(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
分離媒体と収容部とを含み、排出転写に使用するための、サンプル分離器具であって、サンプルが電気泳動される分離媒体は、サンプルが排出される端部を有し、分離媒体の端部に接し張力下にある状態で移動する転写膜にサンプルが転写され、収容部は、分離媒体を収容し、該端部の側に開口を有し、分離媒体は、該開口を通って該収容部の外部に露出する露出部分を有し、露出部分は、収容部における該開口の側に位置する周縁部上に延出する延出部分を有している、サンプル分離器具。
分離媒体と収容部とを含み、排出転写に使用するための、サンプル分離器具であって、サンプルが電気泳動される分離媒体は、サンプルが排出される端部を有し、分離媒体の端部に接した状態で移動する転写膜にサンプルが転写され、収容部は、分離媒体を収容し、該端部の側に開口を有し、分離媒体は、該開口を通って該収容部の外部に露出する露出部分を有し、転写膜は、張力下にあり、
前記露出部分は、該収容部における該開口の側に位置する周縁部上に延出する延出部分を有することが可能である、サンプル分離器具。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明は、排出転写のためのサンプル分離器具であって、分離媒体と、該分離媒体を収容する収容部と、を備え、該収容部は、該端部側に開口を有し、該分離媒体は、該開口を通って該収容部の外部に露出する露出部分を有し、該露出部分は、該収容部における該開口の周縁部上に延出する延出部分を有しているサンプル分離器具を提供する。なお、本明細書において、排出転写とは、分離媒体中においてサンプルを電気泳動し、該分離媒体の端部から排出される該サンプルを、該端部に接した状態で移動する転写膜に転写させる技術を意味する。
【0013】
また、本発明は、本発明に係るサンプル分離器具と、上記分離媒体に電流を流すための電極と、上記転写膜と、上記転写膜または上記分離媒体を、上記転写膜が上記分離媒体の上記端部に接した状態で移動させる移動部と、を備えているサンプル分析装置を提供する。
【0014】
ここで、特許文献1には、分離媒体がサンプル分離部に収容され、当該分離媒体の先端に、多孔質膜を介して、または、介さずに、分離媒体とは別体の転写補助体が取り付けられている構成が記載されている。また、特許文献1には、サンプル分離部に収容された分離媒体の先端がサンプル分離部から露出している構成も記載されている。
【0015】
これに対し、本発明に係るサンプル分離器具は、分離媒体が、収容部の開口を通って収容部の外部に露出する露出部分を有している点において、前者の構成と異なっており、当該露出部分が、収容部における開口の周縁部上に延出する延出部分を有している点において、後者の構成と異なっている。
【0016】
以下、本発明の実施形態の詳細な構成および効果について、図面を参照して説明する。
【0017】
本発明の一実施形態(実施形態1)に係るサンプル分析装置100の概略的な構成について、
図1〜6を参照して説明する。
【0018】
(サンプル分析装置)
図1は、本実施形態に係るサンプル分析装置100の概略構成を概略的に示す側方断面図である。また、
図2は、本実施形態に係るサンプル分析装置100の構成を概略的に示す斜視図である。
【0019】
図1および
図2に示すように、サンプル分析装置100は、分離媒体10および収容部21を備えているサンプル分離器具50、転写膜11、陰極バッファ槽20、陽極バッファ槽22、移動部23、電源30、陰極(電極)31、ならびに陽極(電極)32を備えている。
【0020】
収容部21は、分離媒体10を収容している。また、収容部21は、陽極バッファ槽22内に開口する開口21b、および陰極バッファ槽20内に開口する開口21cを有している。
【0021】
陰極バッファ槽20および陽極バッファ槽22内には、緩衝液が注入される。また、陰極バッファ槽20内には、陰極31が配置される。また、陽極バッファ槽22内には、陽極32が配置される。電源30は、陰極31および陽極32に接続される。
【0022】
陽極バッファ槽22内には、転写膜11が、分離媒体10の開口21b側の端部に接触するように配置される。本実施形態において、移動部23は、転写膜11を、分離媒体10の開口21b側の端部に接した状態で移動させる。
【0023】
サンプル分析装置100によれば、開口21cから分離媒体10にサンプル1を導入し、電源30が陰極31と陽極32との間に電圧を印加することによって、分離媒体10中において、開口21cから開口21bに向かう方向(
図1中A方向)にサンプル1を電気泳動することができる。そして、当該電気泳動の結果、分離媒体10の開口21b側の端部から排出される分離されたサンプル1を、移動部23が当該端部に接した状態で、分離方向とは非平行な方向(
図1中B方向)に移動させる転写膜11に転写(吸着)させることができる。これにより、排出転写を好適に実現することができる。
【0024】
なお、移動部23は、転写膜11を、分離媒体10側に張力を掛けた状態で移動させることが好ましい。これにより、分離媒体10と転写膜11とをより密着させ、分離媒体10から排出されるサンプルを好適に転写膜11に転写することができる。
【0025】
移動部23が、転写膜11を、分離媒体10側に張力を掛けた状態で移動させるための構成の一例としては、
