特許第6913992号(P6913992)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6913992
(24)【登録日】2021年7月15日
(45)【発行日】2021年8月4日
(54)【発明の名称】斜面作業車両用走行制御装置
(51)【国際特許分類】
   A01B 69/00 20060101AFI20210727BHJP
   A01D 34/86 20060101ALI20210727BHJP
   B62D 1/26 20060101ALI20210727BHJP
【FI】
   A01B69/00 303N
   A01D34/86
   B62D1/26
   A01B69/00 Z
【請求項の数】8
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2017-73415(P2017-73415)
(22)【出願日】2017年4月3日
(65)【公開番号】特開2018-174707(P2018-174707A)
(43)【公開日】2018年11月15日
【審査請求日】2020年4月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】390005234
【氏名又は名称】株式会社筑水キャニコム
(73)【特許権者】
【識別番号】504145342
【氏名又は名称】国立大学法人九州大学
(74)【代理人】
【識別番号】110002549
【氏名又は名称】特許業務法人綾田事務所
(72)【発明者】
【氏名】彌永 剛
(72)【発明者】
【氏名】酒井 志有斗
(72)【発明者】
【氏名】山本 元司
【審査官】 竹中 靖典
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−073415(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01B 69/00
A01D 34/86
B62D 1/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動または遠隔操作による走行及び操舵可能な車両に搭載されるものであって、
作業予定斜面の上部に左右一対の固定アンカーで作業予定斜面の幅方向に沿って張り渡たされる第1ワイヤと、該第1ワイヤに係合した第1滑車により第1ワイヤに沿って横移動する滑車ユニットと、車両搭載部と、を備え、
前記滑車ユニットにおける第1ワイヤの下方には左右一対の第2滑車を備え、
前記車両搭載部には、回転制御モータにより2本の第2ワイヤをそれぞれ独立して巻き取り及び繰り出し駆動可能な一対のワイヤドラムと、車両走行制御部と、を備え、
前記2本の第2ワイヤの先端はそれぞれ前記左右一対の第2滑車を経由してそれぞれ前記固定アンカーに接続固定され、
前記車両走行制御部は、前記車両の走行速度及び操舵方向に同期して前記一対のワイヤドラムへの前記左右一対の第2ワイヤの巻き取り又は繰り出しを制御することで作業斜面に沿って車両のジグザグ走行制御を行うように構成されていることを特徴とする斜面作業車両用走行制御装置。
【請求項2】
請求項1記載の斜面作業車両用走行制御装置において、
前記ワイヤドラムには、各ワイヤドラムへの第2ワイヤの巻き取り及び繰り出しを整列する整列巻き機構を備えることを特徴とする斜面作業車両用走行制御装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載の斜面作業車両用走行制御装置において、
前記ワイヤドラムには、両第2ワイヤの張り具合を検知するテンションセンサを備えることを特徴とする斜面作業車両用走行制御装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の斜面作業車両用走行制御装置において、
前記車両の車輪は、その外周面に地面に食い込む複数本の突起を備えることを特徴とする斜面作業車両用走行制御装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の斜面作業車両用走行制御装置において、
前記車両には、該車両の傾きを検出する傾斜計を備えることを特徴とする斜面作業車両用走行制御装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の斜面作業車両用走行制御装置において、
前記車両には、方位計及びジャイロセンサを備えることを特徴とする斜面作業車両用走行制御装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の斜面作業車両用走行制御装置において、
