特許第6914097号(P6914097)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6914097
(24)【登録日】2021年7月15日
(45)【発行日】2021年8月4日
(54)【発明の名称】開き戸の気密構造
(51)【国際特許分類】
   E06B 7/23 20060101AFI20210727BHJP
   E06B 3/36 20060101ALI20210727BHJP
【FI】
   E06B7/23 A
   E06B3/36
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-103379(P2017-103379)
(22)【出願日】2017年5月25日
(65)【公開番号】特開2018-197480(P2018-197480A)
(43)【公開日】2018年12月13日
【審査請求日】2020年2月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】307038540
【氏名又は名称】三和シヤッター工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085394
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 哲夫
(74)【代理人】
【識別番号】100206106
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 郁夫
(72)【発明者】
【氏名】永田 由衣
(72)【発明者】
【氏名】山田 昌志
【審査官】 家田 政明
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−096684(JP,A)
【文献】 米国特許第04807397(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E06B 7/00−7/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
開き戸が開閉揺動自在に設けられる戸枠に、閉鎖した開き戸の表面板が当接することにより押し潰し変形されて気密性を発揮するための気密材を設けるにあたり、戸尻側気密材は、戸尻側縦枠に支持される硬質の本体部と、該本体部から開き戸側に突出して前記押し潰し変形される軟質の変形部とを備えて構成されるものであり、
該本体部は、該本体部の開き戸側辺が戸先側ほど開き戸側に偏倚した段差状に設けられ、
該変形部は、本体部からの戸先側部位の突出位置が戸尻側部位の突出位置よりも開き戸側に偏倚するようにして設けられることを特徴とする開き戸の気密構造。
【請求項2】
開き戸が開閉揺動自在に設けられる戸枠に、閉鎖した開き戸の表面板が当接することにより押し潰し変形されて気密性を発揮するための気密材を設けるにあたり、戸尻側気密材は、戸尻側縦枠に支持される硬質の本体部と、該本体部から開き戸側に突出して前記押し潰し変形される軟質の変形部とを備えて構成されるものであり、
該本体部は、該本体部の開き戸側辺よりも戸先側に突出し、かつ戸尻側部位の本体部からの突出位置よりも開き戸側に偏倚する突出辺を含んで構成され、該突出辺に変形部の戸先側部位が設けられ、
該変形部は、本体部からの戸先側部位の突出位置が戸尻側部位の突出位置よりも開き戸側に偏倚するようにして設けられることを特徴とする開き戸の気密構造。
【請求項3】
開き戸が開閉揺動自在に設けられる戸枠に、閉鎖した開き戸の表面板が当接することにより押し潰し変形されて気密性を発揮するための気密材を設けるにあたり、戸尻側気密材は、戸尻側縦枠に支持される硬質の本体部と、該本体部から開き戸側に突出して前記押し潰し変形される軟質の変形部とを備えて構成されるものであり、
該本体部は、該本体部の戸先側辺よりも戸先側に突出し、かつ戸尻側部位の本体部からの突出位置よりも開き戸側に偏倚する突出辺を含んで構成され、該突出辺に変形部の戸先側部位が設けられ、
