特許第6913412号(P6913412)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6913412
(24)【登録日】2021年7月14日
(45)【発行日】2021年8月4日
(54)【発明の名称】消音器
(51)【国際特許分類】
   F01N 1/00 20060101AFI20210727BHJP
   F01N 13/18 20100101ALI20210727BHJP
【FI】
   F01N1/00 E
   F01N13/18
【請求項の数】2
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2020-184864(P2020-184864)
(22)【出願日】2020年11月5日
【審査請求日】2021年3月5日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000175777
【氏名又は名称】株式会社クレファクト
(74)【代理人】
【識別番号】110003085
【氏名又は名称】特許業務法人森特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡 央
【審査官】 楠永 吉孝
(56)【参考文献】
【文献】 特開平02−191809(JP,A)
【文献】 独国特許出願公開第19945350(DE,A1)
【文献】 独国特許出願公開第102005044376(DE,A1)
【文献】 特開平05−125935(JP,A)
【文献】 独国特許出願公開第102009053028(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N 1/00〜 1/24
F01N 13/00〜13/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一部材の縁部と第二部材の縁部とを接合することにより外殻が形成される消音器であって、
前記第一部材の縁部は、少なくとも一部において前記第二部材の内側と接触し、かつ、少なくとも一部において前記第二部材の外側と接触し、
前記第一部材の縁部と前記第二部材の縁部は、互いに接触しない部分において2以上の開口部を形成し、
前記第一部材の縁部と前記第二部材の縁部は、全周にわたって、外側に屈曲した形状であり、
前記第一部材の縁部において、前記第二部材の内側と接触する縁部が有する外側に屈曲した部分は、前記第二部材の外側と接触する縁部が有する外側に屈曲した部分より短く、
前記第二部材の縁部において、前記第一部材の内側と接触する縁部が有する外側に屈曲した部分は、前記第一部材の外側と接触する縁部が有する外側に屈曲した部分より短いことを特徴とする消音器。
【請求項2】
開口部は、他の開口部と対向する位置に形成され
前記第一部材の縁部と前記第二部材の縁部の内側とが接合された部分により形成される角の数は、前記第一部材の縁部と前記第二部材の縁部の外側とが接合された部分により形成される角の数と同一である請求項1記載の消音器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、消音器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、自動車の排気管等に設けられる消音器において、複数の部材を接合することにより形成される外殻が広く用いられている。しかし、複数の部材を接合するためには、接合部分の形状を高い精度で加工する必要があり、接合部分の形状精度が低い場合においては隙間が生じる等の問題があった。そこで、外殻を形成する際に接合部分に隙間が生じることを防止した消音器が提案されている。
【0003】
このような消音器に関する従来技術として、特許文献1には、口拡げ部と、フランジと、周壁を備える構成が提案されている。これらを備える構成により、特許文献1が開示する消音器は、外殻(シェル)を形成する際に、接合部分(嵌合部分)に隙間が生じることを抑制し、製造工程の効率化を図ることができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許5674849号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1が開示する消音器は、第一部材(第1の加工品)の縁部(開口端部)に、第二部材(第2の加工品)の縁部を嵌合し、嵌合部分で全周にわたって溶接するものである。このため、第一部材の縁部又は第二部材の縁部の形状精度が低く、第一部材の縁部の周長が第二部材の縁部の周長より大きい場合、口拡げ部等を備える構成としてもなお、接合部分に隙間が生じるおそれがある。また、第一部材の縁部又は第二部材の縁部の形状精度が低く、第一部材の縁部の周長が第二部材の縁部の周長より小さい場合、嵌合することが不可能となるおそれがある。
