特許第6913483号(P6913483)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6913483コンベヤベルトの製造方法及びコンベヤベルト
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6913483
(24)【登録日】2021年7月14日
(45)【発行日】2021年8月4日
(54)【発明の名称】コンベヤベルトの製造方法及びコンベヤベルト
(51)【国際特許分類】
   B65G 15/30 20060101AFI20210727BHJP
   B65G 15/34 20060101ALI20210727BHJP
【FI】
   B65G15/30 A
   B65G15/34
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-43118(P2017-43118)
(22)【出願日】2017年3月7日
(65)【公開番号】特開2018-144974(P2018-144974A)
(43)【公開日】2018年9月20日
【審査請求日】2019年12月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100164448
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 雄輔
(74)【代理人】
【識別番号】100202636
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 麻菜美
(72)【発明者】
【氏名】遠周 宏純
【審査官】 福島 和幸
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−116793(JP,A)
【文献】 特開2000−018335(JP,A)
【文献】 実開昭59−153912(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 15/30 − B65G 15/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベルト幅方向に並べられたベルト長手方向に延在する複数の芯体をゴムに内包した、ベルト素材の両端部を接合して、無端状のコンベヤベルトを製造する、コンベヤベルトの製造方法であって、
前記ベルト素材のベルト長手方向両端部から前記ゴムを剥いで、前記複数の芯体を露出させる、露出ステップと、
前記露出ステップの後、前記ベルト素材のベルト長手方向一端部側及び他端部側の、露出した前記複数の芯体のそれぞれの末端同士を突き合わせた状態で、露出した前記複数の芯体を、当該複数の芯体が入り込み可能な複数の溝部を有するゴム部材の、当該溝部に入り込ませて配置する、配置ステップと、
前記配置ステップの後、露出した前記複数の芯体を前記ゴム部材を含むゴム材で覆って、前記複数の芯体と前記ゴム材とを一体化することにより、前記ベルト素材のベルト長手方向両端部を接合させる、接合ステップと、を含み、
前記配置ステップ及び前記接合ステップは、前記露出ステップで露出した前記複数の芯体に粘着体を塗布せずに実行されることを特徴とする、コンベヤベルトの製造方法。
【請求項2】
前記配置ステップにおいて、
前記一端部側及び他端部側の、露出した前記複数の芯体のそれぞれの末端どうしを突き合わせた、複数の突き合わせ位置の少なくとも一部は、ベルト長手方向において互いに異なる、請求項1に記載のコンベヤベルトの製造方法。
【請求項3】
前記配置ステップにおいて、
前記一端部側及び他端部側の、露出した前記複数の芯体のそれぞれの末端どうしを突き合わせた、複数の突き合わせ位置は、前記一端部側の、露出した前記複数の芯体の基端の近傍に位置する突き合わせ位置と、前記他端部側の、露出した前記複数の芯体の基端の近傍に位置する突き合わせ位置とが、ベルト幅方向において交互に配置される、請求項1又は2に記載のコンベヤベルトの製造方法。
【請求項4】
ベルト幅方向に並べられたベルト長手方向に延在する複数の芯体をゴムに内包し、前記ベルトの結合部において前記複数の芯体が、突きあわせ構造であり、かつ、複数の溝部を有するゴム部材の上に配置されており、前記結合部の前記複数の芯体それぞれと前記ゴムとの間においてセメントが使用されていないことを特徴とするコンベヤベルト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、コンベヤベルトの製造方法及びコンベヤベルトに関する。
