(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記センサは、前記先端部よりも前記基端部に近い、前記ブームにおける第1の位置、および前記フロントフレームの前端部よりも前記ブームの支持位置に近い、前記フロントフレームにおける第2の位置のうちのいずれかに設置されている、請求項2に記載のホイールローダ。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、実施形態について図に基づいて説明する。実施形態における構成を適宜組み合わせて用いることは当初から予定されていることである。また、一部の構成要素を用いない場合もある。
【0013】
以下、ホイールローダについて、図面を参照しながら説明する。以下の説明において、「上」「下」「前」「後」「左」「右」とは、運転席に着座したオペレータを基準とする用語である。
【0014】
また、以下では、掘削物を積載するための積込対象として、ダンプトラックを例に挙げて説明するが、これに限定されるものではなく、たとえば、土砂用コンテナ等の自走することができない積載対象であってもよい。
【0015】
[実施の形態1]
<全体構成>
図1は、実施形態に基づくホイールローダ1の側面図である。
図2は、ホイールローダ1の上面図である。
【0016】
図1および
図2に示されるように、ホイールローダ1は、本体5、作業機30、車輪3a,3b、および運転室6を備えている。ホイールローダ1は、車輪3a,3bが回転駆動されることにより自走可能であると共に、作業機30を用いて所望の作業を行うことができる。
【0017】
本体5は、フロントフレーム5aとリアフレーム5bとを有している。フロントフレーム5aとリアフレーム5bとは、センタピン81により互いに左右方向に揺動可能に連結されている。
【0018】
フロントフレーム5aとリアフレーム5bとに渡って、一対のステアリングシリンダ82が設けられている。ステアリングシリンダ82は、図示しないステアリングポンプからの作動油によって駆動される油圧シリンダである。ステアリングシリンダ82が伸縮することによって、フロントフレーム5aがリアフレーム5bに対して揺動する。これにより、ホイールローダ1の進行方向が変更される。
【0019】
フロントフレーム5aには、作業機30および一対の前輪3aが取り付けられている。作業機30は、本体5の前方に配設されている。作業機30は、油圧ポンプ119(
図3参照)からの作動油によって駆動される。作業機30は、ブーム31と、一対のリフトシリンダ33と、バケット32と、ベルクランク34と、チルトシリンダ35と、ベルクランク34の先端部とバケット32とを連結するチルトロッド36とを有している。
【0020】
ブーム31は、フロントフレーム5aに回転可能に支持されている。ブーム31の基端部(基端部)が、ブームピン7によって、フロントフレーム5aに揺動可能に取り付けられている。リフトシリンダ33の一端はフロントフレーム5aに取り付けられている。リフトシリンダ33の他端は、ブーム31に取り付けられている。リフトシリンダ33の他端は、ブーム31の下端部に取り付けられていることが好ましい。フロントフレーム5aとブーム31とは、リフトシリンダ33により連結されている。リフトシリンダ33が油圧ポンプ119からの作動油によって伸縮することによって、ブーム31がブームピン7を中心として上下に揺動する。
【0021】
なお、
図1では、リフトシリンダ33のうちの一方のみを図示しており、他方を省略している。
【0022】
バケット32は、ブーム31の先端に回転可能に支持されている。バケット32は、バケットピン39によって、ブーム31の先端部に揺動可能に指示されている。チルトシリンダ35の一端はフロントフレーム5aに取り付けられている。チルトシリンダ35の他端はベルクランク34に取り付けられている。ベルクランク34とバケット32とは、図示しないリンク装置によって連結されている。フロントフレーム5aとバケット32とは、チルトシリンダ35、ベルクランク34およびリンク装置により連結されている。チルトシリンダ35が、油圧ポンプ119からの作動油によって伸縮することによって、バケット32がバケットピン39を中心として上下に揺動する。
【0023】
