【実施例】
【0015】
図1は、実施例に係る加工装置の全体を示す概略構成図であって、ベース10の上面に一対のガイドレール12,12(一方のみ図示)が平行に配設され、このガイドレール12,12に装置本体14が摺動走行可能に載架されている。また装置本体14の前方に臨むベース10上には、鋼管16の端面を装置本体14に対向した状態で該鋼管16を保持する保持装置18が配置される。そして装置本体14は、保持装置18で保持された鋼管16に対し、図示しない制御手段によって駆動制御される例えばサーボモータにより正逆回転されるネジ軸とナットの組合わせ等からなる移動手段20によって、該鋼管16の中心軸線方向に移動して、後述する回転盤22を鋼管端面に近接・離間移動し得るよう構成される。また移動手段20は、サーボモータに設けたエンコーダ等の位置検出手段(図示せず)によって、鋼管16に対する装置本体14(後述する加工手段としてのチップ38a,52aや倣いローラ42,54の位置を)を検出し得るよう構成されて、制御手段は、位置検出手段による位置検出に基づいて、後述する回転盤22の回転速度を可変速制御し得るよう構成される。
【0016】
前記装置本体14の内部には、前記ガイドレール12と平行に主軸(図示せず)が回転可能に枢支され、該主軸の本体前面に突出する軸端に円形の回転盤22が一体的に回転するように配設されている。主軸には、ギヤやベルト等からなる伝達系(図示せず)を介して駆動モータ(駆動手段)24が接続され、該駆動モータ24を前記制御手段によって駆動制御することにより、主軸および回転盤22が一体的に回転するよう構成される。なお、回転盤22に対して前記鋼管16は、その軸心を回転盤22の回転中心に一致した状態で位置決めされる。実施例では、主軸が回転盤22の回転軸となる。なお、実施例では、保持装置18で保持された鋼管16に対する回転盤22の近接移動を前進移動、鋼管16に対する回転盤22の離間移動を後退移動と指称する場合がある。
【0017】
前記回転盤22の前面には、
図2に示す如く、2基の刃物台26,28の夫々が、回転盤22の回転中心C
0を通って径方向に延在する基準線Lに沿って移動可能に配設されている。なお、2基の刃物台26,28に関連する基本的な構成は同一であるので、
図2において回転盤22の回転中心C
0より上側に配設される第1刃物台26に関する構成について説明し、下側の第2刃物台28に関する同一部材には同じ符号を付して示すこととする。
【0018】
前記回転盤22には、2本のガイド30,30が、前記基準線Lと直交する方向に離間して該基準線Lと平行に設けられ、両ガイド30,30に沿って第1刃物台26が摺動可能で、かつ複数(実施例では4個)の固定手段としてのボルト32により任意の位置で回転盤22に直接位置決め固定可能に構成されている。なお、図示しないが、回転盤22の前面に、ガイド30の延在方向に所定間隔で目盛が付されたスケールが配設されており、作業者は、第1刃物台26を鋼管16の管径に応じた任意の目盛に合わせることで、該第1刃物台26の位置調整を簡単に行い得るようになっている。
【0019】
前記第1刃物台26には、前記主軸と平行に支持軸34が前方に向けて突設され、該支持軸34に揺動部材(作動手段)36が揺動可能に支持されている。この揺動部材36の支持軸34を挟んで、該支持軸34の径方向の一方(回転盤22の回転中心C
0に近接する側)に延出する第1腕部36aに、前記鋼管16の外端部に面取り加工を施す第1チップ(外端部用の加工手段)38aが取付けられた第1バイト38が着脱交換自在に装着される(
図3参照)。また、第1腕部36aには、前記支持軸34(主軸)と平行な保持軸40が前方に向けて突設されており、該保持軸40に第1倣いローラ(外端部用の倣いローラ)42が回動可能に配設してある。すなわち、揺動部材36は、回転盤22の回転軸(主軸)と平行な軸回りに揺動可能に第1刃物台26(回転盤22)に支持されると共に、第1倣いローラ42は、回転盤22の回転軸(主軸)と平行な軸回りに回動可能に揺動部材36に配設される。