【背景技術】
【0002】
無端状のコンベヤベルトは、一般に、平板状かつ有端のベルト素材の長手方向の一端部側と他端部側を接合させることによって製造される。
【0003】
従来の無端状コンベヤベルトとして、平板状のベルト素材に埋設された複数層の芯体補強層を、ベルト素材長手方向の両端においてベルト素材幅方向に複数に区画し、それぞれ区画した部分を、ベルト素材長手方向で異なる位置で突き合わせることによって、接合したものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015−81182号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、ベルト素材としては、金属等の線条状の芯体をゴムに内包したベルト素材が多用されている。このようなベルト素材を無端状のコンベヤベルトとする場合、ベルト素材の両端部から芯体を露出させ、露出させた芯体を配列させ、再度板状のゴム素材等によって挟み込むことによって、ベルト素材の両端部を接合する製造方法が一般的である。
【0006】
図5は、従来のコンベヤベルトの製造方法の一例を説明するための断面図である。この製造方法では、図示しないが、露出させた芯体20の末端同士を突き合わせた状態でベルト素材の両端部を接合している。その場合、図5に示すように、露出させた芯体を所望の位置に保持する必要があるため、芯体の外周面全体に粘着性のあるゴムセメントC等を塗布した上で、芯体20と周囲のゴム材とを一体化していた。
【0007】
しかしながら、ゴムセメントを乾燥させるには、時間がかかるため、作業効率が低下しやすい。さらに、乾燥中は湿度のコントロールが不可欠であり、除湿機や強制乾燥装置(工業用ドライヤーやヒートランプ)等、環境に応じた乾燥設備の整備にコストがかかる。ここでゴムセメントとはゴム成分とゴム成分を溶解する溶剤を少なくとも含有し、ゴム部材同士、あるいはゴム部材とゴム成分を含んだ部材とを接着するために用いられる組成物の事を言う。また、ゴムセメントは通常、接着ゴムを可燃性の有機溶剤で溶かして作られるため、作業者の安全管理や作業中の火災防止等の処置を要し、手間がかかり、コストも増加しやすい。
【0008】
また、露出させた芯体を互い違いにオーバーラップさせた状態で接合する場合、芯体の一部の屈曲が避けられず、芯体が本来の直線の状態に戻ろうとする反発力が生じる。従って、芯体を所望の位置に保持するには、やはりゴムセメントの使用が必要になるが、その場合、ゴムセメントの使用に起因する上記のような問題が発生する。また、上記芯体の屈曲部への応力集中による破断強度の低下の虞を抑制した、より高い破断強度を有するコンベヤベルトが望まれている。
【0009】
この発明は、上述した課題を解決するためのものであり、高い破断強度を有するコンベヤベルトを簡便に得ることができる、コンベヤベルトの製造方法を提供することを目的とする。さらに、高い破断強度を有するコンベヤベルトの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明のコンベヤベルトの製造方法は、ベルト幅方向に並べられたベルト長手方向に延在する複数の芯体をゴムに内包した、ベルト素材の両端部を接合して、無端状のコンベヤベルトを製造する、コンベヤベルトの製造方法であって、前記ベルト素材のベルト長手方向両端部から前記ゴムを剥いで、前記複数の芯体を露出させる、露出ステップと、前記露出ステップの後、前記ベルト素材のベルト長手方向一端部側及び他端部側の、露出した前記複数の芯体のそれぞれの末端同士を突き合わせた状態で、露出した前記複数の芯体を、当該複数の芯体が入り込み可能な複数の溝部を有するゴム部材の、当該溝部に入り込ませて配置する、配置ステップと、前記配置ステップの後、露出した前記複数の芯体を前記ゴム部材を含むゴム材で覆って、前記複数の芯体と前記ゴム材とを一体化することにより、前記ベルト素材のベルト長手方向両端部を接合させる、接合ステップと、を含むことを特徴とする。この発明のコンベヤベルトの製造方法によれば、高い破断強度を有するコンベヤベルトを簡便に得ることができる。