前記車両が草刈機であることを特徴とする斜面作業車両用走行制御装置。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の斜面作業車両用走行制御装置において、
前記車両が4輪駆動4輪同位相操舵可能であることを特徴とする斜面作業車両用走行制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、斜面の草刈作業等に用いられる斜面作業車両用走行制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道沿線、道路周辺の草刈は、斜面での作業が多いが、従来このような斜面作業に適用できる機械が無いため、刈払機による人力が主体である。
このため、転落の危険性がある。刈刃が石や岩に接触しその反動で怪我をしたり、飛散した異物により周囲の人や物を傷付ける、等の問題がある。
また、斜面作業車両用車輪として、走行車輪の外周に地面に食い込む爪、スパイク等の突起を配設した車輪が知られている。(特許文献1参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−342046号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、走行車輪の外周が地面に食い込む爪、スパイク等の突起を配設した車輪を用いた車両であっても、急な斜面での作業はきわめて危険である。
【0005】
本発明の解決しようとする課題は、斜面で車体の滑落を防止し、安全に自動又は遠隔操作で走行させることが可能な斜面作業車両用走行制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため請求項1記載の斜面作業車両用走行制御装置は、
自動または遠隔操作による走行及び操舵可能な車両に搭載されるものであって、
作業予定斜面の上部に左右一対の固定アンカーで作業予定斜面の幅方向に沿って張り渡たされる第1ワイヤと、該第1ワイヤに係合した第1滑車により第1ワイヤに沿って横移動する滑車ユニットと、車両搭載部と、を備え、
前記滑車ユニットにおける第1ワイヤの下方には左右一対の第2滑車を備え、
前記車両搭載部には、回転制御モータにより2本の第2ワイヤをそれぞれ独立して巻き取り及び繰り出し駆動可能な一対のワイヤドラムと、車両走行制御部と、を備え、
前記2本の第2ワイヤの先端はそれぞれ前記左右一対の第2滑車を経由してそれぞれ前記固定アンカーに接続固定され、
前記車両走行制御部は、前記車両の走行速度及び操舵方向に同期して前記一対のワイヤドラムへの前記左右一対の第2ワイヤの巻き取り又は繰り出しを制御することで作業斜面に沿って車両のジグザグ走行制御を行うように構成されていることを特徴とする手段とした。
【0007】
また、請求項2記載の斜面作業車両用走行制御装置は、請求項1記載の斜面作業車両用走行制御装置において、
前記ワイヤドラムには、各ワイヤドラムへの第2ワイヤの巻き取り及び繰り出しを整列する整列巻き機構を備えることを特徴とする手段とした。
【0008】
また、請求項3記載の斜面作業車両用走行制御装置は、請求項1又は2記載の斜面作業車両用走行制御装置において、
前記ワイヤドラムには、両第2ワイヤの張り具合を検知するテンションセンサを備えることを特徴とする手段とした。
【0009】
また、請求項4記載の斜面作業車両用走行制御装置は、請求項1〜3のいずれか1項に記載の斜面作業車両用走行制御装置において、
前記車両の車輪は、その外周面に地面に食い込む複数本の突起を備えることを特徴とする手段とした。
【0010】
また、請求項5記載の斜面作業車両用走行制御装置は、請求項1〜4のいずれか1項に記載の斜面作業車両用走行制御装置において、
前記車両には、該車両の傾きを検出する傾斜計を備えることを特徴とする手段とした。
【0011】
また、請求項6記載の斜面作業車両用走行制御装置は、請求項1〜5のいずれか1項に記載の斜面作業車両用走行制御装置において、
前記車両には、方位計及びジャイロセンサを備えることを特徴とする手段とした。
【0012】
また、請求項7記載の斜面作業車両用走行制御装置は、請求項1〜6のいずれか1項に記載の斜面作業車両用走行制御装置において、
前記車両が草刈機であることを特徴とする手段とした。
【0013】
また、請求項8記載の斜面作業車両用走行制御装置は、請求項1〜7のいずれか1項に記載の斜面作業車両用走行制御装置において、前記車両が4輪駆動4輪同位相操舵可能であることを特徴とする手段とした。
【発明の効果】
【0014】
