(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1の期間及び/又は前記第2の期間は、10ミリ秒、50ミリ秒、0.1秒、0.5秒、1秒、5秒、10秒、又は50秒、よりも長い、請求項1又は2に記載の方法。
前記第1の期間及び前記第2の期間は等しい長さであり、且つ/或いは、前記第1の期間における前記電圧差の絶対値及び前記第2の期間における前記電圧差の絶対値はどちらも一定であり且つ同じである、請求項1乃至3のいずれかに記載の方法。
前記アクチュエーションは、駆動期間内の連続したアクチュエーションであり、前記駆動期間は、複数の前記第1の期間のうちの1つ以上と複数の前記第2の期間のうちの1つ以上とを有し又はそれらからなる、請求項1乃至6のいずれかに記載の方法。
前記アクチュエーションが、50%、20%、10%、5%、2%、1%、及び0%からなる群から選択された値よりも大きく変化しないように、前記第1の電気駆動信号及び前記第2の電気駆動信号が互いに続く、請求項7に記載の方法。
前記アクチュエーションは、少なくとも休止期間によって相互に分離された、第1の連続アクチュエーション及び第2の連続アクチュエーションを有し、前記第1の電気駆動信号は、前記第1の連続アクチュエーションに寄与し、前記第2の電気駆動信号は、前記第2の連続アクチュエーションに寄与する、請求項1乃至6のいずれかに記載の方法。
複数の第1の連続アクチュエーション及び複数の第2の連続アクチュエーションのため、1つ又は複数の第1の電気駆動信号が、1つ又は複数の第2の電気駆動信号に続かれ、及び/又はその逆であり、複数の第1の電気駆動信号は所定数とすることができる、請求項10に記載の方法。
コンピュータ読み取り可能媒体上に格納された若しくは格納可能な、又は通信ネットワークからダウンロード可能な、コンピュータ読み取り可能なコードを有するコンピュータプログラムであって、前記コードは、コンピュータ上で実行されるときに、請求項1乃至12のいずれかに記載の方法の実行を起こすことができる又は起こす、コンピュータプログラム。
前記ドライバは、連続したアクチュエーション駆動期間内に少なくとも1回、前記電気駆動信号を第1の電気駆動信号から第2の電気駆動信号に又はその逆に切り換える、請求項14に記載のデバイス。
少なくとも前記第1電極は、2つの異なる電極セグメントを有し、前記ドライバは、複数の電気駆動信号のうちの別々の電気駆動信号を提供し、前記異なる電極セグメントは、前記複数の電気駆動信号のうちの前記別々の電気駆動信号を受け取って、前記電気活性ポリマー構造の複数の異なる部分に前記電圧差を生じさせるように構成される、請求項15に記載のデバイス。
前記電極構成及び前記電気活性ポリマー構造は、アクチュエーションユニットを包含し、当該デバイスは、複数のアクチュエーションユニットのうち、各々がそのアクチュエーションを当該デバイスの同じアクチュエーション出力に与える少なくとも2つの別々のアクチュエーションユニットを有し、前記ドライバは、前記少なくとも2つの別々のアクチュエーションユニットのうちの異なるものに、前記複数の電気駆動信号のうちの別々の電気駆動信号を提供する、請求項15に記載のデバイス。
前記ドライバは、前記複数の電気駆動信号のうちの異なる電気駆動信号についての前記第1の電気駆動信号から前記第2の電気駆動信号への前記切り換えが位相ずれとなるように、前記複数の電気駆動信号のうちの異なる電気駆動信号を提供する、請求項16又は17に記載のデバイス。
前記ドライバは、連続アクチュエーション駆動期間同士の間と、1つ以上の第1の電気駆動信号の後及び/又は1つ以上の第2の電気駆動信号の後とに、第1の電気駆動信号を第2の電気駆動信号に又はその逆に切り換える、請求項14又は15に記載のデバイス。
当該デバイスは、プロセッサ及びメモリを有し、該メモリは、請求項13に記載のコンピュータプログラムを格納しており、該プロセッサは、前記コンピュータプログラムを実行する、請求項14乃至20のいずれかに記載のデバイス。
【発明の概要】
【0004】
本発明者が見出したことには、EAPに基づくアクチュエータでは、長期間及び/又は頻繁な期間のアクチュエーションを必要とする用途で使用されるとき、アクチュエーションは経時的に一定でなく、且つ/或いは、デバイスのその後の異なる
作動期間の、駆動対作動カーブが経時的に変化する。これは、アクチュエータの実際的な適用を妨げる。
【0005】
故に、上述の問題を抑制又は除去するための改善されたアクチュエータ及びそのようなアクチュエータの動作方法が望まれる。
【0006】
この目的は、少なくとも部分的に、独立請求項によって規定される発明を用いて達成される。従属請求項が有利な実施形態を提供する。
【0007】
本発明によれば、故に、アクチュエーション方法、及びそのアクチュエーション方法を用いるアクチュエーションデバイスが提供され、そこでは、一度のアクチュエーションイベント(単一の連続アクチュエーション)の中で、及び/又は引き続くアクチュエーションイベント(少なくとも休止期間によって分離された複数の連続アクチュエーションイベント)に関して、駆動信号又はアクチュエーション信号の極性の周期的な反転が使用される。
【0008】
周期的な反転が意味することは、異なるアクチュエーション期間において、及び/又は異なるアクチュエーションイベントにおいて、EAP内の電界が材料中で反対の方向を持つようにされることができるよう、EAPを横切る“反対極性”の電圧差を生じさせる駆動信号が、EAP構造に提供されることができる、又は提供される、ということである。第2の極性が負であるように第1の極性は正とすることができ、あるいはその逆である。電極間の電圧差の極性は、EAP構造のEAP材料の少なくとも一部に印加される電界の向きを定める。本発明によって規定されるような反転駆動を上述の問題を抑制するために使用することができることは、本発明者の以下の認識に基づく。
【0009】
・EAPアクチュエータは、それらを駆動/作動させるために、1ミクロンのEAP層厚さ当たり何十ボルトというオーダーの高電界を必要とすることが多く、これらの高アクチュエーション電界が、例えば電界依存電荷輸送及びポリマー構造緩和効果などの幾つかの干渉プロセスが実際の駆動/作動のプロセスの次に発生する原因となる。
【0010】
・EAPアクチュエータのアクチュエーションは、(電圧差レベルに関係する)電界の大きさのみに応答し、その向きには応答しないが、上述の問題を引き起こす干渉プロセスは、全てではないにしても多くが、電界の大きさと電界の向きとの双方に依存する。本発明では、この違いを有利に用いて、干渉プロセスの影響を抑制又は除去する。
【0011】
故に、本発明は、駆動中又は駆動間に電圧極性を反転させることを規定するが、それと同時に、EAP構造のアクチュエーションは、電圧差の極性とは独立した作動方向を持つ。結局のところ、ここで既に上述したように、アクチュエーションは電界の大きさのみに依存し、電界の向き(極性によって決定される)には依存しない。本発明は、対称的なアクチュエーション挙動、すなわち、同じ電極に提供される異なる電圧極性の駆動信号に対しても同じ向きのアクチュエーション、を示すデバイスに対して良好に機能する。
【0012】
故に、本発明では、アクチュエータを横切る電界によって駆動されて発生される、アクチュエータ(特に、EAP)内での荷電種又は双極種の運動及び/又は(極性)種(分子又は分子部分)の(再)配向の影響を、抑制又は防止することができる。(半永久的な)荷電種層又は分極種層の構築は、印加アクチュエーション電界をますます遮蔽することによって、アクチュエータデバイス動作に影響を及ぼす(例えば、同じアクチュエーションを達成するのに必要な電圧を高くする)ことがあるが、本発明では、これを抑制することができ又は防止さえすることができる。また、アクチュエータの休止状態(例えば、非アクチュエーション駆動信号の印加時、又は換言すれば、アクチュエーション信号の印加なし)での意図せぬアクチュエーションが、半永久的な荷電種の蓄積又はEAP分子、イオン若しくはその他の種の再配向によって引き起こされるという影響を、抑制又は防止することができる。さらに、機械的動作及び磨耗や、恐らくは欠陥位置での荷電種の蓄積及び捕獲によって引き起こされるアクチュエータの経年劣化及び電気絶縁破壊の影響を、抑制又は防止し得る。重要なことに、上述の利点のうちの1つ以上を、必要とされるデバイスのアクチュエーションを損なうことなく、少なくとも部分的に達成することができる。
【0013】
本発明の状況内では、電気駆動信号は、複数の電圧信号レベルを持つ電圧信号(電圧駆動)又は複数の電流信号レベルを持つ電流信号(電流駆動)とすることができる。電流信号は、付随する電圧差を電極間に伴うことになる。電極構成に提供されるとき、電気駆動信号は、電極構成の電極間に電圧差を生じさせ、それが代わって、EAPの少なくとも一部にかかる電界を生じさせる。定義により、(1つの基準に対して)正のみ又は負のみの電圧を持つ電圧差を電極に生じさせる電気駆動信号に関し、その駆動信号及び関連する電圧差は単極性(ユニポーラ)であると定義される。同様に、反対極性の電圧差を生じさせる駆動信号に関し、その駆動信号及び関連する電圧差は双極性(バイポーラ)であると定義される。0Vの駆動信号及び電圧差は、正でも負でもないので、極性を持たないと定義される。
【0014】
電気駆動信号は、第1の期間において第1電圧極性(例えば、電極のうち1つに対して正)を生じさせる第1の電気駆動信号と、第2の期間において第2電圧極性(例えば、電極のうち同じ1つに対して負)を生じさせる第2の電気駆動信号とを有する。故に、本発明の駆動信号は、或るアクチュエーションイベント又は期間において、及び/又は、動作の或る期間中の又はデバイスのアクチュエーション寿命の少なくとも一部中の複数の引き続くアクチュエーションイベント中に、電極にかかる電圧差が双極性であるようなものである。故に、駆動信号の完全な又は部分的な反転により、妨害的な上述のメカニズムの悪影響の一部又は全てに対処することができる。
【0015】
