(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6914925
(24)【登録日】2021年7月16日
(45)【発行日】2021年8月4日
(54)【発明の名称】インクジェットプリンタ
(51)【国際特許分類】
B41J 2/01 20060101AFI20210727BHJP
B41J 11/02 20060101ALI20210727BHJP
【FI】
B41J2/01 305
B41J2/01 401
B41J11/02
【請求項の数】9
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2018-518580(P2018-518580)
(86)(22)【出願日】2016年10月7日
(65)【公表番号】特表2018-531167(P2018-531167A)
(43)【公表日】2018年10月25日
(86)【国際出願番号】IB2016056030
(87)【国際公開番号】WO2017060875
(87)【国際公開日】20170413
【審査請求日】2019年10月4日
(31)【優先権主張番号】102015000059729
(32)【優先日】2015年10月8日
(33)【優先権主張国】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】518118231
【氏名又は名称】アレフ ソチエタ ア レスポンサビリタ リミタータ
【氏名又は名称原語表記】ALEPH S.r.l.
(74)【代理人】
【識別番号】100159905
【弁理士】
【氏名又は名称】宮垣 丈晴
(74)【代理人】
【識別番号】100142882
【弁理士】
【氏名又は名称】合路 裕介
(74)【代理人】
【識別番号】100158610
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 新吾
(74)【代理人】
【識別番号】100132698
【弁理士】
【氏名又は名称】川分 康博
(72)【発明者】
【氏名】マネス,ロベルト
【審査官】
高松 大治
(56)【参考文献】
【文献】
特開2015−105163(JP,A)
【文献】
特開2010−046859(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2006/0280543(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01−2/215
B41J 11/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷基材(2)に印刷するよう動作可能なインクジェットプリンタ(1)であって、
前記インクジェットプリンタ(1)が、
供給方向(9)に前記印刷基材(2)を供給するための摺動移送面(10)と、
前記摺動移送面(10)上に印刷ステーション(19)を構成するよう前記摺動移送面(10)の上方に配置される印刷装置(17)と、
摺動中に前記印刷基材(2)を前記摺動移送面(10)に密着させ静止させた状態に保持するよう前記摺動移送面(10)の下方に配置される吸引手段(20)と、
を備えるインクジェットプリンタ(1)において、
前記摺動移送面(10)の平坦度を調整するための調整アッセンブリ(39)を備え、
前記吸引手段(20)は、少なくとも一つの箱状部材(22)を備え、前記少なくとも一つの箱状部材(22)の上部は開口しており、
前記調整アッセンブリ(39)は、前記箱状部材(22)に配置される少なくとも一つの調整装置(34)を備え、
前記開口を覆うように、前記摺動移送面(10)の下面に接して吸引板(31,33)が配置されており、
前記調整装置(34)は、吸引によって前記吸引板(31,33)の湾曲が生じた場合に当該湾曲を補正するよう構成されている、インクジェットプリンタ。
【請求項2】
請求項1に記載のインクジェットプリンタ(1)において、前記調整装置(34)は、前記箱状部材(22)に配置されるとともに、前記摺動移送面(10)とともに、前記吸引板(31,33)を前記摺動移送面(10)に対して垂直な方向に移動させるよう動作可能であるくさび手段(36,37)を備えるインクジェットプリンタ。
【請求項3】
請求項2に記載のインクジェットプリンタ(1)において、