請求項1記載の斜面作業車両用走行制御装置では、上述のように、作業予定斜面の上部に左右一対の固定アンカーで作業予定斜面の幅方向に沿って張り渡たされる第1ワイヤと、該第1ワイヤに係合した第1滑車により第1ワイヤに沿って横移動する滑車ユニットと、車両搭載部と、を備え、
前記滑車ユニットにおける第1ワイヤの下方には左右一対の第2滑車を備え、
前記車両搭載部には、回転制御モータにより2本の第2ワイヤをそれぞれ独立して巻き取り及び繰り出し駆動可能な一対のワイヤドラムと、車両走行制御部と、を備え、
前記2本の第2ワイヤの先端はそれぞれ前記左右一対の第2滑車を経由してそれぞれ前記固定アンカーに接続固定され、
前記車両走行制御部は、前記車両の走行速度及び操舵方向に同期して前記一対のワイヤドラムへの前記左右一対の第2ワイヤの巻き取り又は繰り出しを制御することで作業斜面に沿って車両のジグザグ走行制御を行うように構成されるため、斜面で車体の滑落を防止し、安全に自動又は遠隔操作で走行させることができるようになる。
また、第2ワイヤの他に滑車ユニットの第1滑車を係止した第1ワイヤを備えることで、第2ワイヤが切れた場合でも車両の滑落を阻止することができるようになるという効果が得られる。
【0015】
請求項2記載の斜面作業車両用走行制御装置では、上述のように、ワイヤドラムには、各ワイヤドラムへのワイヤの巻き取りを整列する整列巻き機構を備えることで、自動走行の正確性を確保することができるようになる。
【0016】
請求項3記載の斜面作業車両用走行制御装置では、上述のように、ワイヤドラムには、両ワイヤの張り具合を制御するテンション制御装置を備えることで、自動走行の正確性を確保することができるようになる。
【0017】
請求項4記載の斜面作業車両用走行制御装置では、上述のように、車両の車輪は、その外周面に地面に食い込む複数本の突起を備えることで車輪スリップによる走行制御誤差の発生を防止することができるようになる。
【0018】
請求項5記載の斜面作業車両用走行制御装置では、上述のように、車両には、該車両の傾きを検出する傾斜計を備えることで、現在の車両の傾き具合に応じてその他の制御を補完することができる。
【0019】
請求項6記載の斜面作業車両用走行制御装置では、上述のように、車両には、方位計及びジャイロセンサを備えることで、車両の向きの変化を検出し、方位計の精度を補完することができる。
【0020】
請求項7記載の斜面作業車両用走行制御装置では、上述のように、車両が草刈機の場合、斜面の草刈作業を自動又は遠隔操作で安全かつ能率的に行うことができるようになる。
【0021】
請求項8記載の斜面作業車両用走行制御装置では、上述のように、車両が4輪駆動4輪同位相操舵可能であるため、草刈り等の作業のジグザグ走行操作が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】実施例1の斜面作業車両用走行制御装置を適用した草刈機を示す斜視図である。
図2】実施例1の斜面作業車両用走行制御装置を示す車両左右方向走行時の斜視図である。
図3】実施例1の斜面作業車両用走行制御装置を示す車両上下方向走行時の斜視図である。
図4】滑車ユニット部分の詳細を示す正面図である。
図5】滑車ユニット部分の詳細を示す右側面図である。
図6図4のS6−S6線における縦断側面図である。
図7】実施例1の車両搭載部を示す平面図である。
図8図7のS8−S8線における縦断面図である。
図9】実施例1の斜面作業車両用走行制御装置を示す制御ブロック図である。
図10】実施例1の斜面作業車両用走行制御装置を適用した草刈機の走行制御の操作準備状況を示す斜視図である。
図11】実施例1の斜面作業車両用走行制御装置を適用した草刈機の走行制御の操作準備状況を示す正面図である。
図12】実施例1の斜面作業車両用走行制御装置を適用した草刈機の自動走行設定を示す正面図である。
図13】実施例1の斜面作業車両用走行制御装置を適用した草刈機の自動走行を示す斜視図である。
図14】実施例1の斜面作業車両用走行制御装置のループAの制御内容を示す制御フロー図である。
図15】実施例1の斜面作業車両用走行制御装置のループBの制御内容を示す制御フロー図である。
図16】実施例1の斜面作業車両用走行制御装置のループCの制御内容を示す制御フロー図である。
図17】実施例1の斜面作業車両用走行制御装置のループDの制御内容を示す制御フロー図である。
図18】実施例1の斜面作業車両用走行制御装置のループAの制御内容を示す説明図である。
図19】実施例1の斜面作業車両用走行制御装置のループBの制御内容を示す説明図である。
図20】実施例1の斜面作業車両用走行制御装置のループCの制御内容を示す説明図である。