リアフレーム5bには、運転室6および一対の後輪3bが取り付けられている。運転室6は、本体5に搭載されている。運転室6には、オペレータが着座するシート、および後述する操作用の装置などが内装されている。
【0024】
ホイールローダ1は、積込対象としてのダンプトラックとブーム31との間の距離を測定するためのセンサ40をさらに備えている。センサ40は、ブーム31に設置されている。それゆえ、センサ40は、ブーム31の移動に連動して移動する。
【0025】
詳しくは、センサ40は、ブーム31先端部よりもブーム31の基端部に近い、ブーム31の所定位置に設置されている。センサ40は、ブーム31の下端部に設置されている。センサ40は、ブームピン7の近傍に設置されている。なお、「ブーム31の下端部」とは、ブーム31の下面を含む、ブーム31の下半分(地面側の半分)を意味する。
【0026】
後述するが、センサ40は、ダンプトラックのベッセルとブーム31との間の距離(以下、「距離D」とも称する)を測定する。センサ40は、ブーム31の下端部をセンシングする。なお、センサ40は、距離を測定するための装置であればよく、センサ40としては、超音波センサ、レーザセンサ、赤外線センサ、カメラ等の各種のデバイスを利用できる。
【0027】
図3は、ホイールローダ1の斜視図である。
図3に示すように、オペレータ操作に基づいてブーム31を上昇させることにより、バケット32を上昇させることができる。バケットに掘削した土砂等の掘削物が積載されている状態で、オペレータがバケット32のチルト角度(
図14の角度θ)を小さくすることにより、掘削物をダンプトラック等の積込対象に積み込むことが可能となる。
【0028】
図4は、左側のブーム31とセンサ40との位置関係を説明するための図である。
図4(A)および(B)に示すように、センサ40は、ブーム31の下端部31aに設置されている。センサ40の筐体内においては、ブーム31の先端部側にレンズ41が設置されている。
【0029】
なお、ホイールローダ1では、レンズ41が左側のブーム31の右側(右側のブーム31寄り)に配置されているが、これに限定されるものではない。レンズ41が、左側のブーム31の左側に配置される構成であってもよい。また、センサが右側のブーム31に設置されていてもよい。
【0030】
図5は、センサ40のセンシング範囲を説明するための模式図である。
図5に示されるように、センサ40の光軸48がブーム31の延伸方向に沿うように、センサ40が配置されている。
【0031】
センサ40は、ブーム31の下端部31aを含むエリアをセンシングする。さらに、センサ40は、ブーム31の下端部31aにおける、ブーム31の基端部よりも先端部に近いエリアをセンシングしてもよい。特に、センサ40は、ブーム31の下端部31aにおける、リフトシリンダ33の他端がブーム31に取り付けられる箇所からブーム31の先端部までのエリアをセンシングすることが好ましい。また、センサ40は、前述したエリアの一部をセンシングするものであってもよい。
【0032】
このような配置により、センサ40は、積込対象としてのダンプトラックとブーム31との間の距離を測定することができる。なお、センサ40によって得た情報は、ホイールローダ1の後述するコントローラ110(
図8)に送れて、データ処理がなされる。
【0033】
<ダンプアプローチ>
図6は、ダンプアプローチ時における一般的なオペレータ操作を説明するための図である。
図6に示すように、オペレータは、区間Q11では、アクセル操作を行う。具体的には、オペレータは、図示しないアクセルペダルを踏む。さらに、オペレータは、区間Q11では、ブーム31を上げるために、後述するブーム操作レバー122(
図8)を操作する。これにより、区間Q11では、ホイールローダ1がダンプトラック900に向かって走行するとともに、ブーム上げ操作が実行される。
【0034】
なお、オペレータが区間Q11でアクセル操作を行う理由は、ホイールローダ1を走行させるためというよりは、リフトシリンダ33に対して油量を十分に供給するための意味合いが濃い。エンジン回転数を上げて、油圧ポンプからの作動油の出力を確保している。したがって、区間Q11で車速を落とすために、オペレータがブレーキペダルを踏み込んだとしても、オペレータはアクセルペダルを踏み続けている。
【0035】
