特許第6914967号(P6914967)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6914967
(24)【登録日】2021年7月16日
(45)【発行日】2021年8月4日
(54)【発明の名称】放射検出器及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H04N 5/32 20060101AFI20210727BHJP
   H01L 21/8234 20060101ALI20210727BHJP
   H01L 27/06 20060101ALI20210727BHJP
   H01L 21/822 20060101ALI20210727BHJP
   H01L 27/04 20060101ALI20210727BHJP
   H01P 5/08 20060101ALI20210727BHJP
   H01Q 13/10 20060101ALI20210727BHJP
   H01Q 21/24 20060101ALI20210727BHJP
【FI】
   H04N5/32
   H01L27/06 102A
   H01L27/04 C
   H01P5/08 L
   H01Q13/10
   H01Q21/24
【請求項の数】15
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2018-560893(P2018-560893)
(86)(22)【出願日】2018年1月10日
(65)【公表番号】特表2020-510323(P2020-510323A)
(43)【公表日】2020年4月2日
(86)【国際出願番号】EP2018050501
(87)【国際公開番号】WO2018153557
(87)【国際公開日】20180830
【審査請求日】2020年4月21日
(31)【優先権主張番号】102017103687.3
(32)【優先日】2017年2月23日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】502327850
【氏名又は名称】フォルシュングスフェアブント ベルリン エー ファウ
【氏名又は名称原語表記】Forschungsverbund Berlin e.V.
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】ラメル, アダム
(72)【発明者】
【氏名】シェブチェンコ, セルゲイ
【審査官】 松永 隆志
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−135520(JP,A)
【文献】 特開2012−175034(JP,A)
【文献】 特開2015−144248(JP,A)
【文献】 特開2004−241471(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 5/225−5/378
H04N 9/00−9/11
H01L 21/822
H01L 21/8234
H01L 27/04
H01L 27/06
H01P 5/08
H01Q 13/10
H01Q 21/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射検出器(100)であって、
アンテナ構造(10)と、ソース領域(24)、ゲート領域(26)、及びドレイン領域(28)の3領域を有する電界効果トランジスタ構造(20)とを備え、
前記ソース領域(24)、前記ゲート領域(26)、及び前記ドレイン領域(28)は、回路基板(70)上に配置され、且つ相互に独立した導電性の電極構造(34、36、38)であるソース電極構造(34)、ゲート電極構造(36)、及びドレイン電極構造(38)をメタライゼーションにより各々形成し、
前記ゲート電極構造(36)は、前記ソース電極構造(34)又は前記ドレイン電極構造(38)を、第1平面(E1)において完全に内包し、
前記内包された電極構造(34、38)は、前記ゲート電極構造(36)の上方に延び、且つ延びた先で前記第1平面(E1)の上方の第2平面(E2)において前記ゲート電極構造(36)に少なくとも部分的に、平面状に重なり、
金属−絶縁体−金属(MIM)構造を有するコンデンサ(40)を形成するための電気的絶縁領域(42)が、前記内包された電極構造(34、38)が重なる前記ゲート電極構造(36)の領域と前記内包された電極構造(34、38)の領域との間に配置されている、
放射検出器。
【請求項2】
請求項1に記載の放射検出器(100)であって、
前記回路基板(70)上に設置された前記アンテナ構造(10)は、前記電極構造(34、36、38)により直接形成されている、
放射検出器。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の放射検出器(100)であって、
前記第1平面(E1)における前記ゲート電極構造(36)、及び前記第2平面(E2)における前記内包された電極構造(34、38)は、実質的に矩形平面素子として重なる、
放射検出器。
【請求項4】
請求項1から3のうちの1つに記載の放射検出器(100)であって、
前記電界効果トランジスタ構造(20)は、シリコン又はIII−V族半導体に基づく、
放射検出器。
【請求項5】
請求項1から4のうちの1つに記載の放射検出器であって、
前記アンテナ構造(10)の基点(12)は、前記ゲート領域(26)と前記ソース領域(24)との間、又は前記ゲート領域(26)と前記ドレイン領域(28)との間に配置されている、
放射検出器。
【請求項6】
請求項1から5のうちの1つに記載の放射検出器(100)であって、
前記アンテナ構造(10)はスロットアンテナを形成し、前記アンテナ構造(10)は、金属面(16)内に少なくとも1つの放射開口(14)を有する、
放射検出器。
【請求項7】
請求項1から6のうちの1つに記載の放射検出器(100)であって、
前記アンテナ構造(10)の外端(18)上において、100GHz超の周波数を有する高周波(RF)電流が短絡している、
放射検出器。
【請求項8】
請求項1から7のうちの1つに記載の放射検出器(100)であって、
前記アンテナ構造(10)は、前記電界効果トランジスタ構造(20)の前記3領域(24、26、28)のうちの2領域の間でRF短絡を実現する、
放射検出器。
【請求項9】
請求項1から8のうちの1つに記載の放射検出器(100)であって、
前記アンテナ構造(10)は、2アーム又は4アーム方式で形成されている、
放射検出器。
【請求項10】
請求項1から9のうちの1つに記載の放射検出器(100)であって、
共通の回路基板(70)上で並列に接続された、少なくとも2つの電界効果トランジスタ構造(20)を備える、
放射検出器。
【請求項11】
請求項1から10のうちの1つに記載の放射検出器(100)であって、
