特許第6914907号(P6914907)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ カリフォルニアの特許一覧

特許6914907I型糖尿病用の人工膵臓のモデルベース個別化スキーム
<>
  • 特許6914907-I型糖尿病用の人工膵臓のモデルベース個別化スキーム 図000040
  • 特許6914907-I型糖尿病用の人工膵臓のモデルベース個別化スキーム 図000041
  • 特許6914907-I型糖尿病用の人工膵臓のモデルベース個別化スキーム 図000042
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6914907
(24)【登録日】2021年7月16日
(45)【発行日】2021年8月4日
(54)【発明の名称】I型糖尿病用の人工膵臓のモデルベース個別化スキーム
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/168 20060101AFI20210727BHJP
【FI】
   A61M5/168
【請求項の数】4
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2018-228853(P2018-228853)
(22)【出願日】2018年12月6日
(62)【分割の表示】特願2015-552868(P2015-552868)の分割
【原出願日】2014年1月13日
(65)【公開番号】特開2019-55258(P2019-55258A)
(43)【公開日】2019年4月11日
【審査請求日】2018年12月6日
【審判番号】不服2020-12368(P2020-12368/J1)
【審判請求日】2020年9月3日
(31)【優先権主張番号】61/751,941
(32)【優先日】2013年1月14日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】592110646
【氏名又は名称】ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ カリフォルニア
(74)【代理人】
【識別番号】100114188
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100119253
【弁理士】
【氏名又は名称】金山 賢教
(74)【代理人】
【識別番号】100124855
【弁理士】
【氏名又は名称】坪倉 道明
(74)【代理人】
【識別番号】100129713
【弁理士】
【氏名又は名称】重森 一輝
(74)【代理人】
【識別番号】100137213
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100143823
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 英彦
(74)【代理人】
【識別番号】100183519
【弁理士】
【氏名又は名称】櫻田 芳恵
(74)【代理人】
【識別番号】100196483
【弁理士】
【氏名又は名称】川嵜 洋祐
(74)【代理人】
【識別番号】100203035
【弁理士】
【氏名又は名称】五味渕 琢也
(74)【代理人】
【識別番号】100160749
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100160255
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100202267
【弁理士】
【氏名又は名称】森山 正浩
(74)【代理人】
【識別番号】100182132
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100146318
【弁理士】
【氏名又は名称】岩瀬 吉和
(74)【代理人】
【識別番号】100127812
【弁理士】
【氏名又は名称】城山 康文
(72)【発明者】
【氏名】ドイル,フランシス,ジェイ,ザ・サード
(72)【発明者】
【氏名】ダッソウ,イーヤル
(72)【発明者】
【氏名】セボーグ,デール,イー
(72)【発明者】
【氏名】リー,ジューン,ブック
【合議体】
【審判長】 佐々木 一浩
【審判官】 井上 哲男
【審判官】 加藤 啓
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/168
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象情報を含有する制御関連離散モデルを使用して、それぞれの対象の臨床的特徴に基づく個々のゲインの個別化を伴うコントローラーを含む、1型糖尿病を有する者の血液グルコース濃度を正常血糖範囲(80〜140mg/dl)に維持するように適合化され1型糖尿病を有する対象に投与されるべきインスリンの運搬を自動的に指令する人工膵臓(AP)系のためのコントローラーであって、ここで、コントローラーの積極性を個別化し、それぞれの対象のインスリン感受性を考慮するために、該対象の基礎インスリンがモデルに組込まれており、ここで、該個別化は、対象が正常血糖値を維持するために大きな基礎インスリンを要する場合には、コントローラーの積極性を高め、一方、正常血液グルコースレベルを維持するために対象が低い基礎インスリンを要する場合には、コントローラーの積極性を低下させることにより低血糖リスクを回避することを可能にするものであり、該コントローラーは、
