(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1又は特許文献2に記載されるように、内容物を外部に注出する主開口部とともに副開口部を設けることにより、主開口部の開口からの内容物の注出の際に副開口部の開口から安定して空気を流入できるので、主開口部において注出しようとする内容物と流入しようとする空気とがせめぎ合って脈動が生じることを防止でき、主開口部から円滑に内容物を注出できる。また、主開口部を画成する主スコアに副開口部を画成する副スコアが連続して形成されていることから、開缶作業時は、一つのタブの操作により主開口部と副開口部とを開口させることができる。
【0007】
ところが、特許文献1及び特許文献2に記載の缶蓋のように、主開口部が幅広(横長)の形状とされる場合、つまり、缶蓋本体を平面視して、タブの一端部を主開口部側に配置し、タブの引き上げ部(他端部)をリベットを挟んで主開口部の反対側に形成された指かけ凹部側に配置したときに、リベットを通過しタブの長手方向に伸びる缶蓋本体上の軸線をY軸とし、リベットを通過し缶蓋本体上のY軸に直交する軸線をX軸と定義したときに、X軸方向に長軸を有する横楕円形状に形成される場合には、主開口部がX軸方向に広く開口して開口面積が大きく形成される。このため、多量の内容物が幅広の主開口部から勢いよく注出されることにより、容器に内容物を移す際に容器から内容物の一部が外れて内容物をこぼしたり、また勢いよく注出された多量の内容物が容器から溢れたりするおそれがある。さらに内容物を直接飲用する際に、内容物の一部が口元(口角部分)から外れてこぼれる可能性もある。
また、主スコアに連続して副スコアを形成することにより、スコア全長が長くなることから、主開口部に加えて副開口部を開口させるためには、開缶作業時に大きな破断力が必要となり、開口性が悪くなる。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、開口部を容易に開口させて開口性を高めることができ、内容物を迅速かつ円滑に注ぎ出すことができる良好な注ぎ性を有する缶蓋を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の缶蓋は、缶蓋本体の上面中央部に突出して形成されるリベットと、スコアにより画成された開口部と、前記リベットに取り付けられたタブとを備え、
前記開口部は、
第1スコアにより画成され、前記リベット周辺部から前記缶蓋本体の上面周縁部に張り出した第1開口部と、
前記第1スコアに連続して形成された第2スコアにより画成され、前記リベットを挟んで前記第1開口部と反対側の領域に張り出した第2開口部とを有し、
前記缶蓋本体の上面の平面視において、
前記リベットの中心を通り前記第1スコアの前記リベットから最も離れた位置を通る線をY軸とし、前記リベットの中心を通り前記Y軸に直交する線をX軸としたときに、
前記第1開口部は、前記X軸に平行な最大幅Wと前記Y軸上の開口長さHとの比率(W/H)が0.7以上1.4以下の大きさに形成され、
前記第2スコアの終端が、前記X軸を挟んで前記第1スコアと反対側の領域まで延伸され、前記第1スコアの接続部と前記第2スコアの延伸部とは、
前記第2スコアの終端に向かうにしたがって前記リベットの中心からの距離が長くなるように、直線又は曲率半径の大きな湾曲線で形成されており、
前記リベットの中心から前記タブの幅方向の側端部までの距離Aが、前記X軸上の前記リベットの中心から前記スコアまでの距離Bよりも小さく形成されている。
【0010】
