(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための好適な形態について説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本発明の代表的な実施形態の一例を示したものであり、これにより本発明の範囲が狭く解釈されることはない。
【0013】
[ブチルゴム系粘着剤組成物]
本発明に係るブチルゴム系粘着剤組成物は、様々な種類の瓦屋根の固定に用いることが可能である。本発明のブチルゴム系粘着剤組成物は、例えば、表面にガラス質を形成した陶器瓦(釉薬瓦)、表面に炭素を主成分とする炭素膜を形成したいぶし瓦、無釉薬瓦、塩焼瓦、セメント瓦、ポリスチレンを含有している瓦などに用いることができるが、特に、陶器瓦に好適に用いることができる。
【0014】
本発明のブチルゴム系粘着剤組成物は、ブチルゴム成分、及び粘着付与樹脂を含有する。以下、各成分について説明する。
【0015】
<ブチルゴム成分>
本発明に係るブチルゴム系粘着剤組成物は、ブチルゴム成分を含有することにより、粘着力の経年変化が少ない、耐水性が良好である、といった効果を奏する。また、本発明に係るブチルゴム系粘着剤組成物は、ブチルゴム成分を含有することで被着体への追従性が良好となるので、屋根瓦と防水シートのような形態の異なる被着体同士の接合に好適に用いられる。なお、本発明のブチルゴム成分には、塩素化ブチルゴム、臭素化ブチルゴム等のハロゲン化ブチルゴムも含まれる。
【0016】
本発明に係るブチルゴム系粘着剤組成物は、ブチルゴム成分以外のゴム成分を含有してもよい。ブチルゴム成分以外のゴム成分としては、例えば、天然ゴム、イソプレンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、クロロプレンゴム等のジエン系ゴム、エチレン−プロピレンゴム等の主鎖中に少量の二重結合を導入したゴム(例えば、エチレン−プロピレン−ジエンゴム)などが挙げられる。これらのゴムは、1種類だけでなく2種類以上が用いられてもよい。全ゴム成分に対するブチルゴム成分の割合は、50質量%以上が好ましく、80質量%以上がさらに好ましい。
【0017】
ブチルゴム成分のゲル分率は、1〜80質量%であり、好ましくは20〜65質量%であり、より好ましくは30〜65質量%であり、さらに好ましくは40〜65質量%である。ここで、ゲル分は、ゴムが三次元的に架橋した成分である。ブチルゴム成分がゲル分を所定量含むことによって、耐火材の機械的強度が高められて、耐クリープ性の向上が図られる。ブチルゴム成分のゲル分率が1質量%未満であると、十分な耐クリープ性が得られなくなる。ブチルゴム成分のゲル分率が80質量%を超えると、屋根瓦用の粘着剤に必要な粘着力が得られなくなる。
【0018】
ゲル分は、ブチルゴム成分の架橋によって生成されるので、架橋の程度を変化させることによって、ゲル分率を増減させることができる。架橋の程度を変化させる方法としては、ブチルゴム成分の硫黄加硫や過酸化物架橋の程度を変化させたり、ゲル分率が比較的高い再生ゴムの添加量を変化させたりする方法が挙げられる。
【0019】
ゲル分とは、トルエンに不溶な成分であり、ゲル分率は、以下の方法で算出した値である。
(a)約5.0gのブチルゴム成分を秤量(W1)。
(b)秤量したブチルゴム成分をトルエン100mL中に室温で7日間浸漬。
(c)SUS304のJIS Z 8801で定める#40メッシュを秤量(W2)。
(d)秤量したメッシュにて、浸漬したブチルゴム成分を濾過。
(e)メッシュ上の残渣物を室温にて7日間乾燥、さらに80℃にて24時間乾燥し、残渣物をメッシュごと秤量(W3)。
(f)ゲル分率=((W3−W2)/(W1))×100(%)
【0020】
ブチルゴム成分は、再生ゴム、部分架橋ゴムを含むことが好ましい。再生ゴムとは、加硫ゴムに熱、圧力及び物理的に処理を加え、再び粘着性、可塑性を与えて原料ゴムと同様の目的で利用できるようにしたものである。部分架橋ゴムとは、未架橋のゴムを架橋剤および架橋助剤によって部分的に架橋したものである。
【0021】
<粘着付与樹脂>
粘着付与樹脂は、粘着性をより向上させるために用いられる。粘着付与樹脂としては、特に限定されず、公知の粘着付与樹脂を1種または2種以上自由に選択して用いることができる。粘着付与樹脂としては、例えば、ロジン系樹脂、水素化ロジン系樹脂、テルペン系樹脂、水素化テルペン系樹脂、芳香族変性テルペン樹脂、テルペンフェノール樹脂、スチレン系樹脂、クマロン樹脂、フェノールホルムアルデヒド樹脂、アスファルト、石油ナフサの熱分解で生成するペンテン、イソプレン、ピペリン、1,3−ペンタジエン等のC5留分を共重合して得られるC5系石油樹脂(脂肪族系樹脂)、石油ナフサの熱分解で生成するインデン、ビニルトルエン等のC9留分を共重合して得られるC9系石油樹脂(芳香族系樹脂)、C5/C9系石油樹脂(脂環族炭化水素樹脂)、及びこれらの石油樹脂を水素化した水素化石油樹脂や脂環族飽和炭化水素樹脂等が挙げられる。これらの粘着付与樹脂の中でも、耐クリープ性と粘着性にバランスの観点から、脂環族飽和炭化水素樹脂が好ましい。
