特許第6914879号(P6914879)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6914879
(24)【登録日】2021年7月16日
(45)【発行日】2021年8月4日
(54)【発明の名称】クランプ装置
(51)【国際特許分類】
   F16D 65/18 20060101AFI20210727BHJP
   B23Q 1/28 20060101ALI20210727BHJP
   F16D 63/00 20060101ALI20210727BHJP
   B23Q 5/54 20060101ALN20210727BHJP
   F16D 121/06 20120101ALN20210727BHJP
   F16D 121/16 20120101ALN20210727BHJP
   F16D 125/06 20120101ALN20210727BHJP
【FI】
   F16D65/18
   B23Q1/28 A
   F16D63/00 L
   !B23Q5/54 A
   F16D121:06
   F16D121:16
   F16D125:06
【請求項の数】13
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2018-58660(P2018-58660)
(22)【出願日】2018年3月26日
(65)【公開番号】特開2019-168104(P2019-168104A)
(43)【公開日】2019年10月3日
【審査請求日】2020年8月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003458
【氏名又は名称】芝浦機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091982
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100082991
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 泰和
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【弁理士】
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100118843
【弁理士】
【氏名又は名称】赤岡 明
(74)【代理人】
【識別番号】100141830
【弁理士】
【氏名又は名称】村田 卓久
(74)【代理人】
【識別番号】100199255
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 大幸
(72)【発明者】
【氏名】宮 本 拓 磨
【審査官】 的場 眞夢
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−166278(JP,A)
【文献】 特開2013−121624(JP,A)
【文献】 特開2018−009593(JP,A)
【文献】 特開昭61−278632(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23B 1/00−25/06
B23Q 1/00−1/76
9/00−9/02
F16D 49/00−71/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
クランプ部材をクランプするクランプ装置であって、
第1支持部と、
前記第1支持部に対向する第2支持部と、
前記第1支持部に対し一軸方向に相対移動可能な第1移動体と、
前記第1支持部と前記第1移動体との間に圧縮状態で設けられた第1弾性体と、
前記被クランプ部材を挟んで前記第1移動体に対向し、前記第2支持部に対し前記一軸方向に沿って相対移動可能な第2移動体と、
前記第2支持部と前記第2移動体との間に圧縮状態で設けられた第2弾性体と、を備え、
前記第1移動体と前記第2移動体とは、前記一軸方向に沿って互いに相対移動可能に係合することにより、容積が可変の圧力室を画定し
力流体が通流する流路が、前記第1支持部を貫いて前記圧力室まで延び
前記第1支持部は、前記第1移動体を貫いて前記圧力室まで延在し前記流路を画定する供給管を有する、クランプ装置。
【請求項2】
前記第1移動体と前記第2移動体とは、単一の前記圧力室を画定する、請求項1に記載のクランプ装置。
【請求項3】
前記被クランプ部材は、
前記流路を介して前記圧力流体が前記圧力室に供給されることにより、前記第1移動体及び前記第2移動体によってアンクランプされ、
