特許第6913449号(P6913449)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社竹中工務店の特許一覧

<>
  • 特許6913449-地中熱利用システム 図000002
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6913449
(24)【登録日】2021年7月14日
(45)【発行日】2021年8月4日
(54)【発明の名称】地中熱利用システム
(51)【国際特許分類】
   F28D 21/00 20060101AFI20210727BHJP
   F24F 3/00 20060101ALI20210727BHJP
   F28D 20/00 20060101ALI20210727BHJP
   F24T 50/00 20180101ALN20210727BHJP
   F24T 10/17 20180101ALN20210727BHJP
【FI】
   F28D21/00 Z
   F24F3/00 B
   F28D20/00 A
   !F24T50/00
   !F24T10/17
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-216265(P2016-216265)
(22)【出願日】2016年11月4日
(65)【公開番号】特開2018-71949(P2018-71949A)
(43)【公開日】2018年5月10日
【審査請求日】2019年9月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(74)【代理人】
【識別番号】100099025
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 浩志
(72)【発明者】
【氏名】清水 孝昭
(72)【発明者】
【氏名】中島 朋宏
(72)【発明者】
【氏名】清塘 悠
(72)【発明者】
【氏名】清水 大和
(72)【発明者】
【氏名】前 康大
(72)【発明者】
【氏名】稲葉 薫
(72)【発明者】
【氏名】和田 一樹
(72)【発明者】
【氏名】向井 一洋
(72)【発明者】
【氏名】竹内 満
【審査官】 西塚 祐斗
(56)【参考文献】
【文献】 特表2016−502634(JP,A)
【文献】 特開2001−074316(JP,A)
【文献】 特開2011−141073(JP,A)
【文献】 特開2005−337569(JP,A)
【文献】 特開平04−356636(JP,A)
【文献】 特開平11−337280(JP,A)
【文献】 特表2012−530237(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28D 21/00
F24F 3/00
F28D 20/00
F24T 10/15 − 10/17
F24T 50/00
F25B 27/00
F25B 30/06
F24D 10/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の建物にそれぞれ設けられ、ループ状の循環管を用いてそれぞれの前記建物から排熱を地中へ送り蓄熱させる熱供給手段と、
前記排熱が蓄熱された前記地中を取り囲む遮水壁と、
前記熱供給手段とは異なるループ状の循環管を用いて形成され、前記地中に蓄熱された地中熱を取り出し複数の前記建物へ送って利用する熱利用手段と、
を有する地中熱利用システム。
【請求項2】
前記遮水壁に取り囲まれた地中部分が複数形成されている、請求項1に記載の地中熱利用システム。
【請求項3】
前記遮水壁に取り囲まれた複数の地中部分が、
前記建物のうち、何れかの前記建物の冷排熱装置から送られた冷熱を蓄熱する蓄熱槽及び別の前記建物の温排熱装置から送られた温熱を蓄熱する蓄熱槽を含んで構成されている、請求項2に記載の地中熱利用システム。
【請求項4】
前記熱利用手段によって取り出された前記地中熱の温度を検出する温度検出手段と、
検出された前記地中熱の温度に基づき、前記熱利用手段が取り出す地中熱量を制御する制御装置と、
