【課題を解決するための手段】
【0016】
第1の態様において、本発明は、
(i)第1の反応帯域において、均一系エステル交換触媒の存在下で、グリセロールの反応物流を、a)80質量%超のジアルキルカーボネートを含むジアルキルカーボネートの反応物流、及び/又はb)80質量%超の環状アルキレンカーボネートを含む環状アルキレンカーボネートの反応物流と、接触並びに部分的に反応させるステップ;
(ii)アルコール含有副生成物流を得るために、ステップ(i)におけるジアルキルカーボネート及び/又は環状アルキレンカーボネートとグリセロールの反応から形成されるアルコール副生成物の少なくとも一部を反応混合物から分離するステップ;
(iii)第2の反応帯域において、均一系エステル交換触媒の存在下で、残存する反応物の少なくとも一部を反応させるステップ;並びに
(iv)グリセロールカーボネートの生成物流を得るステップ
を含む、グリセロールカーボネートを製造するための方法を提供する。
【0017】
本発明の方法は、グリセロール及びジアルキルカーボネート又は環状アルキレンカーボネートの間のエステル交換反応を含み、下記のスキーム1及び2に示されるように、グリセロールカーボネート及びアルコール副生成物の形成をもたらす。
【0018】
【化1】
【0019】
【化2】
【0020】
本発明のこの態様において、ステップ(i)における反応物流の反応後、中間の副生成物アルコールの除去ステップ(ii)の前に、副生成物アルコールの蓄積を初期には許容することが有利であることを見いだした。グリセロール及びジアルキルカーボネート流は、通常、混和せず、二相の反応混合物をもたらし、これは、反応物の反応速度を制限すると考えられる。しかしながら、副生成物アルコールの生成後、反応混合物が単相になることを見いだし、これは、反応速度及びグリセロール転化率の程度に有利であると考えられる。理解されるように、いくつかの従来技術のプロセスの場合におけるようなアルコール吸収床の使用は、単相の反応混合物を得るために、十分な副生成物アルコールを蓄積させることを許容することを考慮していない。さらに、驚くべきことに、中間の副生成物アルコールの分離ステップ(ii)を組み込むことによって、グリセロールの生成物への転化率が改善されることが、見い出された。全転化率は、本明細書で論じられるように、副生成物アルコールの分離ステップ(ii)が、反応混合物の蒸留を含む場合に、特に好都合であることも見いだされた。
【0021】
その一方で、本発明の好ましい実施形態において、アルコール分離ステップ(ii)に続くステップ(iii)における後続の反応でのグリセロールカーボネートに対する選択性が、後続の反応が副生成物アルコールの連続除去を伴って行われることを確保することによって、増加し得ることも見いだされた。反応の最終段階に連続除去を組み込むことによって、グリセロールカーボネートの全選択性が増加することが見いだされた。任意の特定の理論に拘束されるものではないが、グリセロールジカーボネートの形成は、以下のスキーム3に示されるように、メタノールの分離ステップ(ii)後、ステップ(iii)における後続の反応において、より容易に起こると考えられる。
【0022】
【化3】
【0023】
ステップ(iii)の最終段階の反応において、副生成物アルコールの連続除去を使用することによって、以下のスキーム4に示されるように、平衡を、所望のグリセロールカーボネートの形成の方向に移動させることができることが見いだされた。
【0024】
【化4】
【0025】
したがって、中間の副生成物アルコールの分離ステップ(ii)、続いて、後続の反応ステップ(iii)における副生成物アルコールの連続除去の組み合わせにより、転化率及びグリセロールカーボネートに対する選択性の両方が最大化され得る。
【0026】
本発明の方法によれば、ステップ(i)において、第1の反応帯域において、均一系エステル交換触媒の存在下で、グリセロールの反応物流並びにジアルキルカーボネートの反応物流及び/又は環状アルキレンカーボネートの反応物流を、接触及び部分的に反応させる。
【0027】
本明細書で使用される「部分的に反応させる」という用語は、残存反応物、特に、残存グリセロールが残るような、グリセロール及びジアルキルカーボネート/環状アルキレンカーボネートの反応物流の不完全な反応を指すことを意図する。このように、これらの流れの部分的又は不完全な反応は、グリセロール反応物の不完全な転化率、例えば、90%未満の転化率であるいう状況に相当する。
【0028】
本明細書で使用される「反応物流」という用語は、ステップ(i)の一部として、反応のために供給される、1つの反応物(すなわち、グリセロール又はジアルキルカーボネート/環状アルキレンカーボネートのいずれか)を含有する流れを指すことを意図する。
【0029】
本明細書で使用される「均一系エステル交換触媒」という用語は、反応物流と同じ相中にある触媒を指すことを意図する。そのようなものとして、均一系エステル交換触媒は、本方法の操作条件下で液体であるか、又は本方法の操作条件下で反応物流及び/若しくは反応混合物に少なくとも部分的に可溶性であるかのいずれかである。本明細書で使用される「触媒」という用語は、反応によってそれ自身が消費されることなく、化学反応の速度を増加させる物質を指す。
【0030】
本明細書で使用される「グリセロールカーボネートの生成物流」という用語は、本方法のステップ(iii)が実施された後に反応帯域から得られる、グリセロールカーボネート生成物を含む流れを指すことを意図する。
【0031】
本明細書で使用される「第1の反応帯域」及び「第2の反応帯域」という用語は、本明細書に記載のステップ(i)及びステップ(iii)による反応が別々に実施される、系/装置内の、区別できる別々の反応領域を指すことを意図する。理解されるように、第1の反応帯域及び第2の反応帯域は、別々の反応器内に位置していてもよく、それぞれの反応帯域/反応器は、好ましくは、適用可能なステップ(i)又はステップ(iii)によるいずれかの反応のために、特に構成される。或いは、第1の反応帯域及び第2の反応帯域は、代わりに、同じ反応器内の異なる位置に位置していてもよい。
【0032】
ジアルキルカーボネートの反応物流は、80質量%超のジアルキルカーボネートを含む。好ましい実施形態において、ジアルキルカーボネートの反応物流は、90質量%超のジアルキルカーボネート、より好ましくは、95質量%超のジアルキルカーボネートを含む。他の好ましい実施形態において、ジアルキルカーボネートの反応物流は、5質量%未満のアルコール、好ましくは、2質量%未満のアルコール、より好ましくは、1質量%未満のアルコールを含む。ジアルキルカーボネートの反応物流中のアルコール、例えば、メタノールの存在は、ステップ(i)において観察されるグリセロールの転化率のレベルに負の影響を与える可能性があるので、好ましくは、回避される。他の好ましい実施形態において、ジアルキルカーボネートの反応物流は、2質量%未満の水、好ましくは、1質量%未満の水を含む。
【0033】
理解されるように、本明細書において言及されるジアルキルカーボネート反応物と関連して使用される「ジアルキル」という用語は、カーボネート部分の別々の酸素原子に共有結合した2個のアルキル基に相当する。2個のアルキル基は、好ましくは、同じアルキル基であるが、これらは異なっていてもよく、置換されていてもよく、又は好ましくは、無置換であってもよい。本発明の方法において、ジアルキルカーボネートの混合物が使用されてもよく、又は単一のジアルキルカーボネートが使用されてもよい。
【0034】
いくつかの実施形態において、ジアルキルカーボネートの2個のアルキル基は、C
1−C
6の、分岐状、又は好ましくは、直鎖状のアルキル基から選択され、これは、置換又は無置換であってもよい。好ましい実施形態において、ジアルキルカーボネートの2個のアルキル基は、C
1−C
4の、分岐状、又は好ましくは、直鎖状のアルキル基から選択される。本発明による使用のためのジアルキルカーボネートの例としては、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジプロピルカーボネート、ジブチルカーボネート及びジヘキシルカーボネートが挙げられる。好ましくは、ジアルキルカーボネートは、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート又はこれらの混合物である。最も好ましくは、ジアルキルカーボネートは、ジメチルカーボネートである。