図3の(a)に示すように、転写膜11に対して、分離媒体10とは反対側から、収容部21の開口21bを挟む位置において、当接するガイド24を設ける構成が挙げられる。当該構成では、転写膜11は、ガイド24間に直線的に張った状態から、分離媒体10によって押し下げられた状態になるため、分離媒体10に向かう方向に張力が掛かった状態となる。これにより、分離媒体10と転写膜11とをより密着させることができる。
【0026】
なお、ガイド24は、転写膜11がガイド24に当接した状態で移動可能なように、転写膜11に当接する部位が平滑であることが好ましい。ガイド24は、例えば、樹脂等の絶縁体によって形成することができる。
【0027】
また、移動部23が、転写膜11を、分離媒体10側に張力を掛けた状態で移動させるための構成の他の例としては、
図3の(b)に示すように、移動部23を、分離媒体10の開口21b側の端部よりも、高い位置(開口21c側の位置)に配置する構成が挙げられる。当該構成によっても、転写膜11を、分離媒体10に向かう方向に張力が掛かった状態とすることができる。
【0028】
(サンプル分離器具)
図4Aは、本実施形態に係るサンプル分離器具50の概略構成を模式的に示す側方断面図である。
図4Aに示すように、分離媒体10は、開口21bを通って収容部21の外部に露出する露出部分10bを有している。露出部分10bは、収容部21における開口21bの周縁部21a上に延出する延出部分10aを有している。そして、露出部分10bが、転写膜11と接している。
【0029】
このように、分離媒体10の露出部分10bが、転写膜11に接触するため、分離媒体10において分離されたサンプル1を好適に転写膜11に転写することができる。また、収容部21内の分離媒体10と露出部分10bとを一体の部材によって構成することにより、サンプル分離器具を、簡易に作製することができる。
【0030】
また、収容部21内の分離媒体10によって分離されたサンプル1は、開口21bを通り、露出部分10bにおける開口21bに対応する部位を通って、転写膜11に転写される。ここで、露出部分10bにおける開口21bに対応する部位の周りに延出部分10aを設けることで、当該延出部分10aが、露出部分10bにおける開口21bに対応する部位に対して、保護部として働く。これにより、露出部分10bと転写膜11との摩擦により、露出部分10bにおける開口21bに対応する部位が摩耗して壊れ、転写が不可能になることや、露出部分10bにおける開口21bに対応する部位が転写膜11に引っ張られて歪み、電気泳動パターンに歪みが生じることを、好適に抑制することができる。よって、分離媒体10における転写膜11に接する端部の耐久性を、向上させることができる。なお、本明細書において、分離媒体10の端部の耐久性とは、良好な転写可能な状態をどれだけ維持可能であるかを示す。
【0031】
なお、延出部分10aは、開口21bから、周縁部21a上に、転写膜11の移動方向(
図4A中B)およびその反対方向に沿って延出していることが好ましい。これにより、露出部分10bと転写膜11との摩擦から、露出部分10bにおける開口21bに対応する部位を好適に保護することができる。
【0032】
また、一つの観点において、延出部分10aの開口21bからの延出幅は、延出部分10aの延出方向における開口21bの幅以上であることが好ましい。これにより、露出部分10bにおける開口21bに対応する部位を、十分な幅の延出部分10aによって保護することができる。
【0033】
また、他の観点において、延出部分10aの開口21bからの延出幅は、1μm以上10000μm以下であることがより好ましく、100μm以上2000μm以下であることがさらに好ましい。延出部分10aの開口21bからの延出幅が、100μm以上であることにより、露出部分10bにおける開口21bに対応する部位を、十分な幅の延出部分10aによって保護することができる。また、延出部分10aの開口21bからの延出幅が、1000μm以下であることにより、露出部分10bと転写膜11との接触面積および摩擦を低減して、転写膜11を好適に移動させることができる。
【0034】
また、露出部分10bの厚さ(周縁部21a上の延出部分10aの厚さ)は、1μm以上2mm以下であることが好ましく、50μm以上200μm以下であることがより好ましい。露出部分10bの厚さが上記の範囲であることにより、露出部分10bの強度を保つことができる。
【0035】
また、露出部分10bは、最初から延出部分10aを含むようなものであってもよいが、
図4Bに示すように、最初は延出部分10aを含まないようなものであってもよい。露出部分10bが最初は延出部分10aを含まないようなものである場合には、例えば、収容部21を転写膜11に近接させることにより、露出部分10bを転写膜11に圧接させれば、
図4Cに示すように、露出部分10bが延出部分10aを含むようにすることができ、更に、
図4Aに示すように、露出部分10bが延出部分10aを含むようにすることもできる。これは、これ以降に説明する他の実施の形態でも同様である。
【0036】
また、一実施形態において、収容部21の開口21b側の端部には、切り欠き21dが設けられていてもよい。
図5は、サンプル分離器具50における切り欠き21dのバリエーションを示す側方断面図である。
図5の(a)は、収容部21の開口21b側の端部において、切り欠き21dが、転写膜11の移動方向の前方および後方の両方に設けられている構成を示す。