前記くさび手段(36,37)は、
傾斜面を有する少なくとも一つの固定部材(37)と、
少なくとも一つの可動部材(36)であって、前記可動部材(36)が前記摺動移送面(10)と平行に移動することによって前記固定部材(37)が前記吸引板(31,33)とともに前記摺動移送面(10)に対して垂直な方向に移動するよう前記固定部材(37)の前記傾斜面に連結される少なくとも一つの可動部材(36)と、
を備えるインクジェットプリンタ。
【請求項4】
請求項3に記載のインクジェットプリンタ(1)において、前記可動部材(36)は、ネジ手段(35)と係合するナットを備えるインクジェットプリンタ。
【請求項5】
請求項1から4のうちの一に記載のインクジェットプリンタ(1)において、
前記印刷ステーション(19)から上流側にある前記摺動移送面(10)の一部が前記印刷基材(2)を安定させる安定部(21)を構成しており、
前記吸引手段(20)は、少なくとも二つの箱状部材(22)を備え、前記少なくとも二つの箱状部材(22)の一つは前記印刷ステーション(19)に配置されるとともに、少なくとも他の一つは前記安定部(21)に配置されており、
前記調整アッセンブリ(39)は、それぞれの箱状部材(22)にまたは少なくとも前記安定部(21)に配置される箱状部材(22)に対する調整装置(34)を備えるインクジェットプリンタ。
【請求項6】
請求項5に記載のインクジェットプリンタ(1)において、前記吸引手段(20)は、前記印刷ステーション(19)における吸引が前記安定部(21)における吸引より小さくなるよう前記供給方向(9)における吸引を異ならせるように、構成されるインクジェットプリンタ。
【請求項7】
請求項6に記載のインクジェットプリンタ(1)において、前記吸引手段(20)は、前記印刷ステーション(19)および前記安定部(21)における吸引力を独立して制御するよう構成されるインクジェットプリンタ。
【請求項8】
請求項7に記載のインクジェットプリンタ(1)において、
それぞれの箱状部材(22)はそれぞれ対応する吸気源に接続されており、
吸引力は、それぞれの吸気源の吸引強さを調整することにより制御されるインクジェットプリンタ。
【請求項9】
請求項6から8のうちの一に記載のインクジェットプリンタ(1)において、前記吸引手段(20)は、吸引力が前記供給方向(9)に減少する一連の吸引領域が前記安定部(21)上に形成されるよう、構成されるインクジェットプリンタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェットプリンタに関する。
【0002】
特に、本発明は、織物、紙またはプラスチック材料等で形成された印刷基材に印刷するよう動作可能であって、所定の供給方向に印刷基材を供給するための摺動移送面と、移送面上に印刷ステーションを構成するよう移送面の上方に配置される印刷装置と、摺動中に印刷基材を移送面に密着させ静止させた状態に保持するよう移送面の下方に配置される吸引手段と、を備えている、インクジェットプリンタに関する。
【背景技術】
【0003】
上記インクジェットプリンタは、旗、ポスター、屋外広告板、カンバス、家具用布地等の大きい形式の基材に印刷するために、織物・グラフィックス産業において広く用いられている。
【0004】
このような印刷基材は通常、平坦なシートの態様で、または可撓性印刷基材の場合には引き出されてプリンタから出て来た後にまた巻き取られるロールの態様で、プリンタに供給される。両方の場合においてであるが、特に可撓性印刷基材の場合には、印刷ステーションを通って移動するときに印刷基材を移送面に静止させた状態で保持することは、良好な品質の印刷を達成するには不可欠である。
【0005】
そのために、プリンタを通る通過の全体にわたって比較的強く十分に均等な吸引力を印刷基材に印加する吸引手段が従来技術において用いられている。
【0006】
また、吸引手段の効率を最大限にするために、印刷基材の態様に応じて吸引を部分的に行うことによって、つまり、印刷基材によって実際に占められる移送面のこれらの領域にのみ吸引手段を作動させることによって、移送面を「マスクする」ことが知られている。
【0007】
上述した吸引手段の使用は効果的で信頼できるが、実際には、いくつかの場合において、特に濡れたときに印刷基材の引っ張り強度が低くなる場合、吸引力を、材料を移送面上の定位置に保持するのに十分高くする必要性と同時にインクで濡れたときに印刷基材の構造に影響して窪んだまままたは盛り上がったままとなってしまうことがないよう十分優しく扱う必要性を両立することが非常に難しいことが分かる。
