特許第6913620号(P6913620)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6913620シートパッド、車両用シート、及び、車両用シートの制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6913620
(24)【登録日】2021年7月14日
(45)【発行日】2021年8月4日
(54)【発明の名称】シートパッド、車両用シート、及び、車両用シートの制御方法
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/90 20180101AFI20210727BHJP
   B68G 7/06 20060101ALI20210727BHJP
   A47C 27/14 20060101ALI20210727BHJP
【FI】
   B60N2/90
   B68G7/06 B
   A47C27/14 A
【請求項の数】5
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2017-239810(P2017-239810)
(22)【出願日】2017年12月14日
(65)【公開番号】特開2019-104459(P2019-104459A)
(43)【公開日】2019年6月27日
【審査請求日】2020年7月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100186015
【弁理士】
【氏名又は名称】小松 靖之
(74)【代理人】
【識別番号】100174023
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 怜愛
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 佳之
(72)【発明者】
【氏名】津川 由紀子
(72)【発明者】
【氏名】米澤 泰輔
【審査官】 野口 絢子
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭61−139653(JP,U)
【文献】 米国特許第04371997(US,A)
【文献】 実開昭62−161859(JP,U)
【文献】 特開2009−082549(JP,A)
【文献】 独国特許出願公開第102008028791(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/00− 2/90
A47C 7/00− 7/74
A47C27/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発泡体と前記発泡体を覆った通気性のある袋体とを有する、包装パッド部を備え、
前記発泡体が何も覆われていない場合に前記発泡体が所定の圧縮状態で圧縮が解除されてから圧縮前の状態へ復元するまでにかかる時間T0よりも、前記包装パッド部が前記所定の圧縮状態で圧縮が解除されてから圧縮前の状態へ復元するまでにかかる時間T1のほうが、長く、
前記袋体は、
非通気性材料から構成された袋本体と、
前記袋本体の内外への通気を可能にする通気部と、
を有しており、
前記通気部は、弁と接続されていない、シートパッド。
【請求項2】
前記包装パッド部は、40%圧縮された状態で圧縮が解除されてから60秒経過した時の回復率が、20%以下となるように構成されている、請求項1に記載のシートパッド。
【請求項3】
複数の前記包装パッド部が上下方向に積層されている、請求項1又は2に記載のシートパッド。
【請求項4】
前記通気部は、前記袋本体に形成された孔であり、
前記孔は、直径が1mm以下である、請求項1〜3のいずれか一項に記載のシートパッド。
【請求項5】
前記通気部は、低通気性材料から構成された低通気性シートである、請求項1〜3のいずれか一項に記載のシートパッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートパッド、車両用シート、及び、車両用シートの制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両の走行中において車両用シートの着座者が感じる振動の特性を変化させる手法として、シートパッドのクッションパッドの裏側に設けられたパンフレームの通気窓の開口部面積を変化させ、これによりクッションパッドの通気性を変化させるものがある(特許文献1)。この手法によれば、通気性を上げることにより振動伝達率(共振倍率)を上げることができ、通気性を下げることにより振動伝達率を下げることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−211956号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の手法では、共振周波数(共振点)をほとんど変えることができなかった。
【0005】
一方、共振周波数を変化させる手法としては、シートパッドを構成する発泡体の材料や形状を変えることにより、発泡体の硬度ひいてはばね定数を変化させる手法が考えられる。しかしながら、車体の種類や着座者等によって、要求又は嗜好される振動特性は様々であるのに対し、この手法においては、振動特性を変えるには発泡体自体を取り替える必要があるという不便性があった。
【0006】
本発明は、シートパッドを構成する発泡体自体を変えることなく、シートパッドの共振周波数を変化させることが可能な、シートパッド、車両用シート、及び、車両用シートの制御方法を、提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のシートパッドは、
発泡体と前記発泡体を覆った通気性のある袋体とを有する、包装パッド部を備え、
