(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6914596
(24)【登録日】2021年7月16日
(45)【発行日】2021年8月4日
(54)【発明の名称】LED点灯装置
(51)【国際特許分類】
H05B 45/345 20200101AFI20210727BHJP
H05B 45/34 20200101ALI20210727BHJP
H01L 33/00 20100101ALI20210727BHJP
【FI】
H05B45/345
H05B45/34
H01L33/00 J
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2017-183710(P2017-183710)
(22)【出願日】2017年9月25日
(65)【公開番号】特開2019-61783(P2019-61783A)
(43)【公開日】2019年4月18日
【審査請求日】2020年9月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】000100562
【氏名又は名称】アール・ビー・コントロールズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106105
【弁理士】
【氏名又は名称】打揚 洋次
(72)【発明者】
【氏名】中島 征士
【審査官】
安食 泰秀
(56)【参考文献】
【文献】
特開2016−51525(JP,A)
【文献】
特開2012−84349(JP,A)
【文献】
特開2010−279248(JP,A)
【文献】
特開2017−123255(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 45/00
H01L 33/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
点灯操作がされるとLEDに直流電圧を印加してLEDを所定の光度で発光させるLED点灯装置であって、LEDに印加される電圧を可変することによってLEDに流れる電流値を制御する定電圧制御部を備え、この定電圧制御部にLEDが所定の光度で発光するための電流値を予め設定しておき、上記点灯操作がされると、この定電圧制御部はLEDに流れる電流が予め設定された電流値になるように定電流制御するものにおいて、上記定電流制御部は、上記点灯操作がされる時点で、肉眼ではLEDが発光していることが認識できない程度の微弱な電流をLEDに流し、上記点灯操作がされるとLEDに流れる電流値をこの微弱な電流値から上記予め設定された電流値に増加させることを特徴とするLED点灯装置。
【請求項2】
上記定電流制御部は、上記微弱な電流が流れる状態でLEDの両端に印加される電圧を、消灯操作時に補正することを特徴とする請求項1に記載のLED点灯装置。
【請求項3】
上記定電流制御部は、上記微弱な電流をLEDに流している状態で所定時間以内に点灯操作がされない場合にはLEDへの電流を遮断すると共に、LEDへの電流が遮断されている状態で点灯操作がされると、LEDに上記微弱電流が流れる状態に定電流制御し、続いてLEDの電流値を上記予め設定した電流値まで増加させることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のLED点灯装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、点消灯スイッチなどによって点灯操作がされると、LEDに流れる電流値が予め設定された電流値になるようにLEDに印加される電圧を調節する定電流制御を行うLED点灯装置に関する。
【背景技術】
【0002】
LEDの光度、すなわち明るさはLEDに流れる電流にほぼ比例する。そのため、LEDの点灯時の光度を設定するためには、LEDに流れる電流を予め設定する必要がある。LEDに流れる連流値を簡易的に設定するためにはLEDに対して電流制限用の抵抗体を接続する場合もあるが、光度を正確に設定したい場合や、LEDの特性の経年変化が生じても光度を一定に保持したい場合には、定電流制御が行われる。この定電流制御とは、LEDに流れる電流値を検知してLEDの両端に印加される電圧値をフィードバック制御することによってLEDに流れる電流値を予め設定した電流値になるように制御する方式である(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013−25927号公報(段落[0019]、