前記コンデンサ(40)及び前記アンテナ構造(10)は、THz帯域の電磁波を受信するために放射検出器(100)を同調するように適合された共通のRF環境を形成する、
放射検出器。
【請求項12】
請求項1から11のうちの1つに記載の放射検出器(100)であって、
周波数変換器をさらに備え、前記周波数変換器は、受信した放射を低周波検出信号に変換する、
放射検出器。
【請求項13】
放射検出器(100)を製造するための方法であって、
ゲート領域(26)、ソース領域(24)、及びドレイン領域(28)の3領域を有する回路基板(70)上に配置された電界効果トランジスタ構造(20)を提供する工程と、
前記ゲート領域(26)、前記ソース領域(24)、及び前記ドレイン領域(28)のメタライゼーションを行う工程と、
前記回路基板(70)上に配置されるアンテナ構造(10)を構築する工程とを備え、
前記メタライゼーションを行う工程において、相互に独立した導電性の電極構造(34、36、38)であるソース電極構造(34)、ゲート電極構造(36)、及びドレイン電極構造(38)が形成され、前記ソース電極構造(34)又は前記ドレイン電極構造(38)のいずれかは、第1平面(E1)において前記ゲート電極構造(36)により完全に内包され、前記内包された電極構造(34、38)は、前記ゲート電極構造(36)の上方に延び、前記内包された電極構造(34、38)は、前記第1平面(E1)の上方の第2平面(E2)において前記ゲート電極構造(36)に少なくとも部分的に、平面状に重なり、金属−絶縁体−金属(MIM)構造を有するコンデンサ(40)を形成するための電気的絶縁領域(42)は、前記内包された電極構造(34、38)が重なる前記ゲート電極構造(36)の領域と前記内包された電極構造(34、38)の領域との間に配置され、
前記アンテナ構造(10)を構築する工程において、前記回路基板(70)上に設置される前記アンテナ構造(10)は、前記電極構造(34、36、38)により直接形成され、放射開口(14)は、前記アンテナ構造(10)の金属面(16)内に形成され、前記アンテナ構造(10)の基点(12)は、前記ゲート領域(26)と前記ソース領域(24)との間、又は前記ゲート領域(26)と前記ドレイン領域(28)との間に配置される、
方法。
【請求項14】
請求項13に記載の放射検出器(100)を製造するための方法であって、
前記アンテナ構造は、2アーム又は4アームで構築される方式で形成される、
方法。
【請求項15】
請求項13又は14に記載の放射検出器(100)を製造するための方法であって、
前記コンデンサ(40)及び前記アンテナ構造(10)は、共通のRF環境を形成するために、THz帯域の電磁波を受信するようにそれらの共振周波数で同調される、
方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射検出器及びその製造方法に関するものである。特に、本発明は、FET構造とモノリシックに一体化されたアンテナ構造を有し、且つ電界効果トランジスタ(FET)に基づく、テラヘルツ放射の検出のための放射検出器、及びそのようなモノリシックに一体化された検出器構成を製造するための方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
「テラヘルツ周波数帯域」という用語は、約100GHzから30THzまでの周波数帯域をおおよそ指す。この帯域は自由空間波長λ=3mmからλ=10μmまでに及び、それ故、サブミリ波長帯域とも呼ばれる。この帯域において光子エネルギーは低く、0.1meVから100meVの間である。
【0003】
電磁スペクトルのこの帯域は、これまで商業用途でほとんど調査されたことがないため、テラヘルツ(THz)ギャップとも呼ばれている。これはとりわけ、純電子システムにおいて、生成される信号がノイズの帯域内にあるという事実に起因する。しかしながら、純光子アプローチに関しては、光子エネルギーが低すぎてしまう。
【0004】
この数十年間、サブミリ波長帯域において作動する、非常に複雑なシステムが開発されてきた。今までのところ、これらのシステムは、電波天文学、大気研究、又は気体の長時間分光法などの研究開発における、実験の場においてのみ用いられてきた。しかしながら、これらのシステムは、商業大量販売市場へのブレイクスルーには適していない。これは主に、THz帯域用の低コストのソース及び検出器が入手できないことと、それらの動作が、多くは77Kを下回る温度下であることとによる。
【0005】
THz周波数帯域は他の周波数帯域に対していくつかの有利な点及び特異性を有するため、THz周波数帯域の開発に対して大きな関心が寄せられている。テラヘルツ放射は非電離であり、従って、生物医学分野においては安全と考えられている。テラヘルツ放射を用いて、ナノ構造における電荷担体動力学に関する情報を得ることができる。光周波数帯域において不透明の多くの材料が、THz周波数帯域においては透明となる。ある分子群は、THz周波数帯域において鮮明なスペクトルのフィンガープリントを示す。このフィンガープリントは、有害物質の検出において特に関心の対象となっている。さらに、テラヘルツ放射は、光周波数と比較し低散乱であり、従って、埃の多い環境における使用に対して特に好適である。高い送信帯域幅が達成可能であることは、通信システムにおける応用に好適であることを示している。テラヘルツ放射の小さい波長により、レーダによりサポートされる方法、及びサンプルの照明及び透光における、高い構造分解能の実現が可能となり、これは例えば、品質管理のための製造プロセスでの現場測定において、特に関心の対象となっている。
【0006】
より低いTHz周波数帯域(凡そ1THzまで)におけるテラヘルツ放射の検出については、GaAs、SiGe、CMOS、及び、InP半導体技術に基づき、多くの場合は逓倍器のコンセプトを有する、純電子システムが好適である。さらに、ショットキーダイオードミキサ、及び光伝導性検出器を、テラヘルツ放射の検出のために用いることができる。光起電力検出器、ゴーレイセル、及びボロメータが、パワー検出器として用いられる。量子カスケードレーザシステム、フェムト秒短パルスレーザに基づく光電子システム、又は2つの連続波レーザを組合せたものが、より低いTHzよりも高いテラヘルツ放射を発生させるために、多くの場合使用される。
【0007】
近年、高周波数帯域(1〜80GHz)におけるトランジスタも、THz放射の検出に好適であることが示されている(T. Otsuji 及び M. Shur、「テラヘルツプラズモニクス:良好な結果と大きな期待」、IEEE Microwave Magazine、15巻7号、ページ43−50、2014年11−12月)。特に、2つのメカニズムにより、そのようなトランジスタをTHzスペクトルに用いることができるという事実が導かれる。一方は、トランジスタの活性領域における抵抗の組合せであり、他方は、トランジスタの活性領域におけるプラズモン効果であり、これらは、Dyakonov−Shur理論(M. Dyakonov 及び M. Shur、「2次元電子流体による、テラヘルツ放射の検出、混合、及び周波数逓倍」、IEEE Trans. Electron Devices、43巻3号、ページ380−387、1996年3月)により説明可能である。
