(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6914531
(24)【登録日】2021年7月16日
(45)【発行日】2021年8月4日
(54)【発明の名称】靴、パッチ、および足首の損傷を予防する方法
(51)【国際特許分類】
A43B 13/14 20060101AFI20210727BHJP
A43B 13/26 20060101ALI20210727BHJP
【FI】
A43B13/14 A
A43B13/26 Z
【請求項の数】13
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2017-567444(P2017-567444)
(86)(22)【出願日】2016年6月24日
(65)【公表番号】特表2018-518326(P2018-518326A)
(43)【公表日】2018年7月12日
(86)【国際出願番号】EP2016064722
(87)【国際公開番号】WO2016207381
(87)【国際公開日】20161229
【審査請求日】2019年6月17日
(31)【優先権主張番号】15174092.5
(32)【優先日】2015年6月26日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】517448250
【氏名又は名称】スプライノ・イペー・アンパルトセルスカブ
【氏名又は名称原語表記】Spraino IP ApS
(74)【代理人】
【識別番号】100100158
【弁理士】
【氏名又は名称】鮫島 睦
(74)【代理人】
【識別番号】100132241
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 博史
(74)【代理人】
【識別番号】100113170
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 和久
(72)【発明者】
【氏名】トア・ブク・グレンリュケ
【審査官】
程塚 悠
(56)【参考文献】
【文献】
特開2012−228516(JP,A)
【文献】
米国特許第06311415(US,B1)
【文献】
欧州特許出願公開第01554943(EP,A1)
【文献】
特開2011−056274(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A43B 13/00−13/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地面係合面を有するソールと、
外側縁部、および、前記ソールの前記地面係合面と前記外側縁部との間に相互接続して延びている外側接続部と、
内側縁部、および、前記ソールの前記地面係合面と前記内側縁部との間に相互接続して延びている内側接続部と、を備える靴であって、
前記外側接続部と前記内側接続部とのうちの少なくとも1つには摩擦低減表面エリアが画定され、前記摩擦低減表面エリアは、周囲が前記外側接続部、前記内側接続部、前記外側縁部、前記内側縁部および/または前記地面係合面との隣接表面エリアに囲まれており、第1摩擦係数を有し、
前記第1摩擦係数は前記各隣接表面エリアの摩擦係数より低く、
前記摩擦低減表面エリアは前記外側接続部に設けられている、靴。
【請求項2】
前記摩擦低減表面エリアは少なくとも前記靴の中足部から前記靴の先端へ延びている、請求項1に記載の靴。
【請求項3】
前記靴の爪先部から前記靴の踵部への長さを測定する場合、前記摩擦低減表面エリアは前記靴の長さの5%と95%との間に延びている、請求項1または2に記載の靴。
【請求項4】
前記靴は人間の足にフィットし、前記摩擦低減表面エリアは、少なくとも前記足の第5中足骨の骨頭を覆う程度で、前記外側接続部のエリアを覆う、請求項1〜3のいずれかの1項に記載の靴。
【請求項5】
前記摩擦低減表面エリアは前記内側接続部に設けられている、請求項1に記載の靴。
【請求項6】
ISO13287:2012規格に基づいて、前記摩擦低減表面エリアを試験靴のソールに取り付け、潤滑剤を使わずに前部における後滑りを用いることによって試験する場合、前記第1摩擦係数は0.5より小さい、請求項1〜5のいずれかの1項に記載の靴。
【請求項7】
