(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
一端部に容器本体開口部が形成された開口周縁部を有し、他端部が閉塞された筒状の壁部を備え、前記壁部の内面によって、複数の基板を収納可能であり前記容器本体開口部に連通する基板収納空間が形成された容器本体と、
前記容器本体開口部に対して着脱可能であり、前記容器本体開口部を閉塞可能な蓋体と、
前記基板収納空間内において対をなすように配置され、前記蓋体によって前記容器本体開口部が閉塞されていないときに、前記複数の基板のうちの隣接する基板同士を所定の間隔で離間させて並列させた状態で、前記複数の基板の縁部を支持可能な側方基板支持部と、
前記蓋体によって前記容器本体開口部が閉塞されているときに、前記基板収納空間に対向する前記蓋体の部分に配置されて、前記複数の基板の縁部を支持可能な蓋体側基板支持部と、
前記基板収納空間内において前記蓋体側基板支持部と対をなすように配置され、前記複数の基板の縁部を支持可能であり、前記蓋体によって前記容器本体開口部が閉塞されているときに前記蓋体側基板支持部と協働して、前記複数の基板を支持可能な奥側基板支持部と、を備え、
前記奥側基板支持部は、
前記基板収納空間の中心から離間するように傾斜して延び、前記基板の裏面の端部が摺動する下側傾斜面と、
前記下側傾斜面よりも上側に位置し、前記基板の縁部を支持可能な基板支持部と、を有し、
前記蓋体によって前記容器本体開口部が閉塞されているときに、前記基板の縁部は、前記下側傾斜面に対して摺動して前記基板支持部へ至るまで移動し、
少なくとも前記下側傾斜面の一部は、前記基板支持部を構成する第1部材とは別の材料により構成される第2部材により構成され、前記第2部材は、前記第1部材よりも、最大静摩擦係数が低く且つ耐摩耗性が低い基板収納容器。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、第1実施形態による基板収納容器1について、図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の第1実施形態に係る基板収納容器1に複数の基板Wが収納された様子を示す分解斜視図である。
図2は、本発明の第1実施形態に係る基板収納容器1の容器本体2を示す斜視図である。
図3は、本発明の第1実施形態に係る基板収納容器1の蓋体3を示す斜視図である。
【0014】
ここで、説明の便宜上、後述の容器本体2から蓋体3へ向かう方向(
図1における右上から左下へ向かう方向)を前方向D11と定義し、その反対の方向を後方向D12と定義し、これらをあわせて前後方向D1と定義する。また、後述の下壁24から上壁23へと向かう方向(
図1における上方向)を上方向D21と定義し、その反対の方向を下方向D22と定義し、これらをあわせて上下方向D2と定義する。また、後述する第2側壁26から第1側壁25へと向かう方向(
図1における右下から左上へ向かう方向)を左方向D31と定義し、その反対の方向を右方向D32と定義し、これらをあわせて左右方向D3と定義する。主要な図面には、これらの方向を示す矢印を図示している。
【0015】
また、基板収納容器1に収納される基板W(
図1参照)は、円盤状のシリコンウェーハ、ガラスウェーハ、サファイアウェーハ等であり、産業に用いられる薄いものである。本実施形態における基板Wは、直径300mmのシリコンウェーハである。
【0016】
図1に示すように、基板収納容器1は、上述のようなシリコンウェーハからなる基板Wを収納して、陸運手段・空運手段・海運手段等の輸送手段により基板Wを輸送するための出荷容器として用いられたりするものであり、容器本体2と、蓋体3とから構成される。容器本体2は、側方基板支持部としての基板支持板状部5と、奥側基板支持部6(
図2等参照)とを備えており、蓋体3は、蓋体側基板支持部としてのフロントリテーナ7(
図3等参照)を備えている。
【0017】
容器本体2は、一端部に容器本体開口部21が形成され、他端部が閉塞された筒状の壁部20を有する。容器本体2内には基板収納空間27が形成されている。基板収納空間27は、壁部20により取り囲まれて形成されている。壁部20の部分であって基板収納空間27を形成している部分には、基板支持板状部5が配置されている。基板収納空間27には、