(A) 内部モデル制御(IMC)ベース設計の比例−積分−微分(PID)コントローラーであって、前記モデルは、
【数1】
[式中、q−1は後方シフト(backward shift)演算子であり、インスリンの単位は(pmol/分)として表され、血液グルコース濃度は(mg/dl)として表される。]として定義される離散三次制御関連モデルMに基づくものあり、
ここで、式(1)中、Kは、
K=KcSF (2)
として個別化され、
ただし、式(2)中、Kは、
=K/TDI (3)
1600≦K≦2400 (4)
[式中、TDIは対象の1日総インスリン必要量を表す臨床パラメータである。]として計算される補正係数に基づく個別化ゲインであり、
また、式(2)中、cは、
【数2】
として単位の一貫性を維持するための係数であり、ここで、ヒューマログ(Humalog)インスリン類似体の1Uの99%が系から消失する平均クリアランス時間が6.64時間として表され、且つ1Uのインスリンは標準的な臨床的定義を適用して6000pmに変換されて表されており、
また、式(2)中、SFは、TDIから計算された標準的な開始基礎インスリン量として推奨されている値に対する、実際の対象の基礎インスリンに基づいた倍率であって、
SF=bcalc/(b) (6)
calc(U/時間)=(KTDI)/24 (7)
0.4≦K≦0.6 (8)
[式中、bは対象の実際の名目基礎インスリンをU/時間の単位で表したものであり、bcalcは1型糖尿病の初期基礎インスリンを示す対象に対して推奨される計算値である。]と定義され、
そして、式(1)の離散三次制御関連モデルMrは、
【数3】
[式中、Tは5分における離散化モデルのサンプリング時間である。]
の双線形変換近似を用いて
【数4】
で表されるモデルMr1(s)に変換され、当該Mr1(s)はSkogestadのハーフルール(half rule)により以下の二次プラス時間遅延モデル、
【数5】
へと変換され、ここで、θ、τおよびτは下記の、
【数6】
とすることで、
【数7】
となる最終的な内部モデルとして表され、該比例−積分−微分(PID)コントローラー調整のための内部モデル制御(IMC)法が、調整パラメータτおよび1のゲインを有するローパスフィルタを使用し、
【数8】
としての3つのPIDコントローラーパラメータK、τおよびτの計算をもたらして、該PIDコントローラー設定が、
【数9】
として単純化される、前記比例−積分−微分(PID)コントローラーであるか、または
(B) モデル予測制御(MPC)フィードバックコントローラーであって、前記モデルは、
【数10】
[式中、q−1は後方シフト(backward shift)演算子であり、インスリンの単位は(pmol/分)として表され、血液グルコース濃度は(mg/dl)として表される。]として定義される離散三次制御関連モデルMに基づくものあり、
ここで、式(1)中、Kは、
K=KcSF (2)
として個別化され、
ただし、式(2)中、Kは、
=K/TDI (3)
1600≦K≦2400 (4)
[式中、TDIは対象の1日総インスリン必要量を表す臨床パラメータである。]として計算される補正係数に基づく個別化ゲインであり、
また、式(2)中、cは、
【数11】
として単位の一貫性を維持するための係数であり、ここで、ヒューマログ(Humalog)インスリン類似体の1Uの99%が系から消失する平均クリアランス時間が6.64時間として表され、且つ1Uのインスリンは標準的な臨床的定義を適用して6000pmに変換されて表されており、
また、式(2)中、SFは、TDIから計算された標準的な開始基礎インスリン量として推奨されている値に対する、実際の対象の基礎インスリンに基づいた倍率であって、
SF=bcalc/(b) (6)
calc(U/時間)=(KTDI)/24 (7)
0.4≦K≦0.6 (8)
[式中、bは対象の実際の名目基礎インスリンをU/時間の単位で表したものであり、bcalcは1型糖尿病の初期基礎インスリンを示す対象に対して推奨される計算値である。]と定義され、
そして、式(1)として定義される離散三次制御関連モデルMは、
【数12】
としての状態空間形式として書き直され、ここで、システム状態は
【数13】
であり、パラメータ行列は
【数14】
であり、また、b、bおよびbは下記の、
で表されるモデル予測制御(MPC)フィードバックコントローラーである、
前記コントローラー。
【請求項2】
式(15)の二次プラス時間遅延モデルが、
【数15】
としての時間遅延の一次テイラー級数近似で因数分解される、請求項1に記載のコントローラー。
【請求項3】
皮下連続的グルコースモニター(CGM)、およびインスリンを運搬するための連続的皮下インスリン注射(CSII)ポンプをさらに含む人工膵臓系に備えられた、請求項1または2に記載のコントローラー。
【請求項4】
請求項1または2に記載のコントローラーを含む人工膵臓系。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はI型糖尿病用の人工膵臓のモデルベース個別化スキーム(model−bas
ed personalization scheme)に関する。
【0002】
本発明は、National Institutes of Health(NIH)
により付与された助成番号DP3DK094331−01およびROIDK085628
に基づく米国政府の援助によりなされた。米国政府は本発明において一定の権利を有する
【背景技術】
【0003】
米国だけでも20歳未満の若者において1型糖尿病の約16,000の新たな症例が毎
年診断されている[1]。治療しなければ、これらの個体は不自然に高い血液グルコース
