【文献】
Alcatel-Lucent Shanghai Bell, Alcatel-Lucent,PCI Collision Issue for Mobile Relays[online], 3GPP TSG-RAN WG3#77 R3-121629,インターネット<URL:http://www.3gpp.org/ftp/tsg_ran/WG3_Iu/TSGR3_77/Docs/R3-121629.zip>,2012年 8月 3日
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。
<第1の実施形態>
まず、第1の実施形態の概要について
図1を用いて説明する。
図1は、第1の実施形態の概要を示す概略図である。
図1の例では、線路R上を走る電車1、電車2(総称して電車とも称する)に、それぞれ基地局装置10−1、10−2(総称して基地局装置10とも称する)が設置されている。基地局装置10は、例えば、LTEにおけるeNodeB(evolved NodeB)である。基地局装置10−1、10−2には同一路線を走る電車に設置された基地局装置に共通するセルID10が設定されている。
【0015】
電車1、電車2が停車する駅1、駅2に、それぞれ基地局装置20−1、20−2(総称して基地局装置20とも称する)が設置されている。基地局装置20は、例えば、LTEにおけるeNodeBである。基地局装置20−1、20−2には、同一路線内の駅に設置された基地局装置に共通するセルID20が設定されている。
【0016】
電車1、電車2内に、それぞれ端末装置30−1、30−2(総称して端末装置30とも称する)が存在する。端末装置30−1、30−2は、例えば、携帯電話、スマートフォン等の通信機器であり、それぞれ基地局装置10−1、10−2が形成するセル(セルID:10)に接続して通信を行う。
【0017】
基地局装置10、20は、自装置に設定されたセルIDを管理し、当該セルIDを報知情報に含めて送信する。端末装置30は、報知情報に含まれるセルIDによりセルを識別する。
【0018】
また、基地局装置10は、周辺基地局情報に、基地局装置20に共通するセルID20を含めて報知情報として送信する。基地局装置20は、周辺基地局情報に、基地局装置10に共通するセルID10を含めて報知情報として送信する。端末装置30は、当該周辺基地局情報を受信し保持することで、ハンドオーバーをスムーズに行うことができる。
【0019】
ここで、基地局装置10−1と基地局装置10−2は同じセルIDを有するため、基地局装置10−1のカバーエリアと基地局装置10−2のカバーエリアが重なる場合、端末装置30は、セルを識別することができず、通信を正常に行うことができない。しかし、大部分の時間帯は、電車1と電車2は基地局装置10のカバーエリアよりも大きい車間距離をとって走行しているため、セルIDの重複による問題は発生せず、端末装置30は、基地局装置10と正常に通信を行うことができる。
【0020】
このように、本実施形態では、同一路線を走行する電車に設置された基地局装置10−1、10−2に共通するセルID10が設定され、同一路線内の駅に設置された基地局装置20−1、20−2に共通するセルID20が設定される。各基地局装置10は、基地局装置10に共通するセルIDと基地局装置20に共通するセルIDだけを管理すればよいため、必要なセルIDの数が少なくて済み、セルIDの枯渇を防ぐことができる。
【0021】
また、本実施形態では、基地局装置10−1は、ビームフォーミングにより、指向性を有するビームの放射範囲を設定可能であり、基地局装置10−2の送信電波との重なりが少なくなるように、ビームの放射範囲を設定する。これにより、同じセルIDを有する基地局装置10−2と接近する場合(追い越し時、すれ違い時等)もセルIDの重複による問題を回避することができる。
【0022】
なお、セルとは、基地局装置が送信する電波により形成される通信エリア(カバーエリア、カバレッジとも称する)を指す。また、セルは、セルを形成する基地局装置自体や送信電波の周波数(キャリア、コンポーネントキャリアとも称する)を指しても使用される。セルIDとは、セルを識別する識別子(識別情報)であり、例えば、LTEにおけるPCI(Physical Cell Identifier)、ECGI(E−UTRAN Cell Global Identifier)、eNB ID(eNB Identifier)等である。周辺基地局情報とは、接続するセル(サービングセルとも称する)の候補を示す情報である。
【0023】
次に、本実施形態に係る基地局装置10の構成について説明する。
図2は、本実施形態に係る基地局装置10の構成例を示すブロック図である。基地局装置10は、第1通信部100と、第2通信部110と、記憶部120と、制御部130とを含んで構成される。
【0024】
第1通信部100は、送信部101と受信部102とを含んで構成される。
送信部101は、制御部130から入力される送信信号を電波として端末装置30に送信する。送信部101は、複数のアンテナ素子を有するアレイアンテナを含んで構成され、ビーム制御部133の制御に基づき指向性を有する電波(ビーム)を送信する(ビームフォーミング)。
受信部102は、端末装置30からの電波を受信信号として受信する。受信部102は、受信した受信信号を制御部130に出力する。受信部102は、複数のアンテナ素子を有するアレイアンテナを含んで構成され、アレイアンテナを用いて電波の受信方向を検出(ビームスキャン)する。受信部102は、受信信号を制御部130に出力する。
【0025】
第2通信部110は、有線または無線の通信回線を介して他の基地局装置やコアネットワーク内の各構成装置と通信を行うためのインターフェイスであり、制御部130の制御に基づいて各種のデータを送受信する。
【0026】
記憶部120は、少なくとも1つのHDD(Hard Disc Drive)、フラッシュメモリ、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)、ROM(Read Only Memory)、またはRAM(Random Access Memory)など、あるいはそれらの組み合わせにより構成される。記憶部120は、基地局装置10に関する各種情報やプログラムを記憶する。
【0027】
制御部130は、基地局装置10の各種機能を制御する。制御部130が有する機能の一部または全ては、例えば、制御部130が備えるCPU(Central Processing Unit)等の1以上のプロセッサが記憶部120に記憶されている各種プログラムを実行することにより実現されてもよい。
制御部130は、セル管理部131と、通信制御部132と、ビーム制御部133とを含んで構成される。