ISO13287:2012規格に基づいて、前記摩擦低減表面エリアを試験靴のソールに取り付け、潤滑剤を使わずに前部における後滑りを用いることによって試験する場合、各前記隣接表面エリアの摩擦係数は0.55より大きい、請求項1〜6のいずれかの1項に記載の靴。
【請求項8】
前記摩擦低減表面エリアは、前記靴の少なくとも一部の前記ソール、および、一部の前記外側縁部または前記内側縁部と一体的に形成されている、請求項1〜7のいずれかの1項に記載の靴。
【請求項9】
前記摩擦低減表面エリアは、前記靴の少なくとも一部の前記ソール、および、一部の前記外側縁部または前記内側縁部に後付けされるパッチによって付与される、請求項1〜7のいずれかの1項に記載の靴。
【請求項10】
前記パッチは積層構造を備え、前記積層構造は、少なくとも接着層と、前記摩擦低減表面エリアを提供する対向面層と、を備える、請求項9に記載の靴。
【請求項11】
前記パッチの少なくとも上縁部は複数の湾入部を備える、請求項9または10に記載の靴。
【請求項12】
靴を着用している人間の足首の損傷を予防するために、前記靴に後付けされるパッチであって、前記パッチは、
外側縁部、および、ソールの地面係合面と前記外側縁部との間に相互接続して延びている外側接続部と、
内側縁部、および、前記ソールの前記地面係合面と前記内側縁部との間に相互接続して延びている内側接続部と、の少なくとも1つに取り付けられ、
前記靴の隣接表面エリアに囲まれた摩擦低減表面エリアは前記靴に付与され、ISO13287:2012規格に基づいて、前記摩擦低減表面エリアを試験靴のソールに取り付け、潤滑剤を使わずに前部における後滑りを用いることによって試験する場合、前記摩擦低減表面エリアは0.5より小さい摩擦係数を有する、パッチ。
【請求項13】
地面に対して人間の足のアンバランスな動きが発生する時に前記靴と地面との間の滑りを促進するように、請求項1〜11のいずれかの1項に記載の靴を人間に提供して前記靴を人間の足に取り付けるステップを備える、人間の足首の損傷を予防する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的には足首の損傷のリスクを低減するように仕立てられた靴に関し、典型的には運動靴(スポーツシューズ、sports shoe)に関する。本発明は、足首の損傷を予防する観点から現有の靴をバックフィット(back-fitting)するためのパッチにも関する。さらに、本発明は、靴を着用している人間の足首の損傷を予防する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
運動において、足首の損傷は損傷全体の15〜30%を占めていると推定されている。アメリカにおいて毎日23,000件の損傷も起ると思われている。アメリカにおいて捻挫および挫き(strain)の平均治療費用は2294ドルである(政策と立案の長官補事務局の調査要約2014年3月号(ASPE Issue Brief, March 2014)より)。これらの数値および最も多くの足首の損傷が捻挫と挫きであるという推測に基づくと、推定された足首の損傷の治療費用合計は30〜60億ドルに達する。この費用は損傷によって失った生産性を含んでおらず、特に専門的で高収入の運動選手に対しては非常に大きな損失であり、物理的な活動が必要とする仕事をしている全ての人に対して社会的なレベルが非常に高い損失でもある。オランダにおいて外側足首捻挫に関する治療費用合計は187,200,000ユーロと概略的に推定される(米国スポーツ雑誌2010年11月第38巻第11回第2194−2200ページ(Am J Sports Med November 2010 vol. 38 no. 11 2194-2200)より)。これらの費用は足首の損傷を予防するよい手段というニーズを示す。
【0003】
推定上、捻挫した運動選手の70〜80%は捻挫を繰り返す。機能的な足首不安定性および捻挫は、以前急性損傷したことがある運動選手の約10〜60%に再発する。これらの患者において、再損傷(re-injury)を起こす機構の一因は、足底屈曲(flexion)30度/足底反曲(inversion)20度における足首関節の位置の誤知覚(erroneous sensation)であり、着地する時に関節がさらに足底屈曲または足底反曲される可能性があるため、外側の歪みのリスクが発生する。
【0004】
典型的に、足首の損傷は、反曲/回外運動および足底屈曲の動きにおいて足首が制御されずに捻れる時に発生する。これは外側の捻挫(歪み)を生じる同時、骨折も頻繁に起こる。捻挫は程度の差はあっても踵腓靭帯と前距腓靭帯に傷害をもたらし、前脛腓靭帯、関節包、周囲の軟組織にも傷害をもたらす可能性がある。
