(54)【発明の名称】N,N−ビス(2−ジアルキルホスフィノエチル)アミン−ボラン錯体及びその製造法、並びにN,N−ビス(2−ジアルキルホスフィノエチル)アミンを配位子とするルテニウム錯体の製造方法
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、カルボニル化合物の水素添加反応やアルコール類の脱水素反応等において、触媒活性など優れた性能を有するN,N−ビス(2−ジアルキルホスフィノエチル)アミン類を配位子とするルテニウム金属錯体を、簡便かつ高収量で製造することができる製造方法を提供することを目的とするものである。さらには、配位子原料として有用なN,N−ビス(2−ジアルキルホスフィノエチル)アミン−ボラン錯体、及び、それらを新規で安全かつ実用的な製造方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは上記の課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、N,N−ビス(2−クロロエチル)アミンに対して二酸化炭素を反応させることで3−(2−クロロエチル)−2−オキサゾリジノンへ誘導し、この化合物に対してジアルキルホスフィン−ボラン化合物を塩基の存在下に反応させることで、新規なN,N−ビス(2−ジアルキルホスフィノエチル)アミン−ボラン錯体を、簡便な操作で収率良く合成できることを見出した。この新規な化合物は空気に安定で、カラムクロマトグラフィーや再結晶等で容易に精製することが可能であり、ルテニウム前駆体とアミン類の存在下に反応せしめることにより、カルボニル化合物の水素添加反応やアルコール類の脱水素反応等において触媒活性など優れた性能を有するN,N−ビス(2−ジアルキルホスフィノエチル)アミン類を配位子とするルテニウム金属錯体を、短工程で安全かつ収率良く製造できることを見出して、本発明を完成したものである。
【0007】
すなわち、本発明は、N,N−ビス(2−ジアルキルホスフィノエチル)アミン−ボラン錯体及びその製造法、並びに配位子としてN,N−ビス(2−ジアルキルホスフィノエチル)アミン類を有するルテニウム錯体の製造方法を提供する。
本発明は以下の[1]〜[11]の内容を含むものである。
[1]一般式(1)
【0008】
【化1】
【0009】
(式中、実線は単結合、二重線は二重結合を表す。Cは炭素原子、Nは窒素原子、Oは酸素原子を表す。LGは脱離基を表す。R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8、R
9及びR
10は各々独立して水素原子及び、置換基を有しても良いアルキル基、置換基を有しても良いシクロアルキル基、置換基を有しても良いアルケニル基、置換基を有しても良いアリール基及び置換基を有しても良いアラルキル基から構成される群より選択される基を表す。R
3〜R
10は互いに結合して置換基を有しても良い環を形成してもよい)
で表される化合物と、一般式(2)
【0010】
【化2】
【0011】
(式中、実線は単結合、破線は配位結合を表す。Bはホウ素原子、Hは水素原子、Pはリン原子を表す。R
1及びR
2は各々独立して、置換基を有しても良いアルキル基、置換基を有しても良いシクロアルキル基を表す。隣接するR
1及びR
2は互いに結合して、置換基を有してもよい環を形成してもよい。)
で表されるリン化合物を、塩基の存在下で反応させることを特徴とする、一般式(3)
【0012】
【化3】
【0013】
(式中、実線は単結合を表す。Bはホウ素原子、Cは炭素原子、Hは水素原子、Nは窒素原子、Pはリン原子を表す。R
1及びR
2は各々独立して、置換基を有しても良いアルキル基、置換基を有しても良いシクロアルキル基を表す。隣接するR
1及びR
2は互いに結合して、置換基を有してもよい環を形成してもよい。R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8、R
9及びR
10は各々独立して水素原子、置換基を有しても良いアルキル基、置換基を有しても良いシクロアルキル基、置換基を有しても良いアルケニル基、置換基を有しても良いアリール基及び置換基を有しても良いアラルキル基から構成される群より選択される基を表す。R
3〜R
10は互いに結合して置換基を有しても良い環を形成してもよい。n=2〜3であり、BH
3は窒素原子又はリン原子に配位している)
で表される化合物の製造方法。
[2]R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8、R
9及びR
10が水素原子である[1]に記載の製造方法。
[3]R
1及びR
2は各々独立して、イソプロピル基、シクロヘキシル基、tert−ブチル基から構成される群より選択された化合物である[1]又は[2]のいずれかに記載の製造方法。
[4]LGがハロゲン原子、メタンスルホニルオキシ基(OMs)、p−トルエンスルホニルオキシ基(OTs)、ベンゼンスルホニルオキシ基(OSO
2C
6H
5)トリフルオロメタンスルホニルオキシ基(OTf)から構成される群より選択された化合物である、[1]〜[3]のいずれかに記載の製造方法。
[5]塩基がアルキルリチウムである[1]〜[4]のいずれかに記載の製造方法。
[6]一般式(3)
【0014】
【化4】
【0015】
(式中、実線は単結合を表す。Bはホウ素原子、Cは炭素原子、Hは水素原子、Nは窒素原子、Pはリン原子を表す。R
1及びR
2は各々独立して、置換基を有しても良いアルキル基、置換基を有しても良いシクロアルキル基を表す。隣接するR
1及びR
2は互いに結合して、置換基を有してもよい環を形成してもよい。R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8、R
9及びR
10は各々独立して水素原子、置換基を有しても良いアルキル基、置換基を有しても良いシクロアルキル基、置換基を有しても良いアルケニル基、置換基を有しても良いアリール基及び置換基を有しても良いアラルキル基から構成される群より選択される基を表す。R
3〜R
10は互いに結合して置換基を有しても良い環を形成してもよい。n=2〜3であり、BH
3は窒素原子又はリン原子に配位している)
で表される化合物と、一般式(4)
【0016】
【化5】
【0017】
(式中、実線は単結合、三重線は三重結合、破線は配位結合を表す。Cは炭素原子、Hは水素原子、Oは酸素原子、Ruはルテニウム原子を表す。Xはアニオン性基を表す。L
1、L
2及びL
3は各々独立して単座配位子を表す)
で表されるルテニウム化合物をアミン類の存在下で反応させることを特徴とする、一般式(5)
【0018】
【化6】
【0019】
(式中、実線は単結合、三重線は三重結合、破線は配位結合を表す。Cは炭素原子、Hは水素原子、Nは窒素原子、Oは酸素原子、Pはリン原子、Ruはルテニウム原子を表す。Xはアニオン性基を表す。R
1及びR
2は各々独立して、置換基を有しても良いアルキル基、置換基を有しても良いシクロアルキル基を表す。隣接するR
1及びR
2は互いに結合して、置換基を有してもよい環を形成してもよい。R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8、R
9及びR
10は各々独立して水素原子及び、置換基を有しても良いアルキル基、置換基を有しても良いシクロアルキル基、置換基を有しても良いアルケニル基、置換基を有しても良いアリール基及び置換基を有しても良いアラルキル基から構成される群より選択される基を表す。R
3〜R
10は互いに結合して置換基を有しても良い環を形成してもよい)
で表されるルテニウム錯体の製造方法。
[7]R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8、R
9及びR
10が水素原子である[6]に記載の製造方法。
[8]R
1及びR
