特許第6914945号(P6914945)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6914945
(24)【登録日】2021年7月16日
(45)【発行日】2021年8月4日
(54)【発明の名称】グリセロールカーボネートの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07D 317/36 20060101AFI20210727BHJP
   B01J 31/02 20060101ALI20210727BHJP
   B01J 38/00 20060101ALI20210727BHJP
【FI】
   C07D317/36
   B01J31/02 101Z
   B01J31/02 102Z
   B01J38/00 301Q
【請求項の数】15
【全頁数】40
(21)【出願番号】特願2018-538157(P2018-538157)
(86)(22)【出願日】2017年1月20日
(65)【公表番号】特表2019-505528(P2019-505528A)
(43)【公表日】2019年2月28日
(86)【国際出願番号】GB2017050151
(87)【国際公開番号】WO2017125759
(87)【国際公開日】20170727
【審査請求日】2020年1月17日
(31)【優先権主張番号】1601057.1
(32)【優先日】2016年1月20日
(33)【優先権主張国】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】315002690
【氏名又は名称】ザ クイーンズ ユニバーシティ オブ ベルファスト
(74)【代理人】
【識別番号】100107984
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 雅紀
(74)【代理人】
【識別番号】100102255
【弁理士】
【氏名又は名称】小澤 誠次
(74)【代理人】
【識別番号】100096482
【弁理士】
【氏名又は名称】東海 裕作
(74)【代理人】
【識別番号】100188352
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 一弘
(74)【代理人】
【識別番号】100113860
【弁理士】
【氏名又は名称】松橋 泰典
(74)【代理人】
【識別番号】100131093
【弁理士】
【氏名又は名称】堀内 真
(74)【代理人】
【識別番号】100150902
【弁理士】
【氏名又は名称】山内 正子
(74)【代理人】
【識別番号】100141391
【弁理士】
【氏名又は名称】園元 修一
(74)【代理人】
【識別番号】100198074
【弁理士】
【氏名又は名称】山村 昭裕
(74)【代理人】
【識別番号】100145920
【弁理士】
【氏名又は名称】森川 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100096013
【弁理士】
【氏名又は名称】富田 博行
(72)【発明者】
【氏名】コールマン ファーガル
(72)【発明者】
【氏名】ティレル ソフィー
(72)【発明者】
【氏名】アトキンス マーティン フィリップ
(72)【発明者】
【氏名】ウガルデ アルバート フェレール
(72)【発明者】
【氏名】スカルラータ イグナチオ
(72)【発明者】
【氏名】デラボー ヨアン
【審査官】 早川 裕之
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2015/019108(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0158835(US,A1)
【文献】 米国特許第05091543(US,A)
【文献】 中国特許出願公開第103030622(CN,A)
【文献】 中国特許出願公開第103467435(CN,A)
【文献】 韓国登録特許第10−1063778(KR,B1)
【文献】 Green Chemistry,2012年,14,3368−3376
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D 317/36〜38
B01J 31/02
B01J 38/00
CAplus/REGISTRY(STN)
CASREACT(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)第1の反応帯域において、均一系エステル交換触媒の存在下で、グリセロールの反応物流を、a)80質量%超のジアルキルカーボネートを含むジアルキルカーボネートの反応物流、及び/又はb)80質量%超の環状アルキレンカーボネートを含む環状アルキレンカーボネートの反応物流と、接触並びに部分的に反応させるステップ;
(ii)アルコール含有副生成物流を得るために、ステップ(i)におけるジアルキルカーボネート及び/又は環状アルキレンカーボネートとグリセロールの反応から形成されるアルコール副生成物の少なくとも一部を反応混合物から分離するステップ;
(iii)第2の反応帯域において、前記均一系エステル交換触媒の存在下で、残存する反応物の少なくとも一部を反応させるステップ;並びに
(iv)グリセロールカーボネートの生成物流を得るステップ
を含む、グリセロールカーボネートを製造するための方法であって、
前記第1の反応帯域及び前記第2の反応帯域が、ステップ(i)及びステップ(iii)による前記反応が別々に実施される系/装置内の、区別できる別々の反応領域を指す、前記方法
【請求項2】
均一系エステル交換触媒が、第1の反応帯域に供給されるグリセロールの質量に基づいて、0.25〜5質量%の量で反応混合物中に存在する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ステップ(i)における接触及び反応が、50〜90%のグリセロール転化率を達成する;及び/又は、
アルコール副生成物の50質量%超が、ステップ(ii)において除去される;請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
第1の反応帯域に供給されるジアルキルカーボネート及び/又は環状アルキレンカーボネートとグリセロールのモル比が、1:1〜3:1の範囲である、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
a)第1の反応帯域及び/又は第2の反応帯域が、40〜160℃の温度で操作される;
b)第1の反応帯域が、10kPa(絶対圧)〜1,500kPa(絶対圧)(0.1〜15bar(絶対圧))の圧力で操作される;及び/又は、
c)第2の反応帯域が、5kPa(絶対圧)〜150kPa(絶対圧)(0.05〜1.5bar(絶対圧))の圧力で操作される;請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
追加のジアルキルカーボネート及び/又は環状アルキレンカーボネートの反応物供給流によって、第2の反応帯域における反応のためのさらなるジアルキルカーボネート及び/又は環状アルキレンカーボネートの反応物を導入するステップをさらに含み、前記ジアルキルカーボネート及び/又は環状アルキレンカーボネートとグリセロールのモル比が、第1の反応帯域中よりも前記第2の反応帯域中で高、請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
第2の反応帯域において形成されるときの、アルコール副生成物の連続除去を含む、請求項1〜6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
a)ジアルキルカーボネートの反応物流が、
i)90質量%超のジアルキルカーボネート;
ii)5質量%未満のアルコール;及び
iii)2質量%未満の水;
を含み、並びに/又は、
b)環状アルキレンカーボネートの反応物流が、
i)90質量%超の環状アルキレンカーボネート;
ii)5質量%未満のアルコール;及び
iii)2質量%未満の水;
を含む、請求項1〜7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
均一系エステル交換触媒をグリセロールカーボネートの生成物流から回収するステップをさらに含、請求項1〜8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
ジアルキルカーボネート反応物/環状アルキレンカーボネート及び副生成物アルコールの共沸混合物を含む流れが、方法の結果として得られ、その方法は、未反応のジアルキルカーボネート/環状アルキレンカーボネートを前記共沸混合物から分離して、ジアルキルカーボネート/環状アルキレンカーボネートの再利用流を形成するステップをさらに含み、前記ジアルキルカーボネート/環状アルキレンカーボネートの再利用流が、前記方法のためのジアルキルカーボネート/環状アルキレンカーボネート反応物の供給源として使用される、請求項1〜9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
a)ジアルキルカーボネートの反応物流が、方法において使用され、ジアルキルカーボネート反応物が、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート又はこれらの混合物から選択されるか;又はb)環状アルキレンカーボネートの反応物流が、方法において使用され、前記環状アルキレンカーボネートが、以下の式Iである、請求項1〜10のいずれかに記載の方法:
【化1】

(式中、Rは、二価基の−(CH−であり(式中、nは、2〜6の整数である)、非置換であるか、又は少なくとも1個のC−Cアルキル基によって置換されている)。
【請求項12】
均一系エステル交換触媒がNaOMeである、請求項1〜11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
均一系エステル交換触媒が、式:
[Cat][X
(式中、[Cat]は、1又は2以上のカチオン種を表し;
[X]は、1又は2以上の塩基性アニオン種を表す)
の塩基性イオン液体であり、
[Cat]が、
a)[N(R)(R)(R)(R)]、[P(R)(R)(R)(R)]及び[S(R)(R)(R)]
(式中、R、R、R及びRは、C−C30の直鎖状又は分岐状のアルキル基、C−Cシクロアルキル基又はC−C10アリール基から、それぞれ独立して選択され、前記アルキル基、シクロアルキル基又はアリール基は、無置換であるか、又はC−Cアルコキシ、C−Cシクロアルキル、C−C10アリール、C−C10アルカリール、C−C10アラルキル、−CN、−NO、−C(S)R、−CS、−SC(S)R、−S(O)(C−C)アルキル、−S(O)O(C−C)アルキル、−OS(O)(C−C)アルキル、−S(C−C)アルキル、−S−S(C−Cアルキル)、−NR又は複素環基(式中、R、R及びRは、水素又はC−Cアルキルから、独立して選択される)から選択される1〜3個の基によって置換されていてもよい)
から選択される非環状カチオンを含むか;あるいは
b)ベンゾイミダゾリウム、ベンゾフラニウム、ベンゾチオフェニウム、ベンゾトリアゾリウム、ジアザビシクロデセニウム、ジアザビシクロノネニウム、ジアザビシクロウンデセニウム、ジチアゾリウム、イミダゾリウム、インダゾリウム、インドリニウム、インドリウム、オキサジニウム、オキサゾリウム、イソオキサゾリウム、オキサチアゾリウム、フタラジニウム、ピラジニウム、ピラゾリウム、ピリダジニウム、ピリジニウム、ピリミジニウム、キナゾリニウム、キノリニウム、イソキノリニウム、キノキサリニウム、テトラゾリウム、チアジアゾリウム、イソチアジアゾリウム、チアジニウム、チアゾリウム、イソチアゾリウム、トリアジニウム、トリアゾリウム及びイソトリアゾリウムから選択される芳香族複素環カチオン種を含み;及び
[X]が、アルキルカーボネート、ハイドロゲンカーボネート、カーボネート、ヒドロキシド、アルコキシド、クロライド、ブロマイド、ナイトレート及びサルフェートから選択されるアニオンを含む、請求項1〜11のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
[Cat]が、
【化2】

から選択されるカチオンを含み;及び/又は、
[X]が、アルキルカーボネート、ハイドロゲンカーボネート、カーボネート及びアルコキシドから選択されるアニオンを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
均一系エステル交換触媒が、