図1に示すように、複数の基板Wを収納可能である。
【0018】
基板支持板状部5は、基板収納空間27内において対をなすように壁部20に設けられている。基板支持板状部5は、蓋体3によって容器本体開口部21が閉塞されていないときに、複数の基板Wの縁部に当接することにより、隣接する基板W同士を所定の間隔で離間させて並列させた状態で、複数の基板Wの縁部を支持可能である。基板支持板状部5の奥側には、奥側基板支持部6が基板支持板状部5と一体成形されて設けられている。
【0019】
奥側基板支持部6(
図2等参照)は、基板収納空間27内において後述するフロントリテーナ7(
図3等参照)と対をなすように壁部20に設けられている。奥側基板支持部6は、蓋体3によって容器本体開口部21が閉塞されているときに、複数の基板Wの縁部に当接することにより、複数の基板Wの縁部の後部を支持可能である。
【0020】
蓋体3は、容器本体開口部21を形成する開口周縁部28(
図1等)に対して着脱可能であり、容器本体開口部21を閉塞可能である。フロントリテーナ7は、蓋体3の部分であって蓋体3によって容器本体開口部21が閉塞されているときに基板収納空間27に対向する部分に設けられている。フロントリテーナ7は、基板収納空間27の内部において奥側基板支持部6と対をなすように配置されている。
【0021】
フロントリテーナ7は、蓋体3によって容器本体開口部21が閉塞されているときに、複数の基板Wの縁部に当接することにより複数の基板Wの縁部の前部を支持可能である。フロントリテーナ7は、蓋体3によって容器本体開口部21が閉塞されているときに、奥側基板支持部6と協働して複数の基板Wを支持することにより、隣接する基板W同士を所定の間隔で離間させて並列させた状態で保持する。
【0022】
基板収納容器1は、プラスチック材等の樹脂で構成されており、特に説明が無い場合には、その材料の樹脂としては、たとえば、ポリカーボネート、シクロオレフィンポリマー、ポリエーテルイミド、ポリエーテルケトン、ポリブチレンテレフタレート、ポリエーテルエーテルケトン、液晶ポリマーといった熱可塑性樹脂やこれらのアロイ等が上げられる。これらの成形材料の樹脂には、導電性を付与する場合には、カーボン繊維、カーボンパウダー、カーボンナノチューブ、導電性ポリマー等の導電性物質が選択的に添加される。また、剛性を上げるためにガラス繊維や炭素繊維等を添加することも可能である。
【0023】
以下、各部について、詳細に説明する。
図4は、本発明の第1実施形態に係る基板収納容器1の基板支持板状部5を示す側面図である。
図5は、
図4のA−A線に沿った拡大断面図である。
図1に示すように、容器本体2の壁部20は、奥壁22と上壁23と下壁24と第1側壁25と第2側壁26とを有する。奥壁22、上壁23、下壁24、第1側壁25、及び第2側壁26は、上述した材料により構成されており、一体成形されて構成されている。
【0024】
第1側壁25と第2側壁26とは対向しており、上壁23と下壁24とは対向している。上壁23の後端、下壁24の後端、第1側壁25の後端、及び第2側壁26の後端は、全て奥壁22に接続されている。上壁23の前端、下壁24の前端、第1側壁25の前端、及び第2側壁26の前端は、奥壁22に対向する位置関係を有し、略長方形状をした容器本体開口部21を形成する開口周縁部28を構成する。
【0025】
開口周縁部28は、容器本体2の一端部に設けられており、奥壁22は、容器本体2の他端部に位置している。壁部20の外面により形成される容器本体2の外形は箱状である。壁部20の内面、即ち、奥壁22の内面、上壁23の内面、下壁24の内面、第1側壁25の内面、及び第2側壁26の内面は、これらによって取り囲まれた基板収納空間27を形成している。開口周縁部28に形成された容器本体開口部21は、壁部20により取り囲まれて容器本体2の内部に形成された基板収納空間27に連通している。基板収納空間27には、最大で25枚の基板Wを収納可能である。
【0026】