図5の(b)に示すように、収容部21の開口21b側の端部において、切り欠き21dが、転写膜11の移動方向の前方および後方の片方に設けられている構成を示す。
図5の(c)は、収容部21の開口21b側の端部において、切り欠き21dが設けられていない構成を示す。
【0037】
本実施形態では上記の何れの構成を取ることもできるが、
図5の(a)および(b)、特に
図5の(a)に示すように、収容部21の開口21b側の端部に、切り欠き21dを設けることにより、
図5の(c)に示すような切り欠き21dを設けない場合に比べて、収容部21が転写膜11と接触する面積を低減することができる。これにより、転写膜11と収容部21との摩擦を低減して、転写膜11が削れることを抑制することができる。
【0038】
特に、
図5の(d)に示すように、切り欠き21dが丸められていることによって、転写膜11が、収容部21の角に引っ掛かることを抑制し、転写膜11を露出部分10bにより密着させることができる。これにより、サンプル1をより好適に転写膜11に転写することができる。
【0039】
なお、収容部21は、例えば、ガラスまたはアクリル等の絶縁体から形成された2枚の絶縁板から構成することができる。一実施形態において、収容部21は、開口21cにおいて絶縁板の一部が欠けており、分離媒体10が陰極バッファ槽20内に露出させている。これにより、分離媒体10に対してサンプル1を容易に導入することが可能となる。
【0040】
また、分離媒体10は、開口21cから導入されたサンプル1に含まれる各成分を、電気泳動により、分子量等の特性に基づいて分離するための媒体である。分離媒体10の例としては、アクリルアミドゲルおよびアガロースゲル等のゲルが挙げられるが、これに限定されない。分離媒体10の横幅は、例えば、10〜12レーンのサンプルを分離することが可能な長さとすることができる。
【0041】
また、一実施形態において、収容部21内の分離媒体10は、開口21bに向かって先細になっていてもよい。
図6は、サンプル分離器具50における分離媒体10の形状のバリエーションを示す側方断面図である。
図6の(a)および(b)は、収容部21内の分離媒体10が、開口21bに向かって、先細になっている構成を示す。
図6の(a)では、収容部21内の分離媒体10の両側が傾斜を有する構成を示す。
図6の(b)では、収容部21内の分離媒体10の片側が傾斜を有する構成を示す。
図6の(c)は、収容部21内の分離媒体10が、先細になっていない構成を示す。
【0042】
本実施形態では上記の何れの構成を取ることもできるが、
図6の(a)および(b)、特に
図6の(a)に示すように、収容部21内の分離媒体10が、開口21bに向かって先細になっていることにより、
図6の(c)に示すような収容部21内の分離媒体10が先細になっていない場合に比べて、開口21bの幅を狭くすることで、開口21bと陽極32との間に形成される電気力線Fを集中させることができる。これにより、サンプルの転写パターンを鮮明なものとすることができる。
【0043】
ここで、収容部21内の分離媒体10の幅(分離方向に直交する方向の幅、
図6における横方向の幅)は、例えば、1mm以上2mm以下の範囲とすることができる。収容部21内の分離媒体10の幅をこの程度とすることにより、電気泳動時に流れる電流量が増大することを避け、過度に発熱することを避けることができるとともに、幅方向の均一性を担保することができる。
【0044】
そして、開口21bの位置における分離媒体10の短手方向の幅が、例えば、100μm以上1mm以下となるように、収容部21内の分離媒体10を開口21bに向かって先細にすることができる。特に、開口21bの位置における分離媒体10の短手方向の幅を、500μm以下にすることにより、電気力線Fを好適に集中させて、サンプルの転写パターンをより鮮明なものとすることができる。
【0045】
また、収容部21の幅(分離方向に直交する方向の幅、
図6における横方向の幅)は、例えば、2mm以上3mm以下の範囲とすることができるが、これに限定されない。また、収容部21の幅は、開口21b付近では、すぼまるようになっていてもよい。
【0046】
サンプル分離器具50の製造方法は、例えば、親水性のガラス上に、露出部分10bの厚さに対応する距離を離間させて収容部21を配置し、収容部21内に分離媒体10を形成するための前駆体(例えば、ゲルを形成するモノマーおよび反応剤)を充填して、固化させた後、先端を所望の形状に切り落としてもよいが、特に限定されない。
【0047】
また、本実施形態において、
図1および
図2に示すように、サンプル分離器具50は、略垂直方向に起立しており、その下部が陽極バッファ槽22内に配置され、その上部が陰極バッファ槽20に接するように配置されている。これにより、分離媒体10は、陽極バッファ槽22内の緩衝液および陰極バッファ槽20内の緩衝液の少なくとも一方によって水冷され、十分に冷却することができる。但し、本発明はこれに限定されず、サンプル分離器具50を水平に配置してもよい。
【0048】
(転写膜)
転写膜11は、分離媒体10によって分離されたサンプルを長期間にわたって安定に保存可能にし、さらに、その後の分析を容易にするサンプルの吸着・保持体であることが好ましい。転写膜11の材質としては、高い強度を有し、かつサンプル結合能(単位面積当たりに吸着可能な重量)が高いものが好ましい。転写膜11としては、サンプルがタンパク質である場合にはPVDF膜等が適している。なお、PVDF膜は予めメタノール等を用いて親水化処理を行っておくことが好ましい。これ以外には、ニトロセルロース膜またはナイロン膜等、従来からタンパク質、DNAおよび核酸の吸着に利用されている膜も使用可能である。