【0028】
セル管理部131は、自装置に設定されたセルIDを管理する。本実施形態では、セル管理部131は、同じ路線を走行する電車に設置された基地局装置10に共通するセルID10を管理する。以降、同じ路線を走行する電車に設置された基地局装置に共通するセルIDを、電車共通セルIDとも称する。電車共通セルIDは1つでなく、特定の番号帯(例えば、セルID10からセルID19)等の複数のセルIDであってもよい。
【0029】
また、本実施形態では、セル管理部131は、同じ路線内の駅に設置された基地局装置20に共通するセルID20を管理する。以降、同じ路線内の駅に設置された基地局装置に共通するセルIDを駅共通セルIDとも称する。駅共通セルIDは1つでなく、特定の番号帯(例えば、セルID20からセルID29)等の複数のセルIDであってもよい。また、セル管理部131が管理する情報は、記憶部120に記憶されたものであってもよい。
【0030】
通信制御部132は、自装置のカバーエリア内の端末装置30との通信に関する制御を行う。通信制御部132は、例えば、端末装置30との接続の確立、切断、ハンドオーバーに係る処理、ユーザデータの送受信に係る処理等の制御を行う。
【0031】
また、通信制御部132は、セル管理部131が管理する自装置のセルIDを報知情報に含めて、送信部101を介して端末装置30に送信する。また、通信制御部132は、セル管理部131が管理する周辺基地局情報を報知情報に含めて、送信部101を介して端末装置30に送信する。
【0032】
ビーム制御部133は、送信する電波の指向方向を制御する。ビーム制御部133は、送信部101の各アンテナ素子における送信信号の位相と振幅を制御することで送信電波の指向性を制御する。また、ビーム制御部133は、個々のビームを識別するビームIDを生成し、送信部101を介してビームIDを端末装置30に送信する。本実施形態では、ビーム制御部133は、ビームの放射範囲を、自装置と同じセルIDを有する他の基地局装置の電波の送信範囲との重なりが少なくなるように設定する。ビームの放射範囲の設定の例については後述する。
【0033】
なお、ビーム制御部133は、ビームフォーミングを使用せずに電波の送信範囲を変更してもよい。例えば、ビーム制御部133は、アンテナのチルト角の変更、送信電力の変更等により電波の送信範囲を変更してもよい。
【0034】
次に、本実施形態に係る基地局装置20の構成について説明する。
図3は、本実施形態に係る基地局装置20の構成例を示すブロック図である。基地局装置20は、第1通信部200と、第2通信部210と、記憶部220と、制御部230とを含んで構成される。
【0035】
第1通信部200は、送信部201と受信部202とを含んで構成される。
送信部201は、制御部230から入力される送信信号を電波として端末装置30に送信する。受信部202は、端末装置30からの電波を受信信号として受信し、制御部230に出力する。
【0036】
第2通信部210は、有線または無線の通信回線を介して他の基地局装置やコアネットワーク内の各構成装置と通信を行うためのインターフェイスであり、制御部230の制御に基づいて各種のデータを送受信する。
【0037】
記憶部220は、少なくとも1つのHDD、フラッシュメモリ、EEPROM、ROM、またはRAMなど、あるいはそれらの組み合わせにより構成される。記憶部220は、基地局装置20に関する各種情報やプログラムを記憶する。
【0038】
制御部230は、基地局装置20の各種機能を制御する。制御部230が有する機能の一部または全ては、例えば、制御部230が備えるCPU等の1以上のプロセッサが記憶部220に記憶されている各種プログラムを実行することにより実現されてもよい。
【0039】
制御部230は、セル管理部231と通信制御部232を含んで構成される。
セル管理部231は、自装置に設定されたセルIDを管理する。本実施形態では、セル管理部231は、自装置のセルIDとして駅共通セルIDを管理する。また、セル管理部231は、周辺基地局情報に含めるための情報として、電車共通セルIDを管理する。また、セル管理部231が管理する情報は、記憶部220に記憶されたものであってもよい。
【0040】
通信制御部232は、自装置のカバーエリア内の端末装置30との通信に関する制御を行う。通信制御部232は、例えば、端末装置30との接続の確立、切断、ハンドオーバーに係る処理、ユーザデータの送受信に係る処理等の制御を行う。
【0041】
また、通信制御部232は、セル管理部231が管理する自装置のセルIDを報知情報に含めて、送信部201を介して端末装置30に送信する。また、通信制御部232は、セル管理部231が管理する周辺基地局情報を報知情報に含めて、送信部201を介して端末装置30に送信する。
【0042】
次に、本実施形態に係る端末装置30の構成について説明する。
図4は、本実施形態に係る端末装置30の構成例を示すブロック図である。端末装置30は、通信部300と、記憶部310と、制御部320とを含んで構成される。
【0043】
通信部300は、送信部301と受信部302を含んで構成される。
送信部301は、制御部320から入力される送信信号を電波として基地局装置10、20に送信する。送信部301は、複数のアンテナ素子を有するアレイアンテナを含んで構成され、ビーム制御部323の制御に基づき指向性を有する電波を送信する。
受信部302は、基地局装置10、20からの電波を受信信号として受信する。受信部302は、複数のアンテナ素子を有するアレイアンテナを含んで構成され、アレイアンテナを用いて電波の受信方向を検出する。受信部302は、受信信号を制御部320に出力する。
【0044】
記憶部310は、少なくとも1つのHDD、フラッシュメモリ、EEPROM、ROM、またはRAMなど、あるいはそれらの組み合わせにより構成される。記憶部310は、端末装置30に関する各種情報やプログラムを記憶する。
【0045】
制御部320は、端末装置30の各種機能を制御する。制御部320が有する機能の一部または全ては、例えば、制御部320が備えるCPU等の1以上のプロセッサが記憶部310に記憶されている各種プログラムを実行することにより実現されてもよい。
制御部320は、セル管理部321と、通信制御部322と、ビーム制御部323とを含んで構成される。
【0046】
セル管理部321は、自装置が接続するセルIDを管理する。セル管理部321は、基地局装置10、20が報知情報として送信するセルIDを、受信部302を介して取得し管理する。セル管理部321が管理する当該セルIDに基づいて、通信制御部322はセルIDに対応する基地局装置に接続する。セル管理部321が管理する情報は、記憶部310に記憶されたものであってもよい。