比率(W/H)を0.7以上1.4以下となるように形成し、缶内の内容物を外部に注ぎ出すときに使用される第1開口部の最大幅Wを、開口長さHと同じ程度に形成し、第1開口部を比較的幅狭の形状としたので、第1開口部の開口から注出される内容物の流れの幅を細く整えることができる。また、缶蓋の開口部を、缶蓋本体の上面周縁部に張り出した第1開口部とともに、リベットを挟んで第1開口部と反対側の領域に張り出した第2開口部を有する構成とし、さらに第2開口部を画成する第2スコアの終端をX軸を挟んで第1スコアと反対側の領域まで延伸させたことで、第1開口部の開口から内容物を注出する際に、第2開口部の開口から安定して空気を流入できるので、第1開口部を幅狭の形状で形成しているにもかかわらず、脈動の発生を防止でき、第1開口部の開口から外部に内容物を迅速かつ円滑に注ぎ出せる。また、幅狭の第1開口部は、幅広の場合よりも開口面積が小さくなるので、必要以上に多量の内容物が外部に向けて一気に流出することを回避でき、安定した注ぎ性が得られる。
したがって、内容物が第1開口部の開口から勢いよく注出される場合であっても、内容物をこぼすことなく円滑に容器に移すことができ、また、直接飲用する際に、内容物を口元に安定して注ぐことができる。なお、比率(W/H)が1.4を超えると、第1開口部の開口が幅広となるので、多量の内容物が幅広の第1開口部から勢いよく注出されることにより、容器から内容物の一部が外れて内容物をこぼす可能性がある。さらに内容物を直接飲用する際に、内容物の一部が口元から外れてこぼれる可能性もある。一方、比率(W/H)が0.7未満となると、第1開口部の開口面積が小さくなり、第1開口部の開口からの内容物の注出量を十分に確保することが難しくなる。
また、第2開口部は、タブを起こして第1開口部を開口した後で、タブを起こした状態でタブをリベット回りに第2スコアの延伸方向に回すことで、容易に開口できる。この際、リベット中心からタブの幅方向の側端部までの距離Aが、X軸上のリベットの中心からスコアまでの距離Bよりも小さく形成されているので、タブを起こした状態で回転させても、スコア端面に接触することを回避でき、第2開口部を円滑に開口させることができる。なお、タブがスコア端面に接触すると、缶蓋材のアルミニウムの粉が発生するおそれがある。
また、幅狭の第1開口部を形成したことで、第1スコアと第2スコアとを有するスコアの全長を比較的短く形成でき、開缶作業時に必要なスコアの破断力を増加させることなく、開口部を容易に開口できる。
この場合、差分(B−A)を0.3mm以上とすることで、タブとスコア端面との接触を確実に回避でき、円滑に第2開口部を開口できる。また、差分(B−A)を3.0mm以下とすることで、スコアの位置をタブと開口部とが接触する作用点から近い位置に配置できるので、開缶作業時に必要なスコアの破断力を比較的小さくでき、良好な開口性を確保できる。なお、差分(B−A)を3.0mmを超える大きさとした場合、スコアの位置がタブと開口部とが接触する作用点から遠くなるため、開缶作業時に大きな破断力が必要となり、開口性が悪くなる。
【0011】
また、本発明の缶蓋において、前記比率(W/H)が1.2以下に形成されているとよい。
第1開口部を、比率(W/H)が1.2以下となる大きさに制限することで、より安定した注ぎ性が得られる。
【0013】
本発明の缶蓋において、前記缶蓋本体のパネル部の表面積をS0とし、前記第1開口部の開口面積をS1とし、前記第2開口部の開口面積をS2としたときに、前記開口面積S1と前記開口面積S2の総面積(S1+S2)と、前記表面積S0との面積比率{(S1+
S2)/S0}が0.14以上0.26以下とされるとよい。
スコアにより画成される開口部の開口面積を大きくすると、缶蓋の耐圧性能が低下する。そこで、開口部の開口面積(S1+S2)と表面積S0との面積比率{(S1+
S2)/S0}を0.14以上0.26以下とすることで、耐圧性能を維持しながら、注ぎ性の向上を図ることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、開口部を容易に開口させて開口性を高めることができ、内容物を迅速かつ円滑に注ぎ出すことができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る缶蓋の実施形態を、図面を参照しながら説明する。
第1実施形態の缶蓋101は、例えば、飲料用等の缶に用いられる、いわゆるステイオンタブ方式の缶蓋であり、