図21】実施例1の斜面作業車両用走行制御装置のループDの制御内容を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下にこの発明の実施例を図面に基づいて説明する。
【実施例1】
【0024】
まず、この実施例1の斜面作業車両用走行制御装置を図面に基づいて説明する。
【0025】
この実施例1の斜面作業車両用走行制御装置は、図1〜8、10に示すように、遠隔もしくは自動で走行、操舵が可能な、4輪駆動で4輪(車輪Aa、Ab、Ac、Ad)同位相操舵可能な草刈機(車両)Aに搭載されるものであって、
作業予定斜面Gの上部に固定アンカー1a、1aで固定された三脚1、1で作業予定斜面Gの幅方向に沿って張り渡たされる第1ワイヤ2と、第1ワイヤ2に係合した左右一対の第1滑車31、31により第1ワイヤ2に沿って横移動する滑車ユニット3と、車両搭載部4と、を主な構成として備えている。
【0026】
さらに、詳述すると、前記滑車ユニット3における第1ワイヤ2の下方には左右一対の第2滑車32、33を備えている。
【0027】
前記車両搭載部4は、減速機を備えた左ドラム駆動モータ(回転制御モータ)5及び減速機を備えた右ドラム駆動モータ(回転制御モータ)6により2本の第2ワイヤ7、8をそれぞれ独立して巻き取り及び繰り出し駆動可能な一対のワイヤドラム9、10と、車両走行制御部11と、を備えている。
前記2本の第2ワイヤ7、8の先端はそれぞれ前記左右一対の第2滑車32、33を経由してそれぞれ前記三脚1、1に接続固定されている。
【0028】
前記車両走行制御部11は、前記草刈機Aの走行速度及び操舵方向に同期して一対のワイヤドラム9、10への左右一対の第2ワイヤ7、8の巻き取り又は繰り出しを制御することで作業斜面Gに沿って草刈機Aのジグザグ走行制御を行うように構成されている。
【0029】
また、図8、9に示すように、ワイヤドラム9、10には、各ワイヤドラム9、10への第2ワイヤ7、8の巻き取りを整列させるための整列巻き機構と、各第2ワイヤ7、8の張り具合(ワイヤテンション)を適正制御するテンションセンサ13、14及びワイヤ繰出量検出センサ15、16を備えている。
【0030】
左側の整列巻き機構は、図8に示すように、ワイヤドラム9に同期してドライブシャフト27が回転し、ドライバフレーム36のピン28がドライブシャフト27に設けられたエンドレスの溝29に嵌合することで、ドライブシャフト27の回転方向に従ってワイヤドラム9がローラーシャフト30に沿って左右に移動し、これにより、第2ワイヤ7をワイヤドラム9に整列巻き取りすることができるようになっている。
なお、図1において、34、35はワイヤガイドを示す。
【0031】
第2ワイヤ7、8の張り具合の適正制御は、第2ワイヤ7、8にかかる張力を制御し、第2ワイヤ7、8にたるみが生じないように、草刈機Aに対する第2ワイヤ7、8の角度を検出するセンサを配置し、その検出した値を基にワイヤドラム9、10を回転制御することで、草刈機Aの走行と同期させて適正な第2ワイヤ7、8の状態を維持する。
【0032】
次に、この実施例1の斜面作業車両用走行制御装置の詳細を図9の制御ブロック図に基づいて説明する。
草刈機Aには、車輪駆動モータ17と、車輪駆動モータ用エンコーダ18と、ステアリング駆動モータ19と、ステアリング駆動モータエンコーダ20と、進行方向を検出する方位計21と、ジャイロセンサ22と、走行速度を検出する車速計23と、傾きを検出する傾斜計24と、左ドラム駆動モータ用エンコーダ25と、右ドラム駆動モータ用エンコーダ26を備えている。
【0033】
次に、この実施例1の作用を図10〜13に基づいて説明する。
まず草刈機Aによる除草作業の準備作業として、図10、11に示すように、操作者が作業エリアの上面2ヶ所に三脚1、1を設置し、第1ワイヤ2の両端を三脚1、1により地上より1m前後浮かせた状態でその両端を埋め込アンカー1a、1aに接続固定するとことにより、草刈機Aと滑車3を結ぶ第1ワイヤ2が斜面上部と干渉しないようにセットする。
【0034】
次に、図11に示すように、遠隔操作により、草刈機Aを作業開始地点へ移動し、草刈機Aの向きが走行パターンに合致する姿勢にし、作業開始地点で草刈機Aの姿勢他の情報を記憶させる。
次に、図12に示すように、遠隔操作により、草刈機Aの向きが目標第1地点に合致する姿勢にし、遠隔操作にて目標第1地点まで走行することによって、草刈機Aの姿勢の他、作業範囲の横幅の情報を記憶させる。
【0035】
次に、図13に示すように、目標第1地点に到達後、斜面方向の矢印で示す距離を設定し、自動走行に切り替え、設定したエリアを自動で草刈りする。