アクチュエータはEAP構造を有し、EAP構造は、非作動状態と、当該EAP構造への電気駆動信号の印加によって達成可能な少なくとも1つの作動状態(非作動状態とは異なる)とを定める。作動状態は、駆動信号の印加を受けて変形するというEAP構造の傾向により、構造によって提供される力(圧力)及び/又はストロークとし得る機械的作動の形態をしたアクチュエーションを提供する。
【0016】
電気駆動信号は、駆動信号を印加するための1つ以上の電極を持つ電極構成を用いてEAP構造に提供される。電極はセグメント化されることができる。EAP材料は、電極構造の電極間(例えば、電極間に挟み込まれる)とし得る。それに代えて、電極は、EAP材料の同じ側にあってもよい。いずれの場合も、電極は、間に如何なる(受動)層もなしで直接的に、又は間に追加の(受動)層ありで間接的に、のいずれかでEAP材料に物理的に取り付けられることができる。しかし、これは常にそうである必要はない。例えば、リラクサ又はパーマネント圧電若しくは強誘電EAPでは、電極との直接的な機械的接触は必要ない。これらのケースでは、電極がEAPに電界を提供することができる限り、EAPの近傍にある電極で十分である。しかしながら、EAPとしての誘電エラストマーでは、電極に印加される電界が、EAPを変形させる力をEAPに加えることができるように、電極がEAP材料に物理的に接触する(例えば、取り付けられるなど)必要がある。故に、電極は、電気活性ポリマー構造の一部とすることができる。
【0017】
本発明において、所定の時間インターバルにわたる電圧差の積分の絶対値と、第2の期間にわたる電圧差の積分の絶対値とが、同じであるとすることができる。従って、電界強度が第1及び第2の期間中に同じに保たれる。同じとは、10%未満、5%未満、しかし好ましくは1%未満の偏差内にあることを意味することができる。このデバイスでは、故に、ドライバは、一方の極性を持つ電界(1つの極性を持つ電圧)が、反対の極性を持つ電界(他方の極性を持つ電圧)と、時間積分された同じ電界強度を持つように、電気駆動信号を生成する又は切り換えるように適応され得る。これが意味することは、長期的な電荷不均衡を最小化するために、時間にわたる全体的な電界が2つの極性で同じにされるということである。斯くして、EAP内の電荷、双極子及びその他の欠陥の、全体として中性な動きが達成され得る。
【0018】
本発明において、第1の期間及び/又は第2の期間は、10ミリ秒、50ミリ秒、0.1秒、0.5秒、1秒、5秒、10秒、50秒からなる群から選択される期間よりも長いとすることができる。特に、このような長めのアクチュエーションに関して、本発明は良好な効果を有することになる。EAP構造の動作電圧を制限するため、電極間のそれらの寸法(例えば、厚さ)は、好適な上限を有する。好ましくは、極性反転は、その場合、電極間の規定された寸法のEAP層を横切って電荷が移動するタイムスケールに基づき得る。故に、本発明において、第1の期間及び/又は第2の期間は、10ミリ秒から10秒の範囲内にある。従って、EAP層内の電荷は、そのような時間では、1つの電極から別の電極まで完全に横切って完全な電荷分離を与えることはできず、これが、反対極性の電圧差信号を用いた補償を支援する。
【0019】
本発明において、第1の期間及び第2の期間は等しい長さとすることができ、且つ/或いは、第1の期間における電圧差の絶対値及び第2の期間における電圧差の絶対値はどちらも一定であり且つ同じであるとすることができる。従って、双方の極性のパルスのデューティサイクルが、より似たもの又は更には同じにされ、良好な補償効果を与えるために、各極性のパルスの数をバランスさせるのみでよい。この効果は、一方の極性の電界が、反対の極性の電界と同じ電界強度を持つときに更に良好になる。斯くして、双方の極性でEAPの同じアクチュエーションが達成され得る。後者の特徴はまた、アクチュエーションの強さが同じであるので、反転駆動スキームによって誘起される振動がいっそう制限され得るという効果も持つ。
【0020】
本発明において、第1の期間中の電圧差は一定であり、第2の期間中の電圧差は一定である。この場合、補償のために正及び負の極性のパルスのバランスを最適化することには、第1の期間及び第2の期間の形態の継続時間、又は第2の期間当たりの第1の期間の数のみを調整すればよい。
【0021】
本発明において、第1の電気信号及び/又は第2の電気信号は各々、複数の異なる電圧差を定める複数の異なる信号レベルを有することができる。故に、ドライバは、各極性について、シングルレベル信号又はマルチレベル信号を生成するように適応され得る。マルチレベル駆動信号は、アクチュエータが中間状態に駆動されることを可能にするために使用され得る。これは、アクチュエーションのための、より複雑な信号使用を可能にする。好ましくは、第1の期間内の経時的な電圧差の絶対値のカーブの形状は、第2の期間内の経時的な電圧差の絶対値のカーブの形状と同じである。後者は、異なる信号レベルの使用であるが、反対の極性の電圧差の間に同じ電気信号露出を与える信号のペアリングを通じて制御された補償を可能にする。
【0022】
上述の駆動方法を遂行するため、ドライバは、第1及び第2の電気駆動信号である電気駆動信号を然るべく生成する及び/又は切り換えるように適応され得る。従って、方法の特徴を達成するように適応されたドライバを有するデバイスは、方法の特徴のうちの1つ以上に関連付けて説明したのと同じ利点を持つことになる。
【0023】
本発明において、アクチュエーションは好ましくは、駆動期間内の連続したアクチュエーションであり、駆動期間は、複数の第1の期間のうちの1つ以上と複数の第2の期間のうちの1つ以上とを有し又はそれらからなる。連続したアクチュエーションは、単一のアクチュエーションイベントである。故に、電気駆動信号は、連続したアクチュエーションの駆動期間内に少なくとも第1の電気駆動信号及び第2の電気駆動信号を含むように設計される。斯くして、単一のアクチュエーションのための電気駆動信号は、自己補償するものとなることができる。故に、アクチュエーションの第1の電気信号によって誘起されたEAP材料内の電荷不均衡が、駆動期間内の第2の電気駆動信号によって補償され得る。故に、次の単一アクチュエーションは、補償された状況から開始する。補償は、第1及び/又は第2の電気信号を規定する先述の方法で行われることができる。故に、これが意味することは、各アクチュエーションサイクルの終わりに電荷分離がないのに近いようにすることができるということである。単一のアクチュエーションサイクル内の各極性のフェイズの数は等しいとし得る。
【0024】
単一アクチュエーションイベントに適用される本発明において、第1の電気駆動信号から第2の電気駆動信号への変化又はその逆の変化を受けて、アクチュエーションが、50%、20%、10%、5%、2%、1%、及び0%からなる群から選択される値よりも大きく変化しないように、好ましくは第1の電気駆動信号及び第2の電気駆動信号が互いに続く。第1の電気信号から第2の電気信号への切り換え又はその逆の切り換えが速いほど、一般に、より小さいアクチュエーション状態の変化が生じることになる。従って、補償中にアクチュエーションがより正確なままであることができ、振動を最小化することができる。
【0025】
単一アクチュエーションイベントに適用される本発明において、駆動信号は、第1の複数の第1の電気駆動信号と第2の複数の第2の電気駆動信号とを有することができ、第1及び第2の複数の駆動信号が一緒になって、第1の電気駆動信号と第2の電気駆動信号とが時間的に交互に起こる交番信号を形成する。故に、駆動期間内に交番信号が存在する。故に、EAPは、補償を与える交番信号駆動を用いて安定なアクチュエーション状態に駆動されることができる。駆動期間当たりの交番回数は可能な限り高いことが好ましい。それは、例えば、5、10、50、100、500、1000、5000、10000以上とし得る。切り換えの周波数は、EAP構造(電極あり又はなし)の機械的緩和よりも高くし得る。典型的なEAPアクチュエータは静的から準静的に(限定された振幅ではあるが)kHz域に至る周波数で機械的に作動され得るので、好適な駆動信号反転周波数は、この周波数の少なくとも2倍であり、そして、より好ましくはもっと高い(例えば5、10、50、100、又は更には500倍高い)。
【0026】
複数の別々のアクチュエーションイベントに適用される本発明において、アクチュエーションは、少なくとも休止期間によって相互に分離された、第1の連続アクチュエーション及び第2の連続アクチュエーションを有することができ、第1の電気駆動信号(第1の期間に発生する)は、第1の連続アクチュエーションに寄与し、第2の電気駆動信号(第2の期間に発生する)は、第2の連続アクチュエーションに寄与する。ここでもやはり、連続アクチュエーションは、単一のアクチュエーションイベント、すなわち、少なくとも期間中にゼロ作動まで戻らないアクチュエーションイベントを意味する。休止期間はアクチュエーションなしの期間である。
【0027】
本発明において、複数の第1の連続アクチュエーション及び複数の第2の連続アクチュエーションのため、1つ又は複数の第1の電気駆動信号が、1つ又は複数の第2の電気駆動信号に続かれ、及び/又はその逆である。複数の第1の電気駆動信号は所定数とすることができる。故に、斯くして、複数の第1又は第2の電気信号の後に極性が切り換えられる。極限では、デバイスの寿命中に1回のみの極性の切り換えが存在し得る。あるいは、より好ましくは、例えば各連続アクチュエーション(信号)の後など、より頻繁に極性が切り換えられる。斯くして、デバイスが制御信号によってアドレスされる度に極性変化が発効されるので、電荷蓄積が抑制される。
【0028】
本発明において、この方法は、
所定の時間インターバル内の1つ以上の第1の電気駆動信号について、以下の特性:
それらの個数、
1つ以上の信号レベル、
1つ以上の第1の駆動期間、
時間にわたる電圧差の1つ以上の積分、
のうちの1つ以上を決定し、
決定された特性のうちの1つ以上に応じて、所定の時間インターバルに続く1つ以上の第2の電気駆動信号についての同じ特性のうちの1つ以上を調整する、
ことを有することができる。
【0029】
