(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来技術においては、負極材料としてシリコン粒子を用いる場合、その充放電における電気容量を増大させることができるが、一方で、シリコン粒子内にリチウムを吸蔵・放出して、シリコン粒子が体積変動し、又は破壊されることになる。その結果、充放電のサイクル特性が維持できないという問題が存在している。
【0008】
例えば、上述の特許文献1及び2において開示されているシリコン粒子の場合、高温の合成と採集工程を行う必要があるため、負極材料としてのシリコン粒子を得るまでの製造工程が極めて複雑になる。その結果、生産性の低下を招いたり、製造コスト高になることが避けられない。また、特許文献3において開示されている技術は、シリコン粒子の一部が、例えば膨張収縮によって電気的に孤立しないように配慮されている点で有効であるが、改善の余地はまだまだ残されている。すなわち、シリコン粒子を用いたリチウムイオン電池の開発は未だ途上にある。
【0009】
本願発明者らは、上述の技術的課題を踏まえ、負極材料として利用する材料をシリコン粒子のみに拘泥することなく、リチウムイオン電池のメカニズムに適応し得る、より高性能の負極材料を見出すべく、鋭意研究と分析を重ねた。
【0010】
その結果、本願発明者らは、特異な態様において、ある特徴的なシリコン微細粒子を、黒鉛を用いて形成された内部空間に取り込み、それを囲って内在化させ、いわば一体化ないし合体させることにより(以下、「複合化」ともいう)、その特徴的なシリコン微細粒子の有用性を顕著に高めた、より高性能の負極材料を実現し得るとの知見を得た。本発明は、上述の視点に基づいて創出された。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、従来のシリコン粒子を用いた負極材料が抱えていた充放電のサイクル特性等に関する諸問題の少なくとも一部を解決するとともに、炭酸ガスの削減効果も期待されているリチウムイオン電池について、より高性能のリチウムイオン電池の負極材料及びその製造方法の実現に大きく貢献するものである。
【0012】
本発明の1つのリチウムイオン電池の負極材料は、モード径及びメジアン径が30nm以下の体積分布を有するシリコン微細粒子及び/又は該シリコン微細粒子の凝集物あるいは集合物であって、少なくとも複層花弁状又は鱗片状に折重なった状態の該凝集物あるいは該集合物を含み、かつ黒鉛が、該シリコン微細粒子及び/又は該凝集物あるいは該集合物の少なくとも一部を囲う。
【0013】
上述の負極材料は、シリコン微細粒子及び/又は複層花弁状又は鱗片状に折重なった状態の該シリコン微細粒子の凝集物あるいは集合物の少なくとも一部が黒鉛によって囲われた状態の複合物を含んでいる。加えて、シリコン微細粒子及び/又は該凝集物あるいは該集合物は、モード径及びメジアン径が30nm以下の体積分布を有する非常に微細な凝集物あるいは集合物である。そのため、詳しいメカニズムは未だ明らかではないが、上述の該凝集物あるいは該集合物が備える複層花弁状又は鱗片状の形状の特異性と相まって、該シリコン微細粒子及び/又は該凝集物あるいは該集合物が黒鉛によって囲われることにより、該シリコン微細粒子及び/又は該凝集物あるいは該集合物の自由度をある程度抑制することが、該黒鉛と該シリコン微細粒子及び/又は該黒鉛と該凝集物あるいは該集合物との協働性を高めることにつながる。その結果、この負極材料を採用することにより、充放電が繰り返されても充放電容量の変化が少ない、換言すれば充放電のサイクル特性の良いリチウムイオン電池を実現することができる。あるいは、充放電容量の増大を実現し得る。
【0014】
また、本発明の1つのリチウムイオン電池の負極材料の製造装置は、結晶性シリコンを粉砕することにより、モード径及びメジアン径が30nm以下の体積分布を有するシリコン微細粒子及び/又は該シリコン微細粒子の凝集物あるいは集合物であって、少なくとも複層花弁状又は鱗片状に折重なった状態の該凝集物あるいは該集合物を形成する粉砕部と、黒鉛が、該シリコン微細粒子及び/又は該凝集物あるいは該集合物の少なくとも一部を囲うことによって、前述の黒鉛と該シリコン微細粒子とを含む複合体、あるいは該黒鉛と該凝集物あるいは該集合物とを含む複合体を形成する、複合体形成部と、を備える。
【0015】
このリチウムイオン電池の負極材料の製造装置によれば、粉砕部によって、モード径及びメジアン径が30nm以下の体積分布を有する非常に微細な、シリコン微細粒子及び/又は該シリコン微細粒子の凝集物あるいは集合物を形成する。ここで、少なくとも複層花弁状又は鱗片状に折重なった状態の該凝集物あるいは該集合物が形成される。加えて、この製造装置は、少なくとも一部の該シリコン微細粒子及び/又は該凝集物あるいは該集合物を黒鉛が囲うことによって、その黒鉛と該シリコン微細粒子とを含む複合体、あるいはその黒鉛と該凝集物あるいは該集合物とを含む複合体を形成する、複合体形成部をさらに備えている。そのため、詳しいメカニズムは未だ明らかではないが、上述の該凝集物あるいは該集合物が備える複層花弁状又は鱗片状の形状の特異性と相まって、該シリコン微細粒子及び/又は該凝集物あるいは該集合物が黒鉛によって囲われることにより、該シリコン微細粒子及び/又は該凝集物あるいは該集合物の自由度をある程度抑制することが、該黒鉛と該シリコン微細粒子及び/又は該黒鉛と該凝集物あるいは該集合物との協働性を高めることにつながる。その結果、この製造装置によれば、充放電が繰り返されても充放電容量の変化が少ない、換言すれば充放電のサイクル特性の良いリチウムイオン電池の負極材料、あるいは充放電容量を増大し得るリチウムイオン電池の負極材料の製造に貢献し得る。
【0016】
また、本発明の1つのリチウムイオン電池の負極材料の製造方法は、結晶性シリコンを粉砕することにより、モード径及びメジアン径が30nm以下の体積分布を有するシリコン微細粒子及び/又は該シリコン微細粒子の凝集物あるいは集合物であって、少なくとも複層花弁状又は鱗片状に折重なった状態の該凝集物あるいは該集合物を形成する粉砕工程と、黒鉛が、該シリコン微細粒子及び/又は該凝集物あるいは該集合物の少なくとも一部を囲うことによって、該黒鉛と該シリコン微細粒子とを含む複合体、あるいは該黒鉛と該凝集物あるいは該集合物とを含む複合体を形成する、複合体形成工程と、を含む。
【0017】
このリチウムイオン電池の負極材料の製造方法によれば、粉砕工程によって、モード径及びメジアン径が30nm以下の体積分布を有する非常に微細な、シリコン微細粒子及び/又は該シリコン微細粒子の凝集物あるいは集合物を形成する。ここで、少なくとも複層花弁状又は鱗片状に折重なった状態の該凝集物あるいは該集合物が形成される。加えて、この製造方法は、少なくとも一部の該シリコン微細粒子及び/又は該凝集物あるいは該集合物を黒鉛が囲うことによって、その黒鉛と該シリコン微細粒子とを含む複合体、あるいはその黒鉛と該凝集物あるいは該集合物とを含む複合体を形成する、複合体形成工程をさらに備えている。そのため、詳しいメカニズムは未だ明らかではないが、上述の該凝集物あるいは該集合物が備える複層花弁状又は鱗片状の形状の特異性と相まって、該シリコン微細粒子及び/又は該凝集物あるいは該集合物が黒鉛によって囲われることにより、該シリコン微細粒子及び/又は該凝集物あるいは該集合物の自由度をある程度抑制することが、該黒鉛と該シリコン微細粒子及び/又は該黒鉛と該凝集物あるいは該集合物との協働性を高めることにつながる。その結果、この製造装置によれば、充放電が繰り返されても充放電容量の変化が少ない、換言すれば充放電のサイクル特性の良いリチウムイオン電池の負極材料、あるいは充放電容量を増大し得るリチウムイオン電池の負極材料の製造に貢献し得る。
