【発明が解決しようとする課題】
【0002】
本発明が適用され得る農薬の例としては以下が挙げられる:プロフェノホス、スルプロホス、メチルパラチオン、アジンホスメチル、メチル-s-ジメトン、ジクロルボス、オメトエート、ヘプテノホス(heptenophs)、チオメトン、フェナミホス、モノクロトホス、プロフェノホス、トリアゾホス、メタミドホス、ジメトエート、ホスファミドン、マラチオン、クロルピリホス、メビンホス、エチオン、トリクロルホン、ジスルホトン、オキシジメトン-メチル、フェンチオン、フェントエート、バミドチオン、ホサロン、テルブホス、フェンスルホチオン、ホノホス、ホレート、ホキシム、ピリミホスメチル、ジクロトホス、ホスメット、エトプロホス、フェナミホス、メチダチオン(methadithion)、アセフェート、イソサチオン(isozathion)、クロルメホス、チオメトン、カズサホス、ピラクロホス、テブピリムホス(terbupirimfos)、 クロレトキシホス、ピリミホスエチル、フェニトロチオン又はダイアジノンのような有機リン化合物。
【0003】
しかしながら、本発明は特に、ネオニコチノイド及び天然及び合成の両ピレスロイドに有用である。合成ピレスロイドは天然物には認められないピレスロイドである。本発明は特に合成ピレスロイド、例えば、ペルメトリン、エスフェンバレレート、フェンバレレート、デルタメトリン、シハロトリン、特にラムダシハロトリン、ビフェントリン、フェンプロパトリン、シフルトリン、テフルトリン、魚に安全なピレスロイド、例えばエトフェンプロックス、天然ピレトリン、テトラメスリン、s-ビオアレスリン、フェンフルトリン、プラレトリン及び5-ベンジル-3-フリルメチル-(E)-1R,3S)-2,2-ジメチル-3-(2-オキソチオラン-3-イリデンメチル)シクロプロパンカルボキシラート、シペルメトリン、フルシトリネート、フルバリネート、トラロメトリン、アレスリン、テトラメスリン、ビオアレスリン、シクロプロトリン、テフルトリン、アクリナトリン又は ゼータシペルメトリンに有用である。
ピリミカーブ、クロエトカルブ、カルボフラン、フラチオカルブ、エチオフェンカルブ、アルジカルブ、チオフロックス、カルボスルファン、ベンダイオカルブ、フェノブカルブ、プロポキスル、カルバリル、メソミル、カルタップ、ホルメタネート、キシリルカルブ、キシリルメチルカルバメート、イソプロカルブ、チオジカルブ、フェノキシカルブ、ベンフラカルブ、アラニカルブ又はオキサミルのようなカルバメート(アリールカルバメートを含む);
バチルス・チューリンゲンシスのようなバイオ農薬。
イミダクロプリド、アセタミプリド、ニテンピラム、チアメトキサム又はチアクロプリドのような、ネオニコチノイド。
【0004】
共力剤は、限定するものではないが以下のような殺菌剤とともに用いてもよい;ベノミル、カルベンダジム、シプロジニル、クロロタロニル(chlorthalonil)、ジメトモルフ、エジフェンホス、フェンプロピモルフ、メタラキシル、(R)-メタラキシル (エナンチオマー)、オキサジキシル、ピリフェノックス、チアベンダゾール、トリデモルフ、アゾキシストロビン、クレソキシムメチル又はトリアゾール、例えば、プロピコナゾール、ジフェノコナゾール、ブロモコナゾール、シプロコナゾール、エポキシコナゾール、ヘキサコナゾール、イプコナゾール、フェンブコナゾール、ミクロブタニル、ペンコナゾール、テブコナゾール、トリアジメホン、トリアジメノール、テトラコナゾール、トリチコナゾール又はウニコナゾール;更に続けてアシベンゾラル-S-メチル(furtheron acibenzolar-S-methyl)、ファモキサドン、キノキシフェン、スピロキサミン、フルジオキソニル、フェンピクロニル、フェンヘキサアミド 及び2-[α-{[(α-メチル-3-トリフルオロメチルベンジル)イミノ]オキシ}-o-トリル]グリオキシル酸-メチルエステル-o-メチルオキシム。好ましくは、カルベンダジム、シプロジニル、クロロタロニル(chlorthalonil)、メタラキシル(metala,yl)、(R)-メタラキシル、オキサジキシル、アゾキシストロビン、クレソキシム-メチル、プロピコナゾール、シプロコナゾール、エポキシコナゾール及びテブコナゾール、全てのストロビルリン、ジチオカルバメート、フタルイミド/ニトリル、トリアゾール、無機化合物、フェニルアミド、アニリノピリミジン、ジカルボキシアミド、有機リン化合物、ベンゾイミダゾール、モルホリン, カルボキシアミド、及びその他の殺菌剤。