図1に示すように、缶蓋本体1Aと、この缶蓋本体1Aに取り付けられたタブ2とにより構成される。これらの缶蓋本体1A及びタブ2は、それぞれアルミニウム合金により形成されている。
【0017】
缶蓋本体1Aは、
図1に示すように、略円板状のパネル部10と、このパネル部10の外周部に沿って下方に凸となるように設けられた環状のカウンターシンク部11とを備えている。パネル部10の上面には、凹状に形成されたパネルデボス12が設けられており、このパネルデボス12の底面であって、パネル部10(缶蓋本体1A)の中央部に、突出して形成されたリベット13が形成され、このリベット13にタブ2が取り付けられている。また、パネルデボス12の底面には、スコア3により画成された開口部6が形成され、この開口部6とは反対側(
図1では上側)に指かけ凹部14が設けられており、これらリベット13と指かけ凹部14との間にディンプルと称される凸部15が形成されている。
【0018】
リベット13は、パネル部10の上面をリング状に圧印するコイニング加工を施して、パネル部10の中心部を上方に張り出させることによりパネル部10と一体に形成されている。
また、指かけ凹部14は、タブ2の後端部(引き上げ部22)に沿うようにして、その下方近傍に、パネルデボス12の底面の一部をさらに深く凹状にして形成されている。開封者は、指かけ凹部14から指をタブ2の後端部の下側に入れることができ、これにより後端部に指をかけて容易に引き上げることができる。
【0019】
スコア3は開口部6を画成しており、タブ2により開口部6を押圧してスコア3を破断させることで、開口部6を缶内部に押し込み、飲み口を開口する構成とされる。なお、スコア3の内側には、スコア3に隣接して平行に形成された補助スコア7が形成されており、スコア3の始端部31及び終端部39で、スコア3と補助スコア7とが接続されている。補助スコア7は、スコア3よりも浅く形成されており、タブ2の押圧によっては破断されない構成となっている。
【0020】
そして、スコア3は、
図3及び
図4に示すように、第1スコア4と、この第1スコア4に連続して形成された第2スコア5Aとを有する構成とされ、開口部6は、第1スコア4により画成される第1開口部61と、第2スコア5Aにより画成される第2開口部62とから構成されている。このうち第1開口部61は、リベット13周辺部から缶蓋本体1Aの上面周縁部に張り出して形成され、第2開口部62は、リベット13を挟んで第1開口部61と反対側の領域に張り出して形成される。
【0021】
第1スコア4は、
図3に示すように、補助スコア7の始端部と接続される始端部31と、リベット13をほぼ半分囲む円弧状の凹円弧部32と、缶蓋本体1Aの径方向外方へ凸とされた円弧形状の中間部33と、第2スコア5Aと接続される接続部34とで構成され、始端部31と接続部34との間に破線で示したように第1ヒンジ部C1を一部残して形成され、
図3にハッチングで示したように、第1開口部61を画成している。
なお、凹円弧部32は、リベット13周囲のコイニングにより押しつぶされたリング状印圧部分に形成され、タブ2により開口部6を押圧した際の初期破断部となる。
【0022】
第1スコア4の接続部34は、
図1及び
図3に示すように、缶蓋本体1Aの上面の平面視において、リベット13の中心O1を通り第1スコア4のリベット13から最も離れた位置(缶蓋本体1Aの最外周位置の点P1)を通る線をY軸とし、リベット13の中心O1を通り第1スコア4のY軸に直交する線をX軸としたときに、X軸とスコア3とが交差する点Q1を含む位置に形成されている。接続部34は、中間部33よりも浅く形成されており、タブ2の後端部を引き起こす第1操作により第1スコア4を破断させて第1開口部61を開口する際に、接続部34において破断の進行にブレーキがかけられることで、破断が停止されるようになっている。そして、第1ヒンジ部C1は、第1操作による第1開口部61の開口時に折り曲げられる部分であり、