図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の定電流制御ではLEDに流れる電流値を検知してフィードバック制御しているため、点灯操作がされるとLEDに流れる電流値がゼロの状態から電流値が予め設定された電流値になるまでLEDの両端電圧を上昇させていく。そのため、点灯操作時ではLEDには電流が流れていないので、定電流制御部は電圧を急激に上昇させ、連動して、LEDに流れる電流値も急激に上昇する。定電流制御であるからその急激に上昇した電流値が予め設定された電流値に到達した時点で両端電圧の上昇を止めてその時点での電圧を維持すればよいが、定電圧制御部内の応答性に起因する遅延などによって電圧の上昇が止まらず上昇し続ける状態が発生する。電圧が上昇し続けるとLEDに流れる電流値が予め設定した電流値を超えるので、定電流制御部はLEDに印加される電圧を下げる制御を行い、LEDに流れる電流値は予め設定された電流値に落ち着くので、LEDは設定した光度で光り続ける。
【0005】
このような挙動をするため、点灯操作時の直後には一瞬ではあるが規定の光度よりも明るく光り、その後に設定された光度に落ち着くことになる。この点灯操作直後の一瞬の明るすぎる状態が気になる場合があり、その状態を解消することが望まれる。
【0006】
そこで本発明は、上記の問題点に鑑み、点灯操作直後に明るすぎる状態が発生しないLED点灯装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために本発明によるLED点灯装置は、点灯操作がされるとLEDに直流電圧を印加してLEDを所定の光度で発光させるLED点灯装置であって、LEDに印加される電圧を可変することによってLEDに流れる電流値を制御する定電圧制御部を備え、この定電圧制御部にLEDが所定の光度で発光するための電流値を予め設定しておき、上記点灯操作がされると、この定電圧制御部はLEDに流れる電流が予め設定された電流値になるように定電流制御するものにおいて、上記定電流制御部は、上記点灯操作がされる時点で、肉眼ではLEDが発光していることが認識できない程度の微弱な電流をLEDに流し、上記点灯操作がされるとLEDに流れる電流値をこの微弱な電流値から上記予め設定された電流値に増加させることを特徴とする。
【0008】
点灯操作がされる前の状態、すなわち消灯状態として認識される状態でLEDに肉眼では発光していると認識しない程度の微弱電流を流しておくことによって、点灯操作がされた後の定電流制御をする際に、電流値がゼロであるというフィードバックがされない。
【0009】
ところで、LEDに微弱な電流を流すためにLEDの両端に印加する電圧は経年変化などによって変化することがあり、その電圧値が一定であり補正しなければ、LEDにその電圧を印加しても電流が流れない状態が発生するおそれがある。そこで、上記定電流制御部は、上記微弱な電流が流れる状態でLEDの両端に印加される電圧を、消灯操作時に補正することが望ましい。
【0010】
なお、点灯操作がされる時点で微弱とはいえ電流を流し続けると無駄な電力が消費される。この無駄な電力の消費を無くしたい場合には、上記定電流制御部は、上記微弱な電流をLEDに流している状態で所定時間以内に点灯操作がされない場合にはLEDへの電流を遮断すると共に、LEDへの電流が遮断されている状態で点灯操作がされると、LEDに上記微弱電流が流れる状態に定電流制御し、続いてLEDの電流値を上記予め設定した電流値まで増加させればよい。
【発明の効果】
【0011】
以上の説明から明らかなように、本発明は、点灯操作時点でLEDに微弱な電流を流しておくことによって、点灯操作直後にLEDが規定の光度以上の明るさで一瞬光る現象の発生を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図4】LEDへの電流遮断状態で点灯操作がされた際の制御を示すフロー図
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1を参照して、1は直流電源であり、LED2を発光させるための電源である。点消灯スイッチ6をオフの状態からオンの状態に切り替えると、マイコン5がその点灯操作を検知してトランジスタ51をPWM制御によってパルス信号により周期的にオンにする。すると、LED2の両端には直流電源1に由来する電圧が印加されてLED2に電流が流れてLED2が発光する。
【0014】