前記流路を介して前記圧力流体が前記圧力室から除去されることにより、前記第1移動体及び前記第2移動体によってクランプされる、請求項1または2に記載のクランプ装置。
【請求項4】
前記第1支持部は、当該第1支持部に対する前記第1移動体の相対移動量を規制する第1ストッパを有し、
前記第2支持部は、当該第2支持部に対する前記第2移動体の相対移動量を規制する第2ストッパを有する、請求項1〜3のいずれか一項に記載のクランプ装置。
【請求項5】
記第1移動体は、前記一軸方向に延在する筒状部を有し、且つ、前記供給管に沿って前記一軸方向に摺動可能であり、
前記第2移動体は、前記筒状部に沿って前記一軸方向に摺動可能な摺動部を有する、請求項1〜4のいずれか一項に記載のクランプ装置。
【請求項6】
前記第2移動体の前記摺動部は、前記第1移動体の前記筒状部を取り囲む筒形の形状を有し、当該筒状部の外周面上を前記一軸方向に摺動する、請求項5に記載のクランプ装置。
【請求項7】
前記第2移動体の前記摺動部は、前記第1移動体の前記筒状部によって取り囲まれ、当該筒状部の内周面上を前記一軸方向に摺動する、請求項5に記載のクランプ装置。
【請求項8】
前記供給管と前記第1移動体との間に配置された第1シール部材と、
前記筒状部と前記摺動部との間に配置された第2シール部材と、を更に備えた、請求項5〜7のいずれか一項に記載のクランプ装置。
【請求項9】
前記第1弾性体及び前記第2弾性体の少なくとも一方は、前記第1移動体の前記筒状部の中心軸線から等距離で、且つ、当該中心軸線周りに等間隔で配置された、複数の弾性体を含む、請求項5〜8のいずれか一項に記載のクランプ装置。
【請求項10】
前記圧力室は、前記第1移動体の前記筒状部の中心軸線上に存在する、請求項5〜9のいずれか一項に記載のクランプ装置。
【請求項11】
前記第1支持部は、前記第1移動体を前記一軸方向に沿ってガイドする第1ガイド部を有し、
前記第2支持部は、前記第2移動体を前記一軸方向に沿ってガイドする第2ガイド部を有する、請求項1〜10のいずれか一項に記載のクランプ装置。
【請求項12】
前記第1ガイド部は、前記第1移動体の外周を取り囲む第1スリーブ部を有し、
前記第2ガイド部は、前記第2移動体の外周を取り囲む第2スリーブ部を有する、請求項11に記載のクランプ装置。
【請求項13】
前記第1弾性体及び前記第2弾性体の少なくとも一方は、コイルバネを有する、請求項1〜12のいずれか一項に記載のクランプ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クランプ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、工作機械のベッド等に固定されたブレーキ板をクランプすることによって制動を行うクランプ装置が知られている。そのようなクランプ装置の一例が、下記特許文献1に示されている。
【0003】
特許文献1のクランプ装置は、ブレーキ板を挟んで互いに対向配置された一対の支持部と、各支持部により支持された一対のピストン及びブレーキパッドと、を備えた、いわゆる両押しタイプのものである。各支持部とこれに対応するピストンとの間には、ブレーキ板の側とその反対側とに、圧力流体(オイル)が供給される圧力室が1つずつ画定されている。したがって、このクランプ装置では、1つのピストンにつき2つ、合計4つの圧力室が画定されている。そして、所定の油圧回路によって圧力流体が各圧力室に供給されるようになっている。
【0004】
このようなクランプ装置では、圧力流体がブレーキ板の側の各圧力室に供給されると、ピストン及びブレーキパッドがブレーキ板から離反する方向に移動する。その一方、圧力流体がブレーキ板の側とは反対側の各圧力室に供給されると、ピストン及びブレーキパッドがブレーキ板に向かって移動し、やがてブレーキ板がブレーキパッドによってクランプされて制動が行われる。
【0005】
このようなクランプ装置では、全ての圧力室に圧力流体を供給するために、圧力流体の供給回路(流路)を複数に分岐させる必要がある。下記引用文献1のクランプ装置では、圧力室の数に応じて、4つの流路に分岐されている。このように複数の流路が形成される場合、当該流路を形成するためのスペースを確保する必要があるため、装置を小型化することが困難であった。
【0006】