a)tert−ブチルアミン、イソプロピルアミン、トリエチルアミン、ジ−tert−ブチルアミン、ジイソプロピルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、ジシクロヘキシルアミン、ジベンジルアミン、ベンジルジメチルアミン、ジアセチルクロロベンジルアミン、ジメチルフェネチルアミン、1−ジメチルアミノ−2−フェニルプロパン及びN,N,N’−トリ−tert−ブチルプロパンジアミンから選択されるか;あるいは、b)2〜6個のC−Cアルキル置換基を有する置換ピペリジン誘導体であり、前記アルキル置換基の少なくとも2個が、環の窒素原子に隣接する炭素原子上に位置る、請求項1〜11のいずれかに記載の方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グリセロール及びジアルキルカーボネート、例えば、ジメチルカーボネート、又は環状アルキレンカーボネートの反応から、グリセロールカーボネートを製造するための方法に関する。より具体的には、本発明は、グリセロールカーボネートの合成が、均一系エステル交換触媒の存在下で実施され、グリセロールの反応物流及びジアルキルカーボネート又は環状アルキレンカーボネートの反応物流の部分反応、並びに、グリセロール転化率並びにグリセロールカーボネートの選択性及び収率を改善するためのさらなる反応の前に、アルコール副生成物を分離する中間ステップを含む、方法に関する。
【背景技術】
【0002】
グリセロールカーボネートは、溶媒、洗剤、電解質成分、硬化剤及び発泡剤、並びに界面活性剤及びポリマーの製造のための化学中間体としての使用が見いだされている、安定な、無色の液体である。特に、グリセロールカーボネートは、いくつかの有益な工業的用途を有する化合物であるグリシドールの形成の前駆体であることが知られている。例えば、グリシドールは、安定剤、プラスチック改良剤、界面活性剤、ゲル化剤及び殺菌剤において有用な性質を有することが知られている。さらにまた、グリシドールは、グリシジルエーテル、グリシジルエステル、グリシジルアミン並びにグリシジルカーバメート樹脂及びポリウレタンの合成における中間体として有用であることが知られている。したがって、グリシドールは、繊維、プラスチック、医薬品、化粧品及び光化学産業を含む、様々な産業分野における適用が見いだされている。
【0003】
グリシドールの製造のための公知の商業的プロセスは、過酸化水素及び酸化タングステン系触媒を使用するアリルアルコールのエポキシ化、並びにエピクロロヒドリンと塩基との反応を含む。しかしながら、これらのプロセスに関する欠点がある。例えば、アリルアルコールのエポキシ化は、複数のプロセスステップを含み、触媒の分解に関する問題を抱えている。その一方で、高コストの原料及び/又は廃棄副生成物の管理は、両方の場合において懸念される。
【0004】
グリセロールは、バイオディーゼル燃料の生産における副生成物として大量に生成される。石油系燃料を少なくとも部分的に代替するバイオ燃料の使用への注目が高まるにつれて、グリセロールの生産は、現在の需要よりもはるかに高いレベルまで増加している。結果として、グリセロールは、特に、バイオ燃料の生産が普及している国において、安価で、容易に入手可能な原料であり、グリセロールの適切な適用の開発への注目が高まっている。グリセロールカーボネートの形成のための、いくつかの公知のグリセロール系の経路がある。これらは、一酸化炭素又は二酸化炭素による直接カルボニル化反応を含む。しかしながら、熱力学の観点から、二酸化炭素を使用する直接カルボニル化は好ましくなく、これまでに、低い転化収率しか報告されていない。酸素及びCu触媒又はPd触媒の存在下でCOを用いるグリセロールのカルボニル化は、良好な収率が報告されている。しかしながら、工業的スケールにおける有毒な一酸化炭素の取り扱いは問題があり、費用がかかり得る。
【0005】
グリセロールと尿素との反応は、グリセロールカーボネートを生成するための別の公知の方法であり、典型的には、Zn、Al及びZr系種などのルイス酸部位を有する触媒の使用を含む。しかしながら、大量のアンモニア副生成物の放出、必要な高温、及び触媒の低い再利用性は、この方法の工業的適用を制限する。
【0006】
環状カーボネートを含むジアルキルカーボネートのグリセロールとのエステル交換は、グリセロールカーボネートを発生させるための手段として使用されている。ジアルキルカーボネート、例えば、ジメチルカーボネートのグリセロールとのエステル交換は、可逆反応である。さらにまた、グリセロールカーボネートの1級アルコール基は、さらに当量のジメチルカーボネートと反応して、グリセロールジカーボネート(GDC,glycerol dicarbonate)を生成することができ、これは、さらに反応して、ジグリセロールトリカーボネート(GTC,diglycerol tricarbonate)を形成し得る。その一方で、反応中に副生成物として生成するメタノールは、グリセロールカーボネートと反応して、グリセロール及びジメチルカーボネートを再発生させ得る(すなわち、可逆反応)。
【0007】
米国特許第8,314,259号は、リパーゼバイオ触媒を利用する、グリセロール及びジメチルカーボネートからグリセロールカーボネートを製造する方法に関する。米国特許第8,314,259号は、リパーゼ触媒反応は、メタノール副生成物を除去するために機能するモレキュラーシーブの存在下で行われ得ることを述べており、化学平衡の観点で反応の進行を推進すると述べている。しかしながら、モレキュラーシーブを使用すると、米国特許第8,314,259号明細書の方法において、その図4図6において示されるように、25時間の反応時間後でさえも、転化率及び収率は、80%を超えないと思われる。
【0008】
米国特許出願公開第2014/0235875号は、トリメチロールプロパンなどのポリオール及びジアルキルカーボネートの反応から環状カーボネートを形成するための方法であって、モレキュラーシーブなどの吸着材が触媒に代えて使用される方法に関する。吸着材は、反応中に形成されるアルコール副生成物を吸着し、これは、反応の選択性を向上させると述べている。分子篩の存在下で、ポリオールが、ジメチルカーボネートと反応する、米国特許出願公開第2014/0235875号の実施例において報告されている環状カーボネートに対する最高の選択性は、93.6%であると思われる(表3の欄4)。しかしながら、生成物混合物の23.1%が未反応のポリオールであったので、この実施例において、転化率は表面上低い。
【0009】
モレキュラーシーブなどの不均一系吸着材の使用は、典型的には、連続操作が可能なプロセスに関連せず、吸着材の再生及び/又は吸着された物質の吸着材からの分離は、エネルギー及び労働の両方が集約的であり得る。特に、グリセロール及びジメチルカーボネートの反応中に形成されるグリセロールカーボネートの全モルに対して、2モルのメタノール副生成物が形成されると思われる。このように、これらのプロセスでは、生成物の体積に対して、非常に大きな吸着床が必要であり、スケールアップをより困難にする。
【0010】
Rokicki et al., Green Chem., 2005, 7, pages 529 to 539(以下で、「Rokicki et al」と称する)は、アニオン重合による、グリセロールカーボネートからの超分岐脂肪族ポリエーテルの形成に主に関する。しかしながら、Rokicki et alは、穏和な条件下で、グリセロールカーボネート前駆体を製造するための適切な方法も記載している。反応平衡を生成物側に移動させるために、ジメチルカーボネートは、グリセロールに対して、モル過剰(3:1)で使用された。2%未満の水を含有するグリセロールを出発物質として使用し、反応が、60〜70℃で、KCO触媒の存在下で行われた場合、グリセロールカーボネートが、ほぼ定量的収率で得られたことが報告されている。この反応は、メタノール副生成物が未反応のジメチルカーボネートと一緒に反応の終わりに留去される前に、還流下、3時間行われることが述べられている。
【0011】
Rokicki et alは、より大(10倍)過剰のジメチルカーボネートの使用が、どのようにジグリセロールトリカーボネートの形成をもたらすかも記載している。その一方で、大過剰のジメチルカーボネート、90℃を上回る反応温度及び反応系からの進行的なメタノールの除去は、グリセロールジカーボネートの形成を優先的にもたらした(
Rokicki et alの530ページ、右カラム及びスキーム1を参照のこと)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】米国特許第8,314,259号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2014/0235875号明細書
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】Rokicki et al., Green Chem., 2005, 7, pages 529 to 539
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
高転化率及び高選択性の両方の利益を得て、連続プロセスの一部として操作可能な、グリセロールカーボネートの生産のための方法が依然として必要とされている。本発明は、グリセロールとジアルキルカーボネート又は環状アルキレンカーボネートとの反応からのグリセロールカーボネートの製造が、副生成物アルコールを分離する中間ステップによって改善され得るという驚くべき発見に基づく。具体的には、均一系エステル交換触媒を使用する場合、副生成物アルコールを分離する中間ステップにより、グリセロールカーボネートの総転化率及び収率を改善することができる。加えて、中間のアルコール分離ステップ後、さらなる反応がアルコール副生成物の連続除去を伴う場合に、グリセロールカーボネートに対する選択性はさらにより向上し得ることも見いだした。
【0015】
本発明はまた、特に選択される均一系エステル交換触媒が、本方法におけるグリセロールカーボネートの転化率及び収率を最大化するために特に有用であるという知見に基づく。
【課題を解決するための手段】
【0016】
第1の態様において、本発明は、
(i)第1の反応帯域において、均一系エステル交換触媒の存在下で、グリセロールの反応物流を、a)80質量%超のジアルキルカーボネートを含むジアルキルカーボネートの反応物流、及び/又はb)80質量%超の環状アルキレンカーボネートを含む環状アルキレンカーボネートの反応物流と、接触並びに部分的に反応させるステップ;
(ii)アルコール含有副生成物流を得るために、ステップ(i)におけるジアルキルカーボネート及び/又は環状アルキレンカーボネートとグリセロールの反応から形成されるアルコール副生成物の少なくとも一部を反応混合物から分離するステップ;
(iii)第2の反応帯域において、均一系エステル交換触媒の存在下で、残存する反応物の少なくとも一部を反応させるステップ;並びに
(iv)グリセロールカーボネートの生成物流を得るステップ
を含む、グリセロールカーボネートを製造するための方法を提供する。
【0017】
本発明の方法は、グリセロール及びジアルキルカーボネート又は環状アルキレンカーボネートの間のエステル交換反応を含み、下記のスキーム1及び2に示されるように、グリセロールカーボネート及びアルコール副生成物の形成をもたらす。
【0018】
【化1】
【0019】
【化2】
【0020】
本発明のこの態様において、ステップ(i)における反応物流の反応後、中間の副生成物アルコールの除去ステップ(ii)の前に、副生成物アルコールの蓄積を初期には許容することが有利であることを見いだした。グリセロール及びジアルキルカーボネート流は、通常、混和せず、二相の反応混合物をもたらし、これは、反応物の反応速度を制限すると考えられる。しかしながら、副生成物アルコールの生成後、反応混合物が単相になることを見いだし、これは、反応速度及びグリセロール転化率の程度に有利であると考えられる。理解されるように、いくつかの従来技術のプロセスの場合におけるようなアルコール吸収床の使用は、単相の反応混合物を得るために、十分な副生成物アルコールを蓄積させることを許容することを考慮していない。さらに、驚くべきことに、中間の副生成物アルコールの分離ステップ(ii)を組み込むことによって、グリセロールの生成物への転化率が改善されることが、見い出された。全転化率は、本明細書で論じられるように、副生成物アルコールの分離ステップ(ii)が、反応混合物の蒸留を含む場合に、特に好都合であることも見いだされた。
【0021】
その一方で、本発明の好ましい実施形態において、アルコール分離ステップ(ii)に続くステップ(iii)における後続の反応でのグリセロールカーボネートに対する選択性が、後続の反応が副生成物アルコールの連続除去を伴って行われることを確保することによって、増加し得ることも見いだされた。反応の最終段階に連続除去を組み込むことによって、グリセロールカーボネートの全選択性が増加することが見いだされた。任意の特定の理論に拘束されるものではないが、グリセロールジカーボネートの形成は、以下のスキーム3に示されるように、メタノールの分離ステップ(ii)後、ステップ(iii)における後続の反応において、より容易に起こると考えられる。