図1に示すように、上壁23及び下壁24の部分であって、開口周縁部28の近傍の部分には、基板収納空間27の外方へ向かって窪んだラッチ係合凹部231A、231B、241A、241Bが形成されている。ラッチ係合凹部231A、231B、241A、241Bは、上壁23及び下壁24の左右両端部近傍に1つずつ、計4つ形成されている。
【0027】
図1に示すように、上壁23の外面においては、リブ235が、上壁23と一体成形されて設けられている。リブ235は、容器本体2の剛性を高める。また、上壁23の中央部には、トップフランジ236が固定される。トップフランジ236は、AMHS(自動ウェーハ搬送システム)、PGV(ウェーハ基板搬送台車)等において基板収納容器1を吊り下げる際に、基板収納容器1において掛けられて吊り下げられる部分となる部材である。
【0028】
基板支持板状部5は、第1側壁25及び第2側壁26にそれぞれ設けられており、左右方向D3において対をなすようにして基板収納空間27内に配置された内装部品である。具体的には、
図2、
図4等に示すように、基板支持板状部5は、板部51と板部支持部としての支持壁52とを有している。板部51と支持壁52は、樹脂材料が一体成形されて構成されており、板部51は、支持壁52によって支持されている。
【0029】
板部51は、板状の略弧形状を有している。板部51は、第1側壁25、第2側壁26それぞれに、上下方向D2に25枚ずつ計50枚設けられている。隣接する板部51は、上下方向D2において10mm〜12mm間隔で互いに離間して平行な位置関係で配置されている。なお、最も上に位置する板部51の上方には、もう一枚板部51と平行に板状の部材59が配置されているが、これは、最も上に位置して基板収納空間27内へ挿入される基板Wに対して、当該挿入の際のガイドの役割をする部材である。
【0030】
また、第1側壁25に設けられた25枚の板部51と、第2側壁26に設けられた25枚の板部51とは、互いに左右方向D3において対向する位置関係を有している。また、50枚の板部51、及び、板部51と平行な板状のガイドの役割をする部材59は、下壁24の内面に平行な位置関係を有している。
図2等に示すように、板部51の上面には、凸部511、512が設けられている。板部51に支持された基板Wは、凸部511、512の突出端にのみ接触し、面で板部51に接触しない。
【0031】
支持壁52は、上下方向D2及び略前後方向D1に延びる板状を有している。支持壁52は、
図4に示すように、板部51の長手方向において所定の長さを有しており、板部51の側端縁に接続されている。板状の支持壁52は、板部51の外側端縁に沿って基板収納空間27へ湾曲している。
【0032】
即ち、第1側壁25に設けられた25枚の板部51は、第1側壁25側に設けられた支持壁52に接続されている。同様に、第2側壁26に設けられた25枚の板部51は、第2側壁26側に設けられた支持壁52に接続されている。支持壁52は、第1側壁25、第2側壁26にそれぞれ固定される。
【0033】
このような構成の基板支持板状部5は、複数の基板Wのうちの隣接する基板W同士を、所定の間隔で離間した状態で且つ互いに平行な位置関係とした状態で、複数の基板Wの縁部を支持可能である。
【0034】
図4、
図5に示すように、奥側基板支持部6は、奥側端縁支持部60を有している。奥側端縁支持部60は、基板支持板状部5の板部51の後端部に、板部51及び支持壁52と一体成形されて構成されている。従って、側方基板支持部としての基板支持板状部5と、奥側基板支持部6とは、容器本体2の内部において容器本体2に対して固定される結合した1つの内装部品を構成する。
【0035】
奥側端縁支持部60は、基板収納空間27に収納可能な基板Wの一枚毎に対応した個数、具体的には、25個設けられている。第1側壁25及び第2側壁26に配置された奥側端縁支持部60は、前後方向D1において、後述するフロントリテーナ7と対をなすような位置関係を有している。
【0036】
奥側端縁支持部60は、
図5に示すように、下側当接面611を有する支持部下側凸部61と、下側傾斜面622を有する支持部下部62と、基板支持部632及び上側傾斜面631を有する支持部上部63と、を有している。
【0037】