該変形部は、本体部からの戸先側部位の突出位置が戸尻側部位の突出位置よりも開き戸側に偏倚するようにして設けられることを特徴とする開き戸の気密構造。
【請求項4】
開き戸が開閉揺動自在に設けられる戸枠に、閉鎖した開き戸の表面板が当接することにより押し潰し変形されて気密性を発揮するための気密材を設けるにあたり、戸尻側気密材は、戸尻側縦枠に支持される硬質の本体部と、該本体部から開き戸側に突出して前記押し潰し変形される軟質の変形部とを備えて構成され、
該変形部は、
円筒形状であり、該円筒の中心は、四角筒形状の本体部の中心線に対して戸先側に偏倚するとともに、
本体部からの戸先側部位の突出位置が戸尻側部位の突出位置よりも開き戸側に偏倚するようにして設けられる
ことを特徴とする開き戸の気密構造。
【請求項5】
変形部は円筒形状であり、該円筒の中心は、四角筒形状の本体部の中心線に対して戸先側に偏倚していることを特徴とする請求項1乃至の何れか1記載の開き戸の気密構造。
【請求項6】
本体部の開き戸側辺が戸先側ほど開き戸側に偏倚した傾斜状になっていることを特徴とする請求項2乃至4の何れか1記載の開き戸の気密構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建造物の出入り口等の開口部に開閉揺動自在に建て付けられる開き戸における気密構造の技術分野に関するものである。
【背景技術】
【0002】
今日、出入口等の開口部に開き戸(ドア)を開閉揺動自在に建て付けることがあるが、この場合、躯体側の戸枠にゴム質弾性を有した気密材を取付けることになる。このようにしたときに、戸枠側に形成の凹溝にソリッド状に形成の本体部を挿入させ、該本体部から突出するスポンジ状の変形部に開き戸表面板を当接させることで該変形部を本体部に支持(弾持)される状態で押し潰し変形させ、これにより遮音性を含めた気密性を確保することが試みられている(例えば特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5271069号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが前記従来の気密材のうち上下枠側および戸先側の気密材変形部は、開き戸の表面板が殆ど正面側から押圧してきて押し潰し変形されるものであるため、変形量を大きくして優れた気密性を確保することができるが、戸尻側(吊元側)気密材の変形部は、開き戸の戸尻側表面板のコーナー状になった戸尻側端部が戸先側から戸尻側に向けて横移動する(抉る)ようにして押し潰し変形されることになり、このため高い気密性を確保しようとして押し潰し変形の面積を広くしようとしたときに、変形部の戸先側部位は、表面板の戸尻側端部が深い部位において直接食い込むように変形させることになり、この結果、変形部が無理な変形が強いられるだけでなく、表面板との摺動抵抗が大きくなって気密材が早期のうちに損耗してしまうという惧れがあり、これを回避するためには、例えば気密材の本体部が嵌合する溝部を深くする等して表面板と変形部との当接位置を開き戸側に相対的に変化させて表面板の変形部に対する押し潰し変形の面積を小さいものにすることになるが、このようにした場合、気密性が低下したものにならざるを得ないという問題があり、ここに本発明の解決すべき課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記の如き実情に鑑みこれらの課題を解決することを目的として創作されたものであって、請求項1の発明は、開き戸が開閉揺動自在に設けられる戸枠に、閉鎖した開き戸の表面板が当接することにより押し潰し変形されて気密性を発揮するための気密材を設けるにあたり、戸尻側気密材は、戸尻側縦枠に支持される硬質の本体部と、該本体部から開き戸側に突出して前記押し潰し変形される軟質の変形部とを備えて構成されるものであり、該本体部は、該本体部の開き戸側辺が戸先側ほど開き戸側に偏倚した段差状に設けられ、該変形部は、本体部からの戸先側部位の突出位置が戸尻側部位の突出位置よりも開き戸側に偏倚するようにして設けられることを特徴とする開き戸の気密構造である。