2は各々独立して、イソプロピル基、シクロヘキシル基、tert−ブチル基から構成される群より選択された化合物である[6]又は[7]のいずれかに記載の製造方法。
[9]L
1、L
2及びL
3が3級ホスフィンである[6]〜[8]のいずれかに記載の製造方法。
[10]Xがハロゲン原子である[6]〜[9]のいずれかに記載の製造方法。
[11]一般式(3)
【0020】
【化7】
【0021】
(式中、実線は単結合を表す。Bはホウ素原子、Cは炭素原子、Hは水素原子、Nは窒素原子、Pはリン原子を表す。R
1及びR
2は各々独立して、置換基を有しても良いアルキル基、置換基を有しても良いシクロアルキル基を表す。隣接するR
1及びR
2は互いに結合して、置換基を有してもよい環を形成してもよい。R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8、R
9及びR
10は各々独立して水素原子、置換基を有しても良いアルキル基、置換基を有しても良いシクロアルキル基、置換基を有しても良いアルケニル基、置換基を有しても良いアリール基及び置換基を有しても良いアラルキル基から構成される群より選択される基を表す。R
3〜R
10は互いに結合して置換基を有しても良い環を形成してもよい。n=2〜3であり、BH
3は窒素原子又はリン原子に配位している)
で表される化合物。
【発明の効果】
【0022】
本発明によって、新規なN,N−ビス(2−ジアルキルホスフィノエチル)アミン−ボラン錯体の簡便で実用的な製造方法が提供される。本発明によるN,N−ビス(2−ジアルキルホスフィノエチル)アミン−ボラン錯体は空気に安定で、カラムクロマトグラフィーや再結晶等で容易に精製することが可能であり、ルテニウム前駆体とアミン類の存在下に反応せしめることにより、カルボニル化合物の水素添加反応やアルコール類の脱水素反応等において触媒活性など優れた性能を有するN,N−ビス(2−ジアルキルホスフィノエチル)アミン類を配位子とするルテニウム金属錯体を、短工程で安全かつ収率良く製造できる
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の一般式(3)で表されるN,N−ビス(2−ジアルキルホスフィノエチル)アミン−ボラン錯体の製造方法は反応式(6)で表すことができる。
【0027】
上記一般式(1)で示されるオキサゾリジノンにおいて、LGで表される脱離基としては求核置換反応を可能にする基であれば良く、具体的にはフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子、メタンスルホニルオキシ基(OMs)、p−トルエンスルホニルオキシ基(OTs)、ベンゼンスルホニルオキシ基(OSO
2C
6H
5)、トリフルオロメタンスルホニルオキシ基(OTf)などがあげられ、好ましくはハロゲン原子が挙げられ、より好ましくは塩素原子が挙げられる。
【0028】
R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8、R
9及びR
10は各々独立して、水素原子及び、置換基を有しても良いアルキル基、置換基を有しても良いシクロアルキル基、置換基を有してもよいアルケニル基、置換基を有しても良いアリール基及び置換基を有してもよいアラルキル基から構成される群より選択される基を表し、好ましくは水素原子を表す。
【0029】
R
3〜R
10におけるアルキル基は、直鎖状でも分岐状でも良く、例えば炭素数1〜30、好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜10のアルキル基が挙げられ、具体的にはメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、2−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、シクロブチル基、n−ペンチル基、2−ペンチル基、3−ペンチル基、tert−ペンチル基、2−メチルブチル基、3−メチルブチル基、2−メチルブタン−3−イル基、2,2−ジメチルプロピル基、n−ヘキシル基、2−ヘキシル基、3−ヘキシル基、tert−ヘキシル基、2−メチルペンチル基、3−メチルペンチル基、4−メチルペンチル基、2−メチルペンタン−3−イル基、2−メチルペンタン−4−イル基、3−メチルペンタン−2−イル基、3−メチルペンタン−3−イル基、2,2−ジメチルブチル基、3,3−ジメチルブチル基、2,2−ジメチルブタン−3−イル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ドデシル基、n−ヘキサデシル基等が挙げられ、好ましくはメチル基、エチル基、イソプロピル基、tert−ブチル基が挙げられる。
【0030】
シクロアルキル基としては、例えば炭素数3〜8、好ましくは炭素数5〜7の飽和又は不飽和の単環式、多環式のシクロアルキル基が挙げられる。例えばシクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、1−アダマンチル基、2−アダマンチル基等が挙げられ、好ましくはシクロペンチル基、シクロヘキシル基が挙げられる。
【0031】
アルケニル基としては、直鎖状でも分岐状でも又は環状でもよい、例えば炭素数2〜20のアルケニル基、好ましくは炭素数2〜14のアルケニル基、より好ましくは炭素数2〜8のアルケニル基が挙げられ、具体的にはビニル基、1−プロペニル基、2−プロペニル基、アリル基、1−シクロヘキセニル基、1−スチリル基及び2−スチリル基等が挙げられる。
【0032】
アリール基としては、例えば炭素数6〜18のアリール基、好ましくは炭素数6〜14のアリール基、より好ましくは炭素数6〜10のアリール基が挙げられ、具体的にはフェニル基、1−ナフチル基及び2−ナフチル基等が挙げられ、好ましい具体例としてはフェニル基が挙げられる。
【0033】
アラルキル基としては、前記アルキル基の少なくとも一つの水素原子が前記アリール基によって置換されたアラルキル基及び、前記環状アルキル基が前記アリール基によって縮環されることで生じる多環アラルキル基が挙げられ、具体的にはベンジル基、1−フェニルエチル基、2−フェニルエチル基、1−フェニルプロピル基、2−フェニルプロピル基、3−フェニルプロピル基、1−フェニル−2−プロピル基、2−フェニル−2−プロピル基、1−インダニル基、2−インダニル基及び9−フルオレニル基等が挙げられる。
【0034】
また、R
3〜R
10におけるアルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アリール基及びアラルキル基、R
3〜R
6同士が互いに結合して形成する環、R
7〜R
10同士が互いに結合して形成する環、並びにR
3〜R
10同士が互いに結合して形成する環が有してもよい置換基としては、アルキル基、ハロゲン原子、アルケニル基、アリール基、ヘテロアリール基、アラルキル基、ハロゲノアルキル基、アルコキシ基等が挙げられ、アルキル基、ハロゲン原子、アルケニル基、アリール基、アラルキル基、及びこれらの置換基は前記にて詳細を説明した基と同様である。
【0035】
ヘテロアリール基としては、窒素原子、酸素原子及び硫黄原子からなる群より選ばれるヘテロ原子を1〜4個有する5〜6員環の芳香族複素環及び、該芳香族複素環が前記アリール基によって縮環されることで生じる多環芳香族複素環由来のヘテロアリール基が挙げられ、具体的には2−フリル基、3−フリル基、2−チエニル基、3−チエニル基、2−ベンゾフリル基、3−ベンゾフリル基、2−ベンゾチエニル基及び3−ベンゾチエニル基等が挙げられる。
【0036】
アルコキシ基としては、例えば炭素数1〜10のアルコキシ基、好ましくは炭素数1〜4のアルコキシ基が挙げられ、具体的にはメトキシ基、エトキシ基、1−プロポキシ基、2−プロポキシ基、1−ブトキシ基、2−ブトキシ基及びtert−ブトキシ基等が挙げられる。
【0037】