もちろん、装置を小型化するという観点からは、クランプ装置を、例えば、ブレーキ板の片側のみにピストン及びブレーキパッドを配置する片押しタイプとして構成することが考えられる。しかしながら、この場合、大きなクランプ力を得ることが難しい。更に、クランプ時にブレーキ板に撓み変形が生じるため、ブレーキ板の寿命が短くなることが懸念される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2012−166278号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、以上の状況に鑑みて創案されたものである。すなわち、本発明の目的は、小型でありながら、十分なクランプ力を発揮し得る、両押しタイプのクランプ装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、被クランプ部材をクランプするクランプ装置であって、
第1支持部と、
前記第1支持部に対向する第2支持部と、
前記第1支持部に対し一軸方向に相対移動可能な第1移動体と、
前記第1支持部と前記第1移動体との間に圧縮状態で設けられた第1弾性体と、
前記被クランプ部材を挟んで前記第1移動体に対向し、前記第2支持部に対し前記一軸方向に沿って相対移動可能な第2移動体と、
前記第2支持部と前記第2移動体との間に圧縮状態で設けられた第2弾性体と、を備え、
前記第1移動体と前記第2移動体とは、前記一軸方向に沿って互いに相対移動可能に係合することにより、容積が可変の圧力室を画定し
力流体が通流する流路が、前記第1支持部を貫いて前記圧力室まで延び
前記第1支持部は、前記第1移動体を貫いて前記圧力室まで延在し前記流路を画定する供給管を有する、クランプ装置である。
【0010】
前記第1移動体と前記第2移動体とは、単一の前記圧力室を画定して良い。
【0011】
以上のクランプ装置において、前記被クランプ部材は、
前記流路を介して前記圧力流体が前記圧力室に供給されることにより、前記第1移動体及び前記第2移動体によってアンクランプされ、
前記流路を介して前記圧力流体が前記圧力室から除去されることにより、前記第1移動体及び前記第2移動体にクランプされて良い。
【0012】
また、以上のクランプ装置において、前記第1支持部は、当該第1支持部に対する前記第1移動体の相対移動量を規制する第1ストッパを有し、
前記第2支持部は、当該第2支持部に対する前記第2移動体の相対移動量を規制する第2ストッパを有していて良い。
【0013】
以上のクランプ装置において、前記第1支持部は、前記第1移動体を貫いて前記圧力室まで延在し前記流路を画定する供給管を有し、
前記第1移動体は、前記一軸方向に延在する筒状部を有し、且つ、前記供給管に沿って前記一軸方向に摺動可能であり、
前記第2移動体は、前記筒状部に沿って前記一軸方向に摺動可能な摺動部を有していて良い。
【0014】
前記第2移動体の前記摺動部は、前記第1移動体の前記筒状部を取り囲む筒形の形状を有し、当該筒状部の外周面上を前記一軸方向に摺動するようになっていて良い。
【0015】
あるいは、前記第2移動体の前記摺動部は、前記第1移動体の前記筒状部によって取り囲まれ、当該筒状部の内周面上を前記一軸方向に摺動するようになっていて良い。
【0016】
これらのクランプ装置は、前記供給管と前記第1移動体との間に配置された第1シール部材と、
前記筒状部と前記摺動部との間に配置された第2シール部材と、を更に備えていて良い。
【0017】
前記第1弾性体及び前記第2弾性体の少なくとも一方は、前記第1移動体の前記筒状部の中心軸線から等距離で、且つ、当該中心軸線周りに等間隔で配置された、複数の弾性体を含んでいて良い。
【0018】
前記圧力室は、前記第1移動体の前記筒状部の中心軸線上に存在して良い。
【0019】
以上のクランプ装置において、前記第1支持部は、前記第1移動体を前記一軸方向に沿ってガイドする第1ガイド部を有し、
前記第2支持部は、前記第2移動体を前記一軸方向に沿ってガイドする第2ガイド部を有して良い。
【0020】
前記第1ガイド部は、前記第1移動体の外周を取り囲む第1スリーブ部を有し、
前記第2ガイド部は、前記第2移動体の外周を取り囲む第2スリーブ部を有して良い。
【0021】
また、以上のクランプ装置において、前記第1弾性体及び前記第2弾性体の少なくとも一方は、コイルバネを有して良い。なお、この場合、上述した複数の弾性体は、複数のコイルバネということになる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、小型でありながら、十分なクランプ力を発揮し得る、両押しタイプのクランプ装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の一実施の形態によるクランプ装置をクランプ状態にて示す概略縦断面図である。
図2図1のII−II線断面図である。
図3図1のクランプ装置をアンクランプ状態にて示す概略縦断面図である。