LED2の明るさである光度はLED2に流れる電流にほぼ比例する。そのため、LED2に対して直列に抵抗3を接続し、分圧点mの電圧をマイコン5に取り込むことによってマイコン5はLED2に流れる電流値を検知することができるように構成した。マイコン5はLED2の光度を一定に保持するため、LED2に流れる電流が予め設定された値になるようにトランジスタ51のオン時間のデューティ比を調節して定電流制御を行う。マイコン5とトランジスタ51とによって定電流制御部4が構成される。
【0015】
図2を参照して、LED2の両端に印加される順方向の電圧をゼロの状態から徐々に増加させると、順方向電圧(もしくは点灯電圧)Vfを超えるまでは順方向の電流がほとんど流れず、従ってLED2は発光しない。両端電圧がVfを超えるとLED2に電流が流れはじめ、それに伴ってLED2は発光を開始する。
【0016】
従来の定電圧制御であれば、目標とする発光状態がAの場合、電流がIaになるように定電流制御されるが、点灯開始時には電流がゼロの状態であるから、LED2の両端電圧は応答性の遅延などによってVaを超えてVbまで増加する。このBの状態では電流がIbであるため、Aの状態よりBの状態の光度が大きく、すなわち予定している明るさよりもさらに明るく発光する。ただし、定電流制御ではLED2に流れる電流値をIaに保持するため、点灯直後はBの状態であっても、すぐにAの状態になる。本発明ではこのBの状態になることなく、点灯操作がされると直ちにAの状態になるように定電流制御を行う。
【0017】
図3を参照して、本発明による定電流制御を説明する。上記マイコン5内にはVfより若干高い電圧を記憶値Vmemとして記憶している。そこで、点消灯スイッチ6によって点灯操作がされると(S1)、定電流制御部4はLED2の両端電圧を
図2のCに示す状態、すなわち、LED2の両端電圧がVmemになるように定電流制御を行う。その状態ではLED2に電流値Icが流れて厳密には発光するが、光度がきわめて小さいのでLED2が発光していることは肉眼では認識できない。
【0018】
このようにLED2が通電状態にあると、続いてLED2に流れる電流値がIaになるように定電流制御を行う(S3)。このように電流値をIaに増加させる際に既にLED2には電流値Icが流れる通電状態であるので、
図2のBに示す状態にオーバーランせずにAの状態になる。
【0019】
点消灯スイッチ6がオフになると(S4)、LED2を消灯させるが、その際に完全にLED2を消灯させるのではなく、
図2のCの状態にする。すなわち、LED2の両端電圧をゼロにするのではなく、上記Vmemにする(S5)。ただし、この記憶されているVmemは経年変化等により継続して補正する必要がある。
【0020】
そこで、LED2の両端電圧をVmemにした状態でLED2に電流が流れているか(I=ON)を検知して(S6)、もしその状態でLED2に電流が流れていない状態であれば、両端電圧Vに最小単位の電圧Vminを昇圧してLED2に電流が流れるまで昇圧を繰り返す(S6、S7)。一方、LED2に電流が流れている状態であれば、逆に電流が流れなくなるまで両端電圧Vを最小単位Vminずつ降圧し、LED2に電流が流れなくなるまでこの降圧を繰り返す(S8、S9)。そして、LED2に電流が流れなくなるまで両端電圧Vが降圧されたら、その電流が流れなくなった両端電圧VにVminを足した電圧を新たなVmemとして記憶する(S10)。この新たなVmemは次回点消灯スイッチ6がオンになった際にS2で用いる新たな記憶値になる。
【0021】
ただし、次に点消灯スイッチ6がオンになるまでLED2には微弱ではあるが電流が流れ続けることになる。そこで、次に点消灯スイッチ6がオンになるまでに所定時間がセットされたタイマがカウントアップすると(S11)、両端電圧をゼロにしてLED2には全く電流が流れないようにした(S12)。
【0022】
このようにLED2に全く電流が流れない状態で点消灯スイッチ6がオンされた際の制御を
図4に示す。点消灯スイッチ6がオンになると(S101)、LED2の両端電圧が上記S10で格納した新たなVmemになるように制御し(S102)、その状態でLED2に電流が流れているか否かをチェックする(S103)。もしLED2に電流が流れていない状態であれば、LED2に電流が流れるまで両端電圧をVminずつ昇圧していき(S103、S104)、LED2に電流が流れ始めると、上記S3からの制御プロセスを行うようにした。
【0023】
なお、本発明は上記した形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変更を加えてもかまわない。
【符号の説明】
【0024】
1 直流電源
2 LED
4 定電流制御部