ハロゲノアルキル基としては、前記アルキル基の少なくとも一つの水素原子がハロゲン原子によって置換された基が挙げられ、具体的にはトリフルオロメチル基及びn−ノナフルオロブチル基等が挙げられる。
【0038】
上記一般式(2)で示されるホスフィン−ボラン錯体において、R
1又はR
2は各々独立して、置換基を有しても良いアルキル基、置換基を有しても良いシクロアルキル基を表す。
【0039】
R
1及びR
2におけるアルキル基は、直鎖状でも分岐状でも良く、例えば炭素数1〜30、好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜10のアルキル基が挙げられ、具体的にはメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、2−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、シクロブチル基、n−ペンチル基、2−ペンチル基、3−ペンチル基、tert−ペンチル基、2−メチルブチル基、3−メチルブチル基、2−メチルブタン−3−イル基、2,2−ジメチルプロピル基、n−ヘキシル基、2−ヘキシル基、3−ヘキシル基、tert−ヘキシル基、2−メチルペンチル基、3−メチルペンチル基、4−メチルペンチル基、2−メチルペンタン−3−イル基、2−メチルペンタン−4−イル基、3−メチルペンタン−2−イル基、3−メチルペンタン−3−イル基、2,2−ジメチルブチル基、3,3−ジメチルブチル基、2,2−ジメチルブタン−3−イル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ドデシル基、n−ヘキサデシル基等が挙げられ、好ましくはメチル基、エチル基、イソプロピル基、tert−ブチル基が挙げられる。
【0040】
R
1及びR
2におけるシクロアルキル基としては、例えば炭素数3〜8、好ましくは炭素数5〜7の飽和又は不飽和の単環式、多環式のシクロアルキル基が挙げられる。例えばシクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、1−アダマンチル基、2−アダマンチル基等が挙げられ、好ましくはシクロペンチル基、シクロヘキシル基が挙げられる。
【0041】
R
1及びR
2は互いに結合して、置換基を有してもよい環を形成してもよい。このような環の具体例としては、ホスフェタン環、ホスホラン環等が挙げられる。
【0042】
また、R
1及びR
2におけるアルキル基及びシクロアルキル基、並びにR
1及びR
2同士が互いに結合して形成する環が有してもよい置換基としては、アルキル基、ハロゲン原子、アルケニル基、アリール基、ヘテロアリール基、アラルキル基、ハロゲノアルキル基、アルコキシ基等が挙げられ、アルキル基、ハロゲン原子、アルケニル基、アリール基、アラルキル基、及びこれらの置換基は前記一般式(1)にて詳細を説明した基と同様である。
【0043】
上記一般式(3)で示されるN,N−ビス(2−ジアルキルホスフィノエチル)アミン−ボラン錯体において、R
1又はR
2で表される置換基を有しても良いアルキル基、及び置換基を有しても良いシクロアルキル基、並びに隣接するR
1及びR
2同士が互いに結合して形成する置換基を有してもよい環としては、前記一般式(2)と同じ基が挙げられる。
【0044】
また上記一般式(3)で示されるN,N−ビス(2−ジアルキルホスフィノエチル)アミン−ボラン錯体において、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8、R
9及びR
10は各々独立して、水素原子及び、置換基を有しても良いアルキル基、置換基を有しても良いシクロアルキル基、置換基を有しても良いアルケニル基、置換基を有しても良いアリール基及び置換基を有してもよいアラルキル基から構成される群より選択される基を表し、好ましくは水素原子を表す。R
3〜R
10におけるアルキル基、置換基を有しても良いアルケニル基、置換基を有しても良いアリール基及び置換基を有してもよいアラルキル基は、前記一般式(1)と同じ基が挙げられる。
【0045】
尚、本発明においてボランとはBH
3で表される三水素化ホウ素を表し、さらに一般式(3)において、ボランは、窒素原子又はリン原子に配位しており、n=2又は3であり、n=2と3の混合物であっても良い。本明細書において、n=2〜3であるとは、n=2、n=3又はそれらの混合物であることを意味する。
【0046】
上記一般式(3)で表されるN,N−ビス(2−ジアルキルホスフィノエチル)アミン−ボラン錯体の製造方法を詳しく説明する。
一般式(1)で表されるオキサゾリジノンは、例えば、特開2003−292798などで公知の方法に類似した方法により合成することができる。例えば、その一例を示すと、反応式(7)に示すようにN,N−ビス(2−クロロエチル)アミン塩酸塩に対して二酸化炭素を反応させることで3−(2−クロロエチル)−2−オキサゾリジノンを合成することができる。
【0048】
一般式(2)で示されるホスフィン−ボラン錯体は、例えば、Lydia McKinstry, Tom, Livinghouse, Tetrahedron, 1995年, 51, 7655.などで公知の方法に類似の方法により合成できる。例えばその一例を示すと、2級ホスフィン類とボラン−ジメチルスルフィド錯体(BH
3−SMe
2)やボラン−テトラヒドロフラン錯体(BH
3−THF)等を反応させることにより製造することができる。
【0049】
上記のように製造された一般式(1)で表されるオキサゾリジノンと一般式(2)で表されるホスフィン−ボラン錯体との反応を塩基の存在下に実施することにより、一般式(3)で表されるN,N−ビス(2−ジアルキルホスフィノエチル)アミン−ボラン錯体を製造することができる。一般式(2)で表されるホスフィン−ボラン錯体の使用量は特に限定されるものではないが、通常一般式(1)で表されるオキサゾリジノンに対して通常0.6〜20当量、好ましくは1当量〜10当量、より好ましくは2〜5当量の範囲から適宜選択される。なお、一般式(2)で表されるホスフィン−ボラン錯体は、その製造工程においてカラムクロマトグラフィーや再結晶等により精製した後に使用してもよく、溶媒で抽出後、水洗した溶液を使用してもよい。
【0050】
塩基としては、具体的には水酸化リチウム、水酸化ナトリウム及び水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物、水酸化カルシウム、水酸化ストロンチウム及び水酸化バリウム等のアルカリ土類金属水酸化物、水素化リチウム、水素化ナトリウム、水素化カリウム、水素化カルシウム、水素化ホウ素ナトリウム及び水素化アルミニウムリチウム等の金属水素化物、リチウムメトキシド、ナトリウムメトキシド、カリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムエトキシド、ナトリウム−tert−ブトキシド及びカリウム−tert−ブトキシド等のアルカリ金属アルコキシド、メチルリチウム、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、tert−ブチルリチウム及びフェニルリチウム等の有機リチウム化合物、リチウムアミド、ナトリウムアミド、リチウムジイソプロピルアミド及びリチウムヘキサメチルジシラジド等のアルカリ金属アミド類、及び塩化メチルマグネシウム、塩化tert−ブチルマグネシウム、塩化フェニルマグネシウム、臭化フェニルマグネシウム及びヨウ化メチルマグネシウム等のグリニャール試薬等が挙げられ、好ましくはアルキルリチウムが挙げられ、特に好ましい具体例としてはn−ブチルリチウムが挙げられる。これらの塩基は、各々単独で用いても2種以上適宜組み合わせて用いてもよい。
【0051】