【0005】
加えて、共力剤は次のような除草剤とともに用いてもよい:クロルトルロン、ビフェノックス、ブロモキシニル及びそのオクタノアート、アイオキシニル及びそのオクタノアート、フルオメツロン、グルホシネート、グリホサート、ペンディメタリン、スルコトリオン、3-フェニル-4-ヒドロキシ-6-クロルピリダジン、アラクロール、ジメテナミド、メトラクロール、(S)-メトラクロール(エナンチオマー)又はスルホニルウレア、例えばベンスルフロン、プリミスルフロン、プロスルフロン、トリアスルフロン、ピラゾスルフロン、ニコスルフロン、リムスルフロン、チフェンスルフロン、トリフルスルフロン、オキサスルフロン、シノスルフロン;更に続けてアトラジン(furtheron atrazine)、プロパキザホップ、トリネキサパックエチル、ピリデート、ジカンバ、クロジナホップ、フェンクロリム(fenclorin)、フルオメツロン、グルホシネート、グリホサート、スルコトリオン、3-フェニル-4-ヒドロキシ-6-クロルピリダジン、ジメテナミド、メトラクロール、(S)-メトラクロール、トリアスルフロン、ニコスルフロン又はリムスルフロン、全てのフェノキシ、ウレア、トリアジン、チオカルバメート、ビピリジル、ヒドロキシベンゾニトリル、チオカルバメート、カルバメート、ピリジン、ジニトロアニリン、ピリダジン、クロルアセトアニリド、アセトアミド、アミノ酸誘導体、ジフェニルエーテル、シクロヘキサンジオン、アリールオキシフェノキシプロピオネート、スルホニルウレア、イミダゾリノン、オキシアセトアミドを含む。
【0006】
虫、真菌(fungae)及び植物(例えば、草及び雑草)は、農薬に対する耐性を与えるP450及びエステラーゼ酵素を生成し(Oppenoorth F5 1985 Biochemistry and Genetics in Insecticide Resistance in Comprehensive Inect Physiology, Biochemistry and Pharmacologyを参照)、農薬に対する耐性又はより大量に農薬を用いる必要性のいずれかを結果として与え、両方ともコストがかかり、環境的に望ましくないことがよく知られている。
虫P450及びエステラーゼ酵素についての研究は、最近まで、殺虫剤の代謝及び耐性に大きく傾いていた。P450及びエステラーゼ酵素は、ほとんどが解毒のメカニズムとしてであるが、また、生体内活性化のメカニズムとしても、殺虫剤を代謝するため、虫によって用いられる主要なツールの一つである。P450及びエステラーゼ酵素は無毒化と生体内活性化を同時に行うことができる。それは例えば、ホスホロチオエート殺虫剤の場合、2つの結果のバランスは、化学物質及びP450酵素の両方の関数である。P450及びエステラーゼ酵素はまた、商業的に重要な共力剤、ピペロニルブトキシド(PBO)の標的である。殺虫剤との関係におけるP450に関する知見は、したがって、専ら代謝、共力作用及び耐性についてである。
【0007】
(欧州以外の)いくつかの国では、P450阻害剤PBOをピレスロイド及びネオニコチノイドのような殺虫剤とともに用いることが標準的なプラクティスであるが、Pest Manag Sci (2014) のRene Fegereisenによる“Insect P450 inhibitors and insecticides: challenges and opportunities”と題された論文にあるとおり、ピペロニルブトキシド(PBO)には欠点があり、環境的に安全で効果的なピレスロイド及びネオニコチノイドのような殺虫剤のためのP450阻害剤に対するニーズが残っている。
Pest Mang Sci 2012 68 178-184中の文献中に、いくつかの選ばれた天然化合物について、それらがイエバエ(Musca domestica)に対する天然ピレトラムの有効性を増加させる可能性について決定するための調査が行われた。全ての試験された化合物は、ピレトラムのための共力剤としてPBOよりも効果が低かった。
