特許第6914935号(P6914935)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ミシェルズ グループの特許一覧 ▶ ユニヴェルシテイト ヘントの特許一覧

特許6914935低放射率を有する被覆ポリマー基材を製造する方法
<>
  • 特許6914935-低放射率を有する被覆ポリマー基材を製造する方法 図000003
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6914935
(24)【登録日】2021年7月16日
(45)【発行日】2021年8月11日
(54)【発明の名称】低放射率を有する被覆ポリマー基材を製造する方法
(51)【国際特許分類】
   B05D 7/24 20060101AFI20210729BHJP
   B05D 5/00 20060101ALI20210729BHJP
   B05D 7/02 20060101ALI20210729BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20210729BHJP
   C01B 33/12 20060101ALI20210729BHJP
【FI】
   B05D7/24 302Y
   B05D7/24 301E
   B05D5/00 B
   B05D7/02
   B32B27/00 101
   C01B33/12 C
【請求項の数】14
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2018-530768(P2018-530768)
(86)(22)【出願日】2016年12月6日
(65)【公表番号】特表2019-500208(P2019-500208A)
(43)【公表日】2019年1月10日
(86)【国際出願番号】EP2016079943
(87)【国際公開番号】WO2017097779
(87)【国際公開日】20170615
【審査請求日】2019年12月4日
(31)【優先権主張番号】15199592.5
(32)【優先日】2015年12月11日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】518202541
【氏名又は名称】ミシェルズ グループ
(73)【特許権者】
【識別番号】513008731
【氏名又は名称】ユニヴェルシテイト ヘント
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITEIT GENT
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】デ バイッサー, クラーチェ
(72)【発明者】
【氏名】アイド, マティアス
(72)【発明者】
【氏名】ヴァン ザイル, マティアス
(72)【発明者】
【氏名】ヴァン ドリーッシェ, イザベル
【審査官】 鏡 宣宏
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−198376(JP,A)
【文献】 特表2013−521160(JP,A)
【文献】 特開2012−131668(JP,A)
【文献】 特開2015−044922(JP,A)
【文献】 特開昭58−90604(JP,A)
【文献】 特表2005−524598(JP,A)
【文献】 特開昭57−181503(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/139920(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05D 1/00− 7/26
B32B 1/00−43/00
B01J 10/00−19/32
C01B 33/00−33/193
C01G 1/00−23/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
0.1未満の放射率、及び少なくとも2H鉛筆硬度の硬度を有する被覆ポリマー基材を製造する方法であって、
ポリマー基材を用意するステップと、
前記ポリマー基材の片面に少なくとも1つの接着促進層を付与するステップと、