塩基の使用量は特に限定されるものではないが、一般式(2)で表される化合物に対して、通常0.3〜10当量、好ましくは0.5〜5当量、より好ましくは0.8〜3当量の範囲から適宜選択される。なお、本反応において塩基の添加方法は特に限定されるものではないが、一般式(2)で表される化合物と塩基を各々単独に添加してもよく、一般式(2)で表される化合物と塩基(及び溶媒)の混合物として添加してもよく、一般式(2)で表される化合物と塩基を(溶媒中にて)反応させることによって得られるホスフィド−ボラン錯体として添加してもよい。
【0052】
本反応は溶媒の存在下で実施することが望ましい。溶媒は、具体的にはn−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、n−デカン、シクロヘキサン及びデカリン等の脂肪族炭化水素類、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、p−シメン及び1,4−ジイソプロピルベンゼン等の芳香族炭化水素類、メタノール、エタノール、2−プロパノール、n−ブタノール、tert−ブタノール、2−メチル−2−ブタノール及び2−エトキシエタノール等の1価アルコール類、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,2−プロパンジオール及びグリセリン等の多価アルコール類、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、tert−ブチルメチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル、ジメトキシエタン、エチレングリコールジエチルエーテル、テトラヒドロフラン及び1,4−ジオキサン等のエーテル類、及びトリエチルアミン、アニリン及び2−フェネチルアミン等のアミン類等が挙げられ、好ましい具体例としてはn−ヘキサン及びテトラヒドロフラン等が挙げられる。これらの溶媒は、各々単独で用いても2種以上適宜組み合わせて用いてもよい。
【0053】
溶媒の使用量は特に限定されるものではないが、一般式(1)で表される化合物に対して通常1〜200倍容量、好ましくは2〜100倍容量、より好ましくは5〜50倍容量の範囲から適宜選択される。
【0054】
本反応は不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましい。不活性ガスとしては、具体的にはアルゴンガス及び窒素ガス等が挙げられる。反応温度は、通常−78〜150℃、好ましくは−40〜100℃、より好ましくは−20〜80℃の範囲から適宜選択される。反応時間は、塩基、溶媒及び反応温度その他の条件によって自ずから異なるが、通常1分〜48時間、好ましくは5分〜24時間、より好ましくは10分〜15時間の範囲から適宜選択される。
【0055】
このようにして得られた一般式(3)で表されるN,N−ビス(2−ジアルキルホスフィノエチル)アミン−ボラン錯体は、必要に応じて後処理、単離及び精製を行うことができる。後処理の方法としては例えば、濃縮、溶媒置換、洗浄、抽出、逆抽出、濾過、貧溶媒の添加による晶析等が挙げられ、これらを単独で或いは併用して行うことができる。単離及び精製の方法としては例えば、吸着剤による脱色、カラムクロマトグラフィー、蒸留、再結晶、貧溶媒による結晶洗浄によって得られる塩の晶析等が挙げられ、これらを単独で或いは併用して行うことができる。
【0056】
次に一般式(5)で表されるルテニウム錯体の製造方法は反応式(8)で表すことができる。すなわち、一般式(4)で表されるルテニウムカルボニル錯体と前記一般式(3)で表されるN,N−ビス(2−ジアルキルホスフィノエチル)アミン−ボラン錯体を適宜溶媒中でアミン類の存在下に撹拌することで製造することができる。一般式(3)で表されるN,N−ビス(2−ジアルキルホスフィノエチル)アミン−ボラン錯体の使用量は特に限定されるものではないが、通常一般式(4)で表されるルテニウムカルボニル錯体に対して通常0.5〜20当量、好ましくは0.7当量〜10当量、より好ましくは0.8〜3当量の範囲から適宜選択される。
【0058】
一般式(4)において、Xで表されるアニオン性基としては、ヒドリドイオン(H
−);塩素イオン(Cl
−)、臭素イオン(Br
−)、又はヨウ素イオン(I
−)等のハロゲンイオン、BH
4、BF
4、BPh
4、PF
6、アセトキシ基、トリフルオロメタンスルホニルオキシ基等の複合アニオンなどが挙げられる。好ましくはハロゲンイオン、より好ましくは塩素イオン(Cl
−)が挙げられる。
【0059】
L1、L2及びL3で表される中性単座配位子としては、アルコール、エーテル、スルフィド、スルホキシド、アミン、アミド、ニトリル、イソニトリル、ヘテロアレーン、2級ホスフィン、2級ホスフィンオキシド、3級ホスフィン、ホスファイト、ホスホロアミダイト、3級アルシン、カルベン、水素分子及び一酸化炭素が挙げられ、より好ましくは3級ホスフィン、ホスファイト及び一酸化炭素等が挙げられる。さらに好ましくは3級ホスフィン等が挙げられる。
【0060】
3級ホスフィンとしては下記一般式(9)
【0062】
(式中、Pはリン原子を表す。R
11、R
12及びR
13は各々独立して、アルキル基、置換基を有してもよいアルケニル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいヘテロアリール基又は置換基を有してもよいアラルキル基から構成される群より選択される基を表す。R
11〜R
13は互いに結合して、置換基を有してもよい環を形成してもよい。)
で表される化合物が挙げられる。
【0063】
前記一般式(9)中、Pはリン原子を表す。R
11、R
12及びR
13は各々独立して、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいシクロアルキル基、置換基を有してもよいアルケニル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいヘテロアリール基又は置換基を有してもよいアラルキル基から構成される群より選択される基を表し、好ましくはアルキル基、置換基を有してもよいアリール基及び置換基を有してもよいヘテロアリール基から構成される群より選択される基を表す。
【0064】
アルキル基としては、直鎖状でも分岐状でもよい、例えば炭素数1〜30のアルキル基、好ましくは炭素数1〜20のアルキル基、より好ましくは炭素数1〜10のアルキル基が挙げられ、具体的にはメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、2−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、2−ペンチル基、3−ペンチル基、tert−ペンチル基、2−メチルブチル基、3−メチルブチル基、2−メチルブタン−3−イル基、2,2−ジメチルプロピル基、n−ヘキシル基、2−ヘキシル基、3−ヘキシル基、tert−ヘキシル基、2−メチルペンチル基、3−メチルペンチル基、4−メチルペンチル基、2−メチルペンタン−3−イル基、2−メチルペンタン−4−イル基、3−メチルペンタン−2−イル基、3−メチルペンタン−3−イル基、2,2−ジメチルブチル基、3,3−ジメチルブチル基、2,2−ジメチルブタン−3−イル基、シクロヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基及びn−デシル基等が挙げられ、好ましい具体例としてはメチル基及びエチル基が挙げられる。
【0065】
シクロアルキル基としては、例えば炭素数3〜8、好ましくは炭素数5〜7の飽和又は不飽和の単環式、多環式のシクロアルキル基が挙げられる。例えばシクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、1−アダマンチル基、2−アダマンチル基等が挙げられ、好ましくはシクロペンチル基、シクロヘキシル基が挙げられる。
【0066】
アルケニル基としては、直鎖状でも分岐状でも又は環状でもよい、例えば炭素数2〜20のアルケニル基、好ましくは炭素数2〜14のアルケニル基、より好ましくは炭素数2〜8のアルケニル基が挙げられ、具体的にはビニル基、1−プロペニル基、2−プロペニル基、アリル基、1−シクロヘキセニル基、1−スチリル基及び2−スチリル基等が挙げられる。
