特許第6913815号(P6913815)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6913815
(24)【登録日】2021年7月14日
(45)【発行日】2021年8月4日
(54)【発明の名称】シートの加熱処理装置
(51)【国際特許分類】
   B29C 35/06 20060101AFI20210727BHJP
【FI】
   B29C35/06
【請求項の数】6
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2020-217981(P2020-217981)
(22)【出願日】2020年12月25日
【審査請求日】2021年1月25日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004293
【氏名又は名称】株式会社ノリタケカンパニーリミテド
(74)【代理人】
【識別番号】100085361
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 治幸
(74)【代理人】
【識別番号】100147669
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 光治郎
(72)【発明者】
【氏名】稲本 浩也
(72)【発明者】
【氏名】加藤 将伸
【審査官】 田代 吉成
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−180365(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 35/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機溶剤を含む帯状の材料シートがロール状に巻回された巻出ロールを収容する巻出ロール収容ケースと、
前記材料シートが熱処理されたシートを巻き取る巻取ロールを収容する巻取ロール収容ケースと、
前記材料シートを通過させる巻出側連結筒を介して前記巻出ロール収容ケースに気密に接続されるとともに、前記熱処理されたシートを通過させる巻取側連結筒を介して前記巻取ロール収容ケースに気密に接続され、前記巻出側連結筒から前記巻取側連結筒へ搬送される前記材料シートに熱処理を施すヒータを収容する加熱ケースと、を含む、シートの加熱処理装置であって、
前記材料シートを通過させるスリットが形成され、前記巻出側連結筒の前記巻出ロール収容ケース側の開口を閉じる巻出側スリット付遮蔽部材、および、前記巻出側連結筒内に吹込ガスを吹き込む巻出側吹込ノズルと、
前記熱処理されたシートを通過させるスリットが形成され、前記巻取側連結筒の前記巻取ロール収容ケース側の開口を閉じる巻取側スリット付遮蔽部材、および、前記巻取側連結筒内に吹込ガスを吹き込む巻取側吹込ノズルと、をみ、
前記巻出側吹込ノズルは、前記材料シートの上方から前記材料シートへ向って前記吹込ガスを吹き込む上吹込孔と、前記材料シートの下方から前記材料シートへ向って前記吹込ガスを吹き込む下吹込孔とを有し、
前記巻取側吹込ノズルは、前記熱処理されたシートの上方から前記熱処理されたシートへ向って前記吹込ガスを吹き込む上吹込孔と、前記熱処理されたシートの下方から前記熱処理されたシートへ向って前記吹込ガスを吹き込む下吹込孔とを有する
ことを特徴とするシートの加熱処理装置。
【請求項2】
前記巻出側吹込ノズルの前記上吹込孔および前記下吹込孔は、前記材料シートに向って前記加熱ケース側に向う方向成分を有する斜め方向に前記吹込ガスを吹き込むようにそれぞれ傾斜させられており、
前記巻取側吹込ノズルの前記上吹込孔および前記下吹込孔は、前記熱処理されたシートに向って前記加熱ケース側に向う方向成分を有する斜め方向に前記吹込ガスを吹き込むようにそれぞれ傾斜させられている
ことを特徴とする請求項1のシートの加熱処理装置。
【請求項3】
前記巻出側スリット付遮蔽部材は、締結ボルトによって固定される一対の上スリット板および下スリット板であり、
前記締結ボルトを通すための上下方向に長手状に前記上スリット板に形成された長穴と、
前記締結ボルトを通すための上下方向に長手状に前記下スリット板に形成された長穴と、の少なくとも一方を有し、
前記巻取側スリット付遮蔽部材は、締結ボルトによって固定される一対の上スリット板および下スリット板であり、
前記締結ボルトを通すための上下方向に長手状に前記上スリット板に形成された長穴と、
前記締結ボルトを通すための上下方向に長手状に前記下スリット板に形成された長穴と、の少なくとも一方を有する
ことを特徴とする請求項1または2のシートの加熱処理装置。
【請求項4】
前記巻出側連結筒と前記加熱ケースとの間には巻出側開閉ゲートが設けられ、および前記加熱ケースと前記巻取側連結筒との間には巻取側開閉ゲートが設けられている
ことを特徴とする請求項1からのいずれか1のシートの加熱処理装置。
【請求項5】
前記巻出側開閉ゲートと前記加熱ケースとの間には筒状の巻出側冷却筒が設けられ、前記加熱ケースと前記巻取側開閉ゲートとの間には筒状の巻取側冷却筒が設けられている
ことを特徴とする請求項のシートの加熱処理装置。
【請求項6】
前記熱処理されたシートはポリイミド金属積層シートであり、前記材料シートは、帯状の金属箔上に前記有機溶剤を含むポリアミド酸の溶液が塗布液として塗布されたものであり、前記巻出側吹込ノズルおよび前記巻取側吹込ノズルにより吹き込まれる前記吹込ガスは、不活性ガスである
ことを特徴とする請求項1からのいずれか1のシートの加熱処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、巻出ロールから巻き出された後に巻取ロールに巻き取られるシートに対して熱処理を行なうシートの加熱処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
熱処理されたシートとして、たとえば金属箔等の材料(基材)シートの一面に樹脂層が貼り着けられた可撓性且つ帯状の積層シートが知られている。たとえば、銅箔のような金属箔の一面にポリイミド樹脂層が貼り着けられた可撓性のポリイミド金属積層シートがそれである。このような積層シートは、たとえば、金属箔がエッチングなどによって所定の回路パターンとなるように加工されることにより、上記金属箔から成るリード線を有するICパッケージに分離可能なテープオートメーションボンディング(TAB)製品、フレキシブルなフラットケーブル、多層配線基板などとして、電子機器、デジタルカメラ、携帯電話機、携帯式情報端末機器などに多用されている。
【0003】
上記積層シートは、樹脂前躯体たとえばポリイミド樹脂の前躯体であるポリアミド酸(ポリアミック酸)を有機溶剤で溶かした塗布液が、金属箔の一面に塗布され、次いで、その塗布された塗布液を例えば350℃程度の温度で熱処理して樹脂の硬化反応を進めることで、金属箔の一面にポリイミド等の樹脂層が積層された積層シートが製造される。
【0004】
このようなシートの加熱処理装置においては、巻出ロールから連続的に巻きだされた帯状の材料シートの一面に、塗布手段により塗布液が塗布され、次いで加熱ケースを通されることで熱処理され、熱処理により得られた積層シートを巻取ロールにより巻き取ることが行なわれている。たとえば、特許文献1に記載された塗布膜の乾燥装置がそれである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−170102号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1に記載のシートの加熱処理装置では、互いに平行な複数本の下側ガイドローラと、互いに平行な複数本の上側ガイドローラと、それら下側ガイドローラと上側ガイドローラとの間に上下方向に架け渡された積層シートの両面に対向するように配置された平板状のヒータとを備えた加熱ケースが備えられ、連続的に送られる材料シートに熱処理が施されるようになっている。
