(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の中空糸膜は、ポリアリレート樹脂を含む中空糸膜であって、中空糸膜が内面及び外面の少なくとも一方にスキン層を有しており、引張強度が7MPa以上、破断伸度が15%以上であり、25℃下で純水を用いた内圧透水量が100L/(m
2・atm/h)未満である。以下、本発明の中空糸膜について詳述する。
【0017】
本発明の中空糸膜に含まれるポリアリレート樹脂は、二価フェノール成分と芳香族ジカルボン酸成分を構成単位として含む樹脂である。すなわち、本発明の中空糸膜に含まれるポリアリレート樹脂は、二価フェノール成分と芳香族ジカルボン酸成分との重縮合体である。
【0018】
二価フェノール成分としては、1分子中、2個のフェノール性ヒドロキシル基を含有するあらゆる有機化合物であってもよい。フェノール性ヒドロキシル基とは、芳香族環に直接的に結合したヒドロキシル基のことである。二価フェノール成分として、例えば、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−メチルペンタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)メタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−イソプロピルフェニル)プロパン、1,3−ビス(2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−プロピル)ベンゼン、1,4−ビス(2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−プロピル)ベンゼン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテル、1,3−ビス(2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−プロピル)ベンゼン、1,4−ビス(2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−プロピル)ベンゼン4,4’−ジヒドロキシビフェニル、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’,5,5’−テトラメチルビフェニル、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルプロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルブタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)−1−フェニルエタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)−1−フェニルエタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−(4−t−ブチルフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−フェニルフェニル)−1−フェニルエタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、3,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フタルイミジン、N−フェニル−3,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フタルイミジン、N−メチル−3,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フタルイミジン、N−エチル−3,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フタルイミジン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチル−シクロヘキサン、1,1−ビス−(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチル−シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−シクロドデカン、などが挙げられる。これらの化合物は単独で用いてもよいし、複数種を併用してもよい。
【0019】
本発明の中空糸膜を、破断伸度をより高いものとして圧縮空気を用いた繰り返し使用後の水蒸気分離性能をより優れたものとしやすくする観点からは、二価フェノール成分として、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−メチルペンタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)メタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−イソプロピルフェニル)プロパン、1,3−ビス(2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−プロピル)ベンゼン、1,4−ビス(2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−プロピル)ベンゼン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテル、1,3−ビス(2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−プロピル)ベンゼン、1,4−ビス(2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−プロピル)ベンゼン4,4’−ジヒドロキシビフェニル及び4,4’−ジヒドロキシ−3,3’,5,5’−テトラメチルビフェニルからなる群(以下、「A群」と記載することがある。)より選ばれる1種以上の二価フェノール成分を含むことが好ましい。上記A群の中でも、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンが特に好ましい。
【0020】
