、
図8〜
図11に示すように、フットペダルブレーキ装置40のフットペダル64が足で踏み込まれ、そして略水平位置から後方へ傾動した作動状態βとなると、リンク部材70を介してブレーキレバー片当接部材80が変位し、これに伴い調節ボルト86が上方向へ移動する。そうすると、調節ボルト86に当接していたサーボブレーキレバー片5の先端部が上側に向かって押し上げられて変位する。このように、サーボブレーキレバー片5の先端部が上側に向かって変位すると、サーボブレーキ4が作動し、後車輪2の回転が停止する。また、フットペダル64は、このように傾動した状態ではペダル部材60のトグル機構 によって この傾動位置に維持され、駐車ブレーキとして機能する。
【0035】
また、
図11に示すように、このときペダル部材60の前側を向いた第1縁部66とは異なる第2縁部67が当接部材用軸ピン81に当接する。このため、フットペダル64が後側へ過剰に傾動することが抑制される。
【0036】
なお、フットペダルブレーキ装置40が作動状態βにあるときは、ブレーキレバー31を操作してもワイヤ6の牽引によってサーボブレーキレバー片5が変位することはない。このため、ブレーキレバー31の操作によってサーボブレーキ4を非作動状態αとすることは不可能となる。逆に、ブレーキレバー31を操作することによってサーボブレーキ4を作動状態とした上で、さらにフットペダルブレーキ装置40を作動状態βとすることは可能である。このとき、フットペダルブレーキ装置40を、一旦、作動状態βとすれば、ブレーキレバー31の操作とは無関係にサーボブレーキ4は作動状態βとなって後車輪2の回転が停止する。
【0037】
なお、フットペダルブレーキ装置40を非作動状態αから作動状態βへ移行するためには、フットペダル64の後側(介護者側)を踏み込んで傾動させればよい。また作動状態βから非作動状態αへ移行するためには、逆にフットペダル64の前側を踏めばよい。そうすると、ペダル部材60のフットペダル64は、図示しない弾性部材(コイルバネ)によって略水平位置となるように付勢されて容易に非作動状態αとなる。
【0038】
上記したフットペダルブレーキ装置40は、一つのベース部材50に対して固定部53とフットペダル64とを兼ね備えた構造であるため、全体がコンパクトな構造となって容易に後付けできる。
【0039】
また、ベース部材50の第1軸受け部54と第2軸受け部55との間に、フットペダル64を支持する傾動軸ピン56が差し渡され、かつ第1軸受け部54と第2軸受け部55との間でペダル部材60が軸支されているため、フットペダル64の支持構造が強固となる。
【0040】
なお、各部の寸法形状は適宜自由に選択可能である。使用される材料も特に限定されないが、フットペダルブレーキ装置40においてカバー65以外の部分は強度確保の観点から金属材料が用いられるのが望ましい。