特許第6914095号(P6914095)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6914095ジアルコキシマグネシウムの製造方法、オレフィン類重合用触媒成分の製造方法、オレフィン類重合用触媒の製造方法、及びオレフィン類重合体の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6914095
(24)【登録日】2021年7月15日
(45)【発行日】2021年8月4日
(54)【発明の名称】ジアルコキシマグネシウムの製造方法、オレフィン類重合用触媒成分の製造方法、オレフィン類重合用触媒の製造方法、及びオレフィン類重合体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 29/70 20060101AFI20210727BHJP
   C07C 31/08 20060101ALI20210727BHJP
   C08F 4/654 20060101ALI20210727BHJP
   C08F 10/00 20060101ALI20210727BHJP
   C07F 3/02 20060101ALN20210727BHJP
【FI】
   C07C29/70
   C07C31/08
   C08F4/654
   C08F10/00 510
   !C07F3/02 Z
【請求項の数】7
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2017-91066(P2017-91066)
(22)【出願日】2017年5月1日
(65)【公開番号】特開2018-188382(P2018-188382A)
(43)【公開日】2018年11月29日
【審査請求日】2020年3月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】390007227
【氏名又は名称】東邦チタニウム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002538
【氏名又は名称】特許業務法人あしたば国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】保坂 元基
(72)【発明者】
【氏名】小川 速
(72)【発明者】
【氏名】小森 研太郎
(72)【発明者】
【氏名】菅野 利彦
【審査官】 三上 晶子
(56)【参考文献】
【文献】 特表2013−515832(JP,A)
【文献】 特開2003−201310(JP,A)
【文献】 特開2005−075995(JP,A)
【文献】 特開2010−030924(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07F 3/02
C08F 4/654
C08F 10/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属マグネシウムとアルコールを、反応促進剤の存在下で反応させて、ジアルコキシマグネシウムを得るジアルコキシマグネシウムの製造方法であって、
該反応促進剤が、下記一般式(1):
【化1】

(式中、Zは、Cl又はBrである。Rは、炭素数1〜20の炭化水素基である。)
で表されるカルボン酸モノハロゲン化合物、又は下記一般式(2):
【化2】

(式中、Zは、Cl又はBrであり、同一であっても、異なっていてもよい。Rは、炭素数1〜20の炭化水素基である。)
で表されるジカルボン酸ジハロゲン化合物であり、
反応系への該反応促進剤の導入を一度に行い、且つ、反応系への該金属マグネシウムの導入を複数回に分けて行うこと、
を特徴とするジアルコキシマグネシウムの製造方法。
【請求項2】
前記反応促進剤が、脂肪族カルボン酸モノハロゲン化合物、脂肪族ジカルボン酸ジハロゲン化合物、芳香族カルボン酸モノハロゲン化合物および芳香族ジカルボン酸ジハロゲン化合物から選ばれるいずれか1種以上であることを特徴とする請求項1記載のジアルコキシマグネシウムの製造方法。
【請求項3】
前記アルコールが、エタノールであることを特徴とする請求項1又は2いずれか1項記載のジアルコキシマグネシウムの製造方法。
【請求項4】
請求項1〜3いずれか1項記載のジアルコキシマグネシウムの製造方法を行い、次いで、得られたジアルコキシマグネシウム(a)と、チタンハロゲン化合物(b)と、電子供与性化合物(c)とを接触させることを特徴とするオレフィン類重合用固体触媒成分の製造方法
【請求項5】
請求項4記載のオレフィン類重合用固体触媒成分の製造方法を行い、次いで、得られた(A)オレフィン類重合用固体触媒成分、(B)下記一般式(IV):
15AlQ3−p (IV)
(式中、R15は炭素数1〜4のアルキル基を示し、Qは水素原子あるいはハロゲン原子を示し、pは0<p≦3の実数である。R15が複数存在する場合、各R15は互いに同一であっても異なっていてもよく、Qが複数存在する場合、各Qは同一であっても異なっていてもよい。)
で表される有機アルミニウム化合物と、(C)外部電子供与性化合物を接触させることを特徴とするオレフィン類重合用触媒の製造方法
【請求項6】
前記(C)外部電子供与性化合物が、下記一般式(V):
16Si(OR174−q (V)
(式中、R16は、炭素数1〜12のアルキル基、ビニル基、炭素数3〜12のアルケニル基、炭素数3〜12のシクロアルキル基、炭素数3〜12のシクロアルケニル基、炭素
数6〜15の芳香族炭化水素基または置換基を有する炭素数6〜15の芳香族炭化水素基を示し、R16が複数存在する場合、複数のR16は互いに同一でも異なっていてもよい。R17は、炭素数1〜4のアルキル基、ビニル基、炭素数3〜12のアルケニル基、炭素数3〜6のシクロアルキル基、炭素数6〜12の芳香族炭化水素基または置換基を有する炭素数7〜12の芳香族炭化水素基を示し、R17が複数存在する場合、複数のR17は互いに同一でも異なっていてもよい。qは0≦q≦3の整数である。)
で表される有機ケイ素化合物、及び一般式(VI):
(R1819N)SiR204−s (VI)
(式中、R18およびR19は、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、ビニル基、炭素数3〜20のアルケニル基、炭素数3〜20のシクロアルキル基、炭素数3〜20のシクロアルケニル基または炭素数6〜20のアリール基を示し、R18およびR19は互いに同一でも異なっていてもよく、また互いに結合して環を形成してもよく、R1819N基が複数存在する場合、複数のR1819N基は互いに同一でも異なっていてもよい。R20は炭素数1〜20のアルキル基、ビニル基、炭素数3〜12のアルケニル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、ビニルオキシ基、炭素数3〜20のアルケニルオキシ基、炭素数3〜20のシクロアルキル基、炭素数3〜20のシクロアルキルオキシ基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数6〜20のアリールオキシ基を示し、R20が複数存在する場合、複数のR20は互いに同一でも異なっていてもよい。sは1から3の整数である。)
で表されるアミノシラン化合物から選択される一種以上であることを特徴とする請求項5記載のオレフィン類重合用触媒の製造方法
【請求項7】