【0005】
損傷は、筋肉を強化させて神経筋協調性および反射能力を増進させる物理療法で処理されるのが最適である。大部分の患者において、4ヶ月の治療を受けた後、損傷した足首と損傷していない足首との間に差異がないまたは小さいと測定されることができる。損傷はテーピングまたは半硬質保護帯(semi rigid braces)で処理されることもできるが、その2つの方法とも、特に繰り返される損傷に対して限られた支持を提供することと着用者に対して動きの自由度が下がるという著しい制限を有する。また、運動の期間が変化した後テープの抑制効果は失う(米国スポーツ雑誌2010年11月第38巻第11回第2194−2200ページ)。
【0006】
靴の設計の観点から見ると、運動損傷の予防は今までは一般的には、靴の安定性の増加、足への支持の増進、および靴の防滑性の改善に注目している。しかしながら、過去の努力にもかかわらず、特に足首と膝に対して、運動損傷の発生を低減することに貢献するという靴の更なる改良のニーズが見つけられた。
【発明の概要】
【0007】
上述した背景で、本発明の第1態様は、地面係合面を有するソールと、外側縁部(lateral edge)、および、ソールの地面係合面と外側縁部との間に相互接続して延びている外側接続部と、内側縁部、および、ソールの地面係合面と内側縁部との間に相互接続して延びている内側接続部と、を備える靴であって、少なくとも1つの接続部には摩擦低減表面エリアが画定され、低摩擦低減表面エリアは、周囲が接続部、縁部および/または地面係合面の隣接表面エリアに囲まれており、第1摩擦係数を有し、第1摩擦係数は各周囲の表面エリアの摩擦係数より低い靴を提供する。
【0008】
第2態様において、本発明は、靴を着用している人間の足首の損傷を予防するために、靴に後付けされるパッチであって、パッチは、外側縁部、およびソールの地面係合面と外側縁部との間に相互接続して延びている外側接続部と、内側縁部、およびソールの地面係合面と内縁部との間に相互接続して延びている内側接続部と、の少なくとも1つに取り付けられ、靴の隣接表面エリアに囲まれた限定表面エリアは靴に付与され、ISO13287:2012規格に基づいて、摩擦低減エリアの表面を試験靴のソールに取り付け、潤滑剤を使わずに前部における後滑りを用いることによって試験する場合、限定表面エリアは0.5より小さい摩擦係数を有する、パッチを提供する。
【0009】
第3態様において、本発明は、地面に対して人間の足のアンバランスな動きが発生する時に前記靴と地面との間の滑りを促進するように、本発明の第1態様に係る靴を人間に提供して前記靴を人間の足に取り付けるステップを備える、人間の足首の損傷を予防する方法を提供する。
【0010】
本開示において、損傷は、靱帯結合破裂(syndemosis rupture)、脱臼、挫きおよび骨折を含む捻挫を含むが、捻挫に限られていないと理解されるべきである。損傷は骨軟骨病変(osteochondral lesions)を含んでもよいことも理解されるべきである。
【0011】
本開示において、地面係合面は、靴の着用者がまっすぐに立てて両足に同じ重量をかける時に地面と係合する靴の一部であると理解されるべきである。地面係合面は、着用者が飛ぶ、着地する、転身するなどの動き中に靴が地面と係合する部分と異なってもよい。
【0012】
本開示において、縁部は、地面係合面および接続部から離れる方向に接続部から延びており、地面係合面に対して横方向に延びており、すなわち、地面係合面に対して平行でない方向に延びていると理解されるべきである。
【0013】
一般的に、摩擦は、平面と、地面係合面および靴の外側縁部または内側縁部に相互接続している靴の外側接続部または内側接続部との間で低減される。この摩擦の低減は、不測の状態またはアンバランスの状態で足が地面と相互作用する着地または他の動きの間に、例えば、足が他方の足を踏んだり足が地面に対して不適正に位置したりする時に、地面に接触する足で最も多く起こる捻挫である足首捻挫の予防の要である。さらに、摩擦低減エリアが地面と接触している時に、摩擦低減エリアは靴の可動性(mobility)を増加するため、靴が地面に対して望ましくない位置に残ることを防止する。むしろ、靴は自身の下の表面に対して平行に滑ることができるため、足の更なる反曲ならびに足および足首の結合組織への運動エネルギーの伝達が回避される。さらに、靴の縁部において低減された摩擦は靴の側面に表面に対して滑りやすくさせることができるため、ねじりが発生しても、エネルギーが伝達されて反転トルクが組織に対する損傷を回避するまたは低減するには十分に低くくさせる。