一方、後述するように、本発明の中空糸膜の製造方法において、本発明の中空糸膜のスキン層を好適に発達させて製造直後の水蒸気分離性能及び圧縮空気を用いた繰り返し使用後の水蒸気分離性能をより優れたものとし易くする観点から、ポリアリレート樹脂を含む製膜原液中のポリマーの濃度)は19〜28質量%とすることが好ましい。そして、当該ポリマー濃度とする場合、中でも、当該ポリマー濃度としつつ本発明の中空糸膜におけるポリアリレート樹脂の含有量が50質量%を超える場合に、ポリアリレート樹脂の製膜原液中における溶解性をより高め、中空糸膜とする際の紡糸性及び製膜性をより一層高めやすくする観点からは、二価フェノール成分として、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルプロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルブタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)−1−フェニルエタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)−1−フェニルエタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−(4−t−ブチルフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−フェニルフェニル)−1−フェニルエタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、3,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フタルイミジン、N−フェニル−3,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フタルイミジン、N−メチル−3,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フタルイミジン、N−エチル−3,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フタルイミジン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチル−シクロヘキサン、1,1−ビス−(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチル−シクロヘキサン及び1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−シクロドデカンからなる群(以下、「B群」と記載することがある。)より選ばれる1種以上の二価フェノール成分を含むことが好ましい。上記B群の中でも、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン及び1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−シクロドデカンがより好ましく、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン及び1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−シクロドデカンが特に好ましい。
【0021】
本発明の中空糸膜において、破断伸度をより高いものとすることと、中空糸膜の製造においてポリマー濃度を19〜28質量%とする場合にポリアリレート樹脂の製膜原液中における溶解性をより高めやすくすることと、をより一層両立させやすくする観点から、二価フェノール成分として、前述したA群より選ばれる1種以上の二価フェノール成分と、前述したB群より選ばれる1種以上の二価フェノール成分とを併用することが好ましく、中でも、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンと、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン又は1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−シクロドデカンと、の併用が特に好ましい。二価フェノール成分として、前述したA群より選ばれる1種以上の二価フェノール成分と、前述したB群より選ばれる1種以上の二価フェノール成分とを併用する場合、前述したA群より選ばれる1種以上の二価フェノール成分と、前述したB群より選ばれる1種以上の二価フェノール成分とのモル比(B群より選ばれる1種以上の二価フェノール成分/A群より選ばれる1種以上の二価フェノール成分)としては、0.5〜5が挙げられ、1〜3が好ましく挙げられ、1.2〜1.8がより好ましく挙げられる。
【0022】
また、芳香族ジカルボン酸成分としては、特に制限されず、公知のポリアリレート樹脂の構成単位として使用されるものが本発明でも使用できる。芳香族ジカルボン酸成分の具体例としては、テレフタル酸、イソフタル酸、ジフェニルエーテル−2,2’−ジカルボン酸、ジフェニルエーテル−2,3’−ジカルボン酸、ジフェニルエーテル−2,4’−ジカルボン酸、ジフェニルエーテル−3,3’−ジカルボン酸、ジフェニルエーテル−3,4’−ジカルボン酸、ジフェニルエーテル−4,4’−ジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、オルトフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、ジフェン酸ビス(p−カルボキシフェニル)アルカン、ジフェニルエーテル−2,2’−ジカルボン酸、ジフェニルエーテル−2,3’−ジカルボン酸、ジフェニルエーテル−2,4’−ジカルボン酸、ジフェニルエーテル−3,3’−ジカルボン酸、ジフェニルエーテル−3,4’−ジカルボン酸、ジフェニルエーテル−4,4’−ジカルボン酸が挙げられる。中でも、汎用性の高いことから、テレフタル酸とイソフタル酸を併用することが好ましい。なお、芳香族ジカルボン酸成分には、本発明の効果を損なわない範囲で、脂肪族ジカルボン酸や脂環族ジカルボン酸を含有してもよい。
【0023】
本発明の中空糸膜には、1種のポリアリレート樹脂が含まれていても良く、また2種以上のポリアリレート樹脂が含まれていても良い。当該ポリアリレート樹脂は、繊維形状に成形可能であることを限度として、架橋の有無は問わない。コスト低減の観点からは、架橋されていないポリアリレート樹脂が好ましい。
【0024】
本発明の中空糸膜は、ポリアリレート樹脂以外の他の樹脂を含むことができる。当該他の樹脂としては、製膜原液とする際、用いるポリアリレート樹脂を溶解する溶媒に可溶な樹脂であれば良い。当該他の樹脂として、例えば、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミド、ポリアミド、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニルエーテル、ポリフッ化ビニリデン、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリアルキレンオキサイド、ポリエチレングリコール等が挙げられる。中でも、上記他の樹脂として、ポリエーテルイミド及び/又はポリビニルピロリドンを用いた場合は、製造直後の水蒸気分離性能をより向上しやすくなる点で好ましい。
【0025】
本発明の中空糸膜において、ポリアリレート樹脂の含有量としては、特に制限されないが、例えば、1〜100質量%が挙げられ、圧縮空気を用いた繰り返し使用後における水蒸気分離性能をより向上させる観点から、80質量%以上、85質量%以上、80〜100質量%、85〜100質量%が好ましく挙げられる。また、本発明の中空糸膜は、実質的にポリアリレート樹脂のみ(99質量%以上、さらには100質量%)からなるものとすることができる。また、ポリアリレート樹脂の含有量が5〜50質量%であって、かつ、ポリアリレート樹脂以外の樹脂の含有量が50〜95質量%とすることもできる。
【0026】