濃度(「高血糖」と称され、180mg/dlを超える血液グルコース濃度を有するもの
として定義される[2])の影響を受け、糖尿病性ケトアシドーシスならび長期にわたる
合併症、例えば心血管疾患、腎不全、失明および死を招く[3]。T1DMを治療するた
めの外因性インスリンの手動投与は毎日の炭水化物摂取量および血液グルコース濃度の複
数の正確な計算を要する。なぜなら、若干の過剰投与でさえも、振戦、虚弱、発話困難、
痙攣、意識不明および死亡を含む、低い血液グルコース濃度(「低血糖」と称され、一般
に、70mg/dl未満の血液グルコース濃度を有するものとして定義される[2])の
、生命を脅かす即座の結果を引き起こしうるからである[3]。これらの及び他の合併症
により、1型糖尿病を有する個体の平均余命は総集団のものより少なくとも10年は短い
[4]。
【0004】
これらの人々を助けるために設計された人工膵臓(AP)系の成功の鍵成分は、食前ボ
ーラスの存在下または非存在下でインスリンの運搬(供与、投与)を自動的に指令しうる
制御アルゴリズムである。閉ループ系は皮下連続的グルコースモニター(CGM)、およ
びインスリンを運搬するための連続的皮下インスリン注射(CSII)ポンプを含む。
【0005】
APの制御設計のための以下の2つの主要アプローチが存在する:(a)比例−積分−
微分(PID)コントローラー[5〜7]、および(b)モデル予測制御(MPC)コン
トローラー[8〜10]。同様に評価中である他のアプローチ、例えばファジー論理[1
1]および人工ニューラルネットワーク[12]が存在する。AP系のための内部モデル
ベースPIDコントローラー(IMC−PID)およびMPCを本明細書に開示する。P
IDコントローラーを調整するためのIMCベースアプローチは、それが、コントローラ
ーの性能を調節するための単一の調整パラメータしか要しないという利点を有する[13
]。種々の複雑性において利用可能となっている種々の制御関連モデルのうち、Van
Heusdenら[14]により提示されたアプリオリ(a priori)対象情報を
含有する離散系三次モデルが、同一線形モデルに基づくPIDおよびMPCコントローラ
ーを設計するために使用されうる。モデルと患者との不整合の場合にコントローラーの機
能を更に調整するために、Van Heusdenらにより用いられた1日総インスリン
(TDI)臨床パラメータに加えて、対象の基礎インスリン注射特性が組込まれている。
【0006】
開示されているコントローラーには、見掛けインスリン薬物動態プロファイルを促進す
るインスリンフィードバックスキーム(IFB)も組込まれている。このスキーム(方式
)が組込まれたPIDコントローラーは、モデルシミュレーション[15]および臨床試
験[16]の両方で示されているとおり、性能の改善を示しうる。
【0007】
以下に、(i)T1DMを有する対象(患者)におけるグルコース調節の制御の課題、
(ii)IMC−PIDコントローラーの開発、追加的個別化因子の組込み、およびIF
Bの採用、(iii)MPCコントローラーにおける追加的個別化因子の組込み、(iv
)インシリコ(in silico)試験におけるこのコントローラーの変型の実施、な
らびに(v)結果の考察を記載する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
1型糖尿病を有する者の血液グルコース(血糖)濃度を正常血糖範囲(80〜140m
g/dl)内に維持するように設計された人工膵臓系の成功における鍵成分は制御アルゴ
リズムであり、これは、投与されるべきインスリンの運搬を自動的に指令する。コントロ
ーラー(制御装置)は、とりわけ、身体のインスリン−血液グルコース動力学、皮下ポン
プ機能および皮下センシングの間の固有の長期遅延のような種々の課題を満足するもので
なければならない。いずれのアルゴリズムの性能も、コントローラーの設計が基づいてい
る信頼しうるモデルの開発にかかっており、無関係なモデルに基づいたコントローラーは
、人工膵臓用途に固有の個々の制御課題に成功裏に対処しえず、対象(患者)における高
血糖リスクを誘発しうる。本発明は、比例−積分−微分コントローラーの内部モデル制御
ベース設計を、各対象の臨床的特徴に基づく個々のゲイン(増加)の個別化と組合せたも
のである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明はアプリオリ対象情報と共に離散モデルを用い、特定の実施形態においては、個
別化コントローラーは、より低次のモデル、例えば三次モデルに基づくが、一次、二次、
四次、五次または他の低次のモデルが使用可能であり、好ましい低次モデルは五次以下で
ある。コントローラーの積極性(aggressiveness)を更に個別化し、集団
全体におけるインスリン感受性の広範な変動を考慮するために、対象の基礎インスリンを
該低次モデルに組込む。この個別化は、対象がインスリンに非感受性であり、正常血糖値
を維持するために大きな基礎量を要する場合には、コントローラーが適切に積極的となる
ことを可能にし、一方、正常血液グルコースレベルを維持するために対象が低い基礎量を
要する場合には、コントローラーの積極性を低下させることにより低血糖リスクを回避す
ることを可能にする。
【0010】
1つの態様においては、本発明は、人工膵臓(AP)用途に適合したIMCベースアプ
ローチによりPIDコントローラーパラメータを得るための低次制御関連モデルを含む、
アプリオリ対象特性に基づいて個別化されたインスリンフィードバック(IFB)スキー
ムを有する内部モデルベース比例−積分−微分(IMC−PID)コントローラーを提供