を有する請求項1〜3の何れか1項に記載の地中熱利用システム。
【請求項5】
それぞれの前記建物における前記熱供給手段
前記建物の温排熱装置から温熱を前記地中へ送る第一熱供給手段及び前記建物の冷排熱装置から冷熱を前記地中へ送る第二熱供給手段の何れか一方、を備え、
前記熱利用手段が、
前記第一熱供給手段によって蓄熱された温熱を循環する温熱管と、前記第二熱供給手段によって蓄熱された冷熱を循環する冷熱管と、を備えている、
請求項1〜4の何れか1項に記載の地中熱利用システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地中熱利用システムに関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1に記載された地中熱利用システムでは、地盤に埋設した多重管内に循環させた流体と地中熱とを熱交換させている。これにより、建物の冷暖房に地中熱を利用している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−261633号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1の地中熱利用システムでは、例えば冬季に地中熱を建物の暖房用熱源として利用する場合、地盤は地中熱を奪われることにより次第に冷却される。このため、暖房の使用量が多い場合などは、熱交換に必要な熱量が不足する虞がある。
【0005】
本発明は上記事実を考慮して、建物の空調、給湯等のために用いる地中熱量が不足しにくい地中熱利用システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の地中熱利用システムは、複数の建物にそれぞれ設けられ、ループ状の循環管を用いてそれぞれの前記建物から排熱を地中へ送り蓄熱させる熱供給手段と、前記排熱が蓄熱された前記地中を取り囲む遮水壁と、前記熱供給手段とは異なるループ状の循環管を用いて形成され、前記地中に蓄熱された地中熱を取り出し複数の前記建物へ送って利用する熱利用手段と、を有する。
【0007】
請求項1の地中熱利用システムでは、複数の建物から送られた排熱が、地中に蓄熱される。そして、蓄熱された地中熱を取り出して利用することができる。このため、何れかの建物から排出された温熱を地中に蓄え、蓄えられた温熱を他の建物の暖房用熱源や給湯用熱源として利用することができる。また、何れかの建物から排出された冷熱を地中に蓄え、蓄えられた冷熱を他の建物の冷房用熱源として利用することができる。
【0008】
このように、何れかの建物からの排熱を地中に蓄熱し、他の建物の空調、給湯用熱源として利用できる。このため、建物の空調、給湯等のために用いる地中熱量が不足しにくい。
【0009】
また、請求項1の地中熱利用システムでは、蓄熱された地中が遮水壁で取り囲まれている。このため、蓄えられた熱が周囲の地中へ流出することが抑制され、遮水壁がない場合と比較して蓄熱効率が高められる。
【0010】
請求項2の地中熱利用システムは、前記遮水壁に取り囲まれた地中部分が複数形成されている。
【0011】
請求項2の地中熱利用システムでは、温熱を蓄える地中部分と冷熱を蓄える地中部分とを遮水壁で区画できる。この区画間で地下水の流れが遮断されるので、地中に蓄熱された温熱と冷熱とが混ざりにくく、蓄熱効率が高められる。
請求項3の地中熱利用システムは、前記遮水壁に取り囲まれた複数の地中部分が、前記建物のうち、何れかの前記建物の冷排熱装置から送られた冷熱を蓄熱する蓄熱槽及び別の前記建物の温排熱装置から送られた温熱を蓄熱する蓄熱槽を含んで構成されている。
【0012】
請求項4の地中熱利用システムは、前記熱利用手段によって取り出された前記地中熱の温度を検出する温度検出手段と、検出された前記地中熱の温度に基づき、前記熱利用手段が取り出す地中熱量を制御する制御装置と、を有する。
【0013】
請求項4の地中熱利用システムでは、熱利用手段によって取り出された地中熱の温度を検出し、地中から取り出す地中熱量を制御することで、蓄熱された地中熱を無駄なく有効に利用できる。
