(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6913609
(24)【登録日】2021年7月14日
(45)【発行日】2021年8月4日
(54)【発明の名称】風力供給システム
(51)【国際特許分類】
F03D 9/34 20160101AFI20210727BHJP
F03D 9/46 20160101ALI20210727BHJP
【FI】
F03D9/34
F03D9/46
【請求項の数】9
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2017-214343(P2017-214343)
(22)【出願日】2017年11月7日
(65)【公開番号】特開2019-85917(P2019-85917A)
(43)【公開日】2019年6月6日
【審査請求日】2019年12月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】517388749
【氏名又は名称】東谷 軍次郎
(73)【特許権者】
【識別番号】506035603
【氏名又は名称】内川 據義
(74)【代理人】
【識別番号】100081570
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 彰芳
(72)【発明者】
【氏名】東谷 軍次郎
(72)【発明者】
【氏名】内川 據義
【審査官】
松浦 久夫
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭51−039334(JP,A)
【文献】
特開2016−169639(JP,A)
【文献】
登録実用新案第3149631(JP,U)
【文献】
特開2001−302407(JP,A)
【文献】
特開2014−187879(JP,A)
【文献】
国際公開第2009/093265(WO,A2)
【文献】
中国実用新案第206468356(CN,U)
【文献】
韓国公開特許第10−2011−0115502(KR,A)
【文献】
米国特許出願公開第2007/0059097(US,A1)
【文献】
中国実用新案第201713775(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F03D 9/34 − 9/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行風をダクトに受け入れ、その風力を別途機器や作用のエネルギー源として供給する風力供給システムであって、少なくとも前記したダクトの走行風受入口を交通設備の車両走行路に沿って設置させてあり、ダクトを通過した走行風をエネルギー源として供給する風力供給システムであり、前記したダクトの少なくとも排気口近傍には風速をアップさせるため、絞り部分を設けてある風力供給システムにおいて、走行風受入口を双口形状とし、その各々の走行風受入口(3a、3b)は車両走行路と平行な走行風の向きと並行させ向かい風として受け入れる構成としてあり、前記走行風受入口(3a、3b)には一方の走行風受入口から導入された走行風が他方の走行風受入口へ抜けてしまわないように仕切板(10)が設けられていることを特徴とする風力供給システム。
【請求項2】
前記仕切板(10)の基部には曲面(11a、11b)が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の風力供給システム。
【請求項3】
前記した車両走行路は鉄道線路であることを特徴とする請求項1に記載の風力供給システム。
【請求項4】
前記した車両走行路と高速道路であることを特徴とする請求項1に記載の風力供給システム。
【請求項5】
前記したダクト内では、走行風受入口から受入れた走行風を複数に分配、あるいは分岐させる流路が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の風力供給システム。
【請求項6】
前記した分配あるいは分岐された風力の排出口ごとにエネルギーを附与する対象機器を配置してあることを特徴とする請求項5に記載の風力供給システム。
【請求項7】
前記した排出口の各々に風力発電機を配置してあることを特徴とする請求項6に記載の風力供給システム。
【請求項8】
前記した排出口の各々に散布するための農薬を配備していることを特徴とする請求項6に記載の風力供給システム。
【請求項9】