図3に示すように、始端部31の破断到達点と接続部34の破断到達点とを結ぶようにして形成される。このため、第1ヒンジ部C1の位置は、始端部31と接続部34とがどこまで破断されるかによってわずかに変動する。
【0023】
そして、第1開口部61は、Y軸上の開口長さをH(Y軸と第1スコア4との交点P1,P2間の距離)とし、X軸に平行な最大幅をWとした場合に、最大幅Wと開口長さHとの比率(W/H)が0.7以上1.4以下となる大きさに形成されており、第1開口部61は、最大幅Wが開口長さHと同じ程度に形成され、比較的幅狭の形状に形成されているので、第1開口部61の開口から注出される内容物の流れの幅を細く整えることができる。この場合において、最大幅Wと開口長さHとの比率(W/H)は、1.2以下に設けることが望ましい。第1開口部61を、比率(W/H)が1.2以下となる大きさに制限することで、より安定した注ぎ性が得られる。
なお、比率(W/H)が1.4を超えると、第1開口部61の開口が幅広となるので、多量の内容物が幅広の第1開口部61から勢いよく注出されることにより、容器から内容物の一部が外れて内容物をこぼす可能性がある。また、第1開口部61の開口から内容物を直接飲用する際に、内容物の一部が口元から外れてこぼれる可能性もある。一方、比率(W/H)が0.7未満となると、第1開口部61の開口面積が小さくなり、第1開口部61の開口からの内容物の注出量を十分に確保することが難しくなる。
【0024】
第2スコア5Aは、
図4に示すように、第1スコア4の接続部34からリベット13の反対側の領域に延伸する延伸部38と、補助スコア7の終端部と接続される終端部39とで構成され、
図1に示すように、缶蓋本体1A(パネル部10)の上面の平面視において、第2スコア5A(スコア3)の終端が、X軸を挟んで第1スコア4と反対側の領域まで延伸されている。そして、第2スコア5Aは、スコア3の始端部(第1スコア4の始端部31)とスコア3の終端部(第2スコア5Aの終端部39)との間に破線で示したように第2ヒンジ部C2を一部残して形成され、
図4にハッチングで示したように、第1開口部61に連続した第2開口部62を画成している。第2ヒンジ部C2は、タブ2を回動させる第2操作による第2開口部62の開口時に折り曲げられる部分であり、
図4に示すように、終端部39の破断到達点とリベット13の中心O1とを結ぶようにして形成される。このため、第2ヒンジ部C2の位置は、終端部39がどこまで切断されるかによってわずかに変動する。
【0025】
このように、缶蓋本体1Aの上面には、第1スコア4と第2スコア5Aとにより画成された開口部6(第1開口部61及び第2開口部62)が、第2ヒンジ部C2により接続されており、第1操作の後にタブ2をリベット13周りに回動させる第2操作によって第1スコア4に連続して第2スコア5Aを破断させたときには、第2開口部61とともに第1開口部61が缶内部に押し込まれることで、缶蓋本体1Aには、第1開口部61と第2開口部62とからなる開口部6が開口し、開口面積の大きな開口が形成されるようになっている。
【0026】
そして、第1開口部61の開口面積をS1とすると、開口面積S1は、380mm
2以下、好ましくは300mm
2以下に形成される。また、開口部6の開口面積は、第2開口部62の開口面積をS2としたときに、第1開口部61の開口面積S1と、第2開口部62の開口面積S2との総和である総面積(S1+S2)で表される。
開口部6の開口面積(S1+S2)は、パネル部10の表面積をS0としたときに、表面積S0との面積比率{(S1+
S2)/S0}が0.14以上0.26以下となるように調整される。開口部6の開口面積(S1+S2)を大きくすると、スコア3の全長も長くなることから、缶蓋101の耐圧強度が低下する傾向があるが、面積比率{(S1+
S2)/S0}が0.14以上0.26以下となるように調整しておくことで、缶蓋101の耐圧性能の低下を防止できる。
【0027】
