特許第6914939号(P6914939)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6914939ブラッシングセッションのフィードバックを提供するための方法及びシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6914939
(24)【登録日】2021年7月16日
(45)【発行日】2021年8月4日
(54)【発明の名称】ブラッシングセッションのフィードバックを提供するための方法及びシステム
(51)【国際特許分類】
   A46B 15/00 20060101AFI20210727BHJP
【FI】
   A46B15/00 K
【請求項の数】15
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2018-533798(P2018-533798)
(86)(22)【出願日】2016年12月16日
(65)【公表番号】特表2019-500138(P2019-500138A)
(43)【公表日】2019年1月10日
(86)【国際出願番号】IB2016057698
(87)【国際公開番号】WO2017115200
(87)【国際公開日】20170706
【審査請求日】2019年12月12日
(31)【優先権主張番号】62/272,215
(32)【優先日】2015年12月29日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】590000248
【氏名又は名称】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
【氏名又は名称原語表記】KONINKLIJKE PHILIPS N.V.
(74)【代理人】
【識別番号】100122769
【弁理士】
【氏名又は名称】笛田 秀仙
(74)【代理人】
【識別番号】100163809
【弁理士】
【氏名又は名称】五十嵐 貴裕
(72)【発明者】
【氏名】ジャンヌ,ヴァンサン
(72)【発明者】
【氏名】ボリセンコ,イェカテリーナ
【審査官】 渡邉 洋
(56)【参考文献】
【文献】 英国特許出願公開第02519579(GB,A)
【文献】 米国特許出願公開第2015/0044629(US,A1)
【文献】 特開2009−240760(JP,A)
【文献】 特表2016−532492(JP,A)
【文献】 特表2011−524756(JP,A)
【文献】 特表2009−530043(JP,A)
【文献】 特表2013−515538(JP,A)
【文献】 欧州特許出願公開第2092911(EP,A1)
【文献】 米国特許第5944531(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A46B15/00
A61C17/16−17/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
口腔クリーニング装置のユーザにフィードバックを提供する方法であって、前記方法は:
センサから、クリーニングセッションの間に前記ユーザの口内の前記口腔クリーニング装置の複数の向きに関するデータを受信するステップと;
受信した前記データから、前記クリーニングセッションの間の前記ユーザの口内の前記口腔クリーニング装置の1つ又は複数の安定した向きに関する情報を抽出するステップであって、前記安定した向きは、閾値を上回る期間前記ユーザによって維持される前記口腔クリーニング装置の向きである、ステップと;
前記口腔クリーニング装置の前記1つ又は複数の安定した向きに関する情報を1つ又は複数の予想される向きに適合させるステップと;
適合された前記1つ又は複数の安定した向きの分析に基づいて前記クリーニングセッションに関して前記ユーザにフィードバックを提供するステップと;を含む、
方法。
【請求項2】
前記口腔クリーニング装置の前記1つ又は複数の安定した向きのそれぞれを予想される向きに適合させるステップは:
混合分布を識別することによって、前記口腔クリーニング装置の前記1つ又は複数の安定した向きを、クラスタリングするステップと;
前記クラスタを前記1つ又は複数の予想される向きと比較するステップと;を含む。
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記1つ又は複数の安定した向きをクラスタリングするステップは、多変量ガウス混合モデルを含む、
請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記閾値は、所定の閾値であるか又は統計的に導出される、
請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記フィードバックは、前記ユーザの口内の複数の表面のうちの1つ又は複数のそれぞれをクリーニングするのに前記ユーザが費やす時間に関する情報を含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記ユーザの口内の特定の位置で前記口腔クリーニング装置による前記クリーニングセッションを開始することを前記ユーザに指示するステップをさらに含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記クリーニングセッションは、誘導クリーニングセッションである、
請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記1つ又は複数の予想される向きは、前記口内の複数の位置のそれぞれについての少なくとも内側の歯の表面及び外側の歯の表面である、
請求項1に記載の方法。
【請求項9】
ユーザにフィードバックを提供するように構成される口腔クリーニング装置であって、前記口腔クリーニング装置は:
センサと;
フィードバック構成要素と;
前記センサ及び前記フィードバック構成要素と通信するコントローラと;を含み、
前記コントローラは:前記センサから、クリーニングセッションの間に前記ユーザの口内の前記口腔クリーニング装置の複数の向きに関するデータを受信し;受信した前記データから、前記クリーニングセッションの間の前記ユーザの口内の前記口腔クリーニング装置の1つ又は複数の安定した向きに関する情報を抽出し;前記口腔クリーニング装置の前記1つ又は複数の安定した向きに関する前記情報を1つ又は複数の予想される向きに適合させ;前記フィードバック構成要素を介して、適合された前記1つ又は複数の安定した向きの分析に基づいて前記クリーニングセッションに関して前記ユーザにフィードバックを提供する;ように構成される、
口腔クリーニング装置。
【請求項10】
前記センサは、ジャイロスコープ、加速度計、及び磁力計のうちの1つ又は複数である、
請求項9に記載の口腔クリーニング装置。
【請求項11】