【0047】
また、セル管理部321は、基地局装置10、20が報知情報として送信する周辺基地局情報を、受信部302を介して取得し管理する。周辺基地局情報には、接続する候補となるセルのセルIDが含まれる。周辺基地局情報に含まれるセルIDをセルサーチの対象とすることで、端末装置30は基地局装置10、20とのハンドオーバーを迅速かつ効率的に行うことができる。
【0048】
通信制御部322は、基地局装置10、20との通信に関する制御を行う。通信制御部322は、例えば、基地局装置10、20との接続の確立、切断、ハンドオーバーに係る処理、ユーザデータの送受信に係る処理等の制御を行う。
【0049】
ビーム制御部323は、送信する電波の指向方向を制御する。ビーム制御部323は、送信部301の各アンテナ素子における送信信号の位相と振幅を制御することで送信電波の指向性を制御する。また、ビーム制御部323は、基地局装置10から受信したビームIDに基づいて、ビームを一意に識別し、基地局装置10とビームフォーミングによる通信を行う。
【0050】
次に、本実施形態に係る基地局装置10の処理の例を説明する。
図5は、本実施形態に係る基地局装置10の処理の一例を示すフローチャートである。
【0051】
まず、基地局装置10−1は、自装置のセルIDとして管理するセルID(ID:10)を、報知情報に含めて送信する(ステップS101)。電車1内の端末装置30−1は、受信したセルIDに基づいて基地局装置10−1との接続処理を行い、基地局装置10−1と端末装置30−1の接続が確立する(ステップS102)。
【0052】
次に、基地局装置10−1は、周辺基地局情報に、同じ路線内の駅に設置された基地局装置20−1、20−2に共通する駅共通セルID(ID:20)を含め、当該周辺基地局情報を報知情報に含めて送信する(ステップS103)。このように、駅共通セルIDを電車1内の端末装置30−1に通知しておくことで、端末装置30−1は、駅1、駅2で停車した際に、迅速かつ効率的に基地局装置20−1、20−2にハンドオーバーすることができる。
【0053】
次に、基地局装置10−1は、ビームの放射範囲を、基地局装置10−2の電波の送信範囲との重なりが少なくなるように設定する(ステップS104)。ビームの放射範囲の設定の例については後述する。
このように、ビームの放射範囲を同じセルIDを有する基地局装置10−2の送信電波との重なりが少なくなるように設定することで、セルIDの重複による通信上の問題を回避することができる。
【0054】
次にビーム放射範囲の設定の例を説明する。
図6は、本実施形態に係る基地局装置10のビーム放射範囲の設定の例を示す第1の図である。
【0055】
図6(a)は、電車1を側方から見た断面を表す模式図である。
電車1の天井に基地局装置10−1が設置されている。基地局装置10−1のビーム制御部133は、ビームの放射範囲を矢印aa、矢印bbの範囲内に設定する。矢印aa、矢印bbで囲まれる範囲は、電車1内のユーザが保持する端末装置30をカバーし、かつ、送信電波が電車1外に送信される電波が少なくなるような範囲である。
【0056】
図6(b)は、電車1を前方または後方から見た断面を表す模式図である。基地局装置10−1のビーム制御部133は、ビームの放射範囲を矢印cc、矢印ddの範囲内に設定する。矢印cc、矢印ddで囲まれる範囲は、電車1内のユーザが保持する端末装置30をカバーし、かつ、送信電波が電車1外に送信される電波が少なくなるような範囲である。
【0057】
換言すると、ビーム制御部133は、ビームの放射範囲を、同じ電車共通セルIDを有する基地局装置10−2の送信電波との重なりが少なくなるように設定する。これにより、電車1内の端末装置30−1と接続を維持しつつ、基地局装置10−2が設置された電車2と追い越し、すれ違い等で接近する場合のセルIDの重複による通信上の問題を回避することができる。
【0058】
以上、説明したように、本実施形態に係る基地局装置10−1は、電車1(移動体)に設置される基地局装置であって、第1通信部100と、記憶部120と、制御部130とを備える。
第1通信部100(通信部)は、端末装置30と通信する。セル管理部131、記憶部120(記憶部)は、電車1と同一経路を移動する電車2(他の移動体)に設置された基地局装置10−2(第1基地局装置)が形成するセルに共通の識別情報である電車共通セルID(第1セル識別情報)を記憶する。
制御部130は、セル管理部131、記憶部120が記憶する電車共通セルIDを、自装置が形成するセルの識別情報として第1通信部100に送信させる。
【0059】
これにより、電車1内の端末装置30は、電車共通セルIDに基づいて、基地局装置10−1と接続する。同じ路線を走行する電車(電車1、電車2)は共通するセルIDを管理するため、必要となるセルIDの数を削減し、セルIDの枯渇を防ぐことができる。
【0060】
また、記憶部120は、電車1(移動体)が停車する駅1、2(所定の停止場所)に設置された基地局装置20(第2基地局装置)が形成するセルに共通の識別情報である駅共通セルID(第2セル識別情報)を更に記憶し、制御部130は、セル管理部131、記憶部120(記憶部)が記憶する駅共通セルIDを、周辺基地局情報に含めて第1通信部100(通信部)に送信させる。
【0061】
これにより、電車1が駅1、2に停車した場合に、端末装置は迅速かつ効率的に駅1、2に設置された基地局装置20−1、20−2にハンドオーバーすることができる。
【0062】
また、第1通信部100(通信部)は、指向性を有するビームを用いて端末装置30との通信を行い、制御部130は、ビームの放射範囲と、基地局装置10−2(第1基地局装置)の電波の送信範囲との重なりが少なくなるように第1通信部100を制御する。
これにより、基地局装置10−2(第1基地局装置)と接近した際のセルIDの重複による問題の発生を回避することができる。
【0063】
<第2の実施形態>
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。なお、上述した実施形態と同様の構成については、同一の符号を付し、その説明を援用する。
【0064】
図7は、第2の実施形態の概要を示す概略図である。この例では、電車1と電車2が、それぞれ同じ路線の線路R1、R2上を互いに向かい合う方向に進行している。電車1には、基地局装置11−1が設置され、基地局装置11−1は電車共通セルID10が設定されている。電車2には、基地局装置11−2が設置され、基地局装置11−2には電車共通セルID10が設定されている。基地局装置11−1により形成されるカバーエリアをA1、基地局装置11−2により形成されるカバーエリアをA2で表す。また、電車1、電車2内に、それぞれ端末装置30−1と端末装置30−2が存在する。なお、基地局装置11−1と基地局装置11−2とを総称して基地局装置11とも称する。