【0011】
この発明のコンベヤベルトの製造方法では、前記配置ステップにおいて、前記一端部側及び他端部側の、露出した前記複数の芯体のそれぞれの末端どうしを突き合わせた、複数の突き合わせ位置の少なくとも一部は、ベルト長手方向において互いに異なることが好ましい。この構成によれば、接合部分が離反しにくくなる。
【0012】
この発明のコンベヤベルトの製造方法では、前記配置ステップにおいて、前記一端部側及び他端部側の、露出した前記複数の芯体のそれぞれの末端どうしを突き合わせた、複数の突き合わせ位置は、前記一端部側の、露出した前記複数の芯体の基端の近傍に位置する突き合わせ位置と、前記他端部側の、露出した前記複数の芯体の基端の近傍に位置する突き合わせ位置とが、ベルト幅方向において交互に配置されることが好ましい。この構成によれば、接合部分がより離反しにくくなる。
【0013】
この発明のコンベヤベルトは、ベルト幅方向に並べられたベルト長手方向に延在する複数の芯体をゴムに内包し、前記ベルトの結合部において前記複数の芯体が、突きあわせ構造であり、かつ、複数の溝部を有するゴム部材の上に配置されており、前記結合部においてセメントが使用されていない事を特徴とする。この発明のコンベヤベルトによれば、高い破断強度を実現することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、高い破断強度を有するコンベヤベルトを簡便に得ることができる、コンベヤベルトの製造方法を提供することができる。さらに、高い破断強度を有するコンベヤベルトを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】ベルト素材の一例を示す、ベルト幅方向断面図である。
図2】(a)芯体の突き合わせ位置の一例を示す、平面図である。(b)芯体の突き合わせ位置の他の例を示す、平面図である。
図3】本発明に係るコンベヤベルトの製造方法の一実施形態を説明するための、概略図である。
図4】本発明に係るコンベヤベルトの製造方法の一実施形態における、配置ステップ及び接合ステップを説明するための、ベルト幅方向断面図である。
図5】従来のコンベヤベルトの製造方法の一例を説明するための、図4と同様の、ベルト幅方向断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しながら、本発明に係る無端状コンベヤベルトの製造方法の実施形態を例示説明する。
【0017】
まず、図1を参照して、本発明の一実施形態に係る製造方法において用いることができる、ベルト素材の一例について説明する。図1は、ベルト素材の一例を示すベルト幅方向断面図である。このベルト素材1は、長尺平板状かつ有端の(当該長尺の長手方向に両端を有する)素材であり、本発明に係るコンベヤベルトの製造方法において用いるベルト素材1は、ベルト幅方向(図1の紙面左右方向)に並べられた、ベルト長手方向(図1の紙面表裏方向)に延在する複数の芯体2をゴム3に内包している。
なお、本明細書において、「ベルト幅方向」とは、コンベヤベルトを製造するための上記ベルト素材1の幅方向と、製造されたコンベヤベルトの幅方向と、の双方の意味に用いるものとする。本明細書における「ベルト長手方向」、「ベルト厚み方向」等も同様である。
【0018】
ここで、複数の芯体2は、例えば、スチールコード等の線条体を用いることができる。また、芯体2の本数や直径、ベルト幅方向に隣接する芯体2同士の間隔等は適宜変更することができる。
さらに、ゴム3の材質は、例えば、ゴム成分として、天然ゴム、ジエン系合成ゴム等の合成ゴム又はこれらを併用したものを含むものとすることができる。なお、ゴム3は、一種類の材質から成るものに限られず、複数の材質の層から成るものとしてもよい。
【0019】
次に、図1図4を参照して、本発明に係るコンベヤベルトの製造方法の一実施形態について説明する。図2(a)は、芯体の突き合わせ位置の一例を示す、平面図であり、図2(b)は、芯体の突き合わせ位置の他の例を示す、平面図である。また、図3は、本発明に係るコンベヤベルトの製造方法の一実施形態を説明するための、概略図であり、図4は、本発明に係るコンベヤベルトの製造方法の一実施形態における、配置ステップ及び接合ステップを説明するための、ベルト幅方向断面図である。本実施形態に係るコンベヤベルトの製造方法は、露出ステップと、配置ステップと、接合ステップと、を含む。
