特許第6913473号(P6913473)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6913473半導体素子の半導体膜形成用分散液、並びに、それを用いた半導体膜の製造方法及び半導体素子の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6913473
(24)【登録日】2021年7月14日
(45)【発行日】2021年8月4日
(54)【発明の名称】半導体素子の半導体膜形成用分散液、並びに、それを用いた半導体膜の製造方法及び半導体素子の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/368 20060101AFI20210727BHJP
   H01L 29/786 20060101ALI20210727BHJP
【FI】
   H01L21/368 Z
   H01L29/78 618B
【請求項の数】5
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2017-15853(P2017-15853)
(22)【出願日】2017年1月31日
(65)【公開番号】特開2018-125395(P2018-125395A)
(43)【公開日】2018年8月9日
【審査請求日】2020年1月22日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000033
【氏名又は名称】旭化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121083
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 宏義
(74)【代理人】
【識別番号】100138391
【弁理士】
【氏名又は名称】天田 昌行
(74)【代理人】
【識別番号】100121049
【弁理士】
【氏名又は名称】三輪 正義
(72)【発明者】
【氏名】湯本 徹
(72)【発明者】
【氏名】尾上 崇
【審査官】 田中 崇大
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−011927(JP,A)
【文献】 特開2013−042086(JP,A)
【文献】 特開2008−174706(JP,A)
【文献】 特開2003−064278(JP,A)
【文献】 特開2012−084762(JP,A)
【文献】 特開2012−246470(JP,A)
【文献】 特表2009−519374(JP,A)
【文献】 特開2008−291252(JP,A)
【文献】 特開2009−196843(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/368
H01L 29/786
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒子と、溶媒と、を含み、
前記粒子が、金属酸化物を含むコア及び有機化合物を含むシェルで構成されるコアシェル構造を有し、
前記金属化合物は、酸化インジウム、酸化亜鉛、アルミニウムをドープした酸化亜鉛(AZO)、及び、ガリウムをドープした酸化亜鉛(GZO)の少なくともいずれか1種を含み、
前記有機化合物は、フッ素系樹脂、或いは、シアノ基含有有機化合物であり、
前記粒子の平均粒子径が、5nm以上500nm以下であり、
前記金属酸化物の割合は粒子全体を100質量%とした場合、30質量%以上、95質量%以下であり、
膜とした場合の移動度が、0.0001cm/Vs以上10cm/Vs以下であり、
前記有機化合物は、比誘電率が5以上である
ことを特徴とする半導体素子の半導体膜形成用分散液。
【請求項2】
前記金属酸化物の割合は粒子全体を100質量%とした場合、40質量%以上、85質量%以下であることを特徴とする請求項1に記載の半導体素子の半導体膜形成用分散液。
【請求項3】
前記有機化合物は、シアノ基含有有機化合物であることを特徴とする請求項1から請求項2のいずれかに記載の半導体素子の半導体膜形成用分散液。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載の半導体素子の半導体膜形成用分散液を塗布して得た半導体膜の製造方法。
【請求項5】
電極と、前記電極に接する半導体膜と、を有し、前記半導体膜を、請求項4に記載の製造方法によって形成したことを特徴とする半導体素子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体素子形成用分散液、並びに、それを用いた半導体膜及び半導体素子に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、有機エレクトロルミネッセンス(有機EL)素子などの薄型軽量表示素子の開発に伴い、半導体素子としてキャリアの移動度(以下、移動度と記載する)の高い材料の開発が求められている。現在、移動度の高い金属酸化物であるインジウム・ガリウム・亜鉛酸化物といった金属酸化物が開発されている(特許文献1)。
【0003】
また、現在の半導体素子はシリコンが中心であり、プロセスは高価な真空装置と高温プロセスを必要とする。また、フォトリソグラフィーを用いているため複数の工程を経る必要がある。このため、半導体素子の製造コストが高いという問題がある。そこで、移動度の高い無機半導体粒子からなる層を形成する方法として、塗布法のような非真空系のプロセスの検討も盛んに行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2005/088726号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、無機半導体膜の場合、薄膜の成膜温度として約300度以上の高温を必要とする。このため、無機半導体膜の成膜にはガラス基板やシリコンウェハを基板として用いなければならず、耐衝撃性及びフレキシブル性が望まれる樹脂基板などの製品への適用は極めて困難である。
【0006】