【0022】
粘着付与樹脂の添加量は、ブチルゴム成分100質量部に対し、50〜200質量部である。粘着付与樹脂の添加量が50質量部未満であると、屋根瓦用の粘着剤に必要な粘着力が得られなくなる。粘着付与樹脂の添加量が200質量部超えであると、十分な耐クリープ性が得られなくなる。
【0023】
粘着付与樹脂の軟化点は、80〜130℃が好ましい。粘着付与樹脂の軟化点が80℃以上であると、十分な耐クリープ性が得られ、130℃以下であると、十分な粘着力が得られる。なお、本明細書において、粘着付与剤の「軟化点」は、JIS K2531に準拠して測定した値を意味する。
【0024】
本発明に係るブチルゴム系粘着剤組成物には、本発明の目的を損なわない範囲において、通常のゴム組成物に使用される無機充填剤、軟化剤(可塑剤)、老化防止剤、加工助剤、滑剤等を含有させることができる。
【0025】
(a)無機充填剤
無機充填剤は、本発明の目的を損なわなければ、その種類は特に限定されず、公知のあらゆる無機充填剤を1種または2種以上自由に選択して用いることができる。無機充填剤としては、例えば、シリカ、珪藻土、アルミナ、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、珪酸カルシウム、カーボンブラック、タルク、マイカ、ベントナイト、活性白土、ガラス繊維、ガラスビーズ、窒化アルミニウム、炭素繊維、などを挙げることができる。無機充填剤の含有量は、例えば、ブチルゴム100質量部に対して10〜600質量部であり、50〜500質量部が好ましく、100〜400質量部がさらに好ましい。
【0026】
(b)軟化剤
軟化剤は、本発明の目的を損なわなければ、その種類は特に限定されず、公知のあらゆる軟化剤を1種または2種以上自由に選択して用いることができる。軟化剤としては、例えば、パラフィン系、ナフテン系、アロマ系プロセスオイル、ポリブテン、菜種油、フタル酸エステル類、アジピン酸エステル類、アルキルスルホン酸エステル類、セバシン酸エステル類、などを挙げることができる。軟化剤の含有量は、例えば、ブチルゴム100質量部に対して10〜400質量部であり、20〜300質量部が好ましく、50〜200質量部がさらに好ましい。
【0027】
[粘着テープ]
本発明に係るブチルゴム系粘着剤組成物は、瓦屋根用の粘着テープに好適に用いることができる。例えば、ブチルゴム系粘着剤組成物に含有させ得る各成分を、混練装置等を用いて混練し、混練物をテープ状に形成することで、両面が粘着性を有する瓦屋根用の粘着テープとすることができる。
【0028】
各成分を混練する際に用いる混練装置は特に限定されず、公知の混練装置を自由に選択して混練を行うことができる。例えば、バンバリーミキサー、ニーダーミキサー、二本ロール、などの混練装置を挙げることができる。また、混練物をテープ状に形成する方法も特に限定されず、公知の形成方法を自由に選択して用いることができる。このような方法の例としては、ロール成形、押出成形等の成形方法を挙げることができる。
【0029】
上述の如くして得られた粘着テープは、本発明に係るブチルゴム系粘着剤組成物を用いているため、粘着性及び耐クリープ性が優れる。その結果、この粘着テープを用いて屋根瓦と防水シートとを接合させた接合体の耐久性も向上させることができる。
【0030】
[屋根用防水シート]
本発明に係る屋根用防水シートは、粘着剤層と、防水シートと、を有する。以下、各構成要素について説明する。
【0031】
<粘着剤層>
粘着剤層は、上述したブチルゴム系粘着剤組成物からなる。ブチルゴム系粘着剤組成物の詳細については、説明を省略する。なお、この粘着剤層として、上述した粘着テープを用いることも可能である。
【0032】
<防水シート>
本発明に係る屋根用防水シートでは、防水シートを前記粘着剤層に積層させる。防水シートに用いられる材料は、本発明の目的を損なわなければ、その種類は特に限定されず、公知の材料を1種又は2種以上自由に選択して用いることができる。このような材料の例としては、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)、ポリ塩化ビニル(PVC)等を挙げることができる。これらの材料の中でも、特に、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)が好ましい。EPDMを用いた防水シートは、ブチルゴム系粘着剤組成物に対する接着性が良好であるからである。
【実施例】
【0033】