本発明の中空糸膜は、内面及び外面の少なくとも一方にスキン層を有しており、引張強度が7MPa以上、破断伸度が15%以上である。本発明の中空糸膜においては、中空糸膜にポリアリレート樹脂を使用し、スキン層を発達させて引張強度及び破断伸度を高めることにより、圧縮空気を用いた繰り返し使用後の水蒸気分離性能に優れたものとなる。また、後述の通り、スキン層を発達させることによって、本発明の中空糸膜においては、25℃下で純水を用いた内圧透水量が100L/(m
2・atm/h)未満となっている。
【0027】
本発明の中空糸膜の引張強度としては、8MPa以上が好ましく、9.5MPa以上がより好ましい。引張強度の上限値としては特に制限されないが、例えば、50MPa以下が挙げられ、30MPa以下が挙げられ、15MPa以下が挙げられる。また、破断伸度としては、20%以上が好ましく、30%以上がより好ましく、45%以上がさらに好ましい。破断伸度の上限値としては特に制限されないが、例えば、100%以下が挙げられ、70%以下が挙げられ、60%以下が挙げられる。
【0028】
なお、本発明において、中空糸膜の引張強度及び破断伸度は、それぞれ、以下のように測定、算出する。
【0029】
(引張強度)
JIS L 1013:2010 8.5.1に準じ、室温25℃、湿度60%の環境で、中空糸膜を約10cmに切断し、中空糸膜を直径22mmの巻き付けチャックを取り付けた島津製作所製オートグラフAGS−100Gに巻き付けてセットし、引張強力(N)を、試験長50mm(試験長の測長箇所を
図5に示す。)、引張速度50mm/min、測定数n=5にて測定し、5つの引張強力の値の平均値を求める。次いで、上記引張強力に用いた5本の中空糸膜の横断面を、光学顕微鏡にて倍率200倍にして観察し、中空糸膜それぞれの外径、内径(ともに最大径となる箇所)を測定し、得られた外径及び内径から、中空糸膜それぞれの断面積(mm
2)を求め、5本の断面積の平均値を求める。そして、上記得られた引張強力の平均値を、上記得られた断面積の平均値で除し、得られる値を中空糸膜の引張強度(MPa)とする。
【0030】
(破断伸度)
本発明において、中空糸膜の破断伸度は、JIS L 1013:2010 8.5.1に準じ、室温25℃、湿度60%の環境で、中空糸膜を約10cmに切断し、中空糸膜を直径22mmの巻き付けチャックを取り付けた島津製作所製オートグラフAGS−100Gに巻き付けてセットし、試験長50mm、引張速度50mm/min、測定数n=5にて測定し、得られる5つの破断伸度の平均値(%)とする。
【0031】
引張強度が7MPa以上、破断伸度が15%以上であり、さらに、25℃下で純水を用いた内圧透水量が100L/(m
2・atm/h)未満である本発明の中空糸膜は、後述する本発明の中空糸膜の製造方法によって好適に製造することができる。
【0032】
本発明の中空糸膜の弾性率としては、好ましくは80〜1200MPaが挙げられ、より好ましくは100〜800MPa、さらに好ましくは100〜200Mpaが挙げられる。本発明において、上記弾性率は、JIS L 1013:2010 8.9 A法に準じ、室温25℃、温25℃、湿度60%の環境で、中空糸膜を約10cmに切断し、中空糸膜を直径22mmの巻き付けチャックを取り付けた島津製作所製オートグラフAGS−100Gに巻き付けてセットし、試験長50mm、引張速度50mm/min、測定数n=5にて測定し、それらの平均値とする。
【0033】
本発明の中空糸膜は、25℃下で純水を用いた内圧透水量が100L/(m
2・atm/h)未満であり、0〜50L/(m
2・atm/h)が好ましく、0〜10L/(m
2・atm/h)がより好ましく、0〜1L/(m
2・atm/h)が特に好ましい。本発明の中空糸膜は、上記内圧透水量を上記範囲とすることにより、ガスバリア性を有し、エアリークを防ぎ、水蒸気分離膜として好適に使用することができる。
【0034】
本発明において、中空糸膜の内圧透水量は、25℃下で純水を用いた内圧式濾過によって測定される値である。具体的に、中空糸膜の内圧透水量の測定方法の概要を、
図3を用いて説明する。
図3に示すように、中空糸膜14を10〜20cmに切断し、両端の中空部分に内径に合う径の注射針18を挿入し、
図3に示すような装置にセットした後、所定時間(分)、送液ポンプ13で純水を圧力0.05MPaで5分間通し、膜を透過して受け皿19に貯まった水の容量(L)を透過水量とし、以下の式により求めたものである。なお、圧力は
図3の15の入口圧力と16の出口圧力の平均値である。
【0035】
内圧透水量=透過水量(L)/[内径(m)×3.14×長さ(m)×{(入口圧(atm)+出口圧(atm))/2}×時間(h)]
【0036】
本発明の中空糸膜の内径及び外径については、特に制限されず、使用目的等に応じて適宜設定することができる。上記内径としては、例えば100〜800μm、好ましくは150〜600μm、更に好ましくは200〜450μmが挙げられる。上記外径としては、例えば、250〜1800μm、好ましくは300〜1500μm、更に好ましくは400〜1000μmが挙げられる。内径に対する外径の比率(外径/内径)としては、例えば、1.5〜3.0が挙げられ、好ましくは1.6〜2.5、より好ましくは1.6〜2.0が挙げられる。なお、上記外径及び内径は、5本の中空糸膜の横断面を、光学顕微鏡にて倍率200倍にして観察し、中空糸膜それぞれの外径、内径(ともに最大径となる箇所)を測定し、外径、内径それぞれの平均値とする。
【0037】
また、中空糸膜の厚さについては、特に制限されず、使用目的等に応じて適宜設定することができる。中空糸膜の厚さとしては、好ましくは50〜500μm、より好ましくは60〜300μm、さらに好ましくは70〜150μmが挙げられる。中空糸膜の厚さは、前記の外径及び内径から算出される。
【0038】
本発明の中空糸膜は、少なくとも内面もしくは外面にスキン層を含み、好ましくは外面側にスキン層を有している。本発明の中空糸膜は、このようなスキン層を備えていることから、25℃下で純水を用いた内圧透水量が100L/(m
2・atm/h)未満となる。
【0039】
本発明の中空糸膜において、スキン層の厚さは、製造直後の水蒸気分離性能及び圧縮空気を用いた繰り返し使用後の水蒸気分離性能をより両立させる観点から、100〜2000nmが好ましく、200〜1500nmがより好ましく、250〜100nmがさらに好ましい。本発明において、「スキン層」とは、緻密な微細孔が集合している領域であって、倍率20000倍の走査型電子顕微鏡(SEM)画像において実質的に細孔の存在が認められない領域を示し、スキン層の厚さは、中空糸膜の横断面について、走査型電子顕微鏡を用いて、任意に5箇所、上記スキン層の厚さを測定し、その平均値とする。
【0040】
本発明の中空糸膜において、中空糸膜の厚さ(=(中空糸膜の外径−中空糸膜の内径)/2)に対する、上記スキン層の厚さの割合(=スキン層の厚さ/中空糸膜の厚さ×100(%))としては、例えば、0.1〜5%が挙げられ、0.1〜3%が好ましく挙げられ、0.1〜1%がより好ましく挙げられる。
【0041】
中空糸膜のスキン層以外の部分については、倍率10000倍以下の走査型電子顕微鏡(SEM)画像において細孔の存在が認められる領域(多孔質層)が挙げられ、当該領域に存在する細孔の最大直径のより好ましい範囲としては、0.01〜100μmが挙げられる。