区間Q11に続く区間Q12においては、オペレータは、アクセル操作をやめて、ブレーキ操作を行う。具体的には、オペレータは、アクセルペダルを踏むのを止めて、図示しないブレーキペダルを踏む。これにより、オペレータは、ホイールローダ1をダンプトラック900の手前で停止させる。その後、オペレータは、後述するバケット操作レバー123(
図8)を操作して、バケット32によって掬い取られた土砂をダンプトラック900の荷台に積み込む。
【0036】
このような一連の操作を行った場合、バケット32の通過軌跡は、典型的には、破線Laとして表される。
【0037】
図7は、ダンプアプローチ時において、オペレータが、ダンプトラック900のベッセル901に掘削物を積載することが可能な位置までブーム31を上昇させなかった場合を表した図である。
図7(A)は、センサ40の出力を利用していないと仮定したときのダンプアプローチを表した図である。
図7(B)は、センサ40の出力を利用しているときのダンプアプローチを表した図である。このように、
図7(A)には、
図7(B)の特徴を明確にするための比較例を表している。
【0038】
図7(A)に示すように、区間Q11において、ブーム31を
図6に示した高さまで上昇させていなかった場合、区間Q12において、以下の事象が起こり得る。ホイールローダ1の前輪3aの先端がダンプトラック900の側面に衝突することを避けるために、オペレータが前輪3aに視線を向けたままホイールローダ1を前進させていると、オペレータがホイールローダ1を停止させようとする位置に前輪3aが到達する前に、ブーム31の下端部がダンプトラック900のベッセル901の上部に衝突してしまう。そこで、本実施の形態では、このような事象をセンサ40を用いて回避する。以下、
図7(B)に基づき説明する。なお、
図7(A)においては、バケット32の通過軌跡を、破線Lbとして表している。
【0039】
図7(B)に示すように、区間Q11において、ブーム31を
図6に示した高さまで上昇させていなかった場合、ホイールローダ1(詳しくは、コントローラ110)は以下の制御を行う。
【0040】
ホイールローダ1は、センサ40によって測定された距離D(ダンプトラック900とブーム31との間の距離)が閾値以下になった否かを判断する。ホイールローダ1は、測定された距離Dが閾値以下になったと判断すると、ブーム31を上昇させる制御を開始する。たとえば、測定された距離Dが閾値以下とならない区間Q21では、ブーム31を上昇させないが、測定された距離Dが閾値以下となる区間Q22までホイールローダ1が前進すると、ホイールローダ1はブーム31を上昇させる制御を開始する。
【0041】
このように、ホイールローダ1は、センサ40を用いて、ダンプトラック900とブーム31との間の距離Dを測定する。ホイールローダ1のコントローラ110は、ホイールローダ1が走行することによってセンサ40によって測定された距離Dが閾値以下になると、ブーム上げ動作をホイールローダに実行させる。
【0042】
上述したように、ホイールローダ1は、ダンプアプローチ時において、ブーム31がベッセル901に衝突する前に、ブーム31をベッセル901から遠ざける処理を行なう。したがって、オペレータが前輪3aの位置に注目しすぎるあまり、ブーム31の位置の確認が疎かになってしまった場合であっても、ブーム31がダンプトラック900に衝突してしまうことを回避可能となる。よって、ホイールローダ1によれば、ダンプアプローチ時におけるオペレータ操作を補助することができる。
【0043】
<機能的構成>
図8は、ホイールローダ1のシステム構成を表したブロック図である。
図8に示すように、ホイールローダ1は、ブーム31と、バケット32と、リフトシリンダ33と、チルトシリンダ35と、センサ40と、コントローラ110と、ブーム角度センサ112と、バケット角度センサ113と、エンジン118と、油圧ポンプ119と、操作レバー120と、操作弁131,141と、モニタ151、スピーカ152とを備える。
【0044】
操作レバー120は、前後進切替操作レバー121と、ブーム操作レバー122と、バケット操作レバー123と、バイブレータ124,125,126とを含んでいる。コントローラ110は、判定部1101を含んでいる。
【0045】