【0014】
靴の外側接続部または内側接続部に設けられた、すなわち、靴の外側縁部または内側縁部に設けられた摩擦低減表面エリアは、上述した接続部および縁部での単独点(isolated spots)において靴と地面との間の滑りを増進することを提供する。よって、靴のこれらの損傷機構に関する、かつ、異なるエリアの摩擦係数が異なる。損傷後に増えたリスクを有する長期間に渡って損傷を予防することができ、リスクが高い運動における一次予防が達成できる。慢性足首不安定性を抱える患者にも本発明から長い生活に受益できるのであろう。
【0015】
特に、着用者の身体の荷重が靴の縁部へ移すまたは靴の縁部の近くに下ろされる時に、摩擦低減エリアによって着用者の足が地面に対する過回転のリスクを予防するまたは著しく低減できる。したがって、地面に対する回転よりも、靴そして着用者の足は表面へのグリップ力を失いやすくなり、よって靴および足は滑る。その結果、摩擦低減の地面係合エリアにおいてグリップ力が失うことによって着用者は殆どの事故で転ぶ。しかしながら、アンバランスまたは制御されていない着用者の足の動きに渡って荷重が押しつけられている場合に、靴はグリップ力を維持するままであれば、着用者が転がる時に普通の損傷のリスクは、足首損傷のリスクより著しく低下している。さらに、摩擦低減エリアは、靴の他の固定された外側縁部の周りに回転がないために追加されたベクタに起因する、高くて横向に突出しているバスケット靴において運動エネルギーが増えることを回避する。接続部に設けられた摩擦低減エリアは、着用者の足が地面に対する過回転のリスクを低減することに特に関係する。なぜならば、着用者の足が地面に対する回転に渡って、接続部が地面と係合する可能性は靴の縁部より高いためである。こと特徴は、着用者の足の長さ方向に延びる回転軸の周りの過回転に起因する損傷のリスクを低減することに特に関連できる。
【0016】
足首関節の内側に対する歪みが外側に対する歪みと比べると稀であるため、外側接続部に設けられた摩擦低減エリアは最も重要である。しかしながら、外側の歪みの機構は内側の歪みに適用されてもよい。
【0017】
一般的に、靴の着用者が加速したい着用者の加速度は、地面係合面を有するソールと表面との間の摩擦によって生じることができる。本発明は地面係合面のいかなる摩擦特性も僅かにしか変更していないため、靴の着用者が地面に対する加速または停止をする能力が変わらない。それは、摩擦低減エリアは、着用者がバランスを取れていない限り著しい荷重を受けない外側接続部または内側接続部に設けられるためである。
【0018】
本発明の複数の実施例において、摩擦低減エリアは靴の外側接続部に設けられているが、外側接続部および内側接続部ともに設けられてもよく、代替的に内側接続部に設けられてもよい。ここで配置に関して注意すべきなのは、明示的に述べない限り、摩擦低減エリアの範囲または効果は外側接続部および内側接続部に同様に適用される。
【0019】
摩擦低減エリアは好ましくは少なくとも靴の中足部から靴の先端へ、すなわち、靴の爪先部へ、延びており、それは靴の前方部分が足首損傷の予防に関して最も重要なためである。本発明の1つの実施例において、靴の延伸長さに沿って、特に靴の外側接続部に沿って望ましい低摩擦特性を提供するために、靴の爪先部から靴の踵部への長さを測定する場合、摩擦低減エリアは靴の長さの5%と95%との間に延びている。最も重要な摩擦低減エリアは、靴の爪先部から靴の踵部への長さを測定する場合、靴の長さの20%と50%との間に延びている。しかしながら、延びたエリアは損傷の予防に、主に足首損傷の予防に関連することが既に見つけられる。歪みの初期機構と殆ど関わらないが、靴が滑り始まってから摩擦しなおすことを回避するために、摩擦低減エリアは、靴の後部まで延びてもよく、すなわち、靴の爪先部から靴の踵部への長さを測定する場合、靴の長さの60%と100%との間のエリアまでに、特に靴の長さの60%と95%との間のエリアまでに延びてもよい。さらに、靴の後部に設けられた摩擦低減エリアは1つの足が他方の足の前方に捻れる時に生じる荷重に特に関連でき、それは、この場合において捻れている足の後部が他の部分より早く地面と係合するためである。