【0065】
ここで、電車1と電車2がすれ違う際、同一セルIDを有するカバーエリアA1とカバーエリアA2が重なるため、端末装置30−1及び端末装置30−2には、セルIDの重複による通信の問題が発生する場合がある。
【0066】
そこで、本実施形態に係る基地局装置11−1は、同じ電車共通セルIDが設定された基地局装置11−2と接近した場合に、指向性を有するビームの放射範囲を、基地局装置11−2の電波の送信範囲との重なりが少なくなるように設定し、カバーエリアをA3にする。具体的には、基地局装置11−1は、ビームの放射強度を低減すること、または、ビームの放射角度を小さくする処理を行う。
【0067】
同様に、基地局装置11−2は、同じ電車共通セルIDが設定された基地局装置11−1と接近した場合に、指向性を有するビームの放射範囲を、基地局装置11−1の電波の送信範囲との重なりが少なくなるように設定し、カバーエリアをA4にする。具体的には、基地局装置11−2は、ビームの放射強度を低減すること、または、ビームの放射角度を小さくする処理を行う。
【0068】
これにより、電車1と電車2がすれ違う際、それぞれのカバーエリアはA3、A4であり、重ならないため、基地局装置11−1と基地局装置11−2が同じセルIDを有していても、端末装置30はセルIDの重複による影響なく通信を行うことができる。
【0069】
次に、本実施形態に係る基地局装置11の構成を説明する。
図8は、本実施形態に係る基地局装置11の構成例を示すブロック図である。基地局装置11は、基地局装置10の構成に加えて、制御部130内に接近判定部134を備える。
【0070】
接近判定部134は、基地局装置11(11−1)が、自装置と同じ電車共通セルIDを有する基地局装置11(11−2)と接近するか否かを判定する。接近判定部134は、例えば、電車の運行情報に基づいて同じ路線を走行する電車と、追い越し、すれ違い等で接近する時刻を算出する。また、接近判定部134は、同じ路線を走行する電車と接近する時刻として、外部のサーバ等が運行情報に基づいて算出した値を受信してもよい。また、接近判定部134は、自装置が設置された電車のGPS(Global Positioning System)情報および同じ路線を走行する他の電車のGPS情報に基づいて、同じ路線を走行する電車と接近する時刻を算出してもよい。
【0071】
接近判定部134は、自装置と同じ電車共通セルIDを有する基地局装置との接近予想時刻より所定の時間前の時刻を接近準備時刻として設定する。所定の時間とは、セルIDの重複を回避するための処理(ハンドオーバー、ビーム放射方向変更等)を行うのに必要な時間である。接近判定部134は、現在時刻が接近準備時刻を経過した場合に、基地局装置11−1が基地局装置11−2に接近すると判定し、判定結果をビーム制御部133に出力する。なお、接近判定部134の機能は外部装置が有し、基地局装置11は外部装置から判定結果のみを第2通信部110を介して受信してもよい。
【0072】
ビーム制御部133は、基地局装置11−2と接近したことを示す判定結果を受信すると、自装置のカバーエリアが、基地局装置11−2のカバーエリアと重複しないようにビームの放射強度や放射角度を変更する。
【0073】
次に本実施形態に係る基地局装置11−1の処理の例を説明する。
図9は、本実施形態に係る基地局装置11−1の処理の一例を示すフローチャートである。
【0074】
まず、基地局装置11−1は、自装置のセルIDとして管理するセルID(ID:10)を、報知情報に含めて送信する(ステップS201)。電車1内の端末装置30−1は、受信したセルIDに基づいて基地局装置11−1との接続処理を行い、基地局装置11−1と端末装置30−1の接続が確立する(ステップS202)。
【0075】
次に、基地局装置11−1は、基地局装置11−2と接近したか否かを判定する(ステップS203)。例えば、基地局装置11−1は、上述した接近準備時刻を経過した場合に、基地局装置11−2と接近したと判定する。基地局装置11−2と接近したと判定した場合(ステップS203/Yes)、基地局装置11−1は、ビームの放射強度を下げる(ステップS204)。具体的には、基地局装置11−1は、ビーム送信時の送信電力(電界強度)を小さくすることでビームの放射強度を下げる。
基地局装置11−1は、基地局装置11−2と接近したと判定しない場合(ステップS203/No)、基地局装置11−2との接近の判定を継続する。
【0076】
次に、基地局装置11−1は、基地局装置11−2と離反したか否かを判定する(ステップS205)。離反したとは、基地局装置11−2とカバーエリアが重ならない程度に基地局装置11−1と基地局装置11−2との距離が離れたことを指す。基地局装置11−1は、例えば、基地局装置11−2と接近したと判定した時刻から、所定の時間が経過した場合に、基地局装置11−2と離反したと判定する。基地局装置11−1は、運行情報や電車1、電車2のGPS情報等に基づいて基地局装置11−2と離反したか否かを判定してもよい。
【0077】
基地局装置11−2と離反したと判定した場合(ステップS205/Yes)、基地局装置11−1は、ビームの放射強度(電界強度)を基地局装置11−2と接近前の値に戻す(ステップS206)。基地局装置11−2と離反したと判定しない場合(ステップS205/No)、基地局装置11−1は、基地局装置11−2との離反の判定を継続する。
【0078】
ここで、基地局装置11−1のビーム制御部133がビームの放射強度を下げる場合の説明を行う。
図10は、本実施形態に係る基地局装置11−1のビームの設定例を示す第1の図である。
図10は、基地局装置11−1が設置された電車1を側方から見た断面を表している。
図10中の円弧状に色塗りされた部分が、放射強度を下げた場合の基地局装置11−1のカバーエリアの例を表す。
【0079】
このように、基地局装置11−1は、同じ電車共通セルIDを有する基地局装置11−2と接近した場合に、一時的に、ビームの放射強度を下げることにより、カバーエリアを狭くし、セルIDの重複による問題を回避することができる。
【0080】
また、基地局装置11−1は、ステップS204において、ビームの放射角度を小さくしてもよい。この場合の例について
図11を用いて説明する。
【0081】
図11は、本実施形態に係る基地局装置11−1のビームの設定例を示す第2の図である。
図11(a)は、電車1を側方から見た断面を表す模式図である。基地局装置11−2と接近したと判定した場合、基地局装置11−1のビーム制御部133は、ビームの放射方向を矢印ee、矢印ffの方向から、矢印gg、hhの方向に変更する。つまり、ビームの放射角度を小さくする。