コントローラ110は、ホイールローダ1の全体的な動作を制御する。コントローラ110は、アクセルペダルの操作に基づき、エンジン118の回転数等を制御する。また、コントローラは、操作レバー120によるオペレータ操作に基づく信号を受信し、当該操作に応じた動作をホイールローダ1に実行させる。
【0046】
油圧ポンプ119は、エンジン118の出力によって駆動する。油圧ポンプ119は、操作弁131を介して、ブーム31を駆動するリフトシリンダ33に作動油を供給する。ブーム31の上下動作は、運転室6に備えられたブーム操作レバー122の操作によって制御可能である。また、油圧ポンプ119は、操作弁141を介して、バケット32を駆動するチルトシリンダ35に作動油を供給する。バケット32の動作は、運転室6に備えられたバケット操作レバー123の操作によって制御可能である。
【0047】
コントローラ110は、センサ40からセンシング結果を逐次受信する。コントローラ110の判定部1101は、ダンプアプローチの際に、センサ40によって測定された距離Dが閾値Th以下となったかないかを判定する。コントローラ110は、判定部1101によって距離Dが閾値Th以下になったと判定されると、ブーム31を上昇させる処理を開始する。
【0048】
コントローラ110は、ブーム角度センサ112からブーム角度に応じた信号を受信する。コントローラ110は、バケット角度センサ113からチルト角度に応じた信号を受信する。ブーム角度センサ112およびバケット角度センサ113から出力される信号(センシング結果)の利用方法については後述する。
【0049】
コントローラ110は、モニタ151に各種の画像を表示させる。コントローラ110は、スピーカ152に所定の音を出力させる。モニタ151およびスピーカ152の利用方法については後述する。
【0050】
バイブレータ124は、前後進切替操作レバー121を振動させるための装置である。バイブレータ125は、ブーム操作レバー122を振動させるための装置である。バイブレータ126は、バケット操作レバー123を振動させるための装置である。バイブレータ124〜126の利用方法については後述する。
【0051】
<制御構造>
図9は、ホイールローダ1の処理の流れを説明するためのフローチャートである。
図9に示すように、ステップS2において、コントローラ110は、前進中か否かを判断する。コントローラ110は、前進中であると判断した場合(ステップS2においてYES)、ステップS4において、センサ40によって測定された距離Dが閾値Th以下であるか否かを判断する。コントローラ110は、前進中でないと判断した場合(ステップS2においてNO)、処理をステップS2に戻す。
【0052】
コントローラ110は、距離Dが閾値Th以下であると判断した場合(ステップS4においてYES)、ステップS6において、ブーム31を上昇させる処理を開始する。コントローラ110は、距離Dが閾値Thよりも長いと判断した場合(ステップS4においてNO)、処理をステップS2に戻す。ステップS8において、コントローラ110は、センサ40によって測定された距離Dが閾値Th以下であるか否かを判断する。
【0053】
コントローラ110は、距離Dが閾値Thよりも長いと判断した場合(ステップS8においてYES)、ステップS14において、ブーム31の上昇を停止させる。ステップS14の後、ステップS16において、コントローラ110は、ホイールローダ1が前進中であるか否かを判断する。コントローラ110は、前進中であると判断した場合(ステップS16においてYES)、処理をステップS4に戻す。コントローラ110は、前進中でないと判断した場合(ステップS16においてNO)、一連の処理を終了する。
【0054】
コントローラ110は、距離Dが閾値Th以下であると判断した場合(ステップS8においてNO)、ステップS10において、ブーム31の角度(ブーム角)が最大角度であるか否かを判断する。具体的には、コントローラ110は、リフトシリンダ33がストロークエンドまで伸びている状態か否かを判断する。
【0055】
コントローラ110は、最大角度であると判断した場合(ステップS10においてYES)、ステップS12において、ホイールローダ1の走行を停止させる。典型的には、コントローラ110は、オペレータがブレーキ操作を行わなくても、ブレーキをかける。コントローラ110は、最大角度でないと判断した場合(ステップS10においてNO)、処理をステップS8に進める。