【0022】
【化3】
【0023】
ステップ(iii)の最終段階の反応において、副生成物アルコールの連続除去を使用することによって、以下のスキーム4に示されるように、平衡を、所望のグリセロールカーボネートの形成の方向に移動させることができることが見いだされた。
【0024】
【化4】
【0025】
したがって、中間の副生成物アルコールの分離ステップ(ii)、続いて、後続の反応ステップ(iii)における副生成物アルコールの連続除去の組み合わせにより、転化率及びグリセロールカーボネートに対する選択性の両方が最大化され得る。
【0026】
本発明の方法によれば、ステップ(i)において、第1の反応帯域において、均一系エステル交換触媒の存在下で、グリセロールの反応物流並びにジアルキルカーボネートの反応物流及び/又は環状アルキレンカーボネートの反応物流を、接触及び部分的に反応させる。
【0027】
本明細書で使用される「部分的に反応させる」という用語は、残存反応物、特に、残存グリセロールが残るような、グリセロール及びジアルキルカーボネート/環状アルキレンカーボネートの反応物流の不完全な反応を指すことを意図する。このように、これらの流れの部分的又は不完全な反応は、グリセロール反応物の不完全な転化率、例えば、90%未満の転化率であるいう状況に相当する。
【0028】
本明細書で使用される「反応物流」という用語は、ステップ(i)の一部として、反応のために供給される、1つの反応物(すなわち、グリセロール又はジアルキルカーボネート/環状アルキレンカーボネートのいずれか)を含有する流れを指すことを意図する。
【0029】
本明細書で使用される「均一系エステル交換触媒」という用語は、反応物流と同じ相中にある触媒を指すことを意図する。そのようなものとして、均一系エステル交換触媒は、本方法の操作条件下で液体であるか、又は本方法の操作条件下で反応物流及び/若しくは反応混合物に少なくとも部分的に可溶性であるかのいずれかである。本明細書で使用される「触媒」という用語は、反応によってそれ自身が消費されることなく、化学反応の速度を増加させる物質を指す。
【0030】
本明細書で使用される「グリセロールカーボネートの生成物流」という用語は、本方法のステップ(iii)が実施された後に反応帯域から得られる、グリセロールカーボネート生成物を含む流れを指すことを意図する。
【0031】
本明細書で使用される「第1の反応帯域」及び「第2の反応帯域」という用語は、本明細書に記載のステップ(i)及びステップ(iii)による反応が別々に実施される、系/装置内の、区別できる別々の反応領域を指すことを意図する。理解されるように、第1の反応帯域及び第2の反応帯域は、別々の反応器内に位置していてもよく、それぞれの反応帯域/反応器は、好ましくは、適用可能なステップ(i)又はステップ(iii)によるいずれかの反応のために、特に構成される。或いは、第1の反応帯域及び第2の反応帯域は、代わりに、同じ反応器内の異なる位置に位置していてもよい。
【0032】
ジアルキルカーボネートの反応物流は、80質量%超のジアルキルカーボネートを含む。好ましい実施形態において、ジアルキルカーボネートの反応物流は、90質量%超のジアルキルカーボネート、より好ましくは、95質量%超のジアルキルカーボネートを含む。他の好ましい実施形態において、ジアルキルカーボネートの反応物流は、5質量%未満のアルコール、好ましくは、2質量%未満のアルコール、より好ましくは、1質量%未満のアルコールを含む。ジアルキルカーボネートの反応物流中のアルコール、例えば、メタノールの存在は、ステップ(i)において観察されるグリセロールの転化率のレベルに負の影響を与える可能性があるので、好ましくは、回避される。他の好ましい実施形態において、ジアルキルカーボネートの反応物流は、2質量%未満の水、好ましくは、1質量%未満の水を含む。
【0033】
理解されるように、本明細書において言及されるジアルキルカーボネート反応物と関連して使用される「ジアルキル」という用語は、カーボネート部分の別々の酸素原子に共有結合した2個のアルキル基に相当する。2個のアルキル基は、好ましくは、同じアルキル基であるが、これらは異なっていてもよく、置換されていてもよく、又は好ましくは、無置換であってもよい。本発明の方法において、ジアルキルカーボネートの混合物が使用されてもよく、又は単一のジアルキルカーボネートが使用されてもよい。
【0034】
いくつかの実施形態において、ジアルキルカーボネートの2個のアルキル基は、C−Cの、分岐状、又は好ましくは、直鎖状のアルキル基から選択され、これは、置換又は無置換であってもよい。好ましい実施形態において、ジアルキルカーボネートの2個のアルキル基は、C−Cの、分岐状、又は好ましくは、直鎖状のアルキル基から選択される。本発明による使用のためのジアルキルカーボネートの例としては、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジプロピルカーボネート、ジブチルカーボネート及びジヘキシルカーボネートが挙げられる。好ましくは、ジアルキルカーボネートは、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート又はこれらの混合物である。最も好ましくは、ジアルキルカーボネートは、ジメチルカーボネートである。
【0035】
理解されるように、本発明の方法において使用されるジアルキルカーボネート基の性質は、結果として生成するアルコール副生成物の性質を決める。例えば、好ましい実施形態において、ジメチルカーボネートをジアルキルカーボネート反応物として使用すると、メタノールが、生成する副生成物アルコールであろう。本発明は、反応混合物からの中間の副生成物アルコール分離に依存するので、特に、グリセロール反応物と比較して、副生成物アルコールにおける揮発性が望ましい。これは、反応混合物を、減圧でフラッシュカラムに供給することによる、反応混合物からの副生成物アルコールの単純な分離を可能にする。
【0036】
ジアルキルカーボネートの反応物流と同時に、又はこれに代えて使用され得る環状アルキレンカーボネートの反応物流は、80質量%超の環状アルキレンカーボネートを含む。好ましい実施形態において、環状アルキレンカーボネートの反応物流は、90質量%超の環状アルキレンカーボネート、より好ましくは、95質量%超の環状アルキレンカーボネートを含む。他の好ましい実施形態において、環状アルキレンカーボネートの反応物流は、5質量%未満のアルコール、好ましくは、2質量%未満のアルコール、より好ましくは、1質量%未満のアルコールを含む。環状アルキレンカーボネートの反応物流中のアルコール、例えば、メタノールの存在は、ステップ(i)において観察されるグリセロールの転化率のレベルに負の影響を与える可能性があるので、好ましくは、回避される。他の好ましい実施形態において、環状アルキレンカーボネートの反応物流は、2質量%未満の水、好ましくは、1質量%未満の水を含む。
【0037】
好ましい実施形態において、環状アルキレンカーボネートは、以下の式Iのものである:
【0038】
【化5】
【0039】
(式中、Rは、二価基の−(CH−であり(式中、nは、2〜6の整数である)、これは、非置換であるか、又は、C−Cアルキル基又はC−Cアルキル基を含む、少なくとも1個のC−Cアルキル基によって置換されている)。
【0040】
好ましい実施形態において、nは、2〜4、より好ましくは、2又は3、最も好ましくは、2である。他の好ましい実施形態において、二価基の−(CH−は、非置換である。
【0041】
理解されるように、本発明の方法において使用される環状アルキレンカーボネートのRの性質は、結果として生成するアルコール副生成物の性質を決める。例えば、好ましい実施形態において、エチレンカーボネートを環状アルキレンカーボネート反応物として使用すると、エチレングリコールが、生成する副生成物アルコールであろう。本発明は、反応混合物からの中間の副生成物アルコール分離に依存するので、特に、グリセロール反応物と比較して、副生成物アルコールにおける揮発性が望ましい。これは、反応混合物を減圧でフラッシュカラムに供給することによる、反応混合物からの副生成物アルコールの単純な分離を可能にする。
【0042】
本発明の利点は、ジアルキルカーボネート及び環状アルキレンカーボネートの反応物流の両方を使用して実現され得るが、グリセロールとジアルキルカーボネートとの反応は、環状アルキレンカーボネートとの反応と比較して、エントロピー的により好都合である。この理由のために、好ましい実施形態において、本発明の方法は、ステップ(i)において、ジアルキルカーボネートの反応物流の反応を含む。
【0043】
グリセロールの反応物流は、適切には、80質量%超のグリセロールを含んでいてもよい。好ましい実施形態において、グリセロールの反応物流は、90質量%超のグリセロール、より好ましくは、95質量%超のグリセロールを含む。他の好ましい実施形態において、グリセロールの反応物流は、5質量%未満の水、より好ましくは、2質量%未満の水、最も好ましくは、1質量%未満の水を含む。反応中の水の存在は、望まれない副反応、及びグリセロールカーボネートに対する選択性の低下をもたらし得るので、望ましくない。水の存在はまた、触媒性能に対して負の影響を与え得る。したがって、水の存在に対して最も影響を受けやすいグリセロールの反応物流は、例えば、本発明の方法において使用する前に、蒸留塔及び/又はモレキュラーシーブなどの吸着材を使用する、乾燥ステップを受けていてもよい。粗グリセロール反応物はまた、本発明の方法における使用のための高純度の出発原料を提供するために、活性炭吸収材床を通過させることによる、色/色素の除去ステップを受けていてもよい。
【0044】
反応物流は、ステップ(i)における反応のための第1の反応帯域に供給される前に、混合されてもよく、又は、第1の反応帯域に、別々に供給されてもよい。好ましくは、反応物流は、ステップ(i)における反応のための第1の反応帯域に供給される前に、混合される。乱流及び/又はガラスビーズで混合領域を充填することが、ジアルキルカーボネート/環状アルキレンカーボネート相及びグリセロール相の混合を改善するために使用されてもよい。
【0045】
グリセロールカーボネートの形成に好都合な、ジアルキルカーボネート及び/又は環状アルキレンカーボネートとグリセロールのすべての適切なモル比を、ステップ(i)における反応のために使用することができる。しかしながら、グリセロールに対して、少なくとも化学量論レベルのジアルキルカーボネート及び/又は環状アルキレンカーボネートが、典型的に使用される。好ましくは、ステップ(i)における反応のためには、ジアルキルカーボネート及び/又は環状アルキレンカーボネートとグリセロールのモル比は、1:1〜3:1の範囲、好ましくは、1:1〜2:1の範囲、より好ましくは、1.1:1〜1.4:1の範囲、例えば、1.2:1である。
【0046】
いくつかの実施形態において、ジアルキルカーボネート及び/又は環状アルキレンカーボネートとグリセロールのモル比は、0.7:1.0〜1.0:1.0の範囲、例えば、0.75:1.0〜0.95:1.0の範囲、又は0.8:1.0〜0.9:1.0の範囲である。これらの実施形態において、アルコール副生成物の分離ステップ(以下で、より詳細に論じる)中に、反応混合物から失われ得るジアルキルカーボネート及び/又は環状アルキレンカーボネートの量を低減させるように、より少量のジアルキルカーボネート及び/又は環状アルキレンカーボネートが使用される。グリセロール転化率及びグリセロールカーボネートに対する選択性は、化学量論量に近いか、又はそれより少ない、ジアルキルカーボネート及び/又は環状アルキレンカーボネートを使用することによって、減少し得る。しかしながら、これは、本方法に組み入れられ得る、すべてのジアルキルカーボネート及び/又は環状アルキレンカーボネートの再利用ステップと関連してコストを抑えることと調整されるであろう(以下で、より詳細に論じる)。
【0047】
好ましい実施形態において、反応物流は、すべての溶媒及び/又は希釈剤の実質的な非存在下で、混合され、反応する。例えば、溶媒及び/又は希釈剤は、好ましくは、500ppm未満、より好ましくは、200ppm未満の量で、反応混合物中に存在する。
【0048】
エステル交換触媒は、ステップ(i)における反応を触媒するために、第1の反応帯域に直接供給されてもよく、或いは、反応物流の1つ若しくは両方に添加されてもよく、又は反応帯域に供給される前に、混合された反応物流に添加されてもよい。好ましくは、均一系エステル交換触媒は、ステップ(i)における反応のための第1の反応帯域に供給される前に、グリセロールの反応物流に添加される。好ましくは、均一系エステル交換触媒は、ステップ(i)において第1の反応帯域に供給されるグリセロールの質量に基づいて、0.25〜5質量%、好ましくは、0.5〜1.5質量%、例えば、1質量%の量で、反応混合物中に存在する。