少なくとも1つの部分縮合アルコキシド前駆体を含む混合物から出発するゾル−ゲルプロセスにより、前記少なくとも1つの接着促進層に少なくとも1つのシリカ又はシリカ系層を付与するステップと、を含み、
前記少なくとも1つの接着促進層が、金属酸化物を含み、前記金属酸化物が、ドープされた又はドープされていない、酸化チタン、酸化インジウム、酸化スズ、酸化亜鉛、酸化インジウムスズ、酸化ニオブ、酸化ジルコニウム、及びそれらの任意の混合物からなる群から選択される、方法。
【請求項2】
前記シリカ又はシリカ系層が、少なくとも1つの部分縮合アルコキシド前駆体、溶媒、及び触媒を含む混合物から出発して得られる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記触媒が、少なくとも1つの塩基又は少なくとも1つの酸を含む、請求項に記載の方法。
【請求項4】
前記少なくとも1つの部分縮合アルコキシド前駆体が、少なくとも60%の縮合度を有する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記アルコキシド前駆体が、ゾル中で完全に縮合している、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記アルコキシド前駆体が、アルコキシシランである請求項1〜のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記アルコキシシランが、テトラエトキシシラン(TEOS)、テトラメトキシシラン(TMOS)、メチルトリエトキシシラン(MTES)、ビニルトリメトキシシラン(VTMS)、3−アミノプロピルトリメトキシシラン(APS)、メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン(MAPTS)、ビス(トリエトキシシリル)ヘキサン、1,6ビス(トリメトキシシリル)ヘキサン、又はそれらの任意の組合せからなる群から選択されるシランである、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記シリカ又はシリカ系層が、ロールコーティングにより形成される、請求項1〜のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記少なくとも1つの接着促進層が、スパッタ成長により形成される、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
低放射率特性を有する被覆ポリマー基材であって、
ポリマー基材と、
前記ポリマー基材の片面上に形成された少なくとも1つの接着促進層と、
前記接着促進層上に形成された少なくとも1つのシリカ又はシリカ系層と
を含み、
前記少なくとも1つのシリカ又はシリカ系層が、少なくとも1つの部分縮合アルコキシド前駆体を含む混合物から出発するゾル−ゲルプロセスにより形成され、
前記被覆ポリマー基材が、0.1未満の放射率を有し、前記少なくとも1つのシリカ又はシリカ系層が、少なくとも2H鉛筆硬度の硬度を有し、
前記少なくとも1つの接着促進層が、金属酸化物を含み、前記金属酸化物が、ドープされた又はドープされていない、酸化チタン、酸化インジウム、酸化スズ、酸化亜鉛、酸化インジウムスズ、酸化ニオブ、酸化ジルコニウム、及びそれらの任意の混合物からなる群から選択される、被覆ポリマー基材。
【請求項11】
前記シリカ又はシリカ系層が、0.1μm〜1μmの間の範囲の厚さを有する、請求項10に記載の被覆ポリマー基材。
【請求項12】
前記接着促進層が、0.01μm〜0.1μmの間の範囲の厚さを有する、請求項10〜11のいずれか一項に記載の被覆ポリマー基材。
【請求項13】
請求項10〜12のいずれか一項に記載の被覆ポリマー基材を備えるガラス基板。
【請求項14】
低放射率特性を有する基材としての、請求項10〜12のいずれか一項に記載の被覆基材の使用。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[説明]
[技術分野]
[0001]本発明は、低放射率特性、高硬度、及び良好な耐引っかき性を有する被覆ポリマー基材を製造する方法に関する。本発明は、さらに、被覆ポリマー基材、及び低放射率基材としてのそのような被覆ポリマー基材の使用に関する。
【0002】
[背景技術]