【0056】
上記においては、コントローラ110は、距離Dが閾値Th以下になった場合、ブーム31を上昇させる制御を行う。このような制御を、オペレータ操作によって、強制的に停止させてもよい。このようなオペレータ操作としては、たとえば、図示しない所定のボタンの押下操作、ブーム操作レバー122を用いてブーム31を下げる操作、前後進切替操作レバー121を前進位置から後進位置に切り替える操作が挙げられる。なお、ホイールローダ1においては、前後進切替操作レバー121を前進位置から後進位置に切り替える操作は、ホイールローダ1の前進時(停止していないとき)においても行われる。
【0057】
<利点>
(1)以上のように、センサ40は、ブーム31の先端部よりもブーム31の基端部に近い、ブーム31の所定位置に設置されている。コントローラ110は、ホイールローダ1が走行することによってセンサ40によって測定された距離Dが閾値Th以下になると、衝突回避のための所定の動作としてブーム31を上げる動作をホイールローダ1に実行させる。
【0058】
これによれば、ホイールローダ1は、ダンプアプローチ時において、ブーム31がベッセル901に衝突する前に、
図7(B)の区間Q22に示したように、ブーム31をベッセル901から遠ざける処理を行なう。それゆえ、オペレータがブーム31の位置の確認を怠った場合であっても、ブーム31がダンプトラック900に衝突してしまうことを回避可能となる。したがって、ホイールローダ1によれば、ダンプアプローチ時におけるオペレータ操作を補助することができる。
【0059】
(2)詳しくは、上記所定位置は、ブーム31の下端部31aである。これによれば、ブーム31の下端部31aをセンシングすることが可能となる。
【0060】
(3)センサ40は、ブーム31の下端部31aをセンシングする。これによれば、ブーム31とダンプトラック900のベッセル901との距離Dを測定することが可能となる。
【0061】
(4)コントローラ110は、ブーム31の角度が最大角となると、ホイールローダ1の走行を停止させる。これによれば、ブーム31を可能な限り逃がしてもベッセル901に衝突してしまうような局面において、ブーム31がベッセル901に衝突してしまう事態を防止できる。
【0062】
[実施の形態2]
本実施の形態に係るホイールローダについて、図面を参照して説明する。なお、実施の形態1のホイールローダ1と異なる構成について説明し、ホイールローダ1と同様な構成については、その説明を繰り返さない。
【0063】
図10は、実施形態に基づくホイールローダ1Aの側面図である。
図11は、ホイールローダ1Aの上面図である。
図12は、ホイールローダ1Aの斜視図である。
【0064】
図10,11,12に示されるように、ホイールローダ1Aは、センサ40の代わりにセンサ40Aを備える点以外は、ホイールローダ1Aと同様のハードウェア構成を備える。
【0065】
センサ40Aは、フロントフレーム5aの上面に設置されている。センサ40Aは、フロントフレーム5aの前端部51(
図13参照)よりもブーム31の支持位置に近い所定位置に設置されている。詳しくは、フロントフレーム5aの前端部よりもブームピン7の位置に近い位置に設置されている。
【0066】
センサ40Aは、
図11のY方向において、上面視で、左のブーム31の支持位置と、チルトシリンダ35の支持位置との間に設置されている。なお、当該上面視で、右のブーム31の支持位置と、チルトシリンダ35の支持位置との間にセンサ40Aを設置してもよい。
【0067】
センサ40Aは、センサ40と同様に、ダンプアプローチ時においては、ダンプトラック900とブーム31との間の距離Dを測定する。詳しくは、センサ40Aは、センサ40と同様に、ダンプトラック900のベッセル901とブーム31との間の距離Dを測定する。センサ40Aは、センサ40と同様に、ブーム31が上昇しているときには、ブーム31の下端部をセンシングする。なお、センサ40Aは、距離Dを測定するための装置であればよく、センサ40Aとしては、超音波センサ、レーザセンサ、赤外線センサ、カメラ等の各種のデバイスを利用できる。
【0068】
図13は、センサ40Aのセンシング範囲を説明するための模式図である。