故に、改善された補償のために任意の一時点において将来の信号を能動的に規定することは、歴史的なアクチュエーションのフィードバックに基づくことができる。従って、変化する状況に合わせて変化するアクチュエーションが必要とされるときであっても、補償を行うことができる。これは、数多くのデバイスへの本発明の適用を容易にする。デバイスは、コンピュータと、上述の歴史的なアクチュエーションデータのうち1つ以上を格納するメモリとを有することができる。
【0030】
コンピュータ読み取り可能媒体上に格納された若しくは格納可能な、又は通信ネットワークからダウンロード可能な、コンピュータ読み取り可能なコードを有するコンピュータプログラムプロダクトであって、上記コードは、コンピュータ上で実行されるときに、請求項1乃至12のいずれかに記載の方法の実行を起こすことができる又は起こす。本発明の方法は、アクチュエーションデバイスのドライバを制御して、アクチュエーションデバイスのEAP構造に所望通りに挙動させることができるソフトウェアにて実装され得る。
【0031】
上述したように、本発明は、
第1電極(10)及び第2電極(12)を有する電極構成(10及び12)であり、電気駆動信号を受け取り、それを用いて第1電極と第2電極との間に電圧差を生じさせる電極構成と、
電圧差に応答してアクチュエーションを提供する電気活性ポリマー構造(14)と、
電極に電気駆動信号を与えるドライバ(20)と、
を有し、
電気駆動信号は、
第1の期間中の第1の電気駆動信号であり、第1の期間において電圧差に第1極性を持たせる第1の電気駆動信号と、
第1の期間とは異なる第2の期間における第2の電気駆動信号であり、第2の期間において電圧差に第1極性とは異なる第2極性を持たせる第2の電気駆動信号と
を有する、
アクチュエータデバイスにて実装され得る。このデバイスは、本発明の方法を実行することができるので有利である。デバイスのドライバは、ここで先に規定した電気駆動信号の全てを提供するように構成される。従って、方法ステップの全ての特徴を使用して、デバイスのドライバを規定することができる。また、このデバイスは、材料劣化の悪影響が補償されるので、より正確なアクチュエーション及び/又はより長い寿命を有することになる。
【0032】
本発明のデバイスにおいて、ドライバは、連続したアクチュエーション駆動期間内に少なくとも1回、電気駆動信号を第1の電気駆動信号から第2の電気駆動信号に又はその逆に切り換えることができる。対応する方法クレームに関してと重ねてとなるが、これが意味ことは、各アクチュエーションサイクルの終わりに電荷分離がないのに近いようにすることができるということである。これは、それらのアクチュエーションイベントが同じであるか異なるかにかかわらず、全ての別々のアクチュエーションイベントの中で補償が行われ得るので、非常に改善された使用の自由度を提供する。単一のアクチュエーションサイクル内の各極性のフェイズの数は等しいとし得る。
【0033】
本発明のデバイスにおいて、少なくとも第1の電極は、2つの別々の電極セグメントを有することができ、ドライバは、複数の電気駆動信号のうちの別々の電気駆動信号を提供し、別々の電極セグメントは、複数の電気駆動信号のうちの別々の電気駆動信号を受け取って、電気活性ポリマー構造の複数の異なる部分に電圧差を生じさせるように構成される。故に、別々の電極セグメントは、個別にアドレス可能とし得る。このようなデバイスでは、EAP構造のアクチュエーションがEAP構造の複数の異なる部分に分割され、それらの部分間で切り換えを異ならせることを用いて、切り換えに伴って導入される歪みを最小化することができる。複数の電気駆動信号のうちの別々の電気駆動信号は、同じである必要はないが、多くのケースで同じである。いずれの場合にも、それらは、別々の信号のうちの一方の少なくとも第1の期間が、別々の信号のうちの他方の1つの第2の期間と、時間的に部分的又は全体的に重なるように、電極に提供されなければならない。故に、電極構成は、各々が電気活性ポリマー層の異なる部分に電界を印加する少なくとも2つのセグメントを有することができ、ドライバは、それら少なくとも2つのセグメントに反対極性の信号を印加するように適応される。このアプローチは、単一のアクチュエーションイベント駆動信号内での切り換え(故に、交番信号とし得る)から生じる望ましくない変形変化を抑制し得る。
【0034】
連続したアクチュエーションイベントに関する本発明において、電極構成及び電気活性ポリマー構造は、アクチュエーションユニットを包含し、デバイスは、複数のアクチュエーションユニットのうち、各々がそのアクチュエーションを当該デバイスの同じアクチュエーション出力に与える少なくとも2つの別々のアクチュエーションユニットを有し、ドライバは、少なくとも2つの別々のアクチュエーションユニットのうちの異なるものに、複数の電気駆動信号のうちの別々の電気駆動信号を提供する。複数のアクチュエーションユニットのうちの別々のアクチュエーションユニットは同じであってもなくてもよい。それらはどちらも、曲がるアクチュエーションユニット、又は線形膨張アクチュエーションユニット、又はこれらの混ぜ合わせとし得る。2つよりも多いこのようなユニットが存在してもよい。複数の電気駆動信号のうちの別々の電気駆動信号は、ここでもやはり、セグメント化された電極デバイスについて説明したように、位相のずれた駆動及び/又は切り換えを与え得る。従って、これらのユニットのうちの1つの切り換え中に、そのアクチュエーション出力の減少又は喪失が、他のユニットの出力によって引き継がれ又は補償されて、この単一のデバイス出力が最小限にしか影響されないようにし得る。
【0035】
複数セグメント又は複数アクチュエーションユニットデバイスにおいて、ドライバは、複数の電気駆動信号のうちの異なる電気駆動信号についての第1の電気駆動信号から第2の電気駆動信号への切り換えが位相ずれとなるように、複数の電気駆動信号のうちの異なる電気駆動信号を提供することができる。第1の電気駆動期間から第2の電気駆動期間への変更又はその逆の変更の瞬間が、異なるセグメント又はアクチュエーションユニットで異なる場合、そのような切り換えを受けてアクチュエーション安定化が向上される。
【0036】
ドライバは、連続アクチュエーション駆動期間同士の間と、1つ以上の第1の電気駆動信号の後及び/又は1つ以上の第2の電気駆動信号の後とに、第1の電気駆動信号を第2の電気駆動信号に又はその逆に切り換えることができる。一例において、ドライバは、複数の第1の電気駆動信号の後及び/又は複数の第2の電気駆動信号の後に極性を切り換えるように適応される。極限では、デバイスの寿命中に1回のみの極性の切り換えが存在し得る。より好ましくは、ドライバは、例えば各連続アクチュエーション(信号)の後など、より頻繁に極性を切り換えるように適応される。斯くして、デバイスが制御信号によってアドレスされる度に極性変化が発効されるので、電荷蓄積が抑制される。
【0037】
ドライバは、
電気駆動信号に使用される第1極性の電気信号及び第2極性の電気信号を生成する電源、又は
電気駆動信号に使用される少なくとも第1極性の電気信号又は少なくとも第2極性の電気信号を生成する電源と、電極構成への電気駆動信号の結合を切り換えるスイッチング構成、
を有することができる。結合の切り換えを用いて、第1極性から第2極性への切り換え、又はその逆の切り換えを達成することができる。
【0038】
ドライバは、反対の極性の信号を生成する信号発生器を有し得る。それに代えて、ドライバは、単一極性の信号を生成する信号発生器と、ドライバ出力を電極構成に結合する切り換え構成とを有していてもよい。これらは、反対極性の信号をEAP層に提供するための選択的な方法を提供する。切り換えユニットが使用されるとき、単純化された安価な信号発生器を使用することができる。
【0039】
本発明のデバイスは、プロセッサ及びメモリを有し、メモリは、本発明のコンピュータプログラムプロダクトを格納し、プロセッサは、コンピュータプログラムプロダクトを実行してドライバを制御する。プロセッサは、中央演算処理ユニットなどの半導体プロセッサとすることができる。メモリは、プロセッサによってアクセスされることが可能な如何なる種類のRAM又はROMメモリともし得る。
【0040】
システム又はデバイスに関して記載された変更のため手段が、対応する方法を変更するために使用されてもよい。そのような変更は、特許請求される又は説明されるシステム又はデバイスに関して説明されたのと同じ利点を有し得る。
【発明を実施するための形態】
【0042】
本発明は、駆動信号が印加される電極にわたる電圧差を反転させる(電圧の極性を変える)ことによって、EAP上の印加電界の向きを反転させることを伴い、電極は、電気活性ポリマー構造の少なくとも一部に電界を提供することができるように構成される。反転は、デバイスの動作寿命中に少なくとも1回行われる。極限では、デバイスの寿命全体の中ほどで1回のみの電圧極性変更が存在する。好ましくは、本発明のより実際的な実装では、デバイスの寿命中に複数回、反転が実行される。このようなことは、デバイスの寿命中に規則的な時間間隔で、又はデバイスの特定の(所定の、又は駆動履歴フィードバックに基づく)期間又はアクチュエーションサイクルの中で行われ得る。反転は、別々のアクチュエーションイベント間に、及び/又はアクチュエーションイベント内で行われることができる。特定のデバイスに必要とされる反転及び駆動信号の数は、デバイスの駆動−アクチュエーション出力カーブのドリフト挙動と、デバイスの使用中のアクチュエーション状況とに依存することになる。駆動はそのデバイスに合わせてチューニングされることができる。これは、ドリフト特性を観察するために、ユニポーラ(単一の極性の電圧差)駆動信号スキームでデバイスを駆動することと、次いで、本発明に従ったバイポーラ(異なる極性の電圧差を使用する)駆動スキームを使用することによって駆動を調節及びチューニングすることとを必要とし得る。そして、チューニングが行われて、それにより、バイポーラ駆動スキームが、ユニポーラ駆動信号スキームで得られるようなものであるが、駆動−作動カーブのドリフトが抑制された又は更には存在しないものである望ましい機械的アクチュエーションを提供するようにされる。較正は、デバイスの実際の使用中に使用されるルックアップテーブルに格納されることができる。本発明に従った数多くのバイポーラ駆動信号スキームを使用することができるが、ここでは、それらのうちの一部のみを、本発明をより詳細に説明するために以下に記述する。駆動信号及び駆動スキームを提供するドライバは、選択されたEAPに(電圧差を通じて)電界を提供するのに適したものである限り、電圧ドライバであってもよいし、電流ドライバであってもよい。ここでは、幾つもの好適なEAPについても後述する。