なお、本明細書において、芯体、より具体的には、芯体の末端同士を「突き合わせる」とは、芯体の両端部の末端同士が互いに接触することなく、また、芯体の両端部同士がベルト幅方向でオーバーラップすることもないように、当該末端同士を近接対向させ、当該両端部同士が略一直線上に並ぶようにすることを意味する。
以下、これらの各ステップについて、順に説明する。
【0020】
[露出ステップ]
露出ステップでは、図1におけるベルト素材1のベルト長手方向両端部から、ゴム3を剥いで、複数の芯体2を露出させる。具体的には、例えば、ベルト素材1のゴム3を、ナイフ、電熱カッター又はピアノ線等を用いて切断して剥離し、さらに、芯体2の周囲に付着したゴム3を、ワイヤーブラシ等で取り除いてもよい。なお、ゴム3が芯体2の周囲にまだ残存している場合は、さらに溶剤等によって除去することもできる。
【0021】
[配置ステップ]
配置ステップでは、上記露出ステップの後で、露出した複数の芯体2を、当該複数の芯体2が入り込み可能な複数の溝部を有するゴム部材5の当該溝部6に入り込ませて配置する。
【0022】
ここで、ベルト素材1のベルト長手方向一端部側及び他端部側の、露出した複数の芯体2のそれぞれの末端同士を突き合わせた状態とは、より具体的には、ベルト素材1のベルト長手方向における一端部側の複数の芯体2のそれぞれの末端と、ベルト素材1のベルト長手方向における他端部側の複数の芯体2のそれぞれの末端とを突き合わせた状態を指す。
【0023】
上記配置ステップでは、例えば、ベルト素材1のベルト長手方向一端部側及び他端部側の、露出した複数の芯体2のそれぞれの末端同士を突き合わせた状態にしてから、露出した複数の芯体2をゴム部材5の溝部6に入り込ませてもよく、また、露出した複数の芯体2をゴム部材5の溝部6に入り込ませてから、上記の突き合わせた状態としてもよい。即ち、露出した複数の芯体2を、ゴム部材5の溝部6に入り込ませることにより、溝部6に配置した段階(後述する、接合ステップを行う前の段階)で、上記の突き合わせた状態とされていればよい。
【0024】
なお、溝部を複数有するゴム部材5の材質は、例えば、ゴム成分として、天然ゴム、ジエン系合成ゴム等の合成ゴム又はこれらを併用したものを含むものとすることができる。さらに、ゴム部材6は、未加硫であることが好ましい。
【0025】
ゴム部材5は、複数の芯体2が入り込み可能な複数の溝部6を有している。本実施形態では、図3及び図4に示すように、複数の溝部6のそれぞれは、それぞれの芯体2の延在方向(ひいてはベルト素材1の長手方向)に沿って延在し、それぞれの芯体2のベルト幅方向位置に対応する、ゴム部材5のベルト幅方向位置に形成されている。
【0026】
複数の溝部6は、芯体2が入り込み可能な形状であればよく、本実施形態では、図3及び図4に示すように、芯体2が円柱状であることから、溝部6は、ベルト幅方向断面において半円形状を呈している。但し、溝部6の形状は、芯体2の形状に応じて、又は芯体2の形状にかかわらず、断面半円形状でなくともよく、例えば、断面矩形状又は断面半楕円形状としてもよい。なお、図4に示すとおり、芯体2は溝部6に全体が入り込む必要はなく、溝部6から、ベルト厚み方向に一部が出ている状態でもよい。
【0027】
なお、芯体2は、溝部6に入りこませて配置する際に、ゴムセメント等の粘着体を塗布せず、直に(即ち、露出したままで)配置する。
【0028】
本実施形態に係るコンベヤベルトの製造方法によれば、配置ステップにおいて、突き合わせた状態の露出した芯体2を、ゴム部材5に形成された溝部6に配置することで、所望の位置に芯体2を安定的に保持できる。また、芯体2の末端同士を突き合わせた状態とすることから、芯体2に屈曲した部分が形成されないため、反発力が発生せず、この状態で溝部6内に収容されることで、所望の位置から動いてしまうことを防止できるとともに、高い破断強度のコンベヤベルトを得ることができる。さらに、ゴムセメント等の粘着性の材料を芯体2に塗布する必要がなくなるため、ゴムセメントの使用に起因する作業効率の低下及び手間やコストの増加を防止することができる。
【0029】