そこで本発明は、半導体膜の成膜性、移動度向上及びフレキシブル性向上を同時に実現できる半導体素子形成用分散液、並びに、それを用いた半導体膜及び半導体素子を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明の半導体素子の半導体膜形成用分散液の一態様は、粒子と、溶媒と、を含み、前記粒子が、金属酸化物を含むコア及び有機化合物であるシェルで構成されるコアシェル構造を有し、前記金属化合物は、酸化インジウム、酸化亜鉛、アルミニウムをドープした酸化亜鉛(AZO)、及び、ガリウムをドープした酸化亜鉛(GZO)の少なくともいずれか1種を含み、前記有機化合物は、フッ素系樹脂、或いは、シアノ基含有有機化合物であり、前記粒子の平均粒子径が、5nm以上500nm以下であり、前記金属酸化物の割合は粒子全体を100質量%とした場合、30質量%以上、95質量%以下であり、膜とした場合の移動度が、0.0001cm/Vs以上10cm/Vs以下であり、前記有機化合物は、比誘電率が5以上であることを特徴とする。また、前記金属酸化物の割合は粒子全体を100質量%とした場合、40質量%以上、85質量%以下であることが好ましい。
【0011】
本発明の半導体素子の半導体膜形成用分散液では、前記有機化合物が、シアノ基含有有機化合物であることが好ましい。
【0012】
また、本発明の半導体膜の製造方法は、上記記載の半導体素子の半導体膜形成用分散液を塗布して得た半導体膜を製造することを特徴とする。
【0013】
また、本発明の半導体素子の製造方法は、電極と、前記電極に接する導体膜と、を有し、前記半導体膜を、上記記載製造方法によって形成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明の半導体素子形成用分散液を用いることで、半導体膜の成膜性、移動度向上及びフレキシブル性向上を同時に実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本実施の形態における半導体素子の一例を模式的に示す断面図である。
図2】本実施の形態における半導体素子の一例を模式的に示す断面図である。
図3】本実施の形態における半導体素子の一例を模式的に示す断面図である。
図4】本実施の形態における半導体素子の製造方法を工程順に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施の形態(以下、「実施の形態」と略記する。)について、詳細に説明する。
【0017】
(分散液)
本実施の形態に係る半導体素子用分散液(以下、単に分散液ともいう)について詳細に説明する。本実施の形態に係る分散液は、金属酸化物を含むコア及び有機化合物を含むシェルで構成されるコアシェル構造を有する粒子と、溶媒と、を含む。
【0018】
また、分散液は、さらに分散剤を含んでもよい。分散剤を加えることで、シェルを構成する有機化合物の外側に分散剤が吸着し、又は、有機化合物と分散剤が反応し、粒子の分散性が向上し、分散液の保存安定性も向上する。
【0019】
本実施の形態において、コアシェル構造は、例えば、金属酸化物を含むコアの周囲を、有機化合物を含む有機化合物層(シェル層)で覆った状態をいう。コアとシェル層の間に中間層があってもよい。また、コアの全面をシェル層で覆う必要はなく、コアの表面積の30%以上を覆っていることが好ましく、50%以上がより好ましい。30%以上シェル層で覆うことで分散性と成膜性が良好となるので好ましい。
【0020】
コアシェル構造を有する粒子中の金属酸化物の割合は、半導体特性及び分散液の安定性の観点から、粒子全体を100質量%とした場合、30質量%以上、95質量%以下が好ましく、35質量%以上、90質量%以下がより好ましく、40質量%以上、85質量%以下がさらに好ましい。
【0021】
また、コアシェル構造を有する粒子の平均粒子径が、半導体特性と分散液の安定性の観点から、5nm以上、500nm以下が好ましく、5nm以上、300nm以下がより好ましい。
【0022】
本実施の形態に係る分散液において、粒子をコアシェル構造とすることで、コアを構成する金属酸化物及びシェルを構成する有機化合物が、分散液中及び半導体膜中に均一に分散された状態が保持されるため、半導体膜の成膜時に粒子が凝集するのを防止できると共に、半導体膜の移動度が向上する。この結果、半導体膜の成膜性、移動度向上及びフレキシブル性向上を同時に実現できるという効果を奏する。
【0023】
以下、本実施の形態に係る分散液の構成要素について、さらに詳細に説明する。
【0024】
(金属酸化物粒子)
本実施の形態に係る分散液に使用される金属酸化物粒子について説明する。本実施の形態に係る分散液において、金属酸化物を含むコアの好ましい態様の一つは、金属酸化物粒子である。金属酸化物粒子は、金属酸化物のみで構成されていてもよいし、金属酸化物以外の金属等を含有していてもよい。
【0025】
金属酸化物粒子に用いられる金属酸化物としては、酸化銅(I)、酸化銅(II)、酸化鉄、酸化亜鉛、酸化銀、酸化チタン(ルチル、アナターゼ)、アルミニウムをドープした酸化亜鉛(AZO)、ガリウムをドープした酸化亜鉛(GZO)、酸化インジウムスズ(ITO)、酸化スズ、フッ素をドープした酸化スズ(FTO)、酸化インジウム、インジウム・ガリウム・亜鉛酸化物、酸化ニッケル、CuAlO、CuGaO、SrCu、LaCuOS、LaCuOSe、CuInO、ZnRh4、12CaO・7Al(C12A7)、Ga等が挙げられる。金属酸化物粒子に用いられるこれらの金属酸化物は、二種以上を併用してもよい。
【0026】
金属酸化物は、透明性、キャリアの移動度、低コストの観点から、酸化インジウム又は酸化亜鉛、アルミニウムをドープした酸化亜鉛(AZO)、ガリウムをドープした酸化亜鉛(GZO)であることが好ましく、酸化インジウムが最も好ましい。
【0027】
金属酸化物粒子を、分散液の作製前に熱処理(アニール処理等)してもよい。熱処理温度は、300℃以上、1000℃以下が好ましく、400℃以上、800℃以下がより好ましい。熱処理することで、金属酸化物の表面欠陥制御ができ、半導体膜としたときの移動度の向上につながる。
【0028】
また、金属酸化物粒子の平均粒子径は、1nm以上、450nm以下が好ましく、3nm以上、280nm以下がより好ましい。金属酸化物粒子の平均粒子径は、透過型電子顕微鏡又は走査型電子顕微鏡を用いて測定される。
【0029】
(酸化インジウム粒子)
金属酸化物粒子に使用できる酸化インジウムの種類としては、酸化インジウム(III)(シグマ‐アルドリッチ社製)、Indium Oxide Nanoparticles(SkySpring Nanomaterials Inc製)、酸化インジウム(SP)(稀産金属株式会社製)などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0030】