【0049】
転写膜11は、陽極バッファ槽22内において緩衝液に浸漬された状態で使用される。一実施形態において、転写膜11は、1回の電気泳動・転写に使用される長さ、換言すれば、1回の電気泳動・転写において陽極バッファ槽22内を移動する距離の長さを有していればよい。転写膜11をこのように構成することにより、1回の電気泳動・転写毎に、転写膜1を切断する操作が不要となり、サンプル分析装置100の使用性を向上させることができる。また、転写膜11の横幅は、分離媒体10の横幅に対応する長さとすればよい。
【0050】
(陰極および陽極)
陰極31および陽極32は、金属等の導電性を有する材料から形成される。陰極31および陽極32を形成する材料としては、例えば電極のイオン化を抑制する観点から白金が好ましい。
【0051】
陰極31および陽極32の配置は、特に限定されないが、開口21bに対向するように陽極32が配置されていることが好ましい。これにより、開口21bを通る電気力線が転写膜11に対して略垂直になるため、サンプルの吸着の精度を向上し得る。
【0052】
また、陽極32は、転写膜11から離して配置することが好ましい。これによって、陽極32から発生する気泡が、転写膜11に対する分離成分の吸着に悪影響を及ぼすことを抑制することができる。
【0053】
本実施形態では、陽極32および陰極31は、電源30に接続されているが、例えば、制御部に接続して使用してもよいし、外部のパワーサプライ(直流電源装置)に接続して使用してもよい。外部のパワーサプライに接続して使用する場合、該パワーサプライに時間、電流および電圧をセットした後、パワーサプライの動作開始と同時に、制御部を操作してサンプル分析装置100を動作開始させればよい。
【0054】
(陽極バッファ槽および陰極バッファ槽)
陽極バッファ槽22および陰極バッファ槽20は、緩衝液(バッファ)を滞留させる絶縁性の容器である。本実施形態において、陰極バッファ槽20は、陽極バッファ槽22に対して上方に設けられている。
【0055】
陽極バッファ槽22および陰極バッファ槽20に入れる緩衝液は、導電性を有するあらゆる緩衝液であり得、特に、弱酸性〜弱塩基性に緩衝域を有する緩衝液を好適に用いることができる。そのような緩衝液としては、例えば、Tris/グリシン系緩衝液、酢酸緩衝溶液、炭酸ナトリウム系緩衝液、CAPS緩衝液、Tris/ホウ酸/EDTA緩衝液、Tris/酢酸/EDTA緩衝液、MOPS、リン酸緩衝液およびTris/トリシン系緩衝液等の緩衝液を用いることができる。
【0056】
(移動部)
移動部23の構成は、転写膜11を、分離媒体10の露出部分10bに接した状態で移動させるものであれば特に限定されないが、例えば、転写膜11の移動方向の前端部および後端部を固定するフレームと、当該フレームを移動させる駆動部とから構成されていてもよい。駆動部の構成は特に限定されず、例えば、ボールネジ機構、ラックピニオン機構等の構成を用いることができる。また、移動部23は、例えば、ローラによって、ロール状の転写膜11を繰り送る構成であってもよい。
【0057】
このように、移動部23が、転写膜11を、分離媒体10の露出部分10bに対して相対的に移動させることにより、サンプル1の各成分を、分離媒体10から排出時間に応じて、転写膜11上の異なる位置に転写することができ、好適に排出転写を実現することができる。
【0058】
(サンプルの電気泳動および転写)
次に、サンプル分析装置100におけるサンプル1の電気泳動および転写について、詳細に説明する。なお、サンプル分析装置100に供されるサンプル1としては、これらに限定されないが、生物材料(例えば、生物個体、体液、細胞株、組織培養物、もしくは組織断片)からの調製物、または、市販の試薬等が挙げられる。例えば、ポリペプチドまたはポリヌクレオチドが挙げられる。
【0059】
まず、サンプル分離器具50の開口21cから、サンプル1を分離媒体10に導入する。サンプル1には、分析対象の他、電気泳動の進行状態を確認するための可視分子量マーカーを加えてもよい。
【0060】
そして、電源30が、陽極32と陰極31との間に電流を流し、電気泳動を開始する。
陽極32と陰極31との間に流す電流値としては、特に限定されないが、50mA以下であることが好ましく、20mA以上、30mA以下であることがより好ましい。なお、制御部等により、電流値が一定になるように制御してもよいし、電圧が一定になるように制御してもよいし、その他の態様で電流・電圧を制御してもよい。
【0061】
転写膜11は、サンプル分離器具50における電気泳動の進行に合わせて、移動部23により、分離媒体10に接した状態で徐々に移動する。転写膜11の移動速度は、特に限定されないが、例えば、60〜120分間に、5〜10cm移動するペースとすることができる。
【0062】
そして、開口21bから、電気泳動によって排出されるサンプル1(分離媒体10内で分離されたもの)が、転写膜11における排出されるタイミングに従った位置(排出されたタイミングにおいて開口21bに対向していた位置)に吸着される。これにより、転写膜11に分離されたサンプルが転写される。
【0063】