【0008】
この問題は、印刷ステーションにおける印刷基材上に印加される吸引が、印刷ステーションから上流側で印加される吸引より小さくなるよう、供給方向に沿って吸引を異ならせることによって、解決されることが分かっている。
【0009】
印刷の品質を損なう虞がある従来のインクジェットプリンタに関するさらなる問題は、移送面、したがってそこに密着する印刷基材を正しい平坦度に維持することに関する。吸引によって、通常孔が空けられた支持シートの上を摺動する可撓性ベルトから構成される移送面が、下方へと湾曲しようとする傾向がある場合があり、印刷基材の表面が平らでなくなり、その結果、印刷に欠陥が生じる虞がある。
【0010】
もちろん、この問題は、吸引が印加される移送面全体で生じうるが、より大きい吸引力を受ける移送面の部分において、例えば吸引を異ならせる場合には、印刷ステーションから上流側に位置する移送面の部分において、その問題はより明らかである。
【発明の概要】
【0011】
本発明の目的は、上記欠点を克服すると同時に製造するのが簡単で経済的である上述したインクジェットプリンタを提供することにある。
【0012】
本発明では、請求項1に記載のインクジェットプリンタを、好ましいものとして直接的にまたは間接的に請求項1に従属する請求項のうちのいずれか一に記載のインクジェットプリンタを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
ここで、本発明を、限定するものではない実施形態を例示する以下の添付図面を参照して説明する。
【
図1】分かりやすくするために部品を取り外した、本発明にかかるインクジェットプリンタの好ましい実施形態の斜視図である。
【
図2】分かりやすくするために部品を取り外した、
図1のプリンタの側面図である。
【
図3】分かりやすくするために部品を取り外した、
図1の細部の斜視図である。
【
図5】
図3の細部の拡大した大きさの断面図である。
【
図6】分かりやすくするために部品を取り外した、本発明にかかるインクジェットプリンタの他の実施形態の細部の斜視図である。
【
図8】
図6の細部の拡大した大きさの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1において、参照符号1は、織物、紙またはプラスチック材料等で形成された大きい形式の印刷基材2に印刷するのに適したインクジェットプリンタ全体を示す。インクジェットプリンタは、印刷基材に対して横方向に往復運動で移動する印刷ヘッドの下方で長手方向に印刷基材が供給されるいわゆる「可動印刷基材」構成を有する。
【0015】
印刷基材2を、平坦なシートの態様で、または
図2に例示として示し以下の説明で具体的に記載する「ロール・トゥ・ロール(roll−to−roll)」として知られる方法に関するロールの態様で、プリンタ1に供給することができる。ロールの態様に関して具体的に記載するが、その汎用性を限定するものではない。
【0016】
図1に示す通り、インクジェットプリンタ1は、フレーム3を備える。フレーム3は、互いに向かい合うとともに平行であり専用の脚部によって床の上に載置される二つの壁4を備える。壁4の間には、二つのローラ7の周囲にループ状に巻き付けられるベルト6を備える連続的なコンベヤー5が配置される。ローラ7は、壁4に対して垂直であるそれぞれ対応する軸8回りに回転するよう壁4に装着される。ローラ7により、ベルト6上に、好ましくは水平であり軸8に対して垂直な供給方向9に移動可能である搬送用ブランチと、搬送用ブランチの下方に配置される搬送用ではない戻りブランチと、が構成される。
【0017】
図1および
図2に示す通り、連続的なコンベヤー5の搬送用ブランチは、使用中に、供給方向9にプリンタ1を通るよう印刷基材2を搬送するための移送面10を構成する。移送面10は、横方向に前記供給方向9と平行な二つの長手方向縁部と、連続的なコンベヤー5の軸の端部を構成する長手方向縁部に対して垂直な二つの横方向縁部12と、によって定義される。
【0018】