【0008】
このタイプのTHz放射の検出に対して主に好適であるのは、CMOS半導体技術における電界効果トランジスタ(FET)(M. Bauer他、「電界効果トランジスタの焦点面アレイによる平面対平面撮像を用いるリアルタイムCMOSテラヘルツカメラ」 2013年38回赤外ミリ波とテラヘルツ波に関する国際会議(IRMMW−THz)、マインツ、2013年、ページ1−2)、及びGaN半導体技術(M. Bauer他、「一体化されたボウタイアンテナを有しGaN HEMTsに基づく高感度広帯域THz検出器」、2015年10回欧州マイクロ波集積回路会議(EuMIC)、パリ、2015年、ページ1-4)である。
【0009】
様々なアンテナのタイプが、THz放射を検出及び受信するために用いられている。特に、ボウタイアンテナ、スパイラルアンテナ、及びパッチアンテナが用いられている。
【0010】
DE10 2007 062 562B4、及びDE10 2011 076 840B4において、THz周波数では、同じ回路基板上に一体化されたアンテナ及びトランジスタを構築する必要があることが示されている。トランジスタ及びアンテナは、給電線により相互に接続されており、その結果、線路損失が起こり、アンテナはトランジスタに適合される必要がある。その結果、検出器は狭帯域において作動し、準最適な性能しか発揮されない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従って、本発明の目的は、THz周波数帯域における、電磁放射のパワー及び/又は位相の検出のための、モノリシックに一体化可能な構造を示すことである。さらに、そのような放射検出器の構成は、閉鎖、画定されたTHz環境を提供することを特徴とする必要があり、そのTHz環境内には、THz放射を低周波数帯域へ、直流に至るまで変換する周波数変換器が、モノリシックに埋め込まれている。モノリシックに一体化可能な構造により、給電線を省くことが特に可能となり、これにより、線路損失が低減され、給電線が無いことでアンテナをトランジスタに適合させる必要はない。これにより、高感度の大きな帯域幅が、高集積密度と共に可能となる。
【課題を解決するための手段】
【0012】
これらの目的は、本発明に従って、請求項1及び請求項13の特徴によって解決される。本発明の適切な実施形態は、各従属請求項に含まれる。
【0013】
本発明に係る放射検出器は、アンテナ構造と、ソース領域、ゲート領域、及びドレイン領域を有する電界効果トランジスタ(FET)構造とを備え、これらの領域は、回路基板上に配置され、且つ相互に独立した導電性の電極構造をメタライゼーションにより形成し、ゲート電極構造は、ソース電極構造又はドレイン電極構造を、第1平面において完全に内包し、内包された電極構造(被内包電極構造)は、ゲート電極構造の上方に延び、且つ延びた先で第1平面の上方の第2平面においてゲート電極構造に少なくとも部分的に、平面状に重なり、金属−絶縁体−金属構造(MIM構造)を有するコンデンサを形成するための電気的絶縁領域は、被内包電極構造が重なるゲート電極構造の領域の間に配置されている。
【0014】
一般に、放射検出器は、電磁放射を受信し、且つ受信した放射の特性に関連付けられた対応する検出信号を出力するように設計されている、技術構成と規定される。
【0015】
電磁放射用検出装置のアンテナは一般に、電磁自由空間波の入射をアンテナ上で受信し、それを伝送導体波動に変換する役割を有する。この目的のために、アンテナは通常いくつかの受信素子(例えば、従来のダイポールアンテナの2つのアーム)を有する。受信した導体波動のタップオフは、所謂アンテナ基点(中央給電点とも呼ばれている)において行うことができる。「アンテナ構造」という用語には、アンテナの外端からアンテナ基点にわたる、全ての受信素子の外部形状、それらの相互配置、及びそれらの内在構造(例えば、多層構造)が考慮されている。
【0016】
FETの様々な領域の電気制御は、典型的には、相互に独立した3つの金属電極により行われ、「FET構造」という用語は、基本的な電極構造を有するFETの内在構造、すなわち、アンテナ構造以外の部分を指す。電極は、FETの個々の領域の上に(すなわち、FET構造の上に)、多くの場合、金属又は金属含有化合物の蒸着又は塗布により配置される。
【0017】
「電極構造」という用語には、電極の外部形状及びそれらの内在構造(例えば、様々な層又は電極素子からなる電極の構造)が考慮されている。電気的に直接相互接続されている領域は、密着した電極構造を形成することができる。好ましくは、ソース電極構造は、オーミックソースコンタクト及びソースメタライゼーションを備えることができる。好ましくは、ドレイン電極構造は、オーミックドレインコンタクト及びドレインメタライゼーションを備えることができる。ゲート電極構造は、様々なメタライゼーション面及びゲートメタライゼーションを備えることができる。好ましくは、ゲート電極構造は、ゲートメタライゼーションにより完全に形成される。メタライゼーションは、純金属、合金、又は他の導電性金属化合物を塗布することにより行うことができる。
【0018】
コンデンサは一般に、2つの電気的に相互に絶縁された平面素子(例えば、平板コンデンサ)から成り、平面素子上に電荷を蓄積することができる。これらの平面は、コンデンサ電極とも呼ばれている。半導体技術において、金属−絶縁体−金属構造(MIM構造)という用語は、とりわけ、中間絶縁層(電気的絶縁領域)を有する、平面状に形成されたコンデンサ金属層が積み重なった構造を説明するために用いられる。絶縁層は、例えば、酸化シリコン、窒化シリコン、又は任意の他の電気的絶縁体、若しくは絶縁材とすることができる。本発明によれば、MIM構造を有するコンデンサを形成するための電気的絶縁領域は、被内包電極構造が重なるゲート電極構造の領域の間に配置されている。
【0019】
好ましくは、回路基板上に設置されたアンテナ構造は、電極構造により直接形成される。これは、アンテナ構造が実質的に平面状であるアンテナの実装を呈することを意味し、FETの電極構造自体が、アンテナ構造の受信素子として形成され得る。エピタキシャル構造は、好ましくはアンテナ構造と回路基板との間に配置されている。しかしながら、アンテナ構造を、少なくとも部分的に直接回路基板上に設置及び形成することも可能である。
【0020】
特に好ましくは、アンテナ構造は、直接ソース電極構造及びドレイン電極構造により形成される。好ましくは、少なくとも一部分のゲート電極構造のMIMコンデンサは、ソース電極構造の少なくとも一部分、又はドレイン電極構造の少なくとも一部分と重なる領域により形成されている。しかしながら、アンテナ構造は、ゲート電極構造の上に少なくとも部分的にも形成され得る。