前記した排出口の各々に乾燥対象を配備していることを特徴とする請求項6に記載の風力供給システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は風力供給システムに関し、特に交通設備で走行する車両によってその車両の周域に発生する走行風を積極的に種々の機器もしくは作用のエネルギー源として供給するための風力供給システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両走行風をエネルギー源として利用するものとして特開2012−177354号公報に記載の技術が開陳されている。この先行文献に記載されているのは車載用、それも自動車を対象とした車載用の風力発電装置に関するもので、ダクト内にサボニウス型の風車及び発電機を設けたもので、風力を有効に利用するため、ダクト自体に風向変更曲面を形成したものとなっている。
【0003】
しかしながら、この発電装置は、該装置を搭載した車両にのみ特定されて効を奏するもので、日常的に頻繁に走行している鉄道車両や自動車によって生じる走行風をある種の目的のために、常に有効利用できるものではない。
【0004】
現状では、鉄道車両や高速道路を走行する自動車によって生じる走行風は、格別に産業上の役に立つものではなく、逆に砂塵の発生や、塵埃の散乱をもたらす等の悪影響を与える要素が多いものとなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012−177354号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本願発明が解決しようとする問題点は、従来、日常的に走行している鉄道車両や自動車によって生じる走行風を広範囲、多目的にエネルギー源として取り入れ使用するためのシステムが存在していないという点である。先行技術文献に記載されている技術は、該発電装置を搭載した自動車のみに有効であり、一般的に他の目的に走行風を利用することはできないもので、日常的に発生している走行風のエネルギーは現状では無駄なものとされ、逆に周域に悪影響をもたらす要因ともなっているもので、これを有効活用するシステムは存在していなかった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記した問題点を解決するため、本発明に係る風力供給システムは、走行風をダクトに受け入れ、その風力を別途機器や作用のエネルギー源として供給する風力供給システムであって、少なくとも前記したダクトの走行風受入口を交通設備の車両走行路に沿って設置させてあり、ダクトを通過した走行風をエネルギー源として供給する風力供給システムであり、前記したダクトの少なくとも排気口近傍には風速をアップさせるため、絞り部分を設けてある風力供給システムにおいて、走行風受入口を双口形状とし、その各々の走行風受入口(3a、3b)は
車両走行路と平行な走行風の向きと並行させ向かい風として受け入れる構成としてあり、前記走行風受入口(3a、3b)には一方の走行風受入口から導入された走行風が
他方の走行風受入口へ抜けてしまわないように仕切板(10)が設けられていることを特徴とし、前記仕切板(10)の基部には曲面(11a、11b)が形成されていることを特徴とし、前記した車両走行路は鉄道線路であることを特徴としている。
【0008】
また、本発明に係る風力供給システムは、前記した車両走行路は鉄道線路であることを特徴とし、前記した車両走行路と高速道路であることを特徴としている。
【0010】
また、本発明に係る風力供給システムは、前記したダクト内では、走行風受入口から受入れた走行風を複数に分配、あるいは分岐させる流路が形成されていることを特徴とし、前記した分配あるいは分岐された風力の排出口ごとにエネルギーを附与する対象機器を配置してあることを特徴としている。
【0011】
さらに、本発明に係る風力供給システムは、前記した排出口の各々に風力発電機を配置してあることを特徴とし、前記した排出口の各々に散布するための農薬を配備していることを特徴とし、前記した排出口の各々に乾燥対象を配備していることを特徴としている。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る風力供給システムは上記のように構成されている。そのため、従来、日常的に発生する車両の走行に伴なう無償の走行風を多くの産業において、機器の稼動や作用のエネルギー源として有効に利用することができ、必要な経費、ランニングコストも非常に低廉なものとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明に係る風力供給システムの設定状態の一例を示す概略図である。
【
図2】風力発電に応用した一例を示すチャート図である。
【
図3】ダクトの一部に絞りを形成した例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図として示し、実施例で説明したように構成したことで実現した。
【実施例1】
【0015】