【0007】
しかしながら、上記のような従来のシートの加熱処理装置では、熱処理中に有機溶剤を含む塗布液から発生する気化した有機溶剤である溶剤ガスが、巻出ロール収容ケースおよび巻取ロール収容ケース内へ流入することにより巻出ロール収容ケースおよび巻取ロール収容ケース内が汚染されたり、製品不良が発生する可能性があった。
【0008】
本発明は以上の事情を背景として為されたものであり、その目的とするところは、加熱ケース内の溶剤ガスが巻出ロール収容ケース内および巻取ロール収容ケース内へ流入することが充分に防止されるシートの加熱処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者等は、以上の事情を背景として種々検討を重ねた結果、巻出側連結筒および巻取側連結筒内にガスを吹き込む吹込ノズルをそれぞれ設けるとともに、材料シート或いは熱処理されたシートを通過させるスリットが形成されたスリット付遮蔽部材を、その吹込ノズルよりも巻出ロール収容ケース側および巻取ロール収容ケース側に設けると、巻出側連結筒および巻取側連結筒内では、加熱ケース側に向うガスの流れが形成され、加熱ケース内の溶剤ガスが巻出ロール収容ケースおよび巻取ロール収容ケース内へ流入することがそれぞれ充分に防止されることが見出された。本発明は、斯かる知見に基づいて為されたものである。
【0010】
すなわち、本発明の要旨とするところは、(a)有機溶剤を含む帯状の材料シートがロール状に巻回された巻出ロールを収容する巻出ロール収容ケースと、(b)前記材料シートが熱処理されたシートを巻き取る巻取ロールを収容する巻取ロール収容ケースと、(c)前記材料シートを通過させる巻出側連結筒を介して前記巻出ロール収容ケースに気密に接続されるとともに、前記熱処理されたシートを通過させる巻取側連結筒を介して前記巻取ロール収容ケースに気密に接続され、前記巻出側連結筒から前記巻取側連結筒へ搬送される前記材料シートに熱処理を施すヒータを収容する加熱ケースと、を含む、シートの加熱処理装置であって、(d)前記材料シートを通過させるスリットが形成され、前記巻出側連結筒の前記巻出ロール収容ケース側の開口を閉じる巻出側スリット付遮蔽部材、および、前記巻出側連結筒内に吹込ガスを吹き込む巻出側吹込ノズルと、(e)前記熱処理されたシートを通過させるスリットが形成され、前記巻取側連結筒の前記巻取ロール収容ケース側の開口を閉じる巻取側スリット付遮蔽部材、および、前記巻取側連結筒内に吹込ガスを吹き込む巻取側吹込ノズルと、を含み、(f)前記巻出側吹込ノズルは、前記材料シートの上方から前記材料シートへ向って前記吹込ガスを吹き込む上吹込孔と、前記材料シートの下方から前記材料シートへ向って前記吹込ガスを吹き込む下吹込孔とを有し、(g)前記巻取側吹込ノズルは、前記熱処理されたシートの上方から前記熱処理されたシートへ向って前記吹込ガスを吹き込む上吹込孔と、前記熱処理されたシートの下方から前記熱処理されたシートへ向って前記吹込ガスを吹き込む下吹込孔とを有することにある。
【発明の効果】
【0011】
本発明の積層シートの加熱処理装置によれば、前記材料シートを通過させるスリットが形成され、前記巻出側連結筒の前記巻出ロール収容ケース側の開口を閉じる巻出側スリット付遮蔽部材、および、前記巻出側連結筒内に吹込ガスを吹き込む巻出側吹込ノズルと、前記熱処理されたシートを通過させるスリットが形成され、前記巻取側連結筒の前記巻取ロール収容ケース側の開口を閉じる巻取側スリット付遮蔽部材、および、前記巻取側連結筒内に吹込ガスを吹き込む巻取側吹込ノズルと、を含む。これにより、加熱ケース内の熱処理中において、吹込ガスにより巻出側連結筒内で加熱ケース側に向う流れが形成され、加熱ケース内の溶剤ガスが巻出ロール収容ケース内へ流入すること、および、吹込ガスにより巻取側連結筒内で加熱ケース側に向う流れが形成され、加熱ケース内の溶剤ガスが巻取ロール収容ケース内へ流入することが、充分に防止される。
また、前記巻出側吹込ノズルは、前記材料シートの上方から前記材料シートへ向って前記吹込ガスを吹き込む上吹込孔と、前記材料シートの下方から前記材料シートへ向って前記吹込ガスを吹き込む下吹込孔とを有する。これにより、材料シートにおいて、上吹込孔からの吹込ガスを受けることで生じる下向きの力と、下吹込孔からの吹込ガスを受けることにより生じる上向きの力とが相殺されるので、材料シートの直進性が確保される。さらに、前記巻取側吹込ノズルは、前記熱処理されたシートの上方から前記熱処理されたシートへ向って前記吹込ガスを吹き込む上吹込孔と、前記熱処理されたシートの下方から前記熱処理されたシートへ向って前記吹込ガスを吹き込む下吹込孔とを有する。これにより、熱処理されたシートにおいて、上吹込孔からの吹込ガスを受けることで生じる下向きの力と、下吹込孔からの吹込ガスを受けることにより生じる上向きの力とが相殺されるので、熱処理されたシートの直進性が、確保される。
【0012】
ここで、好適には、(a)前記巻出側吹込ノズルの前記上吹込孔および前記下吹込孔は、前記材料シートに向って前記加熱ケース側に向う方向成分を有する斜め方向に前記吹込ガスを吹き込むようにそれぞれ傾斜させられており、(b)前記巻取側吹込ノズルの前記上吹込孔および前記下吹込孔は、前記熱処理されたシートに向って前記加熱ケース側に向う方向成分を有する斜め方向に前記吹込ガスを吹き込むようにそれぞれ傾斜させられている。これにより、加熱ケース内の吹込ガスがスリット付遮蔽部材へ到達し難くなり、一層、加熱ケース内の溶剤ガスが巻出ロール収容ケースおよび巻取ロール収容ケース内へ流入することが防止される。
【0014】
また、好適には、(a)前記巻出側スリット付遮蔽部材は、締結ボルトによって固定される一対の上スリット板および下スリット板であり、前記締結ボルトを通すための上下方向に長手状に前記上スリット板に形成された長穴と、前記締結ボルトを通すための上下方向に長手状に前記下スリット板に形成された長穴と、の少なくとも一方を有し、(b)前記巻取側スリット付遮蔽部材は、締結ボルトによって固定される一対の上スリット板および下スリット板であり、前記締結ボルトを通すための上下方向に長手状に前記上スリット板に形成された長穴と、前記締結ボルトを通すための上下方向に長手状に前記下スリット板に形成された長穴と、の少なくとも一方を有する。これにより、前記材料シート或いは熱処理されたシートの厚みに応じて、可及的に開口面積が小さくなるように前記材料シート或いは熱処理されたシートを通過させるスリットの開口面積すなわち上下方向の幅寸法を変更することができる。
【0015】
また、好適には、前記巻出側開閉ゲートと前記加熱ケースとの間には筒状の巻出側冷却筒が設けられ、前記加熱ケースと前記巻取側開閉ゲートとの間には筒状の巻取側冷却筒が設けられている。これにより、加熱ケース内の真空状態を維持しつつ、巻出ロール収容ケース内の巻出ロールの交換、或いは、巻取ロール収容ケース内の巻取ロールの交換が可能となる。
【0016】