【0018】
ところで、上述の各発明における結晶性シリコンには、単結晶シリコンのみならず、多結晶シリコンが含まれる。また、上述の各発明における結晶性シリコンとして金属性のシリコンを選択することもできる。なお、上述の各発明の結晶性シリコンが、例えばシリコンウェハの生産過程におけるシリコンの切削加工において通常は廃棄物とされるシリコンの切粉あるいはシリコンの切削屑又は研磨屑であることは、製造コストの低減、環境への負荷の低減、資源の再利用等の多様な観点から、非常に好適な一態様である。
【0019】
従って、製造コストの低減、原材料の調達の容易性、環境への負荷の低減、及び/又は資源の活用性等の観点から言えば、結晶性シリコンの切粉又は切削屑を含み、かつ黒鉛が、該切粉又は該切削屑の少なくとも一部を囲うリチウムイオン電池の負極材料も、他の採用し得る一態様である。また、黒鉛が、結晶性シリコンの切粉又は切削屑の少なくとも一部を囲うことによって、該黒鉛と該切粉又は該切削屑とを含む複合体を形成する複合体形成部を備えるリチウムイオン電池の負極材料の製造装置も、他の採用し得る一態様である。加えて、黒鉛が、結晶性シリコンの切粉又は切削屑の少なくとも一部を囲うことによって、該黒鉛と該切粉又は該切削屑とを含む複合体を形成する複合体形成工程を含むリチウムイオン電池の負極材料の製造方法も、他の採用し得る一態様である。
【0020】
さらに、上述の各発明においては、複層花弁状又は鱗片状に折重なった状態の上述の凝集物あるいは集合物が、より確度高く、又はより容易に、リチウムイオンを蓄え易く、また放出し易くなるために、上述の凝集物あるいは上述の集合物、あるいは上述の切粉又は上述の切削屑の表面上の少なくとも一部が炭素によって覆われたリチウムイオン電池の負極材料を採用することは、他の好適な一態様である。リチウムイオンを蓄え易さ、又は放出し易さの観点から言えば、上述の凝集物あるいは上述の集合物、あるいは上述の切粉又は上述の切削屑の表面上の少なくとも一部を覆う炭素を形成する被覆形成部を備えるリチウムイオン電池の負極材料の製造装置を採用することは、他の好適な一態様である。同様に、上述の凝集物あるいは上述の集合物、あるいは上述の切粉又は上述の切削屑の表面上の少なくとも一部を覆う炭素を形成する被覆形成工程を備えるリチウムイオン電池の負極材料の製造方法を採用することは、他の好適な一態様である。
【0021】
また、上述の各発明においては、黒鉛、より積極的に表現すれば黒鉛のいわば「層」(例えば、グラフェン又はグラフェンシート)が、上述の非常に微細であって特異な形状を有する凝集物あるいは集合物を囲っている。しかしながら、その黒鉛が、シリコン微細粒子及び/又は該凝集物あるいは該集合物を必ずしも完全に包囲しているわけではない。従って、上述の複合物は、該凝集物あるいは該集合物が黒鉛の中に内包されたものというよりは、むしろ黒鉛によって囲われたものと言える。
【発明の効果】
【0022】
本発明の1つのリチウムイオン電池の負極材料によれば、充放電が繰り返されても充放電容量の変化が少ない、換言すれば充放電のサイクル特性の良いリチウムイオン電池を実現することができる。あるいは、充放電容量の増大を実現し得る。また、本発明の1つのリチウムイオン電池の負極材料の製造装置によれば、充放電が繰り返されても充放電容量の変化が少ない、換言すれば充放電のサイクル特性の良いリチウムイオン電池の負極材料、あるいは充放電容量を増大し得るリチウムイオン電池の負極材料の製造に貢献し得る。加えて、本発明の1つのリチウムイオン電池の負極材料の製造方法によれば、充放電が繰り返されても充放電容量の変化が少ない、換言すれば充放電のサイクル特性の良いリチウムイオン電池の負極材料、あるいは充放電容量を増大し得るリチウムイオン電池の負極材料の製造に貢献し得る。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の実施形態を、添付する図面に基づいて詳細に述べる。なお、この説明に際し、全図にわたり、特に言及がない限り、共通する部分には共通する参照符号が付されている。また、図中、各実施形態の要素のそれぞれは、必ずしも互いの縮尺比を保って示されてはいない。また、各図面を見やすくするために、一部の符号が省略され得る。
【0025】
<第1の実施形態>
図1は、本実施形態のリチウムイオン電池の負極材料の製造工程を示すフロー図である。また、
図2は、本実施形態のリチウムイオン電池の負極材料の製造装置及び製造工程を示す概要図である。
【0026】
本実施形態のリチウムイオン電池の負極材料の製造方法、及びその負極材料を備えたリチウムイオン電池の製造方法は、例えば太陽電池等の半導体製品に使用されるシリコンウェハの生産過程におけるシリコンの切削加工において通常は廃棄物とされるシリコンの切粉あるいはシリコンの切削屑又は研磨屑(以下、「シリコンの切粉等」又は「切粉等」ともいう)を出発材料の一例とした、各種の工程を備える。また、切粉等には、廃棄対象となったシリコンウェハを公知の粉砕機によって粉砕した微細な屑も含まれる。
図1に示すように、本実施形態のリチウムイオン電池の製造方法は、以下の(1)、(2)、(5)、及び(6)の工程、あるいは、以下の(1)、(2)、(4)、(5)、及び(6)の工程を含む。また、本実施形態のリチウムイオン電池の製造方法は、採用し得る他の一態様として、以下の(3)の工程をさらに含むことができる。
(1)洗浄工程(S1)
(2)粉砕工程(S2)
(3)酸化膜除去工程(S3)
(4)被覆形成工程(S4)
(5)複合体形成工程(S5)
(6)負極形成工程(S6)
【0027】
また、
図2に示すように、本実施形態のリチウムイオン電池の負極材料(又は負極)の製造装置100は、主として、洗浄機(洗浄兼予備粉砕機)10、粉砕機20、乾燥機(図示しない)、ロータリーエバポレータ40、シリコン微細粒子及び/又はその凝集物あるいは集合物(以下、代表して「シリコン微細粒子等」とも表現する)の表面上の少なくとも一部を覆う炭素を形成する被覆形成部60、少なくとも一部のシリコン微細粒子等を黒鉛が囲うことによって、その黒鉛とシリコン微細粒子等とを含む複合体を形成する複合体形成部70、及びリチウムイオン電池の負極形成工程の一部を担う混合部80を備える。なお、上述の各構成のうち、被覆形成部60を含まないリチウムイオン電池の負極材料(又は負極)の製造装置100も、採用し得る他の一態様である。
【0028】
また、本実施形態のリチウムイオン電池の負極材料(又は負極)の製造装置100は、採用し得る他の一態様として、酸化膜除去槽50、遠心分離機58を備えることができる。なお、上記の粉砕機20のみ、あるいは洗浄機10及び粉砕機20を、本実施形態における粉砕部という。