【0020】
前記第1刃物台26に配設される第1倣いローラ42および第1チップ38aは、第1倣いローラ42を鋼管16の外周面から離間する方向に揺動部材36が揺動することで、第1チップ38aが鋼管16の外端部から離間する方向に移動し、第1倣いローラ42を鋼管16の外周面に当接する方向に揺動部材36が揺動することで、第1チップ38aが鋼管16の外端部に近接する方向に移動する関係となっている。
【0021】
前記第1倣いローラ42は、
図3に示す如く、外周面が等径の倣い面42aと、該倣い面42aに連続して前端に向けて直径が徐々に小さくなる案内面42bとが形成され、前記第1チップ38aによる面取り加工(加工)に際し、前記倣い面42aが前記鋼管16の外周面に当接するよう構成される。前記揺動部材36に対して第1倣いローラ42は、前記回転盤22を鋼管16の端面に向けて近接する方向において第1チップ38aより前側に配置され、回転盤22を前進移動する際には、鋼管16に対して先に第1倣いローラ42が当接し、該第1倣いローラ42の倣い面42aが鋼管16の外周面に当接した以後に、第1チップ38aが加工部である鋼管16の外端部に押し付けられるよう構成される。すなわち、倣い面42aが鋼管16の外周面に当接した倣い状態で前記回転盤22を回転することで、第1チップ38aが、鋼管16の中心軸線回りに旋回して外端部を面取り加工するようになっている。なお、第1倣いローラ42の案内面42bは、回転盤22を鋼管16の端面に近接移動する際に、前記倣い面42aを外周面に案内するべく機能する。
【0022】
図2、
図5に示す如く、前記第1刃物台26に支持した前記揺動部材36の重心位置M
1は、該揺動部材36の揺動中心C
1を挟んで前記第1倣いローラ42の配設側とは反対側に位置し、面取り加工するために前記回転盤22を所要方向(実施例では
図2における時計回り)に回転した際に揺動部材36に発生する遠心力が、第1倣いローラ42を鋼管16の外周面に当接する方向に揺動部材36を揺動するように作用するよう構成される。すなわち、揺動部材36は、回転盤22の回転に伴う遠心力により、第1倣いローラ42を鋼管16の外周面に当接する方向に移動させる作動手段として機能する。
【0023】
図2に示す如く、前記揺動部材36における支持軸34を挟んで第1腕部36aと反対方向に延出する第2腕部36bに可動側支持部材44が配設されると共に、前記第1刃物台26には、該可動側支持部材44から離間する位置に固定側支持部材46が配設されている。そして、両支持部材44,46間に、付勢手段としての第1圧縮コイルバネ(外端部用の付勢手段)48が弾力的に介装されている。この第1圧縮コイルバネ48は、揺動部材36を、前記第1倣いローラ42が鋼管16の外周面から径方向に離間する方向(
図2、
図5の反時計回り)に前記支持軸34を中心として揺動するように付勢するべく機能する。
【0024】
前記第1刃物台26の前面には、後述する加工時回転速度RAで回転盤22を回転した際に発生する遠心力によって第1圧縮コイルバネ48の付勢力に抗して
図2における時計回りに揺動する揺動部材36の第1腕部36aが当接可能な位置にストッパ50が配設され、該ストッパ50によって揺動部材36の揺動角度を規制するよう構成される。実施例では、ストッパ50に第1腕部36aが当接した状態で、前記第1倣いローラ42の案内面42bが、前記保持装置18に保持されている鋼管16の外端縁に当接し得る位置に臨むよう構成される(
図6(a)参照)。すなわち、加工装置による面取り加工の開始時に、回転盤22を鋼管16の端面に近接するように前進移動する際には、鋼管16の外端縁に第1倣いローラ42の案内面42bが当接し、更に回転盤22が前進移動することで揺動部材36が揺動して、第1倣いローラ42の倣い面42aが鋼管16の外周面に至るように案内される(