具体的には、下側当接面611は、蓋体3によって容器本体開口部21が閉塞されていないときに、基板Wの裏面の端縁に当接し、基板Wを支持する。
下側傾斜面622は、上方向D21に進むにつれて、基板収納空間27の中心(
図5における右側)から離間するように、下側当接面611の上端部から傾斜して延びる傾斜面により構成されており、基板Wの裏面の端部が摺動する。下側当接面611と上側傾斜面631との傾斜面同士を接続する接続部としての基板支持部632は、下側傾斜面622の上端部に接続された略V字状に屈曲して基板Wの縁部を支持する支持面を有する。上側傾斜面631は、上方向D21に進むにつれて、基板収納空間27の中心(
図6Aにおける右側)に接近するように、基板支持部632の上端部から傾斜して延びる傾斜面により構成されている。
【0038】
下側傾斜面622、基板支持部632、及び上側傾斜面631は、下側当接面611よりも上側に配置され、基板Wの端部が係合可能な基板収納空間27の中心から離間するように窪んだ凹溝であるV字状溝64を形成し、基板支持部632はV字状溝64の頂点の部分を構成する。蓋体3により容器本体開口部21を閉塞したときに、基板Wが下側傾斜面622に対して摺動してせり上がり、基板WがV字状溝64の頂点の位置に至ったときに、基板Wの表面の端縁と裏面の端縁とが基板支持部632にそれぞれ当接し、基板支持部632は、基板Wの縁部をV字状溝64においてに支持する。
【0039】
下側当接面611を有する支持部下側凸部61、及び、上側傾斜面631及び基板支持部632を有する支持部上部63は、同一の材料である第1部材としてのポリカーボネート(PC)により一体成形されて構成されている。下側傾斜面622を有する支持部下部62は、下側傾斜面622を有する支持部下側凸部61、及び、上側傾斜面631及び基板支持部632を有する支持部上部63とは異なる材料である第2部材としてのポリブチレンテレフタレート(PBT)により構成されている。即ち、下側傾斜面622の全体は、ポリブチレンテレフタレート(PBT)により構成されている。支持部下側凸部61及び支持部上部63と、支持部下部62とは、二色成形又はインサート成形により一体とされており、複数の下側傾斜面622のうちの一の下側傾斜面622の部分は、当該一の下側傾斜面622に隣接する上側及び下側の下側傾斜面622の部分と、上下方向延出部601により、一体的に接続されている。
【0040】
ポリカーボネート(PC)により構成された下側当接面611、基板支持部632、及び、上側傾斜面631は、ポリブチレンテレフタレート(PBT)により構成された下側傾斜面622よりも、耐摩耗性が高い。耐摩耗性の高低については、JIS K 7204に規定された規格による試験方法により確認可能である。
また、基板Wに対して下側傾斜面622を摺動させた場合の最大静摩擦係数は、基板Wに対して下側当接面611、基板支持部632、及び、上側傾斜面631を摺動させた場合のいずれの最大静摩擦係数よりも相対的に低い値となるように、下側傾斜面622、下側当接面611、基板支持部632、及び、上側傾斜面631は、適宜粗面加工等の表面処理が施されている。
【0041】
基板Wに対する下側傾斜面622、下側当接面611、基板支持部632、及び、上側傾斜面631の最大静摩擦係数の値は、下側傾斜面622、下側当接面611、基板支持部632、及び、上側傾斜面631を有する部分を部分的に切断して得られたものT(
図6参照)について、切断面以外の外表面の部分を、基板Wに対して摺動させる試験により得られる。
図6は、本発明の第1実施形態に係る基板収納容器1の基板支持板状部5を構成する材料の最大静摩擦係数を測定するための試験機を示す拡大断面図である。
ここで用いられる基板Wとは、基板Wを部分的に切断して得られたものであり、この切断面以外の外表面の部分に対して、摺動が行われる。試験では、「往復摩擦抵抗測定機」(例えば、新東科学株式会社製の表面性測定機Type:38)を用いて、最大静摩擦係数の値を確認可能である。
【0042】
具体的には、最大静摩擦係数の値は、