する。
【0011】
もう1つの態様においては、本発明は、人工膵臓(AP)用途に適合し該用途のために
設計された低次制御関連モデルを含む、アプリオリ対象特性に基づくモデル予測コントロ
ーラー(MPC)を提供する。
【0012】
もう1つの態様においては、本発明は、人工膵臓(AP)系に適合した内部モデルベー
ス比例−積分−微分(IMC−PID)コントローラーであって、該コントローラーは、
該コントローラーの性能を調節するために単一の調整パラメータしか要さず、設計基準と
してのアプリオリ対象情報を含有する離散低次モデルを含み、モデルと患者との不整合の
場合にコントローラーの機能を更に調整するために、1日総インスリン(TDI)臨床パ
ラメータに加えて、対象の基礎インスリン注射特性と、見掛けインスリン薬物動態プロフ
ァイルを促進するインスリンフィードバックスキーム(IFB)とが組込まれている、コ
ントローラーを提供する。
【0013】
もう1つの態様においては、本発明は、人工膵臓(AP)系に適合し該系のために設計
されたモデル予測コントローラー(MPC)であって、該コントローラーは、設計基準と
してのアプリオリ対象情報を含有する離散低次モデルを含み、モデルと患者との不整合の
場合にコントローラーの機能を更に調整するために、1日総インスリン(TDI)臨床パ
ラメータに加えて、対象の基礎インスリン注射特性が組込まれている、コントローラーを
提供する。
【0014】
もう1つの態様においては、本発明は、1型糖尿病を有する者の血液グルコース濃度を
正常血糖範囲(80〜140mg/dl)に維持するように適合化された人工膵臓(AP
)系のためのコントローラーを提供し、該コントローラーは制御アルゴリズムを含み、1
型糖尿病を有する対象に投与されるべきインスリンの運搬を自動的に指令し、アプリオリ
対象情報を含有する低次離散モデルを使用するそれぞれの対象の臨床的特徴に基づく個々
のゲインの個別化を伴う比例−積分−微分(PID)コントローラーの内部モデル制御(
IMC)ベース設計を含み、ここで、コントローラーの積極性を更に個別化し、インスリ
ン感受性の変動を考慮するために、対象の基礎インスリンが該低次モデルに組込まれてお
り、ここで、該個別化は、対象がインスリンに非感受性であり、正常血糖値を維持するた
めに大きな基礎量を要する場合には、コントローラーが積極的となることを可能にし、一
方、正常血液グルコースレベルを維持するために対象が低い基礎量を要する場合には、コ
ントローラーの積極性を低下させることにより低血糖リスクを回避することを可能にする
【0015】
もう1つの態様においては、本発明は、1型糖尿病を有する者の血液グルコース濃度を
設定値または所定血糖範囲、例えば正常血糖範囲(80〜140mg/dl)に維持する
ように適合化された人工膵臓(AP)系のためのコントローラーを提供し、該コントロー
ラーは制御アルゴリズムを含み、1型糖尿病を有する対象に投与されるべきインスリンの
運搬を自動的に指令し、アプリオリ対象情報を含有する低次離散モデルを使用するそれぞ
れの対象の臨床的特徴に基づく個々のゲインの個別化を伴うモデル予測コントローラー(
MPC)を含み、ここで、コントローラーの積極性を更に個別化し、インスリン感受性の
変動を考慮するために、対象の基礎インスリンが該低次モデルに組込まれており、ここで
、該個別化は、対象がインスリンに非感受性であり、正常血糖値を維持するために大きな
基礎量を要する場合には、コントローラーが積極的となることを可能にし、一方、正常血
液グルコースレベルを維持するために対象が低い基礎量を要する場合には、コントローラ
ーの積極性を低下させることにより低血糖リスクを回避することを可能にする。
【0016】
本発明はまた、開示されている制御工程を有効に実施するために対象コントローラーを
プログラムするための対応アルゴリズムを提供する。
【0017】
本発明はまた、例えばコントローラーとポンプとを含みうる対象コントローラーを含む
人工膵臓系または副系(サブシステム)を提供する。
【0018】
本発明はまた、対象コントローラーを制御する制御アルゴリズムを含む、1型糖尿病用
途のための人工膵臓(AP)のモデルベース個別化スキームを提供する。
【0019】
本発明はまた、対象コントローラーを使用してインスリン運搬を指令し、所望によりイ
ンスリンを運搬することを含む方法を提供する。
【0020】
本発明は、本明細書に記載されているのと実質的に同じコントローラー、アルゴリズム
およびインスリン指令系を含み、挙げられている個々の実施形態の全ての組合せを含む。
本明細書中で引用されている全ての刊行物および特許出願を、各刊行物または特許出願が
参照により本明細書に組み入れられると具体的かつ個別に示されている場合と同様に、参
照により本明細書に組み入れることとする。前記発明は理解の明瞭化のために例示および
具体例として或る程度詳細に記載されているが、添付の特許請求の範囲の精神または範囲
から逸脱することなく或る変更および修飾が本発明に施されうることが、本発明の教示を