具体的には、二つの横方向縁部12のうちの一方は、使用中に、軸8と平行な軸の回りに回転自在に支持要素(図示せず)に装着されるロール13から引き出される印刷基材2のための入力側11を、移送面10に構成している。確実に、移送面10に供給された印刷基材2を完全に平坦にし、波打たないようにするために、入力側11には平滑化ローラ14が配置されている。平滑化ローラ14は、移送面10とともに、横方向にかつ摺動状態で印刷基材2と係合するのに適した狭窄通路を構成するために、対応するローラ7と対向しており、軸8と平行な軸の回りに回転自在に壁4に装着される。
【0019】
移送面10の反対側の端部において、他方の横方向縁部12は、移送面10に、印刷された基材2のための出力側15を構成している。出力側15では、使用中に、ロール16を形成するよう軸8と平行な電動ローラ上に再び巻き取られる。
【0020】
フレーム3および連続的なコンベヤー5に加えて、プリンタ1はさらに、移送面10の上方で供給方向9に対して垂直な方向に往復運動で移動するよう直線状ガイドビーム18に摺動可能に装着される印刷ヘッド17(それ自体は既知である)を備える。具体的には、ガイドビーム18は、フレーム3によって支持され、移送面10の中間部において一方の壁4から他方の壁に延設され、出力側15に面する側で、印刷ヘッド17を片持ち式で支持する。したがって、往復運動中に、印刷ヘッド17は、ガイドビーム18と出力側15との間に位置するとともに、前記移送面10に、印刷ステーション19を構成する、移送面10の横方向部分の上方で移動する。
【0021】
最後に、プリンタ1は、連続的なコンベヤー5と関係する吸引装置20を備える。吸引装置20は、移送面10と印刷基材2との間であらゆる相対的な移動を防止すると同時に印刷基材2が移送面10とともに供給方向9に移動するよう、移送面10上の定位置に印刷支持材2をしっかりと保持する。
【0022】
吸引装置20は、印刷ステーション19に、そして印刷ステーション19から供給方向9に上流側の、また場合によっては下流側の移送面10の他の部分に、所定の吸引力を印刷基材2上に印加するよう構成することができる。
【0023】
吸引力を、吸引力が印加される移送面10のすべての部分で同じとできる、または添付図面に示す好ましい実施形態では、異なる力とすることもできる。具体的には、この場合、印刷ステーション19における吸引力が印刷ステーション19から上流側の吸引力より小さくなるよう供給方向9に沿って異なる力とする吸引力を、移送面10を通じて、基材2に印加するよう、吸引装置20は構成される。
【0024】
このように、印刷基材2は滴出されたばかりのインクで濡れているので、通常変形しやすい(less resistant)印刷ステーション19においては、移送面10に密着させるのに十分であるが印刷基材2の構造に皺や窪み等の何らかの変形が生じるには足りない下向きの力を印刷基材2に印加することができる。
【0025】
一方、印刷基材2が乾いており、したがってより変形しにくい(more resistant)、入力側11と印刷ステーション19との間に位置する移送面10の部分(以下では安定部21という)においては、吸引装置20は、印刷基材2により高い吸引力を印加するよう構成される。さらに、安定部21においては、印刷基材2に印加する吸引力を、均等にすることも、あるいは印刷ステーション19において印加する吸引力より必ず大きいが供給方向9に沿って減少させることもできる。
【0026】
添付図面に示す通り、吸引装置20は、移送面10の直下に配置される。吸引力はベルト6を通じて印刷基材2上に印加される。そのために、ベルト6は、通気性のある材料で、例えば微小な孔が空けられた材料または網状材料で形成される。
【0027】
図示の例において、吸引装置20は、供給方向9と交差する方向に好ましくは移送面10の全幅にわたって延設される二つの
箱状部材22を備える。
箱状部材の一方は印刷ステーション19に、他方は安定部21の中間領域に配置される。
箱状部材22は、供給方向9において同じである(図示の例のように)か、または大きさが異なるが同じ構成を有することもできる。次に、その例を説明する。
【0028】
図2、
図3および
図4に示す通り、それぞれの
箱状部材22は連続的なコンベヤー5に配置され、カップ状で一般的に直方体のボックス構造23を備える。いわば、ボックス構造23は、移送面10と平行な平坦な底壁24と、底壁24および供給方向9に垂直な二つの長い側壁25と、供給方向9に対して平行に延設される二つの短い側壁26と、を備える。短い側壁26は、