【0042】
本発明の中空糸膜は、ポリアリレート樹脂を含む中空糸膜であって、引張強度が7MPa以上、破断伸度が15%以上であり、25℃下で純水を用いた内圧透水量が100L/(m
2・atm/h)未満であることから、製造直後(初期)の水蒸気分離性能に優れる。本発明の中空糸膜が備える、好適な、製造直後(初期)の水蒸気分離性能としては、中空糸膜の有効内表面積が6.8×10
2cm
2となるように作製した中空糸膜モジュールにおいて、中空糸膜内部に25℃、露点−4℃の空気を圧力0.5MPa、流量4.0L/分で供給した場合の露点低下が、3〜10℃であることが好ましく、3〜7℃であることがより好ましい。
【0043】
上記露点低下は、
図4の模式図に示すような中空糸膜モジュールを用いて測定する。具体的には、外径8mm、内径6mmのナイロン製エアチューブを200mmに切断したものをケース22として使用する。ケース22には、パージエアー排出口24が設けられている。次に、このケース22に中空糸膜20を束ねて入れ、2液混合型ポリウレタン接着剤21を流し込んで両端部50mmをポッティング後、切断し、両端部断面に全ての中空部分が露出した中空糸膜モジュールを作製する。なお、モジュールの一方の端には膜外部を乾燥させるパージエアー管23として、長さ50mm、外径0.4mm、内径0.2mmのシリコンチューブをともにポッティングする。モジュールに含める膜の本数は膜の長さが15cmで、膜の有効内表面積が6.8×10
2cm
2となるように調整する。中空糸膜内部に25℃、露点−4℃の空気を圧力0.5MPa、流量4.0L/分で供給し、モジュールから排出される処理後の空気の露点と、中空糸膜モジュールに導入される前の被処理空気の露点の差を水蒸気分離性能として評価する。空気の露点については、VAISALA社製HMP−234湿度測定機を使用し測定する。
【0044】
本発明の中空糸膜は、ポリアリレート樹脂を含む中空糸膜であって、引張強度が7MPa以上、破断伸度が15%以上であり、25℃下で純水を用いた内圧透水量が100L/(m
2・atm/h)未満であることから、圧縮空気を用いた繰り返し使用後の水蒸気分離性能に優れる。本発明の中空糸膜が備える、好適な、圧縮空気を用いた繰り返し使用後の水蒸気分離性能としては、下記測定で評価される繰り返し使用後の水蒸気分離性能が2〜10℃であることが好ましく、2〜6℃であることがより好ましい。
【0045】
(繰り返し使用後の水蒸気分離性能の測定)
前記の「製造直後(初期)の水蒸気分離性能」と同様にして中空糸膜モジュールを作製し、中空糸膜モジュールのパージ管が含まれる端部に電磁弁を取り付け、もう片方の端部から圧縮空気を0.9MPaで供給する。松原計器製圧力計を用いて測定した圧力が、電磁弁開放状態で0MPa、電磁弁閉鎖状態で0.9MPaとなるようにし、電磁弁を5秒周期で開閉することにより中空糸膜に加減圧を付加する試験を行い、48時間後に膜の破れの有無と試験前後の水蒸気分離性能の変化を評価する。
【0046】
本発明の中空糸膜の製造方法について、以下詳述する。
【0047】
本発明の中空糸膜は、ポリアリレート樹脂と溶媒を含むポリマー溶液と、内部液とを、二重管状ノズルから凝固液に吐出して製膜する非溶媒誘起相分離法(NIPS法)において、前記ポリマー溶液を凝固液に吐出することによって、好適に製造することができる。本発明の中空糸膜の製造方法は、より具体的には、以下の第1工程〜第3工程を経て製造される。
【0048】
第1工程:ポリアリレート樹脂を溶媒に溶解させ、ポリマー溶液(製膜原液)を調製する。
第2工程:二重管構造の中空糸膜製造用二重管状ノズルを用い、外側の管状ノズルから前記ポリマー溶液を吐出すると共に、内側のノズルから内部液を吐出し、凝固浴中に導入し、一定の引き取り速度で引き取ることにより中空糸膜を形成する。
第3工程:第2工程で形成された中空糸膜から溶媒を除去する。
【0049】
第1工程
第1工程では、ポリアリレート樹脂を溶媒に溶解させ、ポリマー溶液(製膜原液)を調製する。ポリアリレート樹脂を溶媒に溶解させるためには、室温下または加熱下において、溶媒にポリアリレート樹脂を溶解させる。
【0050】
本発明で使用する溶媒としては、ポリアリレート樹脂を溶解することができれば特に限定されないが非プロトン性極性溶媒が好ましく、特にN−メチル−2−ピロリドンが好ましい。
【0051】
この際、上記溶媒に可溶なポリアリレート樹脂以外の他の樹脂を自由な割合でブレンドすることができる。例を挙げると、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミド、ポリアミド、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニルエーテル、ポリフッ化ビニリデン、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリアルキレンオキサイド、ポリエチレングリコール等が挙げられる。中でも、上記他の樹脂として、ポリエーテルイミド及び/又はポリビニルピロリドンを用いた場合は、製造直後の水蒸気分離性能をより向上しやすくなる点で好ましい。
【0052】
また、前述の溶媒には、該中空糸膜のスキン層以外の部分におけるマクロボイドを低減し高強度とするために、第3成分として、ポリマーに対して貧溶媒であり且つ前述の溶媒と混ざり合う溶媒を添加することもできる。かかる貧溶媒としては、水、グリセリン、プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコールなどのグリコール類などが挙げられる。
【0053】
ポリマーを溶媒に溶解させる温度は、本発明の効果を損なわない限り限定されないが、10℃〜180℃であり、好ましくは20℃〜130℃であり、さらに好ましくは40℃〜110℃である。溶媒が良溶媒の場合には低い温度でも容易に溶解させることができるが、親和性がやや低い溶媒を選択した場合や貧溶媒を添加した場合には高い温度で溶解した方が短時間で溶解できて効率的である。
【0054】
ポリアリレート樹脂単独、又はポリアリレート樹脂及びその他の樹脂を前記溶媒に溶解する際の濃度(すなわち、ポリアリレートを含む製膜原液中のポリマーの濃度)は、好ましくは19〜28質量%、より好ましくは20〜28質量%、特に好ましくは20〜25質量%である。本発明の中空糸膜の製造方法において、このような濃度範囲に設定した上で、後述の第2工程及び第3工程を経ることにより、得られる中空糸膜のスキン層を好適に発達させて、引張強度、引張伸度を前記のように高め、優れた水蒸気分離性能(製造直後の水蒸気分離性能及び圧縮空気を用いた繰り返し使用後の水蒸気分離性能)を好適に発揮することができる。すなわち、中空糸膜の製膜原液は、ポリアリレートを含むポリマーの濃度が19〜28質量%とすることが好ましく、また、本発明の中空糸膜の製造方法としては、上記製膜原液を用いることが好ましい。
【0055】
第2工程
第2工程では、二重管構造の中空糸膜製造用二重管状ノズルを用い、外側の管状ノズルから上記のポリマー溶液(製膜原液)を吐出すると共に内側のノズルから内部液を吐出し、凝固浴中に導入し、一定の引き取り速度で引き取ることにより、中空糸膜を形成する。ポリマー溶液を前記管状ノズルから凝固液に吐出して製膜する際の温度は、20〜150℃であるか又は前記凝固液の温度が10〜100℃である。