考慮して当業者に容易に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1図1。ノイズを伴わない種々の個別化スキームの比較。3時間のτ、110mg/dlの設定点、および表Iのとおりの個別化ルール設定の種々の組合せで、本明細書に記載されているIMC PIDコントローラーに適用された50gの食事妨害に対するUVA/パドバ(Padova)代謝シミュレーターにおいてシミュレートされた10例のインシリコ(in silico)対象に関する平均血液グルコースプロファイルおよびインスリン運搬。連続実線はコントローラー1(最適基礎−ボーラススキーム)を表し、細い連続線はコントローラー2(最適基礎スキーム)を表し、太い破線はコントローラー3(1600の補正係数および0.4の基礎係数)を表し、細い破線はコントローラー4(1600の補正係数および0.6の基礎係数)を表し、太い鎖線はコントローラー5(2400の補正係数および0.6の基礎係数)を表し、細い破線はコントローラー10(個別化を伴わないがインスリンフィードバックを伴うPID)を表し、太い点線はコントローラー11(個別化を伴わずインスリンフィードバックを伴わないPID)を表す。
図2図2。ノイズを伴う種々のτ設定の比較。110mg/dlの設定点、1600として選択された補正係数ルール、0.4として選択された基礎計算係数、および2時間から6時間まで30分間隔で変動させたτで、本明細書に記載されているIMC PIDコントローラーに適用された50gの食事妨害に対するUVA/パドバ(Padova)代謝シミュレーターにおいてシミュレートされた10例のインシリコ(in silico)対象に関する平均血液グルコースプロファイルおよびインスリン運搬。4時間以下のτを有するコントローラーを低血糖の存在ゆえに廃棄した。連続実線はコントローラー1(最適基礎−ボーラススキーム)を表し、細い連続線はコントローラー2(最適基礎スキーム)を表し、太い破線はコントローラー17(4.5時間のτ)を表し、細い破線はコントローラー18(5時間のτ)を表し、太い鎖線はコントローラー19(5.5時間のτ)を表し、細い破線はコントローラー20(6時間のτ)を表す。
図3図3.最適基礎ボーラススキームおよびノイズを伴う最良PIDコントローラーの比較。110mg/dlの設定点、1600として選択された補正係数ルール、0.4として選択された基礎計算係数、および4.5時間として選択されたτで、本明細書に記載されているIMC PIDコントローラーに適用された50gの食事妨害に対するUVA/パドバ(Padova)代謝シミュレーターにおいてシミュレートされた10例のインシリコ(in silico)対象に関する平均、最小および最大血液グルコースプロファイルならびに平均インスリン運搬。破線は各時点におけるコントローラーの平均、最小および最大値ならびにコントローラーインスリン運搬プロファイルを表す。実線は基礎ボーラススキームの同一特性を表す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
制御仕様
コントローラーを、ノイズ非含有およびノイズ含有血液グルコース測定および連続的皮
下インスリン注射を利用するAP系の一部として評価する。該系を、Food and
Drug Administration(FDA)により承認されたUniversi
ty of Virginia and Padova(UVA/Padova)代謝シ
ミュレーターを使用する10例の対象の研究の一部に組込む。[17]。制御サンプリン
グ時間を5分に設定する。予告されていない食事を用いて、事前のインスリンボーラス無
しで該系をチャレンジして(フィードフォワード行為)、該食事を相殺する。該制御系を

1)食後血液グルコース濃度ピークを最小にすること、
2)対象の血液グルコース濃度が正常血糖範囲(約80〜140mg/dl)[18]内
を維持する時間を最大にすること、および
3)対象の血液グルコース濃度が目標範囲(約70〜180mg/dl)[18]より低
い時間を最小にすることにおいて、その性能により評価する。
【0023】
このようにして実施されるコントローラーは種々の課題を満足する必要がある。皮下モ
ニタリングの利用は、静脈内測定と比べると控え目なものではあるが、約12分の測定遅
延を付加する[19]。皮下インスリンポンプの使用も、注射されたインスリンがグルコ
ース濃度に影響を及ぼすまでに1時間までの追加的作動遅延を付加する[20]。インス
リンは負の値においては運搬され得ない。したがって、過剰なインスリン運搬の回避が不
可欠である。
【0024】
モデルベース対象特異的比例積分微分制御アルゴリズムの開発
制御目的に使用されるモデルの開発は、従来のモデリングの目的とは異なる目的に最適
化される必要がある。すなわち、将来のグルコース値の正確な予測を導き出すことに集中
するのではなく、むしろ、特定の制御目標を想定してモデルを設計すべきである[14]
。本発明者らの従来の研究において、本発明者らは、
【数1】
【0025】
[式中、q−1は、[14]に記載されている後方シフト(backward shif
t)演算子であり、インスリンの単位は(pmol/分)として表され、血液グルコース
濃度は(mg/dl)として表される]として定義される離散三次制御関連モデルM
提示した。このモデルの開発の更なる詳細は、[14]を参照されたい。
【0026】
Kは、
K=KcSF (2)
(ここで、Kは、[18]に示されているとおりの補正係数を計算するためのルールの
範囲を用いて、
=K/TDI (3)
1600≦K≦2400 (4)
として計算される補正係数に基づく個別化ゲインである)としてのアプリオリ対象パラメ
ータを用いて個別化されうる。TDIは対象の1日総インスリン必要量を表し、1型糖尿
病の病歴を有する任意の対象に関する容易に利用可能な臨床パラメータである。cは、
【数2】
【0027】
としての単位の一貫性を維持するための係数であり、ここで、ヒューマログ(Humal
og)インスリン類似体の1Uの99%が系から消失する平均クリアランス時間は6.6
4時間(平均成人では1.5時間[21])として表されており、1Uのインスリンの変
換は標準的な臨床的定義に従い6000pmとして適用されている。SFは、もう1つ
