特許第6914733号(P6914733)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6914733
(24)【登録日】2021年7月16日
(45)【発行日】2021年8月4日
(54)【発明の名称】フォーカルプレンシャッタ及び撮像装置
(51)【国際特許分類】
   G03B 9/36 20210101AFI20210727BHJP
   F16B 5/04 20060101ALI20210727BHJP
【FI】
   G03B9/36 A
   F16B5/04 A
【請求項の数】10
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-106347(P2017-106347)
(22)【出願日】2017年5月30日
(65)【公開番号】特開2018-205329(P2018-205329A)
(43)【公開日】2018年12月27日
【審査請求日】2020年5月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001225
【氏名又は名称】日本電産コパル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137947
【弁理士】
【氏名又は名称】石井 貴文
(72)【発明者】
【氏名】河上 健太
(72)【発明者】
【氏名】植村 潮
【審査官】 ▲うし▼田 真悟
(56)【参考文献】
【文献】 特開2017−045020(JP,A)
【文献】 特開2009−128616(JP,A)
【文献】 特開2016−027362(JP,A)
【文献】 国際公開第2017/204140(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03B 9/36
F16B 5/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
露光用の開口部を有する地板と、
前記開口部を開閉する羽根群と、
前記羽根群に連結されたアームと、
前記アームに連結され、前記アームを介して前記羽根群を駆動する駆動機構部と、を備え、
前記羽根群と前記アームとは、軸部と、0.1mm以下の厚みの頭部とを有する連結具により連結されている、
フォーカルプレンシャッタ。
【請求項2】
前記連結具の頭部の厚みが0.02mm以上である、
請求項1に記載のフォーカルプレンシャッタ。
【請求項3】
前記連結具は、結晶化度が99%以上の金属結晶組織の鍍金が施されている、
請求項1または請求項2に記載のフォーカルプレンシャッタ。
【請求項4】
前記連結具は、結晶化度が略100%の金属結晶組織の鍍金が施されている、
請求項3に記載のフォーカルプレンシャッタ。
【請求項5】
前記金属結晶組織の鍍金は、略摂氏600度の析出硬化温度で1時間以上の析出硬化処理により形成されている、
請求項3または請求項4に記載のフォーカルプレンシャッタ。
【請求項6】
前記金属結晶組織の鍍金は、摂氏570度以上摂氏630度以下の析出硬化温度で、30分以上の析出硬化処理により形成されている、
請求項3または請求項4に記載のフォーカルプレンシャッタ。
【請求項7】
前記金属結晶組織の鍍金は、1時間30分以下の析出硬化処理により形成されている、
請求項6に記載のフォーカルプレンシャッタ。
【請求項8】
前記金属結晶組織の鍍金は、Hvが400以上750以下の硬度になっている、
請求項3から請求項7のいずれか1項に記載のフォーカルプレンシャッタ。
【請求項9】
前記金属結晶組織の鍍金は、Hvが600以上750以下の硬度になっている、
請求項8に記載のフォーカルプレンシャッタ。
【請求項10】
請求項1から請求項9のいずれか1項に記載のフォーカルプレンシャッタを備える撮像装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一態様は、カメラなどの撮像装置に用いられるフォーカルプレンシャッタなどに関する。