[0002]過去数十年間に渡り、例えば、建物及び車両のガラス表面の断熱性は、ますます重要になってきた。このことは、温度制御などのより快適な暮らしへの要求によって後押しされているだけでなく、エネルギー消費を制限することへの関心の高まりによっても後押しされている。
【0003】
[0003]low−e(低放射率)コーティングは、透過する可視光の量を減らすことなく、ガラスを通過することができる赤外(IR)光の量を最小にするために開発されてきた。
【0004】
[0004]当該技術分野において公知である第1種目のlow−eコーティングは、少なくとも1つの金属層を有するコーティングを含む。一般に、そのようなlow−eコーティングは、酸化チタン(TiO)などの誘電層間に形成された少なくとも1つのスパッタ成長銀層を含む。
しかし、この種のlow−eコーティングは、いくつかの欠点を有する。銀層は、安定性が低く、硬度に乏しく、耐久性が低く、耐湿性及び耐候性が不十分である。したがって、そのようなコーティングは、依然としてかなり繊細であり、例えば、硬質ポリマー仕上層により保護されなければならない。しかし、そのような硬質ポリマー仕上層が存在すると、IR熱の吸収が高くなり、硬質ポリマー仕上層は、構造の放射率に対して悪影響を及ぼす。
【0005】
[0005]第2種目のlow−eコーティングは、ガラス基板上に形成されたセラミックコーティングを含む。そのようなコーティングは、半溶融状態のガラス基板に結合される(熱分解コーティング)。典型的なセラミックコーティングは、酸化インジウム、酸化スズ、酸化インジウムスズ又は酸化亜鉛などの酸化物を含む。酸化物は、ガラスの一部となり、その結果、low−eコーティングの耐久性は高くなる。ポリマー基材は150℃超の温度にほとんど耐えることができない一方、セラミック合成には高温が必要なので、そのようなコーティングが、ポリマー基材上に形成させることができないのは明白である。
【0006】
[発明の開示]
[0006]本発明の目的は、被覆ポリマー基材を製造する方法を提供すること、及び従来技術の欠点を回避する低放射率特性を有する被覆ポリマー基材を提供することである。
本発明の別の目的は、高硬度、良好な耐引っかき性、及び低放射率を有する特徴を組み合わせる被覆ポリマー基材を提供することである。
本発明のさらなる目的は、コーティングがポリマー基材に非常に良好に接着する被覆ポリマー基材を提供することである。
本発明のよりさらなる目的は、ポリマー基材が損傷しないような十分に低い温度で、シリカ又はシリカ系層がポリマー基材上に形成された被覆ポリマー基材を提供することである。
よりさらなる目的は、低放射率フィルムとしての被覆ポリマー基材の使用を提供することである。
【0007】
[0007]本発明の第1の態様によれば、低放射率特性及び高硬度を有する被覆ポリマー基材を製造する方法が提供される。方法は、
ポリマー基材を用意するステップと、
前記ポリマー基材の片面に少なくとも1つの接着促進層を付与するステップと、
少なくとも1つの部分縮合アルコキシド前駆体を含む混合物から出発するゾル−ゲルプロセスにより、前記少なくとも1つの接着促進層に少なくとも1つのシリカ又はシリカ系層を付与するステップと
を含む。
【0008】
[0008]ポリマー基材として、ポリマーシート又は箔などの任意のポリマー基材を考え得る。ポリマー基材は、柔軟で透明であることが好ましい。ポリマー基材用として従来使用されている任意の材料、特に、窓用フィルム、又は日射調整フィルムに従来使用されている任意の材料を考え得る。好ましい基材は、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリウレタン(PU)、ポリカーボネート(PC)、ポリイミド(PI)及びポリエーテルイミド(PEI)を含むポリマーフィルムを含む。典型的な基材は、12〜125μmの間の範囲、例えば75μmの厚さを有するPET基材を含む。
【0009】
[0009]シリカ又はシリカ系層は、ゾル−ゲルプロセスにより形成される。ゾル−ゲルは、例えば、ケイ素の酸化物を製造するための公知の技法である。プロセスは、モノマーのコロイド溶液(ゾル)への変換、及び、それに続く、網状構造(又はゲル)を形成するための反応を含む。ゾル−ゲルプロセスでは、少なくとも1つの前駆体を適切な液体、通常、水又は有機溶媒(例えばアルコール)に溶解する。反応を触媒するために、好ましくは触媒が、例えば酸又は塩基として添加される。本発明によるゾル−ゲルプロセスでは、ゾル−ゲルプロセスは、少なくとも1つの部分縮合アルコキシド前駆体を含む混合物から出発する。