図4図1の変形例によるクランプ装置をクランプ状態にて示す概略縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明によるクランプ装置の一実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0025】
図1は、本発明の一実施の形態によるクランプ装置100をクランプ状態にて示す概略縦断面図であり、図2は、図1のII−II線断面図である。
【0026】
図1に示すように、本実施の形態によるクランプ装置100は、圧力流体(オイル、エア等)によって被クランプ部材Dをアンクランプするものであって、第1支持部11と、この第1支持部11に対向する第2支持部12と、第1支持部11に支持された第1移動体21と、被クランプ部材Dを挟んで第1移動体21に対向し、第2支持部12に支持された第2移動体22と、を備えている。本実施の形態では、第1移動体21は、第1支持部11に対し一軸方向daに相対移動可能であり、同様に、第2移動体22は、第2支持部12に対し一軸方向daに相対移動可能である。また、クランプ装置100内において、圧力流体の流路Pが、第1支持部11を貫いて延在している。この流路は、第1支持体11に設けられた圧力流体の供給管34によって画定されている。
【0027】
図1に示すように、クランプ装置100は、第1支持部11と第1移動体21との間に圧縮状態で設けられた第1弾性体31と、第2支持部12と第2移動体22との間に圧縮状態で設けられた第2弾性体32と、を備えている。これら第1及び第2弾性体31、32によって、第1移動体21及び第2移動体22は、互いに近接するように付勢されている。
【0028】
更に、図1に示すように、第1移動体21と第2移動体22とは、一軸方向daに沿って互いに相対移動可能に係合している。具体的には、第1移動体21は、圧力流体の供給管34を取り囲む第1筒状部21pを有している。この第1筒状部21pは、供給管34の外周面上を一軸方向daに摺動可能となっている。更に、第2移動体22は、第1移動体21の第1筒状部21pを取り囲む第2筒状部22pを有している。この第2筒状部22pは、第1筒状部21pの外周面上を一軸方向daに摺動する摺動部として機能し得るようになっている。
【0029】
本実施の形態の第1弾性体31及び第2弾性体32は、共にコイルバネである。特に、図2に示すように、第1弾性体31は、4つのコイルバネ31a〜31dを含んでいる。これらのコイルバネ31a〜31dは、共に同じ自然長及びバネ定数を有し、第1移動体21の第1筒状部21pの中心軸線Lから等距離で、且つ、中心軸線L周りに等間隔で、配置されている。また、本実施の形態では、中心軸線Lは、供給管34の中心軸線とも一致している。これらことにより、コイルバネ31a〜31dによる付勢力は、中心軸線Lを中心として均等に第1移動体21に作用している。
【0030】
また、圧力流体の供給管34と第1筒状部21pとの間には、圧力流体の漏れを防止するための第1シール部材51が設けられている。同様に、第1筒状部21pと第2筒状部22pとの間には、圧力流体の漏れを防止するための第2シール部材52が設けられている。これら第1及び第2シール部材51、52によって、第1移動体21と第2移動体22との間に、流体密封であって容積が可変の圧力室Cが画定されている。このような構成によって、供給管34を通じて圧力室C内に供給された圧力流体が、圧力室C内に密封されるようになっている。本実施の形態の圧力室Cは、中心軸線L上に存在している。
【0031】
特に、本実施の形態では、図1に示すように、第1移動体21及び第2移動体22によって、単一の圧力室Cのみが画定されている。したがって、圧力流体の供給装置60から供給された圧力流体は、単一の流路Pによって、すなわち供給装置60から圧力室Cに至るまでに圧力流体の流れが途中で分岐することなく、圧力室Cに供給されることになる。
【0032】
図2に示すように、本実施の形態の第1支持部11は、円形の断面形状を有している。そして、この第1支持部11の周壁のうち、第2支持部12側(図1における上側)の端縁近傍が、第1移動体21を取り囲む肉薄の第1スリーブ部11wとなっている。この肉薄の第1スリーブ部11wは、第1移動体21を一軸方向daに沿ってガイドするためのものである。更に、第1支持部11の内周面には、その径方向内方に突出した第1ストッパ11sが設けられている。この第1ストッパ11sは、第1移動体21の第1支持部11に対する相対移動量を規制するためのものである。
【0033】