【背景技術】
【0002】
羽根群によって開口部(画枠)を開閉することで撮像素子またはフィルムに対する露光を行うフォーカルプレンシャッタには、地板と補助地板との間に形成された羽根室に配置された羽根群を駆動機構部により駆動することで開口部の開閉状態を変化させ、露光が行われる構成となっているものがある。このようなフォーカルプレンシャッタでは、駆動機構部と羽根群とは羽根アームを介して、羽根ダボなどで連結されている。フォーカルプレンシャッタが動作する際には、羽根アームの羽根ダボは、シャッタ地板または補助地板などと当接しながら動作するため、動作時の摩擦により羽根ダボが摩耗する。このような羽根ダボの摩耗を防止するため、例えば、特許文献1には、羽根ダボにニッケルメッキ等の鍍金処理を施す技術が開示されている。また、特許文献2には、駆動ピンの走行に制動力を与えるブレーキレバーの硬度を駆動ピンの硬度よりも高めた構成のシャッタが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−325553号公報
【特許文献2】特開平9−5829号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、近年求められる高画質及び高耐久性を達成するためには、上記特許文献1または特許文献2などの従来の構成では十分でない場合があり、さらなる摩耗対策が必要となってきた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記課題を解決するために次のような手段を採る。なお、以下の説明において、発明の理解を容易にするために図面中の符号等を括弧書きで付記するが、本発明の各構成要素はこれらの付記したものに限定されるものではなく、当業者が技術的に理解しうる範囲にまで広く解釈されるべきものである。
【0006】
本発明の一の手段は、
露光用の開口部を有する地板(1)と、
前記開口部を開閉する羽根群(4、5)と、
前記羽根群に連結されたアーム(6)と、
前記アームに連結され、前記アームを介して前記羽根群を駆動する駆動機構部(8)と、を備え、
前記羽根群と前記アームとは、0.1mm以下の厚みの頭部と軸部とを有する連結具(7)により連結されている、
フォーカルプレンシャッタである。
【0007】
上記構成のフォーカルプレンシャッタによれば、連結具の頭部と、当該頭部に対向する位置に配置された地板などとの間の距離を比較的広く確保することができるため、連結具の頭部と地板などとの接触を低減させることができる。これによって、連結具の頭部及び地板などの摩耗を低減させることができ、摩耗粉の発生を抑制することも可能となる。
【0008】
上記フォーカルプレンシャッタにおいて、好ましくは、
前記連結具の頭部の厚みが0.02mm以上である。
【0009】
上記構成のフォーカルプレンシャッタによれば、連結具の頭部が必要最小限の厚みを有しているため、連結具の頭部の摩耗により羽根群とアームとの連結状態が解除されることなどを防止することができる。
【0010】
上記フォーカルプレンシャッタにおいて、好ましくは、
前記連結具は、結晶化度が99%以上の金属結晶組織の鍍金が施されている。
【0011】
上記構成のフォーカルプレンシャッタによれば、連結具の硬度を高めることができるため、連結具の頭部を0.1mm以下の薄さにしても十分な耐久性を保つことができる。また、羽根群とアームとを連結する連結具の摩耗耐性を高めることができ、フォーカルプレンシャッタを繰り返し動作させても摩耗粉が発生したり、摩耗により連結具がもろくなったりすることを防止することなどが可能となる。
【0012】
特に、連結具の結晶化度を略100%にすると、連結具の摩耗耐性をさらに高めることができるため好ましい。
【0013】
上記フォーカルプレンシャッタにおいて、好ましくは、
前記金属結晶組織の鍍金は、略摂氏600度の析出硬化温度で1時間以上の析出硬化処理により形成されている。
【0014】