前記コントローラは、前記口腔クリーニング装置の前記1つ又は複数の安定した向きのそれぞれを予想される向きに:前記口腔クリーニング装置の前記1つ又は複数の安定した向きをクラスタリングするために混合分布を識別することによって;及び前記クラスタを前記1つ又は複数の予想される向きと比較することによって;適合させるように構成される、
請求項9に記載の口腔クリーニング装置。
【請求項12】
前記コントローラは、前記口腔クリーニング装置の前記1つ又は複数の安定した向きのそれぞれを予想される向きに多変量ガウス混合モデルを使用して適合させるように構成される、
請求項9に記載の口腔クリーニング装置。
【請求項13】
ユーザにフィードバックを提供するように構成される口腔クリーニングシステムであって、前記口腔クリーニングシステムは:
センサ及び通信モジュールを有する口腔クリーニング装置であって、前記口腔クリーニング装置は、前記通信モジュールを介して、クリーニングセッションの間の前記ユーザの口内の前記口腔クリーニング装置の向きに関する前記センサからのセンサデータを送信するように構成される、口腔クリーニング装置と;
前記口腔クリーニング装置と通信し、プロセッサを有するデバイスであって、前記プロセッサは:受信した前記センサデータから、前記クリーニングセッションの間の前記ユーザの口内の前記口腔クリーニング装置の1つ又は複数の安定した向きに関する情報を抽出し;前記口腔クリーニング装置の前記1つ又は複数の安定した向きに関する前記情報を1つ又は複数の予想される向きに適合させ;フィードバック構成要素を介して、適合された前記1つ又は複数の安定した向きの分析に基づいて前記クリーニングセッションに関して前記ユーザにフィードバックを提供する;ように構成される、デバイスと;を有する、
口腔クリーニングシステム。
【請求項14】
前記プロセッサは、前記口腔クリーニング装置の前記1つ又は複数の安定した向きのそれぞれを予想される向きに多変量ガウス混合モデルを使用して適合させるように構成される、
請求項13に記載の口腔クリーニングシステム。
【請求項15】
前記フィードバックは、前記ユーザの口内の複数の位置のうちの1つ又は複数についてのクリーニング効果に関する情報を含む、
請求項13に記載の口腔クリーニングシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概して、センサ入力の分析に基づいてクリーニングセッション(cleaning session)に関してユーザにフィードバックを提供するための方法及びシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
ブラッシングの長さ及び到達範囲(coverage)を含む適切な歯磨き技法は、長期の歯の健康を確実にするのに役立つ。多くの歯の問題は、定期的に歯磨きをしない又は不適切に行う人が経験する。定期的に歯磨きを行う人の間で、不適切なブラッシング習慣は、ブラッシングの不十分な到達範囲を、したがって、適切にクリーニングされない表面をもたらす可能性がある。
【0003】
適切なブラッシング技法を容易にするために、平均的なブラッシングセッション(brushing session)の間に、到達しにくい又は不適切にクリーニングされる傾向のある口の領域を含む、全ての歯の表面の適切なクリーニングを確実にすることが重要である。適切な到達範囲を確保する1つの方法は、ブラッシングセッションの間に口内の歯ブラシの位置を追跡し、それを歯の表面のマップと比較することである。例えば、ユーザの歯に対して固定関係に配置されたセンサを持つシステムは、ユーザの歯の上の歯ブラシの動きを追跡することができる。代替的には、歯ブラシは、口内の装置の動きを追跡しようと試みる1つ又は複数の内部センサを含むことができる。このようなシステムでは、ユーザは、口内の既知の固定位置の歯ブラシで開始し、その後のブラシの移動が1つ又は複数の内部センサから決定される。例えば、電磁基準デバイス及びMEMSベースのセンサを利用するシステムが開発されているが、現在、適切な追跡及びフィードバックを提供することができない。
【0004】
しかし、このアプローチにはいくつかの限界がある。ユーザは、ブラッシング中に頭を動かすことができず、これは、元の固定基準点の適切な位置決めを妨げるためである。システムは、口の左上の内側および口の右上の外側のような、データが類似している口の特定の領域を区別することができないことがある。システムの解像度は低く、歯のようなより正確な位置ではなく、口の広い部分のみを追跡することができることを意味する。実際、歯のサブセグメント(teeth sub-segments)の検出は、これらのシステムが著しい口のバリエーションを伴う大集団に容易に適用されず、ユーザのブラッシング習慣が経時的に変化する可能性があるため統計的モデリングが不適切なため、困難なままである。
【0005】
従って、誘導ブラッシングセッション(guided brushing session)の間に得られる空間センサ入力の分析に基づいて、ユーザにフィードバックを提供するための方法が当該技術において引き続き必要とされている。
【発明の概要】
【0006】
本開示は、口腔クリーニング装置のユーザにブラッシングセッションに関するフィードバックを提供するための本発明の方法及びシステムに関する。案内されたブラッシングセッションを提供するように構成されるシステムに適用されると、本発明の方法及びシステムは、歯のサブセグメントのブラッシングのより詳細且つ正確な識別を可能にし、したがってユーザのブラッシング技法の改善された評価を可能にする。センサデータを使用して、この方法は、クリーニングセッションの間のユーザの口内の口腔クリーニング装置の安定した向き(stable orientations)に関する情報を抽出し、安定した向きを予想された方向に適合させ、ユーザにフィードバックを提供するために歯のサブセグメントの到達範囲を決定する。
【0007】
概して、一態様では、口腔クリーニング装置のユーザにフィードバックを提供する方法が提供される。この方法は:(i)センサから、クリーニングセッションの間にユーザの口内の口腔クリーニング装置の複数の向きに関するデータを受信するステップと;(ii)受信したデータから、クリーニングセッションの間のユーザの口内の口腔クリーニング装置の1つ又は複数の安定した向きに関する情報を抽出するステップであって、安定した向きは、閾値を上回る期間ユーザによって維持される口腔クリーニング装置の向きである、ステップと;(iii)口腔クリーニング装置の1つ又は複数の安定した向きに関する情報を1つ又は複数の予想される向きに適合させるステップと;(iv)適合された1つ又は複数の安定した向きの分析に基づいてクリーニングセッションに関してユーザにフィードバックを提供するステップと;を含む。
【0008】
一実施形態によれば、口腔クリーニング装置の1つ又は複数の安定した向きのそれぞれを予想される向きに適合させるステップは:混合分布(mixture distribution)を識別することによって、口腔クリーニング装置の1つ又は複数の安定した向きを、クラスタリングする(clustering)ステップと;クラスタ(clusters)を1つ又は複数の予想される向きと比較するステップと;を含む。