ゾルは、例えば湿式化学析出により、ポリマー基材上に、及びより詳細には、ポリマー基材上に形成された接着促進層上に形成させ得る。形成された層は、例えば、熱架橋により、又は照射(IR及び/又はUV照射)を使用することにより、さらに架橋させることができる。これらのプロセスステップにより、溶媒及び/又は水を蒸発させる。
無機ガラス材料を得るために、ゲルは、酸素雰囲気で450℃超の温度へアニールされる。この焼成ステップにより、材料の有機化合物が焼成され、純粋無機ガラス材料が得られる。ポリマー基材自体がそのような温度に耐えることができないので、ポリマー基材上に形成させたゾル−ゲル層をそのような高温に供することができないのは明白である。
したがって、本発明によるゾル−ゲルプロセスは、有機材料を含まない又は実質的に含まない均一な又は実質的に均一な層を得るように修正され、この修正は、比較的低い温度、すなわち、ポリマー基材を損傷しないような十分低い温度でのプロセス工程のみを含むプロセスを使用することにより行われる。
「有機材料を含まない」は、シリカ又はシリカ系層が有機材料を含まないことを意味する。
「実質的に有機材料を含まない」は、シリカ又はシリカ系層中に存在する有機材料の量が、数重量%未満であることを意味する。
【0010】
[0010](多)結晶構造を有する当該技術分野で公知のシリカ又はシリカ系low−eコーティングと対照的に、本発明による被覆ポリマー基材のシリカ又はシリカ系コーティングは、好ましくは、準非晶質構造の非晶質を有する。
【0011】
[0011]前述のように、本発明によるゾル−ゲルプロセスは、好ましくは、少なくとも1つの前駆体及び溶媒の混合物、好ましくは触媒をも含む混合物から出発する。
【0012】
[0012]少なくとも1つの前駆体は、好ましくはアルコキシド前駆体を含む。アルコキシド前駆体は、好ましくは少なくとも部分的に縮合している。
好ましいアルコキシド前駆体は、アルコキシシラン前駆体、例えば、テトラエトキシシラン(TEOS)、テトラメトキシシラン(TMOS)、メチルトリエトキシシラン(MTES)、ビニルトリメトキシシラン(VTMS)、3−アミノプロピルトリメトキシシラン(APS)、メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン(MAPTS)、ビス(トリエトキシシリル)ヘキサン、1,6ビス(トリメトキシシリル)ヘキサン、又はそれらの任意の組合せからなる群から選択されるシランを含む。
【0013】
[0013]ゾル中の前記シラン前駆体の前縮合度(precondensation degree)は、好ましくは高い、すなわち、60%超、70%超、80超又は90%超である。好ましい実施形態では、Q1、Q2、Q3及びQ4とそれぞれ表示されるモノ−、ジ−、トリ−及びテトラ置換シロキサン結合は、完全に縮合している。前縮合度は、NMRにより決定することができる。
【0014】
[0014]溶媒は、好ましくは、有機溶媒、例えば、メタノール又はエタノールなどのアルコールを含む。
【0015】
[0015]触媒は、好ましくは、少なくとも1つの塩基又は少なくとも1つの酸を含む。好ましい触媒は、塩酸、酢酸若しくはギ酸又はそれらの任意の混合物を含む。
【0016】
[0016]ゾル−ゲルコーティングは、当該技術分野で公知の任意の技法により、例えば、ディッピング、スピニング、スプレーイング、プリンティング又はロールコーティングにより付与される。
好ましい技法は、ロールコーティングを含む。ロールコーティング法では、1つ又は複数の回転するロールを使用することにより、連続的に動く基材上で液膜を形成する。好ましいロールコーティング法は、グラビアコーティング法を含む。グラビアコーティング法では、パターン化ロール、すなわち、セル又はグルーブを具備するロールを使用してコーティングを付与する。
【0017】
[0017]コーティング層の付与後に、被覆基材を、好ましくは、例えば、オーブンで温度100℃で乾燥する。
乾燥に加え、又は乾燥の代わりに、被覆基材は、照射、例えば赤外又はUV照射に供される場合もある。