【0035】
理解されるように、本発明の方法において使用されるジアルキルカーボネート基の性質は、結果として生成するアルコール副生成物の性質を決める。例えば、好ましい実施形態において、ジメチルカーボネートをジアルキルカーボネート反応物として使用すると、メタノールが、生成する副生成物アルコールであろう。本発明は、反応混合物からの中間の副生成物アルコール分離に依存するので、特に、グリセロール反応物と比較して、副生成物アルコールにおける揮発性が望ましい。これは、反応混合物を、減圧でフラッシュカラムに供給することによる、反応混合物からの副生成物アルコールの単純な分離を可能にする。
【0036】
ジアルキルカーボネートの反応物流と同時に、又はこれに代えて使用され得る環状アルキレンカーボネートの反応物流は、80質量%超の環状アルキレンカーボネートを含む。好ましい実施形態において、環状アルキレンカーボネートの反応物流は、90質量%超の環状アルキレンカーボネート、より好ましくは、95質量%超の環状アルキレンカーボネートを含む。他の好ましい実施形態において、環状アルキレンカーボネートの反応物流は、5質量%未満のアルコール、好ましくは、2質量%未満のアルコール、より好ましくは、1質量%未満のアルコールを含む。環状アルキレンカーボネートの反応物流中のアルコール、例えば、メタノールの存在は、ステップ(i)において観察されるグリセロールの転化率のレベルに負の影響を与える可能性があるので、好ましくは、回避される。他の好ましい実施形態において、環状アルキレンカーボネートの反応物流は、2質量%未満の水、好ましくは、1質量%未満の水を含む。
【0037】
好ましい実施形態において、環状アルキレンカーボネートは、以下の式Iのものである:
【0038】
【化5】
【0039】
(式中、R
1は、二価基の−(CH
2)
n−であり(式中、nは、2〜6の整数である)、これは、非置換であるか、又は、C
1−C
4アルキル基又はC
2−C
3アルキル基を含む、少なくとも1個のC
1−C
6アルキル基によって置換されている)。
【0040】
好ましい実施形態において、nは、2〜4、より好ましくは、2又は3、最も好ましくは、2である。他の好ましい実施形態において、二価基の−(CH
2)
n−は、非置換である。
【0041】
理解されるように、本発明の方法において使用される環状アルキレンカーボネートのR
1の性質は、結果として生成するアルコール副生成物の性質を決める。例えば、好ましい実施形態において、エチレンカーボネートを環状アルキレンカーボネート反応物として使用すると、エチレングリコールが、生成する副生成物アルコールであろう。本発明は、反応混合物からの中間の副生成物アルコール分離に依存するので、特に、グリセロール反応物と比較して、副生成物アルコールにおける揮発性が望ましい。これは、反応混合物を減圧でフラッシュカラムに供給することによる、反応混合物からの副生成物アルコールの単純な分離を可能にする。
【0042】
本発明の利点は、ジアルキルカーボネート及び環状アルキレンカーボネートの反応物流の両方を使用して実現され得るが、グリセロールとジアルキルカーボネートとの反応は、環状アルキレンカーボネートとの反応と比較して、エントロピー的により好都合である。この理由のために、好ましい実施形態において、本発明の方法は、ステップ(i)において、ジアルキルカーボネートの反応物流の反応を含む。
【0043】
グリセロールの反応物流は、適切には、80質量%超のグリセロールを含んでいてもよい。好ましい実施形態において、グリセロールの反応物流は、90質量%超のグリセロール、より好ましくは、95質量%超のグリセロールを含む。他の好ましい実施形態において、グリセロールの反応物流は、5質量%未満の水、より好ましくは、2質量%未満の水、最も好ましくは、1質量%未満の水を含む。反応中の水の存在は、望まれない副反応、及びグリセロールカーボネートに対する選択性の低下をもたらし得るので、望ましくない。水の存在はまた、触媒性能に対して負の影響を与え得る。したがって、水の存在に対して最も影響を受けやすいグリセロールの反応物流は、例えば、本発明の方法において使用する前に、蒸留塔及び/又はモレキュラーシーブなどの吸着材を使用する、乾燥ステップを受けていてもよい。粗グリセロール反応物はまた、本発明の方法における使用のための高純度の出発原料を提供するために、活性炭吸収材床を通過させることによる、色/色素の除去ステップを受けていてもよい。
【0044】
反応物流は、ステップ(i)における反応のための第1の反応帯域に供給される前に、混合されてもよく、又は、第1の反応帯域に、別々に供給されてもよい。好ましくは、反応物流は、ステップ(i)における反応のための第1の反応帯域に供給される前に、混合される。乱流及び/又はガラスビーズで混合領域を充填することが、ジアルキルカーボネート/環状アルキレンカーボネート相及びグリセロール相の混合を改善するために使用されてもよい。
【0045】
グリセロールカーボネートの形成に好都合な、ジアルキルカーボネート及び/又は環状アルキレンカーボネートとグリセロールのすべての適切なモル比を、ステップ(i)における反応のために使用することができる。しかしながら、グリセロールに対して、少なくとも化学量論レベルのジアルキルカーボネート及び/又は環状アルキレンカーボネートが、典型的に使用される。好ましくは、ステップ(i)における反応のためには、ジアルキルカーボネート及び/又は環状アルキレンカーボネートとグリセロールのモル比は、1:1〜3:1の範囲、好ましくは、1:1〜2:1の範囲、より好ましくは、1.1:1〜1.4:1の範囲、例えば、1.2:1である。
【0046】
いくつかの実施形態において、ジアルキルカーボネート及び/又は環状アルキレンカーボネートとグリセロールのモル比は、0.7:1.0〜1.0:1.0の範囲、例えば、0.75:1.0〜0.95:1.0の範囲、又は0.8:1.0〜0.9:1.0の範囲である。これらの実施形態において、アルコール副生成物の分離ステップ(以下で、より詳細に論じる)中に、反応混合物から失われ得るジアルキルカーボネート及び/又は環状アルキレンカーボネートの量を低減させるように、より少量のジアルキルカーボネート及び/又は環状アルキレンカーボネートが使用される。グリセロール転化率及びグリセロールカーボネートに対する選択性は、化学量論量に近いか、又はそれより少ない、ジアルキルカーボネート及び/又は環状アルキレンカーボネートを使用することによって、減少し得る。しかしながら、これは、本方法に組み入れられ得る、すべてのジアルキルカーボネート及び/又は環状アルキレンカーボネートの再利用ステップと関連してコストを抑えることと調整されるであろう(以下で、より詳細に論じる)。
【0047】
好ましい実施形態において、反応物流は、すべての溶媒及び/又は希釈剤の実質的な非存在下で、混合され、反応する。例えば、溶媒及び/又は希釈剤は、好ましくは、500ppm未満、より好ましくは、200ppm未満の量で、反応混合物中に存在する。
【0048】
エステル交換触媒は、ステップ(i)における反応を触媒するために、第1の反応帯域に直接供給されてもよく、或いは、反応物流の1つ若しくは両方に添加されてもよく、又は反応帯域に供給される前に、混合された反応物流に添加されてもよい。好ましくは、均一系エステル交換触媒は、ステップ(i)における反応のための第1の反応帯域に供給される前に、グリセロールの反応物流に添加される。好ましくは、均一系エステル交換触媒は、ステップ(i)において第1の反応帯域に供給されるグリセロールの質量に基づいて、0.25〜5質量%、好ましくは、0.5〜1.5質量%、例えば、1質量%の量で、反応混合物中に存在する。
【0049】
ステップ(i)における反応が行われる温度及び圧力は、反応物の分解が回避され、望まない副反応、例えば、重合を最小化する、すべての適切な温度及び圧力であってもよい。ステップ(i)のための適切な反応温度は、40〜160℃、好ましくは、60〜140℃、より好ましくは、80〜120℃である。ステップ(i)のための適切な反応圧力は、例えば、10kPa(絶対圧)〜1,500kPa(絶対圧)(0.1〜15bar(絶対圧))、好ましくは、100kPa(絶対圧)〜1,000kPa(絶対圧)(1〜10bar(絶対圧))、より好ましくは、200kPa(絶対圧)〜600kPa(絶対圧)(2〜6bar(絶対圧))である。このような反応圧力は、自生圧力であってもよい。