【0009】
実施形態によれば、1つ又は複数の安定した向きをクラスタリングするステップは、多変量ガウス混合モデルを含む。
【0010】
実施形態によれば、閾値は、所定の閾値であるか又は統計的に導出される。
【0011】
実施形態によれば、フィードバックは、ユーザの口内の複数の表面のうちの1つ又は複数のそれぞれをクリーニングするのにユーザが費やす時間に関する情報を含む。
【0012】
実施形態によれば、本方法はまた、ユーザの口内の特定の位置で口腔クリーニング装置によるクリーニングセッションを開始することをユーザに指示するステップを含む。
【0013】
実施形態によれば、クリーニングセッションは、誘導クリーニングセッションである。
【0014】
実施形態によれば、1つ又は複数の予想される向きは、口内の複数の位置のそれぞれについての少なくとも内側の歯の表面及び外側の歯の表面である。
【0015】
態様によれば、ユーザにフィードバックを提供するように構成される口腔クリーニング装置が提供される。口腔クリーニング装置は:センサと、フィードバック構成要素と、センサ及びフィードバック構成要素と通信するコントローラとを含む。コントローラは:センサから、クリーニングセッションの間にユーザの口内の口腔クリーニング装置の複数の向きに関するデータを受信し;受信したデータから、クリーニングセッションの間のユーザの口内の口腔クリーニング装置の1つ又は複数の安定した向きに関する情報を抽出し;口腔クリーニング装置の1つ又は複数の安定した向きに関する情報を1つ又は複数の予想される向きに適合させ;フィードバック構成要素を介して、適合された1つ又は複数の安定した向きの分析に基づいてクリーニングセッションに関してユーザにフィードバックを提供する;ように構成される。
【0016】
実施形態によれば、センサは、ジャイロスコープ、加速度計、及び磁力計のうちの1つ又は複数である。
【0017】
態様によれば、ユーザにフィードバックを提供するように構成される口腔クリーニングシステムが提供される。システムは:(i)センサ及び通信モジュールを含む口腔クリーニング装置であって、口腔クリーニング装置は、通信モジュールを介して、クリーニングセッションの間のユーザの口内の口腔クリーニング装置の向きに関するセンサからのセンサデータを送信するように構成される、口腔クリーニング装置と;(ii)口腔クリーニング装置と通信し、プロセッサを含むデバイスであって、プロセッサは、受信したセンサデータから、クリーニングセッションの間のユーザの口内の口腔クリーニング装置の1つ又は複数の安定した向きに関する情報を抽出し;口腔クリーニング装置の1つ又は複数の安定した向きに関する情報を1つ又は複数の予想される向きに適合させ;フィードバック構成要素を介して、適合された1つ又は複数の安定した向きの分析に基づいてクリーニングセッションに関してユーザにフィードバックを提供する;ように構成される、デバイスと;を含む。
【0018】
実施形態によれば、フィードバックは、ユーザの口内の複数の位置のうちの1つ又は複数についてのクリーニング効果に関する情報を含む。
【0019】
前述の概念及び以下により詳細に論じられる追加の概念の全ての組み合わせ(そのような概念が相互に矛盾しないことを条件とする)は、本明細書に開示された発明の主題の一部であると考えられることが理解されるべきである。特に、本開示の最後に現れる請求項に記載される主題の全ての組み合わせは、本明細書に開示される本発明の主題の一部であると考えられる。
【0020】
本発明のこれらの態様及び他の態様は、以下に記載される実施形態から明白であるとともに以下に記載される実施形態を参照して明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図面において、同様の参照符号は、概して、異なる図を通して同じ部分を指す。また、図面は必ずしも縮尺通りではなく、その代わりに本発明の原理を説明することに重点が置かれている。
【0022】
図1】実施形態による口腔クリーニング装置の図である。
【0023】
図2A】実施形態による口腔クリーニング装置制御システムの概略図である。
【0024】
図2B】実施形態による口腔クリーニング装置制御システムの概略図である。
【0025】
図3】実施形態による口腔クリーニング装置のユーザにブラッシングセッションに関するフィードバックを提供するための方法を描くフローチャートである。
【0026】
図4】実施形態によるブラッシングセッションの間に得られる複数の向きを描くグラフである。
【0027】
図5】実施形態による、正規分布を口腔クリーニング装置の識別された安定した向きに適合させるために用いられる混合モデリングの出力のグラフである。
【0028】
図6】実施形態によるユーザに提供されるブラッシング時間フィードバックのグラフである。
【0029】
図7】実施形態によるユーザに提供されるブラッシング効果フィードバックの表示である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本開示は、口腔クリーニング装置のユーザにブラッシングセッションに関するフィードバックを提供するための方法及びコントローラの様々な実施形態を記載する。より一般的には、本出願人は、ユーザのブラッシング技法の評価を提供するために、誘導ブラッシングセッションの間に口内の口腔クリーニング装置の動きを検出するシステムを提供することが有益であることを認識し、理解した。したがって、本明細書に記載される又は他の方法で想定される方法は、誘導クリーニングセッションの間にユーザの口内の口腔クリーニング装置の複数の向きに関するセンサデータを受信し、そのデータを使用してフィードバックを提供するように構成される口腔クリーニング装置を提供する。実施形態によれば、ユーザの口内の口腔クリーニング装置の安定した向きに関する情報がセンサデータから抽出され、期待される向きに適合される。システムは、この情報を使用して、誘導クリーニングセッションの間の歯のサブセグメントのユーザの到達範囲を決定し、その到達範囲についてユーザにフィードバックを提供することができる。
【0031】
本明細書の実施形態及び実施の利用の特定の目標は、例えば、Philips Sonicare(商標)歯ブラシ(Koninklijke Philips Electronics, N.V.製)のような口腔クリーニング装置を使用してブラッシング情報を提供することであるが、本明細書に記載される又は他の方法で想定される実施形態は任意の適切な装置と共に利用され得る。
【0032】
図1を参照すると、一実施形態では、ボディ部分12と、ボディ部分に取り付けられたブラシヘッド部材14とを含む口腔クリーニング装置10が提供される。ブラシヘッド部材14は、ボディ部分から離れた端部にブラシヘッド16を含む。ブラシヘッド16は、複数の毛を備える毛面(bristle face)18を含む。実施形態によれば、毛は、ヘッドの伸長軸に対して実質的に垂直な軸に沿って延びているが、ブラシヘッド及び毛の多くの他の実施形態が可能である。