上記配置ステップでは、図2(a)に示すとおり、一端部側及び他端部側の、露出した複数の芯体2のそれぞれの末端同士を突き合わせた、複数の突き合わせ位置4の少なくとも一部は、ベルト長手方向において互いに異なることが好ましい。図示例では、突き合わせ位置4の全てが、ベルト長手方向において異なっている。このような構成によれば、コンベヤベルトの接合部分が離反しにくくなる。
ここで、突き合わせ位置とは、ベルト長手方向に近接対向する芯体2の、一端部側の末端から他端部側の末端までのベルト長手方向距離の中心位置を指すものとする。
【0030】
上記のように、複数又は全ての突き合わせ位置をベルト長手方向で異ならせるには、例えば、ベルト素材1をベルト長手方向の途中で切断する際に、ベルト幅方向に対して傾斜した線を引き、その線に沿って芯体2を含めて切断することによって、全ての突き合わせ位置を異ならせることができる。又は、まず、ベルト素材1のベルト長手方向一端部側及び他端部側を一直線上に位置するように向かい合わせ、露出した複数の芯体2をベルト素材1の厚み方向において重ね合わせる。次に、一端部側の露出した複数の芯体2を、互いに異なる長さに切断する。そして、切断された各芯体2のベルト長手方向一直線上に位置する、他端部側の露出した芯体2を、芯体2の両端部の末端同士が互いに接触することなく、また、芯体2の両端部同士がベルト幅方向でオーバーラップすることもないように、当該末端同士を近接対向させ、当該両端部同士が略一直線上に並ぶように配置できる長さに切断する。このようにして、全ての芯体2を突き合わせた状態にすることができる。
【0031】
また、上記配置ステップでは、図2(b)に示すとおり、一端部側及び他端部側の、露出した複数の芯体2のそれぞれの末端同士を突き合わせた、複数の突き合わせ位置4は、一端部側の、露出した複数の芯体2の基端の近傍に位置する突き合わせ位置4と、他端部側の、露出した複数の芯体2の基端の近傍に位置する突き合わせ位置4とが、ベルト幅方向において交互に配置されることが好ましい。具体的には、複数の突き合わせ位置4は、中心LCを基準として、一端部側の芯体2の基端寄りのものと、他端部側の芯体2の基端寄りのものとがベルト幅方向に隣り合っている。言い換えれば、図2(b)に示すとおり、一端部側の露出した複数の芯体2の基端から、他端部側の露出した複数の芯体2の基端に到るまでのベルト長手方向長さLの中心LCを基準として、突き合わせ位置4が、ベルト長手方向一方側と、他方側とにベルト幅方向において交互に配置されている。このような構成によれば、接合部分が離反しにくくなる。
ここで、中心LCから突き合わせ位置4までのベルト長手方向長さは、長さLの80%〜90%であることが好ましい。より接合部分が離反しにくく、接合部分における両端部の芯体の荷重負担のバランスが取れたコンベヤベルトが容易に得られるためである。
なお、突き合わせ位置4は、図2(b)に示すように、ベルト幅方向の1つおきに、ベルト長手方向における位置が同じであってもよい。
さらに、ベルト幅方向に隣り合う突き合わせ位置4の、中心LCから突き合わせ位置4までのベルト長手方向長さは、同じ長さであってもよい。言い換えれば、一端部側の芯体2の基端から突き合わせ位置4までのベルト長手方向長さは、当該一端部側の芯体2とベルト幅方向に隣り合う他端部側の芯体2(即ち、一端部側の芯体2とベルト幅方向に隣り合う、一端部側の芯体2と、ベルト長手方向に近接対向する他端部側の芯体2)の、基端から突き合わせ位置4までのベルト長手方向長さと同一であってもよい。
【0032】
なお、上記配置ステップでは、両端部側の芯体2の末端同士が突き合わされ、両端部の芯体2が略一直線上で近接対向するが、このとき、近接対向する芯体2の、一端部側の末端から他端部側の末端までのベルト長手方向距離lは、20mm以上50mm以下とすることが好ましい。20mm以上とする理由は、ずれ等によって末端同士が突き合って芯体が折れる可能性があるためである。また50mm以下とする理由は、芯体本来のベルト素材又はコンベヤベルトの補強という役割を十分に発揮させ、さらに、芯体の途切れ目をできるだけ減らして、コンベヤベルトの破断強度低下を防止するためである。
【0033】
[接合ステップ]
接合ステップでは、配置ステップの後、露出した複数の芯体2を、溝部6を複数有するゴム部材5を含むゴム材で覆って、複数の芯体2とゴム材とを一体化することにより、ベルト素材1のベルト長手方向両端部を接合させる。
【0034】