【0029】
(1)洗浄工程(S1)
本実施形態の洗浄工程(S1)においては、例えば、単結晶又は多結晶のシリコン、すなわち、結晶性シリコンの塊又はインゴット(n型の結晶性シリコンの塊又はインゴット)の切削過程において形成されるシリコンの切粉等が洗浄される。代表的なシリコンの切粉等は、シリコンのインゴットが公知のワイヤ等(代表的には、固定砥粒ワイヤ)によって削り出される切粉等である。従って、本実施形態においては、従来、云わば廃材とされてきたシリコンの切粉等を出発材として、リチウムイオン電池の負極材料を構成するシリコン微細粒子等を形成するため、製造コストの低減、原材料の調達の容易性、環境への負荷の低減、及び/又は資源の活用性の観点で優れている。
【0030】
本実施形態の洗浄工程(S1)は、主として、上述のシリコンの切粉等の形成過程において付着する有機物、代表的には、切削過程で使用するクーラント剤及び添加剤等の有機物の除去を目的とする。本実施形態においては、
図2に示すように、まず、洗浄対象となる切粉等1を秤量した後、その切粉等1と所定の第1液体、並びにボール11が、有底円筒形のポット13a内に導入される。蓋13bを用いてポット13a内を密閉にした後、洗浄機(洗浄兼予備粉砕機)10であるボールミル機が有する円柱状の2本の回転体15を回転させることによって、回転体15上のポット13aを回転させる。その結果、ポット13a内において、洗浄対象となる切粉等1を第1液体中に分散させることにより切粉等1の洗浄、及び予備的な粉砕処理が行われる。
【0031】
ここで、本実施形態のボールミル機は、ポット13a及び蓋13bに収められた鋼球、磁器製ボール、玉石及びその類似物をボール11(粉砕媒体)とし、ポット13a及び蓋13bを回転させることによって物理的な衝撃力を与える粉砕機である。また、上述の第1液体の好適な例は、アセトンである。また、より具体的な一態様においては、例えば、シリコンの切粉等の100グラム(g)に対してアセトン300ミリリットル(mL)を添加し、ボールミル機(本実施形態においては、MASUDA社製、Universal BALL MILL)の回転体15上に乗せられたポット13a及び蓋13b内で約1時間撹拌することにより、シリコンの切粉等をアセトン中に分散させた。なお、ボールミル機のボール種は、粒径φ10ミリメートル(mm)のアルミナボールと粒径φ20mmのアルミナボールであった。なお、本実施形態の洗浄工程(S1)においては、ボールミル機内において、シリコンの切粉等を第1液体中で予備粉砕及び撹拌することによって分散処理を行っている。従って、単に第1液体に浸漬させるだけの処理よりも、洗浄効率を格段に高めることになるため、リチウムイオン電池の負極特性の向上、特に充放電サイクル特性の向上の観点で好適なシリコン粒子を得ることが可能となる。
【0032】
洗浄工程(S1)の後、蓋13bを開けてシリコン粒子を第1液体とともに排出した後、公知の減圧濾過手段により、第1液体は吸引ろ過にて除去されて廃液となる。一方、残ったシリコン粒子は、公知の乾燥機内において乾燥される。なお、必要に応じて、乾燥処理後に得られたシリコン粒子を、同一工程によって再び洗浄機(洗浄兼予備粉砕機)10内において予備粉砕及び洗浄が行われる。なお、洗浄工程(S1)において採用され得る他の洗浄方法の例は、RCA洗浄法を用いた洗浄、又は水(純水を含む)を用いた洗浄である。
【0033】
(2)粉砕工程(S2)
その後、粉砕工程(S2)においては、洗浄されたシリコン粒子に所定の第2液体を添加して、ビーズミル機内においてシリコン粒子の粉砕処理が行われる。従って、本実施形態においては、前述のボールミル機の後、換言すれば、前述のボールミル機による粉砕の後に用いられるビーズミル機によって、洗浄工程(S1)を経たシリコン粒子がさらに細かく粉砕されることになる。
【0034】
本実施形態の第2液体の好適な例は、IPA(イソプロピルアルコール)である。粉砕工程の前処理として、第2液体と洗浄工程(S1)で得られたシリコン粒子をポット13a内に、重量比で、第2液体が95%に対してシリコン粒子を5%となるように収めた後、洗浄機(洗浄兼予備粉砕機)10のポット13aおよび蓋13bを回転させることによって予備粉砕処理が行われる。予備粉砕処理されたシリコン粒子を含むスラリーを開口部180ミクロンのメッシュに通すことによって比較的粗い粒子が取り除かれた後、得られたシリコン粒子を含むスラリーを、粉砕機20のビーズミル(本実施形態においては、アシザワ・ファインティング社製、スターミルLMZ015)を用いてさらに微粉砕処理する。より具体的には、粒子径180ミクロン以上のシリコン切粉が除去されたシリコン切粉を含むスラリーを、粉砕機20の導入口21へ投入し、粉砕機20で微粉砕処理を行いながら又は該処理後に、排出口24側のフィルタ25へと導く。また、この処理によって微粉砕化が不十分な場合には、ポンプ28を用いてスラリーを粉砕機20の導入口21側へ戻して再度の微粉砕処理を行えるように循環させることによって、微粉砕処理を行うこともできる。具体的なビーズミル機のビーズ種の一例は、粒径φ0.5mmのジルコニアビーズである。微粉砕処理されたシリコン粒子を含むスラリーを回収した後、減圧蒸留を自動で行うロータリーエバポレータ40を用いて第2液体を除去することにより、微粉砕処理された結果物としてのシリコン微細粒子等が得られる。
【0035】
なお、本実施形態においては、粒径φ0.5mmのジルコニアビーズを約450g導入し、回転数2900rpm、4時間の微粉砕処理が行われることによって、シリコン微細粒子等を得ることができる。また、粉砕工程(S2)においては、ボールミル、ビーズミル、ジェットミル、衝撃波粉砕機の群からなる粉砕機のうちの上述以外のいずれか、又は2種以上の組み合わせによって粉砕処理を行うことも、採用し得る他の一態様である。また、粉砕工程(S2)において用いられる粉砕機として、自動の粉砕機のみならず手動の粉砕機が採用されても良い。但し、確度高く、後述する複層花弁状又は鱗片状に折重なった状態の、シリコン微細粒子の凝集物あるいは集合物を形成する観点から言えば、ビーズミルによる処理からなる粉砕工程(S2)、又はビーズミルによる処理を含む粉砕工程(S2)が採用されることが好ましい。
【0036】
また、公知のライカイ機(代表的なライカイ機として、株式会社石川工場社製、型式20D型)を用いて、上述の粉砕工程(S2)によって得られたシリコン微細粒子等をさらに解砕することは、採用し得る他の好適な一態様である。この解砕処理により、リチウムイオン電池の負極を形成する際の分散性が改善されるため、リチウムの吸蔵・放出によって負極が破壊されることが確度高く防止され又は抑制されるという効果が得られる。
【0037】
(3)酸化膜除去工程(S3)
本実施形態においては、好適な一態様として酸化膜除去工程(S3)が行われる。ただし、この酸化膜除去工程(S3)が行われなくても、本実施形態の効果の少なくとも一部の効果が奏される。
【0038】