【0020】
摩擦低減エリアが靴の長さ方向に沿った延伸は、靴の形状および/または靴の縁部の剛性(stiffness)に基づいてもよい。その上方から観察すると直線を画定する靴においは、摩擦低減エリアが、靴の外側接続部および/または内側接続部および/または外側縁部および/または内側縁部の少なくとも1つに設けられてもよい。この場合、靴の外側縁部および/または内側縁部の一部が、靴に沿って特定な延伸における直線のように画定される時に、靴においては摩擦低減エリアが接続部および/または靴の特定な延伸に沿った靴の縁部に設けられてもよい。こうすると、摩擦低減エリアは増えうる過回転に渡って地面と接触させるため、着用者の足の過回転に関する損傷のリスクをさらに低減することができる。
【0021】
靴の爪先部における摩擦低減は、この前方エリアで靴への早期衝撃の機構に起因して靴の後部が地面に係合する前に既に生じた不安定な反曲からもたらす頻繁な損傷を予防するために、特に重要とされてもよい。
【0022】
1つ以上の摩擦低減エリアは、外側接続部と内側接続部の1つに設けられていてもよく、各外側接続部と各内側接続部に設けられていてもよい。例をあげると、1つ目の摩擦低減エリアは靴の前方10%の長さに設けられていてもよく、例えば、靴の長さの5%から10%に延びた区域、かつ、その靴の外側接続部であるところに設けられていてもよく、同時に、2つ目の摩擦低減エリアは、靴の長さの20%から30%に延びた区域、かつ、その靴の外側接続部であるところに設けられていてもよい。さらに、または、代替的に、摩擦低減エリアは例えば以下のように設けられていてもよい:第1エリアが靴の長さの5%と60%との間に延びたエリアに設けられており、第2エリアが靴の長さの65%と95%との間に延びたエリアに設けられている。
【0023】
靴が人間の足に対して仕立てられてもよいため、摩擦低減エリアは少なくとも足の第5中足骨の骨頭を覆う程度で、接続部のエリアを覆い、すなわち、靴の爪先部から靴の踵部への長さを測定する場合において靴の長さの約40%のところを覆ってもよい。好ましくは、第5中足骨の程度の付近のエリアも覆う。ここは足の外側の主要な体重支持エリアなので、有害な程度の運動エネルギーが周囲組織および足首関節への移転に対する予防には特に重要である。
【0024】
靴は、脚(leg)部が着用者の膝から着用者の踵の最遠端までの距離の3分の1までに延びるように、足(foot)部と脚部を画定してもよい。この場合において、この靴は運動靴として利用されるのに対して特に適することができ、それは、靴の着用者が運動を行うように十分な肢体可動性(limb mobility)を許すためである。本開示において、足部は、靴において着用者の足を包囲する部分であることが理解されるべきである。脚部は、靴において、着用者の膝から最も遠い着用者の踵の表面と、靴の着用者の膝に最寄りの部分との間に垂直に延びた部分であることが理解されるべきである。このように、靴の足部と脚部とは重なる。
【0025】
本開示において、運動靴は、様々な形式の室内および/または室外の運動活動、例えば、サッカー、バスケットボール、バレーボール、ハンドボール、フロアボール、テニス、バドミントン、ダンス、卓球、フィットネスなどを携わる時に、着用するのに適した靴であると理解されてもよい。このような靴はアスレチックシューズ(athletic shoe)とも呼ばれている。
【0026】
靴は、脚部が着用者の足における最も長い直線の長さの1.25倍までに延びるように、足部と脚部を画定してもよい。よって、足部の高さは、最大は足部の長さの1.25倍と等しく、または、最大は足部の長さと等しく、または、足部の長さより短い。脚部の高さは好ましくは、靴のソールの底から、靴において着用者の脚を周方向に包囲する最上縁までの直線距離として測定される。このような実施例において、靴は運動靴として利用されるのに対して特に適することができ、それは、靴の着用者が運動を行うように十分な肢体可動性(limb mobility)を許すためである。本開示において、足部は、靴において着用者の足を包囲する部分であることが理解されるべきである。脚部は、靴において、着用者の膝から最も遠い着用者の踵の表面と、靴の着用者の膝に最寄りの部分との間に垂直に延びた部分であることが理解されるべきである。このように、靴の足部と脚部とは重なる。着用者の足における最も長い直線の長さは通常は、着用者が立つ時に地面と平行している、着用者の爪先(足指)の最遠端から踵の最遠端までの距離である。