また、好適には、前記熱処理されたシートはポリイミド金属積層シートであり、前記材料シートは、帯状の金属箔上に前記有機溶剤を含むポリアミド酸の溶液が塗布液として塗布されたものであり、前記巻出側吹込ノズルおよび前記巻取側吹込ノズルにより吹き込まれる前記吹込ガスは、不活性ガスである。このため、加熱ケース内において、ポリアミド酸層から発生する揮発成分が巻出ロール収容ケースおよび巻取ロール収容ケース内へ流入することが防止されて、ポリイミド樹脂層内に残存することが抑制されるので、ポリイミド樹脂の本来の特性が得られやすい。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施例の加熱処理装置を用いて製造される可撓性のポリイミド金属積層シートの断面を示している。
図2図1のポリイミド金属積層シートの製造工程の要部を説明する工程図である。
図3】本発明の一実施例の加熱処理装置を構成する各ケースを、その蓋板を外して示す正面図である。
図4図3の加熱処理装置を構成する各ケースの内部を示す平面図である。
図5図3の巻出ロール収容ケースと加熱ケースとの間の接続構造を拡大して説明する断面図である。
図6図5の巻出側連結筒内に設けられた吹込ノズルの構造を拡大して説明する断面図である。
図7図5の巻出側連結筒の巻出ロール収容ケース側の開口を閉じるように設けられたスリット付遮蔽部材の、一部を切り欠いた正面図である。
図8図3の加熱ケースと巻取ロール収容ケースとの間の接続構造を説明する断面図である。
図9図8の巻取側連結筒内に設けられた吹込ノズルの構造を拡大して説明する断面図である。
図10図8の巻取側連結筒の巻取ロール収容ケース側の開口を閉じるように設けられたスリット付遮蔽部材の、一部を切り欠いた正面図である。
図11図3の加熱処理装置を制御する電子制御装置等の構成を示すブロック線図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一実施例を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の実施例において、図は適宜簡略化或いは模式化されており、各部の形状等は必ずしも正確に描かれていない。
【実施例】
【0019】
図1は、本発明の一実施例の加熱処理装置30(図3及び図4を参照)によりポリイミド樹脂のイミド化が行なわれた帯状のポリイミド金属積層シート10の断面を示している。このポリイミド金属積層シート10は可撓性を有し、例えば2層型であって、銅箔、ニッケル箔、クラッド材箔などからなる例えば5μm〜20μm好適には9μm〜18μmの厚みを有する金属箔12の一面に、5μm〜100μm程度の厚みを有するシート状のポリイミド樹脂層14が直接的に固着されることにより構成される。ポリイミド金属積層シート10は、例えば180μm〜200μm程度の厚みと250mm〜500mm程度の幅と、例えば200m〜300m程度の長さとを備えている。なお、ポリイミド金属積層シート10は、3層型であってもよい。ポリイミド金属積層シート10は、本発明における積層シートに対応する。
【0020】
図2は、上記ポリイミド金属積層シート10の製造方法の要部を説明する工程図である。図2において、塗布液調製工程20では、ポリイミド樹脂の材料14aと有機溶剤14bとから、金属箔12に塗布する塗布液14cが調製される。この塗布液調製工程20では、ポリイミド樹脂の材料14aとして用いられる、例えば、NMP(N-methylpyrrolidinone)、DMAc(dimethyl acetamide)等の非プロトン性のアミド系極性溶剤に、m−フェニレンジアミン等のジアミンを溶解させ、それを室温(常温常圧)下で攪拌させながら、脂肪族ジアミンや脂肪族テトラカルボン酸二無水物等の酸無水物を添加して混合することで生じる重合反応により、ポリアミド酸(ポリアミック酸)が合成される。このポリアミド酸がN−メチル−2−ピロリドン、ジメチルカーボネート、N−メチルピロリドン等の有機溶剤14bに溶解されることによって所定の粘度の流動性を備えたポリアミド酸の溶液である塗布液14cが調製される。
【0021】
続く塗布工程22では、金属箔12が巻回された円筒状のロールから引き出された長手状の金属箔12の上面に、例えば所定の塗布ロールを備える塗布装置を用いて上記流動性を備えたポリアミド酸の溶液が所定の厚みに連続的に塗布される。
【0022】
次いで、乾燥工程24において、上記塗布装置に隣接して設けられた乾燥装置により、少なくとも上記塗布されたポリアミド酸が金属箔12の下面に付着しない程度にポリアミド酸内の溶剤が除去されて乾燥された材料シート16が得られる。この後、材料シート16は再び巻回されてロールが得られる。このロールは、ポリイミド樹脂前駆体であるポリアミド酸が一面に塗着された金属箔12が巻回されたものであり、後述の巻出ロール32に相当する。
【0023】
次いで、熱処理工程26では、図3及び図4に示す加熱処理装置30を用いて、好適には250℃〜300℃で10分〜20分程度の加熱が好適には2000Pa〜6000Pa程度の真空下において行なわれることにより、金属箔12の一面に塗布され且つ乾燥されたポリアミド酸の脱水・環化すなわちイミド化反応が、巻出ロール32から巻取ロール34までの間の搬送過程で、連続的に行なわれる。これにより、ポリアミド酸のイミド化が完了したポリイミド樹脂層14が金属箔12の一面に固着されたポリイミド金属積層シート10が、巻取ロール34に巻き取られる。
【0024】
図3は、加熱処理装置30を構成する、それぞれ気密な巻出ロール収容ケース36、加熱ケース40、及び巻取ロール収容ケース38を、それらの全面の覆う蓋板を外して示す正面図である。図4は、加熱処理装置30を構成する巻出ロール収容ケース36、加熱ケース40、及び巻取ロール収容ケース38の内部を示す平面図である。なお、図4においては、ガイドローラ58及び60とガイドローラ108及び110とが省略されている。
【0025】
加熱処理装置30は、巻出ロール収容ケース36と巻取ロール収容ケース38と加熱ケース40とを直列に備えている。巻出ロール収容ケース36には、金属箔12上にポリアミド酸が層状に塗布された帯状の材料シート16がロール状に巻回された巻出ロール32が収容されている。巻取ロール収容ケース38には、熱処理された帯状のポリイミド金属積層シート10を巻き取る巻取ロール34が収容されている。
【0026】
加熱ケース40は、材料シート16を通過させる巻出側連結筒42を介して巻出ロール収容ケース36に気密に接続されるとともに、熱処理後の帯状のポリイミド金属積層シート10を通過させる巻取側連結筒44を介して巻取ロール収容ケース38に気密に接続されている。この加熱ケース40には、巻出側連結筒42から巻取側連結筒44へ搬送される材料シート16を真空下で加熱してポリアミド酸をイミド化するためのヒータ170が収容されている。ヒータ170は、赤外線或いは遠赤外線を放射する輻射加熱型であってもよい。
【0027】
巻出ロール収容ケース36内には、支持板46が立設されている。巻出ロール32は、回転軸線C1まわりに回転可能且つ回転軸線C1方向に移動可能に支持板46に支持されたロール支持軸48により支持されている。ロール支持軸48は、回転軸線C1に平行な方向に移動可能に設けられ移動テーブル50上に載置された減速機付モータ52により回転駆動される。巻出ロール32は、移動テーブル50を回転軸線C1に平行な方向すなわちスラスト方向に移動させる巻出側幅方向アクチュエータ54によって回転軸線C1に平行な方向に位置決めされる。
【0028】