【0049】
ステップ(i)における反応が行われる温度及び圧力は、反応物の分解が回避され、望まない副反応、例えば、重合を最小化する、すべての適切な温度及び圧力であってもよい。ステップ(i)のための適切な反応温度は、40〜160℃、好ましくは、60〜140℃、より好ましくは、80〜120℃である。ステップ(i)のための適切な反応圧力は、例えば、10kPa(絶対圧)〜1,500kPa(絶対圧)(0.1〜15bar(絶対圧))、好ましくは、100kPa(絶対圧)〜1,000kPa(絶対圧)(1〜10bar(絶対圧))、より好ましくは、200kPa(絶対圧)〜600kPa(絶対圧)(2〜6bar(絶対圧))である。このような反応圧力は、自生圧力であってもよい。
【0050】
反応物流は、ステップ(i)において、存在するグリセロールの大部分を生成物に転化する(すなわち、存在するグリセロールを、50モル%以上転化する)ために適切であるが、グリセロール反応物を完全には消費しない任意の時間にわたって、反応させ得る。例えば、ステップ(i)における反応は、10分間〜12時間、好ましくは、20分間〜3時間、より好ましくは、30分間〜1時間、例えば、45分間、実施してもよい。好ましい実施形態において、ステップ(i)は、50〜90モル%のグリセロール転化率、好ましくは、70〜90モル%のグリセロール転化率、最も好ましくは、80〜90モル%のグリセロール転化率を達成する。当業者が理解するように、例えば、反応物の機械的混合を使用することによる、反応物の混合の最適化は、反応速度を増加させることができる。
【0051】
本発明の方法のステップ(ii)において、ステップ(i)において形成される副生成物アルコールの少なくとも一部は、反応混合物から分離される。当業者に理解されるように、「分離する」という用語は、反応混合物からのアルコール副生成物の物理的除去を指すことを意図する。特に、本発明の文脈における分離は、アルコール含有副生成物流が、結果として得られるようなものである。当業者に理解されるように、本発明にしたがってアルコール含有副生成物流を得るにあたり、反応混合物と接触してアルコール副生成物の固定化を行い得る吸着材の使用は、アルコールを分離するとはみなされない。
【0052】
ステップ(ii)の部分としてのアルコールの分離は、アルコール含有副生成物流が、そこから直接得られ、さらに処理され得るならば、当業者に認識されているあらゆる手段によって達成され得る。好ましくは、ステップ(ii)におけるアルコールの分離は、アルコールを含む反応混合物の揮発性成分を分離するために、減圧下で操作されるフラッシュベッセル、又は蒸留塔による。より好ましくは、アルコール分離ステップ(ii)は、蒸留塔を使用して行われる。蒸留は、所望の分離にふさわしい、段数(例えば、理論段数)、例えば、約5〜約50の理論段数を有する慣用の蒸留塔であってもよい。
【0053】
いくつかの実施形態において、アルコール分離ステップ(ii)は、50質量%超のアルコール副生成物を除去する。好ましくは、ステップ(ii)において、75質量%超のアルコール副生成物が反応混合物から分離され、さらにより好ましくは、90質量%超、最も好ましくは、ステップ(ii)において、95質量%超のアルコール副生成物が反応混合物から分離される。
【0054】
アルコールの分離ステップが蒸留塔を使用して達成される場合、蒸留が行われ得る適切な圧力の範囲は、50mbar(絶対圧)〜1bar(絶対圧)である。好ましい実施形態において、蒸留が行われる圧力の範囲は、100mbar(絶対圧)〜700mbar(絶対圧)、好ましくは、200mbar(絶対圧)〜500mbar(絶対圧)、より好ましくは、300mbar(絶対圧)〜400mbar(絶対圧)である。当業者に理解されるように、蒸留塔における圧力が増加するにつれて、有効な蒸留のためには、より高い温度が、通常は必要とされる。例えば、本ケースにおいて、比較的高い1barの圧力を蒸留のために使用すると、80℃を上回る温度が必要であり得る。対照的に、100mbar(絶対圧)より低い圧力では、30℃程度の低い蒸留温度が適切であり得る。
【0055】
アルコールの分離ステップが、蒸留塔を使用して達成される場合、蒸留が行われ得る適切な温度の範囲は、35〜90℃である。均一系触媒の存在下で、並びに多量のアルコール及びジアルキルカーボネート/環状アルキレンカーボネートの非存在下では、蒸留の段階における場合のように、グリセロールカーボネートの望まない重合がより高頻度になり得る。高温でより高頻度になる多量の重合及び他の副反応を回避するために、蒸留温度は90℃を超えてはならない。好ましい実施形態において、蒸留がアルコール分離の一部として行われる温度範囲は、40℃〜80℃、より好ましくは、50℃〜70℃、例えば、60℃の温度である。
【0056】
加えて、使用される特定の蒸留温度で効果的な分離を達成するために、実施できる範囲で蒸留圧力を増加させると、ステップ(iii)におけるさらなる反応の前に、グリセロール転化率及びグリセロールカーボネートの収率に対して、有益な効果を有し得ることも見いだされた。理解されるように、蒸留塔における分離は、典型的には、昇温が必要である。したがって、反応物のさらなる反応が、分離プロセス中に起こると予測することができ、ステップ(iii)におけるさらなる反応の前に、グリセロールの転化にさらに寄与することができる。使用される蒸留温度に対する蒸留圧力を最大化することによって、追加のグリセロール転化が、ステップ(iii)の反応の前に、観察され得る。例示的な実施形態において、35℃〜45℃、例えば、40℃の蒸留温度が使用されると、蒸留塔は、有利には、100〜150mbar(絶対圧)、例えば、120mbar(絶対圧)の圧力で操作され得る。
【0057】
ジアルキルカーボネート又は環状アルキレンカーボネート反応物及びこれらから生成するそれぞれのアルコール副生成物の類似する沸点の結果として、これらの成分は、アルコール分離ステップ(ii)中に、副生成物アルコールとの共沸混合物の一部を形成し得る。例えば、メタノールは、これらの類似の沸点の結果として、ジメチルカーボネートとの共沸物を形成することが知られている。結果として、アルコール副生成物の分離ステップ(ii)は、典型的には、通常、グリセロール反応物と比較して、過剰に存在する、反応混合物から未反応のジアルキルカーボネート又は環状アルキレンカーボネートの量の除去を伴って行われる。しかしながら、共沸物の組成は、圧力に敏感であることも見いだされた。アルコール分離ステップ(ii)を蒸留塔を使用して達成すると、圧力の調整により、得られる共沸物のジアルキルカーボネート/環状アルキレンカーボネートの含量を低減することができることが見いだされた。例えば、蒸留塔における圧力の増加により、メタノール/ジメチルカーボネート共沸混合物中のジメチルカーボネートの割合が減少することが見いだされ、より多くのジメチルカーボネート反応物が、ステップ(ii)におけるメタノール分離後の後続の反応のための反応混合物中に維持されることを意味する。
【0058】
アルコール分離ステップ(ii)中のジアルキルカーボネート/環状アルキレンカーボネートの損失を軽減することにより、特に、ステップ(iii)における第2段階の反応のために、ジアルキルカーボネート/環状アルキレンカーボネートのレベルを補充するための追加のジアルキルカーボネート/環状アルキレンカーボネートの反応物供給流への依存が少なくなる。いくつかの実施形態において、ステップ(i)における第1段階の反応のための高い割合のジアルキルカーボネート/環状アルキレンカーボネートの使用と組み合わせて、アルコール分離ステップ(ii)のための条件の注意深い選択は、適正なグリセロール転化率及び/又はグリセロールカーボネートの全収率を達成するために、アルコール分離ステップ(ii)後にジアルキルカーボネート/環状アルキレンカーボネートのレベルを補充する必要がなくてもよいことを意味する。
【0059】
本発明の好ましい実施形態において、追加のジアルキルカーボネート/環状アルキレンカーボネートの反応物供給流は、特に、本方法のステップ(iii)における反応のために、反応混合物中のジアルキルカーボネート/環状アルキレンカーボネートのレベルの補充のために使用される。例えば、追加のジアルキルカーボネート/環状アルキレンカーボネート反応物は、アルコール分離ステップ(ii)の結果として失われるジアルキルカーボネート/環状アルキレンカーボネートを置き換えるために添加されてもよい。或いは、又は加えて、追加のジアルキルカーボネート/環状アルキレンカーボネート反応物は、ステップ(i)における反応のために使用されるジアルキルカーボネート/環状アルキレンカーボネートとグリセロールの比と比較して、ステップ(iii)における反応のためのジアルキルカーボネート/環状アルキレンカーボネートと未反応のグリセロールの比を増加させるために、添加されてもよい。ジアルキルカーボネート/環状アルキレンカーボネートのレベルは、好ましくは、本発明の方法の間中にわたって、グリセロールに対して、少なくとも化学量論レベルで維持される。
【0060】
いくつかの実施形態において、特に、本方法のステップ(iii)における反応のために、反応混合物中のジアルキルカーボネート/環状アルキレンカーボネートのレベルを補充するために使用される追加のジアルキルカーボネート/環状アルキレンカーボネートの反応物供給流は、アルコール−ジアルキルカーボネート/環状アルキレンカーボネート分離ステップから得られるジアルキルカーボネート/環状アルキレンカーボネートの再利用流に相当してもよい。例えば、分離ステップは、アルコール分離ステップ(ii)から得られるアルコール及びジアルキルカーボネート/環状アルキレンカーボネートの共沸混合物に対して実施されてもよい。或いは、又は加えて、分離ステップは、ステップ(iv)において得られるグリセロールカーボネート流から分離されるアルコール及びジアルキルカーボネート/環状アルキレンカーボネートを含む混合物に対して実施されてもよい。
【0061】
さらなるジアルキルカーボネート/環状アルキレンカーボネート反応物の追加は、アルコール分離ステップ(ii)後に得られる残存する反応混合物と混合される別々の流れを経由していてもよい。或いは、追加のジアルキルカーボネート/環状アルキレンカーボネートは、ステップ(iii)における反応のために使用される第2の反応帯域に直接供給される流れを経由して供給されてもよく、この時点で、追加のジアルキルカーボネート/環状アルキレンカーボネートは、アルコール分離ステップ(ii)から残存する反応混合物と接触する状態になる。
【0062】
ステップ(i)における反応に関しては、グリセロールカーボネートの形成のために好都合な、使用され得るジアルキルカーボネート/環状アルキレンカーボネートとグリセロールのすべての適切なモル比を、ステップ(iii)における反応のために使用することができる。しかしながら、グリセロールに対して、少なくとも化学量論レベルのジアルキルカーボネート/環状アルキレンカーボネートが、典型的に使用される。
【0063】
理解されるように、2つの別々の反応帯域が、ステップ(i)及びステップ(iii)における反応のために使用されるので、ジアルキルカーボネート/環状アルキレンカーボネートとグリセロールの異なる比が、これらの反応ステップのそれぞれについて使用されてもよい。好ましい実施形態において、第1の反応帯域及び第2の反応帯域において使用されるジアルキルカーボネート及び/又は環状アルキレンカーボネートとグリセロールの比は異なる。好ましくは、ステップ(iii)における反応のためには、ジアルキルカーボネート及び/又は環状アルキレンカーボネートとグリセロールのモル比は、1.5:1〜4:1の範囲、好ましくは、1.75:1〜3.5:1の範囲、より好ましくは、2.0:1〜3.0:1の範囲、例えば、2.5:1である。
【0064】
ステップ(i)における反応のために使用されるジアルキルカーボネート及び/又は環状アルキレンカーボネートとグリセロールの比と比較して、ジアルキルカーボネート及び/又は環状アルキレンカーボネートと未反応のグリセロールのより高い比がステップ(iii)の反応のために使用されると、有益であることが見いだされた。特に、典型的には、少なくとも化学量論的量のジアルキルカーボネートを有するが、ステップ(i)におけるジアルキルカーボネート及び/又は環状アルキレンカーボネートとグリセロールとの比較的低い比の使用と、ステップ(iii)におけるジアルキルカーボネート及び/又は環状アルキレンカーボネートとグリセロールとの比較的高い比の使用は、観察されるグリセロールの全転化率及びグリセロールカーボネート生成物の収率をさらにより増強することが見いだされた。本発明の特に好ましい実施形態において、ステップ(i)において使用されるジアルキルカーボネート及び/又は環状アルキレンカーボネートとグリセロールのモル比は、1.1:1〜1.4:1であり、ステップ(iii)において使用されるジアルキルカーボネート及び/又は環状アルキレンカーボネートとグリセロールのモル比は、2.0:1〜3.0:1である。