請求項5の地中熱利用システムは、それぞれの前記建物における前記熱供給手段、前記建物の温排熱装置から温熱を前記地中へ送る第一熱供給手段及び前記建物の冷排熱装置から冷熱を前記地中へ送る第二熱供給手段の何れか一方、を備え、前記熱利用手段が、前記第一熱供給手段によって蓄熱された温熱を循環する温熱管と、前記第二熱供給手段によって蓄熱された冷熱を循環する冷熱管と、を備えている。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る地中熱利用システムによると、建物の空調、給湯等のために用いる地中熱量が不足しにくい。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施形態における地中熱利用システムを示す立断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(全体構成)
本発明の実施形態における地中熱利用システム20は、複数の建物12から排出された排熱を地中に蓄熱して利用するためのシステムであり、建物12A、12B、12C、12Dにおける各熱源機器14からの排熱を地中へ送る熱供給手段30(熱供給手段30A、30B、30C、30D)と、地中から地中熱を取り出し利用する熱利用手段40と、地中に設置された遮水壁50と、を備えている。
【0017】
(遮水壁)
地盤10は地下水が流れる帯水層10W及び地下水が流れない不透水層10Yを備えている。地盤10にはソイルセメントで構成された遮水壁50が設置されており、遮水壁50の下端は不透水層10Yに根入れされている。また遮水壁50は、図1に示す左右の遮水壁50間に亘って手前側、奥側にも配置されている。これにより、帯水層10Wにおいて遮水壁50に囲まれた部分とそれ以外の部分の地下水は、相互に影響を及ぼさないようにされている。
【0018】
遮水壁50によって区画された内側の部分は、さらにソイルセメントで構成され、下端が不透水層10Yに根入れされた遮水壁52によって区画されている。これにより、遮水壁50、52に取り囲まれた地中部分が複数形成される。すなわち、地下水の流れの影響を受けにくく熱が流出しにくい蓄熱槽10Aと、蓄熱槽10B及び蓄熱槽10Cと、蓄熱槽10Dとが形成されている。詳しくは後述するが、蓄熱槽10A、10Bは温熱を蓄熱し、蓄熱槽10C、10Dは冷熱を蓄熱する蓄熱槽である。また、蓄熱槽10B、10Cの間には遮水壁52は形成されていない。
【0019】
なお、不透水層10Yの透水係数は概ね1×10−8m/s以下とされているが、適当な深度に不透水層10Yがない地盤においては、不透水層10Yに代えて、透水係数が概ね1×10−6〜10−7m/sの低透水層に根入れしてもよい。また、適当な深度に不透水層10Y、低透水層の何れもない地盤においては、遮水壁50、52は長めに形成し、根入れはしなくともよい。
【0020】
また、本実施形態において、建物12A、12B、12C、12Dは互いに隣接して(直列配置で)建てられており、蓄熱槽10A、10B、10C、10Dは、遮水壁50とその内部を仕切る遮水壁52とによって隣接して形成されているが、本発明の実施形態はこれに限らない。例えば建物12A、12B、12C、12Dが離れて(直列配置でなく)建てられている場合、それぞれの建物直下の地盤10を、敷地境界線や建物の外形線に沿って構築された遮水壁によって取り囲み、互いに離れた蓄熱槽10A、10B、10C、10Dを構成してもよい。
【0021】
(熱源機器)
地中熱利用システム20においては、複数の建物12の熱源機器14からの排熱が利用される。熱源機器14のうち温排熱を排出する温排熱装置14Hの一例としては、冷房機器、給湯機器(ガス給湯器)、焼却場における燃焼機器などが挙げられる。また、冷排熱を排出する冷排熱装置14Cの例としては、暖房機器、給湯機器(ヒートポンプ給湯器)などが挙げられる。
【0022】
各建物12においては熱源機器14として冷房機器、暖房機器、給湯機器などが複合的に使用されるため、各建物12からは、温排熱、冷排熱の何れも排出される。また、居室を備えた建物においては、冬季には暖房使用が多くなり夏季には冷房使用が多くなることから、温排熱、冷排熱の割合は季節によって変動する。さらに、物流倉庫、データセンター、オフィスビル、ホテル、体育施設、温浴施設、動植物園などの用途によっても温排熱、冷排熱の割合は変動する。