本実施形態の酸化膜除去工程(S3)においては、粉砕工程(S2)によって得られたシリコン微細粒子等2を、フッ化水素酸又はフッ化アンモニウム水溶液に接触させる処理が行われる。粉砕工程(S2)によって得られたシリコン微細粒子等2を、フッ化水素酸又はフッ化アンモニウム水溶液中に浸漬することにより分散させる。具体的には、酸化膜除去槽50において、シリコン微細粒子等2を、フッ化水素酸又はフッ化アンモニウム水溶液55中に撹拌器57を用いて分散させることによりシリコン微細粒子等2の表面の酸化物(主として、酸化シリコン)が除去される。
【0039】
その後、遠心分離機58によって、表面の酸化物の一部又は全部が除去されたシリコン微細粒子等とフッ化水素酸水溶液とが分離される。その後、シリコン微細粒子等をエタノール溶液等の第3液体中に浸漬する。第3液体を除去することにより、当初形成されていた表面の酸化物(又は酸化膜)の一部又は全部が除去されたシリコン微細粒子等が得られる。なお、シリコン微細粒子等2の表面に存在し得る酸化物の除去処理を行わない場合は、シリコン微細粒子等は、後述する被覆形成工程(S4)、複合体形成工程(S5)、及び負極形成工程(S6)による処理が行われる。
【0040】
なお、本実施形態の酸化膜除去工程(S3)においては、シリコン微細粒子等をフッ化水素酸又はフッ化アンモニウム水溶液に浸漬することによってシリコン微細粒子等にフッ化水素酸を接触させているが、その他の方法によってシリコン微細粒子等にフッ化水素酸又はフッ化アンモニウム水溶液を接触させる工程も採用し得る。例えば、いわゆるシャワーのようにフッ化水素酸水溶液をシリコン微細粒子等に対して散布することも、採用し得る他の一態様である。
【0041】
(4)被覆形成工程(S4)
本実施形態においては、好適な一態様として被覆形成工程(S4)が行われる。ただし、この被覆形成工程(S4)が行われなくても、本実施形態の効果の少なくとも一部の効果が奏される。従って、既に述べたとおり、粉砕工程(S2)の後、又は酸化膜除去工程(S3)の後に、被覆形成工程(S4)を行わずに、次に示す(5)複合体形成工程(S5)が行われることも、採用し得る他の一態様である。
【0042】
本実施形態においては、酸化膜除去工程(S3)を経た、又は経ていないシリコン微細粒子等の表面の一部又は全部を炭素の膜によって被覆する被覆形成工程が行われる。従って、本実施形態の被覆形成工程(S4)を経たシリコン微細粒子等は、その表面上の少なくとも一部が炭素によって覆われているため、炭素によって覆われていないシリコン微細粒子等に比べて厚みが増すことになる。なお、本実施形態の炭素が導電性を備えることによって、導電性を有する負極材料を形成することができる。また、例えば、その膜厚が数nm〜数μmの炭素によってシリコン微細粒子等を覆うことによって、薄い厚みの負極を形成するのみならず、比較的厚い負極の形成が容易になる。なお、
図3は、本実施形態の被覆形成工程(S4)を経た、シリコン微細粒子等(一部の拡大図)及び/又はその凝集物あるいは集合物(一部の拡大図)の一例のTEM(透過型電子顕微鏡)像である。
図3において示される結晶性シリコンは、主として、結晶の面方位(111)(単に、「Si(111)」又は「(111)」とも表記する。他の面方位の表記についても同じ。)が観察された。
【0043】
加えて、例えば、炭素によってシリコン微細粒子等を覆うことによる負極全体としての内部応力の緩和、より微視的には個別のシリコン微細粒子等の内部応力の緩和に寄与し得る。その結果、リチウムイオン電池の製造をより容易にすることができるとともに、リチウムイオン電池の性能(例えば、充放電のサイクル特性)の向上にも寄与し得る。
【0044】
また、表面上の少なくとも一部が炭素によって覆われたシリコン微細粒子等を用いてリチウムイオン電池の負極材料を形成することにより、炭素によって覆われていないシリコン微細粒子等に比べて充電容量値及び放電容量値を増加させることも可能となる。例えば、本願発明者らの研究によれば、炭素によって覆われていないシリコン微細粒子等の場合、例えば、負極材料の厚みが約30μmである場合は、充電容量値及び放電容量値が、500(mAh/g)未満である。しかしながら、表面上の少なくとも一部が炭素によって覆われたシリコン微細粒子等を用いることにより、充電容量値及び放電容量値が、2倍以上(代表的には、約3〜約5倍)に増加させることができる。
【0045】
ところで、本実施形態の被覆形成工程(S4)において、シリコン微細粒子等の表面の一部又は全部(換言すれば、その表面上の少なくとも一部)を炭素の膜によって被覆する手段は、特に限定されない。例えば、化学気相成長法の一例である熱CVD法によってシリコン微細粒子等2の表面上の少なくとも一部を炭素によって覆う方法を採用することができる。具体的には、シリコン微細粒子等2を有機物ガス及び/又はその蒸気を含有する雰囲気において、約600℃以上約1200℃以下で加熱することによって、シリコン微細粒子等2の表面上の少なくとも一部を炭素の膜によって被覆することができる。従って、化学気相成長装置の一例である熱CVD装置は、本実施形態の被覆形成工程(S4)において採用し得る被覆形成部60の一態様である。また、熱CVD法において採用され得る材料(又は原料)の例は、メタン、エタン、アセチレン、エチレン、プロパン、ブタン、ブテン、ペンタン、イソブタン、ヘキサンの群から選択される1種又は2種以上の炭化水素、及び/又は、1種又は2種以上の公知の芳香族炭化水素である。なお、銅又は銅合金を触媒として採用することにより、約400℃でもアセチレンを熱分解し得る点は、処理温度の低温化に寄与しうる。
【0046】
上述のとおり、代表的には、炭化水素ガスを、加熱されたシリコン微細粒子等2上又はその近傍において熱分解させて炭素化することにより、シリコン微細粒子等2の表面上の少なくとも一部をその炭素の膜によって被覆することが、本実施形態において適切な炭素の膜の一例を実現するとともに、生産性及び工業性に優れた手法であるといえる。なお、化学気相成長法の他の一例である減圧熱CVD法又はプラズマCVD法も、適宜採用され得る。
【0047】
また、シリコン微細粒子等2の表面上の少なくとも一部を炭素の膜によって被覆する方法の他の例は、次のとおりである。まず、公知の(塩素化ポリエチレンエラストマー等)の有機化合物、又は該有機化合物と黒鉛粉末とを混合した混合物を、被覆形成部60内において、少なくとも本実施形態の洗浄工程(S1)及び粉砕工程(S2)によって処理されたシリコン微細粒子等2に付着又は吸着させる。その後、該有機化合物を熱分解する温度まで加熱し、該有機化合物を炭化させることにより、表面上の少なくとも一部が炭素(代表的には、グラフェン、グラファイト、及び/又は無定形炭素)によって覆われたシリコン微細粒子等2を形成することができる。なお、一旦形成された該シリコン微細粒子等2を窒素雰囲気下又は水素雰囲気下で、例えば400℃〜1200℃にて焼成する工程を追加的に、及び/又は事前に実施することも、本実施形態の変形例の一態様である。なお、シリコン微細粒子等2の表面上に酸化膜が形成されることを確度高く防止、抑制、又は除去し得る観点から言えば、シリコン微細粒子等2を水素雰囲気下で加熱することが好ましい。
【0048】