図6(b)参照)。また、第1刃物台26には、第1圧縮コイルバネ48の付勢力によって
図2における反時計回りに揺動される揺動部材36の第1腕部36aが当接可能な位置に規制部材51が配設され、第1腕部36aを規制部材51に当接することで第1倣いローラ42を、倣い面42aが鋼管16の外周面から離間した位置に位置規制するよう構成される(
図6(d)参照)。
【0025】
ここで、前記加工装置において、面取り加工時における回転盤22の加工時回転速度をRA、加工時回転速度RAで回転盤22を回転した場合に、第1倣いローラ42を鋼管16の外周面に当接する方向に揺動部材36を揺動するように作用する加工時遠心力をFA
1、前記第1圧縮コイルバネ48によって第1倣いローラ42を鋼管16の外周面から離間する付勢力をK
1とした場合に、加工時遠心力FA
1は、付勢力K
1より大きくなるよう構成される。また、加工時回転速度RAより低速の解除時回転速度をRB、該解除時回転速度RBで回転盤22を回転した際に、第1倣いローラ42を鋼管16の外周面に当接する方向に揺動部材36を揺動するように作用する解除時遠心力をFB
1とした場合に、該解除時遠心力FB
1は、付勢力K
1より小さくなるよう構成される。すなわち、回転盤22を加工時回転速度RAで回転した場合に第1倣いローラ42は、前記加工時遠心力FA
1が第1圧縮コイルバネ48の付勢力K
1より大きくなることで、第1倣いローラ42は加工時遠心力FA
1によって鋼管16の外周面に当接するように押し付けられる。これに対し、回転盤22を解除時回転速度RBで回転した場合に第1倣いローラ42は、解除時遠心力FB
1が第1圧縮コイルバネ48の付勢力K
1より小さくなることで、第1倣いローラ42は付勢力K
1によって鋼管16の外周面から離間される。実施例では、付勢力K
1、加工時遠心力FA
1、解除時遠心力FB
1は、FB
1<K
1<FA
1の関係に設定される。
【0026】
また、前記第1倣いローラ42の倣い面42aが鋼管16の外周面に当接した状態で、
図3に示すように、前記第1チップ38aは鋼管16における外端部に所要角度で当接して、該部位に面取り加工を施し得るよう設定される。そして、前記揺動部材36に対して第1チップ38aは、該チップ38aにより鋼管16の外端部に面取り加工を施す際に生ずる切削力が、揺動部材36を
図2において時計回り、すなわち第1倣いローラ42を鋼管16の外周面に押し付ける方向に付勢するように作用する位置に配設されている。これにより、面取り加工中に、第1倣いローラ42が鋼管16の外周面から離間して加工精度が低下するのは防止されるようになっている。
【0027】
次に、前記第2刃物台28に関連する構成につき、前記第1刃物台26に関連する構成とは異なる構成につき説明する。第2刃物台28に配設された揺動部材36の第1腕部36aに、前記鋼管16の内端部に面取り加工(加工)を施す第2チップ(内端部用の加工手段)52aが取付けられた第2バイト52が着脱交換自在に装着される。また、第1腕部36aに突設した保持軸40に回動可能に配設した第2倣いローラ54には、
図4に示す如く、第1倣いローラ42と同様の倣い面54aと案内面54bとが形成され、前記第2チップ52aによる面取り加工に際し、前記倣い面54aが前記鋼管16の外周面に当接すると共に、案内面54bによって倣い面54aを鋼管16の外周面に案内するよう構成される。
【0028】
前記第1刃物台26と同様の構成で第2刃物台28の揺動部材36の第2腕部36bに配設される付勢手段としての第2圧縮コイルバネ(内端部用の付勢手段)56は、揺動部材36を、前記第2倣いローラ54が鋼管16の外周面から径方向に離間する方向(