第1スコア4の接続部34と第2スコア5Aの延伸部38とは、直線又は曲率半径の大きな湾曲線で形成されており、第1スコア4の接続部34と第2スコア5Aの延伸部38とは、互いが接続される端点において接線を共有して緩やかに接続されている。また、リベット13の中心O1からタブ2の幅方向(X軸方向)の側端部(点U1)までの距離をAとし、X軸上のリベット13の中心O1からスコア3(この場合、第1スコア4の接続部34)までの距離をBとした場合に、距離Aが距離Bよりも小さく形成され、スコア3がタブ2の幅方向の側端部(点U1)よりもリベット
13の中心O1から離れて配置されている。
【0028】
この場合において、距離Bと距離Aとの差分(B−A)は、0.3mm以上3.0mm以下に形成されているとよい。差分(B−A)が大きくなるほど、スコア3とタブ2とが離れて配置されることになるので、差分(B−A)を0.3mm以上とすることで、タブ2とスコア端面との接触を確実に回避でき、円滑に第2開口部62を開口できる。また、差分(B−A)を3.0mm以下とすることで、スコア3の位置を、タブ2と開口部6(第1開口部61及び第2開口部62)とが接触する作用点から近い位置に配置できるので、開缶作業時に必要なスコア3(第2スコア5A)の破断力を比較的小さくでき、良好な開口性を確保できる。なお、差分(B−A)を3.0mmを超える大きさとした場合、スコア3の位置がタブ2と開口部6とが接触する作用点から遠くなるため、開缶作業時に大きな破断力が必要となり、開口性が悪くなる。
【0029】
ここで、第1スコア4の残厚部と第2スコア5Aの残厚部との関係について説明する。
図3及び
図4に示すように、缶蓋本体1Aの平面視において、Y軸と第1スコア4(第1開口部61)とが交わる2つの交点P1,P2の中間位置O2を基準として、第1スコア4の先端の交点P2と相対する方向を0時(交点P1の方向)とすると、接続部34は約10時半の位置に形成されている。そして、第1スコア4の残厚部の厚みは、中間部33の3時〜10時の位置で0.85mm〜0.100mmとされ、接続部34で0.115mm〜0.125mmとされ、中間部33の3時〜10時の部分よりも、接続部34の部分が、残厚部の厚みが大きくなるように設定されている。
【0030】
また、第2スコア5Aの残厚部の厚みは、延伸部38が0.100mm〜0.110mmとなるように設定されており、第2スコア5Aの延伸部38及び終端部39の残厚部の厚みは、第1スコア4の接続部34よりも小さく形成されるが、中間部33の3時〜10時までの間よりも大きく形成されている。このため、第2スコア5Aにより、缶蓋101の耐圧強度が著しく低下することが回避されている。
【0031】
また、開口部6上には、補強のためにスコア3及び補助スコア7に沿うようにして上面から突出したインナービード41〜43が形成されている。インナービード41〜43は、第1ヒンジ部C1及び第2ヒンジ部C2を除く部分に形成することが好適である。第1開口部61上に形成されたインナービード41は、第1開口部61の中心付近(点O2付近)を囲むようにして、第1スコア4の中間部33に沿った、また缶蓋本体1Aの径方向外方に沿った凸形状とされている。また、インナービード41と同じく第1開口部61上に形成されたインナービード42は、第1スコア4の接続部34に沿って形成されている。さらに、第2開口部62上に形成されたインナービード43は、第2スコア5Aの延伸部38に沿って形成されており、第1ヒンジ部C1が、第1開口部61上のインナービード42と第2開口部62上のインナービード43との間に設けられている。
【0032】
また、リベット13と指かけ凹部14との間に形成された凸部15は、リベット13(Y軸)を挟んで第2開口部62と反対側の領域に形成されている。凸部15は、パネルデボス12の底面に突出しており、
図1に示すようにタブ2を引き上げる前の状態では、タブ2の外側縁部の下面が凸部15に引っかかることで、タブ2がリベット13周りに回転移動することが防止される。
【0033】
タブ2は、前述したようにリベット13に取り付けられており、その一端部に、タブ2の長手方向を缶蓋本体1AのY軸と平行に配置したときに第1開口部61の上方に重なって配置される押圧部21が形成され、リベット13を挟んだ反対側の他端部に、引き上げ部22が形成されている。