【0043】
本発明は、EAP材料を含んだ電気活性ポリマー構造を持つアクチュエータデバイスに適用可能であり、この構造は、EAP材料の少なくとも一部が電気駆動信号にかけられることで機械的アクチュエーションを提供することができる。この機械的アクチュエーションは、電気駆動信号が印加されたときにEAPが構造を変形させることができることに基づく。数多くの異なるそのような構造及びデバイスを考案することができるが、ここでは、幾つかの例示的なもののみを以下に記述する。そうとはいえ、本発明は、電圧を用いて駆動されて同様の緩和効果を示す全てのEAPベースアクチュエータ又はその他のポリマーアクチュエータに適用されることができる。
【0044】
図1及び2は、本発明に従ったアクチュエータデバイスにて使用されることができる例示的なEAPベースのアクチュエータ構造を示している。ドライバを含む例示的なアクチュエータデバイスを
図3に示す。
【0045】
図1及び2の構造は、本出願の導入部にて記述されており、
図3は、EAP層14に取り付けられた電極10と12との間に挟み込まれた、構造にわたって一定の厚さのEAP層14の形態をしたアクチュエーション構造を持つデバイスを示している。それは、
図1及び
図2の構造のうちのいずれか1つ又は必要に応じてその他のものとすることができる。このケースでは、電極構成はEAP構造の一部であり且つEAP構造に取り付けられているが、常にそうである必要はない。このケースにおけるEAPは誘電エラストマーポリマーである。電極10は、基準のためにグランド(ゼロの電位又は電圧にある)に落とされ、電極12は、所定の又は調整可能な期間中に変化する可変又は調整可能な電圧レベルの形態の電気駆動信号を提供することができるドライバ20からの出力に接続される。グランド接続は、一般的な別個のグランド接続(図示せず)とすることができるが、このケースでは、ドライバのもう1つの出力によって供給されており、それが代わって内部で共通グランド(例えば、ソケットの)に接続される。ドライバ20は、このケースでは、正(例えば、第1極性)及び負(例えば、第2極性)の電圧信号を提供することができる電圧源(別個に図示せず)又は電圧信号発生器を含み得る。それに代えて、別個の電圧源が使用されて、ドライバに接続されてもよい。ドライバは、電極構成に適用される電気駆動信号を生成するために電圧源の電圧を使用するように、図示のように内部に又は外部にのいずれかで、切り換えユニットを含む。
【0046】
ドライバは、バイポーラ電圧レベルを持つ駆動信号を電極12に印加するように適応され、その電圧レベルがグランド信号と共に、電極間に、関連する正の極性(第1極性)又は負の極性(第2極性)(及び故に電界の向き)を持つ電圧差を規定する。極性(電界の向き)の符号を決定する基準として、電極12又は10のいずれかを使用することができる。このケースでは、極性は、接地された電極に対して、電極12上の信号とグランド信号との間の差として決定される。例えば基準電極に対して電圧差が正及び負の電圧差を持つように駆動信号の電圧レベルがその後に調整される限りにおいて、他の基準電圧も使用されることができる。
【0047】
当業者によって理解されることには、やはり、以下ここに例示される本発明の要求に従って、発生される電圧差が1つの選択された基準電極に対して(デバイスのアクチュエーション寿命中に少なくとも1回)極性を変化させるように構成される限りにおいて、電圧差は、双方の電極に供給される駆動信号を用いることによって生成されることもできる。
【0048】
図4及び5は、2つの状況についての本発明に従った電気駆動信号を示している。その他も存在するが、それらは本発明の一般的な適用を説明する役割を果たす。
図4A−4Eは、間に休止期間(如何なるアクチュエーションもない期間である)を持つ複数の引き続く別々のアクチュエーションについて、本発明がどのように使用され得るかを説明するために使用され、一方、
図5A−5Dは、1つの同じアクチュエーションの中での本発明の実装を説明する役割を果たす。
【0049】
図4において、電気駆動信号(又は波形としても参照される)40は、第1の期間41内の正の電圧信号/パルス45(第1の電気駆動信号)と、それに続く第2の期間内の第2の負の電圧信号/パルス46(第2の電気駆動信号)とを含んでいる。これらのパルスは、別々のアクチュエーションイベントを規定するものであり、故に、それらの間に、ゼロ電圧を持つ休止期間47が存在している。そのため、電気駆動信号40には、バイポーラ電圧スキームを使用する2つの独立したアクチュエーションが存在している。休止期間は、長くても短くてもよく、更にはゼロの時間と同程度の短さであってもよい。パルス45と46との間に他のイベントが存在してもよいが、それらは明瞭化のために図示されていない。本発明の説明及び最適な効果のために、パルス45及び46の双方が、電圧レベルの絶対値及び第1及び第2の期間に関して同一であると仮定しているが、これは、本発明が少なくとも幾らかの改善効果を持つことにとって必ずしもそうである必要のないことである。
【0050】
パルス45は、第1の期間41内に或る一定の機械的アクチュエーション(連続したアクチュエーション)を生じさせることになる(機械的アクチュエーション出力は明瞭化のために図示されていない)。これが意味することは、期間41内でEAP構造のアクチュエーション状態は変化し得るが、ゼロのアクチュエーション状態には戻らないということである。パルス45の後でのみ、アクチュエータ構造は、非作動状態又は休止状態へと緩和して戻り、パルス46を用いた第2のアクチュエーションを受ける準備が整う。
【0051】
従来技術の方法では、このようなゼロアクチュエーション状態への緩和の後に、第2の同様の機械的アクチュエーションが、第1のものと同じ極性の電圧差を生じさせる第2のパルス45を印加することによって達成されることになる。これは、駆動−作動カーブの累積的なドリフトにつながる。これについては、
図7を参照して更に説明する。
【0052】
本発明の第1の実装によれば、ここで、第1のパルス45の後に、駆動信号の極性が反転され、パルス46がデバイスに印加されて、第2のアクチュエーションが達成される。なお、電圧は異なる極性を持つが、アクチュエーションは電圧(電界)の大きさのみに依存し、極性(電界の向き)には依存しないので、アクチュエーションは同じ向きにあることになる。故に、パルス46は、パルス45で得られたのと同じアクチュエーションにつながるが、前述のように、パルス45によって引き起こされる妨害効果に反作用することになるパルスが用いられる。従って、
図4Aのデュアルパルス駆動信号の後、駆動−作動カーブは、2つの連続した同一極性パルスからなる従来技術のデュアルパルス駆動信号の場合よりも小さいドリフトを示すことになる。
【0053】
アクチュエータは、故に、アクチュエーションイベント(連続したアクチュエーション)ごとに反対極性の駆動信号を使用する駆動信号を用いて動作され得る。
【0054】
ドリフトの補償量は、とりわけ例えば、使用される電圧レベル、使用される駆動期間、使用されるパルスの数及び繰り返し率などである幾つものパラメータに依存する。これらは全て、異なるアクチュエーションスキームを必要とする実際の状況に合致するように調整されることができる。この調整は、所定の方法(例えば、ここで前述したような較正を使用する)にて、又はこれらのパラメータの歴史的な駆動データを利用したフィードバック機構を用いることによって行われることができる。これを効果的に行うための一部のオプションについては後述する。
【0055】
理論に縛られることは望まないが、1つの重要な一次的な妨害的材料効果は、印加電界(所与の厚さのEAP層に印加される電圧駆動信号)の影響下での、EAP構造内部での電荷又は双極子の動きに起因するものであり得る。そのような動きの速度は(電荷/双極子移動度)×(電界)によって与えられるので、反転時間(その後に電圧差極性の反転が必要とされる時間)は、電界が増すにつれて減少するはずである。これは、高い電圧レベル及び第1の継続時間を持つパルスの後に、より低い電圧レベルであるがもっと長い継続時間を持つ又はその逆のパルスが補償のために続くべきである状況となる。
【0056】
典型的なEAPポリマーでは、電子移動度は典型的に1e
−11m
2/Vsと1e
−13m
2/Vsとの間であり、電界は典型的に10V/μmと150V/μmとの間である。すると、好ましい反転時間は、一次的な移動性効果を補償するために1秒程度(例えば、10ミリ秒から10秒の範囲内)のものとなる。
【0057】
移動電荷はまた、例えばPVDF含有ポリマーに関して、EAP材料内の不純物及び結晶子表面にトラップされ、トラップサイトでの制限された移動性及び電荷蓄積につながる。これらのトラップサイトに蓄積された電荷は、これらのサイトでの高濃度に起因する早過ぎる電気絶縁破壊につながり得る。また、これらのサイトにトラップされた電荷は、電界が除去された後であっても比較的安定したままであり、故に、繰り返しての多数の個別アクチュエーションにわたって蓄積を促進する。極性が反転される場合には、深くトラップされた電荷が再結合することを強いられ、それにより、より長いタイムスケールでの過度の蓄積からポリマーを解放する。
【0058】
反転駆動はまた、(DC駆動アクチュエータに関して)例えば分(minutes)又は時間(hours)などのもっと長いタイムスケールでも効果的である。これから明らかなことには、そこで、信号レベル及び/又は信号継続時間及び/又は繰り返し数に関する反対極性パルスの何らかのタイプの均衡化が、数多くの手法で行われることができ、改善効果を持つことになる。
【0059】
図4の例に戻るに、以下の変形が有利に用いられ得る。故に、ドライバは、パルス45が常に、間にその他のアクチュエーションイベントを有さずにパルス46に従われるように、又はその逆であるように、別々のアクチュエーションイベント後ごとにパルス極性を切り換えることができる。