【0027】
摩擦低減エリアは靴における周囲エリアと面一となってもよい。言い換えると、摩擦低減エリアは靴の周囲エリアから突出していないように配置されてもよい。この場合において、靴の形状は、摩擦低減エリアを除ければ靴のあるべき形状と実質的に同様であってもよい。これらの実施例に係る靴は、摩擦低減エリアに望ましくない突出が形成されていないため、運動靴として利用されるのに特に有益に適することができる。このような望ましくない突出は、ユーザが運動を行う時に、当該突出と他の人間との間の衝撃の有害な効果を増加する可能性がある。
【0028】
本発明の実施例において、ISO13287:2012規格に基づいて、摩擦低減エリアの表面を試験靴のソールに取り付け、潤滑剤を使わずに前部における後滑りを用いることによって試験する場合、第1摩擦係数は、好ましくは0.5より小さく、さらに好ましくは0.4より小さく、さらに好ましくは0.3より小さい。ISO13287:2012規格に基づいて、摩擦低減エリアの表面を試験靴のソールに取り付け、潤滑剤を使わずに前部における後滑りを用いることによって試験する場合、各周囲の表面エリアの摩擦係数は0.55より大きい。
【0029】
本発明の複数の実施例に基づいて、摩擦低減エリアの異なる部分は異なる第1摩擦係数を有する。この特徴は損傷をさらに予防することができる。例えば、靴の縁部と地面との間の摩擦係数は、接続部と地面との間の摩擦係数より低くてもよい。この特徴は、接続部と地面との間の比較的に大きい摩擦係数が着用者に地面に対してより大きく加速させる、靴の縁部が地面と係合する時に滑りをさらに促進することができ、損傷をさらに予防することができる。摩擦は摩擦低減エリアにおいて段階的に変化してもよい。異なる第1摩擦係数は複数の材料および/または異なる程度の材料被覆によって提供されてもよい。異なる程度の材料被覆は提供されてもよいので、靴の地面係合面の近くの材料被覆の程度が最小であり、地面係合面との距離の増加につれて増加することができる。
【0030】
摩擦低減エリアは少なくとも2つの層を備える積層構造によって形成されてもよく、低減された摩擦はその少なくとも2つの層の間に設けられていてもよい。この場合において、複数の層は互いに対して比較的に移動しやすくてもよい。この実施例に基づいて、摩擦低減エリアは、靴と地面との界面に設けられておらず、積層構造の2つの層の間に設けられている。よって、低減された摩擦は靴と係合される地面の自然環境と関係なく得られる。したがって、より多用途の靴が本実施例によって提供される。この特徴は室外スポーツで靴を利用するのに特に有益である。これらの層は全部靴の表面と平行する方向に延びてもよい。各層は連続的であってもよく穴があけられてもよい。
【0031】
層を互いに動かすことは特定な機械的エネルギー障壁を超える必要があることがあり、すなわち、層の互いの移動を開始させるには特定な初期力が必要とされる。この初期力は少なくとも2つの層の間で結合手段を加えることによって提供できる。このような結合手段は、例えば、繊維、ポリマーまたは綿からなる糸、層の端縁に沿って提供された結合材料の集合などであってもよい。
【0032】
摩擦低減表面エリアは、靴と一体的に形成されてもよく、例えば、少なくとも1つの靴のソールおよび/または靴の前述縁部と一体的に形成されてもよく、または、現有の靴の少なくとも1つのソールおよび1つの前述縁部に後付けされるパッチによって設けられてもよい。摩擦低減エリアは、摩擦低減エリアを設けられうる材料で靴を塗布することによって、例えば、靴の関連部分をスプレー塗布することによって、設けられてもよい。靴の塗布はテンプレートを附加することによって行われてもよい。こうすると、摩擦低減エリアを設けるプロセスを簡易化することができる。このような塗布の例としてはペルフルオロポリエーテル塗布またはシリコン塗布が挙げられる。潤滑剤も前述エリアで靴の摩擦特性を低減するのに適用されてもよい。このような潤滑剤は二硫化モリブデン(MoS
2)を備えてもよい。
【0033】
ここで開示および特許請求をするパッチは、積層構造を備えてもよく、積層構造は、少なくとも接着層と、摩擦低減表面エリアを提供する対向面層と、を備えてもよい。バッキングフィルムは、例えば、剥離ライナーは、潤滑剤とともにさらに提供されてもよい。パッチを大部分の靴の双曲線形状に一致させるために、パッチの少なくとも上縁部は複数の湾入部を備え、湾入部はしわを寄せずにパッチ材料をつけさせる。