請求項2の発明は、開き戸が開閉揺動自在に設けられる戸枠に、閉鎖した開き戸の表面板が当接することにより押し潰し変形されて気密性を発揮するための気密材を設けるにあたり、戸尻側気密材は、戸尻側縦枠に支持される硬質の本体部と、該本体部から開き戸側に突出して前記押し潰し変形される軟質の変形部とを備えて構成されるものであり、該本体部は、該本体部の開き戸側辺よりも戸先側に突出し、かつ戸尻側部位の本体部からの突出位置よりも開き戸側に偏倚する突出辺を含んで構成され、該突出辺に変形部の戸先側部位が設けられ、該変形部は、本体部からの戸先側部位の突出位置が戸尻側部位の突出位置よりも開き戸側に偏倚するようにして設けられることを特徴とする開き戸の気密構造である。
請求項3の発明は、開き戸が開閉揺動自在に設けられる戸枠に、閉鎖した開き戸の表面板が当接することにより押し潰し変形されて気密性を発揮するための気密材を設けるにあたり、戸尻側気密材は、戸尻側縦枠に支持される硬質の本体部と、該本体部から開き戸側に突出して前記押し潰し変形される軟質の変形部とを備えて構成されるものであり、該本体部は、該本体部の戸先側辺よりも戸先側に突出し、かつ戸尻側部位の本体部からの突出位置よりも開き戸側に偏倚する突出辺を含んで構成され、該突出辺に変形部の戸先側部位が設けられ、該変形部は、本体部からの戸先側部位の突出位置が戸尻側部位の突出位置よりも開き戸側に偏倚するようにして設けられることを特徴とする開き戸の気密構造である。
請求項4の発明は、開き戸が開閉揺動自在に設けられる戸枠に、閉鎖した開き戸の表面板が当接することにより押し潰し変形されて気密性を発揮するための気密材を設けるにあたり、戸尻側気密材は、戸尻側縦枠に支持される硬質の本体部と、該本体部から開き戸側に突出して前記押し潰し変形される軟質の変形部とを備えて構成され、該変形部は、円筒形状であり、該円筒の中心は、四角筒形状の本体部の中心線に対して戸先側に偏倚するとともに、本体部からの戸先側部位の突出位置が戸尻側部位の突出位置よりも開き戸側に偏倚するようにして設けられることを特徴とする開き戸の気密構造である。
請求項5の発明は、変形部は円筒形状であり、該円筒の中心は、四角筒形状の本体部の中心線に対して戸先側に偏倚していることを特徴とする請求項1乃至の何れか1記載の開き戸の気密構造である。
請求項6の発明は、本体部の開き戸側辺が戸先側ほど開き戸側に偏倚した傾斜状になっていることを特徴とする請求項2乃至4の何れか1記載の開き戸の気密構造である。
【発明の効果】
【0006】
請求項1または6の発明とすることにより、本体部から開き戸側に突出する変形部は、本体部からの戸先側部位の突出位置が、戸尻側部位の突出位置よりも開き戸側に偏倚している結果、開き戸が閉鎖した場合に、該開き戸と本体部とのあいだの変形部が押し潰される隙間が戸尻側よりも戸先側が狭くなる。このため開き戸が閉鎖する過程で、変形部が開き戸によって戸尻側に無理やりに移動する変形を受けたときに、変形部の戸先側部位は本体部に近いものとなって前記変形が抑制される。この結果、気密性を高めようとして戸尻側気密材の変形部の押し潰し変形の面積を広くしたときに、開き戸が閉鎖しているときの戸先側部位の戸尻側への無理な変形が抑制されて戸尻側気密材の早期の損耗を防止し、長寿命化が図れることになる。
さらに、変形部の戸先側部位を開き戸側に偏倚した構成とすることが簡単にできることになる。
請求項2または3の発明とすることにより、変形部の戸先側部位は、本体部の開き戸側辺または戸先側辺から戸先側に突出し、かつ戸尻側部位の本体部突出位置よりも開き戸側に偏倚する突出辺から突出することになるため、変形部をより戸先側に偏倚したものにできることになって、変形部の開き戸による押し潰し変形の面積を広くでき、更なる気密性の向上が図れることになる。