【0067】
アリール基としては、例えば炭素数6〜18のアリール基、好ましくは炭素数6〜14のアリール基、より好ましくは炭素数6〜10のアリール基が挙げられ、具体的にはフェニル基、1−ナフチル基及び2−ナフチル基等が挙げられ、好ましい具体例としてはフェニル基が挙げられる。
【0068】
ヘテロアリール基としては、窒素原子、酸素原子及び硫黄原子からなる群より選ばれるヘテロ原子を1〜4個有する5〜6員環の芳香族複素環及び、該芳香族複素環が前記アリール基によって縮環されることで生じる多環芳香族複素環由来のヘテロアリール基が挙げられ、具体的には2−フリル基、3−フリル基、2−チエニル基、3−チエニル基、2−ベンゾフリル基、3−ベンゾフリル基、2−ベンゾチエニル基及び3−ベンゾチエニル基等が挙げられ、好ましい具体例としては2−フリル基が挙げられる。
【0069】
アラルキル基としては、前記アルキル基の少なくとも一つの水素原子が前記アリール基によって置換されたアラルキル基及び、前記環状アルキル基が前記アリール基によって縮環されることで生じる多環アラルキル基が挙げられ、具体的にはベンジル基、1−フェニルエチル基、2−フェニルエチル基、1−フェニルプロピル基、2−フェニルプロピル基、3−フェニルプロピル基、1−フェニル−2−プロピル基、2−フェニル−2−プロピル基、1−インダニル基、2−インダニル基及び9−フルオレニル基等が挙げられる。
【0070】
R
11〜R
13は互いに結合して、置換基を有してもよい環を形成してもよい。このような環の具体例としては、ホスホラン環、ホスホール環、ホスフィナン環及びホスフィニン環等が挙げられる。
【0071】
R
11〜R
13におけるアルケニル基、アリール基、ヘテロアリール基及びアラルキル基及び、R
11〜R
13が互いに結合して形成する環が有してもよい置換基としては、アルキル基、ハロゲノアルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロアリール基、アラルキル基、水酸基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、カルボキシル基、アミノ基、スルホ基及びハロゲノ基等が挙げられる。これらの置換基の内、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロアリール基及びアラルキル基は、R
11〜R
13の詳細な説明における基と同様である。
【0072】
ハロゲノアルキル基としては、前記アルキル基の少なくとも一つの水素原子がハロゲン原子によって置換された基が挙げられ、具体的にはトリフルオロメチル基及びn−ノナフルオロブチル基等が挙げられ、好ましい具体例としてはトリフルオロメチル基が挙げられる。
【0073】
アルコキシ基としては、例えば炭素数1〜10のアルコキシ基、好ましくは炭素数1〜4のアルコキシ基が挙げられ、具体的にはメトキシ基、エトキシ基、1−プロポキシ基、2−プロポキシ基、1−ブトキシ基、2−ブトキシ基及びtert−ブトキシ基等が挙げられ、好ましい具体例としてはメトキシ基が挙げられる。
【0074】
アルコキシカルボニル基としては、具体的にはメトキシカルボニル基等が挙げられる。
【0075】
アミノ基としては、具体的にはジメチルアミノ基及び4−モルホリニル基等が挙げられる。
【0076】
ハロゲノ基としては、具体的にはフルオロ基、クロロ基、ブロモ基及びヨード基が挙げられ、好ましくはフルオロ基及びクロロ基が挙げられる。
【0077】
一般式(9)で表される3級ホスフィンの好ましい具体例としては、トリメチルホスフィン、トリエチルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリス(4−トリフルオロメチルフェニル)ホスフィン、トリス(4−メトキシフェニル)ホスフィン及びトリス(2−フリル)ホスフィン等が挙げられる。より好ましくはトリフェニルホスフィンが挙げられる。
【0078】
一般式(5)中の各置換基の記号の意味は前述と同じ意味を表す。
一般式(5)で表されるルテニウム錯体の製造に用いる際には、一般式(3)で表されるN,N−ビス(2−ジアルキルホスフィノエチル)アミン−ボラン錯体のボランを解離させる必要がある。一般式(5)で表されるルテニウム錯体の製造の際に、反応系内でボランを解離させながら錯体化反応に用いてもよい。好ましくは、反応系内でボランを解離させながら錯体化反応することが好ましい。ボランの解離には解離剤を併用することが好ましく、ボランの解離剤としては、一般に使用される解離剤であれば錯体化に影響を及ぼさなければいかなる解離剤でも良いが、好ましくはアミン類が挙げられる。
【0079】
アミン類としては、具体的にはジエチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−ブチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、N,N−ジメチルアニリン、4−ジメチルアミノピリジン、ピロリジン、ピペリジン、N−メチルモルホリン、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ−5−エン(DBN)及び1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン(DBU)、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン(TMEDA)、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)等が挙げられ、好ましくはジエチルアミンN,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン(TMEDA)、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]−オクタン(DABCO)、より好ましくは1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)が挙げられる。
【0080】
アミン類の使用量は特に限定されるものではないが、一般式(4)で表される化合物に対して、通常0.5〜30当量、好ましくは0.7〜20当量、より好ましくは0.8〜10当量の範囲から適宜選択される。なお、本反応においてアミン類の添加方法は特に限定されるものではないが、一般式(3)で表される化合物と塩基を各々単独に添加してもよく、一般式(3)で表される化合物と塩基(及び溶媒)の混合物として添加してもよい。
【0081】