【0050】
反応物流は、ステップ(i)において、存在するグリセロールの大部分を生成物に転化する(すなわち、存在するグリセロールを、50モル%以上転化する)ために適切であるが、グリセロール反応物を完全には消費しない任意の時間にわたって、反応させ得る。例えば、ステップ(i)における反応は、10分間〜12時間、好ましくは、20分間〜3時間、より好ましくは、30分間〜1時間、例えば、45分間、実施してもよい。好ましい実施形態において、ステップ(i)は、50〜90モル%のグリセロール転化率、好ましくは、70〜90モル%のグリセロール転化率、最も好ましくは、80〜90モル%のグリセロール転化率を達成する。当業者が理解するように、例えば、反応物の機械的混合を使用することによる、反応物の混合の最適化は、反応速度を増加させることができる。
【0051】
本発明の方法のステップ(ii)において、ステップ(i)において形成される副生成物アルコールの少なくとも一部は、反応混合物から分離される。当業者に理解されるように、「分離する」という用語は、反応混合物からのアルコール副生成物の物理的除去を指すことを意図する。特に、本発明の文脈における分離は、アルコール含有副生成物流が、結果として得られるようなものである。当業者に理解されるように、本発明にしたがってアルコール含有副生成物流を得るにあたり、反応混合物と接触してアルコール副生成物の固定化を行い得る吸着材の使用は、アルコールを分離するとはみなされない。
【0052】
ステップ(ii)の部分としてのアルコールの分離は、アルコール含有副生成物流が、そこから直接得られ、さらに処理され得るならば、当業者に認識されているあらゆる手段によって達成され得る。好ましくは、ステップ(ii)におけるアルコールの分離は、アルコールを含む反応混合物の揮発性成分を分離するために、減圧下で操作されるフラッシュベッセル、又は蒸留塔による。より好ましくは、アルコール分離ステップ(ii)は、蒸留塔を使用して行われる。蒸留は、所望の分離にふさわしい、段数(例えば、理論段数)、例えば、約5〜約50の理論段数を有する慣用の蒸留塔であってもよい。
【0053】
いくつかの実施形態において、アルコール分離ステップ(ii)は、50質量%超のアルコール副生成物を除去する。好ましくは、ステップ(ii)において、75質量%超のアルコール副生成物が反応混合物から分離され、さらにより好ましくは、90質量%超、最も好ましくは、ステップ(ii)において、95質量%超のアルコール副生成物が反応混合物から分離される。
【0054】
アルコールの分離ステップが蒸留塔を使用して達成される場合、蒸留が行われ得る適切な圧力の範囲は、50mbar(絶対圧)〜1bar(絶対圧)である。好ましい実施形態において、蒸留が行われる圧力の範囲は、100mbar(絶対圧)〜700mbar(絶対圧)、好ましくは、200mbar(絶対圧)〜500mbar(絶対圧)、より好ましくは、300mbar(絶対圧)〜400mbar(絶対圧)である。当業者に理解されるように、蒸留塔における圧力が増加するにつれて、有効な蒸留のためには、より高い温度が、通常は必要とされる。例えば、本ケースにおいて、比較的高い1barの圧力を蒸留のために使用すると、80℃を上回る温度が必要であり得る。対照的に、100mbar(絶対圧)より低い圧力では、30℃程度の低い蒸留温度が適切であり得る。
【0055】
アルコールの分離ステップが、蒸留塔を使用して達成される場合、蒸留が行われ得る適切な温度の範囲は、35〜90℃である。均一系触媒の存在下で、並びに多量のアルコール及びジアルキルカーボネート/環状アルキレンカーボネートの非存在下では、蒸留の段階における場合のように、グリセロールカーボネートの望まない重合がより高頻度になり得る。高温でより高頻度になる多量の重合及び他の副反応を回避するために、蒸留温度は90℃を超えてはならない。好ましい実施形態において、蒸留がアルコール分離の一部として行われる温度範囲は、40℃〜80℃、より好ましくは、50℃〜70℃、例えば、60℃の温度である。
【0056】
加えて、使用される特定の蒸留温度で効果的な分離を達成するために、実施できる範囲で蒸留圧力を増加させると、ステップ(iii)におけるさらなる反応の前に、グリセロール転化率及びグリセロールカーボネートの収率に対して、有益な効果を有し得ることも見いだされた。理解されるように、蒸留塔における分離は、典型的には、昇温が必要である。したがって、反応物のさらなる反応が、分離プロセス中に起こると予測することができ、ステップ(iii)におけるさらなる反応の前に、グリセロールの転化にさらに寄与することができる。使用される蒸留温度に対する蒸留圧力を最大化することによって、追加のグリセロール転化が、ステップ(iii)の反応の前に、観察され得る。例示的な実施形態において、35℃〜45℃、例えば、40℃の蒸留温度が使用されると、蒸留塔は、有利には、100〜150mbar(絶対圧)、例えば、120mbar(絶対圧)の圧力で操作され得る。
【0057】
ジアルキルカーボネート又は環状アルキレンカーボネート反応物及びこれらから生成するそれぞれのアルコール副生成物の類似する沸点の結果として、これらの成分は、アルコール分離ステップ(ii)中に、副生成物アルコールとの共沸混合物の一部を形成し得る。例えば、メタノールは、これらの類似の沸点の結果として、ジメチルカーボネートとの共沸物を形成することが知られている。結果として、アルコール副生成物の分離ステップ(ii)は、典型的には、通常、グリセロール反応物と比較して、過剰に存在する、反応混合物から未反応のジアルキルカーボネート又は環状アルキレンカーボネートの量の除去を伴って行われる。しかしながら、共沸物の組成は、圧力に敏感であることも見いだされた。アルコール分離ステップ(ii)を蒸留塔を使用して達成すると、圧力の調整により、得られる共沸物のジアルキルカーボネート/環状アルキレンカーボネートの含量を低減することができることが見いだされた。例えば、蒸留塔における圧力の増加により、メタノール/ジメチルカーボネート共沸混合物中のジメチルカーボネートの割合が減少することが見いだされ、より多くのジメチルカーボネート反応物が、ステップ(ii)におけるメタノール分離後の後続の反応のための反応混合物中に維持されることを意味する。
【0058】
アルコール分離ステップ(ii)中のジアルキルカーボネート/環状アルキレンカーボネートの損失を軽減することにより、特に、ステップ(iii)における第2段階の反応のために、ジアルキルカーボネート/環状アルキレンカーボネートのレベルを補充するための追加のジアルキルカーボネート/環状アルキレンカーボネートの反応物供給流への依存が少なくなる。いくつかの実施形態において、ステップ(i)における第1段階の反応のための高い割合のジアルキルカーボネート/環状アルキレンカーボネートの使用と組み合わせて、アルコール分離ステップ(ii)のための条件の注意深い選択は、適正なグリセロール転化率及び/又はグリセロールカーボネートの全収率を達成するために、アルコール分離ステップ(ii)後にジアルキルカーボネート/環状アルキレンカーボネートのレベルを補充する必要がなくてもよいことを意味する。
【0059】
本発明の好ましい実施形態において、追加のジアルキルカーボネート/環状アルキレンカーボネートの反応物供給流は、特に、本方法のステップ(iii)における反応のために、反応混合物中のジアルキルカーボネート/環状アルキレンカーボネートのレベルの補充のために使用される。例えば、追加のジアルキルカーボネート/環状アルキレンカーボネート反応物は、アルコール分離ステップ(ii)の結果として失われるジアルキルカーボネート/環状アルキレンカーボネートを置き換えるために添加されてもよい。或いは、又は加えて、追加のジアルキルカーボネート/環状アルキレンカーボネート反応物は、ステップ(i)における反応のために使用されるジアルキルカーボネート/環状アルキレンカーボネートとグリセロールの比と比較して、ステップ(iii)における反応のためのジアルキルカーボネート/環状アルキレンカーボネートと未反応のグリセロールの比を増加させるために、添加されてもよい。ジアルキルカーボネート/環状アルキレンカーボネートのレベルは、好ましくは、本発明の方法の間中にわたって、グリセロールに対して、少なくとも化学量論レベルで維持される。