請求項5又は請求項6いずれか1項記載のオレフィン重合用触媒の製造方法を行い、次いで、得られたオレフィン重合用触媒の存在下にオレフィン類の重合を行うことを特徴とするオレフィン類重合体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジアルコキシマグネシウムの製造方法、特に、オレフィン類重合用触媒成分の担体原料に適するジアルコキシマグネシウムの製造方法に関する。また、本発明は、当該ジアルコキシマグネシウムの製造方法により得られるジアルコキシマグネシウムを用いるオレフィン類重合用触媒成分、当該触媒成分を用いるオレフィン類重合用触媒、及び当該触媒を用いるオレフィン類重合体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、オレフィン類の重合方法としては、ジアルコキシマグネシウム、チタンハロンゲン化合物及び内部電子供与性化合物を相互に接触させて得られる固体触媒成分と、有機アルミニウム化合物と、からなるオレフィン類重合触媒の存在下に、オレフィン類を重合又は共重合させるオレフィン類の重合方法が数多く提案されている。
【0003】
このようなオレフィン類の重合方法においては、得られるポリオレフィンの形状は、重合に用いる固体触媒成分の形状に依存するため、固体触媒成分のモフォロジー(粒子構造)の制御は重要であり、数多くの検討がなされている。
【0004】
このような中、オレフィン類の重合において、ポリオレフィン重合体粒子の形状制御における要求の1つとして、粒子表面が平滑で、平均粒径が大きく、粒径分布が狭い事が求められている。そして、平均粒径が大きく、粒径分布が狭く且つ表面が平滑なポリオレフィンを得るためには、平均粒径が大きく、粒径分布が狭く且つ表面が平滑な固体触媒成分が必要である。
【0005】
ここで、固体触媒成分の粒子構造は、固体触媒成分の担体となるジアルコキシマグネシウムの粒子構造に依存する。つまり、表面平滑で、平均粒径が大きく且つ粒径分布が狭いポリオレフィンを得るために、表面平滑で、平均粒径が大きく且つ粒径分布が狭いジアルコキシマグネシウムが求められている。
【0006】
ジアルコキシマグネシウムを製造する方法としては、例えば、特許文献1には、金属マグネシウムとエタノールとを、反応促進剤を使用せず、加圧下で反応させる方法が開示されている
【0007】
また、特許文献2には、金属マグネシウムと無水エタノールを、反応促進剤であるヨウ素の存在下で、反応させる方法が開示されている。
【0008】
また、特許文献3及び4には、金属マグネシウムとアルコールを、反応促進剤の存在下で反応させる方法において、反応促進剤であるヨウ素を、複数回に分けて反応系に添加する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2010−202667号公報
【特許文献2】特開平3−74341号公報
【特許文献3】特開2013−95890号公報
【特許文献4】国際公開第2013/058193号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、特許文献1の製造方法では、不定形のジエトキシマグネシウムしか得られないため、固体触媒成分の製造原料のジエトキシマグネシウムとしては、不適格である。
【0011】
また、特許文献2の製造方法では、平均粒径が20μm程度の小さなジエトキシマグネシウムしか得らない。
【0012】
また、特許文献3及び4の製造方法では、平均粒径が50μmを超えるものが得られる例はあるものの、流動性の向上や微粉発生量の低減などの観点から、粒子表面の平滑さにおいて、更なる改善が求められている。
【0013】
従って、本発明の目的は、粒子表面が平滑で、平均粒径が大きく且つ粒径分布が狭いジアルコキシマグネシウムが得られるジアルコキシマグネシウムの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
かかる実情において、本発明者は、鋭意検討を重ねた結果、特定のカルボン酸ハロゲン化合物を、金属マグネシウムとアルコールを反応させる際の反応促進剤として用いることにより、粒子の表面が平滑であり、平均粒径が大きく、且つ粒径分布の狭いジアルコキシマグネシウムが得られることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0015】
すなわち、本発明(1)は、金属マグネシウムとアルコールを、反応促進剤の存在下で反応させて、ジアルコキシマグネシウムを得るジアルコキシマグネシウムの製造方法であって、
該反応促進剤が、下記一般式(1):
【0016】
【化1】
【0017】
(式中、Zは、Cl又はBrである。Rは、炭素数1〜20の炭化水素基である。)
で表されるカルボン酸モノハロゲン化合物、又は下記一般式(2):
【0018】
【化2】
【0019】
(式中、Zは、Cl又はBrであり、同一であっても、異なっていてもよい。は、炭素数1〜20の炭化水素基である。
で表されるジカルボン酸ジハロゲン化合物であり、
反応系への該反応促進剤の導入を一度に行い、且つ、反応系への該金属マグネシウムの導入を複数回に分けて行うこと、
を特徴とするジアルコキシマグネシウムの製造方法を提供するものである
【0020】
また、本発明(2)は、前記反応促進剤が、脂肪族カルボン酸ジハロゲン化合物、脂肪族ジカルボン酸ジハロゲン化合物、芳香族カルボン酸モノハロゲン化合物および芳香族ジカルボン酸ジハロゲン化合物から選ばれるいずれか1種以上であることを特徴とする(1)のジアルコキシマグネシウムの製造方法を提供するものである。
【0021】
また、本発明(3)は、前記アルコールが、エタノールであることを特徴とする(1)又は(2)いずれかのジアルコキシマグネシウムの製造方法を提供するものである。
【0022】
また、本発明(4)は、(1)〜(3)いずれかのジアルコキシマグネシウムの製造方法を行い、次いで、得られたジアルコキシマグネシウム(a)と、チタンハロゲン化合物(b)と、電子供与性化合物(c)とを接触させることを特徴とするオレフィン類重合用固体触媒成分の製造方法を提供するものである。
【0023】
また、本発明(5)は、(4)のオレフィン類重合用固体触媒成分の製造方法を行い、次いで、得られた(A)オレフィン類重合用固体触媒成分、(B)下記一般式(IV):
15AlQ3−p (IV)
(式中、R15は炭素数1〜4のアルキル基を示し、Qは水素原子あるいはハロゲン原子を示し、pは0<p≦3の実数である。R15が複数存在する場合、各R15は互いに同一であっても異なっていてもよく、Qが複数存在する場合、各Qは同一であっても異なっていてもよい。)
で表される有機アルミニウム化合物と、(C)外部電子供与性化合物を接触させることを特徴とするオレフィン類重合用触媒の製造方法を提供するものである。
【0024】
また、本発明(6)は、前記(C)外部電子供与性化合物が、下記一般式(V):
16Si(OR174−q (V)
(式中、R16は、炭素数1〜12のアルキル基、ビニル基、炭素数3〜12のアルケニル基、炭素数3〜12のシクロアルキル基、炭素数3〜12のシクロアルケニル基、炭素数6〜15の芳香族炭化水素基または置換基を有する炭素数6〜15の芳香族炭化水素基を示し、R16が複数存在する場合、複数のR16は互いに同一でも異なっていてもよい。R17は、炭素数1〜4のアルキル基、ビニル基、炭素数3〜12のアルケニル基、炭素数3〜6のシクロアルキル基、炭素数6〜12の芳香族炭化水素基または置換基を有する炭素数7〜12の芳香族炭化水素基を示し、R17が複数存在する場合、複数のR17は互いに同一でも異なっていてもよい。qは0≦q≦3の整数である。)
で表される有機ケイ素化合物、及び一般式(VI):
(R1819N)SiR204−s (VI)