【0021】
従って、本発明の発想は、アンテナ構造をトランジスタの直近に配置することにその本質があり、給電線、及び給電線に付随する不都合な点を、完全に取り除くことができる。特に、距離を極力最小化するために、アンテナ構造をトランジスタの対応する電極構造により直接形成することもできる。コンデンサをアンテナ又はFET構造へ一体化することも可能であり、これにより、THz帯域の電磁波を受信するために放射検出器を同調するように構成可能な共通のRF環境を形成することができる。ゲート電極構造はソース電極構造又はドレイン電極構造を第1平面において完全に内包するため、片側電極構造の実施形態よりも広帯域の短絡が実現可能である。特に短い内包距離により、高周波数において短絡が高インピーダンス値へ変化することはない。さらに、内包により、ドレイン及びソース領域の特に高いRFデカップリングが生じる。特に、ゲート領域は、構成のRF基準電位である。ゲート領域へ流れる高周波電流は、内包領域の端において環状に主に発生する(表皮効果)ため、アンテナの遠方界は、高周波数においても、内包領域の電流により顕著に乱されることはない。
【0022】
本発明に係るそのような放射検出器は、受信素子及び検出器素子の両方の役割を果たすため、このコンセプトにより、高感度の大きな帯域幅が高集積密度と共に可能となる。その構造は、標準的な半導体プロセスにおいて組み立てることができるため、比較的製造が容易で安価でもある。従って、その基本的なコンセプトにより、THz放射の領域における大量販売市場への応用のための構造設計が可能となる。従って、本発明に係る放射検出器の基礎は、3つの電極(ソース、ゲート、ドレイン)を有する電界効果トランジスタ(FET)であり、電極は、厳密に画定されたRF環境を発生させるように成形することができる。
【0023】
好ましくは、オーミックソースコンタクト及びオーミックドレインコンタクトは、0.1μmから0.5μmの高さを有する。より好ましい高さは、約0.25μmである。オーミックソースコンタクトの好ましい長さは、3μm超である。より好ましい長さは、4μmから6μmである。好ましくは、オーミックソースコンタクト及びオーミックドレインコンタクトは、1μm超の幅を有する。より好ましい幅は、3μmから4μmである。
【0024】
いくつかの実施形態において、FET構造20の領域におけるオーミックソースコンタクト34a及びオーミックドレインコンタクト38aの幅は、相互に異なっていてもよい。好ましくは、オーミックソースコンタクトは約4μmの幅を有し、オーミックドレインコンタクトは約1μmの幅を有する。さらに好ましい実施形態において、オーミックソースコンタクトは約10μmの幅を有し、オーミックドレインコンタクトは約1μmの幅を有する。そのような非対称設計のためのより好ましい非対称比率(オーミックドレインコンタクトの幅に対するオーミックソースコンタクトの幅)は、1:2から1:10、より好ましくは1:4から1:10、さらにより好ましくは1:6から1:10である。
【0025】
好ましくは、ゲート電極構造は、0.3μmから0.5μmの高さを有する。より好ましい高さは、約0.35μmである。好ましくは、コンデンサの領域におけるソースメタライゼーションは、0.5μmから1.2μmの高さを有する。より好ましい高さは、約0.65μmである。好ましくは、コンデンサの領域におけるソースメタライゼーション及びドレインメタライゼーションは、3μm超の幅を有する。より好ましい幅は、4μmから6μmである。
【0026】
好ましくは、電気的絶縁領域は、0.01μmから0.5μmの高さを有する。より好ましい高さは、約0.2μmである。
【0027】
好ましくは、第1平面におけるゲート電極構造、及び第2平面における被内包電極構造は、実質的に矩形平面素子として重なる。MIMコンデンサを形成する重なり(重なりとは、ゲート電極構造及び被内包電極構造の相互に対向する面を鉛直に投影した結果、共通している面を指す)は、従来の平板コンデンサの(相互に並列に配置されている)2つのコンデンサ電極と同様とみなすことができる。「実質的に」という用語は、重なっている平面素子が一般的には矩形であることを指す。個々の電極構造の形は、これとは異なる可能性がある。
【0028】
好ましくは、FET構造は、シリコン又はIII-V族半導体に基づく。それ故、FET構造は、シリコン系技術(例えば、CMOS)により実装されることが望ましい。さらに、FET構造は、III−V系技術により実装されることが望ましい。本発明に係るFET構造又は放射検出器の設計のための特に好ましい技術は、窒化ガリウム(GaN)、グラフェン、又は高温超伝導体(HTC超伝導体とも称される)に基づくことが可能である。好ましくは、前記構造の設計に用いられる回路基板において、アンテナ素子に関して接地面は形成されない。特に高伝導性シリコンを回路基板材料として用いることができる。
【0029】
好ましくは、アンテナ構造の基点は、ゲート領域とソース領域との間、又はゲート領域とドレイン領域との間に配置されている。より好ましくは、アンテナ構造の基点は、ゲート領域と、被内包電極構造でないソース又はドレイン領域との間に配置されている。特に、アンテナ構造の基点を、これら2つの領域間の丁度中央に配置することができる。これにより、アンテナ構造により受信された電磁波(例えば、自由空間波)を、アンテナ基点において直接FETに結合させることが可能となる。従って、追加の導体路(従来技術において、受信された放射波はアンテナ給電線内を導体波動として伝送される必要がある)を省くことができる。従って、アンテナ構造から受信された放射の検出を、直接アンテナ構造の基点において、さらなる線路損失を伴うことなく行うことができる。
【0030】
好ましくは、アンテナ構造はスロットアンテナを形成し、アンテナ構造は、少なくとも1つの放射開口を金属面内に有する(そのようなアンテナ構造は、放射開口の特定の形状に拘らず、一般にスロットアンテナと呼ばれている)。スロットアンテナは、アンテナの放射素子が実質的に導電面内の開口(一般に放射開口/穴と呼ばれている)により形成されているアンテナである。そのような放射開口に対して、従来の双極子(同じ強度分布を有する補完的な双極子)の放射又は受信特性は、遠方界におけるバビネの原理に従って割り当てることができる。刺激となる電磁場により誘起された電流は、実質的に開口の金属端に沿って流れる。従って、「放射開口」という用語は、特に、割り当てられたアンテナ構造内の開口として理解すべきであり、このアンテナ構造用の受信素子としてのバビネの原理に従う補完的な双極子を表す。アンテナ構造への受信すべき電磁信号の結合は、好ましくは回路基板により行うことができる。
【0031】