酸化インジウム粒子の代表的な製法としては、塩化インジウム水溶液などのインジウムイオンに、アンモニア、苛性ソーダなどのアルカリを加えて中和・沈殿させ、インジウム水酸化物を生成させ、大気雰囲気または還元性雰囲気で500℃以上の高温で加熱処理(焼成)して結晶化させる方法が提案されている。
【0031】
酸化インジウムの結晶型は、立方晶、bixbyite型であり、X線回折測定により同定することができる。
【0032】
酸化インジウム粒子のX線回折スペクトルにおいて、主要ピークの半値幅は、酸化インジウムの結晶性を表す尺度である。酸化インジウム粒子のX線回折測定を行った場合、回折角2θ=30〜31°に立方晶、bixbyite型の主要ピークである(222)面の回折ピークが現れる。そして、主要ピークから半値幅を測定できる。酸化インジウムの結晶性を示すX線回折から得られる半値幅は、酸化インジウム粒子内のキャリア移動度の観点から、5.0°以下が好ましく、3.0°以下がより好ましく、2.0°以下がさらに好ましい。また、酸化インジウム粒子の結晶性が高すぎることで成膜性が悪くなるため、当該半値幅は0.004°以上が好ましく、0.01°以上がより好ましく、0.1°以上がさらに好ましい。
【0033】
(有機化合物)
本実施の形態に係る分散液に使用される有機化合物について説明する。キャリアの再結合防止、高移動度の観点から、有機化合物の比誘電率は、5以上150以下が好ましく、より好ましくは10以上100以下である。このように、有機化合物は、誘電体として機能する。
【0034】
有機化合物が上述のような誘電体である場合、コアとしての金属酸化物粒子の周辺に存在することで、成膜性を向上させることができ、さらに、キャリア移動及び欠陥制御にも効果がある。
【0035】
本実施の形態において、有機化合物は、特に限定しないが、極性の高い原子、又は、官能基を含む有機化合物であると誘電率が大きく好ましい。極性の指標となる双極子モーメントは、結合モーメントの和で推測できる。比誘電率が5以上の有機化合物としては、結合モーメントが1.4D(D=3.33564×10−30Cm)以上の置換基を有している化合物が好ましい。結合モーメントが1.4D以上である置換基としては、OH、CF、CCl、C=O、N=O、CN等がある。これらの置換基を有する比誘電率が5以上の有機化合物としては、フッ素系樹脂、グリセリン、チオグリセロール、シアノ基含有有機化合物等が挙げられる。移動度の観点から、フッ素系樹脂やシアノ基含有有機化合物が好ましい。特に、シアノ基含有有機化合物がよく、さらにシアノエチル基含有有機化合物がよい。
【0036】
ここで、シアノ基含有有機化合物とは、シアノ基が1つ以上含まれる化合物のことである。シアノ基含有有機化合物は、より好ましくは、シアノエチル基含有有機化合物である。シアノ基含有有機化合物の具体例としては、シアノエチルプルラン、シアノエチルポリビニルアルコール、シアノエチルサッカロース(シアノエチルスクロース)、シアノエチルセルロース、シアノエチルヒドロキシエチルセルロース、シアノエチルデンプン、シアノエチルヒドロキシプロピルデンプン、シアノエチルグリシドールプルラン、シアノエチルソルビトール等が挙げられる。
【0037】
また、フッ素系樹脂の具体例として、C4−n(nは0から3)を骨格とするポリマーで、具体的には、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレンなどが挙げられる。また、これらを共重合させてもよく、前記フッ素系樹脂を基本とし、別な樹脂と共重合させてもよい。また、前記化学式の水素の一部を塩素に置換してもよい。例えば、ポリクロロトリフルオロエチレンなどが挙げられる。
【0038】
さらに、フッ素系樹脂の具体例として、フッ素系イオン交換樹脂が挙げられる。具体的には、一般式CF=CF−O(CFCFO−(CF−Wで表わされるフッ化ビニル化合物と、一般式CF=CFZで表わされるフッ化オレフィンとの、少なくとも2元共重合体からなるものが挙げられる。ここで、XはF、又は、炭素数1から3のパーフルオロアルキル基、nは、0から3の整数、mは、1から5の整数、Zは、H、Cl、F、又は、炭素数1〜3のパーフルオロアルキル基である。また、Wは、COOH、SOH、SOF、SOCl、SOBr、COF、COCl、COBr、COCH、COで表される基のいずれかである。
【0039】
また、本実施の形態において、有機化合物は、成膜性の観点から分子量600以上の有機化合物がよい。
【0040】
(溶媒)
次に、本実施の形態に係る分散液に使用される溶媒について説明する。溶媒としては、水、ペンタン、ヘキサン、ペプタン、オクタン、ノナン、デカン、2−メチルヘキサン、デカリン、テトラリン、メタノール、エタノール、n−プロパノール、2−プロパノール、n−ブタノール、t−ブタノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、エチレングリコールモノ2−エチルヘキシルエーテル、プロピレングリコールn−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールn−ブチルエーテル、トリプロピレングリコールn−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテル、トリプロピレングリコールメチルエーテル、グリセリンアセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、ベンゼン、キシレン、トルエン、フェノール、アニリン、ジフェニルエーテル等の芳香族類、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、メチルアセテート、テトラヒドロフラン、乳酸ブチル、N−メチルピロリドン等が挙げられる。また、これらを混合して用いることも可能である。
【0041】
(分散剤)
本実施の形態に係る分散液に添加できる分散剤について説明する。分散剤としては、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤が挙げられる。
【0042】
具体的には、アニオン性界面活性剤としては、脂肪酸ナトリウム、モノアルキル硫酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、モノアルキルリン酸塩等が挙げられる。カチオン性界面活性剤としては、アルキルトリメチルアンモニウム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、アルキルベンジルメチルアンモニウム塩等が挙げられる。