【0033】
1つの可能な実施形態によれば、ヘッド部材14、ブラシヘッド16、及び/又は毛面18は、ボディ部分12に対して動くことができるように取り付けられる。動きは、とりわけ、振動又は回転を含む、様々な異なる動きのいずれかであることができる。実施形態によれば、ヘッド部材14は、ボディ部分12に対して振動することができるようにボディに取り付けられる。例えば、実施形態によれば、毛面18内の毛は、約250Hz以上である周波数で振動するが、多くの他の周波数、パターン、及び振動が可能である。ヘッド部材14は、ボディ部分12上に固定して取り付けられてもよく、又は代替的に、毛又は装置の他の構成要素が磨耗して交換を必要とするときにヘッド部材14が新しいものと交換されることができるように取り外し可能に取り付けられてもよい。
【0034】
実施形態によれば、ボディ部分12は、動きを発生させるドライブトレーン(drivetrain)22と、発生した動きをブラシヘッド部材14に伝達する伝達部品(transmission component)24とを含む。例えば、ドライブトレーン22は、その後ブラシヘッド部材14に伝達される、伝達部品24の動きを発生させるモータ又は電磁石(複数可)を有することができる。ドライブトレーン22は、他の部品の中でも、電源、発振器、及び1つ又は複数の電磁石のような部品を含むことができる。この実施形態では、電源は、例えば、使用されていないときに口腔クリーニング装置10が置かれる充電ホルダー内で電気的に充電され得る、図示されない、1つ又は複数の再充電可能な電池を有する。
【0035】
本実施形態では、口腔クリーニング装置10は電動歯ブラシであるが、代替実施形態では、口腔クリーニング装置は手動歯ブラシ(図示せず)であることが理解されるであろう。このような構成では、手動歯ブラシは電気部品を有するが、ブラシヘッドは電気部品によって機械的に作動されない。
【0036】
ボディ部分12にはさらに、動き発生器22を作動及び停止するためのユーザ入力部26を備える。ユーザ入力部26は、ユーザが口腔クリーニング装置10を操作すること、例えば、口腔クリーニング装置10をオン及びオフにすることを可能にする。ユーザ入力部26は、例えば、ボタン、タッチスクリーン、又はスイッチであり得る。
【0037】
口腔クリーニング装置10は、1つ又は複数のセンサ28を含む。センサ28は、図1においてボディ部分12内に示されているが、例えば、ブラシヘッド部材14又はブラシヘッド16内を含む装置内のどこにでも配置されることができる。センサ28は、例えば、6軸又は9軸の空間センサシステムを含むことができる。例えば、センサ28は、例えば3軸ジャイロスコープ及び3軸加速度計を用いて、6軸の相対運動(3軸の並進及び3軸の回転)の読み取り値を提供するように構成される。別の例として、センサ28は、例えば、3軸ジャイロスコープ、3軸加速度計、及び3軸磁力計を使用して、9軸の相対運動の読み取り値を提供するように構成される。圧力センサ、並びに、容量性センサ、カメラ、光電池、及び他のタイプのセンサのような他のタイプのセンサを含むがこれらに限定されない、他のセンサが、単独で、又はこれらのセンサと組み合わせて利用されることができる。多くの異なるタイプのセンサが、本明細書に記載されているか又はその他の方法で想定されるように、利用されることができる。
【0038】
センサ28は、口腔クリーニング装置10内の所定の位置及び向きに配置される。したがって、ブラシヘッドの向き及び位置は、センサ28の既知の向き及び位置に基づいて容易に決定されることができる。したがって、ブラシヘッドは、センサ28に対して固定された空間的相対配置にある。
【0039】
センサ28は、口腔クリーニング装置10の加速度及び角度方向(angular orientation)を示す情報を生成するように構成される。センサシステムは、6軸又は9軸の空間センサシステムとして共に機能する2つ以上のセンサ28を含み得る。別の実施形態によれば、一体化された9軸空間センサが、口腔クリーニング装置10における空間節約を提供することができる。
【0040】
第1のセンサ28によって生成される情報は、装置コントローラ30に提供される。コントローラ30は、プロセッサ32及びメモリ34を有することができる。プロセッサ32は、任意の適切な形態を取り得る。例えば、プロセッサ32は、マイクロコントローラ、複数のマイクロコントローラ、回路、単一のプロセッサ、又は複数のプロセッサであってもよいし、それらを含んでもよい。コントローラ30は、1つ又は複数のモジュールで形成されてもよく、入力、例えば、ユーザ入力部26に応答して口腔クリーニング装置10を操作するように動作可能である。例えば、コントローラ30は、モータ制御ユニットを作動させるように構成されることができる。実施形態によれば、センサ28はコントローラ30に一体化される。
【0041】
メモリ34は、不揮発性メモリ及び/又はRAMを含む任意の適切な形態を取ることができる。不揮発性メモリは、読み出し専用メモリ(ROM)、ハードディスクドライブ(HDD)又はソリッドステートドライブ(SSD)を含み得る。メモリは、とりわけオペレーティングシステムを格納することができる。RAMは、データの一時的な格納のためにプロセッサによって使用される。オペレーティングシステムは、コントローラ30によって実行されるとき、口腔クリーニング装置10のハードウェア構成要素のそれぞれの動作を制御するコードを含み得る。
【0042】
実施形態によれば、口腔クリーニングシステムは、ブラッシングセッションの間にユーザに指示を提供するように構成される誘導ブラッシング構成要素(guided brushing component)46を含む。誘導ブラッシング構成要素46は、様々な形態をとることができるが、歯の表面、舌、及び他の表面を含む、口の内部の特定の部分、セグメント、又は領域のどこを及びいつ磨くかについて、読む、見る、聞く、又はその他の方法で解釈されることができるユーザへの指示を提供する。例えば、誘導ブラッシング構成要素46は、口腔クリーニング装置10の構成要素であることができるか、又は誘導ブラッシング構成要素は、別個の装置の構成要素であることができる。実施形態によれば、誘導ブラッシング構成要素46は、どの表面を磨くかをユーザに知らせるグラフィック表示である。例えば、誘導ブラッシング構成要素46は、ゲーム、口の地図、又は他のグラフィック表示であることができる。別の実施形態によれば、誘導ブラッシング構成要素46は、ユーザに可聴指示を提供する。さらに別の実施形態によれば、誘導ブラッシング構成要素46は、触覚又は他の指示をユーザに提供する。
【0043】