金属面は、単一の金属製表面、又は複数の単一素子を複合して構成される金属製表面とすることが可能である。複数の単一素子のそれぞれは、相互にガルバニック分離可能であり、分離は、個々の素子間にMIMコンデンサを追加することで形成することができる。好ましくは、個々の素子間のMIMコンデンサにより、MIMコンデンサにより分離されている個々の素子間でRF接続が維持されているガルバニック分離が生じる。特に、放射開口は、電極構造のメタライゼーションにおいてアンテナの受信素子として用いられること、及び全体構造はRF接続された材料に内包されていることが好ましい。ここで、100GHz超の周波数を有する高周波電流(RF電流)が、アンテナ構造の外端上で短絡していることが特に好ましい。これにより、隣接物を阻害することなく配置されたアレイとしての構造が可能となる。一方、放射検出器の(外部へと通じる)接続線上のRF信号を抑制することもできる。スロットアンテナの場合、空気と金属とを反転させることで、短絡を実現させるための、及び異なる電極構成の実施形態のための、設計の自由度が高くなる。
【0032】
特に、アンテナ構造において、FET構造の3領域のうちの2領域の間でRF短絡を実現することが好ましい。内在するゲート領域とソース領域との間(又はゲート領域とドレイン領域との間)で理想的なRF短絡を実現するために、ゲート電極構造及びソース電極構造(又はゲート電極構造及びドレイン電極構造)を、FET構造の空間的寸法に対して大面積を占め、その間にMIM構造を形成するように配置することが特に好ましい。好ましくは、回路基板上でMIM構造が重なっている面は、回路基板上でFET構造の2DEGが重なっている面を、100倍、より好ましくは1000倍、さらにより好ましくは10000倍上回る。
【0033】
アンテナ構造の実施形態としては、共振ホールアンテナ、ティアドロップアンテナ、スロットパッチアンテナ、スロットボウタイアンテナ、及びスロットログスパイラルアンテナが特に好ましい。アンテナ構造は、好ましくは2アーム又は4アーム方式で形成することができる。4アーム方式で形成されたアンテナ構造の場合、特に、相互に独立した2つのFET構造が受信素子として共通のアンテナ構造を用いることができ、又は本発明に係る放射検出器が共通の回路基板上で並列に接続された2つのFET構造を備えることができる。両方の場合において、各FET構造は、4アーム方式で形成されたアンテナ構造の2つのアームにそれぞれ接続されている。一般に、複数の独立したFET構造、又は並列に接続されたFET構造は、マルチアームアンテナ構造用に用いることができる。さらに、マルチアームアンテナ構造において、いくつかのアームが独立したFET構造に割り当てられ、且つ他のアームが並列に接続されたFET構造に割り当てられる、混合形態があり得る。
【0034】
好ましくは、コンデンサ及びアンテナ構造は、THz帯域の電磁波を受信するために放射検出器を同調するように適合された共通のRF環境を形成する。特に、本発明に係る放射検出器の受信特性(感度、スペクトル帯域幅、信号増幅)は、アンテナ構造を対応する寸法に合わせ、且つコンデンサの静電容量を調節することにより、同調又は調節することができる。これにより、本発明に係る放射検出器を、本開示の範囲に含まれる多数の用途のために最適化することが可能となる。しかしながら、これらの用途はTHz放射帯域に制限されるものではない。
【0035】
好ましくは、本発明に係る放射検出器は周波数変換器も備え、周波数変換器は受信した放射を低周波検出信号に変換する。本発明に係る放射検出器の評価は、ソース電極とドレイン電極との間の電流又は電圧の低周波評価により好ましくは行われる。特に、THz放射を低周波数帯域へ直流に至るまで変換する活性半導体を、本発明に係る放射検出器内にモノリシックに埋め込むことが可能である。
【0036】
本発明のさらなる態様は、放射検出器の製造方法に関するものである。本発明に係る方法は、ゲート領域、ソース領域、及びドレイン領域を有する回路基板上に配置された電界効果トランジスタ(FET)構造を提供する工程と、ゲート領域、ソース領域、及びドレイン領域のメタライゼーションを行う工程と、回路基板上に配置されるアンテナ構造を構築する工程とを備える。メタライゼーションを行う工程において、相互に独立した導電性の電極構造が形成され、ソース電極構造又はドレイン電極構造のいずれかは、第1平面においてゲート電極構造により完全に内包され、被内包電極構造は、ゲート電極構造の上方に延び、被内包電極構造は、第1平面の上方の第2平面においてゲート電極構造に少なくとも部分的に、平面状に重なり、金属−絶縁体−金属(MIM)構造を有するコンデンサを形成するための電気的絶縁領域は、被内包電極構造が重なる、ゲート電極構造の領域の間に配置される。アンテナ構造を構築する工程において、回路基板上に設置されるアンテナ構造は、電極構造により直接形成され、放射開口は、アンテナ構造の金属面内に形成され、アンテナ構造の基点は、ゲート領域とソース領域との間、又はゲート領域とドレイン領域との間に配置される。好ましくは、アンテナ構造の基点は、ゲート領域と、被内包電極構造でないソース又はドレイン領域との間に配置される。
【0037】
本発明に係る方法は、本発明に係る放射検出器の特に好ましい実施形態を提供するうえで好適である。本発明の適切な実施形態は、従属請求項に含まれている。
【0038】
好ましくは、アンテナ構造は、2アーム又は4アームで構築される方式で形成される。同様に好ましくは、コンデンサ及びアンテナ構造を、共通のRF環境を形成するために、THz帯域の電磁波を受信するように共振周波数で同調することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0039】
本発明は、対応する図面に基づき以下の実施形態において説明される。
【0040】
図1図1aは、本発明に係るFET構造の例示的な実施形態の概略設計を、側面図で示している。 図1bは、本発明に係るFET構造の概略設計を抽象的に側面図で示している。
【0041】
図2図2a、2bは、本発明に係る図1bのFET構造の概略設計を、抽象的に側面図及び上面図でそれぞれ示している。
【0042】
図3図3は、本発明の第1実施形態(ホールアンテナ)の概略設計を示している。
【0043】
図4図4は、本発明の第2実施形態(ティアドロップアンテナ)の概略設計を示している。
【0044】
図5図5は、本発明の第3実施形態(スロットパッチアンテナ)の概略構造を示している。
【0045】
図6図6は、本発明の第4実施形態(スロットボウタイアンテナ、変形例1)の概略設計を示している。
【0046】
図7図7は、本発明の第5実施形態(スロットボウタイアンテナ、変形例2)の概略設計を示している。
【0047】
図8図8は、本発明の第6実施形態(スロットログスパイラルアンテナ)の概略設計を示している。
【0048】
図9図9は、本発明の第7実施形態(スロットボウタイアンテナ、4アーム)の概略設計を示している。
【0049】
図10図10は、本発明の第8実施形態(スロットログスパイラルアンテナ、4アーム)の概略設計を示している。
【発明を実施するための形態】
【0050】