【0043】
両性界面活性剤としては、アルキルジメチルアミンオキシド、アルキルカルボキシベタイン等が挙げられる。
【0044】
ノニオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、脂肪酸ソルビタンエステル、アルキルポリグリコシド、脂肪酸時エタノールアミド、アルキルモノグリセリルエーテル等が挙げられる。
【0045】
また、その他の分散剤として、例えば、ビックケミー社製の「Disperbyk−102」、「Disperbyk−111」、「Disperbyk−142」、「Disperbyk−145」、「Disperbyk−110」、「Disperbyk−180」、「Disperbyk−2013」、「Byk−9076」、「ANTI−TERRA−U」、第一工業製薬製の「プライサーフM208F」、「プライサーフDBS」を挙げることができる。また、Triton X−45、Triton X−100、Triton X、Triton A−20、Triton X−15、Triton X−114、Triton X−405、Tween #20、Tween #40、Tween #60、Tween #80、Tween #85、Pluronic F−68、Pluronic F−127、Span 20、Span 40、Span 60、Span 80、Span 83、Span 85、AGCセイミケミカル製の「サーフロンS−211」、「サーフロンS−221」、「サーフロンS−231」、「サーフロンS−232」、「サーフロンS−233」、「サーフロンS−242」、「サーフロンS−243」、「サーフロンS−611」、スリーエム製の「NovecFC−4430」、「NovecFC−4432」、DIC製の「メガファックF−444」、「メガファックF−558」等が挙げられる。
【0046】
分散性を向上する点で、リン酸ポリエステル系の分散剤、アルキルアンモニウム塩系の分散剤、アルキロールアミン塩系の分散剤、顔料親和性を有するコポリマー系分散剤が好ましい。具体的には、ビックケミー社製の、「Disperbyk−111」、「Disperbyk−145」、「Disperbyk−180」及び「Disperbyk−2013」を用いるのが好ましい。
【0047】
分散剤の添加量は、分散液の安定性の観点から、分散液全体に対し、0.1質量%以上、20質量%以下が好ましく、0.2質量%以上、10質量%以下がより好ましい。
【0048】
分散液の濃度として、金属酸化物粒子と有機化合物と溶媒との合計を100質量%としたとき、金属酸化物粒子の含有量は、0.01質量%以上、20質量%以下が好ましく、より好ましくは、0.1質量%以上、10質量%以下であり、さらに好ましくは、0.2質量%以上8質量%以下である。
【0049】
また、有機化合物の含有量は、0.01質量%以上、20質量%以下であることが好ましく、より好ましくは、0.1質量%以上、10質量%以下であり、さらに好ましくは0.2質量%以上、8質量%以下である。
【0050】
また、溶媒の含有量は、60質量%以上、99.98質量%以下であることが好ましく、より好ましくは、80質量%以上、99.8質量%以下であり、さらに好ましくは、84質量%以上、99.6質量%以下である。
【0051】
(分散液の作製方法)
本実施の形態に係る分散液の作製方法について詳細に説明する。金属酸化物粒子を溶媒に分散させた状態で、溶媒に溶解した有機化合物を投入し、ボールミル(遊星ボールミルを含む)、ビーズミル、高圧ジェットミル、ホモジナイザ、超音波分散機等で分散処理する。金属酸化物粒子及び有機化合物の両方を共存している状態で、さらに分散させることで、有機化合物の官能基と金属酸化物の表面とが、反応又は相互作用により、コアシェル構造が形成される。
【0052】
金属酸化物粒子の表面を事前に有機官能基で修飾してもよい。これにより、溶媒への分散性が向上し、均一な半導体膜を成膜できるようになる。有機官能基の修飾方法として、例えば、シアノエチル化が挙げられる。
【0053】
(半導体膜)
本実施の形態の分散液を塗布して作製した半導体膜について詳細に説明する。本実施の形態に係る半導体膜は、金属酸化物粒子をコアとし、有機化合物をシェルとするコアシェル構造を有する粒子で構成される。半導体膜は、当該粒子のみから構成される膜であってもよいし、当該粒子と、その他の成分と、から構成される膜であってもよい。その他の成分としては、例えば、溶媒、バインダー成分、又は無機成分等の何れか一つ以上が挙げられる。
【0054】
本実施の形態における半導体膜(コンポジット体とも称される)は、以下の特徴を有している。
(1) 金属酸化物粒子と有機化合物の合計100質量%に対し、金属酸化物の含有量は、10質量%以上、95質量%以下である。
(2) 金属酸化物粒子と有機化合物の合計100質量%に対し、有機誘電体の含有量は、5質量%以上、90質量%以下である。
【0055】
コアシェル構造の金属酸化物粒子及び有機化合物を含む半導体膜とすることで、半導体膜のフレキシブル性を向上させることができる。
【0056】
コアシェル構造を有する粒子を含むことで、キャリアの伝導パスが増加する効果がある。金属酸化物粒子だけで半導体膜を形成すると、金属酸化物粒子同士が繋がっていない箇所が多数発生する。そこで、金属酸化物粒子及び有機化合物をコアシェル構造とすることで、疑似的に金属酸化物粒子間のコンタクトを増やすことができる。また、実際に金属酸化物粒子同士が密接につながっていなくても、有機化合物が数nmの間隔で入ることにより、キャリアが半導体膜の内部を通りぬけることが可能になると推測される。また、半導体膜中に占める金属酸化物粒子が多すぎると、基板への成膜性が低下する問題がある。
【0057】
また、金属酸化物をコア、有機化合物をシェルとするコアシェル構造とすることで、周辺酸素(即ち、粒子界面の空壁に存在する空気)を遮断することができる。その結果、酸素で失活するキャリアを減らすことができるため、キャリア密度の向上や移動度の向上を図ることができる。
【0058】
半導体膜中の金属酸化物粒子の含有量は、金属酸化物粒子と有機誘電体との合計を100質量%としたとき、半導体特性の観点から、10質量%以上が好ましく、20質量%以上がより好ましく、35質量%がさらに好ましく、40質量%がいっそう好ましい。また、同様の観点から、金属酸化物粒子の含有量は、95質量%以下が好ましく、90質量%以下がより好ましく、85質量%以下がさらに好ましく、80質量%以下がさらにより好ましい。