また、その他の公知の手段を用いて、表面上の少なくとも一部が炭素によって覆われたシリコン微細粒子等2を形成することも、採用し得る別の一態様である。例えば、公知のカーボンブラックの製造方法(ファーネス法又はチャネル法)によって形成された炭素膜を利用することも可能である。なお、ファーネス法は、コールタールを蒸留して得られるクレオソート油を乱流拡散させた状態の所定のチャンバー内においてクレオソート油の部分燃焼を行った後、飛沫を水冷する方法である。また、チャネル法は、例えば天然ガスを燃焼させて形成した炎をチャンネル鋼の冷却面に衝突させることによって、炭素を析出させる方法である。但し、石油由来の硫黄成分が含まれることになるため、そのような不純物成分が混入され難い方法である、上述の熱CVD法を採用することがより好ましい。また、上述の各方法を採用する際に、例えばシリコン微細粒子等に対して、適宜、公知の機械構造を採用して運動エネルギーを与えることによって、シリコン微細粒子等2及び/又はその凝集物あるいは集合物の表面上の少なくとも一部を炭素の膜を用いて被覆する方法を採用することは、シリコン微細粒子等2及び/又はその凝集物あるいは集合物の表面上に、より均質に(例えば、厚み及び/又は密度において均一性良く)炭素の膜を形成することが可能となるため、好適な一態様である。より具体的には、シリコン微細粒子等2を収容するチャンバー又は管を回転させながら、及び/又は、シリコン微細粒子等2及び/又はその凝集物あるいは集合物に対して超音波振動を与えながら、シリコン微細粒子等2及び/又はその凝集物あるいは集合物の表面上の少なくとも一部を炭素の膜を用いて被覆する方法を採用することは、シリコン微細粒子等2及び/又はその凝集物あるいは集合物の表面上に、より均質に炭素の膜を形成することが可能となるため、好適な一態様である。
【0049】
なお、被覆形成工程(S4)を行う場合の第1の実施形態においては、負極材料又は負極の一部を担うシリコン微細粒子等2について、シリコン(Si)を1としたときの炭素(C)の重量比が0.1であったが、シリコン(Si)を1としたときの炭素(C)の重量比が0.05以上0.37未満であれば、安定的であって、かつ充電容量値及び放電容量値が高いリチウムイオン電池を得ることができる。
【0050】
また、本発明者がさらに詳細に分析した結果、TEM(透過型電子顕微鏡)像によって、シリコン(Si)を1としたときの炭素(C)の重量比が0.1のときの、炭素(C)がシリコン(Si)に付着している部分の膜厚は、約2nm〜約3nmであった。また、シリコン(Si)を1としたときの炭素(C)の重量比が0.16のときの、炭素(C)がシリコン(Si)に付着している部分の膜厚は、約5nm〜約10nmであった。また、シリコン(Si)を1としたときの炭素(C)の重量比が0.21のときの、炭素(C)がシリコン(Si)に付着している部分の膜厚も、約5nm〜約10nmであった。加えて、シリコン(Si)を1としたときの炭素(C)の重量比が0.37のときの、炭素(C)がシリコン(Si)に付着している部分の膜厚は、約50nm〜約90nmであった。従って、シリコン(Si)に付着している部分の炭素(C)の膜厚が1nm以上50nm未満、特に、該膜厚が、2nm以上10nm以下であれば、安定的であって、かつ充電容量値及び放電容量値が高いリチウムイオン電池を得ることができる。
【0051】
また、シリコン微細粒子及び/又はその凝集物あるいは集合物の表面上の少なくとも一部が炭素によって覆われていない(つまり、被覆形成工程(S4)を経ていない)リチウムイオン電池の充電容量値及び放電容量値よりも、被覆形成工程(S4)を経たものを採用した方が、2倍以上(代表的には約3倍)高い充電容量値及び放電容量値を有し得る。
【0052】
(5)複合体形成工程(S5)
上述のとおり、粉砕工程(S2)の後、又は酸化膜除去工程(S3)の後に、被覆形成工程(S4)を経て、又は被覆形成工程(S4)を経ずに、複合体形成工程(S5)が行われる。本実施形態の複合体形成工程(S5)は、少なくとも一部のシリコン微細粒子等2を黒鉛が囲うことによって、その黒鉛とシリコン微細粒子等2とを含む複合体を形成する工程である。
【0053】
具体的には、まず、シリコン微細粒子等2と、黒鉛(代表的には、薄片状の黒鉛、又は膨張黒鉛)とが、複合体形成部70内に導入される。なお、本実施形態の薄片状の黒鉛、又は膨張黒鉛は、公知の方法において開示される方法によって形成され得る。
【0054】
また、本実施形態においては、粉砕工程(S2)が行われているため、モード径及びメジアン径が30nm以下の体積分布を有する非常に微細な、シリコン微細粒子の凝集物あるいは集合物(シリコン微細粒子等2)が形成される。加えて、該凝集物あるいは該集合物は、複層花弁状又は鱗片状に折重なった状態のシリコン微細粒子の凝集物あるいは集合物である。そのような非常に微細なシリコン微細粒子等2が採用されるため、シリコン微細粒子等2と、黒鉛とを混合し、シリコン微細粒子等2を、黒鉛を用いて形成された内部空間に取り込み、それを囲って内在化させ、いわば一体化ないし合体させる場合の複合体形成部70の一例として、粉砕機20において用いられたビーズミル機と同様のビーズミル機を採用し得る。その他の複合体形成部70の例は、公知の乾式処理又は公知の湿式処理と、高速回転衝撃式粉砕機に代表され粉砕機とを併用する機器群である。但し、実質的な工程数を低減する観点から言えば、シリコン微細粒子等2と、黒鉛とを複合する際には、複合体形成部70として、上述のビーズミル機のみ又はビーズミル機を少なくとも含む複合処理装置、あるいは高速回転衝撃式粉砕機を含む複合処理装置を採用することが好ましい。
【0055】
なお、特に、鱗片状のシリコン微細粒子及び/又はその凝集物あるいは集合物は、その形状の特異性から、シリコン微細粒子等2を黒鉛(特に、膨張黒鉛)の適度な距離を有する層間に取り込まれ易くなるため、及び/又は該黒鉛によって囲われ易くするため、黒鉛とシリコン微細粒子等2とを複合体形成部70に導入したときの黒鉛とシリコン微細粒子等2との複合化に有利である。加えて、鱗片状のシリコン微細粒子及び/又はその凝集物あるいは集合物が被覆形成工程(S4)を経たものを採用することは、黒鉛(特に、膨張黒鉛)の適度な距離を有する層間にシリコン微細粒子等2をより確度高く取り込み易くなること、及び/又は該黒鉛によってシリコン微細粒子等2を囲い易くなることから好適である。また、上述のとおり、より高い充電容量値及び放電容量値を有し得る観点からも、鱗片状のシリコン微細粒子及び/又はその凝集物あるいは集合物が被覆形成工程(S4)を経たものを採用することは、好適な一態様である。
【0056】
複合体形成工程(S5)を行うことにより、上述の、複層花弁状又は鱗片状に折重なった状態の凝集物あるいは集合物を有する、非常に微細なシリコン微細粒子等2が、黒鉛によって囲われた状態を形成し得る。本実施形態においては、シート状の黒鉛によってシリコン微細粒子等2が、いわば取り込まれるように黒鉛のエッジ部分が折り畳まれる過程(代表的には、「球形化」)を必ずしも経る必要はないが、そのような過程を経た上で、シリコン微細粒子等2が黒鉛によって囲われた状態を形成することも採用し得る一態様である。
【0057】
(6)負極形成工程(S6)