転写後、転写膜11を回収し、染色又は免疫反応(ウェスタンブロット法におけるブロッキングおよび抗原抗体反応)等に供することができる。その後、蛍光検出器等によって、転写膜11に転写された成分の分離パターンが検出される。このような蛍光検出器は、サンプル分析装置100に組み込まれていてもよく、これによって電気泳動、転写、および検出の全工程を自動化することができる。
【0064】
〔実施形態2〕
本発明の実施形態2について、以下に説明する。なお、説明の便宜上、前記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を省略する。
【0065】
図7は、本発明の実施形態2に係るサンプル分離器具50の概略構成を模式的に示す側方断面図である。
図7に示すように、本実施形態に係るサンプル分離器具50は、分離媒体10を収容部21に固定するための固定層(固定部)41が設けられている。
図7の(a)は、固定層41が、周縁部21aと延出部分10aとの間に設けられている構成を示す。
図7の(b)は、固定層41が、周縁部21aと延出部分10aとの間に加えて、収容部21の内面と、収容部21内の分離媒体10との間に部分的に設けられている構成を示す。
図7の(c)は、固定層41が、周縁部21aと延出部分10aとの間に加えて、収容部21の内面と、収容部21内の分離媒体10との間の全体に設けられている構成を示す。
図7の(d)は、固定層41が、収容部21の内面と、収容部21内の分離媒体10との間の全体に設けられている構成を示す。
【0066】
特に、
図7の(a)〜(c)に示すように、周縁部21aと延出部分10aとの間に、分離媒体10を収容部21に固定するための固定層41が設けられていることにより、延出部分10aが、転写膜11との摩擦によって周縁部21aから剥がれることを好適に避けることができる。これにより、延出部分10aによって、露出部分10bにおける開口21bに対応する部位を保護して、分離媒体10における転写膜11に接する端部の耐久性を、より向上させることができる。
【0067】
また、
図7の(b)〜(d)に示すように、収容部21の内面と、収容部21内の分離媒体10との間に分離媒体10を収容部21に固定するための固定層41が設けられていることにより、分離媒体10を収容部21により強固に固定することができる。これにより、分離媒体10と収容部21との間に緩衝液または気泡等が入り、電気泳動が乱れることを防止することができる。
【0068】
なお、本実施形態に係るサンプル分離器具50は、排出転写に用いることを前提としている。一般的な電気泳動ゲルでは、ゲルとゲルの収容部とを、実験の後工程において剥がす必要があるため、ゲルとゲルの収容部との接着は限定的である。これに対し、本実施形態に係るサンプル分離器具50では、後工程において分離媒体10を収容部21から剥がす必要が無く、むしろ分離媒体10を収容部21により強固に固定することが好ましい。
【0069】
固定層41は、例えば、接着層、多孔質層、フィルム層等を含んだものであり得る。
【0070】
固定層41に含まれる接着層としては、分離媒体10と収容部21とを接着する接着層を用いることができる。当該接着層を構成する接着剤としては、例えば、公知の紫外線硬化型接着剤、嫌気性接着剤、アクリル系接着剤等が挙げられる。当該接着層を形成する方法としては、例えば、収容部21に接着剤を塗布し、収容部21内に分離媒体10を充填した後に、接着剤を硬化する方法等が挙げられるが、これに限定されない。このように、固定層41として、接着層を用いることにより、分離媒体10を収容部21に強固に固定することができる。
【0071】
固定層41に含まれる多孔質層としては、収容部21の表面に形成された多孔質層を用いることができる。当該多孔質層が収容部21の表面に形成されていることにより、分離媒体10は、一部が当該多孔質層内に含まれた状態で形成される。このとき、当該多孔質層内に含まれた分離媒体10と、当該多孔質層上の分離媒体10とが一体になっているため、分離媒体10は、収容部21の表面に固定されることになる。収容部21の表面に多孔質層を形成する方法としては、例えば、酸素プラズマ処理、UVオゾン処理、サンドブラスト処理、固定部をエッチングする薬液処理、または、それらの複合処理等が挙げられる。このように、固定層41として、多孔質層を用いることにより、分離媒体10を収容部21に強固に固定することができる。
【0072】
固定層41に含まれるフィルムとしては、一方の面が収容部21の表面に接着し、他方の面が分離媒体10に接着するフィルムを用いることができる。当該フィルムにおける収容部21側の面には、例えば、接着剤が塗布されており、これによって収容部21の表面に接着するようになっていてもよい。当該フィルムにおける分離媒体10側の面には、例えば、凹凸が形成され、分離媒体10との接触表面積を増大させることによって分離媒体10に密着するようになっていてもよい。このようなフィルムとしては、例えば、いわゆるモスアイフィルムや、金型等を用いて微細構造が形成されたフィルム等が挙げられる。また、当該フィルムにおける分離媒体10側の面には、例えば、分離媒体10と共有結合する試薬が塗布されていてもよい。当該フィルムの基材としては、樹脂、例えば、TACまたはPET等のプラスチックフィルムを用いることができる。当該フィルムは、収容部21の表面に貼付することにより、使用することができる。このように、固定層41として、フィルムを用いることにより、分離媒体10を収容部21に簡便に固定することができる。