【0060】
いくつかの実施形態において、特に、本方法のステップ(iii)における反応のために、反応混合物中のジアルキルカーボネート/環状アルキレンカーボネートのレベルを補充するために使用される追加のジアルキルカーボネート/環状アルキレンカーボネートの反応物供給流は、アルコール−ジアルキルカーボネート/環状アルキレンカーボネート分離ステップから得られるジアルキルカーボネート/環状アルキレンカーボネートの再利用流に相当してもよい。例えば、分離ステップは、アルコール分離ステップ(ii)から得られるアルコール及びジアルキルカーボネート/環状アルキレンカーボネートの共沸混合物に対して実施されてもよい。或いは、又は加えて、分離ステップは、ステップ(iv)において得られるグリセロールカーボネート流から分離されるアルコール及びジアルキルカーボネート/環状アルキレンカーボネートを含む混合物に対して実施されてもよい。
【0061】
さらなるジアルキルカーボネート/環状アルキレンカーボネート反応物の追加は、アルコール分離ステップ(ii)後に得られる残存する反応混合物と混合される別々の流れを経由していてもよい。或いは、追加のジアルキルカーボネート/環状アルキレンカーボネートは、ステップ(iii)における反応のために使用される第2の反応帯域に直接供給される流れを経由して供給されてもよく、この時点で、追加のジアルキルカーボネート/環状アルキレンカーボネートは、アルコール分離ステップ(ii)から残存する反応混合物と接触する状態になる。
【0062】
ステップ(i)における反応に関しては、グリセロールカーボネートの形成のために好都合な、使用され得るジアルキルカーボネート/環状アルキレンカーボネートとグリセロールのすべての適切なモル比を、ステップ(iii)における反応のために使用することができる。しかしながら、グリセロールに対して、少なくとも化学量論レベルのジアルキルカーボネート/環状アルキレンカーボネートが、典型的に使用される。
【0063】
理解されるように、2つの別々の反応帯域が、ステップ(i)及びステップ(iii)における反応のために使用されるので、ジアルキルカーボネート/環状アルキレンカーボネートとグリセロールの異なる比が、これらの反応ステップのそれぞれについて使用されてもよい。好ましい実施形態において、第1の反応帯域及び第2の反応帯域において使用されるジアルキルカーボネート及び/又は環状アルキレンカーボネートとグリセロールの比は異なる。好ましくは、ステップ(iii)における反応のためには、ジアルキルカーボネート及び/又は環状アルキレンカーボネートとグリセロールのモル比は、1.5:1〜4:1の範囲、好ましくは、1.75:1〜3.5:1の範囲、より好ましくは、2.0:1〜3.0:1の範囲、例えば、2.5:1である。
【0064】
ステップ(i)における反応のために使用されるジアルキルカーボネート及び/又は環状アルキレンカーボネートとグリセロールの比と比較して、ジアルキルカーボネート及び/又は環状アルキレンカーボネートと未反応のグリセロールのより高い比がステップ(iii)の反応のために使用されると、有益であることが見いだされた。特に、典型的には、少なくとも化学量論的量のジアルキルカーボネートを有するが、ステップ(i)におけるジアルキルカーボネート及び/又は環状アルキレンカーボネートとグリセロールとの比較的低い比の使用と、ステップ(iii)におけるジアルキルカーボネート及び/又は環状アルキレンカーボネートとグリセロールとの比較的高い比の使用は、観察されるグリセロールの全転化率及びグリセロールカーボネート生成物の収率をさらにより増強することが見いだされた。本発明の特に好ましい実施形態において、ステップ(i)において使用されるジアルキルカーボネート及び/又は環状アルキレンカーボネートとグリセロールのモル比は、1.1:1〜1.4:1であり、ステップ(iii)において使用されるジアルキルカーボネート及び/又は環状アルキレンカーボネートとグリセロールのモル比は、2.0:1〜3.0:1である。
【0065】
本発明の方法のステップ(iii)において、アルコール分離ステップ(ii)後に残存する反応物の少なくとも一部は、反応帯域中の均一系エステル交換触媒の存在下で反応する。好ましくは、分離ステップ(ii)後に存在する、残存する反応物の実質的にすべてが、反応帯域において、均一系エステル交換触媒の存在下で反応する。エステル交換触媒は、典型的には、使用されるプロセス条件で安定であり、アルコール除去ステップの結果として失われる触媒が最小限であるような揮発性を有する。したがって、ステップ(iii)において反応を行う前に、反応混合物中の均一系エステル交換触媒の含量をつぎ足す必要はないと予想されるが、このことを除外しているわけではない。
【0066】
理解されるように、ステップ(i)のために使用される第1の反応帯域は、本方法のステップ(iii)のために使用される第2の反応帯域のものと、同じ又は異なる温度及び圧力条件下で操作されてもよい。ステップ(i)と同様に、ステップ(iii)における反応が行われる温度及び圧力は、反応物の分解が回避され、望まない副反応、例えば、重合を最小化する、あらゆる適切な温度及び圧力であり得る。
【0067】
いくつかの実施形態において、第1の反応帯域及び第2の反応帯域における温度並びに圧力の条件は、異なる。例えば、アルコール分離ステップ(ii)の結果として、第1の反応帯域及び第2の反応帯域との間に圧力低下が存在し、これは第2の反応帯域が第1の反応帯域よりも低い圧力で操作されることを意味し得る。ステップ(iii)のための適切は反応温度は、20〜160℃、好ましくは、40〜140℃、より好ましくは、80〜120℃である。ステップ(iii)のための適切な反応圧力は、5kPa(絶対圧)〜150kPa(絶対圧)(0.05〜1.5bar(絶対圧))、より好ましくは、10kPa(絶対圧)〜100kPa(絶対圧)(0.1〜1bar(絶対圧))、最も好ましくは、15kPa(絶対圧)〜50kPa(絶対圧)(0.15〜0.5bar(絶対圧))である。
【0068】
第1の反応帯域及び第2の反応帯域は、限定されないが、プラグフロー、連続撹拌タンク若しくはループ型反応器、又はこれらの組み合わせを含む、あらゆる液相反応器内に位置し得る。反応蒸留などの反応分離も、本発明にしたがって使用することができ、生成物/副生成物の生産及び除去が同時に起こる連続プロセスにおいて、特に有用である。反応蒸留塔の使用は、これらが、反応及び分離の役割を単一のユニットに組み合わせ得る多機能の反応器である限り、有利であり、これにより、資本コストが削減される。当業者であれば、所定の反応のための塔内で、液体が下向きに流れ、蒸気が上向きに流れるような、精留及びストリッピングの十分な利益を得るために、蒸留塔の配置を改変することができる方法を認識している。典型的には、反応物は、供給エンタルピー及び組成が、所定の分離要件のためのエネルギーを最小化する位置で、塔に供給される。
【0069】
いくつかの実施形態において、第1の反応帯域及び第2の反応帯域は、それぞれ、第1の反応器及び第2の反応器内に位置する。第1の反応器及び第2の反応器は、両方とも、例えば、本方法の連続的な操作を可能にする、プラグフロー反応器であってもよい。プラグフロー反応器はまた、生成物の望まないさらなる反応(例えば、グリセロールジカーボネートを形成するグリセロールカーボネートのさらなる反応)をもたらし得る、反応器の逆充填を無くすために有利である。
【0070】
好ましい実施形態において、第2の反応器は、副生成物アルコールの連続除去のために構成される。当業者が精通し、分離を達成することが可能なあらゆる形式の反応器が使用され得る。例えば、反応蒸留塔は、この目的のために適切に使用され得る。アルコールの連続除去のために構成され、所望の分離にふさわしい段数(例えば、理論段数)、例えば、約5〜約50の理論段数を有しているならば、あらゆる適切な反応蒸留塔を使用してもよい。蒸留塔のインターナル成分は、例えば、篩板、非構造化パッキング及び構造化パッキング、バブルキャップ及びこれらの混合物を含んでいてもよい。例えば、副生成物アルコールの除去のために構成された反応蒸留塔の場合において、アルコールの蒸気は、反応帯域に戻ることなく、精留部から回収され得る。その一方で、蒸発したジアルキルカーボネート及び/又は環状アルキレンカーボネート反応物は、再凝縮され、反応帯域、例えば、そのトレイに、液体として戻ってもよく、生成物のグリセロールカーボネートは、ストリッピング帯域の底部から連続的に抜き取ることができる。