同様に、図示されていないが、第2支持部12も円形の断面形状を有している。そして、この第2支持部12の周壁のうち、第1支持部11側(図1における下側)の端縁近傍が、第2移動体22を取り囲む肉薄の第2スリーブ部12wとなっている。この肉薄の第2スリーブ部12wは、第2移動体22を一軸方向daに沿ってガイドするためのものである。更に、第2支持部12の内周面には、その径方向内方に突出した第2ストッパ12sが設けられている。この第2ストッパ12sは、第2移動体22の第2支持部12に対する相対移動量を規制するためのものである。
【0034】
図1に示すように、第1スリーブ部11wと第2スリーブ部12wとは、一軸方向daから見て、共に、前述した中心軸線Lと同心に構成されている。更に、図1に示す例では、クランプ状態において、第1ストッパ11sから第1移動体21までの距離と、第2ストッパ12sから第2移動体22までの距離と、が等しくなっている。
【0035】
図1に示すように、第1移動体21及び第2移動体22には、第1制動部材41及び第2制動部材42(ブレーキパッド)が、互いに対面するようにそれぞれ配置されている。第1制動部材41及び第2制動部材42は、各移動体21、22が被クランプ部材Dをクランプしている際に、被クランプ部材Dに対し摩擦力を提供するためのものである。後述するように、被クランプ部材Dは、第1制動部材41及び第2制動部材42を介して、第1移動体21及び第2移動体22にクランプ及びアンクランプされるようになっている。
【0036】
以上の構成により、被クランプ部材Dは、供給管34によって画定された流路Pを介して圧力流体が圧力室Cに供給されることにより、第1移動体21と第2移動体22とが離反するようになっている。すなわち、圧力流体が圧力室Cに供給されることにより、被クランプ部材Dがアンクランプされるようになっている。一方、被クランプ部材Dは、流路Pを介して圧力流体が圧力室Cから除去されることにより、第1移動体21及び第2移動体22によってクランプされるようになっている。クランプ及びアンクランプの工程の詳細については後述される。
【0037】
次に、図1に加え、図3を参照しつつ、本実施の形態によるクランプ装置100の作用について説明する。図3は、図1のクランプ装置100をアンクランプ状態にて示す概略縦断面図である。
【0038】
ここでは、図1に示す状態、すなわち、圧力室Cに圧力流体が供給されておらず、第1弾性体31及び第2弾性体32の付勢力によって第1移動体21及び第2移動体22が第1制動部材41及び第2制動部材42を介して被クランプ部材Dをクランプしている状態を、初期状態とする。
【0039】
まず、被クランプ部材Dをアンクランプする際には、圧力流体の供給装置60に対し、圧力流体をクランプ装置100に向けて供給させるための指令信号が入力される。この指令信号の入力は、例えば、クランプ装置100が搭載されている工作機械(不図示)の制御装置によって行われる。あるいは、使用者によって指令信号が直接入力されても良い。これにより、圧力流体が供給装置60から供給管34によって画定された単一の流路Pを通じて、一方向のみから、圧力室Cに供給される。
【0040】
すると、圧力室C内に供給された圧力流体によって、当該圧力室Cを画定している第1移動体21が第1支持部11に向けて(図1における下方に向けて)押圧される。同時に、圧力室Cを画定している第2移動体22が第2支持部12に向けて(図1における上方に向けて)押圧される。
【0041】
そして、圧力流体によるこれらの押圧力が、第1弾性体31及び第2弾性体32の付勢力を超えると、第1移動体21及び第2移動体22は、各弾性体31、32を圧縮変形させながら互いに離反する方向に移動する。このとき、第1移動体21は、第1支持部11の第1スリーブ部11wによって一軸方向daに沿ってガイドされつつ、供給管34に沿って移動する。一方、第2移動体22は、第2支持部12の第2スリーブ部12wによって一軸方向daにガイドされつつ、第1移動体21の第1筒状部21pに沿って移動する。前述したように、圧力流体の供給管34と第1筒状部21pとの間、及び、第1筒状部21pと第2筒状部22pとの間にはシール部材51、52が設けられているため、この移動の過程において圧力流体が圧力室Cから漏れ出してしまうことが無い。
【0042】
図3に示すように、第1移動体21の第1支持部11に対する相対移動は、当該第1移動体21が第1ストッパ11sに当接することにより、終了する。同様に、第2移動体22の第2支持部12に対する相対移動は、当該第2移動体22が第2ストッパ12sに当接することにより、終了する。これらの結果、第1移動体21及び第2移動体22による被クランプ部材Dのクランプ状態が解除される(被クランプ部材Dがアンクランプされる)。そして、圧力流体の供給装置60により、圧力流体の圧力(圧力室Cの内圧)が維持されることにより、図3に示すアンクランプ状態が維持される。