(式中、R18およびR19は、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、ビニル基、炭素数3〜20のアルケニル基、炭素数3〜20のシクロアルキル基、炭素数3〜20のシクロアルケニル基または炭素数6〜20のアリール基を示し、R18およびR19は互いに同一でも異なっていてもよく、また互いに結合して環を形成してもよく、R1819N基が複数存在する場合、複数のR1819N基は互いに同一でも異なっていてもよい。R20は炭素数1〜20のアルキル基、ビニル基、炭素数3〜12のアルケニル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、ビニルオキシ基、炭素数3〜20のアルケニルオキシ基、炭素数3〜20のシクロアルキル基、炭素数3〜20のシクロアルキルオキシ基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数6〜20のアリールオキシ基を示し、R20が複数存在する場合、複数のR20は互いに同一でも異なっていてもよい。sは1から3の整数である。)
で表されるアミノシラン化合物から選択される一種以上であることを特徴とする(5)のオレフィン類重合用触媒の製造方法を提供するものである。
【0025】
また、本発明(7)は、(5)又は(6)いずれかのオレフィン重合用触媒の製造方法を行い、次いで、得られたオレフィン重合用触媒の存在下にオレフィン類の重合を行うことを特徴とするオレフィン類重合体の製造方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、粒子表面が平滑で、平均粒径が大きく且つ粒径分布が狭いジアルコキシマグネシウムが得られるジアルコキシマグネシウムの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】実施例1の走査型電子顕微鏡写真(SEM)である。
図2】比較例1の走査型電子顕微鏡写真(SEM)である。
図3】比較例3の走査型電子顕微鏡写真(SEM)である。
図4】比較例4の走査型電子顕微鏡写真(SEM)である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明のジアルコキシマグネシウムの製造方法は、金属マグネシウムとアルコールを、反応促進剤の存在下で反応させて、ジアルコキシマグネシウムを得るジアルコキシマグネシウムの製造方法であって、
該反応促進剤が、下記一般式(1):
【0029】
【化1】
【0030】
(式中、Zは、Cl又はBrである。Rは、炭素数1〜20の炭化水素基である。)
で表されるカルボン酸モノハロゲン化合物、又は下記一般式(2):
【0031】
【化2】
【0032】
(式中、Zは、Cl又はBrであり、同一であっても、異なっていてもよい。Rは、炭素数1〜20の炭化水素基である。)
で表されるジカルボン酸ジハロゲン化合物であること、
を特徴とするジアルコキシマグネシウムの製造方法である。
【0033】
本発明のジアルコキシマグネシウムの製造方法に係る金属マグネシウムの形状は、特に制限されず、例えば、顆粒状、リボン状、粉末状等が挙げられる。これらのうち、金属マグネシウムとしては、粉末状のものが好ましく、粉末状の金属マグネシウムの平均粒径は、好ましくは10〜1000μm、より好ましくは、20〜800μm、特に好ましくは50〜500μmである。金属マグネシウムの表面状態は、特に制限されないが、表面に酸化マグネシウム等の被膜が生成されていないものが好ましい。金属マグネシウム中の平均粒径が5μm未満の微粉成分の含有量は、好ましくは20質量%以下、より好ましくは10質量%以下、特に好ましくは5質量%以下であり、平均粒径が500μm以上の粗粉成分の含有量は、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下である。
【0034】
本発明のジアルコキシマグネシウムの製造方法に係るアルコールは、特に制限されず、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ヘキサノール等の炭素数が1〜6の低級アルコールが好ましく、エタノールが特に好ましい。アルコールの含水量は、特に制限されないが、含水量が少ないほど好ましく、無水アルコール又は含水量が200ppm以下の脱水アルコールが特に好ましい。
【0035】
本発明のジアルコキシマグネシウムの製造方法では、金属マグネシウムと、アルコールとを、反応促進剤として、下記一般式(1):
【0036】
【化1】
【0037】
で表されるカルボン酸モノハロゲン化合物、又は下記一般式(2):
【0038】
【化2】
【0039】
で表されるジカルボン酸ジハロゲン化合物を用いて、反応させる。
【0040】
一般式(1)中、Rは、炭素数1〜20の炭化水素基である。Rとしては、炭素数1〜20の飽和炭化水素基または不飽和炭化水素基が挙げられ、更に具体的には、炭素数1〜20の直鎖アルキル基、炭素数3〜20の分岐鎖アルキル基、ビニル基、炭素数3〜20の直鎖または分岐鎖アルケニル基、炭素数3〜12のシクロアルキル基またはシクロアルケニル基、芳香族基のいずれかであり、炭素数1〜12の直鎖アルキル基、炭素数3〜12の分岐鎖アルキル基、ビニル基、炭素数3〜12の直鎖アルケニル基、炭素数3〜12の分岐鎖アルケニル基、炭素数5〜10のシクロアルキル基、炭素数5〜10のシクロアルケニル基、および炭素数6〜10の芳香族基が好ましく、炭素数1〜8の直鎖アルキル基、炭素数3〜8の分岐鎖アルキル基、ビニル基、炭素数3〜8の直鎖アルケニル基、炭素数3〜8の分岐鎖アルケニル基、炭素数5〜8のシクロアルキル基、炭素数5〜8のシクロアルケニル基および炭素数6〜10の芳香族基が特に好ましい。Zは、塩素原子又は臭素原子であり、Zとしては、塩素原子が好ましい。
【0041】
一般式(1)で表されるカルボン酸モノハロゲン化合物としては、例えば、プロピオン酸クロライド、カプロン酸クロライド、カプリル酸クロライド、ペラルゴン酸クロライド、カプリン酸クロライド、ラウリン酸クロライド、ミリスチン酸クロライド、パルミチン酸クロライド、イソパルミチン酸クロライド、ステアリン酸ブロマイド、イソステアリン酸ブロマイド、オレイン酸ブロマイド、プロピオン酸ブロマイド、カプロン酸ブロマイド、カプリル酸ブロマイド、ペラルゴン酸ブロマイド、カプリン酸ブロマイド、ラウリン酸ブロマイド、ミリスチン酸ブロマイド、パルミチン酸ブロマイド、イソパルミチン酸ブロマイド、ステアリン酸ブロマイド、イソステアリン酸ブロマイド、オレイン酸ブロマイド、メタクリル酸クロライド、安息香酸クロライド、フェニル酢酸クロライド、トリメトキシ安息香酸クロライド、無水トリメリット酸クロライド等が挙げられる。これらの中でも、プロピオン酸クロライド、カプロン酸クロライド、カプリル酸クロライド、安息香酸クロライドが、金属マグネシウムとアルコールの反応性を適度に制御できる点で、好ましい。
【0042】
一般式(2)中、Rは、炭素数1〜20の炭化水素基である。Rとしては、2つの酸ハライド基(−C(=O)−X)が結合する炭素数1〜20の2価の結合性基であり、好ましくは、Rに結合する2つの酸ハライド基の間が炭素鎖で結合された炭素数1〜12の2価の結合性基であり、より好ましくは、Rに結合する2つの酸ハライド基の間が2個の炭素原子で構成されている炭素数1〜12の2価の結合性基である。具体的には、炭素数1〜12の直鎖状アルキレン基、炭素数3〜12の分岐アルキレン基、ビニレン基、炭素数3〜12の直鎖状アルケニレン基または分岐アルケニレン基、炭素数3〜12のシクロアルキレン基、炭素数3〜12のシクロアルケ二レン基および、炭素数6〜12の芳香族炭化水素基が挙げられる。なお、Rがシクロアルキレン基、シクロアルケニレン基または芳香族炭化水素基のような環状の基である場合において、Rに結合する2つの酸ハライド基の間が2個の炭素原子で構成されている結合性基とは、環状を構成する炭素鎖の中の隣接する2個の炭素鎖が、当該Rが結合する2つの酸ハライド基の間にある炭素鎖であることを意味する。Zは、塩素原子又は臭素原子であり、塩素原子が好ましい。2個のZは、互いに同一であっても、異なっていてもよい。