【0073】
〔実施形態3〕
本発明の実施形態3について、以下に説明する。なお、説明の便宜上、前記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を省略する。
【0074】
図8は、本発明の実施形態3に係るサンプル分離器具50の概略構成を模式的に示す側方断面図である。
図8に示すように、本実施形態に係るサンプル分離器具50には、分離媒体10を収容部21に固定するために、収容部21の表面に凹凸形状部(固定部)42が形成されている。
図8の(a)は、凹凸形状部42が、周縁部21aと延出部分10aとの間に設けられている構成を示す。
図8の(b)は、凹凸形状部42が、周縁部21aと延出部分10aとの間に加えて、収容部21の内面と、収容部21内の分離媒体10との間に部分的に設けられている構成を示す。
図8の(c)は、凹凸形状部42が、周縁部21aと延出部分10aとの間に加えて、収容部21の内面と、収容部21内の分離媒体10との間の全体に設けられている構成を示す。
図8の(d)は、凹凸形状部42が、収容部21の内面と、収容部21内の分離媒体10との間の全体に設けられている構成を示す。
【0075】
凹凸形状部42は、分離媒体10との接触表面積を増大させることによって分離媒体10に密着するようになっている。これにより、分離媒体10を収容部21に強固に固定することができる。
【0076】
特に、
図8の(a)〜(c)に示すように、延出部分10a上に分離媒体10を収容部21に固定するための凹凸形状部42が設けられていることにより、延出部分10aが、転写膜11との摩擦によって周縁部21aから剥がれることを好適に避けることができる。これにより、延出部分10aによって、露出部分10bにおける開口21bに対応する部位を保護して、分離媒体10における転写膜11に接する端部の耐久性を、より向上させることができる。
【0077】
また、
図8の(b)〜(d)に示すように、収容部21の内面に、分離媒体10を収容部21に固定するための凹凸形状部42が設けられていることにより、分離媒体10を収容部21により強固に固定することができる。これにより、分離媒体10と収容部21との間に緩衝液または気泡等が入り、電気泳動が乱れることを防止することができる。
【0078】
凹凸形状部42は、例えば、金型等を用いて収容部21の表面に微細構造を形成することによって形成することができる。また、凹凸形状部42は、サンドブラスト法や、O
2プラズマ法等によって、収容部21の表面を荒らすことによって形成してもよい。
【0079】
〔実施形態4〕
本発明の実施形態4について、以下に説明する。なお、説明の便宜上、前記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を省略する。
【0080】
図9は、本実施形態に係るサンプル分離器具50の概略構成を模式的に示す側方断面図である。
図9に示すように、本実施形態に係るサンプル分離器具50では、多孔質膜(固定部)43が、開口21bを覆うように収容部21に接着されている。また、多孔質膜43は、分離媒体10を含んでおり、収容部21内の分離媒体10と、多孔質膜43に含まれている分離媒体10と、露出部分10bとが一体になっている。換言すれば、露出部分10bは、収容部21内の分離媒体10が多孔質膜43の孔から浸みだして形成されたものである。
【0081】
これにより、延出部分10aによって、露出部分10bにおける開口21bに対応する部位を保護して、分離媒体10における転写膜11に接する端部の耐久性を、より向上させることができる。また、多孔質膜43によって、収容部21内の分離媒体10の膨潤が、露出部分10bに影響することを抑制することができる。
【0082】
多孔質膜43としては、例えば、公知の多孔質膜(例えば、PVDF膜)を用いることができる。本実施形態に係るサンプル分離器具50は、例えば、開口21bを覆うように収容部21に多孔質膜43を接着した後に、親水性のガラス上に、露出部分10bの厚さに対応する距離を離間させて収容部21を配置し、収容部21内に分離媒体10を形成するための前駆体(例えば、ゲルを形成するモノマーおよび反応剤)を充填して、固化させた後、先端を所望の形状に切り落とすことによって製造することができるが、製造方法はこれに限定されない。
【0083】
〔実施形態5〕
本発明の実施形態5について、以下に説明する。なお、説明の便宜上、前記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を省略する。
【0084】
図10は、本実施形態に係るサンプル分離器具50の概略構成を模式的に示す側方断面図である。
図10に示すように、本実施形態に係るサンプル分離器具50では、周縁部21aに窪み21eが形成されており、延出部分10aの収容部21側の部分が、窪み21eに埋没している。これにより、延出部分10aの移動を規制することができる。また、露出部分10bの収容部21からの突出高さが低くなるため、転写膜11が、露出部分10bに引っ掛かることを抑制することができる。また、露出部分10bを窪み21eに収まるように形成することで、露出部分10bの幅を狭くして、転写膜11が、露出部分10bに引っ掛かることを抑制することができる。以上により、転写膜11の移動によって露出部分10bが歪んで電気泳動パターンが歪むことを好適に抑制することができる。