図2の反時計回り)に前記支持軸34を中心として揺動部材36を揺動するように付勢するべく機能する。また、第2刃物台28には、前記第1刃物台26に配設したストッパ50および規制部材51と同じ機能を有するストッパ50および規制部材51が配設されており、ストッパ50および規制部材51によって、揺動部材36の揺動角度を規制し得るよう構成される。
【0029】
前記第2倣いローラ54の倣い面54aが鋼管16の外周面に当接した状態で、
図4に示すように、前記第2チップ52aは鋼管16における内端部に所要角度で当接して、該部位に面取り加工を施し得るよう設定される。また前記揺動部材36に対して第2チップ52aは、該チップ52aにより鋼管16の内端部に面取り加工を施す際に生ずる切削力が、揺動部材36を
図2において時計回り、すなわち第2倣いローラ54を鋼管16の外周面に当接する方向に揺動するように作用する位置に配設されている。これにより、面取り加工中に、第2倣いローラ54が鋼管16の外周面から離間して加工精度が低下するのが防止されるようになっている。
【0030】
なお、前記第2刃物台28に配設される第2倣いローラ54と第2チップ52aとは、第2倣いローラ54を鋼管16の外周面から離間する方向に揺動部材36が揺動することで、第2チップ52aが鋼管16の内端部に近接する方向に移動し、第2倣いローラ54を鋼管16の外周面に当接する方向に揺動部材36が揺動することで、第2チップ52aが鋼管16の内端部から離間する方向に移動する関係となっている(
図6参照)。
【0031】
図2に示す如く、前記第2刃物台28に支持した揺動部材36の重心位置M
2は、該揺動部材36の揺動中心C
1を挟んで前記第2倣いローラ54の配設側とは反対側に位置し、面取り加工するために前記回転盤22を
図2における時計回りに回転した際に揺動部材36に発生する遠心力が、第2倣いローラ54を鋼管16の外周面に当接する方向に揺動部材36を揺動するように作用するよう構成される。すなわち、揺動部材36は、回転盤22の回転に伴う遠心力により、第2倣いローラ54を鋼管16の外周面に当接する方向に移動させる作動手段として機能する。そして、第2刃物台28において、加工装置による面取り加工時における回転盤22の加工時回転速度RA、加工時回転速度RAで回転盤22を回転した際に揺動部材36に生ずる加工時遠心力FA
2、前記第2圧縮コイルバネ56による付勢力K
2、解除時回転速度RB、該解除時回転速度RBで回転盤22を回転した際に揺動部材36に生ずる解除時遠心力FB
2の関係は、第1刃物台26に関連して説明したと同様である。すなわち、回転盤22を加工時回転速度RAで回転した場合に第2倣いローラ54は、加工時遠心力FA
2が第2圧縮コイルバネ56による付勢力K
2より大きくなることで、第2倣いローラ54は加工時遠心力FA
2によって鋼管16の外周面に当接するように押し付けられ、回転盤22を解除時回転速度RBで回転した場合に第2倣いローラ54は、解除時遠心力FB
2が第2圧縮コイルバネ56の付勢力K
2より小さくなることで、第2倣いローラ54は付勢力K
2によって鋼管16の外周面から離間される。また、付勢力K
2、加工時遠心力FA
2、解除時遠心力FB
2の関係は、第1刃物台26に関連して説明したと同様に、FB
2<K
2<FA
2に設定される。
【0032】
実施例の加工装置では、