【0023】
なお、本実施形態において建物12Aは焼却場であり熱源機器14は複数設けられているが、説明を簡略化するため、排熱量が多い温排熱装置14Hから温排熱が地中へ送られるものとする。
【0024】
また、建物12Bはデータセンターであり、複数の熱源機器14のうち排熱量が多い温排熱装置14Hからの温排熱が地中へ送られるものとする。
【0025】
また、建物12Cはオフィスビルであり、複数の熱源機器14のうち排熱量が多い冷排熱装置14Cからの冷排熱が地中へ送られるものとする。
【0026】
また、建物12Dはホテルであり、複数の熱源機器14のうち排熱量が多い冷排熱装置14Cからの冷排熱が地中へ送られるものとする。
【0027】
(熱供給手段)
熱供給手段30は、建物12における熱源機器14(温排熱装置14H、冷排熱装置14C)からの排熱を地中へ送る循環管32と、地盤10に形成され循環管32が挿入された堅穴34とを備えている。
【0028】
循環管32の内部には熱媒としての循環水が循環しており、往路管と復路管の端部が互いに接合されて形成された一方の端部32Aから、熱源機器14の排熱を取り入れる。なお、本実施形態において熱媒は水とされているが、不凍液、油、空気など各種の熱媒を用いることができる。
【0029】
循環管32の他方の端部32Bは地盤10を掘削して形成された堅穴34の内部に挿入され、循環水は往路管及び復路管を通過する過程で、地中へ排熱を放出する。そして地盤10には、循環水によって運ばれた熱源機器14からの排熱が蓄熱される。なお、堅穴34と循環管32の間には珪砂が充填されている。
【0030】
なお、本実施形態においては熱供給手段30として循環管32を用いている(所謂クローズドループ)が、本発明の実施形態はこれに限らない。例えば、熱源機器14からの排熱によって暖められた(又は冷やされた)水を地中に注入する(所謂オープンループ)ことで地盤10に蓄熱してもよい。クローズドループの熱供給手段30はメンテナンスが容易であり、オープンループの熱供給手段は採熱しやすい。このため、地中熱利用システム20において熱効率を高める場合はオープンループの熱供給手段を用いることが好適である。
【0031】
熱供給手段30のうち、熱供給手段30Aは建物12Aの温排熱装置14Hから地中へ温熱を送り、熱供給手段30Bは建物12Bの温排熱装置14Hから地中へ温熱を送り、熱供給手段30Cは建物12Cの冷排熱装置14Cから地中へ冷熱を送り、熱供給手段30Dは建物12Dの冷排熱装置14Cから地中へ冷熱を送っている。
【0032】
これにより建物12A、12B直下の蓄熱槽10A、10Bには温熱が蓄熱され、建物12C、12D直下の蓄熱槽10C、10Dには冷熱が蓄熱される。
【0033】
(熱利用手段)
熱利用手段40は、地中から取り出した地中熱を、複数の建物12にそれぞれ設置された熱利用装置14Eで利用するための熱共有システムである。
【0034】
熱利用手段40は、各建物12に設けられた熱利用装置14Eと、地中から各熱利用装置14Eへ地中熱を送る送熱管42と、地中から各熱利用装置14Eへ送る地中熱量を制御する中央制御装置46と、を備えている。
【0035】
送熱管42の内部には熱媒が流れており、この熱媒に地中の地中熱を担持させることで熱が移動する。なお、本実施形態において熱媒は水(循環水)とされているが、不凍液、油、空気など各種の熱媒を用いることができる。
【0036】
送熱管42は、温熱管42Hと冷熱管42Cとが別系統とされている。温熱管42Hは、内部に流れる循環水が、建物12Aの温排熱が蓄熱された蓄熱槽10A、建物12Bの温排熱が蓄熱された蓄熱槽10B、建物12A、12B、12C、12Dの各熱利用装置14Eを循環するようにループ状に配設されている。
【0037】
これにより、温熱管42H内の循環水は、蓄熱槽10Aと蓄熱槽10Bから温熱を採取し、採取された温熱は、各熱利用装置14Eで利用される。
【0038】
同様に冷熱管42Cは、内部に流れる循環水が、建物12Cの冷排熱が蓄熱された蓄熱槽10C、建物12Dの冷排熱が蓄熱された蓄熱槽10D、建物12A、12B、12C、12Dの各熱利用装置14Eを循環するようにループ状に配設されている。