【0065】
本発明の方法のステップ(iii)において、アルコール分離ステップ(ii)後に残存する反応物の少なくとも一部は、反応帯域中の均一系エステル交換触媒の存在下で反応する。好ましくは、分離ステップ(ii)後に存在する、残存する反応物の実質的にすべてが、反応帯域において、均一系エステル交換触媒の存在下で反応する。エステル交換触媒は、典型的には、使用されるプロセス条件で安定であり、アルコール除去ステップの結果として失われる触媒が最小限であるような揮発性を有する。したがって、ステップ(iii)において反応を行う前に、反応混合物中の均一系エステル交換触媒の含量をつぎ足す必要はないと予想されるが、このことを除外しているわけではない。
【0066】
理解されるように、ステップ(i)のために使用される第1の反応帯域は、本方法のステップ(iii)のために使用される第2の反応帯域のものと、同じ又は異なる温度及び圧力条件下で操作されてもよい。ステップ(i)と同様に、ステップ(iii)における反応が行われる温度及び圧力は、反応物の分解が回避され、望まない副反応、例えば、重合を最小化する、あらゆる適切な温度及び圧力であり得る。
【0067】
いくつかの実施形態において、第1の反応帯域及び第2の反応帯域における温度並びに圧力の条件は、異なる。例えば、アルコール分離ステップ(ii)の結果として、第1の反応帯域及び第2の反応帯域との間に圧力低下が存在し、これは第2の反応帯域が第1の反応帯域よりも低い圧力で操作されることを意味し得る。ステップ(iii)のための適切は反応温度は、20〜160℃、好ましくは、40〜140℃、より好ましくは、80〜120℃である。ステップ(iii)のための適切な反応圧力は、5kPa(絶対圧)〜150kPa(絶対圧)(0.05〜1.5bar(絶対圧))、より好ましくは、10kPa(絶対圧)〜100kPa(絶対圧)(0.1〜1bar(絶対圧))、最も好ましくは、15kPa(絶対圧)〜50kPa(絶対圧)(0.15〜0.5bar(絶対圧))である。
【0068】
第1の反応帯域及び第2の反応帯域は、限定されないが、プラグフロー、連続撹拌タンク若しくはループ型反応器、又はこれらの組み合わせを含む、あらゆる液相反応器内に位置し得る。反応蒸留などの反応分離も、本発明にしたがって使用することができ、生成物/副生成物の生産及び除去が同時に起こる連続プロセスにおいて、特に有用である。反応蒸留塔の使用は、これらが、反応及び分離の役割を単一のユニットに組み合わせ得る多機能の反応器である限り、有利であり、これにより、資本コストが削減される。当業者であれば、所定の反応のための塔内で、液体が下向きに流れ、蒸気が上向きに流れるような、精留及びストリッピングの十分な利益を得るために、蒸留塔の配置を改変することができる方法を認識している。典型的には、反応物は、供給エンタルピー及び組成が、所定の分離要件のためのエネルギーを最小化する位置で、塔に供給される。
【0069】
いくつかの実施形態において、第1の反応帯域及び第2の反応帯域は、それぞれ、第1の反応器及び第2の反応器内に位置する。第1の反応器及び第2の反応器は、両方とも、例えば、本方法の連続的な操作を可能にする、プラグフロー反応器であってもよい。プラグフロー反応器はまた、生成物の望まないさらなる反応(例えば、グリセロールジカーボネートを形成するグリセロールカーボネートのさらなる反応)をもたらし得る、反応器の逆充填を無くすために有利である。
【0070】
好ましい実施形態において、第2の反応器は、副生成物アルコールの連続除去のために構成される。当業者が精通し、分離を達成することが可能なあらゆる形式の反応器が使用され得る。例えば、反応蒸留塔は、この目的のために適切に使用され得る。アルコールの連続除去のために構成され、所望の分離にふさわしい段数(例えば、理論段数)、例えば、約5〜約50の理論段数を有しているならば、あらゆる適切な反応蒸留塔を使用してもよい。蒸留塔のインターナル成分は、例えば、篩板、非構造化パッキング及び構造化パッキング、バブルキャップ及びこれらの混合物を含んでいてもよい。例えば、副生成物アルコールの除去のために構成された反応蒸留塔の場合において、アルコールの蒸気は、反応帯域に戻ることなく、精留部から回収され得る。その一方で、蒸発したジアルキルカーボネート及び/又は環状アルキレンカーボネート反応物は、再凝縮され、反応帯域、例えば、そのトレイに、液体として戻ってもよく、生成物のグリセロールカーボネートは、ストリッピング帯域の底部から連続的に抜き取ることができる。
【0071】
本明細書の上記で論じたように、本方法のステップ(iii)における反応中の副生成物アルコールの連続除去が、グリセロールカーボネートへの反応の選択性のために特に有益であることが見いだされた。特に、ステップ(iii)中のアルコールの連続除去は、動的な反応平衡をグリセロールカーボネートの形成の方向に移動させると考えられる。その上、驚くべきことに、アルコールの連続除去が、副生成物のグリセロールジカーボネートのレベルを積極的に減少させることも見いだされた。例えば、ステップ(iii)においてさらに反応する反応物/生成物の混合物が、最初に(グリセロールカーボネート生成物とカーボネート反応物とのさらなる反応から可逆的に形成される)グリセロールジカーボネートを含む場合でも、ステップ(iii)におけるさらなる反応が、副生成物アルコールの連続除去と一緒に、グリセロールジカーボネートを所望のグリセロールカーボネート生成物に転化し得ることが可能である。したがって、好ましい実施形態において、本方法は、本方法のステップ(iii)中に形成されるアルコール副生成物の連続除去をさらに含む。
【0072】
いくつかの実施形態において、第1の反応帯域及び第2の反応帯域は、単一反応器内に位置する。再び、単一反応器は、副生成物アルコールの連続除去が、本方法のステップ(iii)における反応中に可能であるように、構成される。
【0073】
本方法のステップ(iv)によれば、グリセロールカーボネートの生成物流は、ステップ(iii)におけるさらなる反応後に得られる。グリセロールカーボネートの生成物流は、ステップ(iii)における反応後に、反応器から直接抜き取られる生成物流に相当していてもよい。グリセロールカーボネートの生成物流は、a)すべての未反応のグリセロール及び/又はジアルキルカーボネート/環状アルキレンカーボネート;b)すべてのアルコール副生成物;並びにc)均一系エステル交換触媒を除去するために、さらに処理されてもよい。
【0074】
好ましい実施形態において、本発明の方法は、ステップ(iv)において得られるグリセロールカーボネートの生成物流から、均一系エステル交換触媒を分離するステップをさらに含む。当業者に認識されるように、この分離の性質は、使用される均一系エステル交換触媒の性質に依存する。エステル交換触媒が、実際は、イオン性である場合(例えば、塩)、分離は、アニオン又はカチオン交換プロセスを使用して達成され得る。好ましい実施形態において、イオン性のエステル交換触媒は、グリセロールカーボネートの生成物流を、カチオン交換樹脂吸収材と接触させることによって除去される。エステル交換触媒が、非イオン性の塩基性化合物である場合(例えば、以下で論じるTMDH−ピペリジンなどのアミン化合物)、プロトン性のカチオン交換樹脂吸収材の使用が、触媒をグリセロールカーボネートの生成物流から分離するために適切であることも見いだされた。
【0075】
適切なカチオン交換樹脂の例としては、ポリアクリル酸系の多孔性の弱酸カチオン交換樹脂であるPurolite C107E;架橋ポリスチレンビーズにつながれたスルホン酸基がベースの強酸カチオン交換樹脂であるAmberlite IR120(H型);及び大きな網状(大きな細孔サイズ)のスルホン酸カチオン交換樹脂であるAmberlyst 15(H型)が挙げられる。好ましい実施形態において、グリセロールカーボネートの生成物流は、カチオン交換樹脂吸収材が充填されたカラムを通される。
【0076】
カチオン交換樹脂吸収材が、グリセロールカーボネートの生成物流から、均一系エステル交換触媒を分離するために使用される場合、樹脂は、水による洗浄、乾燥及び酸(例えば、HCl)との接触によって再生され得る。
【0077】
いくつかの実施形態において、本方法は、未反応のジアルキルカーボネート/環状アルキレンカーボネート及び/又はアルコール副生成物を、グリセロールカーボネートの生成物流から回収するステップをさらに含む。ジアルキルカーボネート/環状アルキレンカーボネート及び/又はアルコール副生成物の分離は、アルコールを含むグリセロールカーボネートの生成物流の揮発性成分を分離するために、減圧下で操作されるフラッシュベッセル、又は蒸留塔によって達成されてもよい。しかしながら、反応蒸留塔が、本方法のステップ(iii)において使用される場合、すべてのアルコール並びにジアルキルカーボネート及び/又は環状アルキレンカーボネートの反応物は、反応から得られるグリセロールカーボネートの生成物流から分離されると予期される。
【0078】
ジアルキルカーボネート及びこれらに由来するアルコール副生成物、又は環状アルキレンカーボネート及びこれらに由来するアルコール副生成物の共沸混合物が、本発明の方法から得られる場合、特に、混合物が、メタノール及び/又はエタノールを含む場合、この混合物は、バイオディーゼル燃料生産プラントの下流で、供給するために使用されてもよく、したがって、本方法のためのさらなる収益源を意味し得る。或いは、共沸混合物は、例えば、ジアルキルカーボネート/環状アルキレンカーボネートの再利用流、及び商業的に有用なアルコール副生成物流を得るために分離されてもよい。
【0079】
したがって、未反応のジアルキルカーボネート反応物/環状アルキレンカーボネート及び副生成物アルコールの共沸混合物を含む流が、本方法の部分として得られる場合、いくつかの実施形態において、本方法は、共沸混合物中の未反応のジアルキルカーボネート/環状アルキレンカーボネート及び副生成物アルコールを分離するステップをさらに含む。好ましくは、分離ステップは、本明細書の上記で記載された本発明の方法におけるあらゆる適切な段階で、反応のためのジアルキルカーボネート源として使用され得る、ジアルキルカーボネートの再利用流を生成するために使用される。アルコール及びジアルキルカーボネート/環状アルキレンカーボネートの分離は、当業者が精通し、ジアルキルカーボネート/環状アルキレンカーボネートの再利用流を得るために適切なあらゆるプロセスによって達成され得る。適切な分離プロセスの例としては、圧力スイング蒸留、及び例えば、メタノール/ジメチルカーボネートの分離のために、メチルイソブチルケトン(MIBK)添加溶媒を使用する、抽出蒸留が挙げられる。
【0080】
本発明において使用される均一系エステル交換触媒は、本方法の操作条件下で液相中にある(すなわち、反応混合物若しくは反応物流中に溶解、又はそれ自身が液体状態である)のであれば、特に限定されない。本発明による均一系エステル交換触媒は、反応によってそれ自身が消費されることなく(すなわち、後で再生されることなく、反応物として作用しない)、グリセロール及びジアルキルカーボネート/環状アルキレンカーボネートの反応物からグリセロールカーボネートの形成を触媒する。有利には、均一系エステル交換触媒の使用は、不均一系エステル交換触媒の場合にしばしば必要である、本発明の方法を開始するための特別な開始条件又は誘導期間が必要ではないことを意味する。
【0081】
いくつかの実施形態において、均一系エステル交換触媒は、本方法の操作条件下で、液体状態である。他の実施形態において、エステル交換触媒は、本方法の操作条件下で、反応物流及び/又は反応混合物に可溶性である。エステル交換触媒は、溶液の形態で反応に添加されてもよく、エステル交換触媒は、適切には、好ましくは、非水性の溶媒に溶解され、好ましくは、溶媒は、水を除去するために予め乾燥される。適切な溶媒は、例えば、反応に使用されるジアルキルカーボネート/環状アルキレンカーボネートの反応物の副生成物であるアルコールであってもよい。例えば、ジメチルカーボネート反応物を使用する場合、エステル交換触媒は、濃メタノール溶液中に存在していてもよい。しかしながら、均一系エステル交換触媒は、溶媒の使用が必要なく、提供されるので好ましい。
【0082】