上記構成のフォーカルプレンシャッタによれば、比較的に簡易な処理により、鍍金の材料を、結晶化度が略100%の金属結晶組織に変成させることが可能となる。
【0015】
なお、金属結晶組織の鍍金を行う際、摂氏570以上摂氏630度以下の析出硬化温度で、30分以上の析出硬化処理を行ってもよい。このような処理であっても、鍍金の材料を、十分に高い結晶化度を有し、高い硬度の金属結晶組織に変成させることができる。
【0016】
また、析出硬化処理は、1時間30分以下の時間で行っても良い。このような処理であれば、鍍金の材料を略100%の十分に高い結晶化度にすることができる。
【0017】
また、上記フォーカルプレンシャッタにおいて、好ましくは、
前記金属結晶組織の鍍金は、Hvが400以上750以下の硬度になっている。
【0018】
上記構成のフォーカルプレンシャッタによれば、連結具の摩耗耐性をさらに高めることが可能となる。
【0019】
特に、前記金属結晶組織の鍍金は、Hvが600以上750以下の硬度にすることが好ましい。
【0020】
また、本発明は、上記いずれかのフォーカルプレンシャッタを備える、カメラなどの撮像装置を含む。
【0021】
上記構成の撮像装置によれば、連結具の頭部及び地板などの摩耗を低減させることができるため、耐久性の高い装置を構成することができる。また、摩耗粉が発生しづらいため、摩耗粉が撮像素子に付着して撮像した画像の画質が低下することを防止することなどが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1図1は、羽根走行前のフォーカルプレンシャッタの平面図である。
図2図2は、羽根走行後のフォーカルプレンシャッタの平面図である。
図3図3は、フォーカルプレンシャッタのアーム及び羽根群の拡大図である。
図4図4は、アームと羽根群とを連結する羽根ダボ部分の拡大断面図である。
図5図5は、変形例におけるアームと羽根群とを連結する羽根ダボ部分の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明に係る実施形態について、以下の構成に従って図面を参照しながら具体的に説明する。ただし、以下で説明する実施形態はあくまで本発明の一例にすぎず、本発明の技術的範囲を限定的に解釈させるものではない。なお、各図面において、同一の構成要素には同一の符号を付しており、その説明を省略する場合がある。
1.実施形態
2.変形例
3.補足事項
【0024】
<1.実施形態>
本実施形態のフォーカルプレンシャッタは、羽根群とアームとを連結する連結具(例えば羽根ダボ)の頭部が0.1mm以下の厚みになっており、これによって連結具と地板、補助地板、または中間板などとの間隔を広く確保することで連結具及び地板等を摩耗しづらい構成としている点を特徴のひとつとする。以下、本発明の実施形態について具体的に説明する。
【0025】
図1及び図2は、本実施形態のフォーカルプレンシャッタの平面図であって、図1は羽根走行前の状態を示しており、図2は羽根走行後の状態を示している。図3は、本実施形態のフォーカルプレンシャッタのアーム及び後羽根群の拡大図である。図4は、図3におけるAの部分における断面図であり、アームと後羽根群とを連結する羽根ダボ部分の拡大図である。
【0026】
図1図3に示されるように、本実施形態のフォーカルプレンシャッタは、地板1、補助地板2、中間板3、先羽根群4、後羽根群5、アーム6a〜6d、及び駆動機構部8などを含んで構成される。より具体的には、地板1、先羽根群4、アーム6a及び6b、中間板3、後羽根群5、アーム6c及び6d、補助地板2の順に積層されている。アーム6a〜6dと、先羽根群4または後羽根群5とは、羽根ダボ7により、互いに回動可能に連結されている。なお、以下の説明では、先羽根群4及び後羽根群5を総称して羽根群と呼ぶことがある。また、アーム6a〜6dを総称してアーム6と呼ぶことがある。なお、フォーカルプレンシャッタの各構成の積層順は任意に変更可能である。
【0027】
<地板1>