前記発泡体が何も覆われていない場合に前記発泡体が所定の圧縮状態で圧縮が解除されてから圧縮前の状態へ復元するまでにかかる時間T0よりも、前記包装パッド部が前記所定の圧縮状態で圧縮が解除されてから圧縮前の状態へ復元するまでにかかる時間T1のほうが、長い。
本発明のシートパッドによれば、シートパッドを構成する発泡体自体を変えることなく、シートパッドの共振周波数を変化させることができる。
【0008】
本発明のシートパッドにおいては、
前記包装パッド部は、40%圧縮された状態で圧縮が解除されてから60秒経過した時の回復率が、20%以下となるように構成されていると、好適である。
これにより、より効果的に共振周波数を変化させることができる。
【0009】
本発明のシートパッドにおいては、
複数の前記包装パッド部が上下方向に積層されていると、好適である。
これにより、より効果的に共振周波数を変化させることができる。
【0010】
本発明のシートパッドにおいては、
前記袋体は、
非通気性材料から構成された袋本体と、
前記袋本体の内外への通気を可能にする通気部と、
を有していると、好適である。
これにより、袋体の製造が簡単となる。
【0011】
本発明のシートパッドにおいては、
前記通気部は、流量調整弁と接続されていると、好適である。
これにより、振動特性の微調整が可能となる。
【0012】
本発明の車両用シートにおいては、
上述した本発明の第1のシートパッドと、
前記通気部に接続された、前記流量変化弁と、
前記流量変化弁を制御する、制御部と、
を備えていると、好適である。
これにより、振動特性の微調整が可能となる。
【0013】
本発明の車両用シートの制御方法は、
上述した本発明の第1の車両用シートにおける、車両用シートの制御方法であって、
前記制御部が、外部からの信号に応じて前記流量変化弁を制御する。
本発明の車両用シートの制御方法によれば、シートパッドを構成する発泡体自体を変えることなく、シートパッドの共振周波数を変化させることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、シートパッドを構成する発泡体自体を変えることなく、シートパッドの共振周波数を変化させることが可能な、シートパッド、車両用シート、及び、車両用シートの制御方法を、提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の第1実施形態に係るシートパッドを備えた、本発明の第1実施形態に係る車両用シートを示す、斜視図である。
図2図1の車両用シートを示す、図1のA−A線に沿う縦断面図である。
図3図2のシートパッドの一部を示す斜視図である。
図4】本発明の第1実施形態に係るシートパッド及び車両用シートの動作を説明するための図である。
図5】従来のシートパッド及び車両用シートの動作を説明するための図である。
図6】一般的なポリウレタンフォームの荷重とたわみとの関係を表す圧縮たわみ曲線を示すグラフであり、本発明の第1実施形態に係るシートパッド及び車両用シートの作用効果を説明するための図である。
図7】本発明の第1実施形態の第1変形例に係るシートパッド及び車両用シートを説明するための図である。
図8】本発明の第1実施形態の第2変形例に係るシートパッド及び車両用シートを説明するための図である。
図9】本発明の第1実施形態の第3変形例に係るシートパッド及び車両用シートを説明するための図である。
図10】本発明の第1実施形態の第4変形例に係るシートパッド及び車両用シートを説明するための図である。
図11】本発明の第1実施形態の第5変形例に係るシートパッド及び車両用シートを説明するための図である。
図12】本発明の第1実施形態の第6変形例に係るシートパッド及び車両用シートを説明するための図である。
図13】本発明の第1実施形態の第7変形例に係るシートパッド及び車両用シートを説明するための図である。
図14】本発明の第2実施形態に係るシートパッド及び車両用シートを説明するための図である。
図15】本発明のシートパッドの実施例1、比較例1の実験結果を示す図である。
図16】本発明のシートパッドの比較例2〜4の実験結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明のシートパッドは、振動が生じる環境に置かれる任意の種類のシートに好適に利用できるが、特に、車両用シートに利用されるのが好適である。
また、本発明のシートパッド、車両用シート、及び、車両用シートの制御方法は、任意の種類の車両に利用できるが、特に、快適性への要求が高い乗用車や、大きな振動が発生するトラック、バス、建設車両等の大型車に、好適に利用できる。
【0017】
以下、本発明に係るシートパッド、車両用シート、及び、車両用シートの制御方法の実施形態について、図面を参照しながら例示説明する。各図において共通する構成要素には同一の符号を付している。
【0018】
〔第1実施形態〕
まず、図1図13を参照しながら、本発明の第1実施形態に係るシートパッド、車両用シート、及び、車両用シートの制御方法を説明する。
【0019】
図1は、本実施形態の車両用シート1を示している。図2は、図1の車両用シート1のA−A線に沿う縦断面図である。本実施形態の車両用シート1は、本実施形態のシートパッド2と、シートパッド2の表側(着座者側)を覆うカバー部材13と、シートパッド2の裏側においてシートパッド2を下から支持するパンフレーム6と、を備えている。本実施形態のシートパッド2は、着座者が着座するためのクッションパッド2aと、着座者の背中を支持するためのバックパッド2bと、を備えている。
カバー部材13は、例えば、通気性のよい材料(布等)から構成される。
便宜のため、図1では、カバー部材13を実線で示し、シートパッド2を破線で示しているが、図2では、カバー部材13を破線で示し、シートパッド2を実線で示している。