【0006】
本発明に係る消音器は、上記課題を解決するためになされたものであり、外殻を形成する複数の部材において、接合部分の形状精度が低い場合においても、安定した接合を可能とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る消音器は、第一部材の縁部と第二部材の縁部とを接合することにより外殻が形成される消音器であって、第一部材の縁部は、少なくとも一部において第二部材の内側と接触し、かつ、少なくとも一部において第二部材の外側と接触し、第一部材の縁部と第二部材の縁部は、互いに接触しない部分において2以上の開口部を形成し、第一部材の縁部と第二部材の縁部は、全周にわたって、外側に屈曲した形状であり、第一部材の縁部において、第二部材の内側と接触する縁部が有する外側に屈曲した部分は、第二部材の外側と接触する縁部が有する外側に屈曲した部分より短く、第二部材の縁部において、第一部材の内側と接触する縁部が有する外側に屈曲した部分は、第一部材の外側と接触する縁部が有する外側に屈曲した部分より短いことを特徴とする。
【0008】
本発明に係る消音器において、開口部は、他の開口部と対向する位置に形成され
前記第一部材の縁部と前記第二部材の縁部の内側とが接合された部分により形成される角の数は、前記第一部材の縁部と前記第二部材の縁部の外側とが接合された部分により形成される角の数と同一であることが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る消音器は、第一部材の縁部と第二部材の縁部とを接合することにより外殻が形成され、第一部材の縁部は、少なくとも一部において第二部材の内側と接触し、かつ、少なくとも一部において第二部材の外側と接触し、第一部材の縁部と第二部材の縁部は、互いに接触しない部分において2以上の開口部を形成するため、接合部分の形状精度が低い場合においても、安定した接合が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明に係る消音器の一例を示す斜視図である。
図2】本例の消音器を示す正面図である。
図3】本例の消音器における第一部材を示す斜視図である。
図4】本例の消音器における第一部材を示す平面図である。
図5】本例の消音器における第二部材を示す斜視図である。
図6】本例の消音器における第二部材を示す平面図である。
図7図1のA−A線による本例の消音器の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明を実施するための形態について図を参照しながら説明する。
【0012】
図1及び図2に示すように、本例の消音器10は、第一部材20の縁部21と第二部材30の縁部31とを接合することにより外殻40が形成される構成となっている。また、第一部材20の縁部21と第二部材30の縁部31は、互いに接触しない部分において開口部50を形成する構成となっている。
【0013】
図3及び図4に示すように、第一部材20は、略直方体で下側が開口し、角に丸みを有する形状となっている。縁部21は、上方に凸となる略円弧状に湾曲した湾曲部22を有する。縁部21は、屈曲部23を有し、段状に屈曲した形状である。図4に示すように、縁部21は、全周にわたって屈曲部23を有し、外側に屈曲した形状となっている。本例の消音器10において、第一部材20は、ステンレス材からなり、プレス加工によって成形された部材である。
【0014】
図5及び図6に示すように、第二部材30は、略直方体で上側が開口し、角に丸みを有する形状となっている。縁部31は、下方に凸となる略円弧状に湾曲した湾曲部32を有する。縁部31は、屈曲部33を有し、段状に屈曲した形状である。図6に示すように、縁部31は、全周にわたって屈曲部33を有し、外側に屈曲した形状となっている。本例の消音器10において、第二部材30は、ステンレス材からなり、プレス加工によって成形された部材である。
【0015】
外殻40は、縁部21及び縁部31を溶接により接合することで形成される。外殻40において、第一部材20は上方に位置し、第二部材30は下方に位置する構成となっている。湾曲部22及び湾曲部32は、それぞれ対応する位置に設けられるため、縁部21及び縁部31が接合された場合においても、縁部21及び縁部31は、湾曲部22及び湾曲部32において、互いに接触しない構成となっている。第一部材20は下側が開口した形状であり、第二部材30は上側が開口した形状であるため、これらの形状により、外殻40は、消音を行うための空間を内部に有する構造となっている。
【0016】