の容易に利用可能な臨床パラメータである対象の基礎プロファイルの実際の値に基づく倍
率であり、更なる調節の前のそれらのTDIから計算された標準的な開始基礎量として推
奨されている値に対するものであり、以下のとおりである。
【0028】
SF=bcalc/(b) (6)
calc(U/時間)=(KTDI)/24 (7)
0.4≦K≦0.6 (8)
ここで、bはU/時間(U/h)単位の対象の実際の名目基礎値であり、bcalc
、微調整前のT1DMの初期基礎率を有する対象に関する推奨計算値であり、該計算のた
めの式における係数は、対象の適合性、年齢および他の特性に応じて0.4〜0.6で変
動する。T1DMを有する対象の基礎インスリンプロファイルは対象の1日注射レジメン
の標準的な部分であり、食事による妨害の非存在下の正常血糖値に対象を維持するように
意図される[18]。したがって、この無単位倍率は、対象のTDIにより計算された標
準値と比較して開ループグルコース濃度を維持するために対象がどのくらい多くの又は少
ないインスリンを実際に必要としているかに基づいて制御シグナルを低減することが可能
であり、したがって、標準値より大きい又は小さいインスリン感受性の尺度となりうる。
【0029】
(1)に示されている離散モデルは、双線形変換近似を用いて連続領域に変換されうる
。(1)に示されている離散モデルは、以下のとおりの双線形変換近似を用いて連続領域
に変換されうる。
【数3】
【0030】
(式中、Tは5分における離散化モデルのサンプリング時間である)。この離散化の結
果はMr1(s)を与える。
【数4】
【0031】
(8)はSkogestadのハーフルール(half rule)[22]により二
次プラス時間遅延モデルに変換されうる。これは、
【数5】
【0032】
の形態の二次プラス時間遅延モデルを与える。
【0033】
元のモデル(8)から、
【数6】
【0034】
としての新たなθ、τおよびτを見出しうる。
【0035】
これらの計算は、
【数7】
【0036】
としての最終モデルを与える。
【0037】
該プロセスの合理的に正確な動的モデルを考慮すると、該プロセスモデルに基づくコン
トローラー設計の方法は、多数の利点を有するアプローチである。IMC法はモデルの不
確実性を可能にし、ただ1つのパラメータの調整からの、より良好な性能と、ロバスト性
(頑強性)の増加とのトレードオフ(妥協点)を修飾する可能性を使用者に与える。
【0038】
(15)からの二次プラス時間遅延モデルは、
【数8】
【0039】
としての時間遅延の一次テイラー級数近似で因数分解されうる。
【0040】
PIDコントローラー調整関係のためのIMC法は、調整パラメータτおよび1のゲ
インを有するローパスフィルタを要し、
【数9】
【0041】
としての3つのPIDコントローラーパラメータK、τおよびτの計算をもたらす
【0042】
したがって、該PIDコントローラー設定は、
【数10】
【0043】
として単純化されうる。ここで、それぞれのルールの極値のいずれかの選択が決定され、
τ(分)の特性値が調整パラメータとして残される。対象の基礎プロファイルに基づく
追加的な個別化の結果として、対象TDIの数値はコントローラーから削除されて、対象
の現在の基礎レベルのみをその目標値(単位は尚も維持されている)として含むように最
終形態のゲインが残される。
【0044】
PIDコントローラーの標準的な並列形態のこれらのパラメータの適用の結果としての
制御シグナルを対象の基礎値に加えて、最終的な推奨インスリン運搬IDPIDをインス
リンポンプにシグナル送信する。ついで、このインスリンシグナルはIFBの使用者によ
り更に低減可能であり[15]、これは、これまでに運搬されたインスリンの量を考慮し
ており、
【数11】
【0045】
としての見掛けインスリン薬物動態を促進する。
【0046】
ここで、nは最も最近の時間値を示し、ID(n)は最終的なインスリン運搬プロファ
イルを示し、I(n)はインスリン濃度のリアルタイム推定値である。K、Kおよ
びγは、それぞれ1.966308、0.966584および0.5として表される定数
であり、Kは、
=1−K+K
として与えられる。
【0047】
このIFBスキームの開発の更なる詳細は、[15]および[16]を参照されたい。
【0048】
モデルベース対象特異的モデル予測制御アルゴリズムの開発
(18)に記載されているモデルは、モデル推測コントローラー(すなわち、入力を最
適化する際に制御されるべきプロセスのモデルを明らかに使用するモデル推測コントロー
ラー)を誘導するためにも使用されうる。
【0049】
MPCアルゴリズムの一例は、
【数12】
【0050】
[式中、q−1は、[14]に記載されている後方シフト(backward shif
t)演算子であり、インスリンの単位は(pmol/分)として表され、血液グルコース
濃度は(mg/dl)として表される]として定義される線形時間不変量(linear
time−invariant)Mを使用する。Kは、
K=KcSF (29)
(ここで、Kは、[18]に示されているとおりの補正係数を計算するためのルールの
範囲を用いて、
=K/TDI (30)
1600≦K≦2400 (31)
として計算される補正係数に基づく個別化ゲインである)としてのアプリオリ対象パラメ
ータを用いて個別化されうる。TDIは対象の1日総インスリン必要量を表し、1型糖尿
病の病歴を有する任意の対象に関する容易に利用可能な臨床パラメータである。cは、
【数13】
【0051】
としての単位の一貫性を維持するための係数であり、ここで、ヒューマログ(Humal