【0043】
一般式(2)で表されるジカルボン酸ジハロゲン化合物としては、例えば、マロン酸ジクロライド、マロン酸ジブロマイド、ジエチルマロン酸ジクロライド、ジイソブチルマロン酸ジクロライド、テレフタル酸ジクロライド、フタル酸ジクロライド、フタル酸ジブロマイド、o−トルイル酸ジクロライド、m−トルイル酸ジクロライド、4,4’−ビフェニルジカルボニルクロライド)等が挙げられる。これらのうち一般式(2)で表されるジカルボン酸ジハロゲン化合物としては、フタル酸ジクロライド、o−トルイル酸ジクロライド、m−トルイル酸ジクロライドが、金属マグネシウムとアルコールの反応性を適度に制御できる点で、好ましい。
【0044】
本発明のジアルコキシマグネシウムの製造方法において、金属マグネシウムに対するアルコールのモル比(アルコール/金属マグネシウム)は、好ましくは2〜100、特に好ましくは5〜50である。金属マグネシウムに対するアルコールのモル比が、上記範囲にあることにより、粒子形状が良好で、平均粒径が大きく且つ粒径分布が狭いジアルコキシマグネシウムを収率良く得ることができる。
【0045】
本発明のジアルコキシマグネシウムの製造方法において、金属マグネシウムに対する反応促進剤(一般式(1)で表されるカルボン酸モノハロゲン化合物、又は一般式(2)で表されるジカルボン酸ジハロゲン化合物、以下、一般式(1)〜(2)に係る反応促進剤とも記載)のモル比(一般式(1)〜(2)に係る反応促進剤/金属マグネシウム)は、好ましくは0.0005〜0.1の範囲、特に好ましくは0.001〜0.01の範囲である。金属マグネシウムに対する反応促進剤のモル比が上記範囲にあることにより、得られるジアルコキシマグネシウムは粒子形状や嵩密度が良好で、粒度分布の狭いものとなる。
【0046】
本発明のジアルコキシマグネシウムの製造方法では、アルコール中に金属マグネシウムを分散させた懸濁状態で、撹拌しながら、金属マグネシウムとアルコールの反応を行う。そして、本発明のジアルコキシマグネシウムの製造方法では、一般式(1)〜(2)に係る反応促進剤を、予めアルコールに混合しておき、一般式(1)〜(2)に係る反応促進剤を含有するアルコールと、金属マグネシウムとを混合することにより、反応系中に一般式(1)〜(2)に係る反応促進剤を導入し、金属マグネシウムとアルコールとを、一般式(1)〜(2)に係る反応促進剤の存在下で、反応させる。本発明のジアルコキシマグネシウムの製造方法では、反応系への一般式(1)〜(2)に係る反応促進剤の導入を、一度に行ってもよいし、あるいは、複数回に分けて行ってもよい。つまり、本発明のジアルコキシマグネシウムの製造方法では、金属マグネシウム及びアルコールと共に、一般式(1)〜(2)に係る反応促進剤の全量を混合してもよいし、あるいは、金属マグネシウムとアルコールとを混合した後、反応を開始する前に、一般式(1)〜(2)に係る反応促進剤の全量を添加してもよいし、あるいは、金属マグネシウム及びアルコールと共に、一般式(1)〜(2)に係る反応促進剤の一部を存在させて反応を開始した後、反応を継続中に、残りの一般式(1)〜(2)に係る反応促進剤を、一度に又は複数回に分けて反応系に添加してもよい。また、本発明のジアルコキシマグネシウムの製造方法では、反応系への金属マグネシウム及びアルコールの導入を、一度に行ってもよいし、あるいは、複数回に分けて行ってもよい。つまり、本発明のジアルコキシマグネシウムの製造方法では、最初から金属マグネシウム及びアルコールの全量を用いて反応を開始してもよいし、あるいは、金属マグネシウム及びアルコールの一部を用いて反応を開始した後、反応を継続中に、残りの金属マグネシウム及びアルコールを、一度に又は複数回に分けて反応系に添加してもよい。
【0047】
本発明のジアルコキシマグネシウムの製造方法における反応温度は、原料混合物の沸点以下であれば特に限定されず、好ましくは30〜100℃、特に好ましくは50〜90℃であり、また、反応時間は、好ましくは0.5〜15時間、特に好ましくは1〜10時間の範囲であり、また、反応雰囲気は、不活性ガス雰囲気である。
【0048】
本発明のジアルコキシマグネシウムの製造方法を行った後、得られたジアルコキシマグネシウムを、加熱乾燥、気流乾燥又は減圧乾燥等の方法により乾燥させることにより、あるいは、不活性炭化水素化合物で洗浄することにより、ジアルコキシマグネシウムからアルコールを除去する。
【0049】
本発明のジアルコキシマグネシウムの製造方法では、反応促進剤が、一般式(1)〜(2)に係る反応促進剤であることにより、表面平滑で、平均粒径が大きく且つ粒径分布が狭いジアルコキシマグネシウムが得られる。
【0050】
本発明のジアルコキシマグネシウムの製造方法において、反応促進剤として用いられる一般式(1)〜(2)に係る反応促進剤は、反応後に、一般式(1)で表されるカルボン酸モノハロゲン化合物に対応するカルボン酸エステル、又は一般式(2)で表されるジカルボン酸ジハロゲン化合物に対応するジカルボン酸ジエステルになり、ジアルコキシマグネシウムに残留することとなる。ここで、一般式(1)で表されるカルボン酸モノハロゲン化合物に対応するカルボン酸エステル、又は一般式(2)で表されるジカルボン酸ジハロゲン化合物に対応するジカルボン酸ジエステルは、オレフィン類重合用のチーグラー・ナッタ触媒において、オレフィン重合性能、特に、立体特異性の向上に重要な役割を果たす内部電子供与体として機能する。そのため、本発明のジアルコキシマグネシウムの製造方法では、反応促進剤に由来する一般式(1)で表されるカルボン酸モノハロゲン化合物に対応するカルボン酸エステル、又は一般式(2)で表されるジカルボン酸ジハロゲン化合物に対応するジカルボン酸ジエステルが、生成物であるジアルコキシマグネシウムに残留しても、そのジアルコキシマグネシウムを用いて得られるオレフィン類重合用のチーグラー・ナッタ触媒に悪影響を与えないか、又は触媒性能を向上させることができるジアルコキシマグネシウムを得ることができる。
【0051】
一方、ジアルコキシマグネシウムの製造において、金属マグネシウムとアルコールとの反応を、反応促進剤としてヨウ素を用いる場合は、得られるジアルコキシマグネシウム中に、ヨウ素が混入してしまい、洗浄等を行っても、ジアルコキシマグネシウムからヨウ素を完全に除去することはできずに、ジアルコキシマグネシウム中にヨウ素が残留してしまう。そして、ヨウ素が残留したジアルコキシマグネシウムを用いて、固体触媒成分を製造すると、残留ヨウ素が、固体触媒成分の性能低下を引き起こす。
【0052】
また、ジアルコキシマグネシウムの製造において、金属マグネシウムとアルコールとの反応を、反応促進剤としてヨウ素を用いる場合は、反応促進剤であるヨウ素を、一度に反応系に導入したのでは、平均粒径が大きなジアルコキシマグネシウムが得られないため、2回以上に分けてヨウ素を分割添加する必要がある。それに対して、本発明のジアルコキシマグネシウムの製造方法では、一般式(1)〜(2)に係る反応促進剤を一度に反応系に導入しても、平均粒径が大きいジアルコキシマグネシウムが得られるか、あるいは、反応促進剤としてヨウ素を用いる場合に比べ、分割添加の回数が少なくても、平均粒径が大きいジアルコキシマグネシウムが得られる。
【0053】
本発明のジアルコキシマグネシウムの製造方法を行い得られるジアルコキシマグネシウムの球形度は、好ましくは2以下、特に好ましくは1.5以下である。なお、本発明において、ジアルコキシマグネシウムの球形度は、画像解析装置(マウンテック社製、 Mac-View)により測定されたものである。
【0054】