開口部50は、縁部21及び縁部31が互いに接触しない部分である湾曲部22及び湾曲部32において形成される。湾曲部22は、上方に凸となる略円弧状に湾曲した形状であり、湾曲部32は、下方に凸となる略円弧状に湾曲した形状であるため、これらにより形成される開口部50は、略円状の形状となっている。消音器10の使用時において、開口部50には、排気管が嵌合される構成となっている。
【0017】
図4に示すように、本例の消音器10において、第一部材20の縁部21は、湾曲部22を境界として、縁部21a及び縁部21bに分けることができる。本例の消音器10において、湾曲部22を境界とした一方の縁部21aは、他方の縁部21bより屈曲部23が短い構成となっている。また、図6に示すように、第二部材30の縁部31は、湾曲部32を境界として、縁部31a及び縁部31bに分けることができる。本例の消音器10において、湾曲部32を境界とした一方の縁部31aは、他方の縁部31bより屈曲部33が長い構成となっている。
【0018】
図7に示すように、本例の消音器10において、第一部材20の縁部21は、少なくとも一部において第二部材30の内側と接触し、かつ、少なくとも一部において第二部材30の外側と接触する構成となっている。
【0019】
本例の消音器10において、縁部21aは、縁部31aの内側と接触し、縁部21bは、縁部31bの外側と接触する構成となっている。また、図1及び図2に示すように、開口部50においても、縁部21aは、縁部31aの内側と接触し、縁部21bは、縁部31bの外側と接触する構成となっている。
【0020】
本例の消音器10は、縁部21及び縁部31が互いに接触しない部分において2以上の開口部50を設け、縁部21aを縁部31aの内側と接触させ、縁部21bを縁部31bの外側と接触させる構成となっている。これにより、第一部材又は第二部材のいずれか一方を他方に嵌合させる構成をとることなく、縁部21及び縁部31を安定して接合させることが可能となる。また、本例の消音器10は、こうした構成とすることで、第一部材又は第二部材のいずれか一方を他方に嵌合させる構成をとることなく、簡易な構造からなる第一部材20及び第二部材30の2つの部材のみにより、外殻40を形成することが可能となる。
【0021】
本例の消音器10は、縁部21aを縁部31aの内側と接触させ、縁部21bを縁部31bの外側と接触させる構成となっているため、第一部材又は第二部材のいずれか一方を他方に嵌合させる構成と比較すると、縁部21又は縁部32の形状精度が低い場合においても、安定して接合させることが可能となる。具体的には、本例の消音器10は、縁部21の周長が縁部31の周長より大きい場合において、縁部21aを縁部31aの内側と接触させ、接触させた状態を維持しつつ、縁部21bを縁部31bの外側と接触させ、縁部21及び縁部32の接合を行うことで、接合部分に隙間が生じることを防止することができる。また、本例の消音器10は、縁部21の周長が縁部31の周長より小さい場合において、縁部21bを縁部31bの外側と接触させ、接触させた状態を維持しつつ、縁部21aを縁部31aの内側と接触させ、縁部21及び縁部32の接合を行うことで、接合部分に隙間が生じることを防止することができる。
【0022】
本例の消音器10において、第一部材20及び第二部材30は、同一の形状からなる部材であり、一方の上下を反転し、縁部21及び縁部31を接合することにより外殻40が形成される構成となっている。こうした構成とすることで、1種類の型により第一部材20及び第二部材30を製造することが可能となり、外殻40の製造に必要なコストを削減することができる。
【0023】
本例の消音器10において、開口部50は、縁部21及び縁部31が互いに接触しない部分である湾曲部22及び湾曲部32において形成される構成となっている。こうした構成とすることで、本例の消音器10は、第一部材20及び第二部材30に孔を設けることなく、排気管等を嵌合させることが可能な外殻40を形成することが可能となるため、外殻40の製造に必要なコストを削減することができる。
【0024】
本例の消音器10において、開口部50は2箇所に設けられ、一方の開口部50は、他方の開口部50と対向する位置に形成される構成となっている。こうした構成とすることで、本例の消音器10は、縁部21aが縁部31aの内側と接触する部分と、縁部21bが縁部31bの外側と接触する部分とを、大きく二分することが可能となり、縁部21及び縁部31を安定して接合することができる。また、これにより、縁部21a又は縁部21bのいずれか一方を縁部31の内側又は外側に接触させつつ、他方を縁部31の内側又は外側に接触させ、縁部21及び縁部31を接合するといった作業が容易となる。
【0025】