支持板46には、巻出ロール32から連続的に引き出された材料シート16をテンションローラ56へ案内する一対のガイドローラ58及び60が設けられている。一対のガイドローラ58及び60の間には、案内される材料シート16の幅方向の位置を検出する巻出側幅方向位置センサ62が設けられている。テンションローラ56は、上下ガイド64により上下方向に移動可能に配設されており、テンションローラ56の高さ位置が、上下ガイド64に設けられた張力センサ66により検出されるようになっている。減速機付モータ52、ガイドローラ60、ガイドローラ68、テンションローラ56、及び、張力センサ66等は、シート引出装置として機能している。
【0029】
また、支持板46には、テンションローラ56からの材料シート16を案内する一対のガイドローラ68及び70と、それらガイドローラ68及び70の間に、材料シート16の終端部を新たな巻出ロール32からの材料シート16の前端部にホッチキス(登録商標)や糸で接続する巻出側シート連結装置として機能するスプライステーブル72とが設けられている。さらに、支持板46には、材料シート16を駆動するために、モータ74により回転駆動される駆動ローラ76が、一対のガイドローラ78及び80の間に設けられている。
【0030】
また、支持板46には、テンションローラ82を先端部において回転可能に支持する水平レバー84をその基端部において回動可能に支持するレバー支持装置86と、テンションローラ82からの材料シート16を巻出側連結筒42を通して加熱ケース40へ案内するガイドローラ88とが設けられている。このテンションローラ82の高さ位置すなわち水平レバー84の回動角は、加熱ケース40へ送り込まれる材料シート16の張力に対応しており、レバー支持装置86に設けられた張力センサ90により検出されるようになっている。モータ74、駆動ローラ76、ガイドローラ78、ガイドローラ80、テンションローラ82を有するレバー支持装置86、ガイドローラ88、及び、張力センサ90等は、送込張力付与装置として機能している。
【0031】
巻出ロール収容ケース36には、不活性ガスとして窒素ガスを供給するNパージポート92が巻出側連結筒42とは反対側の端部に設けられており、巻出ロール収容ケース36の高さ方向及び幅方向の中央部には、排気ポート94が設けられている。
【0032】
巻取ロール収容ケース38内には、支持板96が立設されている。巻取ロール34は、回転軸線C2まわりに回転可能且つ回転軸線C2方向に移動可能に支持板96に支持されたロール支持軸98により支持されている。ロール支持軸98は、回転軸線C2に平行な方向に移動可能に設けられ移動テーブル100上に載置された減速機付モータ102により回転駆動される。巻取ロール34は、移動テーブル100を回転軸線C2すなわちスラスト方向に平行な方向に移動させる巻取側幅方向アクチュエータ104によって回転軸線C2に平行な方向に位置決めされる。
【0033】
支持板96には、巻取ロール34に巻き取られるポリイミド金属積層シート10をテンションローラ106から巻取ロール34へ案内する一対のガイドローラ108及び110が設けられている。一対のガイドローラ108及び110の間には、案内されるポリイミド金属積層シート10の幅方向のずれを検出する巻取側幅方向位置センサ112が設けられている。テンションローラ106は、上下ガイド114により上下方向に移動可能に配設されており、テンションローラ106の高さ位置が、上下ガイド114に設けられた張力センサ116により検出されるようになっている。
【0034】
また、支持板96には、テンションローラ106へのポリイミド金属積層シート10を案内する一対のガイドローラ118及び120と、それらガイドローラ118及び120の間に、新たな巻取ロール34に巻かれている帯状シートの終端部に巻出ロール32からのポリイミド金属積層シート10の前端部をホッチキスや糸で接続する巻取側シート連結装置として機能するスプライステーブル122とが設けられている。減速機付モータ102、ガイドローラ110、ガイドローラ118、テンションローラ106、及び、張力センサ116等は、シート巻取装置として機能している。
【0035】
さらに、支持板96には、ポリイミド金属積層シート10を駆動するために、モータ124により回転駆動される冷却フィードローラ126が、ガイドローラ120とガイドローラ128との間に設けられている。冷却フィードローラ126は、図示しないチラーから送られた冷媒によって常時冷却されており、巻取ロール34に連続的に巻き取られるポリイミド金属積層シート10が冷却されるようになっている。
【0036】
そして、支持板96には、テンションローラ132を先端部において回転可能に支持する水平レバー134をその基端部において回動可能に支持するレバー支持装置136と、加熱ケース40内から巻取側連結筒44を通過したポリイミド金属積層シート10をテンションローラ132へ案内するガイドローラ130とが設けられている。このテンションローラ132の高さ位置すなわち水平レバー134の回動角は、加熱ケース40から送り出されるポリイミド金属積層シート10の張力に対応しており、レバー支持装置136に設けられた張力センサ142により検出されるようになっている。モータ124、冷却フィードローラ126、ガイドローラ128、ガイドローラ130、テンションローラ132を有するレバー支持装置136、及び、張力センサ142等は、引出張力付与装置として機能している。
【0037】
巻取ロール収容ケース38には、不活性ガスとして窒素ガスを供給するNパージポート144が巻取側連結筒44とは反対側の端部に設けられており、巻取ロール収容ケース38の高さ方向及び幅方向の中央部には、排気ポート146が設けられている。
【0038】
図5は、巻出側開閉ゲート304と加熱ケース40との間の接続構造を説明する断面図である。図5に示すように、巻出側連結筒42と加熱ケース40との間には、巻出側連結筒42を遮断可能な巻出側開閉ゲート304と、筒状の巻出側冷却筒314と、が直列に設けられている。巻出側開閉ゲート304は、加熱ケース40内の真空状態および加熱状態に影響を及ぼすことなく、巻出ロール32の交換を可能とするためのものである。巻出側開閉ゲート304には、材料シート16を通した状態で開閉可能な例えばフッ素ゴム製のリップシール306と、そのリップシール306を開閉する開閉アクチュエータ308とが備えられている。
【0039】
筒状の巻出側冷却筒314は、外周面に固定された水冷ジャケット316を備えて、巻出側開閉ゲート304と加熱ケース40との間に設けられている。巻出側冷却筒314により、加熱ケース40から巻出ロール収容ケース36へ伝達される熱が冷却されるので、巻出ロール収容ケース36の昇温が抑制される。
【0040】
図6は、図5の上側の巻出側連結筒42を拡大して示している。巻出側連結筒42は、巻出側連結筒42内に窒素ガスである吹込ガス302を吹き込む巻出側吹込ノズル320を備えている。巻出側吹込ノズル320は、材料シート16に向って加熱ケース40側に向う方向成分を有する斜め方向に窒素を吹き込むように傾斜させられている上吹込孔322aおよび下吹込孔322bと、上吹込孔322aおよび下吹込孔322bがそれぞれ形成された長手状の上箱体324aおよび下箱体324bとを備えている。上吹込孔322aは材料シート16の上方から材料シート16へ向って吹込ガス302を吹き込み、下吹込孔322bは材料シート16の下方から材料シート16へ向って吹込ガス302をそれぞれ吹き込む。材料シート16では、上吹込孔322aからの吹込ガス302を受けることで生じる下向きの力と、下吹込孔322bからの吹込ガス302を受けることにより生じる上向きの力とが相殺されるので、材料シート16の直進性が確保されるようになっている。
【0041】