箱状部材22の内部を外部吸気源(図示せず)に接続するのに適した開口部を有する。
【0029】
それぞれの
箱状部材22はさらに、長い側壁25と平行であり同じ大きさを有する中央パーティション27を備える。パーティション27は、
箱状部材22を二つの同一なチャンバ28に分割する。チャンバ28のそれぞれは、短い側壁26における二つの対応するそれぞれの孔29を通じて外部吸気源(図示せず)と連通状態にある。
【0030】
図2に示す通り、それぞれの短い側壁26における孔29は、吸気源(図示せず)に直接接続される対応するそれぞれのマニホルド30を用いて互いに流体が通過可能に接続される。したがって、二つのチャンバ28における吸引力は同じである。あるいは、マニホルド30は、必要に応じて二つのチャンバ28における吸引力を異なる力とするよう、流体が通過可能にそれぞれのチャンバ28をそれぞれの吸気源に接続するために配置される二つの別々のダクトと置き換えることができる。
【0031】
図4を参照して、
箱状部材22には長方形グリッド31が最上部に配置される。グリッドは、長い側壁25および短い側壁26に沿ってボックス構造23に堅固に固定されるとともに、複数のスロット32が形成されている。スロットは、比較的大きく、好ましくは、あらゆる必要とされる洗浄作業や保守作業を行えるよう作業者が手を
箱状部材22の内部に入れることができる程度に大きい。
【0032】
好ましくは、スロット32は、グリッド31において二つの平行な列に均一に分配される。それぞれの列は、対応するそれぞれのチャンバ28に面し、対応するそれぞれの多孔板33によって覆われる。多孔板33は、ガスケットを間に挟んでグリッド31の上面に接続されるとともに、
図2に示す通り、上方を摺動する移送面10の下面と接触する。
【0033】
他の実施形態では、二つの多孔板33を、スロット32をすべて覆うほど大きい単一の多孔板と置き換えることもできる。
【0034】
好ましくは、グリッド31を通じて
箱状部材22の内部にアクセスできるよう、多孔板33はグリッド31に取り外し可能に接続される。
【0035】
インクジェットプリンタ1はさらに、移送面10の平坦度を調整しあらゆる窪みを取り除くよう動作可能である調整アッセンブリ39を備える。移送面10が非常に大きい場合があるので、吸引力によって、小さいながら吸引力の効率を低減し印刷面を不均一にすることが十分ありえるある量だけベルト6と多孔板33とが下方へ湾曲する場合もある。その場合、印刷の品質の点から悪影響が生じうる。
【0036】
万一、使用中に、移送面10の平坦度が適切でない場合には、移送面10の高さを速く調整し、印刷基材2の移送面10への密着の最適条件を容易に回復するよう、調整アッセンブリ39を用いることができる。
【0037】
好ましくは、調整アッセンブリ39は、それぞれの
箱状部材22に対して調整装置34を備える。他の実施形態では、
箱状部材22のうちのいくつかのみに、対応するそれぞれの調整装置34を配置することができ、そして特に吸引力を異なる力とする場合には、最大の吸引力が印加されしたがって吸引力の効果によって移送面10が曲がってしまう可能性が高い、安定部21に配置される
箱状部材22にのみ対応するそれぞれの調整装置34を配置することができる。
【0038】
そのために、
図3、
図4および
図5に示す通り、調整装置34は、それぞれの
箱状部材22に対して、一ペアのガイドネジ35を備える。ガイドネジのそれぞれは、対応するそれぞれのチャンバ28内において供給方向9に対して直交して延設されるとともに、その軸の端部で短い側壁26によって回転可能に支持される。
【0039】
それぞれのガイドネジ35は、その中間部において、ネジ部分を有するナット36と係合する。ナット36は、ガイドネジ35の回転運動を供給方向に対して垂直な方向におけるナット36の線形運動に変換するよう構成される。それぞれのナット36は、最上部に傾斜面が形成されている。傾斜面は、くさび状部材37の傾斜した下面に摺動可能に連結される。くさび状部材37は、グリッド31の中央部の下面に堅固に接続されている。使用中に、ガイドネジ35の回転によるガイドネジ35に沿ったナット36の一方の方向における移動または他方の方向における移動によって、くさび状部材37がしたがって移送面10が垂直方向上向きにまたは下向きに移動するよう、ナット36とくさび状部材37との接触面は傾斜されている。