【0056】
ここで、中空糸膜製造用二重管状ノズルとしては、本発明の効果を損なわない限りいかなるものでも使用できる。外側の管状ノズルの径、内側のノズルの径については、中空糸膜の内径と外径に応じて適宜設定すればよい。
【0057】
また、第2工程において、二重管状ノズルの内側のノズルから吐出される内部液としては、本発明の効果を損なわない限りいかなる流体も使用できるが、気体より液体の方が好ましい。かかる内部液として使用される液体としては、特に制限されないが、例えば、中空糸膜の外面にスキン層を有するものとしつつ内面に多孔質層を有するものとする場合であって、当該内面の細孔を大きくしたい場合にはポリアリレート樹脂と親和性の高い液体を使用することができる。ポリアリレート樹脂と親和性の高い液体の具体例としては、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、γ−ブチロラクトン、δ−バレロラクトン、ε−カプロラクトン、スルホラン、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン、クロロホルム、塩化メチレン等が挙げられる。これらの液体は、1種単独で使用してもよく、親和性の高い液体と後述する親和性の低い液体を混合することで上記細孔径を調整することもできる。一方、ポリアリレート樹脂と親和性の低い液体の具体例としては、水、メタノール、エタノール、イソプロパノールなどのアルコール類、グリセリン、プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコールなどのグリコール類、高級脂肪酸類、流動パラフィン等が挙げられる。また、ポリマー溶液の粘性が高く、曳糸性に優れている場合には、不活性ガス等の気体を流入する方法を用いてもよい。更に塩化アンモニウム、塩化カルシウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、硫酸ナトリウムなどの無機塩や、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリアルキレンオキサイド、ポリエチレングリコール等の高分子を上記溶媒に溶解させて使用してもよい。中でも、中空糸膜の外面にスキン層を有するものとしつつ内面に多孔質層を有するものとする場合、中空糸膜の水蒸気分離性能をより優れたものとする観点から、内部液として、水の単独使用、又は水とN−メチル−2−ピロリドンを混合したものが好ましい。内部液として水とN−メチル−2−ピロリドンを混合したものを用いる場合は水の比率を1〜10質量%とすることが好ましい。また、内部液に、ポリビニルピロリドン0.1〜10質量%溶解をさせると、得られる中空糸膜の水蒸気分離性能がより一層向上しやすくなる点で好ましい。
【0058】
一方、中空糸膜の内面にスキン層を有するものとする場合には、内部液としてポリアリレート樹脂に対し親和性の低い液体を使用することができる。かかる親和性の低い液体の具体例としては前述したとおりである。また、中空糸膜の外面及び内面のいずれにもスキン層を有するものとする場合は、内部液、及び後述する凝固液のいずれもポリアリレート樹脂に対し親和性の低い液体を使用すればよい。
【0059】
第2工程において、凝固液としては本発明の効果を損なわない限りいかなるものでも使用できる。かかる凝固液としては、特に制限されないが、例えば、中空糸膜の内面にスキン層を有するものとしつつ、外面の細孔を大きくしたい場合にはポリアリレート樹脂と親和性の高い液体を用いることができる。一方、中空糸膜の外面にスキン層を有するものとする場合はポリアリレート樹脂と親和性の低い液体を使用することができる。かかる親和性の高いまたは低い液体の具体例としては、内部液の項で前述したとおりである。中空糸膜の外面にスキン層を有するものとする場合は、これらの凝固液の中でも、中空糸膜の引張強度をより一層優れたものとする観点から、水の単独使用が好ましい。
【0060】
また、中空糸膜製造用二重管状ノズルの外側の管状ノズルからポリマー溶液を吐出させる際の流量については、特に制限されないが、例えば1〜40g/分、好ましくは2〜20g/分、更に好ましくは3〜10g/分が挙げられる。また、内部液の流量については、中空糸膜製造用二重管状ノズルの内側ノズルの径、使用する内部液の種類、ポリマー溶液の流量等を勘案して適宜設定されるが、例えばポリマー溶液の流量に対して、0.1〜2倍、好ましくは0.2〜1倍、更に好ましくは0.3〜0.7倍が挙げられる。
【0061】
中空糸膜の引き取り速度は、特に限定されないが、不完全な固化で膜が扁平にならなければ良い。通常1〜200m/分、好ましくは10〜150m/分、更に好ましくは20〜100m/分が挙げられる。引取り速度を上げるためには凝固浴温度を高くすることや、凝固液の溶媒に固化速度の速いもの(貧溶媒など)を用いることで扁平のない中空糸膜を作製することが可能である。
【0062】
斯して第2工程を実施することにより、中空糸膜製造用二重管状ノズルから吐出されたポリマー溶液(製膜原液)が凝固液中で凝固して中空糸膜が形成される。
【0063】
第3工程
第3工程では、第2工程で形成された中空糸膜から溶媒を除去する。中空糸膜から溶媒を除去する方法については、特に制限されず、ドライヤーで乾燥させて溶媒を揮散させる方法であってもよいが、抽出溶媒に浸漬して中空糸膜内部で相分離を起こしている溶媒を抽出除去する方法が好ましい。溶媒の抽出除去に使用される抽出溶媒としては、安価で沸点が低く抽出後に沸点の差などで容易に分離できるものが好ましく、例えば、水、メタノール、エタノール、2−プロパノール、アセトン、ジエチルエーテル、ヘキサン、石油エーテル、トルエンなどが挙げられる。これらの中でも、好ましくは水、メタノール、エタノール、2−プロパノール、アセトン、更に好ましくは水が挙げられる。また、抽出溶媒に中空糸膜を浸漬する時間としては、特に制限されないが、例えば0.2時間〜2ヶ月間、好ましくは0.5時間〜1ヶ月間、更に好ましくは2時間〜10日間が挙げられる。中空糸膜に残留する有機溶媒を効果的に抽出除去する為に、抽出溶媒を入れ替えたり、攪拌したりしてもよい。
【0064】
斯して第3工程を実施することにより、本発明の中空糸膜が製造される。
【0065】
本発明の中空糸膜の製造方法において使用される装置については、特に制限されないが、好ましくは、
図1に示すような乾湿式紡糸に用いられる一般的な装置が挙げられる。
図1に示す装置を例として挙げて、本発明の中空糸膜の製造フローを以下に概説する。
【0066】
図1において、3はコンテナ、7は前記凝固液を湛えた凝固浴、9は巻き取り機、10は溶媒抽出浴である。コンテナ3には、第1工程により得られた製膜原液が貯留される。コンテナ3の底部には、定量ポンプ4と紡糸口金6とが設けられている。紡糸口金6は、
図2に示す断面構造を有する。詳細には、紡糸口金6は、中央部の横断面円形の内部流体流出孔11と、この内部流体流出孔11の周囲においてこの内部流体流出孔11と同心状に形成された管状の製膜原液流出孔12とを有する。製膜原液流出孔12には、コンテナ3の内部から定量ポンプ4を経て製膜原液が供給される。内部流体流出孔11には、