乾燥及び/又は照射は、網状構造の重合をさらに刺激し、溶媒の蒸発を可能にする。
【0018】
[0018]シリカ又はシリカ系層のポリマー基材への十分な接着を確実にするために、シリカ又はシリカ系層の付与の前に、接着促進層をポリマー基材に付与する。
【0019】
[0019]接着促進コーティングは、任意の材料を含み得る。接着促進層は、金属酸化物を含むことが好ましく、ドープされた又はドープされていない、酸化チタン、酸化インジウム、酸化スズ、酸化亜鉛、酸化インジウムスズ、酸化ニオブ、酸化ジルコニウム、及びそれらの任意の混合物からなる群から選択される金属酸化物を含むことが好ましい。
【0020】
[0020]接着促進層は、当該技術分野で公知の任意の技法により形成させることができる。好ましい技法は、化学気相成長、スパッタ成長、及び蒸着を含む。
【0021】
[0021]本発明の第2の態様によれば、低放射率特性及び高硬度を有する被覆ポリマー基材が、提供される。被覆ポリマー基材は、
ポリマー基材と、
前記ポリマー基材の片面上に形成された少なくとも1つの接着促進層と、
前記接着促進層上に形成された少なくとも1つのシリカ又はシリカ系層と
を含む。接着促進層上に形成されたシリカ又はシリカ系層は、ゾル−ゲルプロセスにより形成される。
【0022】
[0022]本発明による被覆ポリマー基材は、低放射率及び高硬度により特徴付けられる。
被覆ポリマー基材の放射率は、好ましくは、0.2未満である。被覆ポリマー基材の放射率は、0.1未満、例えば0.06未満又は0.04未満であることがより好ましい。
被覆ポリマー基材の硬度は、好ましくは、2H鉛筆硬度より高い。被覆ポリマー基材の硬度は、3H鉛筆硬度より高いことがより好ましい。
【0023】
[0023]前述のように、シリカ又はシリカ系層は、有機材料を含まない、又は実質的に含まない。
【0024】
[0024]シリカ又はシリカ系層は、好ましくは、0.1μm〜1μmの間の範囲の厚さを有する。シリカ又はシリカ系層の厚さは、0.2μm〜0.6μmの間の範囲、例えば、0.25μm又は0.40μmであることがより好ましい。
【0025】
[0025]接着促進層は、好ましくは、0.01μm〜0.1μmの間の範囲の厚さを有する。接着促進層の厚さは、0.02μm〜0.06μmの間の範囲、例えば0.04μm又は0.05μmであることがより好ましい。
【0026】
[0026]前述のように、接着促進コーティングは、任意の材料を含み得る。接着促進層は、金属酸化物、好ましくは、ドープされた又はドープされていない、酸化チタン、酸化インジウム、酸化スズ、酸化亜鉛、酸化インジウムスズ、酸化ニオブ、酸化ジルコニウム、及びそれらの任意の混合物からなる群から選択される金属酸化物を含むことが好ましい。
【0027】
[0027]本発明の第3の態様によれば、上記のような被覆ポリマー基材を備えるガラス基板が提供される。被覆ポリマー基材は、例えば、接着剤によってガラス基板に接着している。
【0028】
[0028]本発明の第4の態様によれば、低放射率基材として上記のような被覆ポリマー基材の使用が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0029】
[図面中の図の簡単な記載]
[0029]本発明を、添付の図によりさらに説明することになる。
図1】本発明による被覆ポリマー基材の断面図である。
【0030】
[発明を実施するための形態]
[0030]本発明を、特定の実施形態に関して、及びある種の図面を参照して説明することになるが、本発明は、それらに限定されず、特許請求の範囲によってのみ限定される。記述される図面は、単に図式的であり、非限定的である。図面では、一部の要素の大きさは、例示的目的のために誇張され、尺度通りに描かれていない可能性がある。寸法及び相対的寸法は、本発明の実践を実際に縮写したものには対応しない。
【0031】
[0031]添付の図は、本発明による被覆ポリマー基材100の断面図を示す。被覆ポリマー基材100は、ポリマー基材102、接着促進層104、及びシリカ又はシリカ系層106を含む。
【0032】
[0032]ポリマー基材102は、任意のポリマー基材を含み得る。好ましいポリマー基材102は、75μmの厚さを有するポリエステル箔を含む。
【0033】