本反応は溶媒の存在下で実施することが望ましい。溶媒は、具体的にはn−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、n−デカン、シクロヘキサン及びデカリン等の脂肪族炭化水素類、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、p−シメン及び1,4−ジイソプロピルベンゼン等の芳香族炭化水素類、クロロベンゼン及びo−ジクロロベンゼン等のハロゲン化芳香族炭化水素類、メタノール、エタノール、2−プロパノール、n−ブタノール、tert−ブタノール、2−メチル−2−ブタノール及び2−エトキシエタノール等のアルコール類、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,2−プロパンジオール及びグリセリン等の多価アルコール類、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、tert−ブチルメチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル、ジメトキシエタン、エチレングリコールジエチルエーテル、テトラヒドロフラン及び1,4−ジオキサン等のエーテル類、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−ブチル及びプロピオン酸メチル等のエステル類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン及びシクロヘキサノン等のケトン類、トリエチルアミン、アニリン及びフェネチルアミン等のアミン類、ホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド及びN,N−ジメチルアセトアミド等のアミド類、アセトニトリル、マロノニトリル及びベンゾニトリル等のニトリル類、ジメチルスルホキシド等のスルホキシド類、及び水等が挙げられ、好ましい具体例としてはトルエン、キシレン、メシチレン等の芳香族炭化水素類、クロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン等のハロゲン化芳香族炭化水素類が挙げられ、より好ましくはトルエン、キシレン、メシチレン等の芳香族炭化水素類、が挙げられる。これらの溶媒は、各々単独で用いても2種以上適宜組み合わせて用いてもよい。
【0082】
溶媒の使用量は特に限定されるものではないが、一般式(4)で表される化合物に対して通常0.5〜100倍容量、好ましくは1〜50倍容量、より好ましくは2〜40倍容量の範囲から適宜選択される。
【0083】
本反応は不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましい。不活性ガスとしては、具体的にはアルゴンガス及び窒素ガス等が挙げられる。
【0084】
反応温度は、通常0〜250℃、好ましくは10〜200℃、より好ましくは20〜180℃の範囲から適宜選択される。
【0085】
反応時間は、アミン類、溶媒及び反応温度その他の条件によって自ずから異なるが、通常1分〜48時間、好ましくは5分〜24時間、より好ましくは10分〜15時間の範囲から適宜選択される。
【0086】
このようにして得られた一般式(5)で表されるルテニウム錯体は、必要に応じて後処理、単離及び精製を行うことができる。後処理の方法としては例えば、濃縮、溶媒置換、洗浄、抽出、逆抽出、濾過、貧溶媒の添加による晶析等が挙げられ、これらを単独で或いは併用して行うことができる。
【実施例】
【0087】
以下に実施例を示し、本発明についてさらに詳しく説明する。ただし、本発明は以下の実施例によって限定されるものではない。
1)プロトン核磁気共鳴分光法(
1H NMR):Varian Mercury plus 300型装置(共鳴周波数:300MHz、バリアン社製)又は、400MR DD2型装置(共鳴周波数:400MHz、アジレント社製)
内部標準物質:テトラメチルシラン(0ppm(singletピーク))又は残留軽溶媒(、ジクロロメタン:5.32ppm(tripletピーク)、クロロホルム:7.26ppm(singletピーク))
2)炭素13核磁気共鳴分光法(
13C NMR):Varian Mercury plus 300型装置(共鳴周波数:75MHz、バリアン社製)又は、400MR DD2型装置(共鳴周波数:100MHz、アジレント社製)
内部標準物質:クロロホルム(77ppm(tripletピーク))
3)リン31核磁気共鳴分光法(
31P NMR):Varian Mercury plus 300型装置(共鳴周波数:121MHz、バリアン社製)又は、400MR DD2型装置(共鳴周波数:161MHz、アジレント社製)
外部標準物質:重水中リン酸(0ppm(singletピーク))
(実施例1) N,N−ビス[2−(ジシクロヘキシルホスフィノ)エチル]アミン−ビスボラン錯体の合成
【0088】
【化12】
【0089】
第1工程:3−(2−クロロエチル)−2−オキサゾリジノンの合成
【0090】
【化13】
【0091】
(仕込み・反応)500mL四つ口丸底フラスコにマグネティックススターラーバー、温度計及び三方コックを取り付け、内部を窒素置換し、N,N−ビス(クロロエチル)アミン塩酸塩(40.0g、224mmol、1.0当量)、メタノール(MeOH)(120mL)及びトリエチルアミン(Et
3N)(47.6g、471mmol、2.1当量)を順次仕込んだ。得られた溶液に、二酸化炭素(CO
2)ガスを20−30℃で30分間通気した。
(後処理・単離・精製)反応液を減圧下濃縮後、トルエン(120mL)を加えて減圧下濃縮した。さらにトルエン(120mL)を加えて減圧下濃縮を行い、メタノールを十分に除いた後、再度トルエン(120mL)を加えた。得られた白色懸濁液を吸引濾過し、残渣をトルエンで洗浄した。濾液を減圧下濃縮し、残渣を蒸留精製(沸点:145℃(5mmHg))することで、表題化合物が薄黄色液体として30.7g得られた。単離収率は91.6%であった。
1H NMR(300MHz,重クロロホルム(CDCl
3)):δ=4.38(ddd,J=0.9,6.3,7.8Hz,2H),3.79−3.67(m,4H),3.66−3.59(m,2H).
13C NMR(75MHz,CDCl
3):δ=158.38,62.01,46.19,45.70,42.03.
第2工程:ジシクロヘキシルホスフィン−ボラン錯体の合成
【0092】
【化14】
【0093】
(仕込み・反応)1L四つ口丸底フラスコにマグネティックススターラーバー、温度計及び三方コックを取り付け、内部を窒素置換し、ボラン−テトラヒドロフラン溶液(BH
3−THF溶液、濃度:0.9mol/L、212mL、191mmol、1.05当量)を仕込み、氷水浴にて5℃に冷却した。続いて、ジシクロヘキシルホスフィン(36.0g、182mmol、1.0当量)をシリンジにて、内温が10℃以下を維持するよう30分間かけて滴下した。
(後処理・単離・精製)反応液に水(0.7mL、0.2当量)を加えてクエンチし、減圧下濃縮した。続いてトルエン(288mL)及び水(216mL)を加え、撹拌した後に静置して、水層を分離した。有機層を減圧下濃縮後、脱水テトラヒドロフラン(144mL)を加え、表題化合物のテトラヒドロフラン溶液が得られた。
31P NMR(161MHz,テトラヒドロフラン):δ=18.6−17.8(m)
第3工程:N,N−ビス[2−(ジシクロヘキシルホスフィノ)エチル]アミン−ビスボラン錯体の合成
【0094】
【化15】
【0095】
(仕込み・反応)1L四つ口丸底フラスコにマグネティックススターラーバー、温度計、滴下漏斗及び三方コックを取り付け、内部を窒素置換し、ジシクロヘキシルホスフィン−ボラン錯体のテトラヒドロフラン溶液(182mmol、1.0当量)を仕込み、氷水浴にて5℃に冷却した。続いて、n−ブチルリチウム(n−BuLi)のn−ヘキサン溶液(濃度:1.60mol/L、108mL、173mmol、0.95当量)を滴下漏斗に仕込み、内温が10℃以下を保つ速度で30分かけて溶液に滴下した。氷水浴を取り去って20℃まで戻した後、3−(2−クロロエチル)−2−オキサゾリジノン(12.2g、81.7mmol、0.45当量)及び脱水テトラヒドロフラン(36.0mL)を滴下漏斗に仕込み、内温が25℃以下を保つ速度で30分かけて滴下し、室温で2時間撹拌した。
(後処理・単離・精製)反応液を減圧下濃縮後、トルエン(288mL)及び水(360mL)を加え、撹拌した後に静置して水層を分離した。有機層を水(108mL)で再度洗浄し、減圧下濃縮した。得られた粗製物をNMRにて分析したところ、BH
3が2つの錯体(ビスボラン錯体)とBH
3が3つの錯体(トリスボラン錯体)の85/15の混合物であった。得られた粗製物をトルエンから再結晶することで、表題化合物が白色粉末として14.1g得られた。単離収率:69.8%。
1H NMR(400MHz,重クロロホルム(CDCl
3)):δ=2.87−2.81(m,4H),1.90−1.68(m,28H),1.38−1.21(m,20H).