【0082】
図11(b)は、電車1を前方または後方から見た断面を表す模式図である。基地局装置11−2と接近したと判定した場合、基地局装置11−1のビーム制御部133は、ビームの放射方向を矢印ii、矢印jjの方向から、矢印kk、llの方向に変更する。つまり、ビームの放射角度を小さくする。
【0083】
基地局装置11−1は、ステップS206において、ビームの放射角度を、基地局装置11−2と接近前の値に戻す。
【0084】
このように、基地局装置11−1は、同じ電車共通セルIDを有する基地局装置11−2と接近した場合に、一時的に、ビームの放射角度を小さくすることにより、カバーエリアを狭くし、接近する基地局装置11−2とのセルIDの重複による問題を回避することができる。
【0085】
また、基地局装置11−1は、ステップS204において、ビームの放射範囲を予め定められた範囲に設定してもよい。この場合の例について
図12を用いて説明する。
【0086】
図12は、本実施形態に係る基地局装置11−1のビームの設定例を示す第3の図である。
図12は、基地局装置11−1が設置された電車1を側方から見た断面を表している。この例では、基地局装置11−2と接近したと判定した場合、基地局装置11−1のビーム制御部133は、電車1内の座席S1、S2、S3、S4それぞれの方向にビームB1、B2、B3、B4を形成し、ビームを放射する。ビーム制御部133は、各ビームに異なるビームIDを設定する。
【0087】
このように、基地局装置11−1は、同じ電車共通セルIDを有する基地局装置11−2と接近した場合に、一時的に、個々の座席に向けてビームを放射する。これにより、座席に着席したユーザが保持する端末装置30と通信を継続するとともに、接近する基地局装置11−2とのセルIDの重複による問題を回避することができる。
【0088】
同様に、基地局装置11−1は、同じ電車共通セルIDを有する基地局装置11−2と接近した場合に、一時的に、座席だけでなく、デッキ等、電車の形状に合わせた所定のエリアに向けてビームを放射してもよい。
【0089】
基地局装置11−1は、ステップS206において、ビームの放射範囲を、基地局装置11−2と接近前の状態に戻す。
なお、基地局装置11−2は、基地局装置11−1と同様の処理を行う。
【0090】
以上説明したように、本実施形態に係る基地局装置11−1は、基地局装置10と同様の構成を備え、更に、制御部130は、自装置と基地局装置11−2(第1基地局装置)とが接近するときに、ビームの放射強度を低減するように第1通信部100(通信部)を制御する。
これにより、同一のセルIDを有する基地局装置との接近時に電波の送信距離を短くし、セルIDの重複による問題を回避することができる。
【0091】
また、制御部130は、自装置と基地局装置11−2(第1基地局装置)とが接近するときに、ビームの放射角度を小さくするように第1通信部100(通信部)を制御する。
これにより、同一のセルIDを有する基地局装置との接近時に電波の送信範囲を狭くし、セルIDの重複による問題を回避することができる。
【0092】
また、制御部130は、自装置と基地局装置11−2(第1基地局装置)とが接近するときに、ビームの放射範囲を予め定められた範囲にするように第1通信部100(通信部)を制御する。
これにより、同一のセルIDを有する基地局装置との接近時に、座席やデッキ等の所定の場所での通信を確保しつつ、セルIDの重複による問題を回避することができる。
【0093】
<第3の実施形態>
次に、本発明の第3の実施形態について説明する。なお、上述した実施形態と同様の構成については、同一の符号を付し、その説明を援用する。
【0094】
図13、
図14および
図15は、第3の実施形態の概要を示す概略図である。
図13、
図14および
図15は、電車2の移動に伴う状況の変化を時系列で表したものである。
図13において、線路R1を走行する電車1は、駅3に停車している。電車1に設置された基地局装置11−1には、電車共通セルID10が設定され、電車1内の端末装置30−1と接続している。C1は基地局装置11−1が形成するカバーエリアを表す。
【0095】
駅3には、基地局装置20が設置され、カバーエリアC3を形成している。
図13の時点で端末装置30−1は、C3内に存在するが、基地局装置11−1と接続しているため、基地局装置20とは接続していない。
【0096】
電車2は線路R2上を駅3方向に走行中である。電車2に設置された基地局装置11−2には、電車共通セルID10が設定され、電車内の端末装置30−2と接続している。C2は基地局装置11−2が形成するカバーエリアを表す。
【0097】
図14は、電車2が駅3への停車や、追い越し等で通過している時点を表す。この際、C1とC2のカバーエリアが重なり、それぞれのセルID10が重複するため、端末装置30−1および端末装置30−2はセルを識別することができず通信に問題が発生する場合がある。
【0098】
そこで、基地局装置11−1は、駅3に停止中に、同じセルIDを有する基地局装置11−2との接近を検知した場合、電波の送信電力(電界強度)を所定の値よりも小さくする。このとき接続中の端末装置30−1は、駅3に設置された基地局装置20にハンドオーバーすることにより、通信を継続することができる。この際、C2とC3のカバーエリアは重なるものの、それぞれのセルIDは10、20であり異なるため、セルIDの重複による問題は発生しない。なお、電波の送信電力を所定の値よりも小さくすることには、送信電力を0にすること、つまり電波の送信を停止することも含まれる。
【0099】
図15は、電車2が駅3を出発し、駅3から離れた時点を表す。基地局装置11−1は、基地局装置11−2と距離が離れたと判定した場合、電波の送信電力(電界強度)を所定の値よりも大きくし、端末装置30−1が、自装置にハンドオーバーできる状態にする。この時点では、C1とC2は重ならないためセルID重複の問題は発生しない。
【0100】
このように、本実施形態に係る基地局装置11−1は、駅3に停止中に、同じ電車共通セルIDを有する基地局装置11−2と接近した場合、電波の送信電力(電界強度)を所定の値よりも小さくする。
これにより、駅付近で同じ駅共通セルIDを有する電車同士が追い越し等で接近する場合に、セルIDの重複による問題を回避することができる。
【0101】
次に、本実施形態に係る基地局装置11−1の処理の例を説明する。
図16は、本実施形態に係る基地局装置11−1の処理の一例を示すフローチャートである。
【0102】