本実施形態のリチウムイオン電池の負極材料(又は負極)の製造装置100は、粉砕工程(S2)の後、又は酸化膜除去工程(S3)の後に、被覆形成工程(S4)によって処理された又は処理されなかった負極材料としての、シリコン微細粒子等の少なくとも一部が黒鉛によって囲われたものと、負極の一部を構成する部材(例えば、銅箔)とを結着材(例えば、アンモニウムカルボキシルメチルセルロース(CMC)及びスチレンブタジエンゴム(SBR)、あるいは、アンモニウムカルボキシルメチルセルロース(CMC)及びポリビニルアルコール(PVA))を用いて混合する混合部80を備えている。この混合部80によって形成される合剤層を用いて負電極が形成される。
【0058】
<その他の工程>
なお、下記の(A)〜(D)の工程によって得られたシリコン微細粒子等は、例えば、各シリコン微細粒子等の結晶子径の個数分布及び/又は体積分布のバラつきを軽減するために分級され得る。
(A)洗浄工程(S1)、粉砕工程(S2)、及び複合体形成工程(S5)
(B)洗浄工程(S1)、粉砕工程(S2)、酸化膜除去工程(S3)、及び複合体形成工程(S5)
(C)洗浄工程(S1)、粉砕工程(S2)、被覆形成工程(S4)、及び複合体形成工程(S5)
(D)洗浄工程(S1)、粉砕工程(S2)、酸化膜除去工程(S3)、被覆形成工程(S4)、及び複合体形成工程(S5)
【0059】
<第1の実施形態において得られたシリコン微細粒子等の分析結果>
1.SEM像及びTEM像よるシリコン微細粒子等の解析
【0060】
図4Aは、第1の実施形態の粉砕工程(S2)後のシリコン微細粒子及び/又はその凝集物あるいは集合物の一例のSEM(走査型電子顕微鏡)像である。また、
図4Bは、第1の実施形態の粉砕工程(S2)後における、拡大されたシリコン微細粒子及び/又はその凝集物あるいは集合物の一例のSEM像を示す図である。また、
図4Cは、第1の実施形態における、(a)シリコン微細粒子の凝集物あるいは集合物の他の例のSEM像を示す図、及び(b)(a)の一部の拡大図である。加えて、
図5は、第1の実施形態のシリコン微細粒子の透過電子顕微鏡(TEM)像を示す図である。
【0061】
図4Aに示すように、個別のシリコン微細粒子のみならず、Y1及びY2に示すシリコン微細粒子及び/又はその凝集物あるいは集合物が確認された。大変興味深いことに、さらに詳細に分析をすると、
図4B、並びに
図4C(a),(b)のZ部分に示すように、シリコン微細粒子又はその凝集物は、いわば薄層状のシリコン微細粒子が複層花弁状又は鱗片状に折重なった状態の凝集物あるいは集合物であることが確認できた。なお、より詳しく観察すれば、例えば、1つ又は一群の鱗片状のシリコン微細粒子の幅(短径)を1としたときの長さ(長径)の範囲は、3.3〜12.9であった。
【0062】
また、個別のシリコン微細粒子等に着目した
図5に示すTEM像から、もう一つの興味深い知見が得られた。具体的には、
図5における白線で囲っている領域が示す個別のシリコン微細粒子等は、結晶性、すなわち単結晶シリコンであることが確認できた。加えて、シリコン微細粒子等の少なくとも一部は、断面視において約2nm〜約10nmの大きさの不定形の多角形の結晶子であることが確認できた。なお、
図5においては、白線で囲っている各領域に、結晶の面方位が示されている。
【0063】
2.X線回折法によるシリコン微細粒子等の結晶子径分布の解析
図6は、第1の実施形態のシリコン微細粒子等のSi(111)方向の結晶子径に対する、(a)個数分布における結晶子径分布と、(b)体積分布における結晶子径分布とを示すグラフである。
図6は、粉砕工程(S2)後のシリコン微細粒子等の結晶子径分布を、X線回折法を用いて解析することによって得られた結果を示している。
図6(a)及び
図6(b)は、いずれも、横軸が結晶子径(nm)を表し、縦軸は、頻度を表している。
【0064】
図6(a)及び
図6(b)の結果から、個数分布においては、モード径が1.6nm、メジアン径(50%結晶子径)が2.6nmであった。また、体積分布においては、モード径が6.3nm、メジアン径が9.9nmであった。従って、個数分布においてはモード径であってもメジアン径であっても5nm以下であり、より詳細には3nm以下の値が実現されていることが確認された。なお、体積分布においては、モード径であってもメジアン径であっても少なくとも50nm以下であり、特に30nm以下、より狭義には20nm以下であることが確認されたことは特筆に値する。さらに、
図6においては、10nm以下という極めて小さい値が実現されていることが確認された。
【0065】
図6(a)及び
図6(b)の結果より、ビーズミル法を用いた粉砕工程(S2)後に得られるシリコン微細粒子等は、平均の結晶子径が約20nm以下、より具体的には、10nm以下を実現する、約9.8nmであることが確認できた。なお、酸化膜除去工程(S3)後のシリコン微細粒子等の結晶子径分布も、
図6とほぼ同様である。
【0066】
従って、
図6の結果と
図4の各図の結果とを合わせて解析すれば、少なくとも粉砕工程(S2)後又は酸化膜除去工程(S3)後のシリコン微細粒子等の凝集物あるいは集合物は、いわば長径約100nm以下の範囲のいわば薄層状のシリコン微細粒子等が、複層花弁状又は鱗片状に折重なった状態であるといえる。また、シリコン微細粒子等は、
図5及び
図6から分かるように、主として長径が10nm以下の結晶子から構成されている。
【0067】
また、本実施形態のシリコン微細粒子等は、
図6に示すように、1nm以下の結晶子径のシリコン微細粒子等を含んでいることが分かる。また、興味深いことに、本実施形態のシリコン微細粒子等の体積分布における平均結晶子径は、約10nmであることも確認された。この数値は、非常に小さい値であるといえる。また、上述のとおり、さらに調査を進めることによって、そのシリコン微細粒子等の見かけの体積径として約100nm以下の範囲にあることが確認された。特に、長径が5nm以下の結晶子径の、極微細なシリコン粒子を多数含むことによって、後述するリチウムイオン電池の負極材料として用いるシリコン微細粒子等によって導き出される充放電のサイクル特性をより確度高く向上させるものである。また、前述の極微細なシリコン粒子に表面の少なくとも一部が炭素によって覆われているため、より高い充電容量値及び放電容量値、並びに優れた充放電のサイクル特性を実現することができる。
【0068】
3.X線回折法によるシリコン微細粒子等の結晶子の面方位の解析
図7(a)は、第1の実施形態の粉砕工程(S2)前のシリコン微細粒子及び/又はその凝集物あるいは集合物のX線回折測定の結果(P)及び粉砕工程(S2)後のシリコン微細粒子及び/又はその凝集物あるいは集合物のX線回折測定の結果(Q)を、広い角度範囲において解析した結果である。また、
図7(b)は、
図7(a)の結果(P)の一部を拡大したものであり、第1の実施形態の粉砕工程(S2)後のシリコン微細粒子及び/又はその凝集物あるいは集合物のX線回折測定の結果を限定された角度範囲において解析した結果(R)である。なお、