【0071】
本明細書の上記で論じたように、本方法のステップ(iii)における反応中の副生成物アルコールの連続除去が、グリセロールカーボネートへの反応の選択性のために特に有益であることが見いだされた。特に、ステップ(iii)中のアルコールの連続除去は、動的な反応平衡をグリセロールカーボネートの形成の方向に移動させると考えられる。その上、驚くべきことに、アルコールの連続除去が、副生成物のグリセロールジカーボネートのレベルを積極的に減少させることも見いだされた。例えば、ステップ(iii)においてさらに反応する反応物/生成物の混合物が、最初に(グリセロールカーボネート生成物とカーボネート反応物とのさらなる反応から可逆的に形成される)グリセロールジカーボネートを含む場合でも、ステップ(iii)におけるさらなる反応が、副生成物アルコールの連続除去と一緒に、グリセロールジカーボネートを所望のグリセロールカーボネート生成物に転化し得ることが可能である。したがって、好ましい実施形態において、本方法は、本方法のステップ(iii)中に形成されるアルコール副生成物の連続除去をさらに含む。
【0072】
いくつかの実施形態において、第1の反応帯域及び第2の反応帯域は、単一反応器内に位置する。再び、単一反応器は、副生成物アルコールの連続除去が、本方法のステップ(iii)における反応中に可能であるように、構成される。
【0073】
本方法のステップ(iv)によれば、グリセロールカーボネートの生成物流は、ステップ(iii)におけるさらなる反応後に得られる。グリセロールカーボネートの生成物流は、ステップ(iii)における反応後に、反応器から直接抜き取られる生成物流に相当していてもよい。グリセロールカーボネートの生成物流は、a)すべての未反応のグリセロール及び/又はジアルキルカーボネート/環状アルキレンカーボネート;b)すべてのアルコール副生成物;並びにc)均一系エステル交換触媒を除去するために、さらに処理されてもよい。
【0074】
好ましい実施形態において、本発明の方法は、ステップ(iv)において得られるグリセロールカーボネートの生成物流から、均一系エステル交換触媒を分離するステップをさらに含む。当業者に認識されるように、この分離の性質は、使用される均一系エステル交換触媒の性質に依存する。エステル交換触媒が、実際は、イオン性である場合(例えば、塩)、分離は、アニオン又はカチオン交換プロセスを使用して達成され得る。好ましい実施形態において、イオン性のエステル交換触媒は、グリセロールカーボネートの生成物流を、カチオン交換樹脂吸収材と接触させることによって除去される。エステル交換触媒が、非イオン性の塩基性化合物である場合(例えば、以下で論じるTMDH−ピペリジンなどのアミン化合物)、プロトン性のカチオン交換樹脂吸収材の使用が、触媒をグリセロールカーボネートの生成物流から分離するために適切であることも見いだされた。
【0075】
適切なカチオン交換樹脂の例としては、ポリアクリル酸系の多孔性の弱酸カチオン交換樹脂であるPurolite C107E;架橋ポリスチレンビーズにつながれたスルホン酸基がベースの強酸カチオン交換樹脂であるAmberlite IR120(H
+型);及び大きな網状(大きな細孔サイズ)のスルホン酸カチオン交換樹脂であるAmberlyst 15(H
+型)が挙げられる。好ましい実施形態において、グリセロールカーボネートの生成物流は、カチオン交換樹脂吸収材が充填されたカラムを通される。
【0076】
カチオン交換樹脂吸収材が、グリセロールカーボネートの生成物流から、均一系エステル交換触媒を分離するために使用される場合、樹脂は、水による洗浄、乾燥及び酸(例えば、HCl)との接触によって再生され得る。
【0077】
いくつかの実施形態において、本方法は、未反応のジアルキルカーボネート/環状アルキレンカーボネート及び/又はアルコール副生成物を、グリセロールカーボネートの生成物流から回収するステップをさらに含む。ジアルキルカーボネート/環状アルキレンカーボネート及び/又はアルコール副生成物の分離は、アルコールを含むグリセロールカーボネートの生成物流の揮発性成分を分離するために、減圧下で操作されるフラッシュベッセル、又は蒸留塔によって達成されてもよい。しかしながら、反応蒸留塔が、本方法のステップ(iii)において使用される場合、すべてのアルコール並びにジアルキルカーボネート及び/又は環状アルキレンカーボネートの反応物は、反応から得られるグリセロールカーボネートの生成物流から分離されると予期される。
【0078】
ジアルキルカーボネート及びこれらに由来するアルコール副生成物、又は環状アルキレンカーボネート及びこれらに由来するアルコール副生成物の共沸混合物が、本発明の方法から得られる場合、特に、混合物が、メタノール及び/又はエタノールを含む場合、この混合物は、バイオディーゼル燃料生産プラントの下流で、供給するために使用されてもよく、したがって、本方法のためのさらなる収益源を意味し得る。或いは、共沸混合物は、例えば、ジアルキルカーボネート/環状アルキレンカーボネートの再利用流、及び商業的に有用なアルコール副生成物流を得るために分離されてもよい。
【0079】
したがって、未反応のジアルキルカーボネート反応物/環状アルキレンカーボネート及び副生成物アルコールの共沸混合物を含む流が、本方法の部分として得られる場合、いくつかの実施形態において、本方法は、共沸混合物中の未反応のジアルキルカーボネート/環状アルキレンカーボネート及び副生成物アルコールを分離するステップをさらに含む。好ましくは、分離ステップは、本明細書の上記で記載された本発明の方法におけるあらゆる適切な段階で、反応のためのジアルキルカーボネート源として使用され得る、ジアルキルカーボネートの再利用流を生成するために使用される。アルコール及びジアルキルカーボネート/環状アルキレンカーボネートの分離は、当業者が精通し、ジアルキルカーボネート/環状アルキレンカーボネートの再利用流を得るために適切なあらゆるプロセスによって達成され得る。適切な分離プロセスの例としては、圧力スイング蒸留、及び例えば、メタノール/ジメチルカーボネートの分離のために、メチルイソブチルケトン(MIBK)添加溶媒を使用する、抽出蒸留が挙げられる。
【0080】
本発明において使用される均一系エステル交換触媒は、本方法の操作条件下で液相中にある(すなわち、反応混合物若しくは反応物流中に溶解、又はそれ自身が液体状態である)のであれば、特に限定されない。本発明による均一系エステル交換触媒は、反応によってそれ自身が消費されることなく(すなわち、後で再生されることなく、反応物として作用しない)、グリセロール及びジアルキルカーボネート/環状アルキレンカーボネートの反応物からグリセロールカーボネートの形成を触媒する。有利には、均一系エステル交換触媒の使用は、不均一系エステル交換触媒の場合にしばしば必要である、本発明の方法を開始するための特別な開始条件又は誘導期間が必要ではないことを意味する。
【0081】
いくつかの実施形態において、均一系エステル交換触媒は、本方法の操作条件下で、液体状態である。他の実施形態において、エステル交換触媒は、本方法の操作条件下で、反応物流及び/又は反応混合物に可溶性である。エステル交換触媒は、溶液の形態で反応に添加されてもよく、エステル交換触媒は、適切には、好ましくは、非水性の溶媒に溶解され、好ましくは、溶媒は、水を除去するために予め乾燥される。適切な溶媒は、例えば、反応に使用されるジアルキルカーボネート/環状アルキレンカーボネートの反応物の副生成物であるアルコールであってもよい。例えば、ジメチルカーボネート反応物を使用する場合、エステル交換触媒は、濃メタノール溶液中に存在していてもよい。しかしながら、均一系エステル交換触媒は、溶媒の使用が必要なく、提供されるので好ましい。
【0082】