本明細書では、各図面に表記するとおり、車両用シート1に着座した着座者から観たときの「上」、「下」、「左」、「右」、「前」、「後」の各方向を、それぞれ単に「上」、「下」、「左」、「右」、「前」、「後」などという。
以下では、シートパッド2のうち、バックパッド2bではなくクッションパッド2aについて説明する。そのため、クッションパッド2aのことを、単に「シートパッド2」ということがある。
【0020】
シートパッド2のクッションパッド2aは、着座者の臀部及び大腿部が載るように構成されたメインパッド部21と、メインパッド部21の左右両側に位置する一対のサイドパッド部22と、を有している。メインパッド部21は、着座者の臀部が載るように構成された尻下部21hと、尻下部21hに対し前方に位置し、着座者の大腿部が載るように構成された、腿下部21tと、を有している。
図1のA−A線は、尻下部21hを通っている。
図2の例では、メインパッド部21とサイドパッド部22とが、別体に構成されている。
ただし、メインパッド部21とサイドパッド部22は、一部又は全部において、一体に構成(一体成形)されていてもよい。
図2の例において、サイドパッド部22は、メインパッド部21の左右両側端部を上側から覆う被覆部22aを有している。ただし、被覆部22aは無くてもよい。
【0021】
図3は、図2のシートパッド2のうち、メインパッド部21のみを示している。図2及び図3の例において、シートパッド2は、メインパッド部21の構成要素として、包装パッド部150を備えている。図の例では、メインパッド部21が、互いに上下方向に積層された2つの包装パッド部150から構成されている。各包装パッド部150は、発泡体からなる被包装発泡体140(発泡体)と、被包装発泡体140の外表面を覆った通気性のある袋体130とを、有している。袋体130は、被包装発泡体140を内部に収容している。
なお、各図においては、図面の明確性のために、袋体130と被包装発泡体140との間に隙間を設けて図示しているが、実際には、袋体130と被包装発泡体140との間の隙間は、あってもよいが、無いほうが好ましい。
本例では、包装パッド部150に荷重が掛かっていない状態において、袋体130の内部の被包装発泡体140が、自然状態(非圧縮状態、すなわち、圧縮率0%の状態)にあるが、この状態において袋体130の内部の被包装発泡体140は、圧縮状態にあってもよい。
なお、本明細書において、「圧縮率」とは、つぎの式(1)により定義されるものとする。
圧縮率(%)=(自然状態の体積[mm3]−圧縮後の体積[mm3])×100/自然状態の体積[mm3] ・・・(1)
【0022】
シートパッド2のうち、包装パッド部150以外の部分を構成する材料は、発泡体が好ましく、弾性樹脂発泡体がより好ましく、ポリウレタンフォームが特に好ましい。
被包装発泡体140を構成する発泡体の材料としても、弾性樹脂発泡体が好ましく、ポリウレタンフォームが特に好ましい。被包装発泡体140を構成する発泡体の材料は、シートパッド2のうち、包装パッド部150以外の部分を構成する材料と、同じでもよいし、異なっていてもよい。また、シートパッド2が被包装発泡体140を複数有する場合は、これら複数の被包装発泡体140の材料は、互いに同じでもよいし、異なっていてもよい。
袋体130は、可撓性を有する材料から構成されている。
【0023】
袋体130の通気性は、非常に低いものである。これにより、包装パッド部150の被包装発泡体140が仮に何も覆われていない場合に被包装発泡体140が所定の圧縮状態で圧縮が解除されてから圧縮前の状態へ復元するまでにかかる時間T0よりも、包装パッド部150が当該所定の圧縮状態で圧縮が解除されてから圧縮前の状態へ復元するまでにかかる時間T1のほうが、長くなる(すなわち、T1>T0)ようにされている。
ここで、「所定の圧縮状態」としては、上記時間T0、T1を測定するにあたって、それぞれ同じ圧縮状態を用いる限り、任意の方向及び圧縮率の圧縮状態を設定してよい。例えば、「所定の圧縮状態」として、上下方向に圧縮させることにより圧縮率20%にした圧縮状態、あるいは、上から50kgの鉄研盤からなる加圧子を載せたときの圧縮状態を、設定するとよい。
袋体130にこのような低通気性を持たせるための手法の具体例については、後に図3、7、8を参照しながら説明する。なお、袋体130について「通気性を有する」とは、袋体130の一部又は全体で通気が可能にされていることを指す。
袋体130は、このような低通気性を有するので、包装パッド部150に対して荷重が掛かることによって包装パッド部150が圧縮(具体的には被包装発泡体140が圧縮)されて被包装発泡体140の内部の空気が袋体130の外部へ出た状態から、荷重が解放される際に、袋体130の内部への空気の戻りを遅らせ、ひいては、包装パッド部150の復元(具体的には被包装発泡体140の復元)を遅らせて、被包装発泡体140の圧縮状態を維持する機能を有している。なお、包装パッド部150に荷重が掛かる間は、袋体130の内部に強い内圧が生じるため、袋体130が低通気性を有しているとはいえ、袋体130の内部の空気は比較的速く外へ出るが、包装パッド部150に荷重が掛からなくなると、袋体130の内外には大気圧程度の圧力しか掛からなくなるため、袋体130の持つ低通気性により、袋体130の内部への空気の戻りの速度が格段に遅くなる。
【0024】
図4を参照しながら、本実施形態の動作を説明する。