31P NMR(161MHz,重クロロホルム(CDCl
3)):δ=22.5(d,J=64.2Hz,2P)
(参考例1)N,N−ビス[2−(ジシクロヘキシルホスフィノ)エチル]アミン−トリスボラン錯体の合成
【0096】
【化16】
【0097】
(仕込み・反応)100mL四つ口丸底フラスコにマグネティックススターラーバー、温度計及び三方コックを取り付け、内部を窒素置換し、N,N−ビス[2−(ジシクロヘキシルホスフィノ)エチル]アミン−ビスボラン錯体(10.0g、20.3mmol、1.0当量)及びテトラヒドロフラン(20mL)を仕込み、氷水浴にて5℃に冷却した。続いて、ボラン−テトラヒドロフラン溶液(BH
3−THF溶液、濃度:0.9mol/L、24.8mL、22.3mmol、1.1当量)をシリンジにて、内温が10℃以下を維持するよう30分間かけて滴下した。
(後処理・単離・精製)反応液を減圧下濃縮し、トルエン(50mL)及び水(25mL)を加え、撹拌した後に静置して、水層を分離した。有機層を水(20mL)で再度洗浄し、減圧下濃縮した。得られた残渣をトルエンから再結晶することで、表題化合物が白色粉末として6.1g得られた。単離収率:58.8%
1H NMR(400MHz,重クロロホルム(CDCl
3)):δ=4.49(br s,1H),2.99−2.90(m,4H),2.36−2.04(m,4H),1.86−1.70(m,24H),1.43−1.24(m,20H).
31P NMR(161MHz,重クロロホルム(CDCl
3)):δ=22.8(d,J=49.6Hz,2P)
(実施例2) カルボニルクロロヒドリド{ビス[2−(ジシクロヘキシルホスフィノ)エチル]アミン}ルテニウム(II)の合成
【0098】
【化17】
【0099】
(仕込み・反応)50mL四つ口丸底フラスコにマグネティックススターラーバー、温度計、冷却管及び三方コックを取り付け、内部を窒素置換し、カルボニルクロロヒドリドトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム(II)(RuHCl(CO)(PPh
3)
3)(2.00g、2.10mmol、1.0当量)、N,N−ビス[2−(ジシクロヘキシルホスフィノ)エチル]アミン−ビスボラン錯体(1.14g、2.31mmol、1.1当量)及び1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)(705mg、6.29mmol、3.0当量)及びトルエン(20mL)を順次仕込み、還流下で1時間撹拌した。
(後処理・単離・精製)反応後に得られた懸濁液を吸引濾過した後、濾取した結晶をトルエン(20mL)で洗浄し、減圧下加熱乾燥することで、表題化合物が淡黄色粉末として1.40g得られた。単離収率:100%。
1H NMR(400MHz,重塩化メチレン(CD
2Cl
2)):
図1を参照
31P NMR(161MHz,重塩化メチレン(CD
2Cl
2)):δ=65.5−65.0(m,2P)
(実施例3) カルボニルクロロヒドリド{ビス[2−(ジシクロヘキシルホスフィノ)エチル]アミン}ルテニウム(II)の合成
【0100】
【化18】
【0101】
上記実施例2と同様にして、カルボニルクロロヒドリドトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム(II)(RuHCl(CO)(PPh
3)
3)(2.00g、2.10mmol、1.0当量)、N,N−ビス[2−(ジシクロヘキシルホスフィノ)エチル]アミン−ビスボラン錯体(0.85g、1.72mmol、0.82当量)とN,N−ビス[2−(ジシクロヘキシルホスフィノ)エチル]アミン−トリスボラン錯体(0.29g、0.57mmol、0.27当量)の混合物及び1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)(705mg、6.29mmol、3.0当量)から、表題化合物が淡黄色粉末として1.40g得られた。単離収率:100%
(実施例4) N,N−ビス[2−(ビスtert−ブチルホスフィノ)エチル]アミン−ジボラン錯体の合成
【0102】
【化19】
【0103】
第4−1工程:ビスtert−ブチルホスフィン−ボラン錯体の合成
【0104】
【化20】
【0105】
(仕込み・反応)100L四つ口丸底フラスコにマグネティックススターラーバー、温度計及び三方コックを取り付け、内部を窒素置換し、ボラン−テトラヒドロフラン溶液(BH
3−THF溶液、濃度:0.9mol/L、21.2mL、19.1mmol、1.05当量)を仕込み、氷水浴にて5℃に冷却した。続いて、ビスtert−ブチルホスフィン(2.66g、18.2mmol、1.0当量)をシリンジにて、内温が10℃以下を維持するよう30分間かけて滴下した。
(後処理・単離・精製)反応液に水(0.2mL)を加えてクエンチし、反応液を減圧下濃縮後、酢酸エチル(30mL)及び水(10mL)を加え、撹拌した後に静置して水層を分離した。水層を酢酸エチル(10mL×2回)で再度抽出し、合わせた有機相をMgSO
4を用いて乾燥したのちにろ過し、ろ液を減圧下濃縮した。得られた粗製物をシリカゲルカラムにより精製することで、表題化合物が白色粉末として2.62g得られた。単離収率:90.0%。
第4−2,3工程:N,N−ビス[2−(ビスtert−ブチルホスフィノ)エチル]アミン−ジボラン錯体の合成
【0106】
【化21】
【0107】
(仕込み・反応)100mL四つ口丸底フラスコにマグネティックススターラーバー、温度計、滴下漏斗及び三方コックを取り付け、内部を窒素置換し、ビスtert−ブチルホスフィン−ボラン錯体1.95g(12.18mmol、1.0当量)、脱水テトラヒドロフラン(10.0mL)を仕込み、氷水浴にて5℃に冷却した。続いて、n−ブチルリチウム(n−BuLi)のn−ヘキサン溶液(濃度:1.64mol/L、7.06mL、11.57mmol、0.95当量)を滴下漏斗に仕込み、内温が10℃以下を保つ速度で30分かけて溶液に滴下した。氷水浴を取り去って20℃まで戻した後、3−(2−クロロエチル)−2−オキサゾリジノン(0.82g、5.48mmol、0.45当量)及び脱水テトラヒドロフラン(2.5mL)を滴下漏斗に仕込み、内温が25℃以下を保つ速度で30分かけて滴下し、室温で2時間撹拌した。
(後処理・単離・精製)反応液を減圧下濃縮後、酢酸エチル(50mL)及び水(30mL)を加え、撹拌した後に静置して水層を分離した。水層を酢酸エチル(10mL×2回)で再度抽出し、合わせた有機相をMgSO
4を用いて乾燥したのちにろ過し、ろ液を減圧下濃縮した。得られた粗製物をシリカゲルカラムにより精製することで、表題化合物が白色粉末として1.64g得られた。単離収率:77.0%。
1H NMR(400MHz,重クロロホルム(CDCl
3)):δ=2.98−2.92(m,4H),1.86−1.79(m,4H),1.26(d,36H).