図1aは、本発明に係るFET構造20の例示的な実施形態の概略設計を、側面図で示している。本発明の他の実施形態の場合、特に、提示されている素子の具体的な構造、及び相互配置は、ここで提示されている構造と異なっても良い。同様に、図の描写は、何らかの具体的な層構造、又は対応する層構造を製造するための特定の方法を提案するものではない。本発明に係るFET構造20は、本開示の範囲内で任意に変更可能であり、且つ図の描写により制限されるものでは決してない。
【0051】
提示した実施形態は、FETの製造に好適なエピタキシャル構造に基づいており、バッファ層72(例えば、GaNバッファ層)がその上に配置されている(例えば、SiC製の)回路基板70を有する。(例えば、AlGaN製の)活性領域74は、バッファ層72上に配置されている。活性領域74は、その側方で絶縁層76と接している。FETにおいて、電流の制御は活性領域74内で行われる。一般にFETの動作中に、2DEG22と呼ばれる2次元電子ガスが、活性領域74とバッファ層72との間の境界領域において形成される。活性領域74の電子制御は、活性領域74の上方から、ゲート、ソース、及びドレインと典型的には称される相互に独立した3つの導電性電極により行われる。そして、これらの電極は、ソース電極構造34、ゲート電極構造36、及びドレイン電極構造38を有する。ソース領域24、ゲート領域26、及びドレイン領域28が、活性領域72又は2DEG22内で電極により画定されている。ゲート領域26の長さの典型的な値は約100nmであり、ゲート領域26の上方の領域におけるゲート電極構造36は、典型的には約200nmの長さを有する。ゲートメタライゼーション36とオーミックソースコンタクト34aとの間、又はゲートメタライゼーション36とオーミックドレインコンタクト38aとの間の典型的な距離は、0.1μmから1μmである。ここで、対称及び非対称な実施形態の両方が実現可能である。
【0052】
個々の電極構造34、36、38は、単一層又は均一材料(好ましくは導電性の金属材料)で構成可能であり、又は複数の異なる材料の層又は組合せで構成可能である。特に、図の描写は、均一材料(例えば、異なる金属から成る合金)で構成されたゲート電極36を示している。一方、ソース電極構造34及びドレイン電極構造38は、その最上部で層になっている。ソース電極構造34は、活性領域74上に直接設置されたオーミックソースコンタクト34a、及びその上方に(例えば、気相蒸着又は特に金の蒸着により)直接配置されたソースメタライゼーション34bで構成されている。そして、ドレイン電極構造38は、活性領域74上に直接設置されたオーミックドレインコンタクト38a、及びその上方に直接配置されたドレインメタライゼーション38bで構成されている。個々の電極構造34、36、38を相互に電気的に絶縁又は保護するために、図の描写の上側の領域において、電極構造34、36、38は、いくつかのパッシベーション層77、78、79により囲まれ、又は相互に分離されている。
【0053】
ソースメタライゼーション34bの下方には、本発明に係る電気的絶縁領域42(誘電体)が配置されている。絶縁領域42は、例えば、絶縁層又は自由領域(例えば、エアギャップ)とすることが可能である。図示されている絶縁領域42の下方には、ゲート電極構造36の伸長部が存在する。 これらは1つの同じゲート電極構造36の一部分である。特に、2つの部分は相互に導電接続されており、この接続は提示した側面図上では見ることができない。
【0054】
従って、ソースメタライゼーション34bが重なるゲート電極構造36の領域の間に、すなわち図の描写において左側に示されているゲート電極構造36の部分に、電気的絶縁領域42が配置されている。これにより作られる金属−絶縁体−金属層(MIM層)は、対応するMIM−構造を有するコンデンサ40を形成する。構造的関係を説明するために、コンデンサを示す従来の技術回路記号が、概略設計図の対応する場所に描かれている。
【0055】
図1bは、本発明に係るFET構造20の概略設計を、抽象的に側面図で示している。図1aとは対照的に、図1bはFET構造20の主要な素子に限定して抽象度を高めて描写したものである。設置可能な絶縁層、キャリア層、及び中間層の明示的な描写は、省かれている。特に、提示した設計は、図1aに示されるような側面図で提示した本発明に係るFET構造の例示的な実施形態の、抽象的な描写であり得る。従って、各参照符号及びその割り当てが同様に適用される。
【0056】
図2aは、本発明に係る図1bのFET構造20の概略設計を、抽象的に側面図で示している。各参照符号及びその割り当てが同様に適用される。さらに、第1平面E1及び第2平面E2が図示されており、第2平面E2は第1平面E1の上方に配置されている。
【0057】
図2bは、本発明に係る図2aのFET構造20の例示的な実施形態を、抽象的に上面図で示している。図2bに描かれた一点鎖線は、図2aに示される側面図を導く交線を示している。
【0058】
従って、図2a及び2bは、ソース領域24、ゲート領域26、及びドレイン領域28を有するFET構造20を示し、これらの領域24、26、28は相互に独立した導電性の電極構造34、36、38をメタライゼーションにより形成し、ゲート電極構造36はソース電極構造34を第1平面E1において完全に内包し、被内包ソース電極構造34は、ゲート電極構造36の上方に延び、且つ延びた先で第1平面E1の上方の第2平面E2においてゲート電極構造36に少なくとも部分的に、平面状に重なり(破線で境界が示されているソースメタライゼーション34bの領域)、MIM構造を有するコンデンサ40を形成するための電気的絶縁領域42は、被内包電極構造34が重なるゲート電極構造36の領域の間(実質的には、ゲート電極構造36の領域のうち、破線で境界が示されているソースメタライゼーション34bが重なる領域)に配置されている。
【0059】
第1平面E1におけるゲート電極構造36、及び第2平面E2における被内包ソース電極構造34は、実質的に矩形平面素子として図の描写のように相互に重なる(2つの部分が接続されたゲート電極構造36の左側の矩形部分)。しかしながら、破線で示された境界は、特にソースメタライゼーション34bの場合、これらの領域が図示されているよりもさらに延び得ることを示している。別の実施形態において、ソース電極構造34及びドレイン電極構造38の幾何学的寸法(長さ、高さ、及び/又は幅)は、適合されたRF環境を形成するために、又はRF環境を特定のアンテナ構造10に適合させるために、独立して変化し、相互に関連する。特に、オーミックソースコンタクト34a及びオーミックドレインコンタクト38aは、それぞれ異なる幅を有することが可能であり、幅は上面図においてのみ見ることができる寸法に対応している(高さは側面図における高さに対応している)。
【0060】
さらに、本発明によれば、ソース電極構造34の代わりにドレイン電極構造38も内包され得る。
【0061】