P450酵素は薬物代謝及び薬物相互作用、したがって新薬の開発において重要な役割を果たす。吸収、分布、代謝及び排出(ADME)プログラムは、代謝安定性を最適化し、高度に多形なP450との相互作用を最小化するため、必ず薬物候補を一群のヒトP450酵素に対して試験する。P450阻害の役割又は新薬の意図しない様々な薬学動態の誘導を超えて、多くの研究が、ヒト肝臓中の主要なP450酵素を不活性にするグレープフルーツジュース中のベルガモチンのような、飲食物からの誘導剤又は阻害剤により引き起こされる薬物相互作用を阻止することもまた目標としている。殺菌剤では、CYP51阻害剤(ラノステロール14−αデメチラーゼ阻害剤又はDMI)が標的とされるP450酵素の例である。P450阻害剤はまた、重要な植物成長調節物質としても開発されてきた。例えば、ジベレリン生合成は、パクロブトラゾールのような化合物によって阻害され、早期実止まりに恩恵である発育不全をもたらす。CYP707Aはアブサイシン酸の異化作用の鍵となる酵素であり、その阻害は、新たな植物成長調節剤へと導きうる。
【0008】
農薬について、農薬の標的に対する酵素の貢献は歴史的に重要である。しかしながら、P450又はエステラーゼ阻害剤は、除草剤の標的が受容体よりもむしろ主として酵素であるにもかかわらず、除草剤には広く用いられていない。アセチルコリンエステラーゼ酵素は、一時、殺虫剤(有機リン系農薬及びカルバメート)の主な標的であったが、その相対的な重要性は、合成ピレスロイド、次いでネオニコチノイドの導入以来、急速に低下している。その他の酵素及び酵素システムは、ベンゾイルフェニル尿素のような阻害剤の影響を受けるキチン質生合成を含む。
したがって、P450阻害剤である現在の薬物/農薬は、全て、生合成反応に含まれる特定のP450酵素を標的としている。しかしながら、害虫駆除に用いられる最も重要なP450阻害剤は、(非特定的に)異物代謝P450酵素を標的とする殺虫剤共力剤PBOである。
【0009】
P450におけるPBOの作用機序は、まずP450の活性サイトに結合し、メチレンジオキシフェニル基のカルベンラジカルとP450の二価鉄イオンの間で疑似不可逆的阻害剤複合体へと代謝することを含むと考えられている。阻害は代謝に依存するので、阻害の強度は特定のP450酵素に依存し、PBOは、全てのP450酵素を等しく阻害する「普遍的な」阻害剤ではない。PBOによる阻害は、カルベン−鉄複合体はCOによって置換することができないため、測定可能なP450の喪失につながる。古典的なオオムラ及びサトウによるP450の検出は、450nmにおけるP450−CO複合体の減少が測定されたものである。
ごくわずかの虫P450酵素が、重要な生理的プロセスに関係していると、現在知られてあるいは疑われており、生化学的にそのように作用することが確立されているものは更に少ない。5つのP450酵素がエクジソン生合成に関係しているとして知られており、これらは、ショウジョウバエのハロウィーン遺伝子の生成物である。
加えて、CYPA18A1は、エクジソン不活性化に貢献する、26−ヒドロキシラーゼ/オキシダーゼである。この遺伝子は、鱗翅類中で複製される。今日まで、エクジソン合成酵素を特定的に標的とした共同の取り組みはない。
【0010】
P450遺伝子は、阻害剤のスクリーニングプログラムの中で用いることのできる異種発現システムで、好ましくはインビボアッセイと合わせてアッセイすることができる、エクジソン生合成に関わる。既知の生理学的な基質を伴う、他の虫P450酵素の類は、CYP15酵素であり、基質としてメチルファルネソアート(CYP15A1)又はファルネソ酸(及びその同類物;CYP15C1)を用いる幼若ホルモン(JH)エポキシダーゼである。JHの合成阻害は、幼生段階では早熟変態を導き得て、成虫期には卵巣機能をブロックし得る。この幅広い標的は、いくつかの虫について細胞傷害性、及びJHを作る腺であるアラタ体の壊死を引き起こしうる45化合物、プレコセンの発見によって確認された。JH合成の最後又は最後から2つ目のステップをエポキシダーゼ阻害剤で標的とすることは、少なくともインビトロで成功した。数多くの論文が、メチルファルネソアートの蓄積を伴ったゴキブリアルタ体によるJH合成の阻害について記載している。阻害剤は、メチレンジオキシフェニル化合物、置換イミダゾールなど、P450阻害に必要なほとんどの既知の官能性を含むが、これらは高価で腐食性の化合物である。
【0011】