押圧部21は円弧状に形成されており、この押圧部21と引き上げ部22との間に、U字状のスロット23によりタング部24が形成され、タング部24にリベット孔(図示略)が形成されている。そして、リベット孔にリベット13が挿入され、タング部24の下面をパネルデボス12(缶蓋本体1A)の上面に当接させた状態で、タブ2が缶蓋本体1Aに取り付けられている。また、タブ2の引き上げ部22には、タブ2の厚み方向に開口するタブホール部25が形成されている。
【0034】
次に、このように構成される缶蓋101において、開口部6を開口する方法について説明する。
(第1操作)
まず、タブ2の押圧部21を第1開口部61に重ねた状態(
図1の状態)で、タブ2の引き上げ部22を引き上げる第1操作を行う。タブ2の引き上げ部22が引き上げられると、タブ2の押圧部21が第1開口部61の上面に当接し、押圧部21が支点となってリベット13が上方に持ち上げられる。このとき、第1スコア4の凹円弧部32の第1開口部61側の部分はタブ2により押さえられた状態であり、凹円弧部32のリベット13側の部分が上方に持ち上げられることで、凹円弧部32にせん断力が作用して破断する(ポップ動作)。なお、第1開口部61はインナービード41により補強されており、変形が抑制されていることから、凹円弧部32に確実にせん断力を作用させることができ、円滑に破断させることができる。
【0035】
そして、さらにタブ2の引き上げ部22を持ち上げていくと、リベット13が支点、タブ2の押圧部21が作用点となり、第1スコア4に囲まれた第1開口部61がタブ2により缶内部に押し込まれながら第1スコア4が順次破断して、第1開口部61を周回するように開口する(ティア動作)。このとき、第2スコア5Aは第1スコア4に連続して形成されているが、第1スコア4の接続部34の残厚部が中間部33の残厚部の厚みよりも大きく形成されているので、接続部34においてブレーキがかけられ、第1スコア4の破断進行が停止される。次いで、接続部34の破断停止点に応力が集中し、接続部34と始端部31との連結部分の第1ヒンジ部C1が折り曲げられる。第1開口部61上には接続部34に沿ってインナービード42が形成され、第2開口部62上には延伸部38に沿ってインナービード43が形成されているが、これらのインナービード42,43は第1ヒンジ部C1を除いて形成されていることから、第1ヒンジ部C1を確実に折り曲げることができる。そして、第1開口部61が缶内部に押し込まれることで、
図5(a)に示すように、第1開口61oが開口する。
【0036】
(第2操作)
その後、
図5(a)に矢印Tで示すように、タブ2を起こした状態(缶蓋本体1Aの上面に対して略垂直に立ち上げた状態)を維持したまま、リベット13回りに第2スコア5Aの延伸方向(時計回りT方向)に回動させてねじる第2操作を行うことにより、第2スコア5Aとリベット13との間の第2開口部62をタブ2の側端部により押圧する。このとき、リベット13の中心O1からタブ2の側端部(点U1)までの距離Aが、リベット13の中心O1からスコア3(ここでは、第1スコア4)の距離Bよりも小さく形成されているので、タブ2を起こした状態で回転させても、破断されたスコア端面にタブ2が接触することを回避できる。このタブ2の回動に伴い、
図5(b)に示すように、第2開口部
62が缶内部に押し下げられるとともに、第2スコア5Aが引き裂かれ、第2スコア5Aの延伸部38から終端部39に向けて順次破断が進行し、第2ヒンジ部C2が折り曲げられる。そして、第2開口部
62が缶内部に押し込まれ、リベット13を挟んで第1開口61oと反対側の領域に第2開口62oが開口する。
【0037】