【0043】
なお、圧力室Cの内圧が高められた際に、例えば第1移動体21が第2移動体22より先に移動してしまうような場合にも、第1ストッパ11s及び第2ストッパ12sの存在によって好適なアンクランプの動作が実現され得る。すなわち、この場合、圧力流体の作用によって、第2移動体22よりも先に第1移動体21が第1弾性体31を圧縮変形させつつ第2移動体22から離反する方向に移動を開始する。その一方で、第2支持体22は、被クランプ部材Dを押圧したままである。したがって、第2移動体22に先だって、第1移動体21が第1支持部11の第1ストッパ11sに当接することにより、第1移動体21の第1支持部11に対する相対移動が終了する。そして、この状態から圧力流体の圧力が更に高められると、必然的に、第2移動体22が第1移動体21から離反する方向に移動を開始する。第2移動体22は、最終的に第2支持部12の第2ストッパ12sに当接してその移動を終了する。この結果、図3に示すアンクランプ状態が実現される。
【0044】
この状態から、被クランプ部材Dを再びクランプする際には、圧力流体の供給装置60に対し、圧力流体をクランプ装置100から抜き取るための指令信号が入力される。この指令信号の入力も、クランプ装置100が搭載されている工作機械(不図示)によって、あるいは、使用者によって、行われる。これにより、圧力流体が、供給管34内の単一の流路Pを通じて、圧力室Cから供給装置60に向かって流れる。
【0045】
すると、圧力室Cの内圧が次第に低下して、上述したアンクランプの工程と逆の工程が生じる。すなわち、圧力室Cの内圧が所定の値を下回ると、第1弾性体31の付勢力によって第1移動体21が第2移動体22に近接する方向に移動を開始し、及び、第2弾性体32の付勢力によって第2移動体が第1移動体21に近接する方向に移動を開始する。そして、圧力室Cの内圧が十分に低下すると、第1移動体21及び第2移動体22によって、第1制動部材41及び第2制動部材42を介して被クランプ部材Dがクランプされる。これにより、図1に示す初期状態が復元される。
【0046】
以上のような本実施の形態によれば、ただ1つの圧力室Cが設けられているため、圧力流体の流路を複数設けたり、途中で分岐させたりする必要が無い。このため、流路のためのスペースを従来よりも小さくすることができ、小型のクランプ装置100を提供することができる。更に、第1弾性体31及び第2弾性体32の付勢力を所望に決定することにより、十分なクランプ力をも発揮し得るクランプ装置100が提供され得る。
【0047】
以上のクランプ装置100において、被クランプ部材Dは、圧力流体が圧力室Cに供給されることにより、第1移動体21及び第2移動体22によってアンクランプされ、その一方で、圧力流体が圧力室Cから除去されることにより、第1移動体21及び第2移動体22によってクランプされるようになっている。このことにより、停電などで圧力流体の供給装置60が不所望に動作を停止し、圧力室Cの内圧が低下しても、第1移動体21及び第2移動体22によって被クランプ部材Dがクランプされて制動が行われことになるため、安全性の高いクランプ装置100を提供することができる。
【0048】
また、第1支持部11は、当該第1支持部11に対する第1移動体21の相対移動量を規制する第1ストッパ11sを有し、且つ、第2支持部12は、当該第2支持部12に対する第2移動体22の相対移動量を規制する第2ストッパ12sを有している。このことにより、被クランプ部材Dをアンクランプする際に、第1移動体21及び第2移動体22を確実に被クランプ部材Dから離間させることができる。
【0049】
また、第1支持部11は、第1移動体21を一軸方向daに沿ってガイドする第1スリーブ部11wを有し、且つ、第2支持部12は、第2移動体22を一軸方向daに沿ってガイドする第2スリーブ部12wを有している。このため、第1移動体21及び第2移動体22が互いに対してスムーズに相対移動することができる。
【0050】
また、第1弾性体31は、中心軸線Lから等距離で、且つ、当該中心軸線L周りに等間隔で配置された、複数のコイルバネ31a〜31dを含んでいる。このため、被クランプ部材Dを十分な力でクランプするための弾性力を確実に提供することができる。なお、他の実施の形態では、第1弾性体31は、1つ、2つ、3つ、または5つ以上のコイルバネを含んでいて良い。更に、第2弾性体32も、2つ以上のコイルバネを含んでいて良い。もっとも、各弾性体31、32に含まれるコイルバネの数、自然長、バネ定数、配置位置等は、各移動体21、22が圧力室C内の圧力流体から受ける押圧力や必要とされるクランプ力などを考慮した上で、決定されることになる。