図5に戻って、巻出ロール収容ケース36には、材料シート16を巻出側連結筒42、巻出側開閉ゲート304および巻出側冷却筒314を通して加熱ケース40へ送り出すために貫通して形成された送出孔326が設けられている。送出孔326の開口は、材料シート16を通すように数mmから十数mmの幅寸法を有するスリット328が形成されたスリット付遮蔽部材330により覆われて閉じられている。よって、巻出側連結筒42の巻出ロール収容ケース36側の開口42aは、スリット付遮蔽部材330により閉じられている。スリット付遮蔽部材330は、相互間にスリット328を形成する一対の上スリット板330aおよび下スリット板330bから構成されている。図7に示すように、上スリット板330aおよび下スリット板330bは、締結ボルト332によって、巻出ロール収容ケース36の内壁面のうちの送出孔326の周縁部に締結されている。
【0042】
図7に示すように、上スリット板330aおよび下スリット板330bには、締結ボルト332を通すために上下方向に長手状の長穴334が形成され、上スリット板330aおよび下スリット板330bの固定位置の変更によって、スリット328の開口面積が調節可能としている。材料シート16の厚みに応じて、可及的に開口面積が小さくなるように、スリット328の大きさが設定される。
【0043】
また、図7に示すように、上スリット板330aおよび下スリット板330bの固定位置を調節するための一対の位置調節装置336が、加熱処理装置30に設けられている。位置調節装置336は、巻出ロール収容ケース36の内壁面に固定された固定ブラケット336aと、上スリット板330aおよび下スリット板330bから突設された可動ブラケット336bと、固定ブラケット336aに回転可能に係合し且つ可動ブラケット336bに螺合する調節ボルト336cと、を備えている。締結ボルト332が緩められた状態で調節ボルト336cが回転操作されることによって上スリット板330aおよび下スリット板330bの位置が調節された後、締結ボルト332が締め付けられることで、上スリット板330aおよび下スリット板330bが固定される。
【0044】
図8は、加熱ケース40と巻取ロール収容ケース38との間の接続構造を説明する断面図である。図8に示すように、加熱ケース40と巻取側連結筒44との間には、巻取側連結筒44を遮断可能な巻取側開閉ゲート354と筒状の巻取側冷却筒364とが直列に設けられている。巻取側開閉ゲート354は、加熱ケース40内の真空状態および加熱状態に影響を及ぼすことなく、巻取ロール34の交換を可能とするためのものである。巻取側開閉ゲート354には、ポリイミド金属積層シート10を通した状態で開閉可能な例えばフッ素ゴム製のリップシール356と、そのリップシール356を開閉する開閉アクチュエータ358とが備えられている。
【0045】
筒状の巻取側冷却筒364は、外周面に固定された水冷ジャケット366を備えて、加熱ケース40と巻取側開閉ゲート354との間に設けられている。巻取側冷却筒364により、加熱ケース40から巻取ロール収容ケース38へ伝達される熱が冷却されるので、巻取ロール収容ケース38の昇温が抑制される。
【0046】
図9は、図8の上側の巻取側連結筒44を拡大して示している。巻取側連結筒44は、巻出側連結筒42と同様に、巻取側連結筒44内に窒素ガスである吹込ガス302を吹き込む巻取側吹込ノズル370を備えている。巻取側吹込ノズル370は、ポリイミド金属積層シート10に向って加熱ケース40側に向う方向成分を有する斜め方向に窒素を吹き込むように傾斜させられている上吹込孔372aおよび下吹込孔372bと、上吹込孔372aおよび下吹込孔372bがそれぞれ形成された長手状の上箱体374aおよび下箱体374bとを有する。
【0047】
上吹込孔372aはポリイミド金属積層シート10の上方からポリイミド金属積層シート10へ向って吹込ガス302を吹き込み、下吹込孔372bはポリイミド金属積層シート10の下方からポリイミド金属積層シート10へ向って吹込ガス302をそれぞれ吹き込む。ポリイミド金属積層シート10では、上吹込孔372aからの吹込ガス302を受けることで生じる下向きの力と、下吹込孔372bからの吹込ガス302を受けることにより生じる上向きの力とが相殺されるので、ポリイミド金属積層シート10の直進性が確保されるようになっている。
【0048】
図8に戻って、巻取ロール収容ケース38には、加熱ケース40からのポリイミド金属積層シート10を巻取側冷却筒364、巻取側開閉ゲート354、巻取側連結筒44を通して巻取ロール収容ケース38へ送り込むために貫通して形成された送入孔376が設けられている。送入孔376の開口は、ポリイミド金属積層シート10を通す数mmから十数mmの幅寸法を有するスリット378が形成されたスリット付遮蔽部材380により覆われて閉じられている。よって、巻取側連結筒44の巻取ロール収容ケース38側の開口44aは、スリット付遮蔽部材380により閉じられている。スリット付遮蔽部材380は、相互間にスリット378を形成する一対の上スリット板380aおよび下スリット板380bから構成されている。上スリット板380aおよび下スリット板380bは、締結ボルト382によって、巻取ロール収容ケース38の内壁面のうちの送入孔376の周縁部に締結されている。
【0049】
図10に示すように、上スリット板380aおよび下スリット板380bには、締結ボルト382を通すために上下方向に長手状の長穴384が形成され、上スリット板380aおよび下スリット板380bの固定位置の変更によって、スリット378の開口面積が調節可能としている。ポリイミド金属積層シート10の厚みに応じて、可及的に開口面積が小さくなるように、スリット378の大きさが設定される。
【0050】
また、図10に示すように、上スリット板380aおよび下スリット板380bの固定位置を調節するための一対の位置調節装置386が、加熱処理装置30に設けられている。位置調節装置386は、巻取ロール収容ケース38の内壁面に固定された固定ブラケット386aと、上スリット板380aおよび下スリット板380bから突設された可動ブラケット386bと、固定ブラケット386aに回転可能に係合し且つ可動ブラケット386bに螺合する調節ボルト386cと、を備えている。締結ボルト382が緩められた状態で調節ボルト386cが回転操作されることによって上スリット板380aおよび下スリット板380bの位置が調節された後、締結ボルト382が締め付けられることで、上スリット板380aおよび下スリット板380bが固定される。
【0051】
図3および図4に示すように、加熱ケース40は、天井壁40a、底壁40b、巻出側壁40c、巻取側壁40d、前壁40e、後壁40fから、直方体状に形成されている。加熱ケース40内には、支持板160が立設されている。支持板160には、入口ガイドローラ162及び出口ガイドローラ164と、複数個(本実施例では6個)の下側ガイドローラ166と、複数個(本実施例では5個)の上側ガイドローラ168と、平板状のヒータ170と、が設けられている。平板状のヒータ170は、入口ガイドローラ162、出口ガイドローラ164、及び、複数個の上側ガイドローラ168と複数個の下側ガイドローラ166との間に、互いに平行となるように上下方向に架け渡された材料シート16或いはポリイミド金属積層シート10の両面に対向するように配置されている。
【0052】