図2Aを参照すると、口腔クリーニングシステム200の実施形態が提供される。実施形態によれば、口腔クリーニングシステム200は、1つ又は複数のセンサ28と、プロセッサ32及びメモリ34を含むコントローラ30とを含む。電動クリーニング装置で使用されるとき、口腔クリーニングシステム200は、ドライブトレーン22を含み、その動作はコントローラ30によって制御される。口腔クリーニングシステムはまた、フィードバック構成要素48及び誘導ブラッシング構成要素46も含む。実施形態によれば、コントローラ30及び/又は誘導ブラッシング構成要素46は、ブラッシングセッションの間に誘導ブラッシング指示(guided brushing instructions)をユーザに提供する。コントローラ30はまた、クリーニングセッションの間にユーザの口内の口腔クリーニング装置の複数の向きに関してセンサ28からデータを受信する。ユーザが口内の表面をブラッシングすると、動き及び/又は向き情報がセンサ28によって生成され、コントローラ30に送られる。システムのコントローラ又は他の構成要素は、得られた動き及び/又は向き情報からユーザの口内の口腔クリーニング装置の1つ又は複数の安定した向きに関する情報を抽出し、抽出された情報を1つ又は複数の予想される方向に適合させる。コントローラ30及びフィードバック構成要素48は、次いで、適合された1つ又は複数の安定した向きの分析に基づいてクリーニングセッションに関してユーザにフィードバックを提供することができる。
【0044】
図2Bを参照すると、図2Bは、口腔クリーニング装置10と、口腔クリーニング装置と分離する遠隔装置40とを有する口腔クリーニングシステム200の別の実施形態である。口腔クリーニング装置10は、本明細書に開示されているか又は別の方法で想定される口腔クリーニング装置の実施形態のいずれかであることができる。実施形態によれば、口腔クリーニング装置10は、1つ又は複数のセンサ28と、プロセッサ32を有するコントローラ30とを含む。電動クリーニング装置と共に使用される場合、口腔クリーニング装置10は、ドライブトレーン22を含み、その動作はコントローラ30によって制御される。実施形態によれば、口腔クリーニング装置10は、収集される空間センサ情報を送信する通信モジュール38を有する。通信モジュールは、有線信号、又は、限定されるものではないが、Wi−Fi、ブルートゥース(登録商標)、近距離無線通信、及び/若しくはセルラーモジュールを含む、無線信号を送信することができる任意のモジュール、デバイス、又は手段であることができる。
【0045】
実施形態によれば、遠隔装置40は、口腔クリーニング装置10から送信される空間センサ情報を受信し処理するように構成される又は受信し処理することができる任意の装置であることができる。例えば、遠隔装置40は、クリーニング装置ホルダー若しくはステーション、スマートフォン、コンピュータ、サーバ、又は任意の他のコンピュータ化されたデバイスであり得る。実施形態によれば、装置40は、有線信号、又は、限定されるものではないが、Wi−Fi、ブルートゥース(登録商標)、近距離無線通信、及び/若しくはセルラーモジュールを含む、無線信号を受信することができる任意のモジュール、デバイス、又は手段であることができる通信モジュール41を含む。装置40はまた、本明細書に記載されるように、ユーザが口の中で装置を動かすときに口腔クリーニング装置10の動き及び/又は向きを決定するためにセンサ28からの受信した空間センサ情報を使用するプロセッサ42を含む。実施形態によれば、装置40は、受信した空間センサ情報、又は任意の他の情報を格納するためのメモリ44を含み得る。さらに、装置40は、フィードバック構成要素48及び誘導ブラッシング構成要素46を含み得る。実施形態によれば、プロセッサ及び/又は誘導ブラッシング構成要素46は、ブラッシングセッションの間にユーザに誘導ブラッシング指示を提供し、フィードバック構成要素48は、フィードバック情報をユーザに提供する。
【0046】
単なる一例として、口腔クリーニング装置10は、センサ28を使用してセンサ情報を収集し、センサ情報が処理及び/又は格納されるスマートフォン装置40にブルートゥース(登録商標)接続を介して局所的にその情報を送信することができる。別の例として、口腔クリーニング装置10は、センサ28を使用してセンサ情報を収集し、遠隔サーバ装置40に通じているインターネットにWiFi接続を介してその情報を送信することができる。遠隔サーバ装置40は、センサ情報を処理及び/又は格納する。ユーザは、その情報に直接アクセスし得る、あるいは、遠隔サーバ装置40若しくは関連する装置から報告、更新、又は他の情報を受信し得る。
【0047】
図3を参照すると、図3は、一実施形態における、クリーニングセッションに関してユーザにフィードバックを提供する方法300のフローチャートである。この方法のステップ310において、口腔クリーニング装置10が提供される。口腔クリーニング装置は、本明細書に記載される又は本明細書で想定される実施形態のいずれかであることができる。例えば、一実施形態によれば、口腔クリーニング装置10は、ボディ部分12と、毛面18を持つブラシヘッド部材14と、センサ28と、プロセッサ32及びメモリ34を有するコントローラ30とを含む。口腔クリーニング装置10はまた、フィードバック構成要素48及び誘導ブラッシング構成要素46も含み得る。
【0048】
この方法のステップ320において、誘導ブラッシングコンポーネント46及び/又はコントローラは、ブラッシングセッションの間に、誘導ブラッシング指示をユーザに提供する。例えば、誘導ブラッシング構成要素46は、視覚的、聴覚的、及び/又は書かれた指示をユーザに提供するディスプレイ又はスピーカを含むことができるか、あるいはそれと通信することができる。最初のステップとして、システムは、左上外面、右下外面、又は複数の外面若しくは位置のいずれかのような、ユーザの口の中の特定の位置で、口腔クリーニング装置10によるクリーニング又はブラッシングセッションを開始するようにユーザに指示する。ユーザが初期表面を充分な時間及び/又は所定の時間ブラシングすると、システムは、ユーザに、ユーザの口の異なる位置に切り替えるように指示する。全ての表面の適切なクリーニングを確実にするために、指示は所定のルーチン又は時間継続することができる。例えば、多くの歯科医や他の口腔ケア専門家は、上歯と下歯に等しい時間で、2−3分間ブラッシングすることを推奨している。
【0049】
本方法のステップ330において、ブラッシングセッションの間に、センサ(複数可)は口腔クリーニング装置10の動き及び/又は向きを検出し、コントローラはセンサからセンサ情報を受信する。センサ情報は、誘導ブラッシングセッションの間にユーザの口内の装置の複数の異なる向きに関するデータを含む。実施形態によれば、センサ情報は、歯ブラシに埋め込まれた慣性測定ユニットに含まれる加速度計、ジャイロスコープ、及び/又は磁力計からのデータを含むことができる。受信したセンサデータに基づいて口腔クリーニング装置の向きを計算する方法は、当該技術分野において知られており、例えば、カルマンフィルタ、粒子フィルタ、相補フィルタ、及び他のメカニズムのような向きフィルタ(orientation filters)を含むことができる。センサ情報は、本方法の他のステップで直ちに分析されることができる、又は後の分析のためにメモリに格納されることができる。例えば、センサ情報は、ブラッシングセッションの間に格納されることができ、ブラッシングセッションの完了後に分析されることができる。