図3は、本発明の第1実施形態(ホールアンテナ)の概略設計を示している。特に、図の描写は、本発明に係る放射検出器100の好ましいアンテナ構造10を示している。回路基板70上に設置されたアンテナ構造10は、電極構造34、36、38により直接形成され得る。好ましくは、エピタキシャル構造(例えば、図1aに示されているエピタキシャル構造)が、アンテナ構造と回路基板との間に配置されている。好ましくは、アンテナ構造10は、ソース電極構造34及び/又はドレイン電極構造38により直接形成されている。
【0062】
アンテナ構造10の基点12は、ゲート電極構造36のゲート領域26とドレイン電極構造38のドレイン領域28との間に配置できる。アンテナ構造10は、金属面16内に概ね円形の2つの開口14を有し、2つの開口14の間に細長い領域が延びている。隣に示した、アンテナ構造10の内側領域を拡大して示したFET構造20の抽象的な概略図に示されているように、金属面16のこの部分(2つの開口14の間の細長い領域)は、ドレインメタライゼーション38bにより直接形成されており、従ってドレイン電極構造38に属している。一方、金属面16の上側の半円部領域は、ソースメタライゼーション34bにより直接形成されており、従ってソース電極構造34に属している。図の描写からも分かるように、FET構造20の領域におけるオーミックソースコンタクト34a及びオーミックドレインコンタクト38aの幅は、相互に異なる。
【0063】
好ましくは、オーミックソースコンタクト34a及びオーミックドレインコンタクト38aは、0.1μmから0.5μmの高さを有する。より好ましい高さは、約0.25μmである。オーミックソースコンタクト34aの好ましい長さは、3μm超である。より好ましい長さは、4μmから6μmである。好ましくは、オーミックソースコンタクト34a及びオーミックドレインコンタクト38aは、1μm超の幅を有する。より好ましい幅は、3μmから4μmである。
【0064】
好ましくは、ゲート電極構造36は、0.3μmから0.5μmの高さを有する。より好ましい高さは、約0.35μmである。好ましくは、コンデンサ40の領域におけるソースメタライゼーション34aは、0.5μmから1.2μmの高さを有する。より好ましい高さは、約0.65μmである。好ましくは、コンデンサ40の領域におけるソースメタライゼーション34b及びドレインメタライゼーション38bは、3μm超の幅を有する。より好ましい幅は、4μmから6μmである。
【0065】
好ましくは、電気的絶縁領域42は、0.01μmから0.5μmの高さを有する。より好ましい高さは、約0.2μmである。
【0066】
提示したアンテナ構造10は、特に、開口14が円形であることを特徴とする。コンデンサ40及びアンテナ構造10は、THz帯域の電磁波を受信するために本発明に係る放射検出器100を同調するように適合された共通のRF環境を形成することができる。特に、金製金属面16、アンテナ構造10、約14.6μmの第1開口部a、約30μmの第2開口部b、及び可変のアンテナ部Aを有する提示したアンテナ構造10は、約1THz周辺のスペクトル帯域に同調可能である。好ましくは、100GHz超の周波数を有するRF電流は、アンテナ構造10の外端18上で短絡している。アンテナ構造10により、FET構造20の3領域24、26、28のうちの2領域の間でのRF短絡が実現する。特に、アンテナ構造10により、FET構造20のソース領域24とドレイン領域28との間のRF短絡が実現可能である。
【0067】
図4は、本発明の第2実施形態(ティアドロップアンテナ)の概略設計を示している。アンテナのタイプを除いては、この描写は実質的に図3に示した描写と対応している。参照符号及びその割り当てが同様に適用される。アンテナ構造10の内側領域から拡大されたFET構造20の抽象的な概略図は省かれており、それは図3におけるFET構造20の抽象的な概略図と同様と見なすことができる。
【0068】
提示したアンテナ構造10は、特に、外端18の楕円形及び開口14の涙滴形を特徴とする。コンデンサ40及びアンテナ構造10は、THz帯域の電磁波を受信するために放射検出器100を同調するように適合された共通のRF環境を形成することができる。特に、金製金属面16、約60μmの第1開口部a、約195μmの第2開口部b、約125μmの第1アンテナ部A、及び約275μmの第2アンテナ部Bを有する提示したアンテナ構造10により、約400GHzから2THzのスペクトル帯域への受信特性の広帯域同調が可能となる。
【0069】
図5は、本発明の第3実施形態(スロットパッチアンテナ)の概略設計を示している。アンテナのタイプを除いては、この描写は実質的に図3に示した描写と対応している。参照符号及びその割り当てが同様に適用される。アンテナ構造10の内側領域から拡大されたFET構造20の抽象的な概略図は省かれており、それは図3におけるFET構造20の抽象的な概略図と同様と見なすことができる。
【0070】
提示したアンテナ構造10は、特に、開口14の伸長形状を特徴とする。コンデンサ40及びアンテナ構造10は、共通のRF環境を形成することができる。当該共通のRF環境は、THz帯域の電磁波を受信するために本発明に係る放射検出器100を同調するように適合されている。特に、金製金属面16、約94μmの第2開口部b、約155μmの第1アンテナ部A、及び約275μmの第2アンテナ部Bを有する提示したアンテナ構造10により、約600GHz周辺のスペクトル帯域への受信特性の同調が可能となる。
【0071】
図6は、本発明の第4実施形態(スロットボウタイアンテナ、変形例1)の概略設計を示している。 アンテナのタイプを除いては、この描写は実質的に図3に示した描写と対応している。各参照符号及びその割り当てが同様に適用される。アンテナ構造10の内側領域から拡大されたFET構造20の抽象的な概略図は省かれており、それは図3におけるFET構造20の抽象的な概略図と同様と見なすことができる。
【0072】
提示したアンテナ構造10は、特に、開口14の2つの方向に延びる形状を特徴とする。コンデンサ40及びアンテナ構造10は、THz帯域の電磁波を受信するために放射検出器100を同調するように適合された共通のRF環境を形成することができる。特に、金製金属面16、約146μmの第1開口部a、約90μmの第1アンテナ部A、及び約210μmの第2アンテナ部Bを有する提示したアンテナ構造10により、約500GHzから2THzのスペクトル帯域への受信特性の広帯域同調が可能となる。
【0073】
図7は、本発明の第5実施形態(スロットボウタイアンテナ、変形例2)の概略設計を示している。アンテナのタイプを除いては、この描写は実質的に図3に示した描写と対応している。各参照符号及びその割り当てが同様に適用される。アンテナ構造10の内側領域から拡大されたFET構造20の抽象的な概略図は省かれており、それは図3におけるFET構造20の抽象的な概略図と同様と見なすことができる。
【0074】