本発明のジアルコキシマグネシウムの製造方法を行い得られるジアルコキシマグネシウムの平均粒径(D50)は、5μm以上、好ましくは8〜100μm、特に好ましくは10〜80μmである。本発明のジアルコキシマグネシウムの製造方法を行い得られるジアルコキシマグネシウムの粒度分布指数(SPAN)(SPAN=(D90−D10)/D50)は、2.0以下、好ましくは1.5以下、特に好ましくは1.0以下である。なお、本発明において、D10、D50、D90は、レーザー回折式粒度分布測定装置(MICROTRAC HRA Model No.9320−X100、日機装社製)で測定して求められる粒度分布における積算体積分率が、それぞれ、10%、50%、90%に対応する粒子径(μm)を指す。
【0055】
本発明のジアルコキシマグネシウムの製造方法を行い得られるジアルコキシマグネシウムは、反応促進剤に由来するヨウ素を含有しない。
【0056】
本発明のジアルコキシマグネシウムの製造方法を行い得られるジアルコキシマグネシウムの嵩比重は、好ましくは0.1〜0.6g/ml、より好ましくは0.2〜0.5g/ml、特に好ましくは0.25〜0.40g/mlである。
【0057】
本発明のジアルコキシマグネシウムの製造方法を行い得られるジアルコキシマグネシウムは、アルコールを含有しないものが好ましいが、アルコールの含有量が2質量%以下であれば許容される。
【0058】
本発明のジアルコキシマグネシウムの製造方法を行い得られるジアルコキシマグネシウムは、オレフィン類重合用固体触媒成分の製造原料のジアルコキシマグネシウムとして、好適に用いられる。特に、本発明のジアルコキシマグネシウムの製造方法を行い得られるジアルコキシマグネシウムは、粒子表面が平滑で、平均粒径が大きく且つ粒径分布が狭いポリオレフィンの製造用の固体触媒成分を製造するための原料アルコキシマグネシウムとして、好適である。
【0059】
本発明のジアルコキシマグネシウムの製造方法を行い得られるジアルコキシマグネシウムを原料として用いるオレフィン類重合用固体触媒成分、及びオレフィン類重合用触媒は、ジアルコキシマグネシウムとして、本発明のジアルコキシマグネシウムの製造方法を行い得られるジアルコキシマグネシウムを用いること以外は、特に制限されず、適宜選択される。
【0060】
例えば、オレフィン類重合用固体触媒成分としては、以下のオレフィン類重合用固体触媒成分が挙げられる。
【0061】
本発明のオレフィン類重合用固体触媒成分は、本発明のジアルコキシマグネシウムの製造方法を行い得られたジアルコキシマグネシウム(a)と、チタンハロゲン化合物(b)と、電子供与性化合物(c)とを接触させて得られたものであることを特徴とするオレフィン類重合用固体触媒成分である。
【0062】
本発明のオレフィン類重合用固体触媒成分に係るジアルコキシマグネシウム(a)の製造方法の詳細は、上述したとおりである。
【0063】
本発明のオレフィン類重合用固体触媒成分を構成するチタンハロゲン化合物(b)としては、公知の物から選ばれる一種以上が挙げられ、四価のチタンハロゲン化合物が好ましく、チタンテトラクロライドがより好ましい。
【0064】
本発明のオレフィン類重合用固体触媒成分を構成する電子供与性化合物(c)としては、公知の物から選ばれる一種以上が挙げられ、酸素原子あるいは窒素原子を有する有機化合物であることが好ましい。
【0065】
電子供与性化合物(c)としては、コハク酸エステル、マレイン酸エステル、シクロヘキセンカルボン酸エステル、エーテルカルボン酸エステル、ジカーボネート、エーテルカーボネートから選ばれる一種以上であることが好ましい。
【0066】
本発明のオレフィン類重合用固体触媒成分において、チタン原子、マグネシウム原子、ハロゲン原子、電子供与性化合物の含有量は特に規定されない。
【0067】
本発明のオレフィン類重合用固体触媒成分において、チタン原子の含有割合は、0.5〜8.0質量%であることが好ましく、1.0〜6.0質量%であることがより好ましく、1.0〜4.0質量%であることがさらに好ましい。
【0068】
本発明のオレフィン類重合用固体触媒成分において、マグネシウム原子の含有割合は、10〜70質量%であることが好ましく、10〜50質量%であることがより好ましく、15〜40質量%であることがさらに好ましく、15〜25質量%であることが一層好ましい。
【0069】
本発明のオレフィン類重合用固体触媒成分において、ハロゲン原子の含有割合は、20〜90質量%であることが好ましく、30〜85質量%であることがより好ましく、40〜80質量%であることがさらに好ましく、45〜75質量%であることが一層好ましい。
【0070】
本発明のオレフィン類重合用固体触媒成分において、電子供与性化合物(c)の含有割合は、合計で、0.5〜30質量%であることが好ましく、1〜25質量%であることがより好ましく、2〜20質量%であることがさらに好ましい。
【0071】
本発明のオレフィン類重合用固体触媒成分において、その総合性能をバランスよく発揮させるためには、チタン含有量が1〜4質量%、マグネシウム含有量が15〜25質量%、ハロゲン原子の含有量が45〜75質量%、電子供与性化合物(c)の含有量が2〜20質量%であることが望ましい。
【0072】
本発明のオレフィン類重合用固体触媒成分を製造する方法としては、アルコキシマグネシウム(a)、チタンハロゲン化合物(b)及び電子供与性化合物(c)を、沸点が50〜150℃の不活性有機溶媒(d)の存在下に接触させる方法が挙げられる。
【0073】
沸点が50〜150℃の不活性有機溶媒(d)としては、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、ヘプタン、オクタン、デカン等から選ばれる一種以上が挙げられる。沸点が50〜150℃の不活性有機溶媒(d)としては、芳香族炭化水素化合物及び脂肪族炭化水素化合物が一般的であるが、反応性又は反応後の洗浄時に不純物の溶解度が低下しないのであれば、芳香族炭化水素及び飽和炭化水素以外の不活性有機溶媒でもよい。
【0074】
また、本発明のオレフィン類重合用固体触媒成分を製造する場合、さらに、反応系にポリシロキサンを加えてもよい。ポリシロキサンとしては、従来公知のものが適宜選択されるが、デカメチルシクロペンタシロキサン及びジメチルポリシロキサンから選ばれる一種以上が好ましく、デカメチルシクロペンタシロキサンがより好ましい。
【0075】
本発明のオレフィン類重合用固体触媒成分を調製する方法の詳細は、従来公知のオレフィン類重合用固体触媒成分を調製する方法と同様である。
【0076】
なお、上述したように、本発明のオレフィン類重合用固体触媒成分は、本発明のジアルコキシマグネシウムの製造方法を行い得られたジアルコキシマグネシウム(a)と、チタンハロゲン化合物(b)と、電子供与性化合物(c)とを接触させ、反応させて得られるものである。
【0077】
本発明によれば、粒子の表面が平滑で、平均粒径が大きく且つ粒径分布が狭い重合体を高い重合活性下で形成し得るオレフィン類重合用固体触媒成分を提供することができる。
【0078】
本発明に係るオレフィン類重合用触媒は、(A)本発明のオレフィン類重合用固体触媒成分、(B)下記一般式(IV):
15AlQ3−p (IV)
(式中、R15は炭素数1〜4のアルキル基を示し、Qは水素原子あるいはハロゲン原子を示し、pは0<p≦3の実数である。R15が複数存在する場合、各R15は互いに同一であっても異なっていてもよく、Qが複数存在する場合、各Qは同一であっても異なっていてもよい。)
で表される有機アルミニウム化合物および(C)外部電子供与性化合物を含むことを特徴とするオレフィン類重合用触媒である。
【0079】
本発明に係るオレフィン類重合用触媒に係る(A)本発明のオレフィン類重合用固体触媒成分は、上述したとおりである。
【0080】
本発明のオレフィン重合用触媒は、(B)下記一般式(IV):
15AlQ3−p (IV)
(式中、R15は炭素数1〜4のアルキル基を示し、Qは水素原子あるいはハロゲン原子を示し、pは0<p≦3の実数である。R15が複数存在する場合、各R15は互いに同一であっても異なっていてもよく、Qが複数存在する場合、各Qは同一であっても異なっていてもよい。)