31P NMR(161MHz,重クロロホルム(CDCl
3)):δ=40.7(d,J=67.1Hz,2P)
第4−4工程:カルボニルクロロヒドリド{ビス[2−(ビスtert−ブチルホスフィノ)エチル]アミン}ルテニウム(II)の合成
【0108】
【化22】
【0109】
(仕込み・反応)50mLシュレンク管にマグネティックススターラーバー、冷却管を取り付け、内部を窒素置換し、カルボニルクロロヒドリドトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム(II)(RuHCl(CO)(PPh
3)
3)(1.67g、1.75mmol、1.0当量)、N,N−ビス[2−(ビスtert−ブチルホスフィノ)エチル]アミン−ジボラン錯体(0.75g、1.93mmol、1.1当量)及び1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)(590mg、5.25mmol、3.0当量)及びトルエン(15mL)を順次仕込み、還流下で1時間撹拌した。
(後処理・単離・精製)反応後に得られた懸濁液を吸引濾過した後、濾取した結晶をトルエン(15mL)で洗浄し、減圧下加熱乾燥することで、表題化合物が灰色粉末として0.74g得られた。単離収率:80.4%。
1H NMR(400MHz,重塩化メチレン(CD
2Cl
2)):
図2を参照
31P NMR(161MHz,重塩化メチレン(CD
2Cl
2)):δ=86.6−86.2(m,2P)
(実施例5) N,N−ビス[2−(ビスイソプロピルホスフィノ)エチル]アミン−ジボラン錯体の合成
【0110】
【化23】
【0111】
第5−1工程:ビスイソプロピルホスフィンの合成
【0112】
【化24】
【0113】
(仕込み・反応)
300mL四つ口丸底フラスコにマグネティックススターラーバー、温度計及び三方コックを取り付け、内部を窒素置換し、ビスイソプロピルホスフィンクロリド(5.0g、32.8mmol、1.0当量)、ジエチルエーテル(25mL)を仕込み氷水浴にて5℃に冷却した。続いて、LiAlH
4エーテル溶液(濃度:1.0mol/L、32.8mL、32.8mmol、1.0当量)を内温が10℃以下を維持するよう30分間かけて滴下した。
(後処理・単離・精製)反応液に水(6.0mL)を加えてクエンチし、MgSO
4を用いて反応液を乾燥したのちにろ過し、ろ液を減圧下濃縮することにより、ビスイソプロピルホスフィンが3.0g得られた。(収率77.5%)
第5−2工程:ビスイソプロピルホスフィン−ボラン錯体の合成
【0114】
【化25】
【0115】
(仕込み・反応)
300mL四つ口丸底フラスコにマグネティックススターラーバー、温度計及び三方コックを取り付け、内部を窒素置換し、ボラン−テトラヒドロフラン溶液(BH
3−THF溶液、濃度:0.9mol/L、100mL、90mmol、3.5当量)を仕込み、氷水浴にて5℃に冷却した。続いて、ビスイソプロピルホスフィン(3.0g、25.4mmol、1.0当量)をシリンジにて、内温が10℃以下を維持するよう30分間かけて滴下した。
(後処理・単離・精製)反応液に水(0.2mL)を加えてクエンチし、反応液を減圧下濃縮後、酢酸エチル(50mL)及び水(10mL)を加え、撹拌した後に静置して水層を分離した。水層を酢酸エチル(20mL×2回)で再度抽出し、合わせた有機相をMgSO
4を用いて乾燥したのちにろ過し、ろ液を減圧下濃縮した。得られた粗製物をシリカゲルカラムにより精製することで、表題化合物が無色液体として1.0g得られた。単離収率:24.6%。
31P NMR(161MHz,重クロロホルム):δ=27.4−26.5(m)
第5−3,4工程:N,N−ビス[2−(ビスイソプロピルホスフィノ)エチル]アミン−ジボラン錯体の合成
【0116】
【化26】
【0117】
(仕込み・反応)100mL四つ口丸底フラスコにマグネティックススターラーバー、温度計、滴下漏斗及び三方コックを取り付け、内部を窒素置換し、ビスイソプロピルビスイソプロピルホスフィン−ボラン錯体(1.2g、9.1mmol、1.0当量)、脱水テトラヒドロフラン(10mL)を仕込み、氷水浴にて5℃に冷却した。続いて、n−ブチルリチウム(n−BuLi)のn−ヘキサン溶液(濃度:1.64mol/L、5.27mL、8.64mmol、0.95当量)を滴下漏斗に仕込み、内温が10℃以下を保つ速度で30分かけて溶液に滴下した。氷水浴を取り去って20℃まで戻した後、3−(2−クロロエチル)−2−オキサゾリジノン(0.61g、4.09mmol、0.45当量)及び脱水テトラヒドロフラン(2.5mL)を滴下漏斗に仕込み、内温が25℃以下を保つ速度で30分かけて滴下し、室温で2時間撹拌した。
(後処理・単離・精製)反応液を減圧下濃縮後、酢酸エチル(50mL)及び水(30mL)を加え、撹拌した後に静置して水層を分離した。水層を酢酸エチル(10mL×2回)で再度抽出し、合わせた有機相をMgSO
4を用いて乾燥したのちにろ過し、ろ液を減圧下濃縮した。得られた粗製物をシリカゲルカラムにより精製することで、表題化合物が白色粉末として0.1g得られた。単離収率:8.0%。
1H NMR(400MHz,重クロロホルム(CDCl
3)):δ=3.50−3.40(m,4H),2.10−2.00(m,4H),1.90−1.92(m,4H),1.28−1.18(m,24H).
31P NMR(161MHz,重クロロホルム(CDCl
3)):δ=30.2(d,J=68.6Hz,2P)
第5−5工程:カルボニルクロロヒドリド{ビス[2−(ビスイソプロピルホスフィノ)エチル]アミン}ルテニウム(II)の合成
【0118】
【化27】
【0119】
(仕込み・反応)50mLシュレンク管にマグネティックススターラーバー、冷却管を取り付け、内部を窒素置換し、カルボニルクロロヒドリドトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム(II)(RuHCl(CO)(PPh
3)
3)(0.285g、0.30mmol、1.0当量)、N,N−ビス[2−(ジシクロヘキシルホスフィノ)エチル]アミン−ジボラン錯体(0.1g、0.30mmol、1.0当量)及び1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)(168mg、1.50mmol、5.0当量)及びトルエン(3mL)を順次仕込み、還流下で1時間撹拌した。
(後処理・単離・精製)反応後に得られた懸濁液を吸引濾過した後、濾取した結晶をトルエン(20mL)で洗浄し、減圧下加熱乾燥することで、表題化合物が淡黄色粉末として21mg得られた。単離収率:15%。
1H NMR(400MHz,重塩化メチレン(CD
2Cl
2)):δ=3.42(br,1H),3.33−3.15(m,2H),2.70−2.62(m,2H),2.36−2.20(m,4H),1.84−1.72(m,4H),1.49−1.01(m,24H),−16.30(t,J=18.0Hz,1H)
31P NMR(161MHz,重塩化メチレン(CD
2Cl
2)):75.1(s,2P)