まず、基地局装置11−1は、自装置のセルIDとして管理するセルID(ID:10)を、報知情報に含めて送信する(ステップS301)。電車1内の端末装置30−1は、受信したセルIDに基づいて基地局装置11−1との接続処理を行い、基地局装置11−1と端末装置30−1の接続が確立する(ステップS302)。
【0103】
次に、基地局装置11−1は、周辺基地局情報に、同じ路線内の駅に設置された基地局装置20に共通する駅共通セルID(ID:20)および同じ路線を走行する電車に設置された基地局装置11に共通する電車共通セルID(ID:10)を含め、当該周辺基地局情報を報知情報に含めて送信する(ステップS303)。
【0104】
次に、基地局装置11−1は、駅に停車中に、基地局装置11−2と接近したか否かを判定する(ステップS304)。例えば、基地局装置11−1は、電車の運行情報や電車1のGPS情報に基づいて電車1が停車中であると判定する。また、基地局装置11−1は、例えば、上述した接近準備時刻を経過した場合に、基地局装置11−2と接近したと判定する。
【0105】
駅に停止中に基地局装置11−2と接近したと判定した場合(ステップS304/Yes)、基地局装置11−1は、電波の送信電力(電界強度)を所定の値よりも小さくする(ステップS305)。これにより、端末装置30−1においてセルID10(基地局装置11−1)の受信レベルが低下するので、受信レベルが高いセルID20(基地局装置20)へのハンドオーバーが促される。また、例えば、基地局装置11−1は、セルID20(基地局装置20)へのハンドオーバーを指示する制御メッセージを端末装置30−1に送信してもよい。
なお、端末装置30−1は、ハンドオーバーでなく、一旦基地局装置11−1との通信を切断した後に、基地局装置20に再接続してもよい。
【0106】
基地局装置11−1は、駅停止中に基地局装置20と接近したと判定しない場合(ステップS304/No)、当該判定処理を継続する。
【0107】
電波の送信電力(電界強度)を所定の値よりも小さくする処理が完了した後、基地局装置11−1は、基地局装置11−2と離反したか否かを判定する(ステップS306)。離反したとは、基地局装置11−2とカバーエリアが重ならない程度に基地局装置11−1と基地局装置11−2との距離が離れたことを指す。基地局装置11−1は、例えば、基地局装置11−2と接近したと判定した時刻から、所定の時間が経過した場合に、基地局装置11−2と離反したと判定する。所定の時間は、例えば、電車2が駅3に停車する場合と、駅3に停車せず通過する場合に分けて設定してもよいし、電車2が駅3に停止する予定時間に基づいて設定してもよい。また、基地局装置11−1は、運行情報や電車1、電車2のGPS情報等に基づいて基地局装置11−2と離反したか否かを判定してもよい。
【0108】
基地局装置11−2と離反したと判定した場合(ステップS306/Yes)、基地局装置11−1は、電波の送信電力(電界強度)を基地局装置11−2と接近前の値に戻す(ステップS307)。これにより、端末装置30−1において、セルID10(基地局装置11−1)の受信レベルが高くなるため、セルID10(基地局装置11−1)へのハンドオーバーが可能な状態になる。また、例えば、基地局装置20は、セルID10(基地局装置11−1)へのハンドオーバーを指示する制御メッセージを端末装置30−1に送信してもよい。
なお、端末装置30−1は、ハンドオーバーでなく、一旦基地局装置20との通信を切断した後に、基地局装置11−1に再接続してもよい。
【0109】
これにより、電車1内の端末装置30−1は、電車1が駅を出発した後でも、電車1に設置された基地局装置11−1にハンドオーバー、または再接続することにより、通信を継続することができる。以上で、本処理の説明を終了する。
【0110】
以上説明したように、本実施形態に係る基地局装置11−1の制御部130は、基地局装置11−1が設置された電車1(移動体)が駅3(停止場所)に停止中に、第1通信部100(通信部)の送信レベルを低減するように制御する。
これにより、同じセルIDを有する基地局装置11−2と接近する際に、セルIDの重複による問題を回避することができる。
【0111】
<第4の実施形態>
次に、本発明の第4の実施形態について説明する。なお、上述した実施形態と同様の構成については、同一の符号を付し、その説明を援用する。
【0112】
図17、
図18は本実施形態の概要を示す概略図である。
図17において、電車1は線路R1上を走行している。電車1には基地局装置11−1と基地局装置11−3が設置されている。基地局装置11−1には、電車共通セルID10が設定されており、電車1内の端末装置30−1と接続している。基地局装置11−1のカバーエリアを斜線部で示す。
基地局装置11−3は基地局装置11−1と同様の構成を有し、電車共通セルID11が設定されている。この時点で、基地局装置11−3は機能停止中であり、電波を送信していない。
【0113】
図18は、電車1が、同じ路線の線路R2上を走行する電車2とすれ違い時に接近した場面を表している。電車2には、基地局装置11−2が設置されている。基地局装置11−2には、電車共通セルID10が設定され、斜線で示すカバーエリアを形成している。
【0114】
基地局装置11−1は、同じ電車共通IDを有する基地局装置11−2と接近した場合、基地局装置11−3の機能を開始させる。基地局装置11−3は電波を送信し、格子状で示すカバーエリアを形成する。その後、基地局装置11−1は、電波の送信電力(電界強度)を所定の値よりも小さくすることにより、端末装置30−1に対して基地局装置11−3へのハンドオーバーを促す。
【0115】
したがって、電車1と電車2がすれ違うタイミングでは、基地局装置11−3のセルID11と基地局装置11−2のセルID10が異なるため、それぞれのカバーエリアが重なっても、セルIDの重複による問題が発生しない。
【0116】
このように、本実施形態に係る基地局装置11−1は、同じ電車共通セルIDを有する基地局装置11−3と接近した場合に、自装置に接続する端末装置30−1を、自装置が設置された電車1に設置された基地局装置であって、自装置と異なる電車共通セルIDを有する基地局装置11−3に接続させる。
これにより、同一路線を走行する電車がすれ違い等で接近する場合にセルIDの重複による問題を回避することができる。
【0117】
次に、本実施形態に係る基地局装置11−1の処理の例を説明する。
図19は、本実施形態に係る基地局装置11−1の処理の一例を示すフローチャートである。
【0118】
まず、基地局装置11−1は、自装置のセルIDとして管理するセルID(ID:10)を、報知情報に含めて送信する(ステップS401)。電車1内の端末装置30−1は、受信したセルIDに基づいて基地局装置11−1との接続処理を行い、基地局装置11−1と端末装置30−1の接続が確立する(ステップS402)。