で表される有機アルミニウム化合物を含む。
【0081】
上記一般式(IV)で表される有機アルミニウム化合物としては、特に制限されないが、R15としては、エチル基及びイソブチル基から選ばれる一種以上が挙げられ、Qとしては、水素原子、塩素原子及び臭素原子から選ばれる一種以上が挙げられ、pは、2、2.5又は3が好ましく、3であることが特に好ましい。
【0082】
このような有機アルミニウム化合物の具体例としては、トリエチルアルミニウム、トリイソプロピルアルミニウム、トリ−n−ブチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウムなどのトリアルキルアルミニウム、ジエチルアルミニウムクロライド、ジエチルアルミニウムブロマイドなどのハロゲン化アルキルアルミニウム、ジエチルアルミニウムハイドライド等から選ばれる一種以上が挙げられ、中でもジエチルアルミニウムクロライドなどのハロゲン化アルキルアルミニウム、又はトリエチルアルミニウム、トリ−n−ブチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム等のトリアルキルアルミニウム等から選ばれる一種以上が好ましく、トリエチルアルミニウムおよびトリイソブチルアルミニウムから選ばれる一種以上がより好ましい。
【0083】
本発明のオレフィン類重合用触媒において、外部電子供与性化合物(C)としては、公知の外部電子供与性化合物のうち酸素原子あるいは窒素原子を含有するものが好ましい。
【0084】
本発明のオレフィン類重合用触媒において、外部電子供与性化合物(C)としては、下記一般式(V):
16Si(OR174−q (V)
(式中、R16は、炭素数1〜12のアルキル基、ビニル基、炭素数3〜12のアルケニル基、炭素数3〜12のシクロアルキル基、炭素数3〜12のシクロアルケニル基、炭素数6〜15の芳香族炭化水素基または置換基を有する炭素数6〜15の芳香族炭化水素基を示し、R16が複数存在する場合、複数のR16は互いに同一でも異なっていてもよい。R17は、炭素数1〜4のアルキル基、ビニル基、炭素数3〜12のアルケニル基、炭素数3〜6のシクロアルキル基、炭素数6〜12の芳香族炭化水素基または置換基を有する炭素数7〜12の芳香族炭化水素基を示し、R17が複数存在する場合、複数のR17は互いに同一でも異なっていてもよい。qは0≦q≦3の整数である。)
で表される有機ケイ素化合物、 及び一般式(VI):
(R1819N)SiR204−s (VI)
(式中、R18およびR19は、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、ビニル基、炭素数3〜20のアルケニル基、炭素数3〜20のシクロアルキル基、炭素数3〜20のシクロアルケニル基または炭素数6〜20のアリール基を示し、R18およびR19は互いに同一でも異なっていてもよく、また互いに結合して環を形成してもよく、R1819N基が複数存在する場合、複数のR1819N基は互いに同一でも異なっていてもよい。R20は炭素数1〜20のアルキル基、ビニル基、炭素数3〜12のアルケニル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、ビニルオキシ基、炭素数3〜20のアルケニルオキシ基、炭素数3〜20のシクロアルキル基、炭素数3〜20のシクロアルキルオキシ基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数6〜20のアリールオキシ基を示し、R20が複数存在する場合、複数のR20は互いに同一でも異なっていてもよい。sは1から3の整数である。)
で表されるアミノシラン化合物から選択される一種以上が挙げられる。
【0085】
上記一般式(V)で表される有機ケイ素化合物又は一般式(VI)で表わされるアミノシラン化合物としては、フェニルアルコキシシラン、アルキルアルコキシシラン、フェニルアルキルアルコキシシラン、シクロアルキルアルコキシシラン、アルキル(シクロアルキル)アルコキシシラン、(アルキルアミノ)アルコキシシラン、アルキル(アルキルアミノ)アルコキシシラン、シクロアルキル(アルキルアミノ)アルコキシシラン、テトラアルコキシシラン、テトラキス(アルキルアミノ)シラン、アルキルトリス(アルキルアミノ)シラン、ジアルキルビス(アルキルアミノ)シラン、トリアルキル(アルキルアミノ)シラン等が挙げられる。
【0086】
上記一般式(V)で表される有機ケイ素化合物又は一般式(VI)で表わされるアミノシラン化合物としては、具体的には、n−プロピルトリエトキシシラン、シクロペンチルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、t−ブチルトリメトキシシラン、ジイソプロピルジメトキシシラン、イソプロピルイソブチルジメトキシシラン、ジイソペンチルジメトキシシラン、ビス(2−エチルヘキシル)ジメトキシシラン、t−ブチルメチルジメトキシシラン、t−ブチルエチルジメトキシシラン、ジシクロペンチルジメトキシシラン、ジシクロヘキシルジメトキシシラン、シクロヘキシルシクロペンチルジメトキシシラン、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラブトキシシラン、ビス(エチルアミノ)メチルエチルシラン、ビス(エチルアミノ)t−ブチルメチルシラン、ビス(エチルアミノ)ジシクロヘキシルシラン、ジシクロペンチルビス(エチルアミノ)シラン、ビス(メチルアミノ)(メチルシクロペンチルアミノ)メチルシラン、ジエチルアミノトリエトキシシラン、ビス(シクロヘキシルアミノ)ジメトキシシラン、ビス(パーヒドロイソキノリノ)ジメトキシシラン、ビス(パーヒドロキノリノ)ジメトキシシラン、エチル(イソキノリノ)ジメトキシシラン等から選ばれる一種以上が挙げられ、中でも、n−プロピルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、t−ブチルメチルジメトキシシラン、t−ブチルエチルジメトキシシラン、ジイソプロピルジメトキシシラン、イソプロピルイソブチルジメトキシシラン、ジイソペンチルジメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジシクロペンチルジメトキシシラン、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、t−ブチルメチルビス(エチルアミノ)シラン、ビス(エチルアミノ)ジシクロヘキシルシラン、ジシクロペンチルビス(エチルアミノ)シラン、ビス(パーヒドロイソキノリノ)ジメトキシシラン、ジエチルアミノトリエトキシシラン等から選ばれる一種以上が好ましい。
【0087】
本発明のオレフィン類重合用触媒において、(A)本発明のオレフィン類重合用固体触媒成分、(B)一般式(IV)で表される有機アルミニウム化合物及び(C)外部電子供与性化合物の含有割合は、本発明の効果が得られる範囲において任意に選定され、特に限定されるものではないが、オレフィン類重合用固体触媒成分(A)中のチタン原子1モルあたり、(B)一般式(IV)で表される有機アルミニウム化合物が、1〜2000モルであることが好ましく、50〜1000モルであることがより好ましい。また、(B)一般式(IV)で表される有機アルミニウム化合物1モルあたり、(C)外部電子供与性化合物が、0.002〜10モルであることが好ましく、0.01〜2モルであることがより好ましく、0.01〜0.5モルであることがさらに好ましい。
【0088】
本発明のオレフィン類重合用触媒の製造方法は、特に制限されず、(A)本発明のオレフィン類重合用固体触媒成分、(B)一般式(IV)で表される有機アルミニウム化合物及び(C)外部電子供与性化合物を、公知の方法で接触させることにより、オレフィン類重合用触媒を製造する方法が挙げられる。