適切な均一系エステル交換触媒としては、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属重炭酸塩、アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属酸化物、アルカリ金属アルコキシド、アルカリ金属アルミン酸塩、アルカリ金属ケイ酸塩、アルカリ土類金属炭酸塩、アルカリ土類金属重炭酸塩、アルカリ土類金属水酸化物、アルカリ土類金属酸化物、アルカリ土類金属アルコキシド、アルカリ土類金属アルミン酸塩、アルカリ土類金属ケイ酸塩及びこれらの組み合わせから選択される塩基性触媒が挙げられる。好ましい実施形態において、均一系エステル交換触媒は、アルカリ金属アルコキシドである。本明細書における「アルコキシド」への言及は、C−Cの直鎖状又は分岐状のアルコキシド、例えば、C−Cのアルコキシドを含む。適切な均一系エステル交換触媒の具体例としては、NaOMe、NaCO、NaHCO、KCO、KHCO及びNaSiO、好ましくは、NaOMeが挙げられる。
【0083】
以下の反応スキーム5は、塩基が触媒するジメチルカーボネートのエステル交換についての可能な機構を示す。
【0084】
【化6】
【0085】
本発明における使用のために特に好ましいエステル交換触媒は、グリセロールに可溶性のNaOMeである。NaOMeは、本発明の方法において、特に有利であることが見いだされた。具体的には、本発明の方法におけるNaOMeの使用は、短いタイムフレーム内で、比較的低い反応温度で、グリセロールカーボネートへの高レベルの転化率をもたらすことが見いだされた。例えば、本明細書に記載の本方法のステップ(i)におけるグリセロールカーボネートへの90%の転化率は、20分程度の短い反応時間で、ジメチルカーボネート:グリセロールのモル比が2:1で、わずか80℃の反応温度で、観察される。
【0086】
別の態様において、本発明は、
(i)反応器において、均一系エステル交換触媒の存在下で、グリセロールの反応物流を、a)ジアルキルカーボネートの反応物流、及び/又はb)環状アルキレンカーボネートの反応物流と反応させるステップ;並びに
(ii)グリセロールカーボネートの生成物流を得るステップ
を含む、グリセロールカーボネートを製造するための方法であって、均一系エステル交換触媒が、ナトリウムメトキシドである、方法を提供する。好ましくは、反応は、110℃未満、より好ましくは、50℃〜100℃、さらにより好ましくは、70℃〜90℃、最も好ましくは、75℃〜85℃、例えば、80℃の温度で実施される。理解されるように、本明細書の上記に記載の反応物流及び生成物流の性質並びに処理に関するあらゆる好ましい実施形態が、本発明のこの態様に等しく適用される。
【0087】
他の適切なエステル交換触媒としては、イオン液体が挙げられる。本明細書で使用される「イオン液体」という用語は、塩を溶融することによって生成することが可能であって、そのようにして生成されると、イオンのみからなる液体を指す。イオン液体は、1種のカチオン及び1種のアニオンを含む均一な物質から形成されてもよく、又はイオン液体は、2種以上のカチオン及び/又は2種以上のアニオンで構成されてもよい。したがって、イオン液体は、2種以上のカチオン及び1種のアニオンで構成されてもよい。イオン液体は、さらに、1種のカチオン及び1種又は2種以上のアニオンで構成されてもよい。またさらに、イオン液体は、2種以上のカチオン及び2種以上のアニオンで構成されてもよい。
【0088】
「イオン液体」という用語は、高融点を有する化合物及び低融点、例えば、室温以下の融点を有する化合物を含む。したがって、多くのイオン液体は、200℃未満、特に、100℃未満、室温の周辺(15〜30℃)、又はさらには0℃未満の融点を有する。約30℃未満の融点を有するイオン液体は、一般に、「室温イオン液体」と呼ばれ、窒素含有複素環カチオンを有する有機塩にしばしば由来する。室温イオン液体において、カチオン及びアニオンの構造は、規則正しい結晶構造の形成を妨げ、したがって、塩は、室温で液体である。
【0089】
イオン液体は、溶媒として最も広く知られている。多くのイオン液体は、無視できるほどの蒸気圧、温度安定性、低い可燃性及び再利用可能性を有することが示されている。利用可能である膨大な数のアニオン/カチオンの組み合わせに起因して、イオン液体の物理的特性(例えば、融点、密度、粘度、及び水又は有機溶媒との混和性)を、特定の適用への要件に適合するように、微調整することが可能である。
【0090】
本発明における使用のためのイオン液体の均一系エステル交換触媒は、式:
[Cat][X
(式中、[Cat]は、1又は2以上のカチオン種を表し;及び
[X]は、1又は2以上の塩基性アニオン種を表す)
を有する。
【0091】
本発明によれば、[Cat]は、アンモニウム、ベンゾイミダゾリウム、ベンゾフラニウム、ベンゾチオフェニウム、ベンゾトリアゾリウム、ジアザビシクロデセニウム、ジアザビシクロノネニウム、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタニウム、ジアザビシクロウンデセニウム、ジチアゾリウム、フラニウム、イミダゾリウム、インダゾリウム、インドリニウム、インドリウム、モルホリニウム、オキサボロリウム、オキサホスホリウム、オキサジニウム、オキサゾリウム、イソオキサゾリウム、オキソチアゾリウム、ホスホリウム、ホスホニウム、フタラジニウム、ピペラジニウム、ピペリジニウム、ピラニウム、ピラジニウム、ピラゾリウム、ピリダジニウム、ピリジニウム、ピリミジニウム、ピロリジニウム、ピロリウム、キナゾリニウム、キノリニウム、イソキノリニウム、キノキサリニウム、キヌクリジニウム、セレナゾリウム、スルホニウム、テトラゾリウム、チアジアゾリウム、イソチアジアゾリウム、チアジニウム、チアゾリウム、イソチアゾリウム、チオフェニウム、トリアジニウム、トリアゾリウム及びイソトリアゾリウムから選択されるカチオン種を含んでいてもよい。
【0092】
本発明の好ましい1つの実施形態において、[Cat]は、
[N(R)(R)(R)(R)]、[P(R)(R)(R)(R)]及び[S(R)(R)(R)]
(式中、R、R、R及びRは、C−C30の直鎖状又は分岐状のアルキル基、C−Cシクロアルキル基又はC−C10アリール基から、それぞれ独立して選択され、前記アルキル基、シクロアルキル基又はアリール基は、無置換であるか、又はC−Cアルコキシ、C−Cシクロアルキル、C−C10アリール、C−C10アルカリール、C−C10アラルキル、−CN、−NO、−C(S)R、−CS、−SC(S)R、−S(O)(C−C)アルキル、−S(O)O(C−C)アルキル、−OS(O)(C−C)アルキル、−S(C−C)アルキル、−S−S(C−Cアルキル)、−NR又は複素環基(式中、R、R及びRは、水素又はC−Cアルキルから、独立して選択される)から選択される1〜3個の基によって置換されていてもよい)
から選択される非環状カチオンを含む。
【0093】
より好ましくは、[Cat]は、
[N(R)(R)(R)(R)]、[P(R)(R)(R)(R)]及び[S(R)(R)(R)]
(式中、R、R、R及びRは、C−C15の直鎖状又は分岐状のアルキル基、C−Cシクロアルキル基又はCアリール基から、それぞれ独立して選択され、前記アルキル基、シクロアルキル基又はアリール基は、無置換であるか、又はC−Cアルコキシ、C−Cシクロアルキル、C−C10アリール、C−C10アルカリール、C−C10アラルキル、−CN、−NO、−C(S)R、−CS、−SC(S)R、−S(O)(C−C)アルキル、−S(O)O(C−C)アルキル、−OS(O)(C−C)アルキル、−S(C−C)アルキル、−S−S(C−Cアルキル)、−NR又は複素環基(式中、R、R及びRは、水素又はC−Cアルキルから、独立して選択される)から選択される1〜3個の基によって置換されていてもよい)
から選択されるカチオンを含む。
【0094】
さらなる例としては、式中、R、R、R及びRは、メチル、エチル、n−プロピル、n−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、n−ノニル、n−デシル、n−ウンデシル、n−ドデシル、n−トリデシル、n−テトラデシル、n−ペンタデシル、n−ヘキサデシル、n−ヘプタデシル及びn−オクタデシルから、独立して選択される。より好ましくは、2又は3以上、最も好ましくは、3又は4以上のR、R、R及びRは、メチル、エチル、プロピル及びブチルから選択される。
【0095】
さらにより好ましくは、[Cat]は、
[N(R)(R)(R)(R)]
(式中、R、R、R及びRは、上記に定義の通りである)
から選択されるカチオンを含む。
【0096】
好ましいさらなる実施形態において、[Cat]は、好ましくは、
[P(R)(R)(R)(R)]
(式中、R、R、R及びRは、上記に定義の通りである)
から選択されるカチオンを含む。
【0097】
本発明による使用のために適切な好ましいアンモニウムカチオン及びホスホニウムカチオンの具体例としては、以下のものが挙げられる。
【0098】
【化7】
【0099】
本発明による使用のために適切なより好ましいアンモニウムカチオンの具体例としては、以下のものが挙げられる。
【0100】
【化8】
【0101】
本発明による使用のために適切なアンモニウムカチオンの特に好ましい例としては、以下のものが挙げられる。
【0102】
【化9】
【0103】
さらなる好ましい実施形態において、[Cat]は、電子リッチな硫黄部分又はセレン部分を含むカチオンを含む。例としては、ペンダントのチオール、チオエーテル又はジスルフィド置換基を含む、上記に定義されるカチオンが挙げられる。
【0104】
本発明の別の実施形態において、[Cat]は、ベンゾイミダゾリウム、ベンゾフラニウム、ベンゾチオフェニウム、ベンゾトリアゾリウム、ジアザビシクロデセニウム、ジアザビシクロノネニウム、ジアザビシクロウンデセニウム、ジチアゾリウム、イミダゾリウム、インダゾリウム、インドリニウム、インドリウム、オキサジニウム、オキサゾリウム、イソオキサゾリウム、オキサチアゾリウム、フタラジニウム、ピラジニウム、ピラゾリウム、ピリダジニウム、ピリジニウム、ピリミジニウム、キナゾリニウム、キノリニウム、イソキノリニウム、キノキサリニウム、テトラゾリウム、チアジアゾリウム、イソチアジアゾリウム、チアジニウム、チアゾリウム、イソチアゾリウム、トリアジニウム、トリアゾリウム及びイソトリアゾリウムから選択される芳香族複素環カチオン種を含む。
【0105】
より好ましくは、[Cat]は、式:
【0106】
【化10】
【0107】
(式中、R、R、R、R、R、R及びRは、水素、C−C30の直鎖状又は分岐状のアルキル基、C−Cシクロアルキル基又はC−C10アリール基から、それぞれ独立して選択され、或いは隣接する炭素原子に結合するR、R、R、R及びRの任意の2個が、メチレン鎖−(CH−(式中、qは、3〜6である)を形成し、;前記アルキル基、シクロアルキル基若しくはアリール基又は前記メチレン鎖は、無置換であるか、又はC−Cシクロアルキル、C−C10アリール、C−C10アルカリール、C−C10アラルキル、−CN、−NO、−C(S)R、−CS、−SC(S)R、−S(O)(C−C)アルキル、−S(O)O(C−C)アルキル、−OS(O)(C−C)アルキル、−S(C−C)アルキル、−S−S(C−Cアルキル)、−SC(S)NR、−NR又は複素環基(式中、R、R及びRは、水素又はC−Cアルキルから、独立して選択される)から選択される1〜3個の基によって置換されていてもよい)を有する。
【0108】
は、好ましくは、C−C30の直鎖状又は分岐状のアルキル、より好ましくは、C−C20の直鎖状又は分岐状のアルキル、さらにより好ましくは、C−C10の直鎖状又は分岐状のアルキル、最も好ましくは、C−Cの直鎖状又は分岐状のアルキルから選択される。さらなる例としては、式中、Rは、メチル、エチル、n−プロピル、n−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、n−ノニル、n−デシル、n−ウンデシル、n−ドデシル、n−トリデシル、n−テトラデシル、n−ペンタデシル、n−ヘキサデシル、n−ヘプタデシル及びn−オクタデシルから選択される。
【0109】
基を含むカチオンにおいて、Rは、好ましくは、C−C10の直鎖状又は分岐状のアルキル、より好ましくは、C−Cの直鎖状又は分岐状のアルキルから選択され、最も好ましくは、Rは、メチル基である。
【0110】
基及びR基の両方を含むカチオンにおいて、R及びRは、それぞれ好ましくは、C−C30の直鎖状又は分岐状のアルキルから、独立して選択され、R及びRの1つはまた、水素であってもよい。より好ましくは、R及びRの1つは、C−C20の直鎖状又は分岐状のアルキル、さらにより好ましくは、C−C10の直鎖状又は分岐状のアルキル、最も好ましくは、C−Cの直鎖状又は分岐状のアルキルから、選択されてもよく、R及びRの他の1つは、C−C10の直鎖状又は分岐状のアルキル、より好ましくは、C−Cの直鎖状又は分岐状のアルキルから選択されてもよく、最も好ましくは、メチル基であり得る。さらに好ましい実施形態において、R及びRは、存在する場合には、C−C30の直鎖状又は分岐状のアルキル及びC−C15のアルコキシアルキルから、それぞれ独立して選択されてもよい。