【0059】
また、半導体膜中の有機化合物の含有量は、フレキシブル性の観点から、5質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましい。また、同様の観点から、有機化合物の含有量は、90質量%以下が好ましく、60質量%以下がより好ましく、40質量%以下がさらに好ましく、30質量%以下がいっそう好ましい。
【0060】
また、半導体膜は、粒子を、金属酸化物粒子をコアとし、有機化合物をシェルとするコアシェル構造とすることで、半導体膜中に金属酸化物粒子が、均一に分散できるため好ましい。
【0061】
(半導体素子)
本実施の形態における半導体素子は、電極と、電極に接して形成された上記に記載の半導体膜と、を有して構成される。
【0062】
半導体素子としては、ダイオード、トランジスタ、薄膜トランジスタ(thin film transistor)、メモリ、フォトダイオード、発光ダイオード、発光トランジスタ、センサ等が挙げられる。
【0063】
トランジスタ及び薄膜トランジスタ(以下、トランジスタ素子と総称する)は、アクティブマトリックス駆動方式ディスプレイ、液晶ディスプレイ、分散型液晶ディスプレイ、電気泳動型ディスプレイ、エレクトロクロミックディスプレイ、有機発光ディスプレイ、電子ペーパー等の種々の表示装置や、粒子回転型表示素子等の種々の表示素子に利用可能である。
【0064】
トランジスタ素子は、これらの表示装置において表示画素のスイッチング用トランジスタ、信号ドライバー回路素子、メモリ回路素子、信号処理回路素子等に利用される。
【0065】
表示装置又は表示素子(以下、表示装置と総称する。)のスイッチング用トランジスタは、表示装置の各画素に配置され、各画素の表示状態をスイッチングする。このようなアクティブ駆動素子は、対向する導電性基板のパターニングが不要なため、回路構成によっては、画素の表示状態をスイッチングするトランジスタを持たないパッシブ駆動型の表示装置と比べて、画素配線を簡略化できる。通常は、1画素当たり1個から数個のスイッチング用トランジスタが配置される。このような表示装置は、基板面に二次元的に形成したデータラインとゲートラインとを交差した構造を有し、データラインやゲートラインがトランジスタのゲート電極、ソース電極、ドレイン電極にそれぞれ接合されている。なお、データラインとゲートラインとを分割することや、電流供給ライン、信号ラインを追加することも可能である。
【0066】
また、表示装置の各画素に、画素配線、トランジスタに加えてキャパシタを併設して、信号を記録する機能を付与することもできる。さらに、表示装置が形成された基板に、データライン及びゲートラインのドライバー回路、画素信号のメモリ回路、パルスジェネレータ、信号分割器、コントローラ等を搭載することもできる。
【0067】
半導体素子が薄膜トランジスタである場合には、その素子構造としては、例えば、基板/ゲート電極/絶縁体層(誘電体層)/ソース電極・ドレイン電極/半導体層という構造(ボトムコンタクト構造)、基板/半導体層/ソース電極・ドレイン電極/絶縁体層(誘電体層)/ゲート電極という構造(トップゲート構造)、基板/ゲート電極/絶縁体層(誘電体層)/半導体層/ソース電極・ドレイン電極という構造(トップコンタクト構造)等が挙げられる。絶縁体層(誘電体層)は、ゲート絶縁膜であり、例えば、比誘電率が3以上150以下の有機化合物膜からなる。また、ソース電極、ドレイン電極、及び、ゲート電極は、それぞれ複数設けてもよい。また、複数の半導体層を同一平面内に設けてもよいし、積層して設けてもよい。
【0068】
半導体素子の移動度(例えば、上述した薄膜トランジスタの移動度)は、画像を表示する素子に利用するためには、0.0001cm/Vs以上が好ましく、0.001cm/Vs以上がより好ましく、0.01cm/Vs以上がさらに好ましい。言い換えれば、本実施の形態に係る分散液を膜としたときの移動度が、0.0001cm/Vs以上が好ましく、0.001cm/Vs以上がより好ましく、0.01cm/Vs以上がさらに好ましい。
【0069】
トランジスタ素子の構成としては、薄膜トランジスタのほかに、MOS(メタル−酸化物(絶縁体層)−半導体)型トランジスタ、バイポーラ型トランジスタのいずれでも採用可能である。バイポーラ型トランジスタの素子構造としては、例えば、n型半導体層/p型半導体層/n型半導体層という構造や、p型半導体層/n型半導体層/p型半導体層という構造が挙げられ、各半導体層に電極が接続されている。そして、p型半導体層やn型半導体層の少なくとも一つに、本実施の形態の酸化インジウム粒子と有機化合物とを含む半導体膜が使用される。
【0070】
また、半導体素子がダイオードである場合には、その素子構造としては、例えば、電極/n型半導体層/p型半導体層/電極という構造が挙げられる。そして、p型半導体層又はn型半導体層に、本実施の形態に係る半導体膜が使用される。
【0071】
半導体膜は、電極と接触しており、半導体膜と電極との接合面の少なくとも一部は、ショットキー接合及び/又はトンネル接合とすることができる。このような接合構造の例としては、例えば、電極/ショットキー接合(トンネル接合)/半導体層/電極という構造、電極/半導体層/トンネル接合/半導体層/電極という構造、電極/ショットキー接合(トンネル接合)/半導体層/トンネル接合/半導体層/電極という構造等が挙げられる。
【0072】
これらのショットキー接合及び、トンネル接合は、ダイオード特性の調整やトンネル接合素子に利用できるばかりでない。ショットキー接合部及び、トンネル接合部に磁性材料や、光応答性材料を用いれば、より高機能な半導体素子を製造することができる。
【0073】
また、本実施の形態に係る半導体膜に、ショットキー接合及び/又はトンネル接合を適用するだけで、ダイオードを形成することができる。このような接合構造を有する半導体素子は、単純な構成でダイオードやトランジスタを作製することができるので好ましい。さらに、このような接合構造を有する半導体素子を複数接合して、インバータ、オシレータ、メモリ回路、センサ等の各種素子を形成することもできる。
【0074】
また、本実施の形態の半導体素子は、ICカード、スマートカード、又は電子タグ等の電子機器における演算素子、記憶素子としても利用することができる。その場合、これらが接触型であっても非接触型であっても、問題なく適用可能である。
【0075】
これらICカード、スマートカード、及び電子タグは、メモリ、パルスジェネレータ、信号分割器、コントローラ、キャパシタ等で構成されており、さらにアンテナ、バッテリを備えていてもよい。