【0039】
これにより、冷熱管42C内の循環水は、蓄熱槽10Cと蓄熱槽10Dから冷熱を採取し、採取された冷熱は、各熱利用装置14Eで利用される。
【0040】
温熱管42H、冷熱管42Cにおける採熱部分は、熱供給手段30の循環管32と同様に、地中に形成され珪砂が充填された堅穴44の内部に挿入されており、管内の循環水が堅穴44を通過する過程で、蓄熱された地中熱を取り出す。
【0041】
温熱管42H、冷熱管42Cの内部には、地中から温熱又は冷熱を取り込んだ後の循環水の温度を計測する温度センサーCTが設けられている。また、堅穴44を通さずに循環水を流すためのバイパスBPと、循環水の流路を切り替えるための電磁弁M1が設けられている。
【0042】
これにより、例えば蓄熱槽10Bから温熱を取り込んだ循環水の温度が所定の値より低い場合、後述する中央制御装置46が、蓄熱槽10Bの地中熱量が不足していると判断し、電磁弁M1を操作して循環水がバイパスBPを通るようにする。これにより蓄熱槽10Bからの採熱を中断し蓄熱を促進する。蓄熱槽10A、10C、10Dについても同様である。
【0043】
また温熱管42H、冷熱管42Cの内部には、建物12A、12B、12C、12Dの各熱利用装置14Eへの循環水の流量を計測する流量計CV、この流量を調整する電磁弁M2が設けられている。これにより、各熱利用装置14Eへ流す循環水の流量を調整することができる。
【0044】
なお、本実施形態においては、送熱管42は地中と各熱利用装置14Eとの間にループ状に敷設されているが、本発明の実施形態はこれに限らない。例えば各蓄熱槽10A、10B、10C、10Dにおける堅穴44から蓄熱された地下水を揚水し、この地下水を熱利用装置14Eへ送って熱源として利用してもよい。この場合、熱利用装置14Eによって熱を取り出された後の地下水は、地表や地中などへ再放流する。
【0045】
中央制御装置46は、地域冷暖房プラント16に設けられた熱移動管理装置であり、地中から取り出す地中熱量と、取り出した地中熱の各熱源機器14への分配量とを制御して、建物12A、12B、12C、12D、蓄熱槽10A、10B、10C、10Dの間の熱移動を管理する。
【0046】
地中から取り出す地中熱量を制御するために、中央制御装置46は、温度センサーCTからの電気信号を受信して電磁弁M1を制御する。
【0047】
また、取り出した地中熱の各熱源機器14への分配量を制御するために、中央制御装置46は、流量計CVからの電気信号を受信して電磁弁M2を制御する。
【0048】
また、温熱管42H、冷熱管42Cには図示しないバイパスと電磁弁が各所に設けられており、中央制御装置46は、これらのバイパス及び電磁弁を制御している。これにより、地中熱を取り出す蓄熱槽10A、10B、10C、10Dと、取り出した地中熱を利用する建物12A、12B、12C、12Dとを、任意の組み合わせで設定することができる。例えば蓄熱槽10A、10B、10C、10Dから取り出した地中熱を、全て建物12Aで使用することもできるし、あるいは、建物12A、12B、12C、12Dで使用する温熱を、全て蓄熱槽10Aから取り出すこともできる。
【0049】
(地中熱分配量制御方法)
中央制御装置46による地中熱分配量の制御方法の一例を示す。建物12Cにおける熱利用装置14Eは、平常時、冷熱源として建物12C直下の蓄熱槽10Cの地中熱(冷熱)を用いている。しかし、例えば夏季において熱利用装置14Eが蓄熱槽10Cの地中熱(冷熱)を使用し続けると、蓄熱槽10Cが暖められて冷熱源が不足する場合がある。
【0050】
蓄熱槽10Cの冷熱源が不足したことは、蓄熱槽10Cを通った直後の冷熱管42C内の循環水の温度を温度センサーCTが測定し、この温度が所定の温度よりも高くなることで検知される。
【0051】
蓄熱槽10Cの冷熱源が不足すると、中央制御装置46は、冷熱管42C内に設けられた電磁弁M1を制御して、蓄熱槽10Cから取り出す地中熱量を少なくすると共に、建物12Cの熱利用装置14Eに、蓄熱槽10Dから取り出した地中熱(冷熱)を送る。これにより、建物12Cの熱源機器14の熱源が確保され、蓄熱槽10Cは冷熱の取得が制限されて冷熱を蓄熱できる。