図7に示す如く、面取り加工を行う場合に、前記制御手段は、前記保持装置18に保持されている鋼管16から離間する待機位置から装置本体14を前進移動して鋼管16に前記回転盤22を近接するよう前記移動手段20(サーボモータ)を制御し、前記各倣いローラ42,54が鋼管16に接触するまでの間に、該回転盤22の回転速度を加工時回転速度RAとなるように前記駆動モータ24を制御する。そして、前記チップ38a,52aでの鋼管16の外端部および内端部の面取り加工が完了した後、前記制御手段は、移動手段20(サーボモータ)を制御して装置本体14を後退移動して回転盤22を鋼管16から離間する際には、前記倣いローラ42,54が鋼管16の加工済みの外端部の加工面16aに至る前に、回転盤22の回転速度を解除時回転速度RBまで下げるように駆動モータ24を制御する。また、実施例の加工装置では、チップ38a,52aでの面取り加工が完了した後の回転盤22の後退移動に際して、鋼管16の内端部を面取り加工する第2チップ52aが鋼管16の端面より外方に至るまで(加工手段が鋼管の外部に抜けるまで)は、回転盤22の回転速度を加工時回転速度RAに維持し、その後に倣いローラ42,54が加工面16aに至る前に解除時回転速度RBまで下げるように駆動モータ24を制御手段で制御するよう構成される。なお、第2チップ52aが鋼管16の端面より外方に至るタイミングおよび倣いローラ42,54が加工面16aに至るタイミングは、前記移動手段20に設けた位置検出手段によって制御手段が認識する。
【0033】
〔実施例の作用〕
次に、前述のように構成された実施例の加工装置の作用につき、加工方法との関係で説明する。
【0034】
待機位置に位置する前記装置本体14において、前記保持装置18に保持された鋼管16の寸法に応じて、前記第1刃物台26および第2刃物台28を回転盤22に対して夫々位置調整し、ボルト固定する。このとき、前記各揺動部材36は、対応する圧縮コイルバネ48,56の付勢力K
1,K
2によって規制部材51に夫々当接した非押付け状態に保持されている。この非押付け状態において、各倣いローラ42,54の倣い面42a,54aは、加工対象となる鋼管16の外周面に対応する位置より径方向外方に位置決めされる。
【0035】
前記移動手段20により装置本体14および回転盤22を前進移動すると共に、前記駆動モータ24により回転盤22を回転駆動する。回転盤22の回転速度が前記解除時回転速度RBより上がると、前記圧縮コイルバネ48,56の付勢力K
1,K
2より、各揺動部材36を
図2における時計回りに揺動する遠心力が大きくなり、各揺動部材36は圧縮コイルバネ48,56の付勢力K
1,K
2に抗して時計回りに揺動して、各第1腕部36aが対応するストッパ50に当接して位置規制される。すなわち、各倣いローラ42,54の案内面42b,54bが、鋼管16の外端縁に当接可能な位置に位置決めされる(
図6(a)参照)。
【0036】
図7に示す如く、前記回転盤22の回転速度を加工時回転速度RAに維持して前記装置本体14と共に回転盤22を前進移動すると、各倣いローラ42,54の案内面42b,54bが、鋼管16の外端縁に当接する。そして、装置本体14および回転盤22の前進移動に伴って、案内面42b,54bが鋼管16の外端縁に当接した状態で、前記各揺動部材36が支持軸34を中心として
図2における反時計回りに揺動しつつ各倣いローラ42,54が鋼管16の径方向外方に移動して、前記倣い面42a,54aが鋼管16の外周面に当接するに至る。倣い面42a,54aが鋼管16の外周面に当接した状態で、前記第1バイト38の第1チップ38aは、回転盤22の回転により鋼管16の外周面に倣う軌跡で外周端に沿って旋回すると共に、前記第2バイト52の第2チップ52aは、回転盤22の回転により鋼管16の外周面に倣う軌跡で内周端に沿って旋回する。
【0037】
前記回転盤22の回転速度を加工時回転速度RAに維持して該回転盤22を更に前進移動すると、旋回している第1チップ38aにより鋼管16の外端部が面取り加工されると共に、旋回している第2チップ52aにより鋼管16の内端部が面取り加工される(
図6(b)参照)。このとき、各倣いローラ42,54は、対応する圧縮コイルバネ48,56の付勢力K
1,K
2より大きな加工時遠心力FA
1,FA