図7(b)内に示されたC(002)面及びC(003)面の各ピーク強度は、約1wt%〜約3wt%のグラファイトの微粒子がシリコン微細粒子群又はシリコン微細粒子の凝集物あるいは集合物内に含まれていることを示している。なお、一例としてのC(002)面のグラファイトの微粒子の大きさは、約50nm以下、より具体的には、約35nmであり、C(003)面のグラファイトの微粒子の大きさは、約100nm以下、より具体的には、約75nmであった。
【0069】
図7(a)及び(b)に示すように、第1の実施形態の粉砕工程(S2)前の2θ=28.4°付近のSiの結晶面(111)に帰属する回折ピークに比べて、粉砕工程(S2)後のSi(111)に帰属する回折ピークは、その半値幅が大きくなっていることが確認された。なお、粉砕工程(S2)後のSi(111)ピークの半値幅から、シェラーの式を用いて計算された平均結晶子径は、9.8nmであった。また、大変興味深いことに、粉砕工程(S2)後の2θ=28.4°付近のSi(111)に帰属する回折ピークの強度は、その他の回折ピークの強度(例えば、Si(220)又はSi(311)のピーク強度)よりも大きいことが明らかとなった。なお、粉砕工程(S2)後のシリコン微細粒子の結晶格子のSi(111)の配列間隔は、
図5に示したとおり、0.31nm(3.1Å)である。
【0070】
上記の各解析結果を踏まえると、本実施形態の粉砕工程(S2)後のシリコン微細粒子等については、主として面方位が(111)である結晶性のシリコン微細粒子等が、複層花弁状又は鱗片状に多重に折重なった状態の凝集物あるいは集合物であるといえる。
【0071】
そうすると、本実施形態の粉砕工程(S2)後又は酸化膜除去工程(S3)後のシリコン微細粒子及び/又はその凝集物あるいは集合物をリチウムイオン電池の負極材料の一部として用いることによって、リチウムイオン電池の正極材料中から電離したリチウムイオン(Li
+)が負極に到達したときに、リチウムイオン(Li
+)が複層花弁状又は鱗片状に多重に折重なった状態の凝集物あるいは集合物の襞部間隙に入り込み易く、また出易いという特有の効果が奏され得る。
【0072】
加えて、本実施形態においては、上述の複層花弁状又は鱗片状に折重なった状態のシリコン微細粒子の凝集物あるいは集合物の少なくとも一部を、黒鉛が囲っている。従って、複層花弁状又は鱗片状に折重なった状態の該凝集物あるいは該集合物の存在によって、リチウムイオンが蓄えられ易く、また放出され易い負極材料又は負極が得られる。加えて、該凝集物あるいは該集合物が備える複層花弁状又は鱗片状の形状の特異性と相まって、それらが黒鉛によって囲われることにより、該凝集物あるいは該集合物の自由度をある程度抑制することが、黒鉛と該凝集物あるいは該集合物との協働性を高めることにつながるため、むしろリチウムイオンの移動状態の高度な安定性を実現し得ることになる。その結果、この負極材料を採用することにより、充放電が繰り返されても充放電容量の変化が少ない、換言すれば充放電のサイクル特性の良いリチウムイオン電池を実現することができる。あるいは、充放電容量の増大を実現し得る。
【0073】
<第1の実施形態の変形例>
第1の実施形態のうち、洗浄工程(S1)のみが行われた結果として得られるシリコンの切粉等(より具体的には、結晶性シリコンの切粉又は切削屑)を、粉砕工程(S2)を行うことなく、一例として複合体形成部70を用いた複合体形成工程(S5)によって複合体を形成する処理を行うことは、採用し得る変形例の一つである。なお、第1の実施形態と同様に、酸化膜除去工程(S3)が洗浄工程(S1)の後に行われ得る。また、第1の実施形態と同様に、被覆形成工程(S4)、すなわち、前述の切粉又は前述の切削屑の表面上の少なくとも一部を覆う炭素を形成する、一例として被覆形成部60を用いた被覆形成工程が、洗浄工程(S1)の後、又は、洗浄工程(S1)と酸化膜除去工程(S3)の後に行われ得る。
【0074】
この変形例においては、上述のとおり、黒鉛が、洗浄工程(S1)のみによって得られるシリコンの切粉等の少なくとも一部を囲う。また、この変形例においては、そのシリコンの切粉等と、黒鉛(代表的には、薄片状の黒鉛、又は膨張黒鉛)とが、第1の実施形態において用いられる複合体形成部70内に導入される。その後、第1の実施形態の複合体形成工程(S5)と同様の処理が行われることにより、シリコンの切粉等の少なくとも一部が黒鉛によって囲われた複合物が形成される。
【0075】
この変形例が採用された場合であっても、第1の実施形態の効果と同様の、又は少なくとも一部の効果が奏され得る。
【0076】
<第2の実施形態>
本実施形態のリチウムイオン電池は、次に示す(1)〜(3)の態様のシリコン切粉等又はシリコン微細粒子を黒鉛が囲ったものを、負極材料として用いている。なお、負極材料以外の構成は、従来のCR2032型のコインセル構造リチウムイオン電池の構成と同様である。
(1)複層花弁状又は鱗片状に折重なった状態のシリコン微細粒子及び/又はシリコン微細粒子の凝集物あるいは集合物の少なくとも一部を、黒鉛が囲ったもの。
(2)(1)において、シリコン微細粒子及び/又は該凝集物あるいは該集合物の表面上の少なくとも一部が炭素によって覆われたもの。
(3)結晶性シリコンの切粉又は切削屑の少なくとも一部を、黒鉛が囲ったもの。
【0077】
図8は、本実施形態のリチウムイオン電池500の概要構成図である。本実施形態のリチウムイオン電池500は、CR2032型コインセルの容器510内に、負極材及び負極材料514に電気的に接続する負電極512と、正極材及び正極材料518に電気的に接続する正電極516と、負極材及び負極材料514と正極材及び正極材料518とを電子的に絶縁するセパレータ520と、電解液530とを備える。また、本実施形態のリチウムイオン電池500は、充放電を実現するために、負電極512及び正電極516につながる電源540と抵抗550を備えた外部回路を有している。
【0078】
また、本実施形態のリチウムイオン電池500の製造方法は、次のとおりである。
【0079】
負極の製造方法については、まず、第1の実施形態において作製した、シリコン微細粒子等の少なくとも一部を黒鉛によって囲ったもの、又は、表面上の少なくとも一部が炭素によって覆われたシリコン微細粒子等の少なくとも一部を黒鉛によって囲ったもの(以下、総称して、「負極活物質」という。)約0.3gを、1wt%CMCバインダー水溶液、SBRバインダー水分散液(JSR株式会社製、TRD2001)からなる約10mL(ミリリットル)の溶液中に分散させる。
【0080】
本実施形態においては、乾燥重量比で、シリコン微細粒子等、カーボンブラック、CMCバインダー水溶液、SBRバインダー水分散液の順に、67:11:13:9、あるいは、50:25:20:5となるように配合する。また、本実施形態の1つの変形例においては、乾燥重量比で、シリコン微細粒子等、カーボンブラック、CMCバインダー水溶液、PVAバインダー水分散液の順に、50:25:20:5となるように配合する。
【0081】