【0052】
このように中央制御装置46は、蓄熱槽10A、10B、10C、10Dから取り出した地中熱の温度に基づき、蓄熱槽10A、10B、10C、10Dから取り出す地中熱量を制御して、建物12A、12B、12C、12Dの各熱源機器14の熱源が不足するのを抑制できる。
【0053】
なお、本実施形態において熱利用装置14Eと温排熱装置14Hとは、それぞれ異なる装置として記載しているが、本発明の実施形態はこれに限らず、熱利用装置14Eと温排熱装置14Hとは、同じ装置としてもよい。例えば冷房機器は、熱源として冷熱を利用する熱利用装置14Eとして用いられるが、温排熱を排出するので温排熱装置14Hとして用いることもできる。熱利用装置14Eと冷排熱装置14Cも、同様に同じ装置としてもよい。
【0054】
(作用・効果)
本実施形態に係る地中熱利用システム20では、建物12A、12B、12C、12Dにそれぞれ設置された熱源機器14から熱供給手段30によって送られた排熱が、地中に蓄熱される。そして蓄熱された地中熱を熱利用手段40によって取り出して利用することができる。
【0055】
このため、建物12A、12Bから排出された温熱を蓄熱槽10A、10Bに蓄え、蓄えられた温熱を建物12A、12B、12C、12Dの暖房用熱源や給湯用熱源として利用することができる。また、建物12C、12Dから排出された冷熱を蓄熱槽10C、10Dに蓄え、蓄えられた冷熱を建物12A、12B、12C、12Dの冷房用熱源として利用することができる。
【0056】
このため、建物12A、12B、12C、12Dの空調、給湯等のために用いる地中熱量が不足しにくい。
【0057】
なお、本実施形態においては蓄熱槽10A、10Bには建物12A、12Bの温排熱装置14Hから排出された温熱が蓄熱されるものとしたが、本発明の実施形態はこれに限らない。例えば蓄熱槽10A、10Bには建物12A、12Bから排出された冷熱を蓄熱してもよいし、建物12C、12Dから排出された温熱又は冷熱を蓄熱してもよい。
【0058】
蓄熱槽10C、10Dについても、建物12C、12Dから排出された温熱を蓄熱してもよいし、建物12A、12Bから排出された温熱又は冷熱を蓄熱してもよい。このように、建物12A、12B、12C、12Dからの排熱は、それぞれの直下の蓄熱槽10A、10B、10C、10Dだけではなく、任意の蓄熱槽に蓄熱することができる。
【0059】
また、本実施形態に係る地中熱利用システム20では、蓄熱槽10A、10Dが遮水壁50で取り囲まれている。このため、蓄熱槽10A、10Dに蓄えられた熱が周囲の地中へ流出することが抑制され、遮水壁50がない場合と比較して蓄熱効率が高められる。なお、蓄熱槽10Bと蓄熱槽10Cの間には遮水壁50が設置されていない。このように、地下水の流れが少ない土壌などにおいては、各蓄熱槽は必ずしも遮水壁50で区画しなくてもよい。
【0060】
また、本実施形態に係る地中熱利用システム20では、温度センサーCTによって温熱管42H、冷熱管42Cによって取り出された地中熱の温度を検出し、中央制御装置46が地中から取り出す地中熱量を制御する。これにより、地中熱を無駄なく有効に利用できる。
【0061】
なお、本実施形態において中央制御装置46は地域冷暖房プラント16に設けられているが、本発明の実施形態はこれに限らず、例えば建物12A、12B、12C、12Dの何れかに設けてもよい。また、地中に排熱を送る建物の数は建物12A、12B、12C、12Dの4棟に限定されるものではなく、2棟以上であればよい。
【0062】
また、本実施形態においては遮水壁50、52の材質をソイルセメント壁としている。このため遮水壁50、52を例えば鋼製矢板(シートパイル)で形成する場合と比較して断熱性能が高く、遮水壁50、52に囲まれた部分を保温しやすい。なお、本発明の実施形態はこれに限らず遮水壁28の材質としては、粘土、コンクリート、鋼製矢板(シートパイル)等を用いることができる。
【符号の説明】
【0063】
12A、12B、12C、12D 建物
12 建物
30 熱供給手段
40 熱利用手段
46 中央制御装置(制御装置)
50、52 遮水壁
CT 温度センサー(温度検出手段)
図1