図6に示すように、往復摩擦抵抗測定機のアーム1001に、基板Wを部分的に切断して得られたものを固定し、下側傾斜面622、下側当接面611、基板支持部632、及び、上側傾斜面631のうちのいずれかを部分的に切断して台座1002上に固定されたものTに対して、350gfの荷重で1500mm/分の速度で5mm摺動させることにより、最大静摩擦係数の値を確認可能である。
【0043】
蓋体3は、
図1等に示すように、容器本体2の開口周縁部28の形状と略一致する略長方形状を有している。蓋体3は容器本体2の開口周縁部28に対して着脱可能であり、開口周縁部28に蓋体3が装着されることにより、蓋体3は、容器本体開口部21を閉塞可能である。蓋体3の内面(
図1に示す蓋体3の裏側の面)であって、蓋体3が容器本体開口部21を閉塞しているときの開口周縁部28のすぐ後方向D12の位置に形成された段差の部分の面(シール面281)に対向する面には、環状のシール部材4が取り付けられている。シール部材4は、弾性変形可能なポリエステル系、ポリオレフィン系など各種熱可塑性エラストマー、フッ素ゴム製、シリコンゴム製等により構成されている。シール部材4は、蓋体3の外周縁部を一周するように配置されている。
【0044】
蓋体3が開口周縁部28に装着されたときに、シール部材4は、シール面281と蓋体3の内面とにより挟まれて弾性変形し、蓋体3は、容器本体開口部21を密閉した状態で閉塞する。開口周縁部28から蓋体3が取り外されることにより、容器本体2内の基板収納空間27に対して、基板Wを出し入れ可能となる。
【0045】
蓋体3においては、ラッチ機構が設けられている。ラッチ機構は、蓋体3の左右両端部近傍に設けられており、
図1に示すように、蓋体3の上辺から上方向D21へ突出可能な2つの上側ラッチ部32Aと、蓋体3の下辺から下方向D22へ突出可能な2つの下側ラッチ部32Bと、を備えている。2つの上側ラッチ部32Aは、蓋体3の上辺の左右両端近傍に配置されており、2つの下側ラッチ部32Bは、蓋体3の下辺の左右両端近傍に配置されている。
【0046】
蓋体3の外面においては操作部33が設けられている。操作部33を蓋体3の前側から操作することにより、上側ラッチ部32A、下側ラッチ部32Bを蓋体3の上辺、下辺から突出させることができ、また、上辺、下辺から突出させない状態とすることができる。上側ラッチ部32Aが蓋体3の上辺から上方向D21へ突出して、容器本体2のラッチ係合凹部231A、231Bに係合し、且つ、下側ラッチ部32Bが蓋体3の下辺から下方向D22へ突出して、容器本体2のラッチ係合凹部241A、241Bに係合することにより、蓋体3は、容器本体2の開口周縁部28に固定される。
【0047】
図3に示すように、蓋体3の内側においては、基板収納空間27の外方へ窪んだ凹部34が形成されている。凹部34の内側の蓋体3の部分には、フロントリテーナ7が固定されて設けられている。
【0048】
フロントリテーナ7は、フロントリテーナ基板受け部73を有している。フロントリテーナ基板受け部73は、左右方向D3に所定の間隔で離間して対をなすようにして2つずつ配置されている。このように対をなすようにして2つずつ配置されたフロントリテーナ基板受け部73は、上下方向D2に25対並列した状態で設けられており、それぞれ弾性変形可能な脚部により支持されている。基板収納空間27内に基板Wが収納され、蓋体3が閉じられることにより、フロントリテーナ基板受け部73は、脚部の弾性力により、基板Wの縁部の端縁を、基板収納空間27の中心へ付勢した状態で挟持して支持する。
【0049】
次に、上述した基板収納容器1において、基板Wを基板収納空間27へ収納し、蓋体3によって容器本体開口部21を閉塞する際の動作について説明する。
先ず、
図1に示すように、前後方向D1及び左右方向D3が水平面に平行の位置関係となるように容器本体2を配置させる。次に、複数枚の基板Wを基板支持板状部5の板部51の凸部511、512、及び、奥側端縁支持部60の支持部下側凸部61の下側当接面611にそれぞれ載置する。
【0050】
次に、蓋体3を容器本体開口部21へ接近させてゆき、フロントリテーナ7のフロントリテーナ基板受け部73に当接させる。そして、更に蓋体3を容器本体開口部21へ接近させてゆくと、下側当接面611に当接した状態の基板Wの縁部の裏面の端縁は、
図5に示すように、奥側端縁支持部60の下側傾斜面622に当接し、下側傾斜面622に対して摺動してせり上がる。