図4Bの駆動信号42は、交互の第1の電気駆動信号45及び第2の電気駆動信号46で本発明を実装するそのようなパルス(アクチュエーション)のトレイン又はシーケンスを示している。アクチュエーションイベント(パルス)間に例えば休止期間47のような休止期間が存在するが、明瞭化のために指し示されていない。
【0060】
それに代えて、ドライバは、例えば
図4Cの駆動信号44を用いてなど、複数の同一極性の電圧信号46の後に電圧極性が反転されるように、駆動信号を切り換えることができる。2つのパルス46の後に極性が切り換えられている。ここでも、アクチュエーション間の休止期間は、明瞭化のために省略されている。
【0061】
図4Dには、駆動信号48からの別シーケンスのアクチュエーションが示されており、3つのパルス(3回のアクチュエーション)45が3つのパルス(3回のアクチュエーション)46に続かれている。ここでも、アクチュエーション間の休止期間は、明瞭化のために省略されている。
【0062】
スキーム42、44及び48でのパルスシーケンスは異なるが、パルス45及び46の数が同じであるので、補償効果は同等となり又は更には同一となる。これは、パルス45及び46がそれらの符号を除いて同じである場合に特にそうであり得る。
【0063】
以上の例では、パルスは同じ継続時間(期間41又は期間43)及び大きさ(絶対値)を持つと仮定した。故に、その場合、1つのパルスシーケンスの中でのパルス46及び45のペアリングが、不利な帯電/緩和効果を抑制するのに良好なバランスを与えることになる。好ましくは、上述の駆動信号においてのように、連続するパルス45及び46を用いてペアリングが行われる。
図4Dは、3つの同様の立て続けのパルス45又は46ごとにのみパルスのペアリングを用いる駆動信号48を示している。
【0064】
故に、
図4A−4Dの波形は異なる数での極性反転(
図4A及び
図4Bでは1、
図4Cでは3、そして
図4Dでは3)を示しているが、波形44における2回目の2つの反転は、波形の全期間でパルス45と同数のパルス46が存在するように、入れ換えられた順序を持つ。
【0065】
正パルスの数を負パルスの数とバランスさせることは、故に、帯電緩和効果を抑制するのに有利である。再びとなるが、パルスは同じ大きさ及び継続時間を持つように描かれている、これらは異なっていてもよい。
【0066】
波形40、42、44及び48の全てにおいて、それらのシーケンスは、繰り返される又は逆に変えられるなどされることができる。パルスの数、電圧レベル、周期長及びその他の特性に関してパルス履歴がモニタされる所定の時間インターバルが選定され得る。そして、その履歴に基づいて極性切り換えを実装することができる。例えば、所定のインターバル内に等しい数の異なる極性のパルスが存在するように実装することができる。
【0067】
選択された時間インターバル(これは最終的にはデバイスの寿命であり得るが、好ましくはもっと短い)にわたって、少なくとも1回、反転駆動原理を実装する数多くのその他のシーケンスも使用され得る。
【0068】
以上の例では、パルス継続時間及び絶対信号レベルが同じであると仮定した。現実の状況では、異なるアクチュエーションが必要とされ得るので、そのようなことは常に実際的であるわけではないとし得る。故に、例えば、第1のアクチュエーションは、例えば異なるアクチュエーションレベルを得るためなどで異なる駆動信号レベルで達成されることになる第2のアクチュエーションとは異なる必要があることがある。この場合もやはり、電圧極性の単純な反転がその効果を有することになる。故に、
図4A−4Dにおいてパルス45がパルス46とは異なる絶対信号レベルを有していたとしても、反転は、反転なしの駆動と比較して、ドリフトを改善することになる。
【0069】
しかしながら、異なるアクチュエーションの電圧が異なる必要がある場合、パルス継続時間も調整することによって、更なる改善を得ることができる。これは、信号レベルだけでなく信号継続時間にも依存するものであるここで上述した電荷移動又はその他の緩和効果の原理を利用する。故に、
図4Eの駆動信号49は、パルス46の第2の期間43よりも短い第1の期間41を持つパルス45を示している。期間の差を補償するために、期間46の電圧レベルが、パルス45のそれよりも低く選定されている。
【0070】
極性反転は、所定の時間インターバルの後に実行されてもよい。例えば、反転時間は、EAP層の片面から他面まで電荷が移動するのに要する時間よりも短いことがあり、これは、EAP層が薄い場合に起こり得る。何故なら、EAPでは、駆動電圧がこの層厚さにスケーリングされるためである。斯くして、駆動電圧を(EAPの薄い厚さのために)比較的低く保つことができながら、最大電荷分離距離が、デバイスの厚さ寸法未満に低減及び維持され得る。これは、単一のアクチュエーションイベント中に反転が使用される場合に特に有用である。
【0071】
より一般的な補償形態では、パルスは、或る特定の期間内の一方の極性のパルスの電圧時間カーブ下の面積が、同じ期間中の他方の極性のパルスの電圧時間カーブ下の面積と一致するように、パルスが選定されて編成される。この効果は、所与の期間内で、反対の電圧差に関する駆動信号レベル(電圧差の絶対値)の、その期間内のそれらそれぞれの継続時間にわたる積分の均衡化の増加と共に向上し得る。このような積分は、反対極性の少なくとも一対のアクチュエーション信号(例えば、
図4A−4Eの一対のパルス45及び46)を使用して行われることができ、又は(所定の)時間インターバルごとに行われることができる。
【0072】
極性の反転は、荷電種又は極性種の動きを反転させ、それにより、少なくとも或る程度、電荷蓄積又は内部電界蓄積の量が低減される。
【0073】
電圧及びそれによる電界の反転間の期間は、デバイスの寿命よりも実質的に短くし得る。例えば、各極性変更の前に、設定された数のアクチュエーションが存在し得る。
【0074】
以上の例では、別々のアクチュエーションの間にアクチュエーション構造がその非作動状態に緩和する時間が存在した。この緩和は、電圧差がゼロまで低下すると、電極上の電荷、付随する電極間及びEAP材料中の電界、そしてひいては対応するアクチュエーションがゼロまで低下することになるということによって起こる。しかしながら、アクチュエーション応答の時間遅延のために、アクチュエータは、全ての状況において、その‘オフ’状態、すなわち、その機械的な非作動状態又は非駆動状態まで、完全に緩和して戻るわけではない。緩和の量は、機械的緩和の速さ(機械的緩和時定数)及び緩和に与えられる時間(電気的時定数によって決定される)に依存することになる。後者は、電界の、すなわち、電荷の変化の速さ(すなわち、電圧変化の速さ率(又は電流変化の速さ)と、システムのインピーダンスとに依存する。機械的及び電気的な緩和定数におけるこの差は、本発明で活用されることができる。
【0075】
電荷変化の速さ(リフレッシュレート)及び電圧極性の反転レートは、故に、機械的なアクチュエーション状態の緩和が、(例えば、パルス45からパルス46に進むことを受けてなどの)電圧差極性の切り換え中に完全ではない、ほんの僅かである、又は更には存在しないよう、充分に速いものであるように(インピーダンスに基づく電気的設計を通じて)選定され得る。
【0076】
故に、
図4A−4Eの例は、別々のアクチュエーションイベント間での、すなわち、第1の期間のそれらと第2の期間のそれらとの間での極性反転を利用し、また、順次のアクチュエーションイベント間(故に、反対極性のパルス間)に短い(ほぼゼロ時間)及び長い休止期間が存在し得るが、単一のアクチュエーションイベントの過程中に反転を適用することも可能である。これは、実際には、パルス反転が非常に速いためにEAP構造の機械的緩和が反転に完全には追従できない又は追従せず、それ故に、アクチュエーション状態が第1の期間及び第2の期間において実質的に同じままである又は少なくともゼロアクチュエーションまで戻らない、という状況に対応するものである。
【0077】
これの1つの利点は、本発明によって提供される補償が同一のアクチュエーションイベント内で実行されることができ、それ故に、補償のために、ここで前述した
図4A−4Eの例に関して説明したようなペアリング及び歴史的アクチュエーションの追跡を行う必要がないことである。
【0078】
例えば、実際のパルス間のゼロ電圧時間はゼロであってもよく、且つ/或いは、パルスの立ち上がり/立下りは急峻であってもよい。EAP構造(電気的なキャパシタンス及び/又は抵抗)と組み合わされるドライバ及び/又は電極構造が、それに関する一般的な電気理論に従って調整され得る。すると、第2の期間が始まるときに、第1の期間内に達成されたアクチュエーションの緩和が実質的に又は全く変化していない間に、電圧の反転が完了され得る。好ましくは、この方法では、50%、20%、10%、5%、2%、1%未満、又は0%のアクチュエーション変化が達成される。従って、1つの機械的アクチュエーション状態を、交番信号駆動スキームで維持することができる。この効果は、当然ながら、電界強度(及び故に、一定のEAP層厚さにおける電圧の大きさ)が双方の電圧極性で同じであって、それ故に、2つの反対極性で同じアクチュエーション電圧レベルが提供される場合にアシストされる。これはまた、極性反転による振動を制限する。
【0079】
例示的な駆動スキームを、例えば
図3のデバイスとともに使用されるときの
図5A−5Dの駆動信号により示す。1つの期間57の連続したアクチュエーション(連続したアクチュエーション期間)の中に、第1の期間51を持つパルス55と期間53内のパルス56とが存在し、これらのパルスは反転された極性を有する。これらのパルスはとても素早く互いの後に続くので、反転時の機械的アクチュエーションは乱されない(又は少なくともゼロまで戻らない)。
【0080】
図5Aの波形50において、パルス55中にドリフトが高まるが、それはパルス56中に補償されることになる。補償の構築及び精度は、期間を短くして複数のパルス55及び/又は56を使用することによって高められることができる。これは、例えば、
図5Bの駆動スキーム52を用いて行われる。