【0040】
それぞれのガイドネジ35の二つの軸方向端部の一方は、作業者によって手動でまたは専用器具(図示せず)を用いて自動的に動作させることができるように、対応するそれぞれの短い側壁26の外部に延設される。専用器具は、移送面10の平坦度を測定するよう配置される適切なセンサによって出力される電気信号に基づいて電子制御ユニットによって制御される。
【0041】
図6〜
図8に示す実施形態では、
箱状部材22は、グリッド31を補強しそして調整装置34と協働してグリッド31がしたがって移送面10が曲がってしまわないようにするよう配置されるフレーム40を収容する。
【0042】
フレーム40は、
箱状部材22の壁25の間に延設されるとともに複数の長手方向バー42を用いて互いに堅固に接続される複数の横断部材41を備える。バー42は、
箱状部材22の壁26の間に延設され、好ましくは二つのチャンバ28間で均等に分配され、そして排出される空気をそれぞれの対応するチャンバ28の内部に分散させるような大きさにされている。
【0043】
図6および
図8に示す通り、それぞれのバー42には、上側縁部に複数の凹部43が形成されている。凹部43は、グリッド31の対応するそれぞれの部分と係合する。凹部43の間には、対応するそれぞれのバー42の上側縁部に沿って、一連のリブ44が形成される。リブ44は、グリッド31のスロット32の内側に突出しており、プレート33が載置されるグリッド31の上面と同一平面内にある。このように、リブ44は、プレート33を支持するさらなる支持点を、スロット32に、すなわち吸引力がプレート33の下方への変形を引き起こす虞がある領域に、形成する。
【0044】
さらに
図8に示すものでは、
箱状部材22の中心に配置された横断部材41は、先に説明した例におけるくさび状部材37と同じ機能を実行する(以下では同じ参照符号を付す)。
【0045】
そのために、横断部材37は、底部には、ナット36の上側傾斜面に摺動可能に連結される傾斜面45が形成され、最上部には、グリッド31に接するよう配置される平坦面46が形成される。場合によっては、横断部材37をグリッド31に堅固に接続することができるが、必ずしもそうする必要はない。
【0046】
先の例に関して説明したのと同じように、使用中に、ガイドネジ35の回転によるガイドネジ35に沿ったナット36の一方の方向における移動または他方の方向における移動によって、横断部材37が垂直方向上向きにまたは下向きに移動し、その結果、この移動が直接またはフレーム40を介してグリッド31に、したがって移送面10に伝動する。
【0047】
インクジェットプリンタ1の機能は上述の記載から明らかであり、さらなる説明は不要であろう。
【0048】
それでも、念のために、図示し説明した例における
箱状部材22の幅だけでなくその数も任意であり、プリンタ1の構造によって要求される設計および必要性に応じて変更できることを記載しておく。具体的には、安定部21の
箱状部材22を、供給方向9に連続的に配置される二つ以上の
箱状部材22と置き換えることもできよう。その場合、材料に同じ吸引力を印加するよう動作されることもでき、または一の
箱状部材から次の
箱状部材へと最小限の力(それでも印刷ステーションにおける吸引力より大きい)に達するまで減少していく吸引力を印加するよう動作させることもできる。
【0049】
それぞれの
箱状部材22は、他の一の
箱状部材または他の複数の
箱状部材の22から独立して吸引力を制御するよう動作可能な対応するそれぞれのモータ(図示せず)に接続される。
【0050】
移送面10の摺動に関しては、二つのローラ7のうちの一方は駆動ローラであり、他方は従動ローラである、所定の大きさの一定のシーケンスのステップで連続的なコンベヤー5を前進させるよう制御される。あるいは、両方のローラ7を駆動することもでき、互いに同期させる。
【0051】
最後に、
図1に示す通り、可能な限り吸引装置20の吸引効率を最適化するために印刷基材2の幅に応じて、移送面10を「マスクする」こともできる。「マスキング」は、移送面10上の、使用中に印刷基材2で覆われることがない側部に配置される適切な形状と大きさのマスキングプレート38を用いて、非常に素早く容易に実行される。マスキングプレート38は、前記マスキングプレート38と対応する短い側壁26の上面の一部と間の磁気的連結を用いて接続される。