図4は、図2及び図3の例に係るシートパッド2のメインパッド部21の動作を示している。図4に示すように、シートパッド2に荷重が掛かっていない状態(図4(a))から、着座者Pがシートパッド2に着座すると、着座者Pからの荷重が包装パッド部150に掛かることによって、被包装発泡体140が上下方向に圧縮されながら、被包装発泡体140の内部の空気が袋体130を介して外へ出る(図4(b))。つぎに、車体側からの振動が加わると、着座者Pも上下に振動する(図4(c))。その間、着座者Pが下方に変位する際には、被包装発泡体140はさらに圧縮され得るものの、着座者Pが上方に変位して荷重が包装パッド部150から解放される際には、袋体130の低通気性に起因して、袋体130の内部への空気の戻りが抑制される。このため、再び着座者Pが下方に変位し荷重が包装パッド部150に掛かるまでの間、被包装発泡体140の復元が抑制され、被包装発泡体140の圧縮状態がほぼ又は完全に維持される。このように、本実施形態のシートパッド2においては、加振時において、被包装発泡体140の圧縮状態が保持される。
なお、図4(b)において、符号DBは、加振の無い時(静止時)における、着座者の着座時にシートパッド2に生じる圧縮方向のたわみを示している。図4(c)において、符号DRは、加振時におけるシートパッド2の圧縮方向のたわみの変動領域(最大圧縮時のたわみDDと最大復元時のたわみDUとの間の領域)を示している。
【0025】
ここで、比較のために、図5を参照しながら、従来の動作を説明する。
図5は、従来の一般的なシートパッド2’のメインパッド部21’の動作を示している。図5の例においては、シートパッド2’を構成する発泡体140’が、上述の低通気性の袋体130によって覆われていない。この場合、シートパッド2’に荷重が掛かっていない状態(図5(a))から、着座者Pがシートパッド2’に着座してシートパッド2’が圧縮される(図5(b))ところまでの動作は、図4の例と同様となる。しかし、加振時においては、発泡体140’が、着座者Pの振動に追従して大きな圧縮及び復元を繰り返す。このように、発泡体140’の圧縮状態は維持されない(図5(c))。
なお、図5(b)において、符号DB’は、加振の無い時(静止時)における、着座者の着座時にシートパッド2’に生じる圧縮方向のたわみを示している。図5(c)において、符号DR’は、加振時におけるシートパッド2’の圧縮方向のたわみの変動領域(最大圧縮時のたわみDD’と最大復元時のたわみDU’との間の領域)を示している。
【0026】
つぎに、図6を参照しながら、本実施形態の効果を説明する。
図6は、一般的なポリウレタンフォームの圧縮たわみ曲線を示している。
図6の圧縮たわみ曲線において、上側の曲線は圧縮時の曲線を示し、下側の曲線は復元時の曲線を示している。図6の波形は、本実施形態の実験結果を示すものではないが、本実施形態の効果の理解を助けるものであるので、図6を参照しながら説明する。図6における符号DR、DR’は、図4図5を参照しながら上述した、本実施形態ならびに従来のシートパッドにおける、加振時の圧縮方向のたわみの変動領域を、それぞれ表す。荷重値「BW」は、着座者Pの体重である。
圧縮たわみ曲線の接線の傾きは、ポリウレタンフォームの静ばね定数に相当する。
本発明の発明者は、ポリウレタンフォームのような発泡体の圧縮たわみ曲線においては、図6に示すように、たわみひいては圧縮率が増加するにつれて、接線の傾きひいては静ばね定数が高くなることに着目した。そして、本発明の発明者は、発泡体の材料を変えずとも、発泡体の圧縮率を変化させることによって、発泡体の見かけ上の静ばね定数を変えることができ、それに応じて発泡体の見かけ上の動ばね定数も変えられることに新たに想到し、さらに、加振時において、発泡体の圧縮状態を維持することにより、加振時において、発泡体の見かけ上のばね定数を、圧縮前のばね定数よりも高い値で保持でき(図6の符号DR参照。)、その結果、加振時において、発泡体の共振周波数を、圧縮状態を維持しない場合よりも、高くすることができることを、新たに見い出した。
【0027】
本実施形態においては、加振時において、着座者からの荷重によりいったん被包装発泡体140が圧縮した後は、その圧縮状態が袋体130の低通気性によって保持される結果、被包装発泡体140ひいてはクッションパッド2aの見かけ上のばね定数を圧縮前のばね定数よりも高い値で保持でき、その結果、被包装発泡体140ひいてはクッションパッド2aの共振周波数を、袋体130が無い場合よりも、高くすることができるのである。
このように、本実施形態によれば、シートパッドを構成する発泡体自体を変えることなく、発泡体を低通気性の袋体によって覆うだけで、シートパッドの共振周波数を変えることができる。
【0028】
また、本発明の発明者は、包装パッド部150を上下方向に圧縮させることによって、上述のように共振周波数(共振点)を変えることができるだけでなく、振動伝達率(共振倍率)をほとんど変化させないようにすることができることについても、新たに見い出した。
シートパッドを構成する包装パッド部150の被包装発泡体140の振動伝達率は、被包装発泡体140の通気性、ひいては、被包装発泡体140の圧縮時・復元時に空気が被包装発泡体140のセル(気泡)を出入りすることによるダンピング性能によるところが大きい。特に、空気の出入りによる影響は、被包装発泡体140の側面側よりも上下面側のほうが大きい。本実施形態では、上下方向に積層された複数の包装パッド部150どうしの間の境界面の近傍で極めて低通気になる結果、被包装発泡体140が袋体130により囲まれている影響が少なくなったものと考えられる。
なお、振動伝達率の変化を抑制する観点からは、袋体130の通気部132は、袋体130の上下面には設けられず、袋体130の側面のみに設けられるのが、好ましい。
本実施形態に限らず、クッションパッド2aが包装パッド部150を1層のみ備える場合も、包装パッド部150を上下方向に圧縮させることによって、共振周波数(共振点)を変えつつ、振動伝達率(共振倍率)をほとんど変化させないようにすることもできる。この場合も、振動伝達率の変化を抑制する観点からは、袋体130の通気部132は、袋体130の上下面には設けられず、袋体130の側面のみに設けられるのが、好ましい。