適切な均一系エステル交換触媒としては、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属重炭酸塩、アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属酸化物、アルカリ金属アルコキシド、アルカリ金属アルミン酸塩、アルカリ金属ケイ酸塩、アルカリ土類金属炭酸塩、アルカリ土類金属重炭酸塩、アルカリ土類金属水酸化物、アルカリ土類金属酸化物、アルカリ土類金属アルコキシド、アルカリ土類金属アルミン酸塩、アルカリ土類金属ケイ酸塩及びこれらの組み合わせから選択される塩基性触媒が挙げられる。好ましい実施形態において、均一系エステル交換触媒は、アルカリ金属アルコキシドである。本明細書における「アルコキシド」への言及は、C
1−C
6の直鎖状又は分岐状のアルコキシド、例えば、C
1−C
2のアルコキシドを含む。適切な均一系エステル交換触媒の具体例としては、NaOMe、Na
2CO
3、NaHCO
3、K
2CO
3、KHCO
3及びNa
2SiO
3、好ましくは、NaOMeが挙げられる。
【0083】
以下の反応スキーム5は、塩基が触媒するジメチルカーボネートのエステル交換についての可能な機構を示す。
【0084】
【化6】
【0085】
本発明における使用のために特に好ましいエステル交換触媒は、グリセロールに可溶性のNaOMeである。NaOMeは、本発明の方法において、特に有利であることが見いだされた。具体的には、本発明の方法におけるNaOMeの使用は、短いタイムフレーム内で、比較的低い反応温度で、グリセロールカーボネートへの高レベルの転化率をもたらすことが見いだされた。例えば、本明細書に記載の本方法のステップ(i)におけるグリセロールカーボネートへの90%の転化率は、20分程度の短い反応時間で、ジメチルカーボネート:グリセロールのモル比が2:1で、わずか80℃の反応温度で、観察される。
【0086】
別の態様において、本発明は、
(i)反応器において、均一系エステル交換触媒の存在下で、グリセロールの反応物流を、a)ジアルキルカーボネートの反応物流、及び/又はb)環状アルキレンカーボネートの反応物流と反応させるステップ;並びに
(ii)グリセロールカーボネートの生成物流を得るステップ
を含む、グリセロールカーボネートを製造するための方法であって、均一系エステル交換触媒が、ナトリウムメトキシドである、方法を提供する。好ましくは、反応は、110℃未満、より好ましくは、50℃〜100℃、さらにより好ましくは、70℃〜90℃、最も好ましくは、75℃〜85℃、例えば、80℃の温度で実施される。理解されるように、本明細書の上記に記載の反応物流及び生成物流の性質並びに処理に関するあらゆる好ましい実施形態が、本発明のこの態様に等しく適用される。
【0087】
他の適切なエステル交換触媒としては、イオン液体が挙げられる。本明細書で使用される「イオン液体」という用語は、塩を溶融することによって生成することが可能であって、そのようにして生成されると、イオンのみからなる液体を指す。イオン液体は、1種のカチオン及び1種のアニオンを含む均一な物質から形成されてもよく、又はイオン液体は、2種以上のカチオン及び/又は2種以上のアニオンで構成されてもよい。したがって、イオン液体は、2種以上のカチオン及び1種のアニオンで構成されてもよい。イオン液体は、さらに、1種のカチオン及び1種又は2種以上のアニオンで構成されてもよい。またさらに、イオン液体は、2種以上のカチオン及び2種以上のアニオンで構成されてもよい。
【0088】
「イオン液体」という用語は、高融点を有する化合物及び低融点、例えば、室温以下の融点を有する化合物を含む。したがって、多くのイオン液体は、200℃未満、特に、100℃未満、室温の周辺(15〜30℃)、又はさらには0℃未満の融点を有する。約30℃未満の融点を有するイオン液体は、一般に、「室温イオン液体」と呼ばれ、窒素含有複素環カチオンを有する有機塩にしばしば由来する。室温イオン液体において、カチオン及びアニオンの構造は、規則正しい結晶構造の形成を妨げ、したがって、塩は、室温で液体である。
【0089】
イオン液体は、溶媒として最も広く知られている。多くのイオン液体は、無視できるほどの蒸気圧、温度安定性、低い可燃性及び再利用可能性を有することが示されている。利用可能である膨大な数のアニオン/カチオンの組み合わせに起因して、イオン液体の物理的特性(例えば、融点、密度、粘度、及び水又は有機溶媒との混和性)を、特定の適用への要件に適合するように、微調整することが可能である。
【0090】
本発明における使用のためのイオン液体の均一系エステル交換触媒は、式:
[Cat
+][X
−]
(式中、[Cat
+]は、1又は2以上のカチオン種を表し;及び
[X
−]は、1又は2以上の塩基性アニオン種を表す)
を有する。
【0091】
本発明によれば、[Cat
+]は、アンモニウム、ベンゾイミダゾリウム、ベンゾフラニウム、ベンゾチオフェニウム、ベンゾトリアゾリウム、ジアザビシクロデセニウム、ジアザビシクロノネニウム、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタニウム、ジアザビシクロウンデセニウム、ジチアゾリウム、フラニウム、イミダゾリウム、インダゾリウム、インドリニウム、インドリウム、モルホリニウム、オキサボロリウム、オキサホスホリウム、オキサジニウム、オキサゾリウム、イソオキサゾリウム、オキソチアゾリウム、ホスホリウム、ホスホニウム、フタラジニウム、ピペラジニウム、ピペリジニウム、ピラニウム、ピラジニウム、ピラゾリウム、ピリダジニウム、ピリジニウム、ピリミジニウム、ピロリジニウム、ピロリウム、キナゾリニウム、キノリニウム、イソキノリニウム、キノキサリニウム、キヌクリジニウム、セレナゾリウム、スルホニウム、テトラゾリウム、チアジアゾリウム、イソチアジアゾリウム、チアジニウム、チアゾリウム、イソチアゾリウム、チオフェニウム、トリアジニウム、トリアゾリウム及びイソトリアゾリウムから選択されるカチオン種を含んでいてもよい。
【0092】
本発明の好ましい1つの実施形態において、[Cat
+]は、
[N(R
a)(R
b)(R
c)(R
d)]
+、[P(R
a)(R
b)(R
c)(R
d)]
+及び[S(R
a)(R
b)(R
c)]
+
(式中、R
a、R
b、R
c及びR
dは、C
1−C
30の直鎖状又は分岐状のアルキル基、C
3−C
8シクロアルキル基又はC
6−C
10アリール基から、それぞれ独立して選択され、前記アルキル基、シクロアルキル基又はアリール基は、無置換であるか、又はC
1−C
6アルコキシ、C
3−C
8シクロアルキル、C
6−C
10アリール、C
7−C
10アルカリール、C
7−C
10アラルキル、−CN、−NO
2、−C(S)R
x、−CS
2R
x、−SC(S)R
x、−S(O)(C
1−C
6)アルキル、−S(O)O(C
1−C
6)アルキル、−OS(O)(C
1−C
6)アルキル、−S(C
1−C
6)アルキル、−S−S(C
1−C
6アルキル)、−NR
yR
z又は複素環基(式中、R
x、R
y及びR
zは、水素又はC
1−C
6アルキルから、独立して選択される)から選択される1〜3個の基によって置換されていてもよい)
から選択される非環状カチオンを含む。
【0093】
より好ましくは、[Cat
+]は、
[N(R
a)(R
b)(R
c)(R
d)]
+、[P(R
a)(R
b)(R
c)(R
d)]
+及び[S(R
a)(R
b)(R
c)]
+
(式中、R
a、R
b、R
c及びR
dは、C
1−C
15の直鎖状又は分岐状のアルキル基、C
3−C
6シクロアルキル基又はC
6アリール基から、それぞれ独立して選択され、前記アルキル基、シクロアルキル基又はアリール基は、無置換であるか、又はC
1−C
6アルコキシ、C
3−C
8シクロアルキル、C
6−C
10アリール、C
7−C
10アルカリール、C
7−C
10アラルキル、−CN、−NO
2、−C(S)R
x、−CS
2R
x、−SC(S)R
x、−S(O)(C
1−C
6)アルキル、−S(O)O(C
1−C
6)アルキル、−OS(O)(C
1−C
6)アルキル、−S(C
1−C
6)アルキル、−S−S(C
1−C
6アルキル)、−NR
yR
z又は複素環基(式中、R
x、R
y及びR
zは、水素又はC
1−C
6アルキルから、独立して選択される)から選択される1〜3個の基によって置換されていてもよい)
から選択されるカチオンを含む。
【0094】
さらなる例としては、式中、R
a、R
b、R
c及びR