図1に示される導入路5から、図示を省略した別の定量ポンプを経て、内部流体が供給される。
図1において、1はコンテナ3に設けられた攪拌モータ、2はコンテナ3の内部への加圧ガス供給路である。
【0067】
このような構成によれば、ポリアリレート樹脂は、上述したように有機溶媒と混合溶解されて製膜原液となり、コンテナ3に溜められる。製膜原液および内部流体は、それぞれ定量ポンプによって計量され、紡糸口金6に送られる。紡糸口金6から吐出された製膜原液は、エアギャップを介して凝固浴7に導入され、固化される。ポリマー溶液の溶媒が凝固浴中の凝固液に置換される過程で、非溶媒誘起相分離が起こって、海島構造を有する中空糸膜8が得られる。このようにして得られた中空糸膜8を巻き取り機9でいったん巻き取った後、これを溶媒抽出浴10へ送る。溶媒抽出浴10では、水等の抽出溶媒を用い、所定の時間をかけて、海島構造の島成分である有機溶媒と、紡糸時に中空部に流し込まれた流体とが除去される。これにより、所望の中空糸膜が得られる。この中空糸膜は、溶媒抽出浴10から取り出される。
【0068】
本発明の水蒸気分離用中空糸膜モジュールは、本発明の中空糸膜がケーシングに収容されてなる。
【0069】
中空糸膜モジュールは、本発明の中空糸膜を束にし、モジュールケーシングに収容して、中空糸膜束の端部の一方又は双方をポッティング剤により封止して固着させた構造であればよい。中空糸膜モジュールには、被処理流体の流入口又は処理後の流体出口として、中空糸膜の外壁面側を通る流路と連結した開口部と、中空糸膜の中空部分と連結した開口部が設けられていればよい。
【0070】
中空糸膜モジュールの形状は、特に制限されず、デッドエンド型モジュールであっても、クロスフロー型モジュールであってもよい。中空糸膜モジュールの形状として、具体的には、中空糸膜束をU字型に折り曲げて充填し、中空糸膜束の端部を封止後カットして開口させたデッドエンド型モジュール;中空糸膜束の一端の中空開口部を熱シール等により閉じたものを真っ直ぐに充填し、開口している方の中空糸膜束の端部を封止後カットして開口させたデッドエンド型モジュール;中空糸膜束を真っ直ぐに充填し、中空糸膜束の両端部を封止し片端部のみをカットして開口部を露出させたデッドエンドモジュール;中空糸膜束を真っ直ぐに充填し、中空糸膜束の両端部を封止し、中空糸膜束の両端の封止部をカットし、フィルターケースの側面に2箇所の流路を作ったクロスフロー型モジュール等が挙げられる。
【0071】
モジュールケーシングに挿入する中空糸膜の充填率は、特に制限されないが、例えば、モジュールケーシング内部の体積に対する中空部分の体積を入れた中空糸膜の体積が30〜90体積%、好ましくは35〜75体積%、更に好ましくは40〜65体積%が挙げられる。このような充填率を満たすことによって、十分な濾過面積を確保しつつ、中空糸膜のモジュールケーシングへの充填作業を容易にし、中空糸膜の間を流体が流れ易くすることができる。
【0072】
中空糸膜モジュールの製造に使用されるポッティング剤については、特に制限されないが、例えば、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリアミド、シリコン樹脂、メラミン樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、フェノール樹脂、ポリイミド、ポリウレア樹脂等が挙げられる。これらのポッティング剤の中でも、硬化した時の収縮や膨潤が小さく、硬度が硬過ぎないものが好ましい。ポッティング剤の好適な例として、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリアミド、シリコン樹脂、ポリエチレンが挙げられ、更に好ましくはポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリアミド、ポリエチレンが挙げられる。これらのポッティング剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0073】
中空糸膜モジュールに使用するモジュールケーシングの材質については、特に制限されず、例えば、鉄、鋼、銅、ステンレス鋼、アルミニウムとその合金、ポリアミド、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリフェニレンサルファイド等が挙げられる。これらの中でも、好ましくはポリアミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、更に好ましくはポリアミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレンが挙げられる。
【0074】
本発明の中空糸膜及び中空糸膜モジュールの用途としては、水蒸気分離をおこなう、加湿ユニット又はエアドライヤーが挙げられる。
【実施例】
【0075】
以下に、実施例及び比較例を示して本発明を詳細に説明する。ただし、本発明は、実施例に限定されない。
【0076】
(実施例1)
攪拌装置を備えた反応容器中に水1.2Lを入れ、水酸化ナトリウム0.79mol、二価フェノール成分である1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン(BPAP)0.194mol、分子量調整剤としてp−tert−ブチルフェノール(PTBP)0.004molを溶解させ、0.0013molの重合触媒(トリブチルベンジルアンモニウムクロライド)を添加し、激しく撹拌した(アルカリ水溶液)。別の容器にテレフタル酸クロライド(TPC)0.100molとイソフタル酸クロライド(IPC)0.100molを秤り取り、0.7Lの塩化メチレンに溶解させた。この塩化メチレン溶液を、先に調製したアルカリ水溶液を撹拌したところへ混合し、重合を開始させた。重合反応温度は20℃前後になるように調製した。重合は攪拌下で2時間行い、その後、攪拌を停止して反応液を静置して水相と有機相を分離し、水相のみを反応容器から抜き取って、残った有機相に酢酸2gを添加した。そして、水1.5Lを加えて30分間攪拌し、再度静置分離して水相を抜き出した。この水洗操作を、水洗後の水相のpHが7前後になるまで繰り返した。得られた有機相を、ホモミキサーを装着した50℃の温水槽中に徐々に投入しながら塩化メチレンを蒸発させることで、粉末状のポリマーを析出させ、これを取り出して脱水・乾燥を行い、二価フェノール成分がBPAP、芳香族ジカルボン酸成分がテレフタル酸及びイソフタル酸であるポリアリレート樹脂Aを得た。得られたポリアリレート樹脂Aの最終樹脂組成は、仕込組成と同一であった。上記ポリアリレート樹脂A200質量部とN−メチル−2−ピロリドン(BASF社製)800質量部とを70℃で4時間攪拌することでポリアリレート樹脂をN−メチル−2−ピロリドンに溶解させ製膜原液を調製した。その後、