このように、本実施形態によれば、シートパッドの振動伝達率をほとんど変えずに、シートパッドの共振周波数を単独で変えることもできる。よって、シートパッドの振動特性の調整がし易くなる。例えば、本実施形態の手法により共振周波数を調整しつつ、他の手法(例えば特許文献1の手法)により振動伝達率を別途単独で調節する、といったことが可能となる。
【0029】
なお、一般的に、発泡体には、セルの向きが特定の方向に配列されたものがあるが、被包装発泡体140として、そのような発泡体を用いても構わない。その場合、荷重の入力方向(本例では上下方向)に対するセルの向きが如何なるものであっても、本実施形態の手法によって、程度の差はあり得るものの、上述したように振動伝達率をほとんど変えずに共振周波数を変えることができる。
【0030】
また、本実施形態のシートパッドは、構造が簡単であるため、製造が簡単となり、コストを低減できる。
【0031】
なお、加振時において被包装発泡体140の圧縮状態をより確実に維持するためには、袋体130の通気性が非常に低いことが重要である。袋体130の通気性が高いと、その分、加振時において、着座者からの荷重が解放される際に袋体130の内部に空気が戻り易くなるので、被包装発泡体140の圧縮状態を維持するのが難しくなる。このような観点から、包装パッド部150は、被包装発泡体140(ひいては包装パッド部150)が40%圧縮された状態で圧縮が解除されてから60秒経過した時の被包装発泡体140(ひいては包装パッド部150)の回復率が20%以下、より好ましくは10%以下となるように構成されていると、好適である。これにより、加振時において被包装発泡体140の圧縮状態をより確実に維持することができるので、より効果的に共振周波数を変化させることができる。
ここで、「回復率」とは、つぎの式(2)により定義されるものとする。
回復率(%)=(圧縮解除前の圧縮率(%))−(圧縮解除後の圧縮率(%))・・・(2)
したがって、「40%圧縮された状態で圧縮が解除されてから60秒経過した時の・・・回復率」とは、圧縮解除前の圧縮率である40%から、圧縮が解除されてから60秒経過した時の圧縮率を、差し引いた値である。
同様の観点からは、包装パッド部150は、40%圧縮された状態で圧縮が解除されてから圧縮前の状態へ復元するまでに240秒以上、より好ましくは300秒以上かかるように構成されていると、好適である。
なお、袋体130の持つ通気性は、低いほうがよいとはいえ、包装パッド部150に荷重50kgが掛かったときに、包装パッド部150から空気が抜けることができ、それにより、包装パッド部150の圧縮率が1%以上増加する程度の通気性は、あるとよい。
【0032】
図2及び図3に示すように、シートパッド2は、複数(図の例では2つ)の包装パッド部150が上下方向に積層されていると、好適である。
全体の厚み(上下方向の長さ)を固定して考えた場合に、複数の包装パッド部150からなる多層構造は、1層の包装パッド部150からなる単層構造に比べて、圧縮状態からの復元速度が遅くなる。よって、多層構造とすることにより、加振時において被包装発泡体140の圧縮状態をより確実に維持することができるので、より効果的に共振周波数を変化させることができる。また、共振周波数の変化に伴い振動伝達率も変化してしまうのを、より効果的に抑制できる。
【0033】
なお、本実施形態のシートパッド2は、本例のように、1つ又は複数の包装パッド部150によって、シートパッド2のメインパッド部21の全体を構成する場合に限られない。メインパッド部21の上下方向及び/又は水平方向における一部分を包装パッド部150によって構成し、他の部分を、袋体130によって覆われていない通常の発泡体によって構成してもよい。また、シートパッド2のメインパッド部21だけでなくサイドパッド部22の一部又は全部を、1つ又は複数の包装パッド部150によって構成してもよい。また、クッションパッド2aを平面視したときに、複数の包装パッド部150が互いに異なる位置(例えば、前後方向又は左右方向に異なる位置)に配置されていてもよい。
【0034】
ここで、図3、7、8を参照しつつ、袋体130に通気性を持たせる手法について例示説明する。
図3の例において、袋体130は、非通気性材料から構成された袋本体131と、袋本体131の内外への通気を可能にする通気部132と、を有している。袋本体131を構成する非通気性材料としては、例えば、ポリプロピレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ナイロン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET樹脂)等の熱可塑性樹脂が挙げられる。
本明細書において、袋本体131を構成する「非通気性材料」とは、仮に袋体130が通気部132を有さず非通気性の袋本体131のみから構成される場合に、包装パッド部150に荷重70kgが掛かっても包装パッド部150から空気が抜けないがために包装パッド部150の圧縮率は増加しない程度の、非通気性材料をいうものとする。
袋体130のうち一部だけを通気可能な通気部132とすることにより、比較的簡単に、袋体130に、上述したような低通気性を持たせることができる。よって、袋体130の製造が簡単となる。
図3の例において、通気部132は、袋本体131に形成された孔132aである。この場合、袋体130の製造にあたっては、例えば、針で袋本体131を穿刺して孔132aを形成するだけで済むため、袋体130の製造が簡単となる。
なお、袋体130の通気性をより低くする観点からは、図3の例のように、袋体130は、通気部132を1つのみ有しており、通気部132を構成する孔132aは、直径が1mm以下であると好適であり、0.8mm以下であるとより好適である。一方、圧縮時に袋体130から空気が円滑に出るようにする観点からは、孔132aの直径は、0.2mm以上が好適であり、0.3mm以上であるとより好適である。これにより、加振時において被包装発泡体140の圧縮状態をより確実に維持することができるので、より効果的に共振周波数を調整できる。