上記各成分を接触させる順序は任意であるが、例えば、以下の接触順序を例示することができる。
(i)(A)本発明のオレフィン類重合用固体触媒成分→(C)外部電子供与性化合物→(B)一般式(IV)で表される有機アルミニウム化合物
(ii)(B)一般式(IV)で表される有機アルミニウム化合物→(C)外部電子供与性化合物→(A)本発明のオレフィン類重合用固体触媒成分
(iii)(C)外部電子供与性化合物→(A)本発明のオレフィン類重合用固体触媒成分→(B)一般式(IV)で表される有機アルミニウム化合物
(iv)(C)外部電子供与性化合物→(B)一般式(IV)で表される有機アルミニウム化合物→(A)本発明のオレフィン類重合用固体触媒成分
上記接触例(i)〜(iv)のうち、接触例(ii)が好適である。
なお、上記接触例(i)〜(iv)において、「→」は接触順序を意味し、例えば、「(A)本発明のオレフィン類重合用固体触媒成分→(B)一般式(IV)で表される有機アルミニウム化合物→(C)外部電子供与性化合物」は、(A)本発明のオレフィン類重合用固体触媒成分中に(B)一般式(IV)で表される有機アルミニウム化合物を添加して接触させた後、(C)外部電子供与性化合物を添加して接触させることを意味する。
【0089】
本発明のオレフィン類重合用触媒は、(A)本発明のオレフィン類重合用固体触媒成分、(B)一般式(IV)で表される有機アルミニウム化合物及び(C)外部電子供与性化合物を、オレフィン類不存在下で接触させてなるものであってもよいし、オレフィン類の存在下で(重合系内で)接触させてなるものであってもよい。
【0090】
本発明によれば、表面が平滑で、平均粒径が大きく且つ粒径分布が狭いオレフィン類重合用触媒を提供することができる。
【0091】
本発明のオレフィン類重合体の製造方法は、本発明のオレフィン重合用触媒の存在下にオレフィン類の重合を行うことを特徴とするものである。
【0092】
本発明のオレフィン類重合体の製造方法において、オレフィン類の重合は、単独重合であっても共重合であってもよい。
【0093】
本発明のオレフィン類重合体の製造方法において、オレフィン類としては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、ビニルシクロヘキサン等から選ばれる一種以上が挙げられ、エチレン、プロピレンまたは1−ブテンが好適であり、プロピレンがより好適である。
【0094】
プロピレンを重合する場合、他のオレフィン類との共重合を行ってもよく、プロピレンと他のα−オレフィンとのブロック共重合であることが好ましい。ブロック共重合により得られるブロック共重合体とは、2種以上のモノマー組成が連続して変化するセグメントを含む重合体であり、モノマー種、コモノマー種、コモノマー組成、コモノマー含量、コモノマー配列、立体規則性などポリマーの一次構造の異なるポリマー鎖(セグメント)が1分子鎖中に2種類以上繋がっている形態のものをいう。共重合されるオレフィン類としては、炭素数2〜20のα−オレフィン(炭素数3のプロピレンを除く)であることが好ましく、具体的には、エチレン、1−ブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、ビニルシクロヘキサン等が挙げられ、これ等のオレフィン類は一種以上併用であってもよい。とりわけ、エチレン及び1−ブテンが好適に用いられる。
【0095】
本発明のオレフィン類重合体の製造方法では、オレフィン類の重合を、有機溶媒の存在下でも不存在下でも行うことができる。また、本発明のオレフィン類重合体の製造方法では、気体及び液体のいずれの状態でも、重合対象となるオレフィン類を用いることができる。
【0096】
オレフィン類の重合であるが、例えば、オートクレーブ等の反応炉内において、本発明のオレフィン類重合用触媒の存在下、オレフィン類を導入し、加熱、加圧状態下に、オレフィン類の重合を行うことができる。
【0097】
本発明のオレフィン類重合体の製造方法において、重合温度は、通常200℃以下であるが、100℃以下が好ましく、活性や立体規則性の向上の観点からは、60〜100℃がより好ましく、70〜90℃がさらに好ましい。本発明のオレフィン類重合体の製造方法において、重合圧力は、10MPa以下が好ましく、5MPa以下がより好ましい。また、連続重合法、バッチ式重合法のいずれでも可能である。更に重合反応は一段で行ってもよいし、二段以上で行ってもよい。
【0098】
本発明のオレフィン類重合体の製造方法において、オレフィン類を重合(以下、適宜、本重合と称する。)するにあたり、重合対象となるオレフィン類に対して本発明のオレフィン類重合用触媒の構成成分の一部又は全部を接触させることにより、予備的な重合(以下、適宜、予備重合と称する。)を行ってもよい。
【0099】
予備重合を行うに際して、本発明のオレフィン類重合用触媒の構成成分及びオレフィン類の接触順序は任意であるが、不活性ガス雰囲気あるいはオレフィンガス雰囲気に設定した予備重合系内に先ず有機アルミニウム化合物を装入し、次いで本発明のオレフィン類重合用固体触媒成分を接触させた後、プロピレン等のオレフィン類を一種以上接触させることが好ましい。または、不活性ガス雰囲気あるいはオレフィンガス雰囲気に設定した予備重合系内に先ず有機アルミニウム化合物を装入し、次いで外部電子供与性化合物を接触させ、更に本発明のオレフィン類重合用固体触媒成分を接触させた後、プロピレン等のオレフィン類を一種以上接触させることが好ましい。予備重合の際には、本重合と同様のオレフィン類、あるいはスチレン等のモノマーを用いることができ、予備重合条件も、上記重合条件と同様である。
【0100】
上記予備重合を行うことにより、触媒活性を向上させ、得られる重合体の立体規則性および粒子性状等を一層改善し易くなる。
【0101】
本発明によれば、表面が平滑で、平均粒径が大きく且つ粒径分布が狭い重合体を高い重合活性下で製造することができるオレフィン類重合体の製造方法を提供することができる。
【0102】
本発明に係るオレフィン類重合体の製造方法は、特に気相法によるポリオレフィンの製造プロセスに適用される。
【0103】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、これは単に例示であって、本発明を制限するものではない。
【実施例】
【0104】
(実施例1)
<ジエトキシマグネシウムの製造>
積算型ガスメーター、滴下ロート、撹拌器及び還流冷却器を備え、内部が窒素ガスで充填されている容量2Lの四つ口フラスコ内に、金属マグネシウム粉(平均粒径(D50):118μm、粒径分布指数(SPAN):1.36)5g、無水エタノール100g及びフタル酸ジクロライド0.8g(4ミリモル)を装入後、エタノールの還流温度まで加熱し、還流状態を維持した。次いで、この中に、金属マグネシウム粉2.5gとエタノール25gの混合物を、5回に分けて添加した。
全量の添加後、加熱還流を更に2時間継続し、反応を完結させ、次いで、反応液をロータリーエバポレーターにて乾燥し、粉末状のジエトキシマグネシウム35gを得た。
次いで、得られたジエトキシマグネシウムについて、平均粒径(D50)および粒度分布指数(SPAN)を測定した。また、得られたジエトキシマグネシウムを走査型電子顕微鏡(SEM)にて粒子表面を観察した。その結果、実施例1で得られたジエトキシマグネシウム粒子の表面は、比較例1〜比較例4に比べ、平滑であった。評価結果を表1に、SEM写真を図1に示す。
【0105】
<平均粒径(D50)及びSPANの分析>