図13に示されるように、ブーム31が所定の角度以上に上昇した場合においてセンサ40Aの光軸49が概ねブーム31の延伸方向に沿うように、センサ40Aが配置されている。センサ40Aのセンシング範囲は、ダンプアプローチ時のブーム角度を想定して予め設定されている。
【0069】
センサ40Aは、ブーム31の下端部31aを含むエリアをセンシングする。さらに、センサ40Aは、ブーム31の下端部31aにおける、ブーム31の基端部よりも先端部に近いエリアをセンシングしてもよい。特に、センサ40Aは、ブーム31の下端部31aにおける、リフトシリンダ33の他端がブーム31に取り付けられる箇所からブーム31の先端部までのエリアをセンシングすることが好ましい。また、センサ40Aは、前述したエリアの一部をセンシングするものであってもよい。
【0070】
このような配置により、センサ40Aは、積込対象としてのダンプトラックとブーム31との間の距離Dを測定することができる。なお、センサ40Aによって得た情報は、ホイールローダ1Aのコントローラ110に送れて、データ処理がなされる。
【0071】
ホイールローダ1Aにおいても、ホイールローダ1と同様の制御が実行される。具体的には、コントローラ110は、ホイールローダ1Aが走行することによってセンサ40Aによって測定された距離Dが閾値Th以下になると、衝突回避のための所定の動作としてブーム31を上げる動作をホイールローダ1に実行させる。
【0072】
これによれば、ホイールローダ1Aは、ダンプアプローチ時において、ブーム31がベッセル901に衝突する前に、ブーム31をベッセル901から遠ざけことができる。それゆえ、オペレータが、前輪3aに視線を向けたままホイールローダ1Aを走行させることによりブーム31の位置の確認を怠ったとしても、ブーム31がダンプトラック900に衝突してしまうことを回避可能となる。
【0073】
<<変形例>>
実施の形態1に係るホイールローダ1および実施の形態2に係るホイールローダ1Aとの変形例については、図面を参照して説明する。
【0074】
(1)衝突回避のための所定の動作について
上記の実施の形態1,2においては、コントローラ110は、ホイールローダ1Aが走行することによってセンサ40Aによって測定された距離Dが閾値Th以下になると、所定の動作としてブーム31を上げる動作をホイールローダ1に実行させる。しかしながら、所定の動作は、ブーム31を上昇させる動作に限定されるものではない。
【0075】
コントローラ110は、ブーム31を上げる制御を行う代わりに、スピーカ152から所定の報知音(警告音)を出力させてもよい。あるいは、コントローラ110は、モニタ151に所定の警告表示を行わせてもよい。これらによれば、オペレータは、異常に気付くことが可能となる。具体的には、オペレータは、ホイールローダ1,1Aがダンプトラックに衝突しそうな状態となっていることに気付くことが可能となる。
【0076】
コントローラ110は、バイブレータ124〜126に対して振動を開始する指令を送信してもよい。なお、バイブレータ124〜126の振動により、各操作レバー121,122,123は振動する。これによっても、オペレータは、異常に気付くことが可能となる。
【0077】
なお、ブーム31の上昇の動作と、スピーカ152からの所定の警告音の出力と、モニタ151における所定の警告表示と、バイブレータ124〜126とを、適宜組み合わせて実行するように、ホイールローダ1,1Aを構成してもよい。
【0078】
(2)チルト角度を考慮した制御
図14は、バケット32のチルト角度θを説明するための図である。なお、
図14では、ホイールローダ1を例示している。
図14に示すように、ダンプアプローチ時には、土砂等の掘削物がバケット32に積載されているため、オペレータは、チルト角度θを所定の角度(以下、「角度θ1」とも称する)よりも大きくする必要がある。
【0079】
そこで、距離Dが閾値Th以下になった場合に、所定の動作を常に開始するのではなく、バケット32のチルト角度が所定の角度θ1以上となったことを条件に、所定の動作を開始するように、ホイールローダ1,1Aを構成してもよい。
【0080】
これによれば、バケット32に掘削物を積載している状態でホイールローダ1,1Aがダンプトラック900に近づいている状況の場合には、距離Dが閾値Th以下になると、所定の動作が実行される。その一方で、バケット32に掘削物を積載していない状態でホイールローダ1,1Aがダンプトラック900に近づいている状況の場合には、距離Dが閾値Th以下になっても所定の動作が実行されることはない。