次に、本発明の好ましい実施の一例を、鉄道車両を例とし、図面を参照して説明する。図において、1は鉄道線路を示しており、鉄道車両はこの鉄道線路1のレール上を矢印で示す走行方向に沿って走行することとなる。また、図中2は走行風を受け入れ、目的箇所(地)まで送るためのダクトであり、このダクト2は鉄道線路1の片側に配置され、その走行風受入口3は鉄道線路1に向かって開口されており、鉄道車両の一方側面側に発生する走行風を受け入れるものとなっている。
【0016】
この受入口3から導入された走行風は、ダクト2内で分岐された流路によって複数にその風量(通気量)が分配され、その分岐された流路から各々排出される。ダクト2は鉄道車両の通行の妨げとならないように、鉄道線路1上に位置することはなく、複数の鉄道線路1が並行している場合にも最も端部の鉄道線路1が利用され、しかもその外側が用いられることになる。
【0017】
その各々の流路の排出口
には風力発電機4、4が設けられ、その風力発電機4、4に設置されている原動機となる風車4a、4aを回転させ、この回転力によって発電機構を駆動させることになる。ここで、風車4a、4aはサボニウス型ではなく、通常の複数の捻った羽根が回転するタイプのものを想定している。
【0018】
風力発電機4、4で得られた電力は電力制御器5へ送られる。この電力制御器5では各風力発電機4、4からの電力が加算統合され、目的とする電圧や周波数を設定される。
【0019】
電力制御器5によって制御された電力は次いで整流処理6されて直流に変換され充電される。この充電作用は電池群7へ蓄電される。ここで、直流負荷、即ち、電源として直流を得たい場合、この電池群7からダイレクトに電力を得ることができる。
【0020】
また、電池群7で蓄電されている電力(直流)はインバータ8あるいはパワーコンディショナー9によって交流に変換され、電源として交流を得たい場合に供給される。即ち、商用電源をはじめとする交流負荷となる。
【0021】
さらに、前記したダクト2に分岐した流路の排出口近く、本実施例では風車4a、4aに各々分岐(分配)された走行風を付与するに際し、その風速をアップさせるため、少なくとも流路の一部に絞り部分2a(オリフィス)を形成しておくことができる。この絞り部分2aの存在によって流路内を通行する空気の流れは強いものとなって、風車4a、4aを回転させるパワーを増大させることができる。
【0022】
加えて、ダクト2の走行風受入口3は、
図1の例では、走行風の流れに対し略直交する方向で開口させているが、これも効率的に走行風を受け入れるため正向させることもできる。
図4として示す受入口3a、3bは走行風の向きと並行させ、向かい風として受け入れることができるようにしてある。即ち、鉄道車両の走行方向が鉄道線路1のどちら側でも対応できるように、双口形状としてあり、一方の受入口3aから導入された走行風が抜けてしまうことがないよう仕切板10を設けてあり、いずれの受入口3a、3bから導入された走行風はダクト2内へスムーズに流入するように、受入口3a、3bの仕切板10の基部にはガイド用の曲面11a、11bが形成されている。
【0023】
鉄道線路1を走行する鉄道車両によって生じる走行風によって、風力発電を行い、その電力を利用する実施例は上記したように構成される。この構成は鉄道車両に限らず、高速道路を走行する自動車によって生じる走行風を同様に応用利用することが可能である。
【0024】
実施例としては走行風を風力発電のエネルギーとして利用する例を述べたが、ダクト2に導入された走行風は、他の種々の作用のエネルギーとしても利用可能である。まず、考えられるのが、物質に含まれる水分を除去すること、即ち、乾燥作用として利用できる。排出口に、風力発電機4、4の風車4a、4aに代えて、目的とする食品、例えば芋、大根、柿、魚介類、海藻類、米飯等を配置すれば、好適に干物や干し食品を得ることができ、その他、洗濯物の乾燥や洗浄した食器類の乾燥にも応用することができる。
【0025】
さらには、走行風の排出口に農薬を配置すれば、ハウス内等に農薬を散布することもできる。この農薬は粉粒体とすれば、風力に乗せて送ることができ、液体とした場合、特に農薬を入れた容器から上方に延設した細管上部開口に走行風を通過させると、細管上部開口上に負圧を生じ、農薬を含んだ霧として噴霧させることができ、農薬に代えて、一般的な水を使用すれば、霧状の給水を栽培植物に与えることも可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明に係る風力供給システムは、上記した諸々の産業に利用されるのみでなく、例えば鯉のぼりをはためかせるための補助や凧揚げの初期補助等にも利用することができるものとなっている。
【符号の説明】
【0027】
1 鉄道線路
2 タクト
2a 絞り部分
3,3a,3b 受入口
4 風力発電機
4a 風車
5 電力制御器
6 整流
7 電池群
8 インバータ
9 パワーコンディショナー
10 仕切板
11a,11b 曲面