【0035】
図7は、図3に対応する図であり、車両用シート1及びシートパッド2の第1変形例を示している。
図7の例は、袋体130の一部分だけが通気可能にされているのではなく、袋体130の全体が低通気性材料から構成されており、それにより袋体130の全体が通気可能にされている点のみで、図3の例とは異なる。本例のように袋体130を構成することによっても、袋体130に、上述したような低通気性を持たせることが可能である。
【0036】
図8は、図3に対応する図であり、車両用シート1及びシートパッド2の第2変形例を示している。
図8の例は、袋体130が、非通気性材料から構成された袋本体131と、通気部132と、を有している点では、図3の例と同様であるが、通気部132が、孔ではなく低通気性材料から構成された低通気性シート132bである点で、図3の例とは異なる。本例のように袋体130を構成することによっても、袋体130に、上述したような低通気性を持たせることが可能である。
【0037】
図9は、図3に対応する図であり、車両用シート1及びシートパッド2の第3変形例を示している。
図9の例は、袋体130が、非通気性材料から構成された袋本体131と、通気部132と、を有している点では図3の例と同様である。通気部132は、例えば、孔132a(図3)あるいは低通気性シート132b(図8)で構成してよい。そして、図9の例では、車両用シート1が、シートパッド2の通気部132に配管160を介して接続された流量調整弁FCVと、流量調整弁FCVを制御する制御部15と、シートパッド2に着座する着座者からの荷重を計測する荷重センサ16と、を備えている。
制御部15は、外部からの信号(荷重センサ16やエンジン側のセンサからの出力等)に応じて、流量調整弁FCVを制御する。制御部15は、例えばECU(Engine Control Unit)やCPU(Central Processing Unit)などの制御装置から構成される。
流量調整弁FCVは、弁の開閉や開度(ひいては流量)の調整が可能に構成されている。本例において、流量調整弁FCVは、制御部15によって、弁の開閉や開度が制御される。流量調整弁FCVの開度を変化させることにより、包装パッド部150の内外への空気の出入りのし易さ、ひいては、包装パッド部150の振動特性を、変化させることができる。
荷重センサ16は、計測した荷重値を、制御部15に出力する。
制御部は、予め、荷重センサ16から出力される荷重値と荷重グループとを対応付ける荷重分類テーブルWTを、内部あるいは外部の記憶部(図示せず)に、保有している。制御の簡単さを考慮すると、荷重グループの数は、例えば2つ又は3つであると好適である。
制御部は、さらに、予め、荷重分類テーブルWTにおける荷重グループと流量調整弁FCVの開度とを対応付ける流量調整テーブルFTを、内部あるいは外部の記憶部(図示せず)に、保有している。流量調整テーブルFTは、例えば、着座者の体重が重いほど、流量調整弁FCVの開度が大きくなるように、荷重グループと開度とを対応付ける。
このように構成された車両用シート1において、制御部15は、例えばつぎのようにして、車両用シート1を制御することができる。
まず、制御部15は、荷重センサ16からの出力等に基づいてシートパッド2に着座者が着座したことを検知すると、荷重センサ16から出力された荷重値に応じて、流量調整弁FCVの開度を制御する。具体的には、まず、荷重分類テーブルWTを参照して、荷重センサ16から出力された荷重値に対して、予め対応付けられた荷重グループを特定する。つぎに、流量調整テーブルFTを参照して、上記のように特定した荷重グループに対して、予め対応付けられた開度を特定する。そして、特定した開度になるよう、流量調整弁FCVの開度を制御する。その状態で加振されると、その間、包装パッド部150が圧縮状態に維持される。
その後、制御部15は、エンジン側のセンサからの出力等に基づいて、エンジンが停止したことを検知すると、流量調整弁FCVを全開にする。これにより、その後に着座者がシートパッド2から離席して車両から出ると、圧縮状態にあったシートパッド2の包装パッド部150が徐々に復元し、元の状態に戻ることができる。
このように、本例では、着座者の体重に応じて、流量調整弁FCVの開度を変化させることにより、包装パッド部150の内外への空気の出入りのし易さ、ひいては、包装パッド部150の振動特性を、変化させることができる。これにより、着座者の体重に応じた、振動特性の微調整を、自動で行うことができる。
【0038】
図10は、図9に対応する図であり、車両用シート1及びシートパッド2の第4変形例を示している。
図10の例では、車両用シート1が、シートパッド2の通気部132に配管160を介して接続された流量調整弁FCVと、流量調整弁FCVを制御する制御部15と、ユーザの手動による操作を受け付ける操作部17と、を備えている。そして、本例は、制御部15が、操作部17が操作される際に操作部17から出力される信号に応じて、流量調整弁FCVの開閉や開度(ひいては流量)を制御する点で、図9の例とは異なる。
このように、本例では、操作者(例えば、車両の製造者、販売者、あるいは着座者)が、要求あるいは自身の好みに応じて、操作部17を操作し、流量調整弁FCVの開度を適宜変化させることにより、包装パッド部150の内外への空気の出入りのし易さ、ひいては、包装パッド部150の振動特性を、変化させることができる。これにより、振動特性の微調整を、手動で行うことができる。
【0039】
なお、図9の例の構成と、図10の例の構成とを組み合わせて、流量調整弁FCVの制御が手動及び自動の両方で可能になるようにしてもよい。