【0034】
ここで開示および特許請求をするパッチにおいては、摩擦低減エリアを提供する対向面層はポリテトラフルオロエチレン(PTFE)の最外層を含んでもよい。PTFEはいかなる固体に対しても最小の摩擦係数を有するものの1つであると知られている。対向面層に利用できる材料の他の例としては様々な形式のポリエチレンが挙げられ、例えば、HDポリエチレンおよび超高分子量ポリエチレン(UHMW−PE)、フッ素系ポリマーまたはシリコン系ポリマーおよびワックスである。他の熱可塑性ポリマーまたは熱硬化性ポリマーは靴およびパッチの両方にも利用できる。最外層は、最外層に対向の表面にあるシリコン系接着剤を有することが可能なキャリア材料の上に設けられてもよい。さらに、パッチが靴に対する接着性を促進するために、パッチは最外層と靴との間に位置する両面テープ部材を含んでもよい。この両面テープはポリプロピレンフィルムキャリアとホットメルト合成ゴム接着剤から構成されてもよい。代替的に、両面テープはティッシュペーパーキャリアとホットメルト合成ゴム接着剤から構成されてもよい。追加の代替的な合成物は布キャリアとゴム接着剤である。接着剤はシリコン、アクリル、または、ホットメルト接着剤もしくは感圧性接着剤形式のいかなる他の適した接着剤を備えてもよい。
【0035】
PTFEは、PTFEに対向の表面にあるシリコン系接着剤を有することが可能なキャリア材料に設けられてもよい。さらに、パッチが靴に対する接着性を促進するために、パッチは部材に覆われたPTFEと靴との間に位置する両面テープ部材を含んでもよい。この両面テープはポリプロピレンフィルムキャリアとホットメルト合成ゴム接着剤から構成されてもよい。代替的に、両面テープはティッシュペーパーキャリアとホットメルト合成ゴム接着剤から構成されてもよい。追加の代替的な合成物は布キャリアとゴム接着剤である。接着剤はシリコン、アクリル、または、ホットメルト接着剤もしくは感圧性接着剤形式のいかなる他の適した接着剤を備えてもよい。
【0036】
同様な表面材料は摩擦低減エリアが靴と一体的に形成される場合にも適用できる。
【0037】
代替的な実施例において、摩擦低減エリアは1つまたは複数のストリップの形式で設けられてもよく、ストリップは、例えば、金属材料から製造されまたは金属材料で表面被覆され、または、プラスチック材料から、例えば、前述した材料の1つから製造されてもよい。その1つまたは複数のストリップはポリエチレンを備えてもよい。この場合において、ポリエチレンが比較的に高い剛性および平滑度を有する可能性があるため、靴は室外のスポーツに特によく適することができる。
【0038】
もう1つの代替的な実施例において、摩擦低減エリアは複数の回転可能要素、例えば球体、の形式で設けられてもよく、回転可能要素は部分的に靴に埋め込んで靴に支持されてもよい。このような回転可能要素は、改良された能力を有する摩擦低減エリアを提供することができ、すなわち、靴の長い利用期間に渡ってエリアはその低減された摩擦を維持する促進された能力を有することができる。
【0039】
摩擦低減エリアは多方向摩擦を起こすように配置されてもよく、すなわち、異なる方向に対しては異なる摩擦係数を有してもよい。摩擦低減エリアは、第1方向に対して測定する時に1つの摩擦係数を定義し、第2方向に対して測定する時に第2の摩擦係数を定義してもよい。第1方向は靴の着用者の踵と足指との間に延びる線と平行する方向であってもよく、第2方向は靴の着用者の踵と膝との間に延びる線と平行する方向であってもよい。着用者が望ましい特定な種類の移動に対して十分な摩擦を提供するため、この特徴は靴の着用者に対する損傷のリスクを減らすことができる。多方向摩擦は設けられた摩擦低減エリアによって提供してもよく、摩擦低減エリアは、例えば、優先的に特定な方向に曲がる繊維の最外層、特定な方向に波状となる繊維の最外層、特定な方向に異なる分子構造などを有する。
【図面の簡単な説明】
【0040】
以下、添付図面を参照しながら本発明の好ましい実施例を詳細に説明される。
【
図3】
図1および2の靴を着用者の足に取り付けていることを示す。
【
図6】本発明に係るパッチの代替的な実施例を示す。
【
図7】本発明に係るパッチを備える靴の実施例を示す。
【
図8】本発明に係る靴における様々な配置を大体表現する。
【
図10】本発明に係るパッチの代替的な実施例を示す。
【