地板1は、フォーカルプレンシャッタの基板部分であって、露光開口(画枠)として機能する矩形状の開口部1aが形成されている。図1及び図2に示されるように、地板1には、開口部1aの側方位置に駆動機構部8が搭載される。
【0028】
<補助地板2>
補助地板2は、地板1と対向する位置に、地板1に対して所定の間隔を隔てて取り付けられる。補助地板2には、地板1に形成された開口部1aと類似した矩形状の開口部2aが形成されている。地板1と補助地板2との間に画定された空間は、中間板3、先羽根群4、及び後羽根群5などが収容される羽根室となる。
【0029】
<中間板3>
中間板3は、上記のように、地板1と補助地板2とにより画定された羽根室に収容される。中間板3には、地板1及び補助地板2にそれぞれ形成された開口部1a及び2aと類似した矩形状の開口部3aが形成さる。中間板3は、羽根室内において先羽根群4と後羽根群5とが収容される空間を区別するために配置される。例えば、地板1と中間板3との間には先羽根群4が配置され、補助地板2と中間板3との間には後羽根群5が配置されることとなる。
【0030】
地板1、補助地板2、及び中間板3に形成された開口部1a、2a、及び3aが重なる領域が、フォーカルプレンシャッタにおける露光用の開口として機能する露光開口(画枠)となる。露光開口の被写体とは逆側には、例えばC−MOSやCCDなどの光電変換素子が撮像素子(図示せず)として配置されている。この光電変換素子は、露光開口及びレンズ等を通過して被写体側から通過してきて光が照射されることで、光を電気信号に変換する機能を有する素子であるが、C−MOSやCCDに限定されるものではない。露光開口(画枠)は、駆動機構部8により駆動された先羽根群4及び後羽根群5が移動することで開閉状態が変化し、露光開口が開放状態のときに被写体側からの光を撮像素子側に通過させる。被写体側からこの露光開口を通過した入射光が、フォーカルプレンシャッタの先に配置された撮像素子に到達し、撮像素子が受光した光を電気信号に変換して制御部(図示せず)などに出力することで、撮像が行われる。なお、上記の撮像素子に代えてフィルムなどが配置されていてもよく、これらの撮像素子やフィルムなどを総称して本発明においては撮像部と呼ぶことがある。
【0031】
<先羽根群4及び後羽根群5>
先羽根群4及び後羽根群5は、それぞれ駆動機構部8により駆動され、開口部1a、2a、及び3aにより画定される露光開口(画枠)を開閉するよう動作する。つまり、先羽根群4及び後羽根群5は、露光開口の開放状態と遮蔽状態とを変化させる。先羽根群4及び後羽根群5は、それぞれ複数枚の短冊状(露光開口より長手方向に細長い矩形状または略矩形状)の羽根により構成され、アーム6a〜6dを介して駆動機構部8に連結される。すなわち、駆動機構部8で発生した動力は、アーム6a〜6dを介して先羽根群4及び後羽根群5に伝達され、これによって先羽根群4及び後羽根群5が走行動作をすることとなる。
【0032】
<アーム6>
アーム6(6a〜6d)は、駆動機構部8と、先羽根群4または後羽根群5とにそれぞれ連結され、駆動機構部8の駆動力を先羽根群4及び後羽根群5に伝達する。より具体的には、アーム6a及び6dは駆動機構部8の駆動ピン(図示せず)に回動可能に連結され、アーム6b及び6cは駆動機構部8には連結されず、地板1に回動可能に連結される。そのため、アーム6a及び6dは駆動機構部8により駆動され、アーム6b及び6cはアーム6a及び6dの動きに同期して動作する。アーム6a及び6bは先羽根群4に連結され、アーム6c及び6dは後羽根群5に連結されている。アーム6には、例えば、それぞれ5つの連結孔が形成されており、1つの連結孔は地板1との連結に用いられており、残りの4つの連結孔は羽根群の連結に用いられている。
【0033】
<羽根ダボ7>