また、図9図10の例において、流量調整弁FCVは、制御部15によって電気的に制御される代わりに、リンク機構等を介して機械的に開閉又は開度の調整がされてもよい。
【0040】
なお、包装パッド部150の被包装発泡体140の材料や厚みを変えたり、袋体130の材料や通気性を変えたりすることによって、包装パッド部150ひいてはクッションパッド2aの振動特性を変えることができる。
また、上述した各例のように、シートパッド2のクッションパッド2aが上下に積層された複数の包装パッド部150を有する場合、それぞれの層の包装パッド部150の被包装発泡体140の材料や厚みを変えたり、それぞれの層の袋体130の材料や通気性を変えたりすることによっても、シートパッド2のクッションパッド2aの振動特性を変えることができる。よって、製造時あるいは使用時において、簡単に振動特性を調整できる。
なお、被包装発泡体140や袋体130が異なる複数の包装パッド部150の積層順序だけを入れ替える場合は、振動特性は変わらない。しかし、その場合、着座者が感じる着座感(座り心地)は変えることができる。
例えば、図11に示す第5変形例のように、上側の包装パッド部150uの被包装発泡体140uを、下側の包装パッド部150lの被包装発泡体140lよりも、柔らかい材料で構成すると、両者の厚みを変えずとも、着座者が着座する際に、最初は柔らかくて後のほうでしっかりと支持されるような着座感を、着座者に与えることができる。
あるいは、図12に示す第6変形例のように、上側の包装パッド部150uの被包装発泡体140uを、下側の包装パッド部150lの被包装発泡体140lよりも、厚みを大きくすると、両者の材料を変えずとも、着座者が着座する際に、深々と沈み込むような着座感を、着座者に与えることができる。
また、図12の例において、図11の例のように、上側の包装パッド部150uの被包装発泡体140uを下側の包装パッド部150lの被包装発泡体140lよりも柔らかい材料で構成してもよい。
【0041】
図13は、図2に対応する図面である。本明細書で説明する各例においては、図13に示す第7変形例のように、シートパッド2は、メインパッド部21が、1つ又は複数(図13の例では2つ)の包装パッド部150と、これらの包装パッド部150の上側を被覆する被覆部21aと、を有しており、メインパッド部21の被覆部21aが、左右一対のサイドパッド部22と、一体に構成されてもよい。この場合、シートパッドの製造時において、包装パッド部150は、シートパッド2のクッションパッド2aの裏側においてメインパッド部21の被覆部21aと一対のサイドパッド部22とによって区画される凹所23の内部へ、裏側から収容される。
【0042】
〔第2実施形態〕
つぎに、図14を参照しながら、本発明の第2実施形態に係るシートパッド、車両用シート、及び、車両用シートの制御方法を、第1実施形態とは異なる点を中心に、説明する。
【0043】
図14は、図9に対応する図であり、本実施形態に係るシートパッド2及び車両用シート1を示している。
図14の例は、袋体130が、非通気性材料から構成された袋本体131と、通気部132と、を有している点では図3の例と同様である。そして、図14の例では、車両用シート1が、シートパッド2の通気部132に配管160を介して接続された逆止弁CHVと、逆止弁CHVを制御する制御部15と、を備えている。図示は省略するが、車両用シート1は、荷重センサ16(図9)や操作部17(図10)をさらに備えてもよい。
通気部132は、例えば、配管160と同径程度の大きさの孔132aで構成することができる。ただし、通気部132として、図3の例のような小さな孔132a、あるいは、図8の例のような低通気性シート132bを用いても構わない。
制御部15は、外部からの信号(エンジン側のセンサからの出力等)に応じて、逆止弁CHVを制御する。
逆止弁CHVは、逆止機能の作動及び解除を切換可能に構成されており、逆止機能の作動時においては、通気部132から袋本体131の外へ出る空気の通過のみを許容するように構成されている。本例において、逆止弁CHVは、制御部15によって、逆止機能の作動及び解除の切換が制御される。逆止弁CHVの逆止機能を作動させることにより、包装パッド部150からいったん外へ出た空気が、包装パッド部150へ戻るのが阻止される。よって、加振時において逆止弁CHVの逆止機能を作動状態に維持することにより、着座者の体重によっていったん包装パッド部150が圧縮された後は、その圧縮状態を確実に維持でき、ひいては、共振周波数を高くすることができる。
すなわち、第2実施形態においては、第1実施形態のように袋体130自体に低通気性を持たせることによって包装パッド部150の圧縮状態を維持するのではなく、逆止弁CHVによって包装パッド部150の圧縮状態を維持するのである。したがって、袋体130自体の通気性を低くする必要はない。そのため、通気部132を孔132aで構成する場合、孔132aの直径は、図3の例とは異なり、1mm超であっても構わない。
このように構成された車両用シート1において、制御部15は、例えばつぎのようにして、車両用シート1を制御することができる。
まず、制御部は、シートパッド2に着座者が着座したことを検知すると、逆止弁CHVの逆止機能を作動させる。その状態で加振されると、その間、包装パッド部150が圧縮状態に維持される。
その後、制御部15は、エンジン側のセンサからの出力等に基づいて、エンジンが停止したことを検知すると、逆止弁CHVの逆止機能を解除する。これにより、その後に着座者がシートパッド2から離席して車両から出ると、圧縮状態にあったシートパッド2の包装パッド部150が復元し、元の状態に戻ることができる。
このように、本例では、加振時において逆止弁CHVの逆止機能を作動状態に維持することにより、着座者の体重によっていったん包装パッド部150が圧縮された後は、その圧縮状態を確実に維持でき、ひいては、共振周波数を高くすることができる。