接合ステップでは、図4に示すとおり、例えば、芯体2を、溝部を複数有するゴム部材5及びゴム部材5と同等又は異なる材質の他のゴム材で覆うことができる。図示例では、芯体2を、溝部を複数有するゴム部材5と、シート状のゴム材7とで挟み込み、さらに、ゴム部材5とゴム材7とを、この例では、ゴム材7より厚い一対の他のシート状のゴム材8で挟み込むように配置している。
【0035】
なお、図示例では、ゴム材7は溝部を有しない平板状の帯状部材であるが、溝部を複数有するゴム部材5と同様に、複数の芯体2が入り込み可能な溝部を複数有するゴム材とすることもできる。さらに、図示例では、ゴム部材5及びゴム材8は別部材とされているが、これらは、接合ステップの前に一体化されたものであってもよい。なお、ゴム材7及びゴム材8についても、接合ステップの前に一体化されたものであってもよい。
【0036】
ゴム材7及びゴム材8の材質は、例えば、ゴム成分として、天然ゴム、ジエン系合成ゴム等の合成ゴム又はこれらを併用したものを含むものとすることができる。ゴム部材5、ゴム材7及びゴム材8は、全て又は一部が同一の材質であってもよく、互いに異なる材質であってもよい。さらに、ゴム材7及びゴム材8についても、未加硫であることが好ましい。
【0037】
溝部を複数有するゴム部材5、ゴム材7及びゴム材8は、一端部側の露出した複数の芯体2の基端から、他端部側の露出した複数の芯体2の基端に到るまでのベルト長手方向長さLと略同じベルト長手方向長さと、ベルト素材1のベルト幅方向長さと略同じ長さのベルト幅方向長さを有する帯状部材であることが好ましいが、必ずしもこれらに限定されるものではない。
【0038】
なお、ゴム部材5、ゴム材7及びゴム材8は、複数の芯体2と、当該複数の芯体2を溝部6に入り込ませたゴム部材5、ゴム材7及びゴム材8が、後述する接合ステップにて一体化され、ベルト素材1のベルト長手方向両端部を接合させたとき、コンベヤベルトの表面が凹凸を有さない平滑な表面となるよう、厚みを調整して配置することが好ましい。
【0039】
上記の接合ステップでは、複数の芯体2と、当該複数の芯体2を溝部6に入り込ませたゴム部材5、ゴム材7及びゴム材8とを、例えば、プレス装置(図示せず)の間に配置し、プレス装置によって加圧しながら一体的に加硫して、ベルト素材のベルト長手方向両端部を接合させることができる。
【0040】
なお、上記の各ステップにより得られるコンベヤベルトは、図1に示す、ベルト素材のベルト幅方向断面図と同様のベルト幅方向断面を有する。
【0041】
以上の通り、本発明のコンベヤベルトの製造方法によれば、突き合わせた状態の露出した芯体2を、ゴム部材5に形成された溝部6に配置することで、芯体の屈曲部への応力集中による破断強度の低下の虞を抑制した、より高い破断強度を有するコンベヤベルトを得ることができ、さらに、ゴムセメントの使用に起因する作業効率の低下及び手間やコストの増加を防止することができる。
【0042】
次に、本発明に係る無端状コンベヤベルトについて説明する。本発明のコンベヤベルトは、ベルト幅方向に並べられたベルト長手方向に延在する複数の芯体2をゴムに内包し、ベルトの結合部において複数の芯体2が、突きあわせ構造であり、かつ、複数の溝部6を有するゴム部材の上に配置されており、結合部においてセメントが使用されていない。
即ち、本発明のベルト素材1のベルト結合部においては、複数の芯体2が突き合わせ構造を有しており、芯体2に屈曲した部分が形成されていない。従って、コンベヤベルトの使用時において、芯体の屈曲部への応力集中による破断強度の低下の虞を抑制することができる。さらに、ゴムセメント等の粘着性の材料が芯体2に塗布されていない構造を有するため、ゴムセメントの使用に起因する作業効率の低下及び手間やコストの増加を防止しながら、高い破断強度を有することができる。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明によるコンベヤベルトの製造方法は、新品のベルト素材からコンベヤベルトを製造する際に好適に用いることができるほか、例えば、使用したコンベヤベルトの一部をベルト素材として新たなコンベヤベルトを製造する際にも、好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0044】
1:ベルト素材、 2:芯体、 3:ゴム、 4:突き合わせ位置、 5:ゴム部材(ゴム材)、 6:溝部、 7、8:ゴム材
図1
図2
図3
図4
図5