アーム6と羽根群とは、図3及び図4に示されるように、羽根ダボ7で加締められることで連結されている。羽根ダボ7は、例えばリベットなどであって、頭部7aと軸部とを有する。羽根ダボ7の頭部7aは、図4に示されるように、羽根群(後羽根群5または先羽根群4)及びアーム6に対して突出しており、シャッタが動作して羽根群が移動する際に地板1、補助地板2、または中間板3と摩擦することがある。そこで、本実施形態の羽根ダボ7は、羽根ダボ7の頭部7aと、頭部7aが対向する地板1、補助地板2、または中間板3との間隔を比較的広く保ち、地板1、補助地板2、または中間板3と接する頻度を下げるため、頭部7aの厚さを従来よりも薄く構成している。
【0034】
羽根ダボ7の頭部7aの厚みは、羽根ダボ7の鍔部7bから、頭部7aの頂点までの長さA1で定義される。従来のフォーカルプレンシャッタでは、頭部7aの厚みA1は0.15mm〜0.20mm程度であったが、本実施形態では、0.1mmとしている。なお、頭部7aの厚みは厳密に0.1mmである必要はなく、0.02mm以上0.1mm以下程度の厚みで構成すればよい。なお、羽根ダボ7は、本発明の「連結具」の一例である。
【0035】
さらに、本実施形態の羽根ダボ7は、摩擦耐性を高めるため以下の鍍金処理が施されている。
【0036】
<鍍金処理>
羽根ダボ7は、例えば鉄などで製造時(組み立て前)に、無電解ニッケルなどを用いた鍍金が施され、さらに析出硬化のための加熱処理が施されている。羽根ダボ7に対する析出硬化処理は、析出硬化温度を摂氏600度とした1時間以上の加熱処理により実施される。このような析出硬化処理が施された羽根ダボ7は、鍍金部分が、ガラス状組織から、結晶化度100%の金属結晶組織に変成しており、その硬度がHv600〜750程度になっている。
【0037】
なお、羽根ダボ7の鍍金部分は、結晶化度が99%以上であれば鍍金部分の硬度を高くすることができるが、より確実には結晶化度を略100%とすることが好ましい。
【0038】
また、析出硬化処理は、析出硬化温度を摂氏600度の前後30度である摂氏570度以上摂氏630度とし、30分以上1時間30分以下の処理としても良い。析出硬化温度を摂氏570度以上630度以下とすることで、鍍金部分の結晶化に十分な温度としつつ、温度管理を簡易化することができる。また、析出硬化処理は30分程度であっても十分な結晶化度が得られる場合もある。析出硬化温度を30分程度にすると、製造時の処理時間が短くなるため、製造時間の短縮などが可能となる。また、析出硬化処理は1時間30分程度行えば、十分に高い結晶化度が得られる。
【0039】
析出硬化温度の範囲は、摂氏600度の前後10度である摂氏590度以上摂氏610度としても良い。この場合、温度管理も比較的簡易であり、鍍金部分の結晶化に十分な温度とすることができる。
【0040】
このような鍍金処理を施した羽根ダボ7は摩擦耐性が高められており、シャッタ動作の際の摺動時の摩擦でも摩耗や破壊が生じづらくなっている。
【0041】
<駆動機構部8>
駆動機構部8は、地板1上に配置され、電磁石またはバネ等を利用した動力によって、羽根群を動作させるよう構成される。ユーザによって、カメラ等の撮像装置のレリーズが行われると、駆動機構部8が動作し、その動力はアーム6を介して先羽根群4及び後羽根群5に伝達される。これにより、先羽根群4及び後羽根群5が動作(走行)して撮像素子に対する露光が行われる。
【0042】
本実施形態のフォーカルプレンシャッタでは、上記のようにアームと羽根群とを連結する羽根ダボ7の頭部7aを0.1mm以下の厚みとしているため、羽根ダボ7の頭部7aと、当該頭部に対向する位置に配置された地板1などとの間の距離を比較的広く確保することができ、羽根ダボ7の頭部7aと地板1などとの接触を低減させることができる。これによって、羽根ダボ7の頭部7a及び地板1などの摩耗を低減させることができ、摩耗粉の発生を抑制することなどが可能となる。
【0043】
また、本実施形態のフォーカルプレンシャッタでは、羽根ダボ7の頭部7aを0.02mm以上とし、頭部7aが必要最小限の厚みを有しているため、頭部7aの摩耗によって、先羽根群4及び後羽根群5とアーム6との連結状態が解除されることなどを防止することができる。
【0044】