【0051】
更に、第1移動体21は、供給管34を取り囲み、この供給管34の外周面上を一軸方向daに摺動可能な、第1筒状部21pを有している。更に、第2移動体22は、第1移動体21の第1筒状部21pを取り囲み、当該第1筒状部21pの外周面上を一軸方向daに摺動可能な、第2筒状部22pを有している。このような構成により、第1移動体21及び第2移動体22の互いに対する相対移動を許容しつつ、圧力室C内に圧力流体の供給管34を好適に導くことができる。
【0052】
また、クランプ装置100は、圧力流体の供給管34と第1筒状部21pとの間に配置された第1シール部材51と、第1筒状部21pと第2筒状部22pとの間に配置された第2シール部材52と、を更に備えている。このことにより、第1移動体21と第2移動体22とが、流体密封の状態を維持したままで、互いに対し一軸方向daに相対移動することができる。
【0053】
次に、図4を参照して、上述したクランプ装置の変形例について説明する。
【0054】
図4は、図1の変形例によるクランプ装置100aをクランプ状態にて示す概略縦断面図である。図4に示すように、本変形例によるクランプ装置100aでは、第1移動体21aが供給管34に沿って一軸方向daに摺動可能であるが、第1移動体21aの筒状部21apが供給管34を取り囲んでいない。すなわち、図4に示すように、本変形例の移動体21aは、中央に供給管34が挿通される開口部を有する板状(円盤状)の基部21amと、この基部21amから一軸方向daに沿って第2移動体22aに向かって立ち上がる筒状部21apと、を有している。一軸方向daから見て、筒状部21apの内周面の輪郭線は、供給管34が挿通される開口部の輪郭線よりも大きく、互いに同心であり得る。また、第1移動体21aの開口部の内径と供給管34の外径とは実質的に同一であり、第1シール材51が第1移動体21aの基部21amと供給管34との間に配置されている。このような構成により、第1移動体21aは、供給管34の外周面上を一軸方向daに沿って液密に摺動するようになっている。
【0055】
更に、図4に示すように、本変形例の第2移動体22aは、板状の基部22amと、この基部22amから第1移動体21aに向かって立ち上がる円柱状部22apと、を有している。一軸方向daから見て、円柱状部22apの外径は、第1移動体21aの筒状部21apの内径と実質的に同一である。この円柱状部22apは、第2シール材52を介して、少なくとも一部が第1移動体21aの筒状部21ap内に挿入されている。このような構成により、円柱状部22apは、第1移動体21aの筒状部21apの内周面上を一軸方向daに沿って液密に摺動する摺動部として機能するようになっている。以上のように、第1移動体21aと第2移動体22aとが互いに一軸方向daに沿って液密状態を維持しながら相対移動するように組み付けられ、圧力室Cが構成されている。
【0056】
この他の構成は、図1に示すクランプ装置100と同様であるため、図4において図1と共通する構成要素には同じ符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0057】
以上のような本変形例によっても、上述したクランプ装置100と同様の作用効果を奏することができる。
【0058】
なお、以上の説明においては、圧力流体の流路Pが第1支持部11を貫いている例を採用したが、このような態様には限定されない。すなわち、他の例では、圧力流体の流路が第2支持部12を貫いていても良い。このような例は、以上の説明において「第1」を付した構成要素と「第2」を付した構成要素とを入れ替えることにより、理解され得る。この場合、圧力流体の流路を画定する供給管が第2支持部12に設けられる。このような例においても、上述した実施の形態と同様の効果を奏することができる。
【符号の説明】
【0059】
11 第1支持部
11s 第1ストッパ
11w 第1スリーブ部
12 第2支持部
12s 第2ストッパ
12w 第2スリーブ部
21、21a 第1移動体
21p 第1筒状部
21ap 筒状部
21am 第1移動体の基部
22、22a 第2移動体
22am 第2移動体の基部
22p 第2筒状部(摺動部)
22ap 円柱状部(摺動部)
31 第1弾性体
31a〜31d コイルバネ
32 第2弾性体
34 供給管
41 第1制動部材
42 第2制動部材
51 第1シール部材
52 第2シール部材
60 供給装置
100、100a クランプ装置
C 圧力室
D 被クランプ部材
L 中心軸線
P 圧力流体の流路
図1
図2
図3
図4