入口ガイドローラ162、出口ガイドローラ164、複数個の下側ガイドローラ166、及び、複数個の上側ガイドローラ168には、モータ172がそれぞれ設けられている。また、上側ガイドローラ168及び下側ガイドローラ166の各軸には、チェーン174を介して相互に回転可能に連結されたスプロケット176が設けられ、各上側ガイドローラ168及び各下側ガイドローラ166の回転が同期させられるようになっている。これにより、入口ガイドローラ162から送り込まれた材料シート16が、搬送過程でイミド化が行なわれてポリイミド金属積層シート10へ変換され、出口ガイドローラ164から送り出されるようになっている。
【0053】
加熱ケース40の支持板160の裏面に対向する壁には、不活性ガスとして窒素ガスを供給するNパージポート178が、下側ガイドローラ166の配列方向及び上側ガイドローラ168の配列方向にそれぞれ沿って複数個設けられており、加熱ケース40の高さ方向及び幅方向の中央部には、排気ポート180が設けられている。図11は、加熱処理装置30に備えられた電子制御装置218を示している。加熱ケース40には、加熱ケース40内の加熱温度を検出する温度センサ182が設けられている。また、巻出ロール収容ケース36、巻取ロール収容ケース38、加熱ケース40には、それら内の真空度を検出する真空度センサ184、186、188が設けられている。真空度センサ184、186、188は、例えばピラニ真空度計から構成される。
【0054】
図4に示すように、加熱処理装置30には、少なくとも材料シート16のイミド化処理の過程において、巻出ロール収容ケース36、巻取ロール収容ケース38、加熱ケース40内を真空とするための真空圧制御回路190が設けられている。真空圧制御回路190は、電子制御装置218からの指令に従って加熱ケース40内の圧力を調節する圧力制御弁192、及び加熱ケース40内から吸引する気体に含まれる溶剤を除去するコールドトラップ194を介して、加熱ケース40と接続された真空ポンプ196と、真空ポンプ196と巻出ロール収容ケース36、巻取ロール収容ケース38、及び加熱ケース40との間にそれぞれ設けられ、後述の電子制御装置218からの指令に従って、閉位置、真空ポンプ接続位置、大気導入位置へ選択的に切り換えられる切換制御弁198、200、202と、を備えている。
【0055】
また、加熱処理装置30には、巻出ロール収容ケース36、巻出側連結筒42、巻取ロール収容ケース38、巻取側連結筒44、及び加熱ケース40にそれぞれ不活性ガスとして窒素ガスを供給する窒素供給回路204が設けられている。窒素供給回路204は、窒素ガスが圧縮状態或いは液化状態で封入された窒素供給源206と、窒素供給源206と巻出ロール収容ケース36、巻出側連結筒42、巻取ロール収容ケース38、巻取側連結筒44、及び加熱ケース40との間にそれぞれ設けられ、後述の電子制御装置218からの指令に従ってそれぞれ開閉作動する複数の開閉弁208、210、212、214、216と、を備えている。巻出側連結筒42に供給される窒素ガスは、図6に示すように巻出側吹込ノズル320により巻出側連結筒42内に吹込ガス302として吹き込まれる。巻取側連結筒44に供給される窒素ガスは、図8に示すように巻取側吹込ノズル370により巻取側連結筒44内に吹込ガス302として吹き込まれる。
【0056】
図11に示す電子制御装置218は、例えばCPU、ROM、RAM、入出力インターフェースを含むマイクロコンピュータであって、予め記憶されたプログラムにしたがって入力信号を処理することで、イミド化制御、巻出ロール交換制御、巻取ロール交換制御等を実行する。
【0057】
電子制御装置218は、加熱処理装置30の立上制御、定常運転制御、巻出ロール取替制御及び巻取ロール取替制御を行なうための運転制御部220と、定常運転時においてイミド化に必要な温度及び処理時間を制御するイミド化処理制御部222と、定常運転制御時において巻出ロール32からの巻出張力、加熱ケース40内の搬送張力及び巻取ロール34の巻き取り張力をそれぞれ制御する張力制御部224と、巻出ロール32から引き出された材料シート16の幅方向位置及び巻取ロール34の巻き取られる前のポリイミド金属積層シート10の幅方向位置を予め設定された幅位置に制御する幅位置制御部226と、を機能的に備えている。
【0058】
運転制御部220は、巻出ロール32が巻出ロール収容ケース36内にセットされ、巻取ロール34が巻取ロール収容ケース38内にセットされた状態で、起動操作入力に応答して、巻出ロール収容ケース36、加熱ケース40、巻取ロール収容ケース38内をそれぞれ常用真空例えば20Torr(2666Pa)とする定常運転直前の状態とする立上制御を、定常運転に先立って順次実行する。
【0059】
運転制御部220は、立上制御完了状態から、巻出ロール32から材料シート16を連続的に引き出して不活性ガス下の真空状態で加熱することによりポリアミド酸のイミド化を行い、イミド化反応後のポリイミド金属積層シート10を巻取ロール34に連続的に巻き取るという定常運転に切り換える。運転制御部220は、この定常運転に際して、図4に示す開閉弁208、210、212、214、216を開くことで、不活性ガスである窒素ガスを巻出ロール収容ケース36、巻出側連結筒42、加熱ケース40、巻取側連結筒44及び巻取ロール収容ケース38内へ供給するとともに、巻出側開閉ゲート148を開き、加熱ケース40内の減速機付モータ52、モータ74、モータ124、減速機付モータ102、モータ172等を送りモータ駆動回路230を介して駆動し、ヒータ170により材料シート16を加熱する。好適には、常用真空例えば20Torrにおいて、250℃以上300℃以下且つ10分以上20分以下の加熱条件で加熱するものである。この定常運転では、巻出ロール収容ケース36、巻取ロール収容ケース38、および加熱ケース40内に、パージポート92、パージポート144、およびNパージポート178から窒素ガスが導入されるが、加熱ケース40の排気ポート180のみから排気される。
【0060】
大気圧(常圧)で加熱する従来の加熱処理装置では、ポリアミド酸のイミド化を確保し、ポリイミド金属積層シート10のポリイミド樹脂の品質を維持するために400℃且つ30分という熱処理が必要であったのに対して、本実施例の加熱処理装置30は、従来の加熱処理装置に比較して、100℃以上低い温度且つ10分以上短縮された加熱時間で、前記材料シートを加熱できる。このため、ポリイミド金属積層シート10を製造するための加熱処理装置30の設備の大きさが比較的小型となる。また、大気圧よりも低い真空に維持された加熱ケース40内において、加熱ケース40を通過する材料シート16がヒータ170により加熱されるので、材料シート16の金属箔12上のポリアミド酸が比較的低温且つ短時間で充分にイミド化される。
【0061】
イミド化処理制御部222は、上記定常運転時において、加熱ケース40をイミド化に必要な真空度、温度および処理時間となるように制御する。定常運転時には、窒素ガスが、巻出ロール収容ケース36、巻出側連結筒42、加熱ケース40、巻取側連結筒44、および巻取ロール収容ケース38内へ供給され、その窒素ガスが加熱ケース40の排気ポート180から真空ポンプ196によって吸引されるとともに、圧力制御弁192によって巻出ロール収容ケース36、加熱ケース40、巻取ロール収容ケース38内が20Torrに調圧される。
【0062】
張力制御部224は、巻出張力制御部224aと送込張力制御部224bとを備えている。巻出張力制御部224aは、運転制御部220による定常運転時において、巻出ロール32から予め設定された一定の張力で材料シート16を引き出すように、張力センサ66により検出されたテンションローラ56の高さが一定となるように巻出ロール32の回転を制御する。送込張力制御部224bは、運転制御部220による定常運転時において、送込張力制御部224bにより引き出された材料シート16を予め設定された一定の張力を付与して加熱ケース40に送り込むように、張力センサ90により検出された水平レバー84の角度が水平となるように駆動ローラ76の回転を制御する。