【0076】
さらに、本実施の形態の半導体素子は、センサとして利用することができ、例えば、ガスセンサ、バイオセンサ、血液センサ、免疫センサ、人工網膜、味覚センサ等、種々のセンサに応用することができる。
【0077】
次に、本実施の形態の半導体膜を用いた半導体素子の具体例を示す。図1は、本実施の形態に係る半導体素子100の構成例の一例に示す断面図である。図1に示すように、この半導体素子100は、ボトムコンタクト構造の薄膜トランジスタであり、基板110と、基板110上に形成されたゲート電極120と、基板110上に形成されてゲート電極120を覆う絶縁体層130と、ソース電極140と、ドレイン電極150と、半導体層160とを有する。ソース電極140は、基板110上に形成されおり、絶縁体層130を介してゲート電極120の一方の端部上を覆っている。また、ドレイン電極150は、基板110上に形成されており、絶縁体層130を介してゲート電極120の他方の端部上を覆っている。半導体層160は、絶縁体層130を介してゲート電極120上に形成されており、ソース電極140とドレイン電極150との間(すなわち、ギャップ)に現れる絶縁体層130上から、ソース電極140上及びドレイン電極150上にかけて形成されている。
【0078】
基板110の材料としては、ガラス又は樹脂等が挙げられる。また、ゲート電極120、ソース電極140及び、ドレイン電極150の各材料としては、金属、導電性セラミック材料、炭素、導電性有機材料等が挙げられる。ゲート電極120、ソース電極140及び、ドレイン電極150の各材料は、金属酸化物やシリコンと良好な接合や密着性を得る観点から、より好ましくは金、銀、アルミニウム、銅、酸化インジウムスズ(ITO)、又は、インジウムーガリウム合金がよい。半導体層160は、薄膜トランジスタのボディ層(即ち、チャネルが形成される層)であり、本実施の形態の酸化インジウム粒子と有機化合物とを含む半導体膜により形成される。
【0079】
図2は、本実施の形態に係る半導体素子200の一例を模式的に示す断面図である。図2に示すように、この半導体素子200は、トップゲート構造の薄膜トランジスタであり、基板210と、基板210上に形成されたソース電極240及びドレイン電極250と、基板210上に形成されてソース電極240及びドレイン電極250を覆う半導体層260と、半導体層260上に形成された絶縁体層230と、絶縁体層230上に形成されたゲート電極220と、を有する。図2に示すように、ソース電極240とドレイン電極250は、互いに離れて配置されている。半導体層260は、ソース電極240とドレイン電極250との間(すなわち、ギャップ)に現れる基板210上から、ソース電極240上及びドレイン電極250上にかけて形成されている。半導体層260は、本実施の形態の酸化インジウム粒子と有機化合物とを含む半導体膜により形成される。また、ゲート電極220は、絶縁体層230を介して、半導体層260上に形成されており、ゲート電極220と、ソース電極240上及びドレイン電極250とが、絶縁体層230及び半導体層260を介して一部対向して設けられている。
【0080】
図3は、本実施の形態に係る半導体素子300の一例を模式的に示す断面図である。図3に示すように、この半導体素子300は、トップコンタクト構造の薄膜トランジスタであり、基板310と、基板310上に形成されたゲート電極320と、基板310上に形成されてゲート電極320を覆う絶縁体層330と、絶縁体層330上に形成された半導体層360と、ソース電極340及びドレイン電極350とを有する。半導体層360は、本実施の形態の酸化インジウム粒子と有機化合物とを含む半導体膜により形成される。ソース電極340は基板310上に形成されており、半導体層360の一方の端部上を覆っている。また、ドレイン電極350も基板310上に形成されており、半導体層360の他方の端部上を覆っている。ソース電極340とドレイン電極350は互いに離れて配置されている。ゲート電極320と、ソース電極340上及びドレイン電極350とが、絶縁体層330及び半導体層360を介して一部対向して設けられている。
【0081】
また、図示しないが、本実施の形態に係る半導体素子は、ソース電極とドレイン電極との間に半導体層が介装され、これら3層が膜厚方向に積層されたトランジスタとしてもよい。このとき、ゲート電極は、半導体層中又はソース電極(ドレイン電極)の近傍に配置するとよい。
【0082】
続いて、半導体素子の各層の材質について説明する。基板110、210、310の材料としては、ガラス又は樹脂が挙げられる。また、ゲート電極120、220、320、ソース電極140、240、340及び、ドレイン電極150、250、350の各材料としては、金属、導電性セラミック材料、炭素、導電性有機材料等が挙げられる。ゲート電極120、220、320、ソース電極140、240、340及び、ドレイン電極150、250、350の各材料は、金属酸化物やシリコンと良好な接合や密着性を得る観点から、より好ましくは金、銀、アルミニウム、銅、ITO、又はインジウムーガリウム合金がよい。また、半導体層160、260、360は、薄膜トランジスタのボディ層であり、上記したように、酸化インジウム粒子と有機化合物とを含む半導体膜にて形成される。酸化インジウム粒子及び、有機化合物については既に記述したので、そちらを参照されたい。なお、図1図3の各半導体素子100、200、300に関しては、「半導体層」との表現を用いたが、「半導体層」は、「半導体膜」から形成されたものであり、両者を特段区別するものではない。
【0083】
また、半導体層160、260、360(半導体膜)の層厚は、電気特性の観点から、0.001μm(1nm)以上が好ましく、0.02μm以上がより好ましく、0.05μm以上がさらに好ましい。また、同様の観点から、半導体層160、260、360(半導体膜)の層厚は、1μm(1000nm)以下が好ましく、0.4μm以下がより好ましく、0.2μm以下がさらに好ましく、0.1μm以下がさらにより好ましい。
【0084】
(半導体素子の製造方法)
上記した半導体素子の製造方法としては、例えば、予めパターン形成された電極上や、絶縁体層上の各所定領域に、本実施の形態に係る分散液を所定のパターンで塗布して半導体層を形成する方法が挙げられる。また、半導体素子の他の製造方法として、基板上に半導体膜を形成した後に、この半導体膜をパターニングして半導体層を形成し、さらに、電極形成、絶縁体層の形成を行う方法が挙げられる。このときの半導体膜のパターニング方法としては、例えば、スクリーン印刷、グラビア印刷、オフセット印刷、インクジェット印刷、スプレイ法等の方法を用いてパターンを形成する方法が採用可能である。