【0051】
この際、下側傾斜面622はPBTにより構成されているため、下側傾斜面622に対する基板Wの摺動性は良好であり、基板Wの縁部の裏面の端縁と下側傾斜面622との間の摺動は滑らかであり、当該摺動によるパーティクルの発生が抑えられる。そして、基板WがV字状溝64の頂点の位置に至ったときに、基板Wの表面の端縁と裏面の端縁とが基板支持部632にそれぞれ当接して、基板Wの縁部がV字状溝64において基板支持部632に支持される。
【0052】
基板収納容器1が搬送されている最中に、基板Wの縁部が基板支持部632に支持されている状態のときには、基板支持部632は、耐摩耗性がPBTよりも高いPCにより構成されている。このため、基板収納容器1が振動を受けた場合に、基板支持部632が基板Wに対して摺動することによるパーティクルの発生が抑えられる。
【0053】
次に、本実施形態による効果を確認する試験を行った。試験では、基板支持部632及びフロントリテーナ7を異なる材料により構成した基板収納容器1に基板Wを収納し、所定時間に所定の振動を与えて、パーティクルの発生量を比較することにより行った。
【0054】
具体的には、基板支持部632を有する支持部上部63、及び、支持部下側凸部61と、フロントリテーナ7とを、ポリカーボネート(PC)、ポリエステルエラストマー(PEE)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、PCとPBTとの混合物、PCとポリテトラフルオロエチレン4フッ化エチレンとの混合物、によってそれぞれ構成した基板収納容器を、本発明品、比較品1、比較品2、比較品3、比較品4とし、これらのそれぞれについて、基板支持部632とフロントリテーナ7との表面を表面処理し、表面粗さが0.5μm程度(鏡面)、5μm程度(粗小)、50μm程度(粗中)、100μm程度(粗大)の4種類のものをそれぞれ用意した。
【0055】
そして、これらに基板Wを収納し、基板収納容器に対して0.35Gの加速度で、5分間、上下方向D2に振動を与えた。これにより、
図7においてPで示す基板Wと基板支持部632との接触点、及び、基板Wとフロントリテーナ7との接触点において発生するパーティクルの量について、パーティクルによる色の濃さのレベルを0〜3の間の範囲の値で得た。試験結果は、表1及び
図8に示すとおりである。
図7は、本発明の第1実施形態に係る基板収納容器1において基板Wと当接する部分Pを示す断面図である。
図8は、本発明の第1実施形態に係る基板収納容器1の効果を試す試験の結果を示すグラフである。
【0057】
表1及び
図8に示すように、基板収納容器に収納されている基板Wに当接している部分に耐摩耗性に優れるPCが用いられている本発明品の場合には、表面粗さがいずれの表面状態の場合でも、パーティクルの発生量は低いレベルに抑えられていることが分かる。これに対して、他の材料の場合には、いずれもパーティクルの発生量は高いレベルであることが分かる。
【0058】
この結果より、基板収納容器1を搬送しているときに、基板Wに当接する部分、具体的には、基板支持部632及びフロントリテーナ7は、耐摩耗性に優れるPCにより構成されることが好ましいことが分かる。そして、前述のように、蓋体3によって容器本体開口部21を閉塞している最中に基板Wの裏面の端縁が摺動する下側傾斜面622は、基板Wに対する最大静摩擦係数が小さいPBTにより構成されることが好ましいことから、基板支持部632及びフロントリテーナ7をPCにより構成し、且つ、下側傾斜面622をPBTにより構成することにより、パーティクルの発生を抑えることが可能であり、且つ、蓋体3によって容器本体開口部21を閉塞する際に、下側傾斜面622に対する基板Wの裏面の端縁の摺動を滑らかとすることが可能であることが分かる。
【0059】
上記構成の第1実施形態に係る基板収納容器1によれば、以下のような効果を得ることができる。