【0063】
また、張力制御部224は、引出張力制御部224cと巻取張力制御部224dとを、備えている。引出張力制御部224cは、運転制御部220による定常運転時において、加熱ケース40からポリイミド金属積層シート10を予め設定された一定の張力で引き出すように、張力センサ142により検出された水平レバー134の角度が水平となるように冷却フィードローラ126を駆動するモータ124の回転を制御する。巻取張力制御部224dは、運転制御部220による定常運転時において、ポリイミド金属積層シート10を巻取ロール34に予め設定された一定の張力で巻き取るように、張力センサ116により検出されたテンションローラ106の高さが一定となるように巻取ロール34を駆動する減速機付モータ102の回転を制御する。
【0064】
図5の幅位置制御部226は、巻出側幅位置制御部226aと巻取側幅位置制御部226bとを備えている。巻出側幅位置制御部226aは、運転制御部220による定常運転時において、巻出側幅方向位置センサ62により検出された巻出ロール32から引き出された材料シート16の幅方向位置が予め設定された目標幅方向位置となるように、巻出側幅方向アクチュエータ54を制御する。巻取側幅位置制御部226bは、運転制御部220による定常運転時において、巻取側幅方向位置センサ112により検出された巻取ロール34に巻き取られるポリイミド金属積層シート10の幅方向位置が予め設定された目標幅方向位置となるように、巻取側幅方向アクチュエータ104を制御する。
【0065】
本実施例の加熱処理装置30は、金属箔12の一面にポリイミド樹脂が層状に貼り着けられたポリイミド金属積層シート10を製造するためのポリイミド金属積層シート10の加熱処理装置30であって、帯状の金属箔12上に有機溶剤14bを含むポリアミド酸の塗布液14cが層状に塗布された帯状の材料シート16がロール状に巻回された巻出ロール32を収容する巻出ロール収容ケース36と、材料シート16が熱処理されて製造された帯状のポリイミド金属積層シート10を巻き取る巻取ロール34を収容する巻取ロール収容ケース38と、材料シート16を通過させる巻出側連結筒42を介して巻出ロール収容ケース36に気密に連結されるとともに、熱処理後の帯状のポリイミド金属積層シート10を通過させる巻取側連結筒44を介して巻取ロール収容ケース38に気密に連結され、巻出側連結筒42から巻取側連結筒44へ連続的に搬送される材料シート16を真空下で加熱して前記ポリアミド酸をイミド化するヒータ170を収容する加熱ケース40と、を含む。
【0066】
上述のように、本実施例の加熱処理装置30によれば、材料シート16を通過させるスリット328が形成され、巻出側連結筒42の巻出ロール収容ケース36側の開口42aを閉じるスリット付遮蔽部材330、および、巻出側連結筒42内に吹込ガス302を吹き込む吹込ノズル320を備える。これにより、加熱ケース40内の熱処理中において、巻出側連結筒42内では、加熱ケース40側に向う窒素ガスの流れが形成され、加熱ケース40内の溶剤ガスが巻出ロール収容ケース36内へ流入することが充分に防止される。また、本実施例の加熱処理装置30によれば、前記ポリイミド金属積層シート10を通過させるスリット378が形成され、巻取側連結筒44の巻取ロール収容ケース38側の開口44aを閉じるスリット付遮蔽部材380、および、巻取側連結筒44内に吹込ガス302を吹き込む吹込ノズル370と、を備える。これにより、加熱ケース40内の熱処理中において、巻取側連結筒44内では、加熱ケース40側に向う窒素ガスの流れが形成され、加熱ケース40内の溶剤ガスが巻取ロール収容ケース38内へ流入することが充分に防止される。
【0067】
また、本実施例の加熱処理装置30によれば、巻出側吹込ノズル320は、材料シート16に向って加熱ケース40側に向う方向成分を有する斜め方向に吹込ガス302を吹き込むように傾斜させられている吹込孔(322a、322b)を有する。これにより、加熱ケース40内の溶剤ガスがスリット付遮蔽部材330へ到達し難くなり、一層、加熱ケース40内の溶剤ガスが巻出ロール収容ケース36内へ流入することが防止される。同様に、巻取側吹込ノズル370は、ポリイミド金属積層シート10に向って加熱ケース40側に向う方向成分を有する斜め方向に吹込ガス302を吹き込むように傾斜させられている吹込孔(372a、372b)を有する。これにより、加熱ケース40内の溶剤ガスがスリット付遮蔽部材380へ到達し難くなり、一層、加熱ケース40内の溶剤ガスが巻取ロール収容ケース38内へ流入することが防止される。
【0068】
また、本実施例の加熱処理装置30によれば、巻出側吹込ノズル320は、材料シート16の上方から材料シート16へ向って吹込ガス302を吹き込む上吹込孔322aと、材料シート16の下方から材料シート16へ向って吹込ガス302を吹き込む下吹込孔322bと、を有する。これにより、材料シート16では、上吹込孔322aからの吹込ガス302を受けることで生じる下向きの力と、下吹込孔322bからの吹込ガス302を受けることにより生じる上向きの力とが相殺されるので、材料シート16の直進性が確保される。同様に、巻取側吹込ノズル370は、ポリイミド金属積層シート10の上方からポリイミド金属積層シート10へ向って吹込ガス302を吹き込む上吹込孔372aと、ポリイミド金属積層シート10の下方からポリイミド金属積層シート10へ向って吹込ガス302を吹き込む下吹込孔372bと、を有する。これにより、ポリイミド金属積層シート10では、上吹込孔372aからの吹込ガス302を受けることで生じる下向きの力と、下吹込孔372bからの吹込ガス302を受けることにより生じる上向きの力とが相殺されるので、ポリイミド金属積層シート10の直進性が確保される。
【0069】
また、本実施例の加熱処理装置30によれば、スリット付遮蔽部材330は、締結ボルト332によって締結される一対の上スリット板330aおよび下スリット板330bであり、締結時に上スリット板330aの上下方向の位置が変更されることでスリット328の開口面積を調節可能とする、締結ボルト332を通すための上下方向に長手状に上スリット板330aに形成された長穴334、および、下スリット板330bの上下方向の位置が変更されることでスリット328の開口面積を調節可能とする、締結ボルト332を通すための上下方向に長手状に下スリット板330bに形成された長穴334の少なくとも一方を有する。これにより、材料シート16の厚みに応じて、可及的に開口面積が小さくなるようにスリット328の開口面積すなわち上下方向の幅寸法を変更することができる。
【0070】
また、本実施例の加熱処理装置30によれば、スリット付遮蔽部材380は、締結ボルト382によって締結される一対の上スリット板380aおよび下スリット板380bであり、締結時に上スリット板380aの上下方向の位置が変更されることでスリット378の開口面積を調節可能とする、締結ボルト382を通すための上下方向に長手状に上スリット板380aに形成された長穴384、および、下スリット板380bの上下方向の位置が変更されることでスリット378の開口面積を調節可能とする、締結ボルト382を通すための上下方向に長手状に下スリット板380bに形成された長穴384の少なくとも一方を有する。これにより、ポリイミド金属積層シート10の厚みに応じて、可及的に開口面積が小さくなるようにスリット378の開口面積すなわち上下方向の幅寸法を変更することができる。