【0119】
次に、基地局装置11−1は、周辺基地局情報に、電車共通セルID10および電車共通セルID11を含め、当該周辺基地局情報を報知情報に含めて送信する(ステップS403)。
【0120】
次に、基地局装置11−1は、基地局装置11−2と接近したか否かを判定する(ステップS404)。例えば、基地局装置11−1は、上述した接近準備時刻を経過した場合に、基地局装置11−2と接近したと判定する。
【0121】
基地局装置11−2と接近したと判定した場合(ステップS404/Yes)、基地局装置11−1は、基地局装置11−3の機能を開始させる(ステップS405)。基地局装置11−1は、第2通信部110を介して、基地局装置11−3の機能を開始する制御信号を送信してもよいし、他の機器を介して基地局装置11−3の機能を開始させてもよい。
【0122】
基地局装置11−2と接近したと判定しない場合(ステップS404/No)、基地局装置11−1は、基地局装置11−2との接近の判定を継続する。
【0123】
基地局装置11−3が機能開始すると、基地局装置11−3は、自装置が管理する電車共通セルID11を報知情報に含めて送信する。その後、基地局装置11−1は、電波の送信電力(電界強度)を所定の値よりも小さくする(ステップS406)。これにより、端末装置30−1においてセルID10(基地局装置11−1)の受信レベルが低下するので、受信レベルが高いセルID11(基地局装置11−3)へのハンドオーバーが促される。また、例えば、基地局装置11−1は、セルID11(基地局装置11−3)へのハンドオーバーを指示する制御メッセージを端末装置30−1に送信してもよい。
なお、端末装置30−1は、ハンドオーバーでなく、一旦基地局装置11−1との通信を切断した後に、基地局装置11−3に再接続してもよい。
【0124】
電波の送信電力(電界強度)を所定の値よりも小さくする処理が完了した後、基地局装置11−1は、基地局装置11−2と離反したか否かを判定する(ステップS407)。離反したとは、基地局装置11−2とカバーエリアが重ならない程度に基地局装置11−1と基地局装置11−2との距離が離れたことを指す。基地局装置11−1は、例えば、基地局装置11−2と接近したと判定した時刻から、所定の時間が経過した場合に、基地局装置11−2と離反したと判定する。また、基地局装置11−1は、運行情報や、電車1、電車2のGPS情報等に基づいて基地局装置11−2との離反を判定してもよい。
【0125】
基地局装置11−2と離反したと判定した場合(ステップS407/Yes)、基地局装置11−1は、電波の送信電力(電界強度)を基地局装置11−2と接近前の値に戻す(ステップS408)。これにより、端末装置30−1において、セルID10(基地局装置11−1)の受信レベルが高くなるため、受信レベルが高いセルID10(基地局装置11−1)へのハンドオーバーが可能な状態になる。また、例えば、基地局装置11−3は、セルID10(基地局装置11−1)へのハンドオーバーを指示する制御メッセージを端末装置30−1に送信してもよい。
なお、端末装置30−1は、ハンドオーバーでなく、一旦基地局装置11−3との通信を切断した後に、基地局装置11−1に再接続してもよい。
【0126】
これにより、電車1内の端末装置30−1は、セルID11(基地局11−3)が動作を停止した後でも、基地局装置11−1へのハンドオーバー、または再接続を行うことにより、通信を継続することができる。以上で、本処理の説明を終了する。
【0127】
なお、上記の例では、端末装置30−1の接続先を、電車内の基地局装置11−1と基地局装置11−3との間で切り替える場合を説明したが、基地局装置11−1が複数の電車共通セルID(10、11)を管理し、基地局装置11−1において、端末装置30−1の接続セルを切り替えるようにしてもよい。
【0128】
次に、本実施形態に係る基地局装置11−1、11−3および端末装置30−1の処理の例を説明する。
図20は、本実施形態に係る基地局装置11−1、11−3および端末装置30−1の処理の一例を示すシーケンス図である。
【0129】
(ステップS501)基地局装置11−1の電波送信機能が開始される。基地局措置11−1は、自装置が管理する電車共通セルID10を報知情報に含めて送信する。
(ステップS502)基地局装置11−3の電波送信機能が停止される。基地局装置11−3の電波送信機能はあらかじめ停止されていてもよい。
(ステップS503)端末装置30−1は、基地局装置11−1から報知された電車共通セルID10に基づいて、基地局装置11−1に接続する。
【0130】
(ステップS504)基地局装置11−1は、基地局装置11−2との接近を検知する。
(ステップS505)基地局装置11−3は、基地局装置11−2との接近を検知する。
(ステップS506)基地局装置11−3の電波送信機能が開始される。基地局装置11−3は、自装置が管理する電車共通セルID11を報知情報に含めて送信する。
【0131】
(ステップS507)基地局装置11−1は、電波の送信電力(電界強度)を所定の値よりも小さくする。
(ステップS508)端末装置30−1においてセルID10(基地局装置11−1)の受信レベルが低下するため、受信レベルが高いセルID11(基地局装置11−3)へのハンドオーバーが促さる。その結果、端末装置30−1はセルID11(基地局装置11−3)にハンドオーバーする。
(ステップS509)端末装置30−1のハンドオーバー終了後、基地局装置11−1の電波機能が停止される。
【0132】
(ステップS510)基地局装置11−1は、基地局装置11−2との離反を検知する。
(ステップS511)基地局装置11−3は、基地局装置11−2との離反を検知する。
(ステップS512)基地局装置11−1の電波送信機能が開始(再開)される。基地局措置11−1は、自装置が管理する電車共通セルID10を報知情報に含めて送信する。
【0133】
(ステップS513)基地局装置11−3は、電波の送信電力(電界強度)を所定の値よりも小さくする。
(ステップS514)端末装置30−1においてセルID11(基地局装置11−3)の受信レベルが低下するため、受信レベルが高いセルID10(基地局装置11−1)へのハンドオーバーが促さる。その結果、端末装置30−1はセルID10(基地局装置11−1)にハンドオーバーする。
(ステップS515)端末装置30−1のハンドオーバー終了後、基地局装置11−3の電波機能が停止される。
以上で、本処理の説明を終了する。
【0134】