請求項4または5の発明とすることにより、変形部を戸先側に偏倚したものにしても、本体部は戸尻側に位置することができて開口幅を狭くすることが回避される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】開き戸の正面図である。
図2】開き戸の縦断面図である。
図3】(A)(B)は上枠側、下枠側の第一気密材部位の縦断面図である。
図4】開き戸の横断面図である。
図5】第二気密材(戸尻側気密材)部位の横断面図である。
図6】第三気密材部位の横断面図である。
図7】第一気密材の縦断面図である。
図8】第二気密材の横断面図である。
図9】第三気密材の横断面図である。
図10】(A)、(B)は戸尻側気密材の第二、第三の実施の形態を示す横断面図である。
図11】(A)〜(D)は戸尻側気密材の第四〜第七の実施の形態を示す横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の第一の実施の形態について、図面に基づいて説明する。尚、本実施の形態では戸尻側−戸先側方向を左右方向、開き戸の出入り方向を前後方向と定義するが、これに限定されるものではないことは勿論である。図面において、1は開き戸であって、該開き戸1は、吊元側部位が開き戸1の前後方向の幅内に設けられる支軸2を介して開閉揺動自在に戸枠3の上下枠3a、3bの戸尻側部位に軸支された所謂中心吊り式のものであるが、本発明は、旗蝶番等の蝶番を用いた蝶番吊り式のもの等、通常知られた開き戸であれば何れにも実施できることは言うまでもない。尚、1bは開き戸1の後述する表面板、1eは該表面板1bの内面に設けられる遮音材である。
【0009】
戸枠3は、四角枠形状をし、その戸当り面には第一、第二、第三気密材4、5、6が取付けられるが、上下枠3a、3bに取付けられる第一気密材4、戸先側縦枠3cに取付けられる第二気密材5、戸尻側縦枠3dに取付けられる第三気密材6はそれぞれ異形状をしているが、戸尻側縦枠3dに取付けられる第三気密材6が本発明の「戸尻側気密材」に相当するものであり、以下、これら第一、第二、第三気密材4、5、6について説明する。
勿論、本発明が実施された第三気密材6を、戸尻側縦枠3dだけでなく、残りの戸枠3a、3b、3cのうちの全て、あるいは任意に選択した一部のものに取付けても実施することができる。
因みに本実施の形態では、前記第一、第二、第三気密材4、5、6は、何れもEPDM(エチレン・プロピレン・ジエンゴム)製となっているが、気密材として必要な特性を有していれば材質については特に限定されるものではない。
【0010】
上下枠3a、3bの戸当り面に形成される凹溝3eは開き戸1側が開口する状態で上下対称形状をしており(必ずしも対称でなくてよい。)、該凹溝3eに第一気密材4が取付けられるが、該第一気密材4は、四角筒状をし凹溝3eの開口側に嵌入する本体部4aと、該本体部4aから上下方向に延出形成され、凹溝3eの溝内面に弾性変形する状態で圧入するヒレ部4bと、本体部4aよりも凹溝3eの溝奥側に嵌入する脚部4cと、凹溝3eの開口から突出するよう本体部4aに設けられた円筒状の変形部4dとにより構成されている。そして本体部4a、ヒレ部4b、脚部4cはソリッド状(硬質状)に形成され、変形部4dは、押し潰し変形(弾性変形)されやすいようスポンジ状(軟質状)に形成されているが、押し潰し変形をさらに助長するよう内周面4eが凹凸形状(波形状)になっている。
さらに第一気密材4は、変形部4dの中心Aが本体部4aの中心線Bに対して上下方向内側に偏倚しており、閉鎖した開き戸1の表面板により変形部4dが開き戸1側(正面側)から押圧状に当接することで押し潰し変形されることになって高い気密性を発揮できるように構成されている。
【0011】
つぎに戸先側縦枠3cに取付けられる第二気密材5であるが、この第二気密材5は、戸先側縦枠3cに形成される凹溝3fに取付けられる。該凹溝3fは、左右方向の溝外面(戸先側面)3gが溝内面(戸尻側面)3hの先端部位よりも開き戸1側に延出する長い状態で形成され、そして溝外面3gの開き戸側端からは戸先側に向けて段差状に折曲された段差面3iが形成されている。