提示したアンテナ構造10は、特に、部分的に円形で2つの方向に延びる開口14の形状を特徴とする。コンデンサ40及びアンテナ構造10は、THz帯域の電磁波を受信するために放射検出器100を同調するように適合された共通のRF環境を形成することができる。特に、金製金属面16、約140μmの第1開口部a、及び約360μmの第1アンテナ部Aを有する提示したアンテナ構造10により、約400GHzから2THzのスペクトル帯域への受信特性の広帯域同調が可能となる。
【0075】
図8は、本発明の第6実施形態(スロットログスパイラルアンテナ)の概略設計を示している。アンテナのタイプを除いては、この描写は実質的に図3に示した描写と対応している。各参照符号及びその割り当てが同様に適用される。アンテナ構造10の内側領域から拡大されたFET構造20の抽象的な概略図は省かれており、それは図3におけるFET構造20の抽象的な概略図と同様と見なすことができる。螺旋構造をより分かりやすく可視化するために、開口14の領域は平行線でハッチングして示されている。
【0076】
提示したアンテナ構造10は、特に、アンテナ構造10の基点12を中心に螺旋状に延びる開口14の形状を特徴とする。コンデンサ40及びアンテナ構造10は、THz帯域の電磁波を受信するために放射検出器100を同調するように適合された共通のRF環境を形成することができる。特に、金製金属面16、及び約610μmの第1アンテナ部Aを有する提示したアンテナ構造10により、約300GHzから3THzのスペクトル帯域への受信特性の広帯域同調が可能となる。
【0077】
図9は、本発明の第7実施形態(スロットボウタイアンテナ、4アーム)の概略設計を示している。提示したアンテナ構造10の基本設計は、実質的に図7に示されているアンテナのタイプに対応している。各参照符号及びその割り当てが同様に適用される。しかしながら、図7とは対照的に、この実施形態には、2アームのアンテナ構造(2つの開口14がアンテナ構造10の基点12を中心に対称に配置されている構造)ではなく、4アームの構造素子の構成(4つの開口14がアンテナ構造10の基点12を中心に対称に配置されている構成)が存在している。構造をより分かりやすく可視化するために、開口14の領域は平行線でハッチングして示されている。同じく図9に描かれている、アンテナ構造10の内側領域から拡大されたFET構造20、20'の抽象的な概略図は、並列に接続された2つのFET構造20、20'の対応する構成の好ましい実施形態を表している。特に、FET構造20、20'は共に、共通の回路基板70上に配置可能であり、アンテナ構造10は、電極構造34、34'、38、38'により直接形成されている。好ましくは、エピタキシャル構造(例えば、図1aに示されているエピタキシャル構造)が、アンテナ構造と回路基板との間に配置されている。
【0078】
提示した設計において、2つのFET構造20、20'は、共通の2DEG22を形成する。加えて、FET構造20、20'は共に、共通のソース電極構造34、34'(すなわち、共通のオーミックソースコンタクト34a、34a'及びソースメタライゼーション34b、34b') を有する。第1FET構造20のドレイン電極構造38(これは、オーミックドレインコンタクト38a及びドレインメタライゼーション38bを備える)、及びドレイン電極構造38'(これは、オーミックドレインコンタクト38a'及びドレインメタライゼーション38b'を備える)は、それぞれ2DEG22の端に配置されている。2つのFET構造20、20'の各ゲート領域26、26'は、共通のゲート電極構造36、36'により、相互に導電的に接続されている。
【0079】
本発明によれば、2つのFET構造20、20'のゲートは、共通のソース電極構造34、34'を共通のゲート電極構造36、36'により第1平面E1において完全に内包(二重内包)し、共通の被内包ソース電極構造34、34'は、(2つのFET構造20、20'の2つのゲート領域26、26'を相互に導電的に接続する)ゲート電極構造36、36'の上方に延び、延びた先で第1平面E1の上方の第2平面E2においてゲート電極構造36、36'に少なくとも部分的に、平面状に重なり、共通のソース電極構造34、34'が重なる前記ゲート電極構造36、36'の領域の間には、MIM構造を有するコンデンサ40を形成するための電気的絶縁領域42が配置されている。
【0080】
図10は、本発明の第8実施形態(スロットログスパイラルアンテナ、4アーム)の概略設計を示している。提示したアンテナ構造10の基本設計は、実質的に図8に示したアンテナのタイプに対応する。各参照符号及びその割り当てが同様に適用される。しかしながら、図8とは対照的に、この実施形態には、2アームのアンテナ構造(2つの開口14がアンテナ構造10の基点12を中心に対称に配置されている構造)ではなく、4アームのアンテナ素子の構成(4つの開口14がアンテナ構造10の基点12を中心に対称に配置されている構造)が、存在している。螺旋構造をより分かりやすく可視化するために、開口14の領域は平行線でハッチングして示されている。同じく図10に描かれている、アンテナ構造10の内側領域から拡大されたFET構造20、20'の抽象的な概略図は、並列に接続された2つのFET構造20、20'の対応する構成の好ましい実施形態を表している。特に、FET構造20、20'は共に、共通の回路基板70上に配置可能であり、アンテナ構造10は、電極構造34、34'、38、38'により直接形成されている。好ましくは、エピタキシャル構造(例えば、図1aに示されているエピタキシャル構造)が、アンテナ構造と回路基板との間に配置されている。
【0081】
提示した実施形態において、2つのFET構造20、20'は、直接隣同士に配置されている。これらは相互に独立したFET構造20、20'であり、2つのFET構造20、20'のゲート領域26、26'は、共通のゲートメタライゼーション36、36'により、相互に導電的に接続されている。FET構造20、20'の両方において、MIMコンデンサ40は、ソース電極構造34、34'の一部分に重なる領域により、ゲート電極構造36、36'の一部分によりそれぞれ形成されている。
【符号の説明】
【0082】
10 アンテナ構造
12 基点
14 開口
16 金属面
18 外端
20 FET構造
22 2DEG
24 ソース領域
26 ゲート領域
28 ドレイン領域
34 ソース電極構造
34a オーミックソースコンタクト
34b ソースメタライゼーション
36 ゲート電極構造
38 ドレイン電極構造
38a オーミックドレインコンタクト
38b ドレインメタライゼーション
40 コンデンサ
42 電気的絶縁領域
70 回路基板
72 バッファ層
74 活性領域
76 絶縁層
77、78、79 パッシベーション層
100 放射検出器
A、B アンテナ部
a、b 開口部
E1 第1平面
E2 第2平面
図1a)】
図1b)】
図2a)】
図2b)】
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10