[0033]接着促進層104は、例えば、酸化物層、例えば、好ましくは0.02μm〜0.04μmの間の範囲の厚さを有する酸化チタン(TiO)層を含む。TiO層は、当該技術分野で公知の任意の技法により形成させることができる。TiO層を形成させる好ましい技法は、スパッタ成長によるものである。
【0034】
[0034]ゾルの好ましい調製では、エタノールを溶媒として使用し、テトラエトキシシラン(TEOS)を前駆体として使用した。ビス(トリエトキシシリル)ヘキサン又は1,6ビス(トリメトキシシリル)ヘキサンなどの有機リンカーが添加される場合もある。塩酸、酢酸及びギ酸を触媒として添加した。前駆体を激しい撹拌下で混合し、エタノールに添加した。撹拌しながら前駆体混合物に添加する前に、水を最初に触媒中で混合することにより酸性化した。透明なゾルが得られるまで、混合物を撹拌する。前縮合(precondensation)は、混合物を一定の時間、所定の温度に保つことにより実施した。混合物を、例えば、撹拌、及び還流しながら60℃で1時間保った。
【0035】
[0035]ゾル中の前記シラン前駆体の前縮合度は、好ましくは高い、すなわち、60%超、70%超、80超又は90%超である。好ましい実施形態では、それぞれQ1、Q2、Q3及びQ4と表示されるモノ−、ジ−、トリ−及びテトラ置換シロキサン結合は、完全に縮合している。前縮合度は、NMRにより決定することができる。
【0036】
[0036]シリカ又はシリカ系層106は、好ましくは、ロールコーティングにより、より好ましくはグラビアコーティングにより接着促進層の上に付与される。付与される層の厚さは、例えば、基材のスピード及びロールのスピードにより影響される。
【0037】
[0037]シリカ又はシリカコーティングは、好ましくは、0.25μm〜0.4μmの間の範囲の厚さを有する。
【0038】
[0038]本発明による被覆ポリマー基材を、いくつかの試験(硬度試験、接着試験及びlow−e測定)に供する。以下に試験をより詳細に記載する。
【0039】
[0039]試料の硬度は、Wolff−Wilborn法(ASTM D3363)により評価した。試験を行うために、Elcometer501 Pencil Hardness Testerを使用する。被覆基材を堅固な水平表面に置き、コーティングに対し作業者から見て外側に45°の角度で鉛筆をしっかり保持する。次いで鉛筆を作業者から遠ざかる方向に押す。以下の一方又は両方の欠損がコーティングに生じるまで、鉛筆の硬度を上げていく。
a.プラスチック変形:凝集破壊はないが、コーティング表面に恒久的凹部がある。
b.凝集破壊:コーティング表面に目に見える引っかき傷又は破断が存在し、材料がコーティングから除去されている。
表面を損傷する鉛筆の硬度が、引っかき硬度の測定値、例えば、「2H」硬度とされる。
【0040】
[0040]クロスハッチ試験により、コーティングの基材への接着を決定する。クロスハッチ試験は、コーティングの基材からの分離の抵抗性を決定する方法であり、基材まで到達する直角格子パターンの切り込みをコーティングに入れる工具を利用する。
クロスハッチ試験では、コーティングを通って基材までクロスハッチパターンを作る。次のステップで、コーティングの剥離したフレークを、柔らかいブラシを用いるブラッシングにより除去する。次いで、感圧テープをクロスハッチカットの上に貼付する。切開部分の上のテープを、消しゴムを用いて平滑にする。次いで、180°に近い角度でテープを速やかに引き離してテープを除去する。接着は、0〜5のスケールで評価する。0〜5のスケールは、表1でさらに説明する。
【表1】
【0041】
[0041]試料の放射率は、測定すべき表面を100℃の温度で黒体の熱放射に短時間供することにより測定する。測定表面の完全に均一な照射を得るために、放射体は球状で半空間の形状に設計されている。反射放射線の一部は、放射体の開口を通して放射線センサーに当たる。
試料の反射値と保存している2つの較正基準の基準値を比較することにより、放射量を決定する。試験では、TIR100−2装置を使用し、較正基準は、0.010及び0.962であった。
【0042】
[0042]上で記載し、添付の図に例示した試料について、以下の結果を得た。
硬度:3H鉛筆硬度
接着試験(クロスハッチ試験):クラス0
放射率試験:E=0.04
図1