図5Bは、期間51を持つ複数のパルス55と期間53を持つ複数のパルス56とを有した、時間インターバル57内の交番電圧波形を示している。パルス55と同数のパルス56が存在している。故に、交番電圧波形を用いることで、同様のアクチュエーションを、第1及び第2の期間当たりの絶対ドリフトをより小さくして達成することができる。
【0081】
これらのケースでは、これが最良の補償効果を持つことになるのでこれは好ましいことであるが、パルス55及び56はやはり、絶対レベル及び継続時間に関して等しい大きさである。しかし、これは、本発明が幾らかの効果を有するのに必ずしも必要なことではない。
【0082】
説明したように、交番する信号を用いることで、改善された補償を達成することができる。故に好ましくは、パルス55及び56(55’及び56’も)は、1つのアクチュエーション時間インターバル(57又は57’)内に複数の信号波形を有する交番信号の一部である。従って、
図5Aには、そのような交番信号の1つの波形のみが示されているということになる。上述のケースでは、電極間の全体的な電圧差が交番するように、各アクチュエーションが、交番信号が電極に印加されることを有している。それにより、電荷分離が更に抑制され、各アクチュエーション期間(各単一アクチュエーションイベント)の終了時に存在する電荷分離又はその他の欠陥が実質的にゼロであり得る。
【0083】
故に、機械的アクチュエーションが可能な限り小さくしか乱されるべきでない場合、デバイスの機械的アクチュエーションの速さよりも実質的に速い反転周波数を持つ交番駆動信号でアクチュエータを駆動することによって、駆動を達成することができる。典型的なEAPアクチュエータは静的から準静的に(限定された振幅ではあるが)kHz域に至る周波数で機械的に作動され得るので、好適な駆動信号反転周波数は、この周波数の少なくとも2倍であり、そして、より好ましくはもっと高い(例えば5、10、50、100、又は更には500倍高い)。
【0084】
そのようなケースにおいて、アクチュエータをその平衡(非駆動)位置からアクチュエーション状態へと作動する必要があるとき、アクチュエータを機械的に変形させるのに十分な遅さ(DCであってもよい)の周波数を持つ第1の駆動信号を提供することができる。所望の変形(アクチュエーション)が到達すると、この遅い周波数信号が、当該遅い信号と同じ振幅を持つ速い周波数信号へと変化され、その結果、速い周波数ではアクチュエータは緩和することができず、長期のアクチュエーションの副作用が好ましく抑圧される。例示的な駆動スキーム54を
図5Cに示す。最初のパルス55は他のパルスより長く、このパルスが準静的パルスとして使用され得る。その長さ及び/又は振幅は、交番パルス55及び56であるスキーム54の残りの部分によってその後に維持される特定のアクチュエーション状態に到達するように調整されることができる。
【0085】
各アクチュエーション信号内の正及び負のパルスの数は好ましくは等しく(又は少なくとも等しいに近く)、これは、駆動周波数を高めることによっていっそう容易になる。ここでもやはり、カーブ下の面積の積分を用いて、正極性と負極性とのバランスを制御し得る。
【0086】
機械的アクチュエーション出力を、波形の形状(方形波、正弦波、三角波、又はその他)、振幅及び/又は駆動周波数の関数として測定し、特定の機械的アクチュエーション出力に至るためのそれらのパラメータの1つ以上を記憶することによって、駆動周波数を較正することができる。そして、ルックアップテーブルアプローチを用いて、所望の機械的アクチュエーション出力を生成するのに適した駆動信号を選択することができる。
【0087】
交番信号は好ましくは方形波の形態を有する。というのは、方形波は、(反転を受けて)極性が変化するときに与える変形が最も小さいからである。しかし、例えば正弦波又は三角波又は混合形状などのその他の形状が使用されてもよい。交番信号は、アクチュエーション中に一定の振幅又は変化する振幅を持つことができる。
【0088】
上述のケースのいずれにおいても、
図5A−5Dの波形での補償は、1つのアクチュエーションイベント内で達成される。これは、各々が自己補償するようにして、相互に異なる複数のアクチュエーションイベントを使用することを可能にする。補償を最適化することに、原理上、パルス履歴の追跡は全く又は最小限しか必要とされない。
【0089】
図5Dは、2つの引き続いての別々のアクチュエーションイベントを示しており、1つはアクチュエーション期間57を有し、1つはアクチュエーション期間57’を有している。これらの間には、
図4Aの休止期間47と同様の休止期間(図示せず)がある。これらのアクチュエーションイベントの各々が、電圧極性を少なくとも1回反転させることによる自己補償を使用している。故に、補償効果の損失なく、ここでは時間インターバル57’を時間インターバル57とは異なるように選定し得る。また、パルスの振幅は、パルス55及び55’で異なっていてもよい。従って、個々のアクチュエーション各々中に補償が行われるので、不利な影響のほぼ完全なる補償を伴って、完全に個別で独立したアクチュエーションを実行することができる。ここでもやはり、
図5Bを参照して説明したように、駆動期間当たり複数のパルス55及び56を用いる交番波形が使用されてもよい。
【0090】
デバイスの単一アクチュエーションの過程中にフィールド反転を使用するとき、調整されたデバイスを用いて、デバイスの機械的出力安定性を改善することが可能である。故に、特定のポリマーが、電気信号に従うアクチュエーション応答に遅延を有し、それ故に、例えば方形波の信号波形に従うことができない場合、極性が変わるときに望ましくない変形が存在し得る。この望ましくない変形は、幾分調整されたアクチュエーションデバイスを用いることによって最小化されることができる。
【0091】
1つの手法は、
図6A及び6Bに示すようなセグメント化された電極を持つデバイスを、セグメント化された電極の位相ずれ(アウトオブフェイズ)駆動と組み合わせて使用するものである。
図6Aは、電極セグメントとして2つのインターリーブされた櫛形電極60、62を有するEAP構造の上面図を示している。例えば、
図3のデバイスの電極12は、セグメント60及び62を有するという点で、このようなインターリーブ櫛形電極とし得る。グランドに落とされた電極64(
図3の電極10)が、インターリーブ電極60及び62の下方にあり、また、EAP材料層66(明瞭化のため
図6Aには図示せず)の他方の面上にある。故に、
図3において、電極64は、単一の共有電極10によって表すことができる。それに代えて、EAP層の各面に対応する電極があってもよく、そのようなケースでは、電極64もセグメント化される(インターリーブされる)ことになる(例えば、
図3の電極10及び12の双方をセグメント化することができる)。セグメント化された(1つ以上の)電極を用いて、EAP材料の隣接し合う部分68(明瞭化のために2つのみ示している)が、(1つ以上の)櫛形電極のインターリーブされた部分で覆われる。
【0092】
セグメント化された電極は好ましくは、電極の総面積よりも遥かに小さく、全アクチュエータ領域にわたって均等且つ均一に分布される。しかしながら、設計の必要性に応じて、あらゆる種類のその他のパターン化反復形状電極も使用されることができる。
【0093】
このデバイスは、ここでは、本発明に従った電気駆動信号を異なるセグメントの各セグメントに提供することができるドライバを有し得る。そして、駆動電圧の極性切り換えがセグメント間で位相ずれにされ得るように、すなわち、時間のうち少なくとも一部において、一方のセグメントが一方の極性に駆動され、他方のセグメントが反対極性に駆動されるように、これらの電気駆動信号が異なるセグメントに提供され得る。
【0094】
第1の例示的な駆動スキームが
図6Cに与えられており、連続したアクチュエーション駆動期間57において、上側の信号トレースは、第1のセグメント60に提供される電気駆動信号を表し、下側の信号トレースは、第2のセグメント62に提供される別の電気駆動信号を表している。この切り換えは、一方のセグメントが第1極性から第2極性に切り換わる間に、他方のセグメントが第2極性から第1極性に切り換わるようなものである。(異なるセグメントについての)異なるトレースにおける信号レベル及び継続時間は、同じであってもよいし(改善された安定性を与える)、異なっていてもよい(アクチュエーション状態を変化させるため)。
【0095】
図6Cでは、双方のセグメントに関する切り換えが同調しているが、セグメント60及び62の部分68にわたって電圧極性は位相ずれである。
【0096】
図6Dの駆動信号スキームでは、(上側のトレース69及び下側のトレース69における)異なるセグメントの切り換えは、同じ瞬間には行われておらず(位相ずれ)、一方のセグメントが或る電圧差に保たれている間に、他方が切り換えられる。このケースでは、一方のトレースの切り換えが、他方のトレースのパルス全体の中ほどである。しかしながら、他の位相ずれ関係が使用されてもよい。なお、経時的な信号の積分は、双方の信号トレースで同じである。このスキームを用いることで、切り換え中のアクチュエーションの損失を低減することができ、それ故に、切り換え中に機械的振動を更に低減することができ、又は、より一定なアクチュエーションレベルを提供することができる。
【0097】
図6Eは、位相ずれ駆動を実装する更なる他の一手法を示している。このケースでは、任意の特定の時点で双方のトレースのレベルから得られる結果が同じであるので、期間57全体においてアクチュエーションレベルを等しく保つことができる。このケースでは、(上側及び下側のトレースの各々における)駆動信号は、三角形トレースである。これに関し、駆動信号は、連続的な一次導関数を有する連続関数である波形を有し得る。一例は、一方のセグメントの駆動信号が、他方が最大レベルにある間に切り換わる正弦波三角波とし得る。このような時間的な信号の重なり合いでは、このような波形の振幅が2つのセグメントに関して等しいとき、より良好な振動の低減又はより一定な機械的出力レベルを得ることができる。
【0098】
なお、