【0050】
方法のステップ340において、システムは、向きデータから、クリーニングセッションの間のユーザの口内の口腔クリーニング装置の1つ又は複数の安定した向きに関する情報を抽出する。これは、ブラッシングの間、ブラッシング後、又はブラッシングセッションの間及びブラッシングセッションの後の両方で起こり得る。実施形態によれば、安定した向きは、予め定められているか又は導出されることができるある閾値を上回る期間、ユーザによって維持される口腔クリーニング装置の向きである。
【0051】
ユーザが誘導ブラッシング指示を相当な程度遵守しなければならない場合、任意の所与の表面、歯、又はサブセグメントに対して識別可能な向きが比較的少ないことが予想される。例えば、顎の左上部分をブラッシングするときの理想的な向きは、外歯面に対して−45度、咀嚼面(chewing surface)に対して0度、及び内歯面に対して45度からなる。しかし、現実の応用では、口腔クリーニング装置は絶えず動いており、ほぼ全ての向きがシステムによって観察され得る。
【0052】
したがって、ユーザが少なくともある期間一定の角度で表面をブラッシングする場合、システムは、安定した向きを識別し、ノイズの多い(noisy)向きを除くように方向データを分析することができ、安定した向きは、ある期間ユーザによって維持されている口腔クリーニング装置の一貫した向き(consistent orientation)であり、ノイズの多い向きは、口腔クリーニング装置の一貫していない又は一時的な向きである。例えば、ノイズの多い向きは、ユーザが口の1つの領域から口の別の領域に口腔クリーニング装置を動かしているとき、又は単一の領域、エリア、又は表面で一貫してブラッシングすることなく口の異なる表面間を迅速に切り替えるときに、観察される。対照的に、安定した向きは、ユーザが一貫して口の表面をブラッシングしているときに観察される。
【0053】
図4を参照すると、図4は、一実施形態における、ブラッシングセッションの間に得られた複数の向きのグラフ400であり、口腔クリーニング装置の長手方向軸及び横軸に沿った角度を表す。このシステムは、ノイズの多い向き、又は高い角加速度データを除き、その口の誘導セグメントにおいてユーザによって全てブラッシングされた、内面の安定した向き410、外面の安定した向き420、及び咀嚼面の安定した向き430を表す3つの安定した向きを識別する。
【0054】
雑音の多い向きの排除及び/又は安定した向きの識別は、多くの異なるメカニズムのうちの1つを使用してシステムによって自動的に実行されることができる。例えば、システムは、例えば、ヒューリスティック情報又はモデルに基づくか、統計的に導出されるか、又はユーザ若しくは製造者によって設定されることができる閾値を有することができる。別の例として、システムは、正常な角加速度と高速加速度との間の最適な境界が、例えば、多変量ガウス混合モデリングによって決定されるヒストグラムを使用して、角加速度の統計分析を含むか又は実行することができる。さらに別の例として、システムは、ヒューリスティック閾値が統計分析の出発点として使用されるハイブリッドアプローチを含むか又は利用することができる。自動化されたシステム又はアルゴリズムは、後のステップで、誘導ブラッシングセッションの間にユーザによってクリーニングされる表面に対応する口腔クリーニング装置の1つ又は複数の安定した向きを識別する。
【0055】
したがって、実施形態によれば、システムは、混合物分布を識別することによって、口腔クリーニング装置の1つ又は複数の安定した向きを最初にクラスタリングし、次にクラスタを1つ又は複数の予想される向きと比較することによって、識別された安定した向きのうちの1つ又は複数を、1つ又は複数の予想される向きに適合させる。
【0056】
方法のステップ350において、システムは、口腔クリーニング装置の抽出若しくは識別された1つ又は複数の安定した向きを、1つ又は複数の予想される向きに適合させるか又は適合させることを試みる。例えば、実施形態によれば、方法のステップ340からの情報は、多変量ガウス混合モデリングによって分析されて、識別された1つ又は複数の安定した向きを予想される向きに適合させる。図5を参照すると、図5は、一実施形態において、3つの正規分布、又はガウス分布を、口腔クリーニング装置の識別された3つの安定した向きに適合させる多変量ガウス混合モデリングの出力のグラフ500であり、各ガウス分布は歯の表面:内側、外側、又は咀嚼を表すことが予期される。図5に示されたグラフに関して、入力データは、ブラッシングがユーザの口の左下部分で生じていた間の、口腔クリーニング装置の長手方向軸に沿った向きを特徴付ける。識別された1つ又は複数の安定した向きの多変量ガウス混合モデリングを実行した後、第1のガウスフィット(Gaussian fit)510、第2のガウスフィット520、及び第3のガウスフィット530が識別され、内面(ガウスフィット510)、咀嚼面(ガウスフィット530)、及び外面(ガウスフィット520)のブラッシングとして特徴付けられることができる。
【0057】
実施形態によれば、多変量ガウス混合モデリングのような混合モデリングは、ヒューリスティック閾値を上回るいくつかの利点を提供する。例えば、図5を参照すると、閾値アプローチは、咀嚼面が−15から15度の間のブラッシング角を含むことを予期するかもしれない。しかし、多変量ガウス混合モデリングは、咀嚼面が約5から45度の間のブラッシング角を有する第3のガウスフィット530であることを明らかにしている。したがって、単に−15から15の閾値を使用することは、咀嚼面に関する有意な量のデータを捕捉することができない。
【0058】
加えて、多変量ガウス混合モデリングのような混合モデリングは、ユーザの技法の変化、ユーザの頭の向きの変化、及び他の多くのタイプの変化のようなブラッシングセッション間の変化を許容する。例えば、ユーザがブラッシングの間に頭を傾けている場合、抽出されたクラスタ又は安定した向きは、内側、外側、及び咀嚼面に関して予想されるブラッシング角度の著しく外側である可能性がある。したがって、閾値アプローチを利用する場合、傾けられた頭は、本明細書で説明する方法に重大な悪影響を及ぼすことがある。多変量ガウス混合モデリングのような混合モデリング、又は他の同様のプロセスは、時間にわたるスケーラビリティを保証する最適な閾値を自動的に見つけることができる。
【0059】
一実施形態によれば、本明細書に記載の又は他の方法で想定される方法は、内面及び外面を有する前歯のような、主に2つの面を有する歯に適している。このシナリオでは、混合モデリングは2つのガウス分布を識別して報告するだけである。これは、2つのガウス分布のみを予想するために、例えば、そのデータ収集期間中にどの表面がブラッシングされると想定されたかのように、誘導ブラッシングセッションに関する情報と潜在的に組み合わされることができる。