2によって所要の押圧力で鋼管16の外周面に当接するように押し付けられるので、倣いローラ42,54による確実な倣いが行われて高精度の面取り加工が達成される。また、各チップ38a,52aによる切削力も倣いローラ42,54を鋼管16の外周面に当接するように押し付ける方向に作用するから、倣いローラ42,54によるより確実な倣いが行われる。
【0038】
前記チップ38a,52aによる面取り加工が完了すると、前記制御手段は、前記移動手段20(サーボモータ)を制御して、装置本体14と共に回転盤22を、鋼管16から離間するように後退移動する。この場合に、前記倣いローラ42,54が鋼管16の加工面16aに至る前であって、前記第2チップ52aが鋼管16の端面より外方に至るまで制御手段は、回転盤22の回転速度を加工時回転速度RAに維持するように前記駆動モータ24を制御する。すなわち、第2チップ52aが鋼管16の端面より外方に至るまでは、前記圧縮コイルバネ48,56の付勢力K
1,K
2より大きな加工時遠心力FA
1,FA
2によって倣いローラ42,54が鋼管16の外周面に当接しているから、鋼管16の内端部の加工面16bに第2チップ52aが押し付けられて該加工面16bが傷付くことはない。
【0039】
前記第2チップ52aが鋼管16の端面より外方に至った後(チップ38a,52aが鋼管16の加工面16a,16bから離間した後)に、前記制御手段は、前記駆動モータ24を制御して前記回転盤22の回転速度を解除時回転速度RBまで下げる。前記圧縮コイルバネ48,56の付勢力K
1,K
2は、解除時回転速度RBで生ずる解除時遠心力FB
1,FB
2より大きいので、該圧縮コイルバネ48,56の付勢力K
1,K
2によって、各揺動部材36は、倣いローラ42,54が鋼管16の外周面から離間する方向に揺動する。従って、回転盤22の後退移動に伴って移動する倣いローラ42,54が鋼管16の加工面16aに至る前に、該倣いローラ42,54は鋼管16の外周面から径方向に離間し、前記第1チップ38aで面取り加工された加工面16aに倣いローラ42,54が押し付けられることはなく、該加工面16aが損傷するのは防止される。
【0040】
実施例の加工装置では、倣いローラ42,54が鋼管16の外周面から離間する方向に揺動部材36を揺動付勢する圧縮コイルバネ48,56を設けると共に、該圧縮コイルバネ48,56の付勢力K
1,K
2を、回転盤22を加工時回転速度RAで回転した場合に倣いローラ42,54を鋼管16の外周面に当接する方向に作用する加工時遠心力FA
1,FA
2より小さく、加工時回転速度RAより低速の解除時回転速度RBで回転盤22を回転した場合に倣いローラ42,54を鋼管16の外周面に当接する方向に作用する解除時遠心力FB
1,FB
2より大きく設定したので、回転盤22の回転速度を加工時回転速度RAから解除時回転速度RBまで下げるだけで、圧縮コイルバネ48,56の付勢力K
1,K
2によって倣いローラ42,54を鋼管16の外周面から離間させることができる。すなわち、圧縮コイルバネ48,56を設けた簡単な構成によって、倣いローラ42,54による確実な倣いを達成すると共に、面取り加工後の加工面16aが倣いローラ42,54によって損傷するのを防止することができ、得られる製品品質を向上し得る。また、回転盤22の回転速度を変えるだけで、倣いローラ42,54を鋼管16の外周面に当接したり離間させることができるので、倣いローラ42,54を鋼管16の外周面に対して近接・離間移動するための専用のシリンダやモータ等の駆動手段を用いる必要はなく、簡単な構成で加工面16aが損傷するのを防ぐことができる。
【0041】