図6の例は、期間57当たり1つのみの電圧差極性切り換えを示しているが、この場合も、ここで前述したように、信号は、期間57当たり複数のこのような切り換えを提供するように交番することができる。周波数は、ここで上述したように調整されることができる。
【0099】
セグメントの位相ずれ駆動は、機械的出力の乱れが低減された信号反転を達成するように働くが、そのような低減された乱れはまた、対応する電極を備えた2つの別々の電気活性ポリマー構造を有するデバイスであって、それらの構造が、
図6A及び6Bのデバイスのセグメントと同様にして位相ずれで駆動されるときに、双方が同じ機械的出力に寄与するデバイス、を用いて得ることもできる。
図6Fに、そのような代わりのデバイスを示す。
図2又は3にも記載される参照符号を持つ部分は、それらの図においてと同じである。故に、
図6Fのデバイスは、各々が
図2に関して説明したようにして構築された2つの曲げアクチュエータユニットを含んでいる。故に、各々の曲げアクチュエータユニットが、担体16にラミネートされた、電極10と12との間にEAP材料14を含むスタックを有している。これらのスタック間にアイソレート材料18があり、スタックは、アイソレート材料18に貼り付けられてはいないが、それと機械的に接触している。ドライバ20は電極10に電気信号を提供し、電極12はグランドに落とされている。
【0100】
駆動時、頂部曲げアクチュエータスタックは、その外側(図の平面内で左側及び右側)を方向17にして曲がり、底部曲げアクチュエータスタックは、その外側を方向17’にして曲がる。従って、機械的アクチュエーションは、デバイスアクチュエーション出力に寄与するために、層18を介して互いに強化又は支持することができる。スタックアセンブリ全体が、当該スタックアセンブリの底面をホルダーの底に置き、そして、表面38がデバイスアクチュエーション出力を提供するようにして、ホルダーの中に配置され得る。
【0101】
図6Fのデバイスは、セグメント化電極デバイスに対して説明したようにして駆動されることができ、セグメント化された電極に提供された異なる電気駆動信号が、ここでは代わりに、異なるアクチュエータユニットの異なる電極12に提供される。従って、切り換え中の一方のユニットのアクチュエーション緩和が、他方のユニットによる増大されたアクチュエーションによって補償されることができ、その逆もまた然りである。この駆動原理は、当然ながら、このような独立してアドレス可能なアクチュエータユニットを多数有するデバイスに使用されることができる。
【0102】
図6Fのケースは、積み重ねられた曲げアクチュエータを示しているが、これらはまた、1つのアクチュエーション出力部材を並列支持するものであってもよい。また、曲げアクチュエータの代わりに又は加えて、例えば膨張を提供するもの(例えば、
図1のアクチュエータを参照)など、別のアクチュエータ構造/ユニットを使用することもできる。
【0103】
以上の全ての例において、2つの反対極性の信号に関してこのような電界を提供するために使用される経時的な電界又は電圧の積分は、等しい大きさ(絶対値)のものであるように制御され得る。これは、作動しながら長期的な電荷の中性な動きを得る可能性を与える。
【0104】
図3及び6A若しくは6Fに示したようなドライバとアクチュエータ電極との間の直接的な接続の代わりに、物理的又は電子的なスイッチを使用し、それにより、単一の電圧源(例えば電池など)の接続を例えば電極10及び12といった対向電極に周期的に取り付けることによって、電圧を反転させてもよい。これは、一方の極性の電圧パルスを生成するだけでよい信号発生器を使用することを可能にする。
【0105】
図3及び6A若しくは6Fは、その代わりに、アクチュエータの電極のうちの一方が、アクチュエータの他方の電極に印加される電圧に対して反対の極性の少なくとも2つの出力レベルで駆動されることを示している。単純化のため、第1電極が図示のように0Vで駆動される場合、第2電極12に対する出力レベルは正及び負である。
【0106】
本発明は、それらの間に電圧差が生成される電極に印加される信号が、その電圧差が上述の原理に従って反転されるようなものであることを必要とする。
図3又は6A又は6Fでは、一方の電極に印加される信号のみがこの目的のために交番し、他方の電極はグランドにある。グランドの基準レベルは、異なる基準レベルであってもよい。例えば、それは有限の正電圧であってもよい。その場合、他方の電極上の駆動信号は、電極上に所望の電圧差極性が生じるように設計されることができる。これはまた、それらの間に電圧差が生成される双方の電極に交番信号を用いて行われてもよい。
【0107】
反対極性の出力レベルは、
図3に概略的に示すように同じ大きさのものであってもよい。これは、アクチュエータが2つの出力レベルによって等しく作動されるという利点を有する。
【0108】
図6A又は6Fのデバイスは、ドライバの出力とセグメントの一方又はアクチュエーションユニットの一方との間に結合された位相シフタを有していてもよい。従って、セグメント間又はユニット間に提供される電気駆動信号は、別々の信号生成を必要とせず、単に時間的にシフトされるだけである。
【0109】
2つの方向(極性)での電圧/電界の同じ時間積分を生み出すために、ドライバによって動作される物理的スイッチを使用して反転を実行するとき、ドライバは切り換え時間をクロックする手段を有することができ、すなわち、スイッチが一方の設定において他方の設定においてと等しい長さだけ保持されることを保証することによって、等しい電界積分が達成される。電圧反転がドライバにて実行されるとき、(ドライバ電圧)×(電圧パルス長)の和が正電圧及び負電圧の双方で等しいこと(単純化のために、第2電極は0Vにあると仮定している)を保証することによって、等しい電界積分が達成されてもよい。なお、ドライバから利用可能なドライバ電圧の数に応じて、和が等しいことを保証する多数の手法が存在する。
【0110】
実際には、以上の図に示された2レベルの信号の代わりに、ドライバは、少なくとも2つが、アクチュエータの第1電極に印加される電圧に対して反対の極性のものである複数の出力レベルを有し得る。斯くして、幾つものアクチュエータ変形が達成され得る。ここでもやはり、反対極性の出力レベルのうちの多く又は全てが同じ大きさのものであってもよい。これは、同じ振幅を持つが反対の極性を持つ出力レベルによってアクチュエータが等しく作動されるという利点を有する。
【0111】
電極構成は、上で
図3にて示したように、電気活性ポリマー層の両面に電極を有していてもよく。これらは、EAP層の厚さを制御する横断電界を提供する。次いで、これが、層(
図1)の面内でのEAP層の膨張又は収縮を引き起こし、層スタックに接続された基板が使用されるケース(
図2)ではアクチュエータの湾曲を引き起こす。
【0112】
電極配置は、代わりに、電気活性ポリマー層の片面上に一対の櫛形電極を有していてもよい。これは、面内での層の寸法を直接的に制御する面内電界を提供する。上述の反転スキームも、良好な効果を伴って適用され得る。
【0113】
以上の例は、自身を膨張させるように作動される電気活性ポリマー層を利用しており(例えば、
図1及び3を参照)、これは典型的に、例えば
図2に描いた構成で、曲がる動きに変換され得る。しかしながら、アクチュエーション部材の構成に応じて、その他のタイプの動きも誘起され得る。本発明は、それらの構成のいずれにおいても効果を有する。
【0114】
本発明は、双安定アクチュエーションを提供するデバイスに使用されることができ、すなわち、それらのデバイスにおいてそのような双安定の維持可能状態に駆動するにはアクチュエーションが起こる必要があるとともに駆動中に極性反転が実装されることができるとはいえ駆動信号の存在なしにアクチュエーション状態を維持するデバイスに使用されることができる。
【0115】
バイポーラ駆動スキームを用いることによるアクチュエータの性能への効果は、実験により決定されている。アクチュエータの変位は、ユニポーラ駆動スキームにおいて及びバイポーラ駆動スキームにおいて(一定の外部負荷をアクチュエータに適用して)印加される電圧の関数として測定される。
図7は、適用した駆動波形を示している。それは、各々200秒の4つのサイクルをシーケンスにて有している。第1のサイクルは、10期間の250V振幅のユニポーラ駆動波形である。第2のサイクルは、10期間のやはり250V振幅のバイポーラ駆動波形である。第3のサイクルは、10期間のユニポーラ駆動波形であり、第4のサイクルは、10期間のバイポーラ駆動波形である。
【0116】
図8は、印加された駆動電圧(x軸)の関数として変位(y軸)を示している。負の変位は、曲げアクチュエータの上向きの曲げに対応する。
【0117】
図8は、
図7に示した10期間のユニポーラ駆動サイクル(プロット80)及び10期間のバイポーラ駆動サイクル(プロット82)である最初の2サイクルについての結果を示している。ユニポーラ駆動80はx軸の正電圧部分のみに現れている。バイポーラ駆動82は、両極性に対して同じ変位関数を与えている(左右の電圧軸変位が実質的に同じである)。
【0118】
図8はまた、バイポーラ駆動スキームが有利なことに、ユニポーラ駆動スキームによって生じる変位と比較して、およそ15%大きい変位(−1.15mmから−1.65mmと比較して、−1.07mmから−1.65mm)を与えることを示している。
【0119】
図9は、最後の2サイクル、すなわち、
図7に示した第3の10期間のユニポーラ駆動(プロット90)及び第4の10期間のバイポーラ駆動(プロット92)についての結果を示している。
【0120】
このグラフは、変位カーブの上方へのドリフトと、アクチュエータを用いて達成可能な最大変位がユニポーラ駆動スキームでは減少するようであることを示している。故に、バイポーラ駆動スキームはまた、ユニポーラ駆動スキームと比較して、より再現性のある結果を与える。0ボルト駆動(アクチュエータデバイスの静止状態)において、ユニポーラ駆動スキームでは変位のドリフトが観察されるが、これはバイポーラ駆動スキームを使用することにより、存在しないか大いに抑圧されるかである。従って、バイポーラ駆動スキームは、アクチュエータの休止状態へのより良好で再現性のある復帰を与える。
【0121】