レーザー回折式粒度分布測定装置(MICROTRAC HRA Model No.9320−X100、日機装社製)を用いて、ジアルコキシマグネシウムを無水エタノールに分散させて、自動測定を2回行い、粒度分布を測定し、積算体積分率10%の粒子径(D10)、積算体積分率50%の粒子径(D50)、積算体積分率90%の粒子径(D90)を求め、各平均値を、D10、D50、D90とした。そして、得られたD50の値を平均粒径とし、また、得られたD10、D50及びD90の値から、SPAN=(D90−D10)/D50の式よりSPANを算出した。
【0106】
(実施例2)
<ジアルコキシマグネシウムの調製>
フタル酸ジクロライドの添加量を、0.8g(4ミリモル)から0.4g(2ミリモル)に変更すること以外は実施例1と同様にして、ジエトキシマグネシウムの製造および分析を行った。
なお、得られたジエトキシマグネシウム粒子の表面は、比較例1、比較例3および比較例4に比べ、平滑であった。分析結果を表1に示す。
【0107】
(比較例1)
フタル酸ジクロライド0.8g(4ミリモル)に代えて、ヨウ素0.5g(4ミリモル)を使用すること以外は、実施例1と同様にして、ジエトキシマグネシウムの製造および分析を行った。
得られたジエトキシマグネシウムの分析結果を表1に示す。また、得られたジエトキシマグネシウムのSEM写真を図2に示す。
【0108】
(比較例2)
フタル酸ジクロライド0.8g(4ミリモル)に代えて、塩化マグネシウム0.38g(4ミリモル)を使用すること以外は実施例1と同様にして、ジエトキシマグネシウムの製造および分析を行った。
得られたジエトキシマグネシウムの分析結果を表1に示す。
【0109】
(比較例3)
フタル酸ジクロライド0.8g(4ミリモル)に代えて、四塩化チタン0.76g(4ミリモル)とすること以外は実施例1と同様にして、ジエトキシマグネシウムの製造および分析を行った。
得られたジエトキシマグネシウムの分析結果を表1に示す。また、得られたジエトキシマグネシウムのSEM写真を図3に示す。
【0110】
(比較例4)
金属マグネシウム粉5g、無水エタノール100g及びフタル酸ジクロライド0.8g(4ミリモル)を装入することに代えて、金属マグネシウム粉5g、無水エタノール100g及び四塩化チタン0.38g(2ミリモル)を装入すること、及び金属マグネシウム粉5gとエタノール50gの混合物を5回に分けて添加することに代えて、金属マグネシウム粉2.5g、無水エタノール25g及び四塩化チタン0.38g(2ミリモル)の混合物を5回に分けて添加すること以外は、実施例1と同様にして、ジエトキシマグネシウムの製造及び評価を行った。
得られたジエトキシマグネシウムの評価結果を表1に、SEM写真を図4に示す。
【0111】

【表1】
【0112】
金属マグネシウムとアルコールとの反応において、本発明に係るカルボン酸ハロゲン化合物を反応促進剤とした場合、その反応性はハロゲン原子より穏やかであり、金属マグネシウムとアルコールとの反応が穏やかに進行する為、粒子の成長(造粒)が妨げられず、表面が平滑で、且つ、平均粒径が60μm以上の大粒径ジアルコキシマグネシウム粒子を形成しやすい。
一方、ヨウ素はハロゲン族原子であることから反応性が激しく、また、無機ハロゲン化合物である四塩化チタンは原料のアルコールとの反応性が極めて激しいことから促進剤としての効果が安定した状態で得られ難く、塩化マグネシウムは促進剤としての反応性が充分に得られ難いことから、いずれの化合物もジアルコキシマグネシウム粒子の成長が妨げられ、大粒径ジアルコキシマグネシウムが形成され難くなり、また、例え大きな粒子を形成できたとしても、粒度分布が広かったり、粒子表面が平滑ではなかったりする事から、本発明に係るカルボン酸ハロゲン化合物を促進剤に用いた時のような、表面が平滑で、且つ、平均粒径の大きなジアルコキシマグネシウム粒子は得られない。
【0113】
(実施例3)
<オレフィン重合用固体触媒成分の調製>
窒素ガスで充分置換され、攪拌機を具備した容量500mlの丸底フラスコに四塩化チタン30mlおよびトルエン20mlを装入して、混合溶液を形成した。次いで、上記実施例1で得たジエトキシマグネシウム10g 、トルエン50mlおよびベンジリデンマロン酸ジエチル3.8ml(15ミリモル)を用いて形成された懸濁液を、10℃の液温に保持した前記混合溶液中に添加した。
その後、液温を10℃から90℃まで昇温し、攪拌しながら、90℃で2時間反応させた。
反応終了後、得られた固体生成物を90℃のトルエン100mlで4回洗浄し、新たに四塩化チタン30mlおよびトルエン70mlを加え、110℃に昇温し、2時間攪拌しながら反応させた。反応終了後、40℃のn−ヘプタン100mlで10回洗浄して、オレフィン重合用固体触媒成分(A−1)を得た。
なお、この固体触媒成分(A−1)中には、内部電子供与性化合物として、ベンジリデンマロン酸ジエステル10.4質量%に加え、フタル酸ジクロライド由来のフタル酸ジエステルが1.2質量%含まれていた。また、この固体触媒成分中のチタン含有率を測定したところ、2.93質量%であった。
<オレフィン重合触媒の形成及びプロピレン重合>
窒素ガスで完全に置換された内容積2.0リットルの撹拌機付オートクレーブに、トリエチルアルミニウム1.32ミリモル、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン0.13ミリモルおよび上記固体触媒成分(A−1)をチタン原子換算で0.0026ミリモル装入し、オレフィン重合用触媒を形成した。
次いで、水素ガス4リットルおよび液化プロピレン1.4リットルをオートクレーブに装入し、20℃で5分間予備重合を行った後、70℃まで昇温し、70℃で1時間の重合反応を行うことにより、プロピレン重合体を得た。固体触媒成分1g当たりの重合活性および、得られた重合体の物性を表2に示す。
<重合体の平均粒径、粒度分布指数および粒径75μm未満の微粉量>
得られた重合体の平均粒径、粒度分布指数および、粒径75μm未満の微粉量について、デジタル画像解析式粒子径分布測定装置(カムサイザー、株式会社堀場製作所製)を用い、下記の測定条件において重合体の体積基準積算粒度分布の自動測定を行なった。
(測定条件)
ファネル位置:6mm
カメラのカバーエリア:ベーシックカメラ3%未満、ズームカメラ10%未満
目標カバーエリア:0.5%
フィーダ幅:40mm
フィーダコントロールレベル:57、40秒
測定開始レベル:47
最大コントロールレベル:80
コントロールの基準:20
画像レート:50%(1:2)
粒子径定義:粒子1粒ごとにn回測定したマーチン径の最小値
SPHT(球形性)フィッティング:1
クラス上限値:対数目盛とし32μm〜4000μmの範囲で50点を選択
【0114】
(比較例5)
上記実施例1で得たジエトキシマグネシウム10gに代えて上記比較例1で得たジエトキシマグネシウム10gを用いる以外は、実施例3と同様にしてオレフィン重合用固体触媒成分(A−2)を調製後、オレフィン重合触媒の形成及びプロピレン重合を行い、得られた重合体の物性評価を行った。
なお、この固体触媒成分(A−2)中には、内部電子供与性化合物として、ベンジリデンマロン酸ジエステルが10.4重量%含有されており、フタル酸ジエステル含有量は0質量%であった。
また、この固体触媒成分中のチタン含有率を測定したところ、3.05重量%であった。固体触媒成分1g当たりの重合活性および、得られた重合体の物性は表2に示す。
【0115】
【表2】
【0116】
表面が平滑であり、平均粒径が大きく且つ粒度分布が狭い実施例1で得られたジアルコキシマグネシウムを用いた実施例3では、平均粒径(D50)が大きく、粒径分布が狭く、且つ、微粉の少ないポリプロピレン粒子が得られた。
一方、表面が粗く、平均粒径が小さく且つ粒径分布が広い比較例1で得られたジアルコキシマグネシウムを用いた比較例5では、得られたポリプロピレンの平均粒径(D50)が小さく、粒径分布が広く、微粉が多かった。
図1
図2
図3
図4