【0036】
次に、自動走行制御の内容を図14〜17のフローチャート及び図18〜21の制御内容説明図に基づいて説明する。
【0037】
まず、図14のフローチャートにおいて、ステップS1では、制御部11において、イニシャライズ処理として以下の処理が行われる。
先ず、車両方位及び傾斜度適性化では、草刈機Aに搭載している方位計21から方位の値を取得し、傾斜計24から傾斜度を取得する。
また、ワイヤテンション適正化では、ワイヤ整列機構内にあるテンションセンサ13、14により、テンション値が適性値になるように各際やドラム9、10を回転制御する。
また、ワイヤ繰出量検出センサ15、16により、ワイヤ繰り出し量を取得する。
また、傾斜方向作業長さ取得では、草刈すべき斜面方向の距離を取得する。即ち、作業開始時点から目標第1地点までの距離が草刈作業範囲の横幅(草刈り作業幅)とすれば、斜面方向の距離はその縦幅(草刈長さ)であり、この数値を入力することによって斜面方向の全移動量が認識される。また、重複度の設定によって作業終了までに必要な折り返し回数が認識され、同時に転舵回数も認識される。
また、草刈幅重複度取得では、草刈機Aが直進時に草を刈ることが可能な幅を草刈り可能幅とし、草刈作業時には作業範囲を直進と折り返しを繰り返しながら作業をするが、その直進する際に、先の直進作業後の草刈可能幅と重複する量を指示する。この量を指示することで、作業範囲内で必要となる折り返し回数を認識する。
以上のイニシャライズ処理後、草刈機Aの除草装置を起動させる。
【0038】
続くステップS2では、ループをスタートさせる。
続くステップS3では、草刈機Aを斜面下り方向へ転舵する。
続くステップS4では、草刈機Aを前進(下方向)させる(図18参照)。
続くステップS5では、車両定速度・方位制御を行う。
車両定速度制御では、設定により、時速最小0.9km〜最大3.6kmで定速度制御を行う。
方位制御では、準備作業で設定された方位、又は走行パターンによる転舵方向に草刈機Aの進行方向を制御する。
続くステップS6では、左右の第2ワイヤ7、8を繰り出す方向にワイヤドラム9、10を回転させて草刈機Aを斜面下方へ走行させる。
続くステップS7では、草刈機Aが所定の距離を進んだか否かを判定し、NOであればステップS4へ戻る。
また、YESであればステップS8へ進み、所定の転舵回数に達したか否かを判定し、YESであれば、草刈機Aの走行を停止する。
また、NOであれば図15のループBへ進む。
【0039】
図15のフローチャートにおいて、ステップS9では、草刈機Aを左90度転舵させる。
続くステップS10では、草刈機Aを前進(右方向)させる(図19参照)。
続くステップS11では、車両定速度・方位制御を行う。
続くステップS12、13では、第2ワイヤ7繰り出し・第2ワイヤ8巻き取りを行う。すなわち、草刈機Aの進行方向及び走行速度に同期して、かつ、ワイヤテンションの適正化を保持するワイヤドラム9、10の回転を制御する。
続くステップS14では、草刈機Aが所定の距離を進んだか否かを判定し、NOであればステップS10へ戻る。
また、YESであればステップS15へ進み、所定の転舵回数に達したか否かを判定し、YESであれば、草刈機Aの走行を停止する。
また、NOであれば、図16のループCへ進む。
【0040】
図16のフローチャートにおいて、ステップS16では、草刈機Aを右90度転舵させる。
続くステップS17では、草刈機Aを前進(下方向)させる(図20参照)。
続くステップS18では、車両定速度・方位制御を行う。
続くステップS19では、左右の第2ワイヤ7、8を繰り出す方向にワイヤドラム9、10を回転させて草刈機Aを斜面下方へ走行させる。
続くステップS20では、草刈機Aが所定の距離を進んだか否かを判定し、NOであればステップS17へ戻る。
また、YESであればステップS21へ進み、所定の転舵回数に達したか否かを判定し、YESであれば、草刈機Aの走行を停止する。
また、NOであれば、図17のループDへ進む。
【0041】
図17のフローチャートにおいて、ステップS22では、草刈機Aを右90度転舵させる。
続くステップS23では、草刈機Aを前進(左方向)させる(図21参照)。
続くステップS24では、車両定速度・方位制御を行う。
続くステップS25、26では、第2ワイヤ7巻き取り・第2ワイヤ8繰り出しを行う。すなわち、草刈機Aの進行方向及び走行速度に同期して、かつ、ワイヤテンションの適正化を保持するワイヤドラム9、10の回転を制御する。
続くステップS27では、草刈機Aが所定の距離を進んだか否かを判定し、NOであればステップS23へ戻る。