og)インスリン類似体の1Uの99%が系から消失する平均クリアランス時間は6.6
4時間(平均成人では1.5時間[21])として表されており、1Uのインスリンの変
換は標準的な臨床的定義に従い6000pmとして適用されている。SFは、もう1つ
の容易に利用可能な臨床パラメータである対象の基礎プロファイルの実際の値に基づく倍
率であり、更なる調節の前のそれらのTDIから計算された標準的な開始基礎量として推
奨されている値に対するものであり、以下のとおりである。
【0052】
SF=bcalc/(b) (33)
calc(U/時間)=(KTDI)/24 (34)
0.4≦K≦0.6 (35)
ここで、bはU/時間(U/h)単位の対象の実際の名目基礎値であり、bcalc
、微調整前のT1DMの初期基礎率を有する対象に関する推奨計算値であり、該計算のた
めの式における係数は、対象の適合性、年齢および他の特性に応じて0.4〜0.6で変
動する。T1DMを有する対象の基礎インスリンプロファイルは対象の1日注射レジメン
の標準的な部分であり、食事による妨害の非存在下の正常血糖値に対象を維持するように
意図される[18]。したがって、この無単位倍率は、対象のTDIにより計算された標
準値と比較して開ループグルコース濃度を維持するために対象がどのくらい多くの又は少
ないインスリンを実際に必要としているかに基づいて制御シグナルを低減することが可能
であり、したがって、標準値より大きい又は小さいインスリン感受性の尺度となりうる。
【数14】
【0053】
MPCにおいて使用するために、変換関数により記載された線形時間不変量システムは

【数15】
【0054】
としての状態空間形式として書き直され、ここで、システム状態は
【数16】
【0055】
であり、パラメータ行列は
【数17】
【0056】
である。
【0057】
この式は、将来のグルコース値の展開を予測するために、そして血糖/インスリンベー
スライン逸脱を不利にする具体的な費用目標に基づいてインスリン運搬を最適化するため
に、MPCにより明らかに使用される。
【0058】
更に強調すると、MPCおよびPIDコントローラーの両方の設計および開発において
同じモデルが使用されうる。MPCは該モデルを直接的に利用するが、PIDコントロー
ラーの設計のIMCアプローチは、コアモデル[23]に基づいてPIDコントローラー
設定を定める3つの定数(比例、積分および微分時間定数)の厳密な分析的表現を与える
。したがって、この方法は、IMC PIDコントローラのパラメータが、それが標的プ
ロセスを記述するモデルの厳密な反転であれば、何であるべきかを示す。実際に、適当な
調整下、1工程MPCコントローラーはIMC PIDコントローラーと同一であると認
識されうる[13]。基本的に、同じモデルに基づくIMC PIDおよびMPC設計は
数学的に類似しており、それらの性能も密接に関連しているであろう[13]。
【0059】
結果
設計されたPIDコントローラーの性能は、FDAにより承認されたUVA/パドバ(
Padova)代謝シミュレーター[17]内でインシリコ(in silico)で試
験される。設計されたPIDコントローラーの性能の改善は、設計されたMPCコントロ
ーラーの性能の改善に直接的に関連づけられうる。なぜなら、設計されたMPCコントロ
ーラーは、同じ個別化スキームを有する同じモデルから誘導されるからである。該シミュ
レーターは、大きな対象間変動性を有する種々の時間不変量臨床的特徴を有する10個の
対象モデルを含有する。該シミュレーターはまた、対象の基礎率およびインスリン対炭水
化物比(I:C)(インスリンの単位当たりにその特定の患者に関して何グラムの炭水化
物が補償されるかを表す臨床パラメータ)に基づいて、各対象に関する食事サイズが与え
られたら最適なボーラス注射をもたらす能力を有する。
【0060】
開示されているAPの文脈において、最適な調節は、妨害を受けない場合に血液グルコ
ース濃度を110mg/dlの目標値(正常血糖範囲の平均)に維持する、各対象に関す
る完全な基礎率を与えるものとして定義される。更にまた、食事のグルコース含量を過剰
または過少に補償しない完全なボーラスが各食事の開始時に与えられるべきであり、それ
により、遅い食後低血糖の回避、および目標値に戻る前の高血糖の最小化の両方をもたら
す。一方、最小量の調節は同じ基礎率を実施可能な様態で尚ももたらすが、食事妨害拒絶
(meal disturbance rejection)を回避し、したがって、長
いエピソードの高血糖となる傾向にあるであろう。各コントローラーの性能は、制御仕様
において概説されている3つの目的を考慮した医学的に奨励されたメトリック(測定基準
)を用いて測定され、それはリニア・スケール・アプローチ(linearly sca
led approach)において評価され、ここで、完全な基礎のみの制御スキーム
はベースライン(「0」)として用いられ、完全な基礎−ボーラススキームは最良性能体
(「1」)として用いられる。具体的なメトリック(測定基準)は以下のとおりである。
【0061】
1)ピーク食後血液グルコース濃度、
2)対象の血液グルコース濃度が80〜140mg/dlの正常血糖範囲内である、合計
時間の百分率、
3)対象の血液グルコース濃度が70〜180mg/dlの臨床的に安全な非高血糖かつ
非低血糖血液グルコース範囲[18]内である、合計時間の百分率、ならびに
4)対象の血液グルコース濃度が180mg/dlより大きな高血糖範囲内である、合計
時間の百分率。
【0062】
これらのメトリックに加えて、70mg/dl未満の血液グルコース濃度で対象を低血