以下、実施例に基づいて本発明を更に詳細に説明する。なお、以下に説明する実施例は、本発明の代表的な実施例の一例を示したものであり、これにより本発明の範囲が狭く解釈されることはない。
【0034】
本実施例における「部」及び「%」は質量基準に基づく。また、本実施例において使用した材料の詳細を、それぞれ以下に示す。
(1)ブチルゴム成分
・A−0(JSR株式会社製「ブチル268」、ゲル分率0%)
・B−0.3(部分架橋ブチルゴム:Royal Elastomers社製「KALAR5246」、ゲル分率0.3%)
・C−22(部分架橋ブチルゴム:Royal Elastomers社製「KALAR5280」、ゲル分率22%)
・D−34(部分架橋ブチルゴム:Royal Elastomers社製「KALAR5275」、ゲル分率34%)
・E−40(部分架橋ブチルゴム:Royal Elastomers社製「KALAR5215」、ゲル分率40%)
・F−75(再生ゴム:縣護謨工業株式会社製「IIR−S」、ゲル分率75%)
・G−85(自社合成品、ゲル分率85%)
(2)粘着付与樹脂
・A1:芳香族変性テルペン樹脂(ヤスハラケミカル株式会社製「YSレジンTO−85」、軟化点85℃)
・A2:芳香族変性テルペン樹脂(ヤスハラケミカル株式会社製「YSレジンTO−115」、軟化点115℃)
・A3:芳香族変性テルペン樹脂(ヤスハラケミカル株式会社製「YSレジンTO−125」、軟化点125℃)
・B1:ロジンエステル樹脂(荒川化学工業株式会社製「スーパーエステルL」、軟化点23℃未満)
・B2:ロジンエステル樹脂(荒川化学工業株式会社製「スーパーエステルA−75」、軟化点75℃)
・C1:脂環族飽和炭化水素樹脂(荒川化学工業株式会社製「アルコンP−90」、軟化点90℃)
・C2:脂環族飽和炭化水素樹脂(荒川化学工業株式会社製「アルコンP−115」、軟化点115℃)
・C3:脂環族飽和炭化水素樹脂(荒川化学工業株式会社製「アルコンP−140」、軟化点145℃)
(3)添加剤
・無機充填剤:炭酸カルシウム(秩父石灰工業株式会社製「TA044」)
・軟化剤A:プロセスオイル(出光興産株式会社製「AH−16」)
・軟化剤B:ホリブテン(新日本石油株式会社製「HV−300」)
【0035】
[ブチルゴム系粘着剤組成物の作製]
各実施例・比較例について、表1〜表2に示す配合量に従って、容量3リットルのニーダーミキサーを用いて110℃にて1時間混練して、ブチルゴム系粘着剤組成物である混練物を得た。さらに、得られた混練物を、ダイス温度を70℃に設定した押出機にて幅25mm×厚さ1mmのテープ状に加工し、粘着テープを作製した。
【0036】
【表1】
【0037】
【表2】
【0038】
[評価]
以下に示す方法に従って、粘着性及び耐クリープ性を評価した。その結果を表1〜表2に示す。表に示すように、全ての実施例は、粘着性及び耐クリープ性の両方が良好であるのに対し、全ての比較例は、粘着性と耐クリープ性の一方が良好でなかった。
<粘着性>
幅30mm×長さ125mmの形状に加工した陶器瓦に、幅25mm×長さ100mm×厚さ1mmの形状に加工した粘着テープ(片面にPETフィルム(100μm厚)を裏打ち)を貼り合わせて、試験片を得た。この試験片を、2kgのゴムローラーにて1往復圧着し、20分放置後に300mm/分の速度でテープを180°方向に剥がした際の粘着力を測定し(測定温度21℃)、以下の基準に従って粘着性を判定した。なお、測定された粘着力が大きいほど、粘着性が高いことを示す。
◎:粘着力が35N/25mm以上
○:粘着力が30N/25mm以上、35N/25mm未満
×:粘着力が30N/25mm未満
【0039】
<耐クリープ性>
2枚のステンレス板(SUS304:100mm×30mm×2.5mmt)1,2の間に、幅25mm×長さ80mm×厚さ1mmの形状に加工した粘着テープ(PETフィルムなし)3を貼り合わせ、一方のステンレス板1を固定すると共に、他方のステンレス板2に200gの重り4を吊し(
図1A参照)、50℃の環境下で1時間放置した。そして、1時間放置後の一方のステンレス板1に対する他方のステンレス板2のズレ量D(ずり落ちた距離)を測定し(
図1B参照)、以下の基準に従って耐クリープ性を判定した。なお、ズレ量が小さいほど、耐クリープ性が良好であることを示す。
◎:ズレ量Dが1mm未満
○:ズレ量Dが1mm以上、4.5mm未満
×:ズレ量Dが4.5mm以上
【0040】
1,2:ステンレス板
3:粘着テープ
4:重り
D:ズレ量
【解決手段】本発明によれば、ブチルゴム成分、粘着付与樹脂を含有するブチルゴム系粘着剤組成物であって、前記ブチルゴム成分100質量部に対し、前記粘着付与樹脂の含有量が50〜200質量部であり、前記ブチルゴム成分のゲル分率が1〜80質量%である、ブチルゴム系粘着剤組成物が提供される。