【0085】
〔実施形態6〕
本発明の実施形態6について、以下に説明する。なお、説明の便宜上、前記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を省略する。
【0086】
図11に示すように、本実施形態に係るサンプル分離器具50では、収容部21の切り欠き21dが丸められているとともに、延出部分10aにおける切り欠き21d側の端部が丸められている。これにより、切り欠き21dおよび延出部分10aの切り欠き21d側の端部において、転写膜11が引っ掛かることを好適に抑制して、転写膜11が削れること、および、露出部分10bが歪むことを好適に抑制することができる。
【0087】
〔実施形態7〕
本発明の実施形態7について、以下に説明する。なお、説明の便宜上、前記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を省略する。
【0088】
実施形態1では、分離媒体10を固定し、転写膜11を移動させる構成について説明したが、本発明はこれに限定されず、転写膜11が分離媒体10の露出部分10bに接した状態で、転写膜11が分離媒体10に対して相対的に移動する構成であればよい。
【0089】
本実施形態では、
図12に示すように、転写膜11は固定されており、移動部23は、分離媒体10を、分離媒体10の露出部分10bが転写膜11に接した状態で移動させる。移動部23は、例えば、サンプル分離器具50を保持するフレームと、当該フレームを移動させる駆動部とから構成されていてもよい。駆動部の構成は特に限定されず、例えば、ボールネジ機構、ラックピニオン機構等の構成を用いることができる。
【0090】
このような構成であっても、サンプル1の各成分を、分離媒体10から排出時間に応じて、転写膜11上の異なる位置に転写することができ、好適に排出転写を実現することができる。
【0091】
〔まとめ〕
本発明の態様1に係るサンプル分離器具(50)は、分離媒体(10)中においてサンプルを電気泳動し、該分離媒体の端部から排出される該サンプルを、該端部に接した状態で移動する転写膜(11)に転写させる排出転写のためのサンプル分離器具であって、該分離媒体と、該分離媒体を収容する収容部(21)と、を備え、該収容部は、該端部側に開口(21b)を有し、該分離媒体は、該開口を通って該収容部の外部に露出する露出部分(10b)を有し、該露出部分は、該収容部における該開口の周縁部(21a)上に延出する延出部分(10a)を有している。
【0092】
上記の構成によれば、排出転写に好適に用いることができる新規なサンプル分離器具を提供することができる。すなわち、上記の構成によれば、収容部内の分離媒体と露出部分とを一体の部材によって構成することにより、サンプル分離器具を、簡易に作製することができる。また、延出部分が、露出部分における開口に対応する部位に対して、保護部として働くことにより、露出部分における開口に対応する部位が摩耗または歪むことを、好適に抑制することができる。よって、分離媒体から転写膜へサンプルを好適に転写することができる。
【0093】
本発明の態様2に係るサンプル分離器具は、上記態様1において、上記周縁部と上記延出部分との間に、上記分離媒体を上記収容部に固定するための固定部(41、42)が設けられていてもよい。
【0094】
上記の構成によれば、延出部分が、転写膜との摩擦によって周縁部から剥がれることを好適に避けることができる。これにより、延出部分によって、露出部分における開口に対応する部位を保護して、好適に転写を行うことができる。
【0095】
本発明の態様3に係るサンプル分離器具は、上記態様2において、上記固定部は、接着層(41)を含んでいてもよい。
【0096】
上記の構成によれば、固定部として、接着層を用いることにより、分離媒体を収容部に強固に固定することができる。これにより、延出部分が、転写膜との摩擦によって周縁部から剥がれることをより好適に避けることができる。
【0097】
本発明の態様4に係るサンプル分離器具は、上記態様2において、上記固定部は、上記収容部の表面に形成された凹凸形状部(42)を含んでいてもよい。
【0098】
上記の構成によれば、固定部として、凹凸形状部を用いることにより、分離媒体と収容部との接触表面積を増加させて密着力を強化することができる。これにより、延出部分が、転写膜との摩擦によって周縁部から剥がれることをより好適に避けることができる。
【0099】
本発明の態様5に係るサンプル分離器具は、上記態様2において、上記固定部は、上記収容部の表面に形成された多孔質層(41)を含んでいてもよい。
【0100】
上記の構成によれば、固定部として、収容部の表面に形成された多孔質層を用いることにより、分離媒体の一部が当該多孔質層に含まれた状態で分離媒体を形成することができる。これにより、分離媒体を収容部に強固に固定することができる。これにより、延出部分が、転写膜との摩擦によって周縁部から剥がれることをより好適に避けることができる。
【0101】
本発明の態様6に係るサンプル分離器具は、上記態様2において、上記固定部は、一方の面が上記収容部の表面に接着し、他方の面が上記分離媒体に接着するフィルム(41)であってもよい。
【0102】