【0085】
本実施の形態では、ガラス、樹脂等の基板に半導体素子を形成することができる。しかも、半導体膜は溶液の印刷、塗布等の簡便な方法で成膜することができるため、大きな面積に一度に多数の半導体素子を容易に形成することができる。よって、半導体素子や該半導体素子を用いた装置(前述の表示素子、演算素子、記憶素子等)を安価に製造することができる。また、半導体膜を用いて半導体素子を製造することは、半導体素子を用いた装置の薄型化、軽量化にも有効である。
【0086】
続いて、図1図3に示した半導体素子100、200、300を製造する方法について、図面を用いて説明する。
【0087】
図4A図4Cは、本実施の形態に係る半導体素子100の製造方法を工程順に示す断面図である。図4Aに示すように、まず、基板110上に、ゲート電極120を形成する。
【0088】
次に、図4Bに示すように、ゲート電極120の上面及び側面を、絶縁体層130にて覆う。そして、図4Cに示すように、基板110上から絶縁体層130上にかけて、ソース電極140とドレイン電極150とをそれぞれ形成する。その後、半導体層160を形成してソース電極140とドレイン電極150との間のギャップを半導体層160で埋め込む。これにより、図1に示した半導体素子100が完成する。
【0089】
また、図2に示した半導体素子200は、次の工程順で製造することができる。すなわち、基板210上にソース電極240及びドレイン電極250を形成する。次に、基板210上に半導体層260を形成してソース電極240とドレイン電極250との間、及び、ソース電極240上及びドレイン電極250上を覆う。そして、半導体層260上に絶縁体層230を形成する。その後、絶縁体層230上にゲート電極220を形成する。これにより、図2に示した半導体素子200が完成する。
【0090】
また、図3に示した半導体素子300は、次の工程順で製造することができる。すなわち、基板310上にゲート電極320を形成する。次に、基板310上に絶縁体層330を形成してゲート電極320上面と側面とを覆う。そして、絶縁体層330上に半導体層360を形成する。その後、基板310上から半導体層360上にかけて、ソース電極340とドレイン電極350とを形成する。これにより、図3に示した半導体素子300が完成する。
【0091】
これらの半導体素子(例えば、薄膜トランジスタ)の構成要素であるゲート電極、ソース電極、ドレイン電極と、絶縁体層、及び、半導体層は、全て印刷、塗布等の方法により形成することが可能である。このため、半導体素子の製造を真空下で行う必要がなく、常圧下で行うことができる。
【0092】
ゲート電極、ソース電極、ドレイン電極の各材料(以下、電極材料)としては、金属、導電性セラミック材料、炭素、導電性有機材料等が挙げられる。電極材料は、金属酸化物やシリコンと良好な接合や密着性の観点から、より好ましくは、金、銀、アルミニウム、銅、酸化インジウムスズ(ITO)、インジウムーガリウム合金がよい。
【0093】
また、ゲート電極、ソース電極、ドレイン電極をそれぞれ、印刷、塗布等の方法により形成するためには、電極材料は液体状である必要がある。よって、液体状である電極材料は、電極材料としてそのまま単体で使用できるが、液体状でない電極材料は、液体に分散させて使用する必要がある。液体状でない電極材料を液体に分散させて使用する例としては、金、銀、銅、酸化インジウムスズ(ITO)、オスミウム、パラジウム、ニッケル、コバルト、鉄、アルミニウム等の粉末を液体中に分散した導電性ペーストが挙げられ、より好ましくは金、アルミニウム、銅、酸化インジウムスズ(ITO)である。インジウムーガリウムは、室温で液体の合金であるため、そのまま印刷を行い、封止材などで液を固定化できる。
【0094】
あるいは、電極材料について、前駆体が液体状であるか溶液化しやすいものであれば、前駆体を使用することができる。このような電極材料の例としては、金、銀、ニッケル、インジウム等の有機金属錯体、及び無機金属錯体の溶液が挙げられる。
【0095】
また、絶縁体層の材料は誘電率が高いことが好ましく、絶縁性セラミック材料、有機化合物、ポリマー等が使用される。ただし、絶縁体層の材料は、電極材料と同様に液体状である必要があるので、これらの材料の溶液、分散体、前駆体を使用するとよい。例えば、アルコラートやアセチルアセトン錯体又はこれらの溶液を塗布又は印刷して薄膜を形成し、この薄膜を熱、光等の輻射エネルギーによって酸化物や硫化物に変換して絶縁体層とすることができる。また、絶縁体層の材料として、ポリフッ化ビニリデン、ポリアクリロニトリル、ポリエステル、液晶ポリマー等のポリマーや極性を有する有機化合物も、好ましく使用することができる。さらに、絶縁体層の材料として、これらの有機化合物にセラミック材料等の高誘電体を分散した物を用いることもできる。
【0096】
また、基板110、210、310としては、ガラス基板、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PEN(ポリエチレンナフタレート)、PC(ポリカーボネート)、PP(ポリプロピレン)、ポリエーテルスルホン、ポリイミド、シクロオレフィンポリマー、アクリル樹脂、フッ素系樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂等のプラスチック基板、アルミニウム基板、ステンレス(SUS)基板、粘土からなる基板、紙基板等の通常用いられるあらゆる基板が使用できる。軽量、フレキシブル、低コストの観点からPET(ポリエチレンテレフタレート)、PC(ポリカーボネート)、PP(ポリプロピレン)、PEN(ポリエチレンナフタレート)、ポリエーテルスルホン、ポリイミド、シクロオレフィンポリマー、アクリル樹脂、フッ素系樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂等のプラスチック基板もしくは紙基板が好ましい。
【0097】
さらに、製造工程順に直列に配置した複数の印刷装置、及び/又は塗布装置を用いれば、連続した基板(又は、シート)上に半導体層形成用の塗布液を連続的に印刷及び/又は塗布することができる。これにより、電極、誘電体層、及び半導体層を基板(又は、シート)上に連続的に形成して、半導体素子を製造することができる。