図1に示す装置における定量ポンプ4を介して紡糸口金6に送液し、2.8g/分でギアポンプを用いて押し出した。紡糸口金は、管状の製膜原液流出孔の外径が1.11mm、その内径が0.60mmのものを用いた。中空糸を紡糸するための内部液として、水を10質量部、N−メチル−2−ピロリドンを90質量部の割合で混合したものを1.2g/分の送液速度で流した。送液された製膜原液は50mmのエアギャップを介して水に投入して相分離固化させ、巻き取り機によって20m/分の巻取速度で巻き取った。得られた中空糸膜を溶媒抽出浴10にて水に12時間浸漬して溶媒を抽出し、熱風乾燥機で50℃1時間乾燥処理を行い、実施例1の中空糸膜を得た。評価結果について表1に示す。
【0077】
(実施例2)
二価フェノール成分を1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン(BPTMC)としてポリアリレート樹脂Bを得た後、このポリアリレート樹脂Bを用いて製膜原液を調整した以外は実施例1と同様にして実施例2の中空糸膜を得た。評価結果について表1に示す。
【0078】
(実施例3)
二価フェノール成分を1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−シクロドデカン(BPCDE)としてポリアリレート樹脂Cを得た後、このポリアリレート樹脂Cを用いて製膜原液を調整した以外は実施例1と同様にして実施例3の中空糸膜を得た。評価結果について表1に示す。
【0079】
(実施例4)
二価フェノール成分を2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−プロパン(BPA)0.118molおよびBPAP0.078molとしてポリアリレート樹脂Dを得た後、このポリアリレート樹脂Dを用いて製膜原液を調整した以外は実施例1と同様にして実施例4の中空糸膜を得た。評価結果について表1に示す。
【0080】
(実施例5)
上記ポリアリレート樹脂D200質量部とポリビニルピロリドン(東京化成工業株式会社製)20質量部とN−メチル−2−ピロリドン(BASF社製)780質量部とを70℃で4時間攪拌することで製膜原液を調製すること以外は実施例4と同様にして、実施例5の中空糸膜を得た。評価結果について表1に示す。
【0081】
(実施例6)
水を10質量部、N−メチル−2−ピロリドンを90質量部の割合で混合したものに、ポリビニルピロリドン(東京化成工業株式会社製)を1質量部添加した内部液を用いた以外は実施例5と同様にして、実施例6の中空糸膜を得た。評価結果について表1に示す。
【0082】
(実施例7)
二価フェノール成分をBPA0.118molおよびBPTMC0.078molとしてポリアリレート樹脂Eを得た後、このポリアリレート樹脂Eを用いて製膜原液を調整した以外は実施例1と同様にして実施例7の中空糸膜を得た。評価結果について表2に示す。
【0083】
(実施例8)
上記ポリアリレート樹脂E200質量部とポリビニルピロリドン(東京化成工業株式会社製)20質量部とN−メチル−2−ピロリドン(BASF社製)780質量部とを70℃で4時間攪拌することで製膜原液を調製すること以外は実施例7と同様にして、実施例8の中空糸膜を得た。評価結果について表2に示す。
【0084】
(実施例9)
水を10質量部、N−メチル−2−ピロリドンを90質量部の割合で混合したものに、ポリビニルピロリドン(東京化成工業株式会社製)を1質量部添加した内部液を用いた以外は実施例8と同様にして、実施例9の中空糸膜を得た。評価結果について表2に示す。
【0085】
(実施例10)
二価フェノール成分をBPA0.118molおよびBPCDE0.078molとしてポリアリレート樹脂Fを得た後、このポリアリレート樹脂Fを用いて製膜原液を調整した以外は実施例1と同様にして実施例10の中空糸膜を得た。評価結果について表2に示す。
【0086】
(実施例11)
上記ポリアリレート樹脂F200質量部とポリビニルピロリドン(東京化成工業株式会社製)20質量部とN−メチル−2−ピロリドン(BASF社製)780質量部とを70℃で4時間攪拌することで製膜原液を調製すること以外は実施例10と同様にして、実施例11の中空糸膜を得た。評価結果について表2に示す。
【0087】
(実施例12)
水を10質量部、N−メチル−2−ピロリドンを90質量部の割合で混合したものに、ポリビニルピロリドン(東京化成工業株式会社製)を1質量部添加した内部液を用いた以外は実施例11と同様にして、実施例12の中空糸膜を得た。評価結果について表2に示す。
【0088】
(実施例13)
攪拌装置を備えた反応容器中に水1.2Lを入れ、水酸化ナトリウム0.79mol、二価フェノール成分であるBPA0.194mol、分子量調整剤としてp−tert−ブチルフェノール(PTBP)0.0116molを溶解させ、0.0013molの重合触媒(トリブチルベンジルアンモニウムクロライド)を添加し、激しく撹拌した(アルカリ水溶液)。別の容器にテレフタル酸クロライド(TPC)0.100molとイソフタル酸クロライド(IPC)0.100molを秤り取り、0.7Lの塩化メチレンに溶解させた。この塩化メチレン溶液を、先に調製したアルカリ水溶液を撹拌したところへ混合し、重合を開始させた。重合反応温度は20℃前後になるように調製した。重合は攪拌下で2時間行い、その後、攪拌を停止して反応液を静置して水相と有機相を分離し、水相のみを反応容器から抜き取って、残った有機相に酢酸2gを添加した。そして、水1.5Lを加えて30分間攪拌し、再度静置分離して水相を抜き出した。この水洗操作を、水洗後の水相のpHが7前後になるまで繰り返した。得られた有機相を、ホモミキサーを装着した50℃の温水槽中に徐々に投入しながら塩化メチレンを蒸発させることで、粉末状のポリマーを析出させ、これを取り出して脱水・乾燥を行い、ポリアリレート樹脂Gを得た。得られたポリアリレート樹脂Gの最終樹脂組成は、仕込組成と同一であった。上記ポリアリレート樹脂G20質量部とポリエーテルイミド(SABIC社製「ULTEM1010」)210質量部とポリビニルピロリドン(東京化成工業株式会社製)20質量部とN−メチル−2−ピロリドン(BASF社製)750質量部とを70℃で10時間攪拌することで製膜原液を調製した。その後、
図1に示す装置における定量ポンプ4を介して紡糸口金6に送液し、2.8g/分でギアポンプを用いて押し出した。紡糸口金は、管状の製膜原液流出孔の外径が1.11mm、その内径が0.60mmのものを用いた。中空糸を紡糸するための内部液として、水を10質量部、N−メチル−2−ピロリドンを90質量部の割合で混合したものに、ポリビニルピロリドン(東京化成工業株式会社製)を1質量部添加したものを1.2g/分の送液速度で流した。送液された製膜原液は50mmのエアギャップを介して水に投入して相分離固化させ、巻き取り機によって20m/分の巻取速度で巻き取った。得られた中空糸膜を溶媒抽出浴10にて水に12時間浸漬して溶媒を抽出し、熱風乾燥機で50℃1時間乾燥処理を行い、実施例13の中空糸膜を得た。評価結果について表2に示す。
【0089】
(実施例14)
ポリエーテルイミド(SABIC社製「ULTEM1010」)130質量部と上記ポリアリレート樹脂G100質量部とポリビニルピロリドン(東京化成工業株式会社製)20質量部とN−メチル−2−ピロリドン(BASF社製)750質量部とを70℃で10時間攪拌することで製膜原液を調製すること以外は実施例13と同様にして実施例14の中空糸膜を得た。評価結果について表2に示す。