上記の構成によれば、固定部として、一方の面が収容部の表面に接着し、他方の面が分離媒体に接着するフィルムを用いることにより、分離媒体を収容部に簡便に固定することができる。これにより、延出部分が、転写膜との摩擦によって周縁部から剥がれることをより好適に避けることができる。
【0103】
本発明の態様7に係るサンプル分離器具は、上記態様2〜6において、上記固定部(41、42)は、さらに、上記収容部の内面と上記収容部内の上記分離媒体との間に設けられていてもよい。
【0104】
上記の構成によれば、分離媒体を収容部により強固に固定することができる。これにより、分離媒体と収容部との間に緩衝液または気泡等が入り、電気泳動が乱れることを防止することができる。
【0105】
本発明の態様8に係るサンプル分離器具は、上記態様2において、上記固定部は、上記開口を覆うように上記収容部に接着されている多孔質膜(43)を備えており、該多孔質膜は、上記分離媒体を含んでおり、上記収容部内の上記分離媒体と、該多孔質膜に含まれている上記分離媒体と、上記露出部分と、が一体になっていてもよい。
【0106】
上記の構成によれば、延出部分によって、露出部分における開口に対応する部位を好適に保護して、好適に転写を行うことができる。また、多孔質膜によって、収容部内の分離媒体の膨潤が、露出部分に影響することを抑制することもできる。
【0107】
本発明の態様9に係るサンプル分離器具は、上記態様2において、上記固定部は、上記周縁部に形成された窪み(21e)を含み、上記延出部分の上記収容部側の部分が、該窪みに埋没していてもよい。
【0108】
上記の構成によれば、延出部分の移動を規制することができる。また、露出部分の収容部からの突出高さが低くなるため、転写膜が、露出部分に引っ掛かることを抑制することができる。また、露出部分を窪みに収まるように形成することで、露出部分の幅を狭くして、転写膜が、露出部分に引っ掛かることを抑制することができる。以上により、転写膜の移動によって露出部分が歪んで電気泳動パターンが歪むことを好適に抑制することができる。
【0109】
本発明の態様10に係るサンプル分離器具は、上記態様1〜9において、上記収容部内の上記分離媒体は、上記開口に向かって先細になっていてもよい。
【0110】
上記の構成によれば、電気泳動時の電気力線を好適に集中させて、サンプルの転写パターンを鮮明なものとすることができる。
【0111】
本発明の態様11に係るサンプル分離器具は、上記態様10において、上記開口の位置における上記分離媒体の短手方向の幅が、500μm以下であってもよい。
【0112】
上記の構成によれば、電気泳動時の電気力線をより好適に集中させて、サンプルの転写パターンをより鮮明なものとすることができる。
【0113】
本発明の態様12に係るサンプル分離器具は、上記態様1〜11において、上記収容部の上記開口側の端部に、切り欠き(21d)が設けられていてもよい。
【0114】
上記の構成によれば、収容部が転写膜と接触する面積を低減することができる。これにより、収容部と転写膜との摩擦を低減して、転写膜が削れることを抑制することができる。
【0115】
本発明の態様13に係るサンプル分離器具は、上記態様12において、上記切り欠きが丸められていてもよい。
【0116】
上記の構成によれば、転写膜が、収容部の角に引っ掛かることを抑制し、転写膜を露出部分により密着させることができる。これにより、サンプルをより好適に転写膜に転写することができる。
【0117】
本発明の態様14に係るサンプル分離器具は、上記態様12または13において、上記延出部分における上記切り欠き側の端部が丸められていてもよい。
【0118】
上記の構成によれば、延出部分の切り欠き側の端部において、転写膜が引っ掛かることを好適に抑制して、露出部分が歪むことを好適に抑制することができる。
【0119】
本発明の態様15に係るサンプル分離器具は、上記態様1〜14において、上記延出部分は、上記開口から、上記周縁部上に、上記転写膜の移動方向(B)またはその反対方向に沿って延出しており、上記延出部分の上記開口からの延出幅は、上記延出部分の延出方向における上記開口の幅以上であってもよい。
【0120】
上記の構成によれば、露出部分における開口に対応する部位を、十分な幅の延出部分によって保護することができる。これにより、露出部分における開口に対応する部位が摩耗または歪むことを、より好適に抑制することができる。そのため、分離媒体から転写膜へサンプルをより好適に転写することができる。
【0121】
本発明の態様16に係るサンプル分析装置(100)は、上記態様1〜15におけるサンプル分離器具と、上記分離媒体に電流を流すための電極(陰極31および陽極32)と、上記転写膜と、上記転写膜を、上記分離媒体の上記端部に接した状態で移動させる移動部(23)と、を備えている。
【0122】
本発明の態様17に係るサンプル分析装置(100)は、上記態様1〜15におけるサンプル分離器具と、上記分離媒体に電流を流すための電極(陰極31および陽極32)と、上記転写膜と、上記分離媒体を、上記分離媒体の上記端部が上記転写膜に接した状態で移動させる移動部(23)と、を備えている。
【0123】
上記の構成によれば、排出転写を好適に実現することができる。
【0124】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。さらに、各実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を組み合わせることにより、新しい技術的特徴を形成することができる。