【0098】
例えば、基板/ゲート電極/絶縁体層(誘電体層)/ソース電極・ドレイン電極/半導体層という構造(ボトムコンタクト構造)を有する薄膜トランジスタを製造する場合であれば、その製造工程順に直列に配置されたゲート電極印刷装置、絶縁体層印刷装置、ソース電極・ドレイン電極印刷装置、及び半導体層印刷装置に、帯状の基板を順次通す。帯状の基板は、例えば、上述のシートである。これにより、前述の薄膜トランジスタの構成要素が基板上に連続的に形成されて、薄膜トランジスタが効率よく製造される。
【0099】
このような連続的な薄膜トランジスタの製造方法は、設備の負荷が小さい、工程が短縮される、作業者の数を大幅に削減できる、低コストである等の利点がある。また、大面積の基板に一度に多数の薄膜トランジスタを容易に形成することができるので、大面積のディスプレイ装置を安価に製造することができる。
【0100】
印刷方法、塗布方法としては、スクリーン印刷、グラビア印刷、オフセット印刷、インクジェット印刷、スプレイ法、ブレード塗布等の公知の方法が使用できる。複数の印刷装置、及び/又は塗布装置において、同一の印刷方法、塗布方法を採用してもよいし、構成要素毎に異なる印刷方法、塗布方法を採用してもよい。
【実施例】
【0101】
以下、具体的な実施例により、本発明をより詳細に説明する。
【0102】
<評価方法>
以下、特に断らない限り、25℃、及び、湿度45%の条件で評価を行った。
【0103】
(1)平均粒子径
粒子の平均粒子径は、大塚電子製FPAR−1000を用いてキュムラント法によって測定した。
【0104】
(2)膜厚
半導体膜の層厚は、触針式プロファイリングシステム(Dektak XTL、Bruker株式会社製)によって測定した膜の段差部分で層厚の計測を行った。
【0105】
(3)半導体膜の移動度
半導体膜の移動度は、パラメーターアナライザー(ケースレー社製、4200−SCS)を用いて測定した。素子構造には特に制約はないが、特に断りがない場合、200nmの熱酸化膜付のn型シリコンウェハ(電気抵抗率が0.001〜0.0015Ω・cm)を基板として用い、2nm膜厚のチタンを密着層、22nmm膜厚の金を電極としてチャネル長50μm、チャネル幅500μmで蒸着したものを金電極付ウェハとして用いた。
【0106】
[実施例1]
(洗浄工程)
金電極付ウェハは、セミコクリーン56、超純水、アセトン、2−プロパノールで洗浄した後、UVオゾン処理を行った。
【0107】
(分散液作製工程)
酸化インジウム(In)粒子には、酸化インジウム(III)nanopowder<100nm particle size(TEM),99.9% trace metals basis>(シグマ‐アルドリッチ社製)を用いた。
【0108】
酸化インジウム粒子に対して、マッフル炉SSTR−11K(ISUZU社製)を用いて、空気中、600℃で1時間アニール処理を行った。本粒子、シアノエチルサッカロース(CR−U、信越化学社製)及びジメチルスルホキシド(DMSO、和光純薬工業社製)を混合し、遊星ボールミル用の容器に加えた。その後、遊星ボールミルにて混合、分散させることで分散液を得た。混合割合、ビーズ径及びボールミル運転時間は、表1の通りとした。
【0109】
得られた分散液中では、粒子が、酸化インジウム粒子をコアとし、シアノエチルサッカロースをシェルとするコアシェル構造を示していることが平均粒子径の増加から確認できた。
【0110】
(成膜工程)
金電極付きウェハに、前記分散液を塗布し、表1に示すスピンコート条件にて成膜を行った。この結果、均一な半導体膜を作製できた。その半導体膜を150℃、10分乾燥させ、トランジスタ素子が得られた。
【0111】
[実施例2]
酸化インジウム、シアノエチルサッカロース、ジメチルスルホキシドの混合割合以外は、実施例1と同様である。実施例2においても、実施例1と同様に、得られた分散液中では、粒子はコアシェル構造を示した。また、分散液を用いて、均一な半導体膜を作製できたと共に、トランジスタ素子が得られた。
【0112】
[実施例3]
酸化インジウム、シアノエチルサッカロース、ジメチルスルホキシドの混合割合以外は、実施例1と同様である。実施例3においても、実施例1、2と同様に、得られた分散液中では、粒子はコアシェル構造を示した。また、分散液を用いて、均一な半導体膜を作製できたと共に、トランジスタ素子が得られた。
【0113】
[比較例1]
シアノエチルサッカロースを混合しなかった点、及び、酸化インジウム、ジメチルスルホキシドの混合割合以外は、実施例1と同様である。比較例1では、実施例1〜3と異なり、得られた分散液中では、粒子は酸化インジウムのみで構成されていた。また、比較例1では、トランジスタ素子は作製できたが、電気特性としてトランジスタの動作はしなかった。
【0114】
実施例1〜3及び比較例1で得られた分散液中の粒子の平均粒子径、半導体膜の膜厚及び移動度を表1に示す。表1中、CRUは、シアノエチルサッカロースを示し、ビーズ径は、遊星ボールミルに使用したボールの直径を示し、膜厚及び移動度は、半導体膜の膜厚及びトランジスタ素子を構成する半導体膜でのキャリアの移動度を示す。また、N.Dは、トランジスタ素子にならなかったことを意味している。
【0115】
【表1】
【0116】
表1に示すように、実施例1〜3の、粒子がコアシェル構造を示しているものはトランジスタ素子となり、良好な移動度を示した。
【0117】
特に、実施例3で移動度が一番高くなった。これは、コアである金属酸化物とシェルである有機化合物の比が最適であり、成膜性が良好となった結果、移動度が高くなったと考えられる。
【0118】
なお、本発明は、以上に記載した実施形態や、各実施例に限定されるものではない。当業者の知識に基づいて実施形態や各実施例に設計の変更等を加えてもよく、また、実施形態や各実施例を任意に組み合わせてもよく、そのような変更等を加えた態様も本発明の範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0119】
本発明により、半導体膜の成膜性、移動度向上及びフレキシブル性向上を同時に実現できるので、各種半導体素子に適用することができる。
【符号の説明】
【0120】
100、200、300 半導体素子
110、210、310 基板
120、220、320 ゲート電極
130、230、330 絶縁体層(ゲート絶縁膜)
140、240、340 ソース電極
150、250、350 ドレイン電極
160、260、360 半導体層(半導体膜)
図1
図2
図3
図4