また、本実施形態のフォーカルプレンシャッタでは、上記のような析出硬化処理により、結晶化度が99%以上の金属結晶組織の鍍金が施された羽根ダボ7を用いているため、羽根ダボ7が比較的高い硬度を有し、頭部7aを0.1mm以下の薄さにしても十分な耐久性を保つことができる。また、フォーカルプレンシャッタを繰り返し動作させても摩耗粉が発生したり、摩耗により羽根ダボ7がもろくなったりすることを防止することなどが可能となる。
【0045】
特に、羽根ダボ7の結晶化度を略100%にすると、羽根ダボ7の摩耗耐性をさらに高めることができるため好ましい。
【0046】
また、本実施形態では、羽根ダボ7の金属結晶組織の鍍金は、略600度の析出硬化温度で1時間以上の析出硬化処理により形成されている。これにより、比較的に簡易な処理により、鍍金の材料を、結晶化度が略100%の金属結構組織に変成させることが可能となる。
【0047】
なお、上記の実施形態では、鍍金部分の硬度がHv600〜750程度になっている例を挙げて説明したが、この硬度はHv400〜750程度としてもよい。本実施形態のフォーカルプレンシャッタでは、このように鍍金部分が高い硬度を有する羽根ダボ7を用いているため、摩耗粉が発生したとしても、その摩耗粉の大きさを小さくすることが可能となり、摩耗粉が撮像素子に付着しても撮像した画像の質の低下を防止することができる。
【0048】
<2.変形例>
次に、上記実施形態の変形例について説明する。本変形例では、羽根ダボ7の頭部7aの形状が上記実施形態と異なっており、それ以外の構成は同様であるため、当該相違点についてのみ説明する。
【0049】
図5は、本変形例のアーム6と後羽根群5(または先羽根群4)とを連結する羽根ダボ部分の拡大図である。羽根ダボ7は、頭部7cと軸部とを有する。本実施形態の羽根ダボ7の頭部7cは、頂部に向かってなだらかに湾曲した円弧形状となっている。羽根ダボ7鍔部7bから頂部までの厚みA2は、実施形態1と同様に0.02mm以上0.1mm以下である。
【0050】
本変形例の羽根ダボ7の頭部7cは、上記のような湾曲形状であるため、対向して配置された地板1、補助地板2、または中間板3との接触面積をさらに減らすことができる。これによって、羽根ダボ7の頭部7c、及び地板1、補助地板2、または中間板3の摩耗をさらに抑制することができる。
【0051】
<3.補足事項>
以上、本発明の実施形態についての具体的な説明を行った。上記説明は、あくまで一実施形態としての説明であって、本発明の範囲はこの一実施形態に留まらず、同様の技術思想に基づいて当業者が把握可能な範囲にまで広く解釈されるものである。
【0052】
上記実施形態では、アーム6と羽根群との連結に羽根ダボ7を用いていたが、羽根ダボとは異なる連結具を用いて構成しても良い。
【0053】
また、上記実施形態では、地板1、補助地板2、及び中間板3にそれぞれ矩形状の開口部1a、2a及び3aが形成されている例について説明したが、これらの地板1、補助地板2、及び中間板3に形成される開口部は矩形状、または略矩形状に限定されるものではない。すなわち、これらの開口部は、方形状、または略方形状に形成されてもよいし、その他の形状であってもよい。
【0054】
また、上記実施形態では、先羽根群4及び後羽根群5はそれぞれ複数枚の羽根を有する構成として説明したが、先羽根群4及び後羽根群5はそれぞれ1枚の羽根で構成されてもよい。
【0055】
また、上記実施形態では本発明で特徴的な部分のみについて説明したが、本発明のフォーカルプレンシャッタは、従来のフォーカルプレンシャッタが有する種々の構成をさらに備えている。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明のフォーカルプレンシャッタは、シャッタ動作が繰り返されても摩耗粉が発生したり破壊されたりしづらいカメラなどの撮像装置の構成として利用される。
【符号の説明】
【0057】
1…地板
1a…開口部
2…補助地板
2a…開口部
3…中間板
3a…開口部
4…先羽根群
5…後羽根群
6a〜6d…アーム
7…羽根ダボ
7a、7c…頭部
7b…鍔部
8…駆動機構部
図1
図2
図3
図4
図5