図11】本発明に係るパッチの代替的な実施例を示す。
【
図12】本発明に係るパッチの代替的な実施例を示す。
【
図13】本発明に係るスケールされたパッチの代替的な実施例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0041】
添付図面の
図1〜3および7は、地面係合面104を有するソール102と外側縁部106および内側縁部108とを備える靴100を示す。外側接続部110はソール102の地面係合面104と外側縁部106との間に相互接続して延びており、内側接続部112はソール102の地面係合面104と内側縁部108との間に相互接続して延びている。
【0042】
摩擦低減エリア114、214および116、216は外側接続部110に設けられている。
図1および7に示すように、摩擦低減エリアはその外側縁部106の長さの一部が延びており、摩擦低減エリアがソール102の地面係合面104から外側縁部106の中にかなり延びている。
図1に示された実施例は、それぞれが靴の長さ方向に沿って位置する2つの摩擦低減エリア114、116を備える。摩擦低減エリア114、116の周囲は靴100の隣接表面エリア103、105、107に囲まれており、隣接表面エリア103、105、107は摩擦低減エリア114、116の摩擦係数より高い摩擦係数を定義する。
図7に示された実施例において、摩擦低減エリア214、216はさらに靴100の内側縁部108に設けられている。
【0043】
摩擦低減エリア114、214および116、216は靴100の残る部分と一体的に形成されてもよく、または、摩擦低減エリア114、214および116、216は現有の靴に後付可能なパッチ115、215、117、217の形式で設けられていてもよい。
図4、5、10、11、12および13に示すように、パッチ115、215、117、217は湾入部118を備え、湾入部118はパッチを靴の輪郭形状に一致させ、しわを寄せずにつけることができる。
図6、11、12は本発明に係るパッチ115、117の代替的な実施例を示す。
【0044】
図8は本発明に係る靴における様々な配置を大体表現する。
図8aは靴のソール102を示し、靴の先端部150から靴の踵部250への長さを測定する場合において靴の長さLの0%と100%との間を表現する。
図8bの配置において、実施例は単一の摩擦低減エリア214のみを備え、摩擦低減エリア214はパッチ215によって前足領域の内側縁部108に設けられており、すなわち、靴の長さの5%と30%との間に設けられている。
図8cに示された代替的な実施例において、靴は、靴の長さの2%〜40%との間および70%〜95%との間でそれぞれ延びている内側前足パッチ215と内側後足パッチ217を備える。
図8dに示された更なる代替的な配置において、靴は外側縁部106に2つのパッチ115、117を備え、パッチ115、117は靴の長さの10%〜25%との間および65%〜85%との間でそれぞれ延びている。最後に、
図8eの配置において、4つのパッチ115、117、215、217は、示されたように代替的な長さで延びている外側縁部106と内側縁部108に設けられている。
【0045】
理解されるべきなのは、靴のソールおよび側面部の被覆(
図1−3、7を参照)も含んだパッチの配置、破裂および延びを、特別のニーズおよび予防しようとする損傷の種類に基づいて変更してもよいことである。
【0046】
図9は本発明に係る靴の更なる実施例を開示し、この実施例において、摩擦低減エリアは、例えば金属材料またはプラスチック材料からなる複数のストリップ206の形式で設けられている。プラスチック材料はポリエチレンであってもよい。
【0047】
図10は外側縁部106および内側縁部108いずれかの1つまたは全部に実施可能なパッチ115、117、215、217を示す。
図10の実施例において、破線ボックス260は複数の低湾入部262が配置されたエリアを表示する。したがって、パッチが本発明に係るやり方で靴につける時に、異なる程度のパッチ材料被覆が提供されるため、材料被覆の程度は靴の地面係合面の近くで最小であり、地面係合面との距離の増加につれて増加する。このように、破線ボックス260の中においては、靴と地面との間の摩擦が地面係合面との距離の増加につれて段階的に減少する。
【0048】
図13は縮尺に合わしてスケールされたパッチ115、117、215、217を示す。水平軸と垂直軸は長さが同様な任意の単位を有する。