以上説明したように、本実施形態に係る基地局装置11−1の制御部130は、基地局装置11−1が設置された電車1(移動体)が基地局装置11−2(第1基地局装置)と接近した場合に、電波の送信電力(電界強度)を所定の値よりも小さくする処理を行う。
これにより、同じセルIDを有する基地局装置11−2と接近する際に、セルIDの重複による問題を回避することができる。
【0135】
また、本実施形態に係る電車1(移動体)は、基地局装置11−1が形成するセルの識別情報とは異なる識別情報により識別されるセルを形成する基地局装置11−3(第3基地局装置)を備え、基地局装置11−1は、自装置と基地局装置11−2とが接近するときに、自装置の通信部の送信レベルを低減する。
これにより、同じセルIDを有する基地局装置11−2と接近する際に、セルIDの重複による問題を回避することができる。
【0136】
なお、上述した各実施形態における基地局装置10、11、20、端末装置30の一部または全部をコンピュータ(制御装置)で実現するようにしてもよい。その場合、この機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することによって実現してもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、各装置に内蔵されたコンピュータシステムであって、OS(Operating System)や周辺機器等のハードウェアを含むものとする。
【0137】
また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含んでもよい。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよく、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであってもよい。
【0138】
また、上述した各実施形態における基地局装置10、11、20、端末装置30の一部、または全部を、LSI(Large Scale Integration)等の集積回路として実現してもよい。各装置の各機能部は個別にプロセッサ化してもよいし、一部、または全部を集積してプロセッサ化してもよい。また、集積回路化の手法はLSIに限らず専用回路、または汎用プロセッサで実現してもよい。また、半導体技術の進歩によりLSIに代替する集積回路化の技術が出現した場合、当該技術による集積回路を用いてもよい。
【0139】
以上、図面を参照してこの発明の一実施形態について説明したが、具体的な構成は上述のものに限られることはなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲内において様々な設計変更等をすることが可能である。例えば、各実施形態におけるシーケンス、フローチャート等で示した処理は、矛盾のない限り、順序を入れ替えたり、省略したりしてもよい。
また、本発明の一態様は、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。また、上記各実施形態や変形例に記載された要素であり、同様の効果を奏する要素同士を置換した構成も含まれる。
【0140】
<付記>
(1)移動体に設置され、端末装置と通信するためのセルを形成する基地局装置であって、前記端末装置と通信する通信部と、前記移動体と同一経路を移動する他の移動体に設置された第1基地局装置が形成するセルに共通の識別情報である第1セル識別情報を記憶する記憶部と、制御部とを備え、前記制御部は、前記記憶部が記憶する前記第1セル識別情報を、自装置が形成するセルの識別情報として前記通信部に送信させることを特徴とする基地局装置。
【0141】
(2)前記記憶部は、前記移動体が停止する所定の停止場所に設置された第2基地局装置が形成するセルに共通の識別情報である第2セル識別情報を更に記憶し、前記制御部は、前記記憶部が記憶する前記第2セル識別情報を、周辺基地局情報に含めて前記通信部に送信させることを特徴とする(1)に記載の基地局装置。
【0142】
(3)前記通信部は、指向性を有するビームを用いて前記端末装置との通信を行い、前記制御部は、前記ビームの放射範囲と、前記第1基地局装置の電波の送信範囲との重なりが少なくなるように前記通信部を制御することを特徴とする(1)または(2)に記載の基地局装置。
【0143】
(4)前記制御部は、自装置と前記第1基地局装置とが接近するときに、前記ビームの放射強度を低減するように前記通信部を制御することを特徴とする(3)に記載の基地局装置。
【0144】
(5)前記制御部は、自装置と前記第1基地局装置とが接近するときに、前記ビームの放射角度を小さくするように前記通信部を制御することを特徴とする(3)に記載の基地局装置。
【0145】
(6)前記制御部は、自装置と前記第1基地局装置とが接近するときに、前記ビームの放射範囲を予め定められた範囲にするように前記通信部を制御することを特徴とする(3)に記載の基地局装置。
【0146】
(7)前記制御部は、前記移動体が前記停止場所に停止中に、前記通信部の送信レベルを低減するように制御することを特徴とする(2)に記載の基地局装置。
【0147】
(8)(1)から(7)のいずれかに記載の基地局装置を備える移動体。
【0148】
(9)前記基地局装置が形成するセルの識別情報とは異なる識別情報により識別されるセルを形成する第3基地局装置をさらに備え、前記基地局装置は、自装置と前記第1基地局装置とが接近するときに、自装置の通信部の送信レベルを低減することを特徴とする(8)に記載の移動体。
【0149】
(10)移動体に設置され、端末装置と通信するためのセルを形成する基地局装置を制御する制御装置であって、前記移動体と同一経路を移動する他の移動体に設置された第1基地局装置が形成するセルに共通の識別情報である第1セル識別情報を、自装置が形成するセルの識別情報として送信させることを特徴とする制御装置。
【0150】
(11)移動体に設置され、端末装置と通信するためのセルを形成する基地局装置の制御方法であって、前記端末装置と通信するステップと、前記移動体と同一経路を移動する他の移動体に設置された第1基地局装置が形成するセルに共通の識別情報である第1セル識別情報を記憶するステップと、前記第1セル識別情報を、自装置が形成するセルの識別情報として前記通信部に送信させるステップとを含むことを特徴とする制御方法。
【0151】
(12)移動体に設置され、端末装置と通信するためのセルを形成する基地局装置に、前記端末装置と通信する手順と、前記移動体と同一経路を移動する他の移動体に設置された第1基地局装置が形成するセルに共通の識別情報である第1セル識別情報を記憶する手順と、前記第1セル識別情報を、自装置が形成するセルの識別情報として送信させる手順とを実行させるためのプログラム。