農業経済的穀物害虫又は病原媒介物中の殺虫剤耐性に含まれるP450遺伝子として明らかにされたものには以下が含まれる:CYP6CM1、タバコ・コナジラミ(Bemisia tabaci)中のイミダクロプリドに対する耐性を与える:CYP6CY3、モモアカアブラムシ(Myzus persicae)中のネオニコチノイド殺虫剤に対する耐性を与える;CYP6BQ23、花粉カブトムシ(M. aeneus)中のピレスロイドに対する耐性を与える;CYP9A12、CYP9A14、CYP6B7、オオタバコガ(H. armigera)中のピレスロイドに対する耐性を与える;CYP6Z1、CYP6Z2、CYP6M2、CYP6P3及びCYP325A3、蚊種(An. Gambiae)中のピレスロイドに対する耐性を与える。
エステラーゼの生成が高まると殺虫剤に対する耐性という結果をもたらし得る。良い例がモモアカブラムシ(M. persicae)において認められ、そこでは、エステラーゼE4又はFE4が、幅広い範囲の農薬を加水分解又は封鎖することができる。耐性を与える増幅されたエステラーゼが、タバコ・コナジラミ(B. tabaci)、オオタバコガ(H. armigera)、蚊種、コナガ(P. xylostella)などで明らかにされた。
【課題を解決するための手段】
【0012】
我々は、今、特定の不飽和有機酸及びその誘導体が、P450酵素の阻害剤として特に有効であることを発見した。我々はまた、これらが、ピレスロイド及びネオニコチノイド及びとりわけ合成ピレスロイドに基づく殺虫剤と一緒に用いられた場合、虫の死亡率を高めることを発見した。
我々はまた、これら不飽和有機酸及びその誘導体が、特にエステラーゼ酵素阻害剤として効果があることを発見した。我々はまた、これらが、ピレスロイド及びネオニコチノイド及びとりわけ合成ピレスロイドに基づく殺虫剤と一緒の場合、虫の死亡率を高めることを発見した。
不飽和有機酸及びその誘導体はまた、除草剤及び殺菌剤の性能を高めるため酵素を阻害する共力剤として用いてもよい。
いかなる不飽和酸及びその誘導体を用いてもよいが、不飽和有機酸及びその誘導体が天然物質又は天然物質由来であることが好ましい。
【0013】
我々はまた、効果的な阻害剤であるために、典型的には不飽和有機酸又はその誘導体は好ましくは5g/haから1000g/ha、より好ましくは、5g/haから500g/haの量で用いられることを発見した。我々は、該使用はまたある特定の性能のため求められる農薬活性成分の必要量を、共力剤が用いられない場合に比べて少なくとも50%削減することができることを発見した。
本発明において用いられる不飽和酸及びその誘導体は、C6からC24モノ−及びポリ不飽和酸、その無水物、エステル又はそのアルカリ若しくはアルカリ土類金属塩である。特にC8からC18モノ−又はポリ不飽和酸又はそのアルカリ金属塩を用いることが好ましい。C6からC24酸は更に、例えば、サンフラワー油、ヤシ油、オリーブ油及びその他の植物油、大豆、クリ及びセイヨウトチノキのような、通常、モノ−又はポリ−不飽和酸の混合物として抽出により得られる天然油生成品のような天然物由来であり、混合物が用いられる場合、酸混合物中の平均炭素原子数はC6からC24の範囲内であるのがよい。遊離酸及びこれら酸のアルカリ金属塩は特に好ましい物質である。
本発明において用いられるC6からC24モノ−及びポリ不飽和酸は、典型的には直鎖C6からC24モノ−及びポリ不飽和酸であり、このため式RCOOHを有し、式中Rは、6から24の炭素原子を有する直鎖モノ−又はポリ不飽和炭化水素基である。したがって、C6からC24モノ−及びポリ不飽和酸は、ミリストレイン酸(C14:1)、パルミトレイン酸(C16:1)、サピエン酸(C16:1)、α−リノレン酸(C18:3)、ステアリドン酸(C18:4)、エイコサペンタエン酸(C20:5)、ドコサヘキサエン酸(C22:6)、リノール酸(C18:2)、γ−リノレン酸(C18:3)、ジホモ−γ−リノレン酸(C20:3)、アラキドン酸(C20:4)、アドレン酸(C22:4)、パルミトレイン酸(C16:1)、バクセン酸(C18:1)、パウリン酸(C20:1)、オレイン酸(C18:1)、エライジン酸(Cトランス−18:1)、ゴンド酸(C20:1)、エルカ酸(C22:1)、ネルボン酸(C24:1)、メアド酸(C20:3)及びその誘導体から選択してよい。