また、実施例のように、鋼管16の外端部の面取り加工に併せて、該鋼管16の内端部を面取り加工するため、前記第2刃物台28に、鋼管16の外周面に当接可能な内端部用の第2倣いローラ54と、該第2倣いローラ54と一体的に移動する内端部用の第2チップ52aとを設けた場合に、面取り加工の完了後に前記回転盤22を後退移動する際には、第2チップ52aが鋼管16の端面より外方に至るまでは回転盤22の回転速度を加工時回転速度RAに維持することで、前記第2圧縮コイルバネ56の付勢力K
2によって第2倣いローラ54が鋼管16の外周面から離間するのを防ぐことができる。すなわち、第2圧縮コイルバネ56の付勢力K
2によって第2チップ52aが鋼管16の内端部の加工面16bに押し付けられることはなく、該加工面16bが傷付くのを確実に防止し得る。
【0042】
また、前記圧縮コイルバネ48,56の付勢力K
1,K
2より小さな遠心力が揺動部材36に作用している状態や、回転盤22の回転を停止している状態において、圧縮コイルバネ48,56の付勢力K
1,K
2によって付勢される揺動部材36を位置規制する規制部材51を設けているので、回転盤22の移動時に揺動部材36がガタ付いたりするのを防止して、倣いローラ42,54を定位置に支持することができる。
【0043】
〔変更例〕
本願は、前述した実施例の構成に限定されるものでなく、その他の構成を適宜に採用することができる。
1.実施例では、倣いローラを鋼管の外周面から離間する方向に付勢する付勢手段として圧縮コイルバネを用いたが、引張りコイルバネや皿バネ等、各種のバネを用いることができる。
2.実施例では、回転盤に2基の刃物台を配設したが、1基あるいは3基以上の刃物台を配設してもよく、各刃物台が本願発明の構成を採用していればよい。
3.回転盤に、鋼管の外端部の面取り加工を施す刃物台(実施例では第1刃物台)のみを配設した構成であれば、面取り加工が完了した後、回転盤の後退移動を開始する前に回転盤の回転速度を直ちに解除時回転速度まで下げるようにしてもよい。すなわち、第1倣いローラと第1チップ(外端部用の加工手段)は何れも鋼管の外側に位置しているので、第1倣いローラが第1圧縮コイルバネの付勢力によって鋼管の外周面から離間しても、第1チップが鋼管に干渉することはないからである。
4.実施例の構成において、揺動部材に錘を設けて重心位置を変えることで、面取り加工時に作用する遠心力を増加して、面取り加工時に倣いローラを鋼管の外周面に押し付ける押圧力を高めて、より安定した倣いを行うようにすることができる。
5.実施例では、揺動部材を、回転盤に対して位置調整可能に配設した刃物台に配設したが、単一の管径の鋼管の端部に面取り加工を施す構成であれば、揺動部材を回転盤に直接配設するようにしてもよい。
【0044】
6.実施例では、圧縮コイルバネの付勢力に抗して倣いローラを鋼管の外周面に当接する方向に移動する場合の回転盤の回転速度を、加工時回転速度としたが、圧縮コイルバネの付勢力に抗して倣いローラを鋼管の外周面に当接する方向に移動する場合の回転盤の回転速度は、回転盤の回転に伴う遠心力が、圧縮コイルバネの付勢力より大きくなる回転速度であればよい。すなわち、実施例では、加工完了後に回転盤を後退移動する際に、第2チップ(加工手段)が鋼管の端面より外方に至るまで回転盤の回転速度を加工時回転速度に維持するようにしたが、第2チップ(加工手段)が鋼管の端面より外方に至るまで、遠心力が圧縮コイルバネの付勢力より大きい範囲であれば、回転盤の回転速度を変速(減速または増速)するものであってもよい。
7.実施例では、回転盤(刃物台)に揺動自在に支持した揺動部材の重心位置を、該揺動部材の揺動中心を挟んで倣いローラと反対側に設定することで、回転盤の回転に伴う遠心力によって揺動部材を揺動して倣いローラを鋼管の外周面に当接する方向に移動するよう構成したが、回転盤(刃物台)に対して直線的に移動する支持部材に加工手段および倣いローラを設け、作動手段を介して支持部材を、回転盤の回転に伴う遠心力により直線的に移動して倣いローラを鋼管の外周面に当接させる構成を採用することができる。