本例の消音器10において、開口部50は2箇所に設けられ、一方の開口部50は、他方の開口部50と対向する位置に形成される構成となっている。こうした構成とすることで、略直方体の形状である外殻40において、縁部21a及び縁部31aにより接合部分が構成される面と、縁部21b及び縁部31bにより接合部分が構成される面は、向かい合う位置関係となる。これにより、縁部21a及び縁部31aからなる接合部分により形成される角の数と、縁部21b及び縁部31bからなる接合部分により形成される角の数は、いずれも2つとなる。縁部21a及び縁部31aからなる接合部分により形成される角の数と、縁部21b及び縁部31bからなる接合部分により形成される角の数が異なると、形成される角の数が多い縁部の形状精度を高め、一方の縁部を他方の縁部に嵌め込むように接合する必要があるが、本例の消音器10において、縁部21a及び縁部31aからなる接合部分により形成される角の数と、縁部21b及び縁部31bからなる接合部分により形成される角の数は同一であるため、縁部の形状精度が低い場合においても、一方の縁部を他方の縁部に引っ掛けるように接合をすることが可能となり、縁部21及び縁部31が接合された場合においても、接合部分に隙間が生じることを防止することができる。
【0026】
本例の消音器10において、縁部21及び縁部31は、屈曲部23及び屈曲部33を有する段状に屈曲した形状となっており、縁部21及び縁部31が互いに重なり合った部分において接合される構成となっている。こうした構成とすることで、本例の消音器10は、縁部21及び縁部31を接合させる際に、縁部21と屈曲部33の位置を対応させることが可能となり、また、縁部31と屈曲部23の位置を対応させることが可能となる。具体的には、屈曲部33によって縁部31aの内側に形成された段差において縁部21aを係止させ、屈曲部23によって縁部21bの内側に形成された段差において縁部31bを係止させることで、縁部21及び縁部31は、接合を行う位置において重なり合うこととなる。これにより、本例の消音器10において、溶接の作業を行う者又は装置は、溶接を行う位置を認識することが容易となり、縁部21及び縁部31を接合する作業を効率的に行うことができる。
【0027】
本例の消音器10において、縁部21及び縁部31は、段状に屈曲した先端の部分が互いに重なり合うことにより、外殻40の側面上において接合される構成となっている。このため、本例の消音器10において、縁部21及び縁部31は、外殻40から外側へ突出しない構造となっている。これにより、本例の消音器10は、狭い空間においても設置することが可能となる。また、本例の消音器10は、縁部21及び縁部31を接合する際に、その他の部材や突出した形状を必要としないため、こうした構成をとらない他の消音器と比較すると、外殻40の重量を軽減することが可能となる。
【0028】
本例の消音器10において、縁部21及び縁部31は、外側に屈曲した形状となっている。これにより、第一部材20及び第二部材30を成形する際に、安定したプレス加工を行うことが可能となる。また、縁部21及び縁部31は、屈曲部23及び屈曲部33を有する構成となっているため、こうした構成をとらないものと比較すると、高い剛性を確保することが可能となる。
【0029】
本例の消音器10において、外殻40は、第一部材20及び第二部材30からなる構成となっているが、本発明の消音器において、外殻は、他の部材を含むものであってもよく、本例の構成に限定されない。
【0030】
本例の消音器10において、開口部50は、2箇所に設けられる構成となっているが、本発明の消音器において、開口部の数は、2以上であればよく、本例の構成に限定されない。
【0031】
本例の消音器10において、縁部21及び縁部31は、屈曲した形状となっているが、本発明の消音器において、第一部材の縁部又は第二部材の縁部は、少なくとも一方が屈曲した形状であればよく、本例の構成に限定されない。
【符号の説明】
【0032】
10 消音器
20 第一部材
21 縁部
22 湾曲部
23 屈曲部
30 第二部材
31 縁部
32 湾曲部
33 屈曲部
40 外殻
50 開口部
【要約】
【課題】外殻を形成する複数の部材において、接合部分の形状精度が低い場合においても、安定した接合を可能とする。
【解決手段】第一部材20の縁部21と第二部材30の縁部31とを接合することにより外殻40が形成され、第一部材20の縁部21は、少なくとも一部において第二部材30の内側と接触し、かつ、少なくとも一部において第二部材30の外側と接触し、第一部材20の縁部21と第二部材30の縁部31は、互いに接触しない部分において2以上の開口部50を形成する構成とすることによって、接合部分の形状精度が低い場合においても、安定した接合が可能となる。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7