次に、メノウ乳鉢を用いて混合調製したスラリーを、厚さ15μmであって約9cm(縦)×10cm(横)の銅箔の一面上に、乾燥後約30μm〜約200μmの厚みとなるように塗布した後、ホットプレート上にて大気中、80℃、約1時間の乾燥処理を行う。その後、上述の銅箔を乾燥スラリーとともに電池規格CR2032型コインセル対応の直径が11.3mmの大きさの円形に打ち抜くことにより、作用極を形成する。この作用極の重量を測定した後、グローボックス内で、120℃、6時間の真空加熱により再度乾燥処理したものを、銅箔からなる負電極512の内面に張り付けることにより、本実施形態の負極が製造される。
【0082】
次に、正極については、ハーフセル構造のリチウムイオン電池を用いて負極材料の特性を評価するため、リチウム基板を直径13mmの円状に打ち抜いたものを、正電極516として採用した。なお、リチウムイオン電池の正極については、上述の正電極516の代わりに公知の正電極を採用することができる。
【0083】
また、本実施形態のセパレータ520は、多孔質のポリプロレン・シートである。加えて、本実施形態の電解液530は、エチレンカーボネート(EC)/ジエチルカーボネート(DEC)を容積比で1/1で混合の溶媒(1L)中に、1モルの六フッ化リン酸リチウム(LiPF
6)を溶解した電解液、あるいは、その電解液にフルオロエチレンカーボネート(FEC)を添加したものであって、CR2032型コインセルの内容積(約1mL)を満たす量以内の量を注入したものである。
【0084】
上述の正極材及び正極材料518、正電極516、負極材及び負極材料514、負電極512、セパレータ520及び電解液530を、CR2032型コインセルの容器510内へ配置する。その後、アルゴン雰囲気のグローブボックス内で、該コインセルの外枠の正電極516と負電極512との間を絶縁した状態で、セパレータ520及び電解液530の各構成材を容器510内に密封することにより、CR2032型コインセルのリチウムイオン電池500を試作した。
【0085】
なお、本実施形態における電解液530を構成する電解溶媒の例は、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)(ポリプロレン・シート)の環状カーボネート、及び、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)等の鎖状カーボネート有機溶媒の混合溶媒である。また、六フッ化リン酸リチウム(LiPF)や四フッ化ホウ酸リチウム(LiBF)などの支持塩を前述の電解溶媒中に溶解させて使用することができる。
【0086】
上述の構造を採用することにより、上述のシリコン微細粒子の存在、あるいは該凝集物あるいは該集合物が備える複層花弁状又は鱗片状の形状の特異性と相まって、それらが黒鉛によって囲われることにより、上述のシリコン微細粒子及び/又は該凝集物あるいは該集合物の自由度をある程度抑制することが、黒鉛と該シリコン微細粒子及び/又は黒鉛と該凝集物あるいは該集合物との協働性を高めることにつながる。その結果、この負極材料を採用することにより、充放電が繰り返されても充放電容量の変化が少ない、換言すれば充放電のサイクル特性の良いリチウムイオン電池を実現することができる。あるいは、充放電容量の増大を実現し得る。
【0087】
<その他の実施形態(1)>
ところで、上述の各実施形態においては、出発材として、単結晶又は多結晶のシリコンの塊又はインゴットの切削過程において形成されるシリコンの切粉等を例示しているが、その他の形態のシリコンの切粉等を出発材とすることも採用し得る他の一態様である。具体的には、シリコンの切粉等は、半導体製品の生産過程におけるシリコンのインゴットの切削加工において必然的に形成されるものに限らず、予め選定した結晶性シリコンのインゴットを切削機で一様に又はランダムに切削して作製することも可能である。また、通常は廃棄物とされるシリコンの切粉やシリコンの研磨屑等のいわゆるシリコン廃材が、上述の各実施形態のシリコン微細粒子等の出発材となり得るが、該シリコン廃材には、ウェハの破片、廃棄ウェハ等を粉砕することによって得られる微細な屑も含まれ得る。さらに、金属性のシリコンの切粉又は金属性のシリコンの研磨屑、あるいは金属性のその他の粒子状のシリコンといった材料を出発材料として用いるシリコン微細粒子等も、採用し得る。
【0088】
<その他の実施形態(2)>
また、上述の各実施形態におけるn型結晶性シリコンの不純物濃度は特に限定されない。また、n型のみならず、p型の結晶性シリコンを採用することもできる。さらに、真正半導体である結晶性シリコンも、上述の各実施形態における結晶性シリコンとして採用し得る。なお、リチウムイオン電池の負極材料内における電子の移動が重視されるため、n型の不純物を含有する結晶性シリコンを用いるのがより好適である。また、上述の
図7(b)に示す、C(002)面及びC(003)面の各ピーク強度が示す約1wt%〜約3wt%のグラファイトの微粒子がシリコン微細粒子等群又はシリコン微細粒子等の集合物内に含まれていることから、これらのグラファイトの一部又は全部が、負極材料の導電性の向上に寄与し得る点を付言する。
【0089】
<その他の実施形態(3)>
また、上述の各実施形態のシリコン微細粒子等及びそれを備えたリチウムイオン電池は、第2の実施形態において紹介したコインセル型式の構造への適用に限定されない。従って、コインセル型式の構造より大きな電気容量のリチウムイオン電池を備える、又は利用する各種デバイス又は装置に適用され得る。
【0090】
<その他の実施形態(4)>
また、上述の第1の実施形態における
図2に示すリチウムイオン電池の負極材料(又は負極)の製造装置100の代替的な装置として、
図9に示すリチウムイオン電池の負極材料(又は負極)の製造装置200が採用されても良い。具体的には、設備の簡素化及び/又は製造コストの低減の観点から、リチウムイオン電池の負極材料(又は負極)の製造装置200においては、シリコンの切削過程で形成されるシリコンの切粉等を洗浄する洗浄機10が、洗浄されたシリコンの切粉等を粉砕することによってシリコン微細粒子等2を形成する粉砕機20を兼ねている態様である。従って、
図9に示す装置/方法においては、例えば、洗浄工程においては比較的大きな径のビーズを用い、粉砕工程においては比較的小さい径のビーズを用いることによって、リチウムイオン電池の負極材料として用いるシリコン微細粒子等2を得ることになる。但し、より確度高く、第1の実施形態において説明したシリコン微細粒子等2を得るためには、第1の実施形態のように、ボールミル機を用いて処理した後のビーズミル機によって、シリコン微細粒子等2を形成することが好ましい。
【0091】
<その他の実施形態(5)>
また、本願発明者らの分析によれば、第2の実施形態における電解液530に添加されたフルオロエチレンカーボネート(FEC)の量が、充電容量値及び放電容量値、並びに充放電サイクルの特性に影響を及ぼし得ることが明らかとなった。これは、負極材料の表面に良好な(例えば、低抵抗及び/又は薄い)SEI(solid electrolyte interface)を形成するためである。
【0092】
上述の各実施形態の開示は、それらの実施形態の説明のために記載したものであって、本発明を限定するために記載したものではない。加えて、各実施形態の他の組合せを含む本発明の範囲内に存在する変形例もまた、特許請求の範囲に含まれるものである。