【0060】
実施形態によれば、混合物モデリングを開始又は指示するためにシード値が利用又は提供されることができる。例えば、シード値は、所定の又は導出した閾値に基づくことができ、又は以前のブラッシングセッションから提供されることができる。したがって、口腔クリーニングシステムは、特定のユーザの実際の及び予想されるブラッシング角度について効果的に学習し、混合物モデリングの効率を高め、処理時間を短縮するように、その情報を使用することができる。例えば、1又は複数回のブラッシングセッションにわたって、口腔クリーニングシステムは、使用者の口の左上部分のブラッシングを表す安定した向きについてのクリーニング表面のブラッシング角度が常に0度から50度の間であることを決定する。この情報は、25±25度の範囲のガウス分布を予測するために次の混合モデリングで利用されることができる。代替的には、情報は、混合モデリングの代わりに閾値を使用してデータが適合される場合ときに、同様に利用されることができる。
【0061】
混合モデリングに加えて、他の多くの方法が、口腔クリーニング装置の抽出された1つ又は複数の安定した向きを1つ又は複数の予想される向きに適合させるために、利用されることができる。例えば、クラスタリングする技術は、1つ又は複数の安定した向きに適合するように機能する。別の例として、二次元又は三次元主成分分析が、口腔クリーニング装置の抽出された1つ又は複数の安定した向きを1つ又は複数の予想される向きに適合させるために、利用されることもできる。
【0062】
方法のステップ360において、システムは、適合された1つ又は複数の安定した向きの分析に基づいてクリーニングセッションに関してユーザにフィードバックを提供する。計算されたデータに基づいて、システムは、ユーザが各領域及び/又はサブセグメントをブラッシングするのに費やす時間を決定することができる。例えば、図5のガウス分布のような適合データの下でヒストグラムデータを積分することによって、システムは、口のその領域の内側、咀嚼、及び外側の表面をブラッシングするのにどれくらいの時間が費やされたかを決定することができる。
【0063】
本システムはまた、特定のデータポイントが特定の歯の表面に属するか否かに関する確率を生成することができる。加えて、ユーザは、咀嚼面をブラッシングすることなしに内歯表面から外歯表面に移動しない可能性が高いため、時間的情報が、確率をランク付けする又は重み付けするために追加されることができる。同様に、ユーザはある最も端の(extreme)表面から別の最も端の表面に移動するとは予想されていない。
【0064】
混合モデリングの混合係数が高すぎ、データ間の分離性が十分でないことを示す場合、システムは統計適合を再実行することもできる。そのような場合、実施形態によれば、混合モデリングは、3つの代わりに2つの目標ガウス分布を用いて再実行され、この時間を含むフィードバックの減少を意味する:内側と咀嚼対外側と咀嚼。
【0065】
別の実施形態によれば、システムはまた、真のブラッシング角情報を推定することもでき、従ってブラッシング効力について報告することができる。例えば、図5を参照すると、ガウス分布のそれぞれについての平均角度値は、内面(ガウスフィット510)に対して−70度、咀嚼面(ガウスフィット530)に対して22度、外面(ガウスフィット520)に対して69度である。ガウスフィット530が真のブラッシング角度に対して0度にリセットされた場合、ガウスフィット510(内側ブラッシング角度)の真のブラッシング角度は92度であり、ガウスフィット520(外側ブラッシング角度)の真ブラッシング角度は47度である。ブラッシング効果がブラッシング角度に関連していることを知ると、この情報及び、有効性の非対称性、有効性マップ、又は他の情報のようなその派生物は、フィードバックの任意の形式を介してコンピュータプログラム又はユーザにフィードバックされることができる。
【0066】
システムによって生成されるフィードバックは、視覚的、筆記的、可聴的、触覚的、又は他のタイプのフィードバックを介することを含む、様々な異なる方法のいずれかでユーザに提供することができる。例えば、フィードバックは、ユーザに提供されることができる及び/又はコンピュータプログラムによってさらに解釈されることができる到達範囲マップを構築するために使用されることができる。到達範囲マップはまた、口腔クリーニング装置に提供されて、ユーザが将来のセッションの間に特定のセグメントにブラッシングするときに内部ブラッシングルーチンを適合させることを可能にする。
【0067】
図6を参照すると、図6は、一実施形態における、システムによって生成され、ユーザに提供されるフィードバックの例である。システムは、本明細書に記載されたガウス分布のような、適合した安定した向きに含まれるデータを積分することができ、したがって、ユーザが特定のセグメントにどのくらいの時間を費やしたかを決定することができる。例えば、図6のグラフ600では、ユーザの口の上部の特定のセグメントをブラッシングするのに費やされる時間が目標ブラッシング時間610とともに表示される。この例では、ユーザは、追加の時間が、左上咀嚼面、前上内面、及び右上外面で費やされるべきであることを知る。更に高度なフィードバックメカニズムでは、ユーザはある領域内の個々の歯に関するフィードバックを受け取ることができる。
【0068】
例えば、システムは、8又は12のターゲット領域、並びに、どの領域が適切にブラッシングされたか、どの領域が適切にブラッシングされなかったか、及び/又はその両方の視覚インジケータを持つディスプレイのような、ディスプレイを使用して、どの領域が適切にブラッシングされたか及びどの領域が適切にブラッシングされていないかについて、ユーザに情報を伝達することができる。図7を参照すると、図7は、一実施形態における、システムによって生成され、ユーザに提供されるフィードバックの例である。システムは、様々な表面に対するブラッシング角度を決定することができ、したがって、有効性マップ700のようなフィードバックメカニズムを介して、これらの領域に対するブラッシング効果に関して評価してユーザにフィードバックを提供することができる。この有効性マップでは、ユーザは、下の前側外面及び左上外面が、前回のブラッシングセッションの間に適切にブラッシングしていなかったことが示されている。
【0069】
実施形態によれば、システムは、リアルタイムフィードバックデータをユーザ又は遠隔システムに提供することができる。例えば、システムは、リアルタイムのフィードバックデータを、有線又は無線ネットワーク接続を介してコンピュータに送信することができる。別の例として、システムは、格納されたフィードバックデータを有線又は無線ネットワーク接続を介してコンピュータに送信することができる。これらのフィードバックメカニズムに加えて、多くの他のメカニズムが可能である。例えば、フィードバックは、他のタイプのフィードバックの中でも、ブラッシング時間と効果をディスプレイ、レポート、又は単一の値に組み合わせることができる。