また、YESであればステップS28へ進み、所定の転舵回数に達したか否かを判定し、YESであれば、草刈機Aの走行を停止する。
また、NOであれば、図15のループBへ進む。
以上の制御を繰り返すことで、作業斜面Gに沿って草刈機Aをジグザグ走行させることができる。
【0042】
次に、この実施例1の効果を説明する。
この実施例1の斜面作業車両用走行制御装置では、上述のように、作業予定斜面Gの上部に左右一対の固定アンカー1a、1aで作業予定斜面Gの幅方向に沿って張り渡たされる第1ワイヤ2と、第1ワイヤ2に係合した第1滑車31により第1ワイヤ2に沿って横移動する滑車ユニット3と、車両搭載部と、を備え、滑車ユニット3における第1ワイヤ2の下方には左右一対の第2滑車32、33を備え、車両搭載部4には、左ドラム駆動モータ5及び右ドラム駆動モータ6により2本の第2ワイヤ7、8をそれぞれ独立して巻き取り及び繰り出し駆動可能な一対のワイヤドラム9、10と、車両走行制御部11と、を備え、2本の第2ワイヤ7、8の先端はそれぞれ左右一対の第2滑車32、33及び三脚1、1を経由してそれぞれ固定アンカー1a、1aに接続固定され、車両走行制御部11は、車両の走行速度及び操舵方向に同期して一対のワイヤドラム9、10への左右一対の第2ワイヤ7、8の巻き取り又は繰り出しを制御することで作業斜面Gに沿って車両のジグザグ走行制御を行うように構成されるため、斜面Gで車体の滑落を防止し、安全に自動又は遠隔操作で走行させることができるようになる。
【0043】
また、第2ワイヤ7、8の他に滑車ユニット3の第1滑車31、31を係止した第1ワイヤ2を備えることで、第2ワイヤ7、8が切れた場合でも車両の滑落を阻止することができるようになるという効果が得られる。
【0044】
また、ワイヤドラム9、10には、各ワイヤドラム9、10の第2ワイヤ7、8の巻き取りを整列する整列巻き機構を備えることで、遠隔もしくは自動走行の正確性を確保することができるようになる。
【0045】
また、ワイヤドラム9、10は、第2ワイヤ7、8の張り具合を制御するテンション制御装置を備えることで、遠隔もしくは自動走行の正確性を確保する
【0046】
また、草刈機Aには、その傾きを検出する傾斜計24を備えることで、現在の草刈機Aの傾き具合に応じてその他の制御を補完することができる。
【0047】
また、草刈機Aには、方位計21及びジャイロセンサ22を備えることで、草刈機Aの向きの変化を検出し、方位計21の精度を補完することができる。
【0048】
また、草刈機Aが4輪駆動4輪同位相操舵可能であるため、草刈り等の作業のジグザグ走行操作が可能になる。
【0049】
以上本実施例を説明してきたが、本発明は上述の実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等があっても、本発明に含まれる。
【0050】
例えば、実施例では、車両として草刈機を例にとって説明したが、芝刈機やその他全ての作業車両に適用することができる。
【0051】
また、実施例1では、草刈機(車両)Aとして、4輪駆動で4輪(車輪Aa、Ab、Ac、Ad)同位相操舵可能な車両を例にとって説明したが、遠隔操作による走行及び操舵可能な車両であれば全て本発明を適用することができる。
【0052】
また、車輪の外周面には地面に食い込む複数本の突起を備えるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0053】
A 草刈機(車両)
Aa 車輪
Ab 車輪
Ac 車輪
Ad 車輪
1 三脚
1a 固定アンカー
2 第1ワイヤ
3 滑車ユニット
31 第1滑車
32 第2滑車
33 第2滑車
34 ワイヤガイド
35 ワイヤガイド
4 車両搭載部
5 左ドラム駆動モータ(回転制御モータ)
6 右ドラム駆動モータ(回転制御モータ)
7 第2ワイヤ
8 第2ワイヤ
9 左ワイヤドラム
10 右ワイヤドラム
11 車両走行制御部
13 テンションセンサ(左)
14 テンションセンサ(右)
15 ワイヤ繰出量検出センサ(左)
16 ワイヤ繰出量検出センサ(右)
17 車輪駆動モータ
18 車輪駆動モータ用エンコーダ
19 ステアリング駆動モータ
20 ステアリング駆動モータ用エンコーダ
21 方位計
22 ジャイロセンサ
23 車速計
24 傾斜計
25 左ドラム駆動モータ用エンコーダ
26 右ドラム駆動モータ用エンコーダ
27 ドライブシャフト
28 ピン
29 エンドレスの溝
30 ローラーシャフト
36 ドライバフレーム
G 作業予定斜面
図1
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