【0111】
さらに好ましい実施形態において、R、R、R、R及びRは、水素、及びC−Cの直鎖状又は分岐状のアルキルから、独立して選択され、より好ましくは、R、R、R、R及びRは、水素である。
【0112】
本発明のこの実施形態において、[Cat]は、好ましくは、
【0113】
【化11】
【0114】
(式中、R、R、R、R、R、R及びRは、上記に定義の通りである)
から選択されるカチオンを含む。
【0115】
より好ましくは、[Cat]は、
【0116】
【化12】
【0117】
(式中、R及びRは、上記に定義の通りである)
から選択されるカチオンを含む。
【0118】
また、本発明のこの実施形態によれば、[Cat]は、好ましくは、
【0119】
【化13】
【0120】
(式中、R、R、R、R、R、R及びRは、上記に定義の通りである)
から選択されるカチオンを含んでいてもよい。
【0121】
本発明によって使用され得る、好ましい窒素含有芳香族複素環カチオンの具体例としては、以下のものが挙げられる。
【0122】
【化14】
【0123】
本発明の別の好ましい実施形態において、[Cat]は、環状アンモニウム、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタニウム、モルホリニウム、環状ホスホニウム、ピペラジニウム、ピペリジニウム、キヌクリジニウム及び環状スルホニウムから選択される、飽和複素環カチオンを含む。
【0124】
より好ましくは、[Cat]は、式:
【0125】
【化15】


【0126】
(式中、R、R、R、R、R、R及びRは、上記に定義の通りである)
を有する、飽和複素環カチオンを含む。
【0127】
さらにより好ましくは、[Cat]は、式:
【0128】
【化16】
【0129】
を有する、飽和複素環カチオンを含み、
最も好ましくは、
【0130】
【化17】
【0131】
(式中、R、R、R、R、R、R及びRは、上記に定義の通りである)
である。
【0132】
また、本発明のこの実施形態によれば、[Cat]は、好ましくは、
【0133】
【化18】
【0134】
(式中、R、R、R、R、R、R及びRは、上記に定義の通りである)
から選択される飽和複素環カチオンを含んでいてもよい。
【0135】
上記の飽和複素環カチオンにおいて、Rは、好ましくは、C−C30の直鎖状又は分岐状のアルキル、より好ましくは、C−C20の直鎖状又は分岐状のアルキル、さらにより好ましくは、C−C10の直鎖状又は分岐状のアルキル、最も好ましくは、C−Cの直鎖状又は分岐状のアルキルから選択される。さらなる例としては、式中、Rは、メチル、エチル、n−プロピル、n−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、n−ノニル、n−デシル、n−ウンデシル、n−ドデシル、n−トリデシル、n−テトラデシル、n−ペンタデシル、n−ヘキサデシル、n−ヘプタデシル及びn−オクタデシルから選択される。
【0136】
基を含む飽和複素環カチオンにおいて、Rは、好ましくは、C−C10の直鎖状又は分岐状のアルキル、より好ましくは、C−Cの直鎖状又は分岐状のアルキルから選択され、最も好ましくは、Rは、メチル基である。
【0137】
基及びR基の両方を含む飽和複素環カチオンにおいて、R及びRは、それぞれ好ましくは、C−C30の直鎖状又は分岐状のアルキルから独立して選択され、R及びRの1つはまた、水素であってもよい。より好ましくは、R及びRの1つは、C−C20の直鎖状又は分岐状のアルキル、さらにより好ましくは、C−C10の直鎖状又は分岐状のアルキル、最も好ましくは、C−Cの直鎖状又は分岐状のアルキルから選択されてもよく、R及びRの他の1つは、C−C10の直鎖状又は分岐状のアルキル、より好ましくは、C−Cの直鎖状又は分岐状のアルキルから選択されてもよく、最も好ましくは、メチル基であり得る。さらに好ましい実施形態において、R及びRは、存在する場合には、C−C30の直鎖状又は分岐状のアルキル及びC−C15のアルコキシアルキルから、それぞれ独立して選択されてもよい。
【0138】
さらに好ましい実施形態において、R、R、R、R及びRは、水素、及びC−Cの直鎖状又は分岐状のアルキルから、独立して選択され、より好ましくは、R、R、R、R及びRは、水素である。
【0139】
本発明によれば、[X]は、1又は2以上の塩基性アニオン種を表す。「塩基性」という用語は、(中和する)酸と反応して、塩を形成する能力を有するブレンステッド塩基を指す。[X]は、アルキルカーボネート、ハイドロゲンカーボネート、カーボネート、ヒドロキシド、アルコキシド、クロライド、ブロマイド、ナイトレート及びサルフェートから選択される1又は2以上の塩基性アニオンを含んでいてもよい。
【0140】
好ましい実施形態において、[X]は、アルキルカーボネート、アルコキシド、ハイドロゲンカーボネート及びカーボネートから選択される。より好ましくは、[X]は、アルキルカーボネートから選択される。最も好ましくは、[X]は、[MeCOである。
【0141】
本発明における使用のための特に好ましいイオン液体のエステル交換触媒は、[N2221][MeCO]に相当する。このエステル交換触媒は、本発明の方法において、特に良好なグリセロール転化率及びグリセロールカーボネートの収率/選択性を与えることが見いだされた。
【0142】
別の態様において、本発明は、
(i)反応器において、均一系エステル交換触媒の存在下で、グリセロールの反応物流を、a)ジアルキルカーボネートの反応物流、及び/又はb)環状アルキレンカーボネートの反応物流と反応させるステップ;並びに
(ii)グリセロールカーボネートの生成物流を得るステップ
を含む、グリセロールカーボネートを製造するための方法であって、均一系エステル交換触媒が、[N2221][MeCO]であるイオン液体である、方法を提供する。理解されるように、本明細書の上記に記載の反応物流及び生成物流の性質並びに処理に関するあらゆる好ましい実施形態が、本発明のこの態様に等しく適用される。
【0143】
他の適切な均一系エステル交換触媒としては、機能を果たす能力がある、非環状有機アミン(すなわち、1級、2級又は3級アミン)、及び環状アミン(脂肪族又は芳香族)が挙げられる。当業者であれば、反応混合物中のアミンの存在が、ジアルキルカーボネートによるアルキル化などの望ましくない副反応の可能性を増加させることを理解するであろう。それにもかかわらず、この性質の副反応は、立体障害のある脂肪族アミン及び/又は3級アミン/芳香族アミンを利用すると、最小化される。本明細書における「立体障害のある」脂肪族アミンへの言及は、i)窒素原子が、イソプロピル基、tert−ブチル基、又は環状の芳香族若しくは複素環基に、直接又は単一の炭素原子リンカーを介して結合している、非環状アミン;或いはii)環上の窒素原子が、2個のC−Cアルキル置換基を有する、少なくとも1個の炭素環原子と隣接し、好ましくは、窒素原子が、1個又は2個のC−Cアルキル置換基を有する、第2の炭素環原子とも隣接している、環状アミン、のいずれかを意味することを意図する。
【0144】
有機アミンの例としては、tert−ブチルアミン、イソプロピルアミン、トリエチルアミン、ジ−tert−ブチルアミン、ジイソプロピルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、ジシクロヘキシルアミン、ジベンジルアミン、ベンジルジメチルアミン、ジアセチルクロロベンジルアミン、ジメチルフェネチルアミン、1−ジメチルアミノ−2−フェニルプロパン、N,N,N’−トリ−tert−ブチルプロパンジアミンが挙げられる。
【0145】
環状アミンの例としては、ピリジン、ピロール、ピロリジン、ピペリジン、イミダゾール及びこれらのC−Cアルキル置換誘導体が挙げられる。好ましい立体障害のある環状アミンとしては、2〜6個のC−Cアルキル置換基、好ましくは、2〜4個のC−Cアルキル置換基を有し、少なくとも2個のアルキル置換基が、環の窒素原子に隣接する炭素原子上に位置する、置換ピペリジン誘導体が挙げられる。好ましいC−Cアルキル置換ピペリジンとしては、1,2,6−トリメチルピペリジン、2,2,6−トリメチルピペリジン、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、2,2,4,6−テトラメチルピペリジン、2,2,6,6−N−ペンタメチルピペリジンが挙げられる。
【0146】
本発明によるエステル交換触媒としての使用のために特に好ましい環状アミン化合物は、2,2,4,6−テトラメチルピぺリジン(TMDH−ピぺリジン、CAS番号6292−82−6)である。
【0147】
【化19】
【0148】
上記の立体障害のある置換ピペリジン、特に、TMDH−ピペリジンは、予想外にも、本発明の方法において、特に良好なグリセロール転化率及びグリセロールカーボネートの収率/選択性を与えること、並びに優れた安定性も奏することが見いだされた。これらの性質はまた、従来技術で公知の、慣用の均一系エステル交換触媒よりも改善されていると考えられる。
【0149】
別の態様において、本発明は、
(i)反応器において、均一系エステル交換触媒の存在下で、グリセロールの反応物流を、a)ジアルキルカーボネートの反応物流、及び/又はb)環状アルキレンカーボネートの反応物流と反応させるステップ;並びに
(ii)グリセロールカーボネートの生成物流を得るステップ
を含む、グリセロールカーボネートを製造するための方法であって、均一系エステル交換触媒が、2〜6個のC−Cアルキル置換基を有する置換ピペリジン誘導体であり、アルキル置換基の少なくとも2個が、環の窒素原子に隣接する炭素原子上に位置する、方法を提供する。好ましくは、均一系エステル交換触媒が、1,2,6−トリメチルピペリジン、2,2,6−トリメチルピペリジン、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、2,2,4,6−テトラメチルピペリジン及び2,2,6,6−N−ペンタメチルピペリジンから選択される。最も好ましくは、均一系エステル交換触媒は、2,2,4,6−テトラメチルピペリジン(TMDH−ピペリジン、CAS番号6292−82−6)である。
【0150】
理解されるように、本明細書の上記に記載の反応物流及び生成物流の性質並びに処理に関するあらゆる好ましい実施形態が、本発明のこの態様に等しく適用される。
【図面の簡単な説明】
【0151】
次に、本発明を、以下の実施例及び図面を参照して説明する。
図1】2つの別々の反応器を使用する本発明の方法の好ましい実施形態を示す概略図である。
図2】反応物及び生成物の組成、並びにジメチルカーボネート比の効果、並びに反応物/生成物の分布のプロットを示す図である。
図3】副生成物アルコールの除去ステップ(ii)及びステップ(iii)における後続の反応後に得られた最終生成物中のグリセロールカーボネート%のプロットを示す図である。
図4a-4f】それぞれの第2段階の反応の開始時の未反応のグリセロールに対して存在するジメチルカーボネートの当量数に対する、流れA〜流れFのそれぞれから取り出されたそれぞれの試料のグリセロールカーボネートの収率(%)のプロットを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0152】
図1を参照すると、ジメチルカーボネート(DMC,dimethyl carbonate)の反応物流(1)は、混合ベッセル(101)に供給される。グリセロール(GLY、glycerol)の反応物流(2)も、混合チャンバー(101)に供給される。好ましくは、図1に示されるように、グリセロール反応物(GLY)流(2)は、混合ベッセル(101)中でジメチルカーボネートと混合される前に、エステル交換触媒(CAT,transesterification catalyst)が添加される。混合された反応物流(3)は、第1の反応器(R1)の反応帯域に供給される前に、混合ベッセル(101)から抜き取られる。第1の反応器(R1)は、周囲温度を上回る温度で操作され、グリセロール(GLY)及びジメチルカーボネート(DMC)の反応物は、この中で、部分的に反応する。典型的には、本方法のこの段階は、グリセロールカーボネート(GLC,glycerol carbonate)生成物に対して100%に近い選択性であるが、グリセロールカーボネート(GLC)へのグリセロール(GLY)の90%以下の転化率を達成することができる。
【0153】