よって、本実施形態によっても、シートパッドを構成する発泡体自体を変えることなく、シートパッドの共振周波数を変化させることができる。
【0044】
なお、図14の例において、逆止弁CHVは、制御部15によって電気的に制御される代わりに、リンク機構等を介して機械的に逆止機能の作動及び解除の切換がされてもよい。
【0045】
第1実施形態、第2実施形態において上述した各例における技術要素は、任意に組み合わせてもよい。
【0046】
〔実施例、比較例〕
ここで、図15図16を参照しながら、本発明のシートパッドにおける実施例、比較例について説明する。
【0047】
<実施例1と比較例1>
図15は、本発明のシートパッドの実施例1、比較例1について振動実験を行った結果を示している。
実施例1の試験体は、図3に示すように、クッションパッド2aのメインパッド部21を想定して、2層の包装パッド部150を上下に積層させた積層構造体とした。各包装パッド部150の被包装発泡体140は、材料をポリウレタンフォームとし、寸法を400mm×400mm×50mmとした。各包装パッド部150の袋体130の袋本体131は、ポリエチレン製とし、それに直径約0.5mmの穿刺孔を形成し、これを通気部132とした。この包装パッド部150は、被包装発泡体140が何も覆われていない場合に被包装発泡体140が、上から50kgの鉄研盤からなる加圧子を載せたときの圧縮状態で、圧縮が解除されてから圧縮前の状態へ復元するまでにかかる時間T0よりも、包装パッド部150が、上から50kgの鉄研盤からなる加圧子を載せたときの圧縮状態で、圧縮が解除されてから圧縮前の状態へ復元するまでにかかる時間T1のほうが、長いものだった。
比較例1の試験体は、袋体を有しておらず、1層の発泡体からなる単層構造体とした。この発泡体は、材料をポリウレタンフォームとし、寸法を400mm×400mm×100mmとした。
実施例1、比較例1で用いたポリウレタンフォームの組成は同じであった。
実施例1、比較例1の振動試験においては、それぞれ、試験体の四方を、サイドパッド22を想定した発泡体によって囲み、試験体とその周囲の発泡体とを、パンフレーム6を想定して構成した受け具の上に載置した。そして、50kgの着座者が着座した状態を想定して、上から50kgの鉄研盤からなる加圧子を載せた。その状態で、周波数1〜10Hz、掃引時間5分で、振動試験を実施した。
図15において、横軸は周波数(Hz)であり、縦軸は振動伝達率である。
図15の結果からわかるように、袋体130を用いた実施例1は、袋体130を用いなかった比較例1に比べると、共振周波数は大幅に高くなったのに対し、振動伝達率はほとんど変わらなかった。具体的に、実施例1は、比較例1よりも、共振周波数が1.2Hzアップしたのに対し、振動伝達率は0.04しかアップしなかった。
【0048】
<比較例2〜4>
図16は、本発明のシートパッドの比較例2〜4について振動実験を行った結果を示している。
比較例2〜4の試験体は、袋体を有さず、1層の発泡体からなる単層構造体とした。この発泡体は、材料をポリウレタンフォームとし、寸法を400mm×400mm×100mmとした。比較例2〜4は、ポリウレタンフォームの組成を互いに異ならせることによって、硬度を互いに異ならせた。それに伴い、比較例2〜4は、質量等の他の物性も互いに異なるものであった。比較例2は高硬度、比較例3は中硬度、比較例4は低硬度だった。
比較例2〜4の振動試験においては、それぞれ、試験体の四方を、サイドパッド22を想定した発泡体によって囲み、試験体とその周囲の発泡体とを、パンフレーム6を想定して構成した受け具の上に載置した。そして、50kgの着座者が着座した状態を想定して、上から50kgの鉄研盤からなる加圧子を載せた。その状態で、周波数1〜10Hz、掃引時間5分で、振動試験を実施した。
図16において、横軸は周波数(Hz)であり、縦軸は振動伝達率である。
図16の結果からわかるように、硬度が低いものほど、共振周波数が高くなるとともに、共振周波数よりも大きな変化代で、振動伝達率が低くなった。具体的には、最も硬度の高い比較例2と最も硬度の低い比較例4とを比べると、比較例4は、比較例2よりも、共振周波数が約0.3Hzアップしたのに対し、振動伝達率は約1もダウンした。このように、発泡体の材料を異ならせることにより発泡体の硬度を異ならせる場合、共振周波数だけでなく振動伝達率も大きく変化してしまうことがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明のシートパッドは、振動が生じる環境に置かれるような任意の種類のシートに好適に利用できるが、特に、車両用シートに利用されるのが好適である。
また、本発明のシートパッド、車両用シート、及び、車両用シートの制御方法は、任意の種類の車両に利用できるが、特に、快適性への要求が高い乗用車や、大きな振動が発生するトラック、バス、建設車両等の大型車に、好適に利用できる。
【符号の説明】
【0050】
1:車両用シート、 2:シートパッド、 2a:クッションパッド、 2b:バックパッド、 6:パンフレーム、 13:カバー部材、 15:制御部、 16:荷重センサ、 17:操作部、 21:メインパッド部、 21a:被覆部、 21h:尻下部、 21t:腿下部、 22:サイドパッド部、 22a:被覆部、 23:凹所、 130、130u、130l:袋体、 131:袋本体、 132:通気部、 132a:孔、 132b:低通気性シート、 140、140u、140l:被包装発泡体(発泡体)、 140’:発泡体、 150、150u、150l:包装パッド部、 160:配管、 CHV:逆止弁、 FCV:流量調整弁、 P:着座者、 FT:流量調整テーブル、 WT:荷重分類テーブル
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16