【0090】
(比較例1)
ポリエーテルイミド(SABIC社製「ULTEM1010」)250質量部とN−メチル−2−ピロリドン(BASF社製)750質量部とを70℃で10時間攪拌することで製膜原液を調製すること以外は実施例12と同様にして、比較例1の中空糸膜を得た。評価結果について表3に示す。
【0091】
(比較例2)
ポリエーテルイミド(SABIC社製「ULTEM1010」)250質量部とポリビニルピロリドン(東京化成工業株式会社製)20質量部とN−メチル−2−ピロリドン(BASF社製)730質量部とを70℃で10時間攪拌することで製膜原液を調製すること以外は実施例12と同様にして、比較例2の中空糸膜を得た。評価結果について表3に示す。
【0092】
(比較例3)
ポリエーテルイミド(SABIC社製「ULTEM1010」)200質量部とポリビニルピロリドン(東京化成工業株式会社製)20質量部とN−メチル−2−ピロリドン(BASF社製)780質量部とを70℃で10時間攪拌することで製膜原液を調製すること以外は実施例12と同様にして比較例3の中空糸膜を得た。評価結果について表3に示す。
【0093】
(比較例4)
上記ポリアリレート樹脂G100質量部とN−メチル−2−ピロリドン(BASF社製)900質量部とを70℃で4時間攪拌することで製膜原液を調製すること以外は実施例1と同様にして比較例4の中空糸膜を得た。評価結果について表3に示す。
【0094】
(比較例5)
上記ポリアリレート樹脂G200質量部とN−メチル−2−ピロリドン(BASF社製)800質量部とを70℃で4時間攪拌することで製膜原液を調製したところ、製膜原液はゲル化してしまい、中空糸膜を得ることができなかった。
【0095】
(比較例6)
二価フェノール成分を9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン(BPF)としてポリアリレート樹脂Hを得た後、このポリアリレート樹脂H170質量部とN−メチル−2−ピロリドン(BASF社製)830質量部とを70℃で4時間攪拌することで製膜原液を調製すること以外は実施例1と同様にして比較例6の中空糸膜を得た。評価結果について表3に示す。
【0096】
中空糸膜の物性は、次のように評価した。
【0097】
1.中空糸膜の外径、内径、中空糸膜の厚さ
前述のように測定、算出した。
【0098】
2.中空糸膜の引張強度、破断伸度及び弾性率
前述のように測定、算出した。
【0099】
3.中空糸膜のスキン層の厚さ、及び中空糸膜の厚さに対するスキン層厚さの割合
前述のように測定、算出した。なお、実施例1〜5及び比較例1〜3の中空糸膜のスキン層は、外面に形成されていた。また、実施例1〜5及び比較例1〜3の中空糸膜のスキン層以外の部分は、倍率10000倍以下の走査型電子顕微鏡(SEM)画像において細孔の存在が認められる領域(多孔質層)であった。比較例4は、スキン層を有さず、倍率10000倍以下の走査型電子顕微鏡(SEM)画像において細孔の存在が認められる領域(多孔質層)のみからなるものであった。
【0100】
4.25℃下で純水を用いた内圧透水量
前述のように測定、算出した。
【0101】
5.製造直後(初期)の水蒸気分離性能
前述のように、
図4の模式図に示すような中空糸膜モジュールを用いて、測定、算出した。すなわち、外径8mm、内径6mmのナイロン製エアチューブを200mmに切断したものをケース22として使用した。ケース22には、パージエアー排出口24が設けられている。次に、このケース22に中空糸膜20を束ねて入れ、2液混合型ポリウレタン接着剤21を流し込んで両端部50mmをポッティング後、切断し、両端部断面に全ての中空部分が露出した中空糸膜モジュールを作製した。なお、モジュールの一方の端には膜外部を乾燥させるパージエアー管23として、長さ50mm、外径0.4mm、内径0.2mmのシリコンチューブをともにポッティングした。モジュールに含める膜の本数は膜の長さが15cmで、膜の有効内表面積が6.8×10
2cm
2となるように調整した。中空糸膜内部に25℃、露点−4℃の空気を圧力0.5MPa、流量4.0L/分で供給し、モジュールから排出される処理後の空気の露点と、中空糸膜モジュールに導入される前の被処理空気の露点の差を製造直後(初期)の水蒸気分離性能として評価した。空気の露点については、VAISALA社製HMP−234湿度測定機を使用し測定した。製造直後(初期)の水蒸気分離性能は3.0℃以上を合格とした。
【0102】
6.繰り返し使用後の水蒸気分離性能
前述のように測定、算出した。すなわち、「製造直後(初期)の水蒸気分離性能」と同様にして中空糸膜モジュールを作製し、中空糸膜に対して、0MPaから0.9MPaの加減圧を5秒周期で繰り返すことで試験を行い、試験後の水蒸気分離性能を繰り返し使用後の水蒸気分離性能として評価した。なお、繰り返し使用後の水蒸気分離性能は膜の破れの無かったものについて評価した。繰り返し使用後の水蒸気分離性能は2.0℃以上を合格とした。また性能劣化は下記式にて計算される指標を用いて評価した。すなわち、この指標が100に近いほど、性能劣化が小さいといえる。
【0103】
【表1】
【0104】
【表2】
【0105】
【表3】
【0106】
表1〜3から明らかなように、実施例1〜14の中空糸膜は、ポリアリレート樹脂を含む中空糸膜であって、外面にスキン層を有しており、引張強度が7MPa以上、破断伸度が15%以上であり、25℃下で純水を用いた内圧透水量が100L/(m
2・atm/h)未満であり、製造直後の水蒸気分離性能及び圧縮空気を用いた繰り返し使用後の水蒸気分離性能に優れることが明らかとなった。中でも、実施例4〜12の中空糸膜は、前述したA群より選ばれる1種以上の二価フェノール成分と、前述したB群より選ばれる1種以上の二価フェノール成分とを併用するものであったことから、製膜性及び紡糸性に優れたものとしつつ破断伸度が45%以上とより高いものとすることができ、圧縮空気を用いた繰り返し使用後における水蒸気分離性能がより優れたものであった。また、実施例13及び14の中空糸膜は、ポリアリレート樹脂に加えてさらにポリエーテルイミドを含有するものであり、製造直後(初期)の水蒸気分離性能に優れるものであった。
【0107】
一方、比較例1及び2の中空糸膜は、引張強度及び破断伸度が高いものの、ポリアリレートを含まず、製造直後の水蒸気分離性能に劣るものであった。また、比較例3は、比較例2に比して製膜原液におけるポリエーテルイミドの濃度を低くしたものであり、製造直後の水蒸気分離性能は優れるものであったが、ポリアリレートを含まないことから、圧縮空気を用いた繰り返し使用後における水蒸気分離性能に劣るものとなった。また、比較例4は、スキン層を有さないものであることから、製造直後(初期)の水蒸気分離性能を有さず、エアリークし、水蒸気分離膜として使用できないものであった。比較例5は比較例4にスキン層を備えさせるため、ポリアリレート濃度を向上させたものであるが、ポリアリレート樹脂の溶解性が悪く、製膜原液がゲル状となってしまったため中空糸膜を得ることができなかった。比較例6は二価フェノール成分にBPFを使用したポリアリレートにより中空糸膜を作製したが、破断伸度が5%と著しく低く、圧縮空気を用いた繰り返し使用後における水蒸気分離性能に劣るものとなった。