そして第二気密材5は、前記溝内面3hの先端部位から溝外面3gの溝内面3hの先端部位に対向する部位よりも開き戸1側に延出する部位に当接(または近接対向)する四角筒形状の第一本体部5aと、左右両幅が第一本体部5aよりも幅狭な状態で四角筒形状をし、凹溝3fの開口側に嵌入する第二本体部5bと、該第二本体部5bから左右方向に向けて延出形成され、凹溝3fの溝内外面3h、3gに弾性変形する状態で圧入するヒレ部5cと、第一本体部5aよりも凹溝3fの溝奥側に嵌入する脚部5dと、溝外面3gの先端よりも開き戸1側に突出するよう第一本体部5aに設けられた円筒状の変形部5eとにより構成されている。因みに、溝内面3hを溝外面3gよりも短いものとして溝内面3hの先端と閉鎖したときの開き戸1の表面板1bとのあいだの隙間を大きくすることにより、指挟み防止の機能が発揮できるようにしている。
そして第一、第二本体部5a、5b、ヒレ部5c、脚部5dは硬質(ソリッド)状に形成され、変形部5eは、押し潰し変形しやすいよう軟質(スポンジ)状に形成されているが、さらに押し潰し変形(弾性変形)されやすいよう内周面5fが凹凸形状(波形状)になっている。
また第二気密材5は、変形部5eの中心Cが第一、第二本体部5a、5bの中心線D上に位置するように設定され、閉鎖した開き戸1の表面板が当接することにより変形部5eが押し潰し変形されて高い気密性を発揮できるようになっている。尚、5gは第一本体部5aの左右方向両側辺である。また第二気密材5としては、変形部5eを、後述する第三気密材6のように第一、第二本体部5a、5bに対して戸先側に偏倚したものとすることができる。
【0012】
最後に戸尻側縦枠3dに取付けられる第三気密材6であるが、戸尻側縦枠3dに形成される凹溝は、戸先側縦枠3cに形成される凹溝3fに対して左右対称となる状態で形成されるため、戸先側の凹溝3fと左右対称となる部位に同じ引出符号を付す。そしてこのものでは、溝外面3gの開き戸側端からは戸尻側に向けて段差状に折曲された段差面3jは、第二気密材5が設けられる側の段差面3iよりも左右方向に長くなっている。
そして第三気密材6は、前記第二気密材5と同様、前記溝内面3hの先端部位から溝外面3gの溝内面3hの先端部位に対向する部位よりも開き戸1側に延出する部位に当接(または近接対向)する四角筒形状の第一本体部6aと、左右両幅が第一本体部6aよりも幅狭な状態で四角筒形状をし、凹溝3fの開口側に嵌入する第二本体部6bと、該第二本体部6bから左右方向に向けて延出形成され、凹溝3fの溝内外面3h、3gに弾性変形する状態で圧入するヒレ部6cと、第一本体部6aよりも凹溝3fの溝奥側に嵌入する脚部6dと、溝外面3gの先端よりも開き戸1側に突出するよう第一本体部6aに設けられた円筒状の変形部6eとにより構成されている。因みに、溝内面3hを溝外面3gよりも短いものとして溝内面3hの先端と閉鎖したときの開き戸1の表面板1bとのあいだの隙間を大きくすることにより、指挟み防止の機能が発揮できるように配慮されている。
そして第一、第二本体部6a、6b、ヒレ部6c、脚部6dは硬質状(ソリッド状)に形成されるが、変形部6eは、押し潰し変形されやすいよう軟質状(スポンジ状)に形成されており、さらに押し潰し変形を助長するよう内周面6fが凹凸形状(波形状)になっており、閉鎖した開き戸1の表面板が弾圧状に当接することにより後述するように変形部6eが押し潰し変形されて高い気密性を発揮できるようになっている。
【0013】
この第三気密材6の第一本体部6aは、さらに左右方向内側辺(戸先側辺)6gが溝外面3gの先端の段差面3jよりも開き戸1側に突出するべく長くなっており、これにより第一本体部6aの変形部6eが突出形成される前後方向外側辺(開き戸側辺)6hは、左右方向内側(戸先側)ほど開き戸1側に偏倚する(近くなるまたは高くなる)よう傾斜しており、さらにこの前後方向外側辺6hの左右方向内側辺(戸先側辺)6gと交わる部位からは、前記傾斜した状態で前後方向外側辺6hから延長するようにして左右方向内側(戸先側)に突出する突出辺(硬質状)6iが形成されている。そして変形部6eは、戸先側部位6jが突出辺6iから突出する状態で設けられることになって突出辺6iと前後方向外側辺6hの戸尻側部位とのあいだに形成されるようになっており、これにより、変形部6eの中心Eは、第一、第二本体部6a、6bの中心線Fに対して左右方向内側(戸先側)に偏倚するように形成されているが、これに限定されず、第二気密材5のように一致していてもよい。尚、6lは、第一本体部6aの左右方向外側辺(戸尻側辺)である。