【0070】
この方法のオプションのステップ370において、システムは、ブラッシングセッションの間に誰がブラシを使用している可能性が高いかを決定する。システムは、オプションで、情報をユーザ及び/又はユーザアカウントと関連付けることができる。例えば、実施形態によれば、システムは、ブラッシングセッション中に誰がブラシを使用していたかを決定するために、1つ又は複数の表面に対して観察されたブラッシング角度を使用する。大抵のユーザはブラッシングセッション中に同一又は類似のパターンで歯を磨くことが合理的に想定されることができる。したがって、1つ又は複数の表面に対して観察されたブラッシング角度が特定のユーザ及び/又はユーザアカウントに関連付けられると、格納された又は関連付けられた角度又はパターンに十分近いその後のブラッシングセッションはそのユーザに割り当てられることができる。セッションが以前のセッションに十分に近いかどうかの判定は、例えば、閾値又は確率判定によって決定され得る。実施形態によれば、ユーザ決定は、そのユーザに対してパーソナライズ又はカスタマイズされたフィードバックのために利用されることができる。
【0071】
この方法のオプションのステップ380において、1つ又は複数のブラッシングセッションの評価は、歯科医又は歯科衛生士のような医療専門家に直接伝達されることができる。例えば、1つ又は複数のブラッシングセッションに関する情報は、自動的に又は要求に応じて格納及び医療専門家に自動的に送信されることができる。実施形態によれば、装置40は、患者が歯科医の診療所に訪問中に持ち込むスマートフォンであり、情報はブルートゥース(登録商標)接続を介して自動的にアップロードされる。歯科医は、フィードバックをレビューし、ケア中にその情報を利用することができる。
【0072】
本明細書において定義され、使用される全ての定義は、辞書の定義、参照により組み込まれる文献の定義、及び/又は定義された用語の通常の意味を支配することが理解されるべきである。
【0073】
本明細書及び特許請求の範囲において使用される不定冠詞「1つの(a)及び(an)」は、明確に反対の指示がない限り、「少なくとも1つ」を意味すると理解されるべきである。
【0074】
本明細書及び特許請求の範囲で使用される「及び/又は」という語句は、そのように結合された要素の「いずれか又は両方」、すなわち、ある場合には結合的に存在し他の場合には分離的に存在する要素、を意味すると理解されるべきである。「及び/又は」で列挙された複数の要素は、同じように、すなわちそのように結合された要素の「1つ又は複数の」と解釈されるべきである。他の要素が、具体的に特定された要素と関連していても関連していなくても、「及び/又は」句によって具体的に特定される要素以外に任意選択で存在してよい。
【0075】
本明細書及び特許請求の範囲において使用されるとき、「又は」は、上で定義した「及び/又は」と同じ意味を有すると理解すべきである。例えば、リストにおける項目を分離する場合、「又は」又は「及び/又は」は包括的である、すなわち、いくつかの又はリストの要素の少なくとも1つを含むが、いくつかの又はリストの要素の1より多くを含み、任意選択で追加のリストにない項目を含む、と解釈されるべきである。「〜のうちの1つのみ」又は「ちょうど1つの」のような反対を明らかに示す用語、又は、特許請求の範囲に用いられる場合は、「〜からなる」という用語だけが、いくつかの要素又は要素のリストのうちのまさに1つの要素が含まれることを指す。一般的に、本明細書で使用される「又は」の用語は、「いずれか」、「〜のうちの1つの」、「〜のうちの1つのみ」、又は「〜のうちのちょうど1つ」のような、排他的な用語が先行する場合にのみ、排他的な代替(すなわち「一方又は他方であるが、両方ではない」)を示すと解釈される。
【0076】
本明細書及び特許請求の範囲で使用されるとき、1つ又は複数の要素のリストを参照した、「少なくとも1つの」という語句は、要素のリストにおける要素のいずれか1つ又は複数から選択される少なくとも1つの要素を意味すると理解されるべきであるが、必ずしも要素のリスト内に具体的にリストされた各要素の少なくとも1つを含むわけではなく、要素のリスト内の要素の任意の組み合わせを除外するものではない。この定義はまた、「少なくとも1つの」という語句が指す要素のリスト内で具体的に特定される要素以外の要素が、具体的に特定されたこれらの要素に関係していても関連していなくても、任意選択的に存在してよいことを可能にする。
【0077】
それとは逆が明確に示されていない限り、1より多いステップ又は動作を含む本明細書で請求項に記載される任意の方法において、この方法のステップ又は動作の順序は必ずしも方法のステップ又は動作が列挙される順序に限定されないことも理解されるべきである。
【0078】
特許請求の範囲及び上記明細書において、「有する、備える」、「含む」、「担持する」、「有する」、「含有する」、「関与する」、「保持する」、「から構成される」などのような全ての移行句は、オープンエンドである、すなわち、含むがこれに限定されないことを意味すると理解されるべきである。移行句「からなる」及び「から本質的になる」のみが、それぞれクローズド又は半クローズドの移行句である。
【0079】
いくつかの本発明の実施形態が本明細書に記載され説明されたが、当業者は、機能を実行する及び/又は、結果及び/若しくは本明細書に記載された利点の1つ又は複数を得るためのさまざまな他の手段及び/又は構造を容易に想像するであろうし、そのような変形及び/又は修正のそれぞれは、本明細書に記載された本発明の実施形態の範囲内にあるとみなされる。より一般的には、当業者は、本明細書に記載される全てのパラメータ、寸法、材料、及び構成が例示的であることを意味し、実際のパラメータ、寸法、材料及び/又は構成は、本発明の教示が使用される具体的な用途に依存することを容易に理解するであろう。当業者は、本明細書に記載の特定の本発明の実施形態に対する多くの均等物を、定常的な実験だけを用いて、認識するか、又は確認できるであろう。したがって、前述の実施形態は単なる例示として提示され、添付の特許請求の範囲及びその均等の範囲内で、本発明の実施形態は、具体的に記載され請求項に記載される以外の方法で実施され得ることが理解されるべきである。本開示の本発明の実施形態は、本明細書に記載される個々の特徴、システム、物品、材料、キット、及び/又は方法を対象とする。加えて、2以上のそのような特徴、システム、物品、キット、及び/又は方法の任意の組み合わせは、そのような特徴、システム、物品、キット及び/又は方法が相互に矛盾しない場合に、本開示の本発明の範囲内に含まれる。
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6
図7