【0081】
このように、ホイールローダ1、1Aがダンプトラック900に近づいている場合であっても、バケット32に掘削物が積載されていないときには、所定の動作が実行されることを抑止することができる。
【0082】
図15は、荷切の状態を表した図である。なお、
図15では、ホイールローダ1を例示している。
図15に示すように、オペレータは、ダンプトラック900のベッセル901に掘削物を積載していった場合、ベッセル901の高さを超えて掘削物がベッセル901に盛られた状態になり得る。このような場合、オペレータは、バケット32のチルト角度を上記の角度θ1よりも小さい所定の角度(以下、「角度θ2」)以下にして、ベッセル901の上側の掘削物をバケット32を操作して地面に落とす。典型的には、バケット32のチルト角度θをゼロ度(刃先32aが本体5に対して水平となる状態)にして、ベッセル901から溢れた土砂を、ダンプトラック900に対してホイールローダ1、1Aとは反対側の地面に落とす。
【0083】
オペレータがこのような荷切の処理を行なおうとしているときに、距離Dが閾値Th以下になったからといってブーム31が自動的に上昇してしまうと、荷切が行えない。そこで、コントローラ110は、チルト角度θが角度θ1よりも小さい角度θ2以下である場合、所定の動作としてのブーム上げの実行を停止させる。これにより、オペレータは、荷切をすることができる。
【0084】
(3)後進状態における制御停止
ホイールローダ1、1Aの後進時には、距離Dが閾値Th以下であっても、ブーム31がベッセル901に衝突することはないため、ブーム31の上昇等の所定の動作を実行させる必要はない。そこで、ホイールローダ1,1Aが前進状態から後進状態に遷移すると、上記所定の動作の実行を停止させるように、コントローラ110を構成してもよい。これによれば、不要な制御が実行されることを抑制できる。
【0085】
<<付記>>
掘削物を積込対象に積み込むホイールローダは、フロントフレームと、バケットと、先端部がバケットに接続され、かつ基端部がフロントフレームに回転可能に支持されたブームと、積込対象とブームとの間の距離を測定するためのセンサと、ホイールローダの動作を制御するコントローラとを備える。コントローラは、ホイールローダが走行することによってセンサによって測定された距離が閾値以下になると、衝突回避のための所定の動作をホイールローダに実行させる。
【0086】
上記の構成によれば、ホイールローダは、前進時において、ブームが積込対象に衝突する前に、衝突回避のための所定の動作を実行する。それゆえ、オペレータがブームの位置の確認を怠った場合であっても、積載対象と衝突してしまうことを避けることが可能となる。したがって、ホイールローダによれば、掘削物を積込対象に積み込む際におけるオペレータ操作を補助することができる。
【0087】
好ましくは、センサは、先端部よりも基端部に近い、ブームにおける第1の位置、およびフロントフレームの前端部よりもブームの支持位置に近い、フロントフレームにおける第2の位置のうちのいずれかに設置されている。また好ましくは、第1の位置は、ブームの下端部である。
【0088】
上記の構成によれば、ホイールローダは、センサによって、ブームの下端部をセンシングすることが可能となる。
【0089】
好ましくは、センサは、第1の位置に設置されており、かつブームの下端部における、基端部よりも先端部に近いエリアをセンシングする。
【0090】
上記の構成によれば、ホイールローダは、ブームと積載対象との距離を測定することが可能となる。
【0091】
好ましくは、ホイールローダは、一端がブームの下端部に取り付けられ、かつブームを駆動するリフトシリンダをさらに備える。センサは、第1の位置に設置されており、かつブームの下端部における、リフトシリンダがブームに取り付けられる箇所からブームの先端部までのエリアをセンシングする。
【0092】
上記の構成によれば、ホイールローダは、ブームと積載対象との距離を測定することが可能となる。
【0093】
好ましくは、所定の動作は、ブームを上げる動作である。