そして本実施の形態では、変形部6eの戸先側部位6jが戸尻側部位6kよりも開き戸1側に位置(偏倚)する状態で第一本体部6aに支持された構成になる結果、表面板1bが変形部6eを押し潰し変形する面積を広くして、優れた気密性(遮音性を含む)を確保しようとして、コーナー部1cを深く戸尻側に食い込ませたときに、変形部6eが突出形成される第一本体部6aと開き戸1とのあいだの隙間は、変形部6eの戸先側部位6jが突出する戸先側が狭く、戸尻側部位6kが突出する戸尻側が広くなる。このため、開き戸1が閉鎖したときに変形部6eの戸先側部位6jは、戸尻側部位6kよりも第一本体部6aに近い状態で支持されることになり、開き戸1の閉鎖の過程で戸先側部位6jが開き戸1から受ける戸尻側への無理な変形が抑制され(小さくなり)、これによって変形部6eの押し潰し変形の面積を広くして気密性に優れた第三気密材6としながら、該第三気密材6の早期の損耗を防止して長寿命化を図ることができるように構成されている。
【0014】
因みに、第一、第二気密材4、5も同様であるが、第三気密材6の硬質状部の硬さはHs70、軟質状部である変形部6eの硬さはHs40〜50である。そしてこのような硬さにすることにより、指詰めをする可能性が考えられる第二、第三気密材5、6の第一本体部5a、6aについては、開き戸1を閉鎖したときに、指詰めが無い状態では変形部5e、6eが変形し、第一本体部5a、6aは変形はしないか僅かに変形するものであるが、指詰めがあった場合に、これに対応するため第一本体部5a、6aが変形するように配慮されている。
さらに変形部6eの表面に、コーナー部1cが変形部6eを抉るように食い込んで押し潰し変形する状態で表面板1bが摺動する際の摩擦抵抗を低減するため潤滑剤(例えば硬質シリコン剤)を塗布することが好ましい。この場合、塗布する範囲としては、開き戸1が摺動する範囲とすることが好ましいが、これに限定されるものではない。
【0015】
一方、開き戸1の表面板1bは、支軸2の中心Oを挟んだ戸尻側から戸先側の当接面部1dで第三気密材6に当接して弾圧(押圧)をすることで該第三気密材6を押し潰し変形させることになるが、表面板1bの当接面部1dよりも戸尻側面部にはテーパー面部1aが形成され、このテーパー面部1aと当接面部1dとのあいだに鈍角状のコーナー部1cが形成されている。因みにこのコーナー部1cは鈍角状でなく、R状(円弧状)であってもよい。さらにテーパー面部1aは、本実施の形態では直線状にしたがR状、二角、三角等の多角形状に折曲されたものであってもよい。
また前記鈍角状のコーナー部1cがあることで、第三気密材6は、開き戸1が閉鎖する過程で、この鈍角状のコーナー部1cから食い込む状態で押し潰されることになるので、変形部6eの抉り変形が緩和されることになって変形部6eの長寿命化が図れることになる。
また第一、第二、第三気密材4、5、6の脚部4c、5d、6dは、本実施の形態では二枚が剥離状に設けられており、戸枠3の凹溝3e、3fの深さに対応できるようになっている。
【0016】
叙述の如く構成された本発明の本実施の形態において、戸尻側に設けられる第三気密材6は、第一本体部6aの左右方向内側片6gが溝外面3gの先端の段差面3jよりも開き戸1側に突出するべく長くなっていて第一本体部6aの変形部6eが形成される前後方向外側辺(開き戸側辺)6hは、左右方向内側(戸先側)ほど開き戸1側に向くよう傾斜しており、これによって変形部6eの戸先側部位6jの第一本体部6aからの突出位置は、戸尻側部位6kの突出位置よりも開き戸1側に偏倚した状態になっている。