また、第2操作により、第2開口部62に第1ヒンジ部C1を介して接続された第1開口部61がさらに缶内部に押し込まれることで、第1開口部61の第1開口61oから外部に臨む部分の面積が小さくなる。このように、第1操作による第1スコア4の破断後に、第2操作により第2スコア5Aを続けて破断させることで、X軸(リベット13)を挟んだ第1開口部61と反対側の領域に、第1開口部61に続いて第2開口部62が開口させられ、第1開口部61の開口面積S1と第2開口部62の開口面積S2とを有する開口60oが形成される。
【0038】
なお、第1スコア4を破断させて第1開口部61(第1開口61o)を開口させた後、タブ2を回動させることなく元の位置に倒して開栓前の状態に戻した場合には、第2開口部62を開口させることなく、第1開口部61のみを開口させた状態を維持できる。
【0039】
この第1実施形態の缶蓋101においては、缶内部の内容物を外部に注ぎ出すときに使用される第1開口部61の最大幅Wを、開口長さHと同じ程度に形成し、第1開口部61を比較的幅狭の形状としたので、第1開口部61の第1開口61oから注出される内容物の流れの幅を細く整えることができる。また、缶蓋101の開口部6(開口60o)を、缶蓋本体1Aの上面周縁部に張り出した第1開口部61とともに、リベット13(X軸)を挟んで第1開口部61と反対側の領域に張り出した第2開口部62を有する構成とし、さらに第2開口部62を画成する第2スコア5Aの終端をX軸を挟んで第1スコア4と反対側の領域まで延伸させたことで、第1開口部61の第1開口61oからの内容物の注出の際に、第2開口部62の第2開口62oを空気の流入口として安定して使用できる。このため、第1開口部61を幅狭の形状で形成しているにもかかわらず、脈動の発生を防止でき、第1開口部61の第1開口61oから外部に内容物を迅速かつ円滑に注ぎ出せる。
【0040】
また、幅狭の第1開口部61は、幅広の場合よりも開口面積S1が小さくなるので、第1開口61oから必要以上に多量の内容物が外部に向けて一気に流出することを回避でき、安定した注ぎ性が得られる。したがって、内容物が第1開口部61の第1開口61oから勢いよく注出される場合であっても、内容物をこぼすことなく円滑に容器に移すことができ、また、直接飲用する際に、内容物を口元に安定して注ぐことができる。
【0041】
さらに、缶蓋101においては、開口部6を第1開口部61と第2開口部62とで構成し、それぞれ第1ヒンジ部C1と第2ヒンジ部C2とを順に折り曲げて開口部6の開口60oを開口する構成としているので、最初に開口させた第1開口部61を、第2開口部62の開口とともに缶内部に深く折り込むことができる。これにより、第1開口部61の第1開口61oに開口部6が被さって開口から外部に臨む部分を小さくできる。したがって、缶を傾けて第1開口部61の第1開口61oから内容物を外部に向けて流出する際に、開口部6が障害となって脈動を発生させることを回避でき、第1開口部61の第1開口61oから外部に内容物を円滑に注ぎ出せる。
【0042】
また、缶蓋101では、幅狭の第1開口部61を形成したことで、第1スコア4と第2スコア5Aとを有するスコア3の全長を比較的短く形成できる。したがって、開缶作業時に必要なスコアの破断力を増加させることなく、開口部6を容易に開口できる。
【0043】
また、第1開口部61の開口面積S1を380mm
2以下(好ましくは300mm
2以下)に制限しているので、第1開口部61の第1開口61oから必要以上に多量の内容物が外部に向けて一気に流出することを回避でき、安定した注ぎ性が得られる。
【0044】
なお、上記第1実施形態の缶蓋101では、第2スコア5Aを比較的短く形成し、終端部39を延伸部38に連続した直線又は緩やかな湾曲線で形成していたが、延伸部38及び終端部39の形状は、これに限定されない。例えば、
図6〜
図8に示す第2実施形態の缶蓋102(缶蓋本体1B)のように、第2スコア5Bの全長を長く形成する場合には、第2スコア5Bの終端部39を湾曲させ、タブ2の背面領域の範囲内において形成するとよい。具体的には、終端部39を、パネル部10のリベット
13と指かけ凹部14との間の領域に形成し、可能な限りリベット
13に近づけて形成するとよい。
【0045】