ユニポーラ駆動の場合のこの劣化した応答は、電界を遮蔽してしまうものである一方の電極への自由電荷のドリフトにより生じる。また、ユニポーラ駆動では、結晶子ドメインがトラップされたものとなって乏しい緩和をもたらし、それ故にアクチュエータの変位に寄与しなくなり得る。
【0122】
本発明は、特に、EAP構造の一部としてEAPを有するEAPアクチュエータのアクチュエーションに関する。故に、EAP構造はEAP材料を有する。これは、電気信号をEAP構造に提供することを受けてEAP構造を変形させることができる材料である。従って、EAP材料は、1つ以上のEAPを有した1つ以上のマトリクス材料を有する又はそれからなる混合物(均質又は不均質)であり得る。これは、例えば、更なるポリマーマトリクス材料中のEAP分散とし得る。更なるポリマーマトリクス材料は、マトリクスネットワークの中に混入又は分散したEAPによって引き起こされる変形を可能にする網状ポリマーとし得る。EAP材料は、その中に分散されることができる。弾性材料は、そのようなネットワークの例である。好ましくは、そのような複合EAP材料中のEAPの量は、>50重量若しくはモル%、>75重量若しくはモル%、又は>90重量若しくはモル%からなる群から選択される。EAP材料はまた、分子中にEAP(又はEAP活性基)の部分及び不活性なその他のポリマーの部分を含むポリマーを有することもできる。数多くの電気活性ポリマーを使用することができ、それらのうちの幾つかについて後述する。しかしながら、使用されるEAPは、対称的なアクチュエーション、すなわち、アクチュエーションの向きが電界の向き(換言すれば、電界を生成するために電極に印加される電圧の極性)とは独立であるアクチュエーションを提供しなければならない。
【0123】
電界駆動EAPのサブクラス内で、電界駆動EAPの第1の注目すべきサブクラスは電歪ポリマーである。伝統的な圧電ポリマーの電気機械的性能は限られているが、この性能を向上させるブレイクスルーが、電気分極(電界駆動配向)ひいては対称的なアクチュエーション応答を示すものである例えば(P)VDF系リラクサポリマーなどのリラクサポリマーをもたらしてきた。これらの材料は、歪み方向での改善された性能のために予め歪ませることができる(予め歪ませることは、より良好な分子配向につながる)。電界駆動EAPの別のサブクラスは、誘電エラストマーのサブクラスである。
【0124】
このような材料の薄膜が、コンプライアント電極間に挟み込まれて、例えば平行平板キャパシタなどのキャパシタを形成し得る。誘電エラストマーの場合、印加電界によって誘起されるマクスウェル応力が、膜に応力を生じさせて、それを厚さ的に収縮させるとともに面積的に膨張させる。歪み性能は典型的に、エラストマーを予め歪ませることによって拡大される(予歪みを保持するためのフレームを必要とする)。歪みはかなりのもの(10−300%)となり得る。このクラスの誘電エラストマー材料の場合、電極は好ましくは、直接的に又は中間材料層を用いてのいずれかで、EAP材料に機械的に取り付けられる。
【0125】
第1のサブクラスの材料については、通常、歪みが穏やかな領域(1−5%)にあるのが通常であるため、薄膜金属電極が使用され、また、例えば導電性ポリマー、カーボンブラック系オイル、ゲル又はエラストマーなどの、その他のタイプの電極も使用されることができる。第2のクラスの材料では典型的に、高い歪みによって電極材料の種類が制約される。故に、低い歪み及び中程度の歪みを持つ誘電体材料については、金属電極及び導電性ポリマー電極が考えられ、高い歪みの領域では、カーボンブラック系オイル、ゲル又はエラストマーが典型的に使用される。
【0126】
上述の材料に関連して、より詳細には、本発明に適した電気活性ポリマークラスは、以下に限定されないが、電気機械ポリマー、リラクサ強誘電性ポリマー、電歪ポリマー、誘電エラストマーのサブクラスを含み得る。
【0127】
電歪ポリマーのサブクラスは、以下に限定されないが、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリフッ化ビニリデン−三フッ化エチレン(PVDF−TrFE)、ポリフッ化ビニリデン−三フッ化エチレン−クロロフルオロエチレン(PVDF−TrFE−CFE)、ポリフッ化ビニリデン−三フッ化エチレン−クロロトリフルオロエチレン(PVDF−TrFE−CTFE)、ポリフッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン(PVDF−HFP)、ポリウレタン、又はそれらの混合物を含む。
【0128】
誘電エラストマーのサブクラスは、以下に限定されないが、アクリレート、ポリウレタン、ポリシラン、又はシリコーンを含む。
【0129】
EAP構造の電極は、各々が特定の利点及び効果を持つ数多くの構成を有することができる。
【0130】
めっきされた電極が非対称構成で配置される場合、与えられた信号(例えば電圧)は、例えば、捩れ、転がり、捻れ、旋回、及び非対称曲げ変形などの、EAP構造のあらゆる種類の変形を誘起し得る。
【0131】
これらの例の全てにおいて、印加される電界又は電流に応答してのEAP層の電気的及び/又は機械的挙動に影響を及ぼすよう、追加の受動層が設けられてもよい。
【0132】
各ユニットのEAP材料層は、電極間に挟み込まれ得る。それに代えて、電極は、EAP材料の同じ側にあってもよい。いずれの場合も、電極は、間に如何なる(受動)層もなしで直接的に、又は間に追加の(受動)層ありで間接的に、のいずれかでEAP材料に物理的に取り付けられることができる。しかし、これは常にそうである必要はない。リラクサ又はパーマネント圧電若しくは強誘電EAPでは、直接的な接触は必要ない。後者のケースでは、電極がEAPに電界を提供することができ、電気活性ポリマー構造がそのアクチュエーション機能を有することになる限り、EAPの近傍にある電極で十分である。電極は、それらがEAP材料層の変形に追従するように伸張可能とし得る。電極に適した材料も知られており、例えば、金、銅、又はアルミニウムなどの薄い金属膜、又は例えばカーボンブラック、カーボンナノチューブ、グラフェン、ポリアニリン(PANI)、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)(例えば、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)ポリ(スチレンスルホン酸)(PEDOT:PSS))などの有機導電体からなる群から選択され得る。例えば、(例えばアルミニウムコーティングを用いて)金属化されたポリエチレンテレフタレート(PET)などの、金属化ポリエステル膜も使用され得る。
【0133】
これら様々な層の材料は、例えば、これら様々な層の弾性率(ヤング率)を考慮して選択されることになる。
【0134】
デバイスの電気的又は機械的挙動を適応させるために、上述したものへの追加の層(例えば追加のポリマー層など)が使用されてもよい。
【0135】
このデバイスが単一のアクチュエータとして使用されてもよいし、あるいは、例えば2D又は3Dの輪郭の制御を提供するために、列又はアレイをなす複数のデバイスが存在してもよい。
【0136】
本発明は、特に、一部のアクチュエータ例について上述した閾値関数の結果として、アクチュエータのパッシブマトリクスアレイに関心ある場合の例を含め、多くのEAP用途に適用されることができる。
【0137】
多くの用途において、製造物の主な機能は、ヒト組織の(局所的な)操作、又は組織接触境界面の作動を当てにする。そのような用途において、EAPアクチュエータは、小さいフォームファクタ、柔軟性、及び高いエネルギー密度に主に起因して、特有の利点を提供する。従って、EAPは、軟らかい、3D形状をした、且つ/或いは小型の製造物及び境界面に、容易に統合されることができる。そのような用途の例は、以下である:
例えば、皮膚にハリを与えたり皺を減らしたりするために皮膚に一定又は周期的な伸張を適用するEAPベースの皮膚パッチの形態の皮膚作動装置などの、皮膚美容処置;
顔の赤い跡を抑制又は防止する交番正常圧力を皮膚に提供するための、EAPベースのアクティブクッション又はシールを有する患者インターフェイスマスクを備えた呼吸装置;
適応シェービングヘッドを備えた電気シェーバであり、密接性と刺激との間のバランスに影響を与えるために、EAPアクチュエータを用いて皮膚接触面の高さを調節することができる電気シェーバ;
例えば、特に歯間の隙間において、スプレイの到達範囲を改善するために動的なノズルアクチュエータを用いるエアーフロスなどの、口腔洗浄装置であり、それに代えて、歯ブラシが、アクティブにされるタフトを備えていてもよい、口腔洗浄装置;
ユーザインタフェースの中又は近くに統合されたEAPトランスデューサのアレイを介して局所的な触覚フィードバックを提供する家電機器又はタッチパネル;
蛇行した血管内での容易なナビゲーションを可能にする操縦可能な先端を有するカテーテル。
【0138】
EAPアクチュエータの恩恵を受ける別カテゴリーの関連用途は、光の変更に関する。EAPアクチュエータを用いた形状又は位置の適応によって、例えばレンズ、反射面、回折格子などの光学素子を適応可能なものにすることができる。ここでのEAPの利点は、例えば、低めの電力消費である。
【0139】
開示の実施形態への他の変形が、図面、本開示及び添付の請求項の検討から、特許請求される発明を実施する際に当業者によって理解されて実現され得る。請求項において、用語“有する”はその他の要素又はステップを排除するものではなく、不定冠詞“a”又は“an”は複数を排除するものではない。特定の複数の手段が相互に異なる従属項に記載されているという単なる事実は、それらの手段の組合せが有利に使用され得ないということを指し示すものではない。請求項中の如何なる参照符号も、範囲を限定するものとして解されるべきでない。
【0140】
要約するに、本発明は、電気活性ポリマー(EAP)と、異なる時間に電気活性ポリマー内に反対極性の電圧及び故に電界を与える電気駆動信号を生成するドライバと、を有するアクチュエータデバイスを提供する。斯くして、長期にわたる活性時間がなおも可能でありながら、電荷蓄積を抑制又は回避することができる。これは、デバイスの性能及び/又は寿命を向上させる。