この結果、開き戸1が閉鎖する過程で、戸先側部位6jにコーナー部1cが食い込むように働いて無理やり戸尻側に移動変形させようとしたときに、戸尻側部位6kよりも短い(近い)状態で硬質の第一本体部6aからの強い支持(弾持)を受けることになる。これにより変形部6eの戸先側部位6jは、第一本体部6aによる強い支持を受けることになって、変形部6eの押し潰し変形の面積を広く確保して優れた気密性を発揮するため、表面板1bによる変形部6eの押し潰し位置を第一本体6a側に相対的に変化させたとしても、戸先側部位6jが戸尻側部位6kと同じ位置から突出した場合に比して戸先側部位6jの戸尻側への無理な変形が抑制され、これによって第三気密材6の早期の損耗を防止して長寿命化を図ることができる。
【0017】
さらに本実施の形態では、該変形部6eの戸先側部位が左右方向内側片6gから戸先側に向けて突出する傾斜状の突出辺6iに設けられるので、変形部6eの戸先側部位6jをより戸先側に偏倚したものにでき、これにより変形部6eの表面板1bによる押し潰し変形面積を更に広く確保できることになって、より一層優れた気密性を発揮できることになる。そのうえこの場合、変形部6eを戸先側に偏倚したものとして優れた気密性を確保できるものとしながら、戸尻側縦枠3dの凹溝3fを戸先側に偏倚させる必要がなくなって開口面積の広いものとすることができる。
【0018】
そのうえこのものでは、変形部6eは、中心Eが第一、第二本体部6a、6bの中心線Fよりも戸先側に偏倚させることで、変形部6eが戸先側に変位したものとして構成できることとなって、当接面部1dの変形部6eに対する押し潰し変形幅を広いものに確保でき、これによって更なる気密性の確保ができることになる。
【0019】
尚、本発明は前記実施の形態に限定されるものでないことは勿論であって、戸尻側気密材としては、図10、11に示すようなものとしても実施することができる。
図10(A)(B)の第二、第三の実施の形態のものは、前記第一の実施の形態のように突出辺がないものであるが、(A)の第二の実施の形態のものは、戸先側が開き戸側に偏倚するように傾斜した開き戸側辺6hに変形部6eが設けられたものであり、(B)の第三の実施の形態のものは、戸先側が開き戸側に偏倚するよう開き戸側辺6hが段差状になったものである。
また図11(A)〜(D)に示す第四〜第七の実施の形態のものは、第一の実施の形態のように突出辺6iが設けられたものであるが、(A)の第四の実施の形態のものは突出辺6iが傾斜していないものであり、(B)の第五の実施の形態のものは突出辺6iが傾斜の無い開き戸側辺6hに対して左右方向内側辺(戸先側辺)6gから開き戸側に向けて延長したものの先端部が戸先側に突出することで開き戸側に向けて段差状に偏倚したものであり、(C)の第六の実施の形態のものは突出部6iが傾斜の無い開き戸側辺6hからそのまま戸先側に延長する状態で伸び、その延長先端部が開き戸1側に突出したものであり、(D)は突出部6iが左右方向内側辺6gと傾斜の無い開き戸側辺6hとの交差部位から戸先側ほど開き戸1側に傾斜する状態で突出しているものである。
さらに開き戸側辺を円弧形状、鈍角形状などの各種の形状にしても実施することができる。
【産業上の利用可能性】
【0020】
本発明は、建築物の出入り口等に建て付けられる開き戸の気密構造として利用することができる。
【符号の説明】
【0021】
1 開き戸
1b 表面板
1d 当接面部
3 戸枠
3d 戸尻側縦枠
4 第一気密材(上下側気密材)
5 第二気密材(戸先側気密材)
6 第三気密材(戸尻側気密材)
6a 第一本体部
6b 第二本体部
6e 変形部
6g 左右方向内側辺(戸先側辺)
6h 前後方向外側辺(開き戸側辺)
6i 突出辺
6j 戸先側部位
6k 戸尻側部位
6l 左右方向外側辺(戸尻側辺)
E 変形部中心
F 本体部中心線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11