第2開口部62の開口面積S2を大きくするには、第2スコア5Bの全長を長くする必要があるが、第2スコア5Bの全長が長くなり、終端部39の位置がリベット
13の中心O1から遠くなる程に、第2スコア5Bの位置とタブ2による第2開口部62の押圧部分との距離が離れる(遠くなる)ため、第2スコア5Bを破断する際に必要な破断力が増加する傾向がある。この点、第2実施形態の缶蓋102のように、第2スコア5Bの終端部39を、リベット
13から大きく離さずに曲げて形成することで、タブ2を回動させる際に、第2スコア5Bの位置とタブ2による第2開口部62の押圧部分との距離を大きく増加させることなく形成できる。したがって、第2スコア5Bの開缶作業時において必要な第2スコア5Bの破断力を増加させることがなく、タブ2を回動させる際に指に大きな負担がかかることを回避できるので、開口面積S2の大きな第2開口部62を確実に開口できる。
【0046】
また、第2スコア5Bの終端部39を、パネル部10の周縁部に近くまで形成すると、缶蓋102の耐圧強度の低下を招きやすい。そこで、終端部39の形成位置をリベット
13の周辺領域に留めておくことにより、缶蓋102の耐圧強度の低下を回避できる。
さらに、第2実施形態の缶蓋102のように、第2スコア5Bの形成範囲を、タブ2の背面領域の範囲内に収めることで、第2スコア5Bの全長を長くして、第2開口部62の開口面積S2を大きく形成した場合であっても、第2開口部62の開口部分をタブ2の背面に隠すことができるので、外観を損ねることを回避できる。
【実施例】
【0047】
以下、本発明の効果を確認するために行った実施例及び比較例について説明する。
下記の表1に示す条件の200〜206口径の缶蓋を作製し、これらのNo.1〜8の缶蓋について、表2に示すように、開口性能と注ぎ性(注ぎ時間)を評価した。なお、表1の各寸法は、
図3に示す寸法に対応したものである。また、No1〜7の缶蓋においては、第1スコアと第2スコアにより画成された開口部(第1開口部及び第2開口部)を有する構成としたが、No.8の缶蓋は、第1スコアのみにより画成された開口部(第1開口部)のみを有する構成とした。このため、表1のNo.8の「第2開口部」の欄は「―」で表した。
【0048】
(開口性能)
各缶蓋を固定した状態でタブの引き上げ部を強制的に引き上げた後、リベット回りにタブを時計回りに回動して、第1開口部と第2開口部とを順に開口させ、開口性能(開口性)を確認した。
開口性能の確認は、表1に示す各条件(No.1〜8)の缶蓋ごとに100個実施した。そして、スコア(第2スコア)の終端まで開缶しない半開缶の缶蓋が100個中1個でもあった場合を「×」、100個の缶蓋すべてがスコアの終端まで開口できた場合を「○」とした。
【0049】
(注ぎ性)
注ぎ性の評価は、「注ぎ時間」について評価した。
「注ぎ時間」の評価は、各缶蓋を350mlの容器に装着して、内容物としてビールを充填した充填容器を作製し、開口部を開口した後、充填容器を傾けて、内容物が全量、外部に注ぎ出されるまでの時間を測定した。なお、200口径の缶蓋は缶胴径204の350ml缶、204口径及び206口径の缶蓋は缶胴径211の350ml缶に巻き締めて充填容器を作製した。
【0050】
【表1】
【0051】
【表2】
【0052】
表1及び表2からわかるように、、差分(B−A)を0.3mm以上3.0mm以下とした缶蓋(No.1〜5,7,8)では、スコアの終端まで確実に破断でき、良好な開口性が得られる。
また、比率(W/H)を0.7以上1.4以下とする比較的幅狭の第1開口部を形成するとともに、リベットを挟んだ第1開口部と反対側の領域に第2開口部を形成したNo.1〜7の缶蓋においては、No.8の缶蓋と比べて注ぎ時間を短縮して迅速かつ円滑に内容物を注ぎ出すことができ、安定した注ぎ性が得られることがわかった。
【0053】
なお、本発明は前記実施形態の構成に限定されるものではなく、細部構成においては、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。