第1の反応器(R1)における不完全又は部分的な反応後、副生成物のメタノール除去ステップが行われる。反応混合物を含む流れ(4)は、第1の反応器(R1)から抜き取られ、分離のためのカラム(102)に供給される。カラム(102)は、例えば、蒸留塔又はフラッシュカラムであってもよい。上方のメタノール(MeOH)が豊富な流れ(5)が、カラム(102)から抜き取られる。分離されたメタノール(MeOH)が豊富な流れ(5)は、典型的には、メタノール(MeOH)及びジメチルカーボネート反応物(DMC)の共沸混合物を含む。共沸混合物は、ジメチルカーボネート(DMC)の再利用流を提供するために、後のステップで分離されてもよい。
【0154】
反応混合物の残存成分を含むカラム(102)の底部の生成物は、流れ(6)として抜き取られる。必要により、及び流れ(5)としてカラム(102)の頂部から抜き取られた共沸混合物のジメチルカーボネート(DMC)の含量に依存して、追加のジメチルカーボネート反応物(DMC)を、流れ(7)によって添加して、メタノール(MeOH)分離ステップにおいて失われたジメチルカーボネート(DMC)を補充してもよい。したがって、流れ(8)は、グリセロールカーボネート生成物(GLC)、未反応のグリセロール(GLY)、均一系エステル交換触媒及び補充された量のジメチルカーボネート(DMC)の混合物を含んでいてもよい。
【0155】
流れ(8)は、第2段階の反応が起こる第2の反応器(R2)の反応帯域に供給される。(R2)は、周囲温度を上回る温度で操作され、未反応のグリセロール(GLY)及びジメチルカーボネート(DMC)の反応物は、この中で、反応する。好ましくは、図1に示されるように、反応器(R2)は、副生成物のメタノール(MeOH)を連続除去する能力を有する反応蒸留塔であり、副生成物のメタノール(MeOH)は、流れ(9)として、塔から抜き取られる。流れ(9)中に除去されたメタノール(MeOH)、又はメタノール(MeOH)及びジメチルカーボネート(DMC)の共沸物は、メタノール除去ステップの一部としてカラム(102)から抜き取られた流れ(5)と混合されてもよく、好ましくは、ジメチルカーボネート(DMC)の再利用流を得るために同じ分離ステップに供給されてもよい。反応器(2)におけるさらなる反応は、有利には、未反応のグリセロールのさらなる転化をもたらす。反応器(R2)として反応蒸留塔を使用し、副生成物のメタノール(MeOH)の連続除去を確保することにより、グリセロールカーボネート(GLC)に対する選択性は、動的化学平衡を、グリセロールジカーボネート(GDC)などの副生成物よりも生成物の形成に好都合に調整することによって、改善される。
【0156】
グリセロールカーボネート(GLC)、均一系エステル交換触媒並びにすべての未反応の反応物及び/又は副生成物のメタノールを含むグリセロールカーボネート(GLC)生成物混合物は、流れ(10)として、反応器(2)から抜き取られる。図1に示されるように、この流れは、好ましくは、エステル交換触媒除去ユニット(103)に供給され、これは、好ましくは、カチオン交換樹脂で充填されたカラムの形態である。流れ(11)は、好ましくは、すべての未反応のジメチルカーボネート(DMC)及び副生成物のメタノールを生成物混合物から分離し得るカラム(104)に供給される前に、混合物から除去されたエステル交換触媒を有するカラムから、抜き取られる。カラム(102)と同様に、カラム(104)は、例えば、蒸留塔又はフラッシュカラムであってもよい。
【0157】
未反応のジメチルカーボネート(DMC)、並びに/又は未反応のジメチルカーボネート(DMC)及びすべての残存する副生成物のメタノール(MeOH)の共沸混合物は、流れ(12)として除去される。流れ(12)において得られうるメタノール(MeOH)及びジメチルカーボネート(DMC)のすべての共沸混合物は、メタノール除去ステップの一部として、カラム(102)から抜き取られた流れ(5)及び/又は第2の反応器(R2)から抜き取られた流れ(9)と混合されてもよく、好ましくは、ジメチルカーボネート(DMC)の再利用流を得るために同じ分離ステップに供給されてもよい。図1に示されるように、流れ(5)、(9)及び(12)は、分離ユニット(105)に供給され、これは、例えば、抽出蒸留塔、又は圧力スイング蒸留のために構成されたカラムであってもよい。
【0158】
第2の反応器(R2)が、反応蒸留塔である場合、反応蒸留中に、すべての未反応ジメチルカーボネート及びメタノール副生成物が、グリセロールカーボネート生成物から、代わりに分離されると予想されるので、カラム(104)によって、グリセロールカーボネートの生成物流から、未反応のジメチルカーボネート及び/又はメタノール副生成物を分離する追加ステップは、典型的には、必要ではない。したがって、この場合において、カラム(104)は、装置に存在せず、流れ(9)は、代わりに、すべての残存するジメチルカーボネート及び副生成物のメタノールを含むだろう。
【0159】
分離ユニット(105)における共沸物からのメタノール(MeOH)及びジメチルカーボネート(DMC)の分離後、ジメチルカーボネート(DMC)の再利用流(14)は、メタノール流(15)と同様に、分離ユニット(105)から抜き取られる。ジメチルカーボネート(DMC)の再利用流(14)は、ジメチルカーボネート(DMC)を、流れ(1)又は混合ベッセル(101)に供給するために使用されてもよい。加えて、又は或いは、ジメチルカーボネートの再利用流(14)は、第2の反応器(R2)における第2段階の反応のためにジメチルカーボネート(DMC)のレベルを補充するために使用される、ジメチルカーボネート(DMC)流れ(7)に供給してもよい。カラム(104)の底部の生成物は、精製されたグリセロールカーボネート(GLC)流に相当する、流れ(13)として抜き取られる。
【0160】
[実施例]
流れの分析
以下の実施例の様々な反応物流及び生成物流は、屈折率検出器を使用するHPLC分析によって分析された。HPLCのために使用される固定相は、有機酸カラム(Phenomenex Rezex ROA-Organic Acids H+)であり、移動相は、7.5%アセトニトリル、0.5mMのHSO水溶液であり、エチレングリコールを内部標準として使用した。
【実施例1】
【0161】
中間のアルコール分離前の第1の反応段階
ジメチルカーボネートとグリセロールとのいくつかの反応を、1質量%のNaOMe均一系エステル交換触媒、及び80℃での1時間の反応時間を使用して、検討した。ジメチルカーボネートとグリセロールの異なる比(0.5:1〜5:1)を、異なる反応において使用した。この反応時間後の反応混合物の組成のHPLC分析の後、結果を使用して、反応したグリセロールに対するジメチルカーボネート(DMC)の当量数の効果を示すグラフ(図2)を作成した。
【0162】
図2は、反応したジメチルカーボネートの当量数に対する、グリセロールカーボネート(GLC)、グリセロールジカーボネート(GDC)及びグリセロール(GLY)の相対割合を示すグラフ表示に相当する。この結果は、ジメチルカーボネート(DMC)とグリセロール(GLY)の比がより低いと、任意の再利用のための反応の最後の未反応のジメチルカーボネート(DMC)が少ないことを示すものである。結果はまた、ジメチルカーボネートとグリセロールの比が増加するにつれて、生成するグリセロールジカーボネート(GDC)の割合も増加することを示す。ある程度まで、ジメチルカーボネートとグリセロールの比を増加させると、グリセロール(GLY)、グリセロールカーボネート(GLC)及びグリセロールジカーボネート(GDC)の質量に基づいて、約90モル%の最大量まで、反応時間内に得られるグリセロールカーボネートの量が増加する。しかしながら、ある程度を超えてジメチルカーボネートとグリセロールの比をさらに増加させると、望ましくないグリセロールジカーボネートについての優先的な形成がもたらされる。
【実施例2】
【0163】
第1の反応段階に続く、中間のアルコール分離ステップ
第1の反応段階において、1:1のモル比のジメチルカーボネートとグリセロールを、反応前にグリセロール反応物流中に溶解させて反応器に供給されるグリセロールの量に基づいて1質量%のNaOMe均一系エステル交換触媒を用いて、反応させた。反応器を、反応混合物を抜き取って、メタノール分離のため蒸留塔に供給する前に、80℃で1時間、操作した。いくつかのメタノール分離は、40℃の温度で、異なる圧力(40〜120mbarの範囲)で操作する蒸留塔を使用して、第1の反応段階から取り出した異なる試料について完了した。メタノール分離後のグリセロールカーボネートの収率をHPLCによって決定した。
【0164】
図3は、蒸留塔の操作圧力に対するそれぞれの試料についてのグリセロールカーボネートの収率(%)(100%の選択性が観察されるような場合においては、グリセロールに対するモル割合にも相当する)を示すグラフ表示に相当する。結果は、検討された圧力の全範囲で、蒸留塔の圧力の増加により、第2の反応器におけるさらなる反応前に、グリセロールカーボネート(GLC)のより高い収率がもたらされることを実証する。この傾向は、最大の実用圧力が、蒸留塔の特定の蒸留温度について実施されるまで、観察され得る。したがって、より高い蒸留温度で実施される場合、グリセロールカーボネートの収率における同様の傾向が観察されるが、それにともなう高い蒸留圧力の範囲においても観察される。
【実施例3】
【0165】
第2段階の反応(副生成物アルコールの連続除去なし)
部分的に反応した流れを表す様々な反応物流の組成が第2の反応段階にどのような効果を示すかを検証するために試験した。それぞれの流れは、以下の表1に示すような、グリセロールカーボネート(GLC)と未反応のグリセロール(GLY)の特定のモル比、及び第2段階の反応の前の未反応のグリセロールの量に基づいて、1質量%の均一系エステル交換触媒を含んでいた。
【0166】
【表1】
【0167】
流れA〜流れFのそれぞれの試料を、丸底フラスコ反応器中、100℃で、試料中に最初に存在する未反応グリセロールの量に対して様々な当量のジメチルカーボネートを用いて反応させ、それぞれの場合において、2時間反応させて、平衡点に達したことを確実にした。
【0168】
図4a〜図4fは、それぞれの反応の開始時の未反応のグリセロールに対して存在するジメチルカーボネートの当量数に対する、流れA〜流れFのそれぞれから取り出されたそれぞれの試料についてのグリセロールカーボネートの収率(%)を示すグラフ表示に相当する。図4a〜図4fは、それぞれの試料について反応後に存在するグリセロール(GLY)及びグリセロールジカーボネート(GDC)の相対割合も示す。図4a〜図4fは、存在するジメチルカーボネートの当量数の増加によって、生成物へのグリセロール転化率が通常増加することを、一貫して示す。しかしながら、ジメチルカーボネートの当量数が増加するにつれて、望まないグリセロールジカーボネート副生成物に対する選択性も増加する。
【実施例4】
【0169】
第2段階の反応(副生成物アルコールの連続除去あり)
100℃で2時間、1.5当量のジメチルカーボネートと反応させた、実施例3からの流れAの実験の第2段階の反応から試料を取り出し、その生成物の分布を分析した後、副生成物のメタノールの連続除去を伴って一緒に加熱することによる(揮発性成分を蒸発させるために使用されるオープン型反応器ベッセル)、さらなる反応に付した。さらなる反応の後、生成物の分布を、この段階でも分析した。メタノールの連続除去を伴うさらなる反応の前後で、第2段階から取り出された試料に関して実施された分析の結果を以下の表2に提示する。結果は、試験された混合物中に存在するグリセロール、グリセロールカーボネート及びグリセロールジカーボネートの相対割合に相当する。
【0170】
【表2】
【0171】
表2の結果は、グリセロールカーボネートと未反応のグリセロールを90:10の比で含む(グリセロールジカーボネートは含まない)第2段階の反応器への供給物の組成が、第2段階の反応の結果として変化したことを実証する。特に、生成物へのさらなるグリセロールの転化が観察された。しかしながら、第2段階の反応器の生成物流についての結果から分かるように、反応のこの段階でのグリセロールカーボネートに対する選択性は、グリセロールジカーボネートに対する選択性と同等であった。しかしながら、副生成物のメタノールの連続除去のために構成された反応器中でのこの試料のさらなる反応は、生成物の分布を顕著に変更する。さらなるグリセロール転化に加えて、第2段階の試料のさらなる反応は、組成物中に存在するグリセロールジカーボネート副生成物を、所望のグリセロールカーボネート生成物に効率的に転化する。段階2の反応器が、最初のアルコールの連続除去を伴って代わりに操作されると、同等の生成物分布も得られる。この実験は、反応の第2段階に副生成物のメタノールの連続除去を組み込むことによって、驚くべきことに、グリセロール転化及びグリセロールジカーボネートよりグリセロールカーボネート形成に対する選択性の両方を高めることを実証する。
図1
図2
図3
図4a
図4b
図4c
図4d
図4e
図4f