【0071】
また、本実施例の加熱処理装置30によれば、巻出側連結筒42と加熱ケース40との間には、巻出側開閉ゲート304が巻出側連結筒42と直列に設けられており、巻取側連結筒44と巻取ロール収容ケース38との間には、巻取側開閉ゲート354が巻取側連結筒44と直列に設けられている。これにより、加熱ケース40内の真空状態を維持しつつ、巻出ロール収容ケース36内の巻出ロール32の交換、或いは、巻取ロール収容ケース38内の巻取ロール34の交換が可能となる。
【0072】
また、本実施例の加熱処理装置30によれば、巻出側開閉ゲート304と加熱ケース40との間には、巻出側冷却筒314が巻出側開閉ゲート304と直列に設けられており、巻取側開閉ゲート354と巻取ロール収容ケース38との間には、巻取側冷却筒364が巻取側開閉ゲート354と直列に設けられている。これにより、加熱ケース40から巻出ロール収容ケース36へ伝達される熱、および加熱ケース40から巻取ロール収容ケース38へ伝達される熱がそれぞれ冷却されるので、巻出ロール収容ケース36内および巻取ロール収容ケース38内の昇温が抑制される。
【0073】
以上、本発明を図面を参照して詳細に説明したが、本発明はその他の態様においても適用される。
【0074】
例えば、前述の実施例において、巻出側連結筒42および巻取側連結筒44の両方に、巻出側吹込ノズル320および巻取側吹込ノズル370が設けられていたが、巻出側連結筒42および巻取側連結筒44のうち、必要とされる一方のみに吹込ノズルが設けられていてもよい。要するに、巻出側連結筒42および巻取側連結筒44の一方に吹込ノズルが設けられていてもよい。
【0075】
また、前述の実施例において、巻出ロール収容ケース36に形成された送出孔326を塞ぐスリット付遮蔽部材330が巻出ロール収容ケース36に取り付けられ、巻取ロール収容ケース38に形成された送入孔376を塞ぐスリット付遮蔽部材380が巻取ロール収容ケース38に取り付けられていた。しかし、それらスリット付遮蔽部材330およびスリット付遮蔽部材380のうちの一方が、吹込ノズルが設けられた側に設けられていてもよい。
【0076】
また、前述の実施例において、長穴334は、上スリット板330aおよび下スリット板330bの両方に設けられていたが、上スリット板330aおよび下スリット板330bのうちの一方に設けられていてもよい。また、スリット付遮蔽部材330は、締結ボルト332によって巻出ロール収容ケース36に固定されていたが、加熱ケース40や巻出側連結筒42に固定されていてもよい。
【0077】
また、前述の実施例において、長穴384は、上スリット板380aおよび下スリット板380bの両方に設けられていたが、上スリット板380aおよび下スリット板380bのうちの一方に設けられていてもよい。また、スリット付遮蔽部材380は、締結ボルト382によって巻取ロール収容ケース38に固定されていたが、加熱ケース40や巻取側連結筒44に固定されていてもよい。
【0078】
また、前述の実施例において、巻出ロール収容ケース36と加熱ケース40との間に巻出側冷却筒314が設けられ、加熱ケース40と巻取ロール収容ケース38との間に巻取側冷却筒364が儲けられていたが、それら巻出側冷却筒314および巻取側冷却筒364は、必ずしも設けられていなくてもよい。
【0079】
また、前述の実施例のポリイミド樹脂層14は、非感光性ポリイミド樹脂および感光性ポリイミド樹脂のいずれであってもよい。
【0080】
また、前述の実施例では、イミド化のための熱処理を行なう加熱ケース40内には、Nパージポート178から窒素ガスが供給されていたが、必ずしも窒素ガスが供給されていなくてもよい。例えば20Torrの真空状態とするだけでも酸素濃度が常圧(大気圧)の酸素濃度に対して例えば0.54%と低い値とされるので、金属箔12の酸化が抑制される。
【0081】
また、前述の実施例の巻出側吹込ノズル320および巻取側吹込ノズル370は、加熱ケース40側へ向う方向成分を含む斜め方向に形成されていたが、必ずしも斜め方向でなくてもよい。
【0082】
また、前述の実施例において、加熱ケース40内の下側ガイドローラ166及び上側ガイドローラ168は、支持板160により片持ち状で支持されていたが、一対の支持板によって両持ち状で支持されていてもよい。
【0083】
また、前述の実施例において、加熱処理装置30によりポリイミド金属積層シート10が製造されていたが、液晶ポリマー(LCP)やフッ素樹脂系の金属積層シート、リチウムイオン電池(LiB)の極板に用いる積層シート、プリプレグ(prepreg)に用いる熱硬化樹脂が含浸された繊維基材などのシートであってもよい。要するに、有機溶剤を含む帯状の材料シートが熱処理されて製造されるシートであればよい。
【0084】
また、前述の実施例では、不活性ガスとして窒素ガスが用いられて窒素供給回路204から巻出ロール収容ケース36、巻出側連結筒42、巻取ロール収容ケース38、巻取側連結筒44、及び加熱ケース40にそれぞれ供給されていたが、アルゴンガス、炭酸ガスなどの他の種類の不活性ガスが供給されてもよく、吹込ガス302として用いられてもよい。また、酸素と反応しないシート、例えばプリプレグに用いる熱硬化樹脂が含浸された繊維基材などのシートの場合には、不活性ガスに替えて空気が吹込ガス302として巻出側連結筒42や巻取側連結筒44に吹き込まれてもよい。
【0085】
なお、本発明は、その主旨を逸脱しない範囲において種々変更を加え得るものである。
【符号の説明】
【0086】
10:ポリイミド金属積層シート(熱処理されたシート)
14b:有機溶剤
14c:塗布液
16:材料シート
30:加熱処理装置
32:巻出ロール
34:巻取ロール
36:巻出ロール収容ケース
38:巻取ロール収容ケース
40:加熱ケース
42:巻出側連結筒
42a:開口
44:巻取側連結筒
44a:開口
170:ヒータ
302:吹込ガス
304:巻出側開閉ゲート
314:巻出側冷却筒
320:巻出側吹込ノズル(吹込ノズル)
322a:上吹込孔(吹込孔)
322b:下吹込孔(吹込孔)
326:送出孔
328:スリット
330:スリット付遮蔽部材
330a:上スリット板
330b:下スリット板
332:締結ボルト
334:長穴
354:巻取側開閉ゲート
364:巻取側冷却筒
370:巻取側吹込ノズル(吹込ノズル)
372a:上吹込孔(吹込孔)
372b:下吹込孔(吹込孔)
376:送入孔
378:スリット
380:スリット付遮蔽部材
380a:上スリット板
380b:下スリット板
382:締結ボルト
384:長穴
【要約】
【課題】加熱ケース内の溶剤ガスが巻取ロール収容ケース内へ流入することが充分に防止されるシートの加熱処理装置を提供する。
【解決手段】加熱処理装置30は、ポリイミド金属積層シート10を通過させる巻取側連結筒44を介して巻取ロール収容ケース38に気密に接続される加熱ケース40と、熱処理後のポリイミド金属積層シート10を通過させるスリット378が形成され巻取側連結筒44の巻取ロール収容ケース38側の開口44aを閉じるスリット付遮蔽部材380と、巻取側連結筒44内に窒素ガスを吹き込む吹込ノズル370と、を備える。これにより、加熱ケース40内の熱処理中において、巻取側連結筒44内では、加熱ケース40側に向う窒素ガスの流れが形成され、加熱ケース40内の溶剤ガスが巻取ロール収容ケース38内へ流入することが充分に防止される。
【選択図】図8
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11