dは、メチル、エチル、n−プロピル、n−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、n−ノニル、n−デシル、n−ウンデシル、n−ドデシル、n−トリデシル、n−テトラデシル、n−ペンタデシル、n−ヘキサデシル、n−ヘプタデシル及びn−オクタデシルから、独立して選択される。より好ましくは、2又は3以上、最も好ましくは、3又は4以上のR
a、R
b、R
c及びR
dは、メチル、エチル、プロピル及びブチルから選択される。
【0095】
さらにより好ましくは、[Cat
+]は、
[N(R
a)(R
b)(R
c)(R
d)]
+
(式中、R
a、R
b、R
c及びR
dは、上記に定義の通りである)
から選択されるカチオンを含む。
【0096】
好ましいさらなる実施形態において、[Cat
+]は、好ましくは、
[P(R
a)(R
b)(R
c)(R
d)]
+
(式中、R
a、R
b、R
c及びR
dは、上記に定義の通りである)
から選択されるカチオンを含む。
【0097】
本発明による使用のために適切な好ましいアンモニウムカチオン及びホスホニウムカチオンの具体例としては、以下のものが挙げられる。
【0098】
【化7】
【0099】
本発明による使用のために適切なより好ましいアンモニウムカチオンの具体例としては、以下のものが挙げられる。
【0100】
【化8】
【0101】
本発明による使用のために適切なアンモニウムカチオンの特に好ましい例としては、以下のものが挙げられる。
【0102】
【化9】
【0103】
さらなる好ましい実施形態において、[Cat
+]は、電子リッチな硫黄部分又はセレン部分を含むカチオンを含む。例としては、ペンダントのチオール、チオエーテル又はジスルフィド置換基を含む、上記に定義されるカチオンが挙げられる。
【0104】
本発明の別の実施形態において、[Cat
+]は、ベンゾイミダゾリウム、ベンゾフラニウム、ベンゾチオフェニウム、ベンゾトリアゾリウム、ジアザビシクロデセニウム、ジアザビシクロノネニウム、ジアザビシクロウンデセニウム、ジチアゾリウム、イミダゾリウム、インダゾリウム、インドリニウム、インドリウム、オキサジニウム、オキサゾリウム、イソオキサゾリウム、オキサチアゾリウム、フタラジニウム、ピラジニウム、ピラゾリウム、ピリダジニウム、ピリジニウム、ピリミジニウム、キナゾリニウム、キノリニウム、イソキノリニウム、キノキサリニウム、テトラゾリウム、チアジアゾリウム、イソチアジアゾリウム、チアジニウム、チアゾリウム、イソチアゾリウム、トリアジニウム、トリアゾリウム及びイソトリアゾリウムから選択される芳香族複素環カチオン種を含む。
【0105】
より好ましくは、[Cat
+]は、式:
【0106】
【化10】
【0107】
(式中、R
a、R
b、R
c、R
d、R
e、R
f及びR
gは、水素、C
1−C
30の直鎖状又は分岐状のアルキル基、C
3−C
8シクロアルキル基又はC
6−C
10アリール基から、それぞれ独立して選択され、或いは隣接する炭素原子に結合するR
b、R
c、R
d、R
e及びR
fの任意の2個が、メチレン鎖−(CH
2)
q−(式中、qは、3〜6である)を形成し、;前記アルキル基、シクロアルキル基若しくはアリール基又は前記メチレン鎖は、無置換であるか、又はC
3−C
8シクロアルキル、C
6−C
10アリール、C
7−C
10アルカリール、C
7−C
10アラルキル、−CN、−NO
2、−C(S)R
x、−CS
2R
x、−SC(S)R
x、−S(O)(C
1−C
6)アルキル、−S(O)O(C
1−C
6)アルキル、−OS(O)(C
1−C
6)アルキル、−S(C
1−C
6)アルキル、−S−S(C
1−C
6アルキル)、−SC(S)NR
yR
z、−NR
yR
z又は複素環基(式中、R
x、R
y及びR
zは、水素又はC
1−C
6アルキルから、独立して選択される)から選択される1〜3個の基によって置換されていてもよい)を有する。
【0108】
R
aは、好ましくは、C
1−C
30の直鎖状又は分岐状のアルキル、より好ましくは、C
2−C
20の直鎖状又は分岐状のアルキル、さらにより好ましくは、C
2−C
10の直鎖状又は分岐状のアルキル、最も好ましくは、C
4−C
8の直鎖状又は分岐状のアルキルから選択される。さらなる例としては、式中、R
aは、メチル、エチル、n−プロピル、n−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、n−ノニル、n−デシル、n−ウンデシル、n−ドデシル、n−トリデシル、n−テトラデシル、n−ペンタデシル、n−ヘキサデシル、n−ヘプタデシル及びn−オクタデシルから選択される。
【0109】
R
g基を含むカチオンにおいて、R
gは、好ましくは、C
1−C
10の直鎖状又は分岐状のアルキル、より好ましくは、C
1−C
5の直鎖状又は分岐状のアルキルから選択され、最も好ましくは、R
gは、メチル基である。
【0110】
R
a基及びR
g基の両方を含むカチオンにおいて、R
a及びR
gは、それぞれ好ましくは、C
1−C
30の直鎖状又は分岐状のアルキルから、独立して選択され、R
a及びR
gの1つはまた、水素であってもよい。より好ましくは、R
a及びR
gの1つは、C
2−C
20の直鎖状又は分岐状のアルキル、さらにより好ましくは、C
2−C
10の直鎖状又は分岐状のアルキル、最も好ましくは、C
4−C
8の直鎖状又は分岐状のアルキルから、選択されてもよく、R
a及びR
gの他の1つは、C
1−C
10の直鎖状又は分岐状のアルキル、より好ましくは、C
1−C
5の直鎖状又は分岐状のアルキルから選択されてもよく、最も好ましくは、メチル基であり得る。さらに好ましい実施形態において、R
a及びR
gは、存在する場合には、C
1−C
30の直鎖状又は分岐状のアルキル及びC
1−C
15のアルコキシアルキルから、それぞれ独立して選択されてもよい。
【0111】
さらに好ましい実施形態において、R
b、R
c、R
d、R
e及びR
fは、水素、及びC
1−C
5の直鎖状又は分岐状のアルキルから、独立して選択され、より好ましくは、R
b、R
c、R
d、R
e及びR
fは、水素である。
【0112】
本発明のこの実施形態において、[Cat
+]は、好ましくは、
【0113】
【化11】
【0114】
(式中、R
a、R
b、R
c、R
d、R
e、R
f及びR
gは、上記に定義の通りである)
から選択されるカチオンを含む。
【0115】
より好ましくは、[Cat
+]は、
【0116】
【化12】
【0117】
(式中、R
a及びR
gは、上記に定義の通りである)
から選択されるカチオンを含む。
【0118】
また、本発明のこの実施形態によれば、[Cat
+]は、好ましくは、
【0119】
【化13】
【0120】
(式中、R
a、R
b、R
c、R
d、R
e、R
f及びR
gは、上記に定義の通りである)
から選択されるカチオンを含んでいてもよい。
【0121】
本発明によって使用され得る、好ましい窒素含有芳香族複素環カチオンの具体例としては、以下のものが挙げられる。
【0122】
【化14】
【0123】
本発明の別の好ましい実施形態において、[Cat
+]は、環状アンモニウム、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタニウム、モルホリニウム、環状ホスホニウム、ピペラジニウム、ピペリジニウム、キヌクリジニウム及び環状スルホニウムから選択される、飽和複素環カチオンを含む。
【0124】
より好ましくは、[Cat
+]は、式:
【0125】
【化15】
【0126】
(式中、R
a、R
b、R
c、R
d、R
e、R
f及びR
gは、上記に定義の通りである)
を有する、飽和複素環カチオンを含む。
【0127】
さらにより好ましくは、[Cat
+]は、式:
【0128】
【化16】
【0129】
を有する、飽和複素環カチオンを含み、
最も好ましくは、
【0130】
【化17】
【0131】
(式中、R
a、R
b、R
c、R
d、R
e、R
f及びR
gは、上記に定義の通りである)
である。
【0132】
また、本発明のこの実施形態によれば、[Cat
+]は、好ましくは、
【0133】
【化18】
【0134】
(式中、R
a、R
b、R
c、R
d、R
e、R
f及びR
gは、上記に定義の通りである)
から選択される飽和複素環カチオンを含んでいてもよい。
【0135】
上記の飽和複素環カチオンにおいて、R
aは、好ましくは、C
1−C
30の直鎖状又は分岐状のアルキル、より好ましくは、C