上記の構成によれば、ホイールローダは、前進時において、ブームが積込対象に衝突する前に、ブームを積込対象から遠ざけることができる。それゆえ、オペレータがブームの位置の確認を怠った場合であっても、ブームが積込対象に衝突してしまうことを回避可能となる。
【0094】
好ましくは、所定の動作は、所定の報知音を出力する動作である。
上記の構成によれば、ブームが積込対象に衝突する前にオペレータが報知音を聞くことにより、オペレータは、積込対象との衝突を回避する操作を行うことが可能となる。
【0095】
好ましくは、ホイールローダを操作するための操作レバーをさらに備える。所定の動作は、操作レバーを振動させる動作である。
【0096】
上記の構成によれば、ブームが積込対象に衝突する前にオペレータが操作レバーの振動を感知することにより、オペレータは、積込対象との衝突を回避する操作を行うことが可能となる。
【0097】
好ましくは、コントローラは、所定の動作によってブームの角度が最大角となると、ホイールローダの走行を停止させる。
【0098】
上記の構成によれば、ブームを可能な限り逃がしても積載対象に衝突してしまうような局面において、ブームが積載対象に衝突してしまう事態を防止できる。
【0099】
好ましくは、コントローラは、バケットのチルト角度が第1の値以上であることを条件に、所定の動作をホイールローダに実行させる。
【0100】
上記の構成によれば、ホイールローダが積載対象に近づいている場合であっても、バケットに掘削物が積載されていないときには、衝突を回避するための所定の動作が実行されることを抑止することができる。
【0101】
好ましくは、所定の動作は、ブームを上げる動作である。コントローラは、チルト角度が第1の値よりも小さい第2の値以下である場合、ブームを上げる動作を停止させる。
【0102】
上記の構成によれば、ホイールローダは、ブーム上げの自動制御を停止するため、オペレータは、荷切をすることができる。
【0103】
好ましくは、コントローラは、オペレータ操作に基づく所定の入力を受け付けた場合には、所定の動作の実行を停止させる。
【0104】
上記の構成によれば、積載対象との距離が閾値以下になった場合にブームを上昇させるといった制御を、オペレータ操作によって強制的に停止させることが可能となる。
【0105】
好ましくは、所定の動作は、ブームを上げる動作である。オペレータ操作は、ブームを下げる操作である。
【0106】
上記の構成によれば、ブームが自動的に上昇しているときに、ブームを下げる操作を行うことにより、ブームを自動的に上昇させる制御を強制的に停止させることができる。
【0107】
好ましくは、ホイールローダの前進と後進とを切り替える前後進切替レバーをさらに備える。オペレータ操作は、前後進切替レバーが前進位置から後進位置に切り替える操作である。
【0108】
上記の構成によれば、積載対象との距離が閾値以下になった場合にブームを上昇させるといった制御を、前後進切替レバーの切替操作によって強制的に停止させることが可能となる。
【0109】
好ましくは、コントローラは、ホイールローダが前進状態から後進状態に遷移すると、所定の動作の実行を停止させる。
【0110】
上記の構成によれば、積載対象との距離が閾値以下になった場合にブームを上昇させるといった制御を、後進状態のときには停止させることが可能となる。
【0111】
制御方法は、掘削物を積込対象に積み込むホイールローダにおいて実行される。この制御方法は、積込対象とホイールローダのブームとの間の距離を測定するステップと、ホイールローダが走行することによって、測定された距離が閾値以下になることを判断するステップと、測定された距離が閾値以下になると、衝突回避のための所定の動作をホイールローダに実行させるステップとを備える。
【0112】
上記の方法によれば、ホイールローダは、前進時において、ブームが積込対象に衝突する前に、衝突回避のための所定の動作を実行する。それゆえ、オペレータがブームの位置の確認を怠った場合であっても、積載対象と衝突してしまうことを避けることが可能となる。したがって、ホイールローダによれば、掘削物を積込対象に積み込む際におけるオペレータ操作を補助することができる。
【0113】
今回開示された実施の形態は例示であって、上記内容のみに制限されるものではない。本発明の範囲は請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。