糖にするいずれのコントローラーも廃棄される。
【0063】
該コントローラーはシミュレーションの開始からの20分間の初期化時間の後でスイッ
チが入れられる。シミュレーションの開始の7時間後に50gの食事を与える。それぞれ
の対象の血液グルコースプロファイルを食事妨害後24時間にわたって記録し、シミュレ
ーション継続時間を31時間とする。5分ごとにコントローラーを作動させ、実際のイン
スリン運搬を約0.05Uに離散化して、現世代の皮下インスリンポンプ[24]に関す
る制約をシミュレートする。
【0064】
ゲインの補正係数部分に関する1600および2400のルール、およびゲインの基礎
倍率部分に関する0.4〜0.6のルールの選択を最初に試験する[18]。
【0065】
全ての被験制御スキーム、および該ルールの残部において用いられるそれらのそれぞれ
のIDを表Iに示す。τを180分(3時間)に固定した。2400の補正係数ルール
および0.4の基礎計算係数は1600および0.6と数学的に同一である。インスリン
フィードバックを伴う及び伴わない[14]に基づく該ゲインの非個別化形態も比較のた
めに提示される。図1における関連コントローラー変動の平均応答および表IIにおける
各コントローラー変動に関するスケール化(scaled)性能スコアは、1600およ
び0.4の設定が最高スケール化スコアを与えることを示している。
【0066】
これらの設定を用いて、τの値を唯一の調節パラメータとして60分間隔で60分か
ら300分まで変動させる。表IIにおけるスケール化性能スコアから理解されうるとお
り、120分のτは、試験された設定のなかで最良の応答を与え、低血糖のいずれの例
をも尚も回避している。1時間のτを有するコントローラー設定を低血糖の存在ゆえに
廃棄した。
【0067】
この方法により、無ノイズ条件下、最適IMC PIDコントローラーを見出した後、
状況に応じてノイズ条件下で該コントローラーを調整解除して、ロバスト性を試験する。
τを30分間隔で2時間から6時間まで変動させる。4時間以下のτ設定は低血糖を
誘発した。図2は、ノイズ条件下で低血糖を発現しないコントローラーの平均グルコース
およびインスリンプロファイルを示す。図2において、および表IIのスケール化性能ス
コアにおいて見られうるとおり、4.5時間のτ設定は、最適基礎−ボーラスプロファ
イルにより近い性能を発揮する一方、低血糖を尚も回避しており、平均食後(食事の後)
ピークは183mg/dlであり、食事妨害の24時間以内で70mg/dl〜180m
g/dlの安全範囲内の時間が95%以上である。図3はこの設定の各工程に関する平均
最小および最大値を示し、最適基礎−ボーラス制御スキームと比較している。該図から理
解されうるとおり、開示されているコントローラーは若干高い食事ピークを有するが、そ
れは該シミュレーションの大部分に関して全対象グルコースプロファイルを目標範囲内に
尚も維持しており、低血糖のいずれの例をも回避している。
【0068】
考察
この開示は、PIDコントローラーパラメータを計算しそれをAP用途のためにIFB
と組合せるための個別化スキームを含有するIMCベース設計方法の価値を実証している
。この開示はまた、個別化スキームを組込んでいる同じモデルから誘導されたいずれかの
MPCコントローラーに関する個別化スキームの価値を実証している。示されているシミ
ュレーション条件下、IFBの含有およびコントローラーの積極性の対象特異的個別化を
有する対象コントローラーは、医学的に推奨された目標値に対するそれぞれのコントロー
ラーの順守を定量するように意図されたメトリックのセットに基づいた良好な制御結果を
与える。適切な個別化方法の選択および最適なτ値は、最適な基礎−ボーラススキーム
に厳密に合致しうる得られた平均対象グルコースプロファイルを与える一方で、全10名
の被験対象に関して低血糖を回避する。
【0069】
AP用途のためのIMCベースアプローチによりPIDコントローラーパラメータを得
るために、三次制御関連モデルを使用した。付随的なIFBスキームを含有する得られた
PIDコントローラーを、アプリオリ対象特性に基づいて個別化し、UVA/パドバ(P
adova)代謝シミュレーターで10例のシミュレート化対象に対して試験した。コン
トローラー性能メトリックのセットにより、最適コントローラー設定を決定し、個別化ル
ールパラメータおよびτにおける行った選択に基づくPIDコントローラーは、最適な
基礎−ボーラススキームと比較しうる性能を達成することが可能であった。平均食後ピー
クは185mg/dl未満に維持され、全対象に関する合された合計シミュレーション時
間の97%は70〜180mg/dlの目標安全血液グルコース範囲内に維持され、残り
の時間の80%は80〜140mg/dlの正常血糖値範囲内であり、全ては低血糖の例
を誘発しなかった。該コントローラーは、時間消費モデル決定工程を伴うことなく、この
性能を達成可能であり、したがって、実際の用途において、より大きな有用性を有するで
あろう。
【0070】
IMC PIDコントローラーを誘導するために使用したものと同一の、個別化を組込
んでいる三次モデル制御関連モデルから、MPCコントローラーを誘導した。適当な調整
下、MPCコントローラーはPIDコントローラーと同一であると認識されうることが、
これまでに示されている[13]。したがって、IMC PIDコントローラーの個別化
により実現される性能の改善はまた、同一モデルから誘導されたMPCコントローラーに
より実現されうる性能の改善に直接つながる。
【0071】
参考文献
【表1】
【0072】
【表2】
【表3】
図1
図2
図3