2−C
20の直鎖状又は分岐状のアルキル、さらにより好ましくは、C
2−C
10の直鎖状又は分岐状のアルキル、最も好ましくは、C
4−C
8の直鎖状又は分岐状のアルキルから選択される。さらなる例としては、式中、R
aは、メチル、エチル、n−プロピル、n−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、n−ノニル、n−デシル、n−ウンデシル、n−ドデシル、n−トリデシル、n−テトラデシル、n−ペンタデシル、n−ヘキサデシル、n−ヘプタデシル及びn−オクタデシルから選択される。
【0136】
R
g基を含む飽和複素環カチオンにおいて、R
gは、好ましくは、C
1−C
10の直鎖状又は分岐状のアルキル、より好ましくは、C
1−C
5の直鎖状又は分岐状のアルキルから選択され、最も好ましくは、R
gは、メチル基である。
【0137】
R
a基及びR
g基の両方を含む飽和複素環カチオンにおいて、R
a及びR
gは、それぞれ好ましくは、C
1−C
30の直鎖状又は分岐状のアルキルから独立して選択され、R
a及びR
gの1つはまた、水素であってもよい。より好ましくは、R
a及びR
gの1つは、C
2−C
20の直鎖状又は分岐状のアルキル、さらにより好ましくは、C
2−C
10の直鎖状又は分岐状のアルキル、最も好ましくは、C
4−C
8の直鎖状又は分岐状のアルキルから選択されてもよく、R
a及びR
gの他の1つは、C
1−C
10の直鎖状又は分岐状のアルキル、より好ましくは、C
1−C
5の直鎖状又は分岐状のアルキルから選択されてもよく、最も好ましくは、メチル基であり得る。さらに好ましい実施形態において、R
a及びR
gは、存在する場合には、C
1−C
30の直鎖状又は分岐状のアルキル及びC
1−C
15のアルコキシアルキルから、それぞれ独立して選択されてもよい。
【0138】
さらに好ましい実施形態において、R
b、R
c、R
d、R
e及びR
fは、水素、及びC
1−C
5の直鎖状又は分岐状のアルキルから、独立して選択され、より好ましくは、R
b、R
c、R
d、R
e及びR
fは、水素である。
【0139】
本発明によれば、[X
−]は、1又は2以上の塩基性アニオン種を表す。「塩基性」という用語は、(中和する)酸と反応して、塩を形成する能力を有するブレンステッド塩基を指す。[X
−]は、アルキルカーボネート、ハイドロゲンカーボネート、カーボネート、ヒドロキシド、アルコキシド、クロライド、ブロマイド、ナイトレート及びサルフェートから選択される1又は2以上の塩基性アニオンを含んでいてもよい。
【0140】
好ましい実施形態において、[X
−]は、アルキルカーボネート、アルコキシド、ハイドロゲンカーボネート及びカーボネートから選択される。より好ましくは、[X
−]は、アルキルカーボネートから選択される。最も好ましくは、[X
−]は、[MeCO
3]
−である。
【0141】
本発明における使用のための特に好ましいイオン液体のエステル交換触媒は、[N
2221][MeCO
3]に相当する。このエステル交換触媒は、本発明の方法において、特に良好なグリセロール転化率及びグリセロールカーボネートの収率/選択性を与えることが見いだされた。
【0142】
別の態様において、本発明は、
(i)反応器において、均一系エステル交換触媒の存在下で、グリセロールの反応物流を、a)ジアルキルカーボネートの反応物流、及び/又はb)環状アルキレンカーボネートの反応物流と反応させるステップ;並びに
(ii)グリセロールカーボネートの生成物流を得るステップ
を含む、グリセロールカーボネートを製造するための方法であって、均一系エステル交換触媒が、[N
2221][MeCO
3]であるイオン液体である、方法を提供する。理解されるように、本明細書の上記に記載の反応物流及び生成物流の性質並びに処理に関するあらゆる好ましい実施形態が、本発明のこの態様に等しく適用される。
【0143】
他の適切な均一系エステル交換触媒としては、機能を果たす能力がある、非環状有機アミン(すなわち、1級、2級又は3級アミン)、及び環状アミン(脂肪族又は芳香族)が挙げられる。当業者であれば、反応混合物中のアミンの存在が、ジアルキルカーボネートによるアルキル化などの望ましくない副反応の可能性を増加させることを理解するであろう。それにもかかわらず、この性質の副反応は、立体障害のある脂肪族アミン及び/又は3級アミン/芳香族アミンを利用すると、最小化される。本明細書における「立体障害のある」脂肪族アミンへの言及は、i)窒素原子が、イソプロピル基、tert−ブチル基、又は環状の芳香族若しくは複素環基に、直接又は単一の炭素原子リンカーを介して結合している、非環状アミン;或いはii)環上の窒素原子が、2個のC
1−C
6アルキル置換基を有する、少なくとも1個の炭素環原子と隣接し、好ましくは、窒素原子が、1個又は2個のC
1−C
6アルキル置換基を有する、第2の炭素環原子とも隣接している、環状アミン、のいずれかを意味することを意図する。
【0144】
有機アミンの例としては、tert−ブチルアミン、イソプロピルアミン、トリエチルアミン、ジ−tert−ブチルアミン、ジイソプロピルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、ジシクロヘキシルアミン、ジベンジルアミン、ベンジルジメチルアミン、ジアセチルクロロベンジルアミン、ジメチルフェネチルアミン、1−ジメチルアミノ−2−フェニルプロパン、N,N,N’−トリ−tert−ブチルプロパンジアミンが挙げられる。
【0145】
環状アミンの例としては、ピリジン、ピロール、ピロリジン、ピペリジン、イミダゾール及びこれらのC
1−C
4アルキル置換誘導体が挙げられる。好ましい立体障害のある環状アミンとしては、2〜6個のC
1−C
4アルキル置換基、好ましくは、2〜4個のC
1−C
4アルキル置換基を有し、少なくとも2個のアルキル置換基が、環の窒素原子に隣接する炭素原子上に位置する、置換ピペリジン誘導体が挙げられる。好ましいC
1−C
3アルキル置換ピペリジンとしては、1,2,6−トリメチルピペリジン、2,2,6−トリメチルピペリジン、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、2,2,4,6−テトラメチルピペリジン、2,2,6,6−N−ペンタメチルピペリジンが挙げられる。
【0146】
本発明によるエステル交換触媒としての使用のために特に好ましい環状アミン化合物は、2,2,4,6−テトラメチルピぺリジン(TMDH−ピぺリジン、CAS番号6292−82−6)である。
【0147】
【化19】
【0148】
上記の立体障害のある置換ピペリジン、特に、TMDH−ピペリジンは、予想外にも、本発明の方法において、特に良好なグリセロール転化率及びグリセロールカーボネートの収率/選択性を与えること、並びに優れた安定性も奏することが見いだされた。これらの性質はまた、従来技術で公知の、慣用の均一系エステル交換触媒よりも改善されていると考えられる。
【0149】
別の態様において、本発明は、
(i)反応器において、均一系エステル交換触媒の存在下で、グリセロールの反応物流を、a)ジアルキルカーボネートの反応物流、及び/又はb)環状アルキレンカーボネートの反応物流と反応させるステップ;並びに
(ii)グリセロールカーボネートの生成物流を得るステップ
を含む、グリセロールカーボネートを製造するための方法であって、均一系エステル交換触媒が、2〜6個のC
1−C
4アルキル置換基を有する置換ピペリジン誘導体であり、アルキル置換基の少なくとも2個が、環の窒素原子に隣接する炭素原子上に位置する、方法を提供する。好ましくは、均一系エステル交換触媒が、1,2,6−トリメチルピペリジン、2,2,6−トリメチルピペリジン、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、2,2,4,6−テトラメチルピペリジン及び2,2,6,6−N−ペンタメチルピペリジンから選択される。最も好ましくは、均一系エステル交換触媒は、2,2,4,6−テトラメチルピペリジン(TMDH−ピペリジン、CAS番号6292−82−6)である。
【0150】
理解されるように、本明細書の上記に記載の反応物流及び生成物流の性質並びに処理に関するあらゆる好ましい実施形態が、本発明のこの態様に等しく適用される。