前述のように、基板収納容器1は、一端部に容器本体開口部21が形成された開口周縁部28を有し、他端部が閉塞された筒状の壁部20を備え、壁部20の内面によって、複数の基板Wを収納可能であり容器本体開口部21に連通する基板収納空間27が形成された容器本体2と、容器本体開口部21に対して着脱可能であり、容器本体開口部21を閉塞可能な蓋体3と、基板収納空間27内において対をなすように配置され、蓋体3によって容器本体開口部21が閉塞されていないときに、複数の基板Wのうちの隣接する基板W同士を所定の間隔で離間させて並列させた状態で、複数の基板Wの縁部を支持可能な側方基板支持部としての基板支持板状部5と、蓋体3によって容器本体開口部21が閉塞されているときに、基板収納空間27に対向する蓋体3の部分に配置されて、複数の基板Wの縁部を支持可能な蓋体側基板支持部としてのフロントリテーナ7と、基板収納空間27内においてフロントリテーナ7と対をなすように配置され、複数の基板Wの縁部を支持可能であり、蓋体3によって容器本体開口部21が閉塞されているときにフロントリテーナ7と協働して、複数の基板Wを支持可能な奥側基板支持部6と、を備えている。
奥側基板支持部6は、基板収納空間27の中心から離間するように傾斜して延び、基板Wの裏面の端部が摺動する下側傾斜面622と、下側傾斜面622よりも上側に位置し、基板Wの縁部を支持可能な基板支持部632と、を有する。
蓋体3によって容器本体開口部21が閉塞している最中に、基板Wの縁部は、下側傾斜面622に対して摺動して基板支持部632へ至るまで移動し、少なくとも下側傾斜面622の一部は、基板支持部632を構成する第1部材としてのPCとは別の第2部材としてのPBTにより構成され、第2部材は、第1部材よりも、最大静摩擦係数が低く且つ耐摩耗性が低い。
【0060】
上記構成により、PBTにより構成される下側傾斜面622においては、基板Wの摺動が滑らかであり、基板Wの裏面の端縁が下側傾斜面622に対して滑らかにせり上がることを可能とする。このため、蓋体3により容器本体開口部21を閉塞させている最中に、下側傾斜面622に対する基板Wの摺動が滑らでないことによる、下側傾斜面622に対する基板Wのせり上がり不良が抑えられ、また、蓋体3により容器本体開口部21を開いている最中に、下側傾斜面622に対して滑らかに滑り落ちない滑り落ち不良が抑えられる。この結果、基板Wの破損の発生を抑えることが可能となる。
また、基板収納容器1の搬送中に基板Wに当接する基板支持部632においては、耐摩耗性が高い。このため、パーティクルの発生や、基板Wへの樹脂付着量を低減することが可能となる。
【0061】
また、PBTにより構成される第2部材は、インサート成形又は二色成形によりPCにより構成される第1部材に対して一体成形されている。この構成により、少なくとも下側傾斜面622の一部を、基板支持部632を構成する第1部材とは別の第2部材により構成することを容易に実現することができる。
【0062】
また、第1部材は、ポリカーボネート樹脂(PC)により構成され、第2部材は、ポリブチレンテレフタレート樹脂(PBT)により構成されている。この構成により、容易に第2部材を、第1部材よりも、最大静摩擦係数が低く且つ耐摩耗性が低く構成することが容易となる。
【0063】
次に、本発明の第2実施形態に係る、基板収納容器について、図面を参照しながら説明する。
図9は、本発明の第2実施形態に係る基板収納容器の基板支持板状部5Aを示す側面図である。
図10は、本発明の第2実施形態に係る基板収納容器の奥側基板支持部6Aを示す拡大斜視図である。
図11は、本発明の第2実施形態に係る基板収納容器の奥側基板支持部6Aを示す拡大断面図である。
【0064】
第2実施形態では、基板Wが摺動する取付部材66Aが奥側端縁支持部60Aに固定されて設けられている点、奥側端縁支持部60Aの形状が第1実施形態における奥側端縁支持部60とは異なる点で、第1実施形態の基板収納容器とは異なる。これ以外の構成については、第1実施形態と同一であるため、同一の部材については、同一の符号で図示し、説明を省略する。
【0065】
取付部材66Aは、角柱形状を有する本体部661Aと、本体部661Aから水平方向へ突出する突出部662Aとを有している。突出部662Aは、水平に延びる突出部水平面6621Aと、突出部水平面6621Aの突出端部から斜め上方向へ傾斜して延びる突出部傾斜面6622Aと、を備えている。突出部傾斜面6622Aの延出方向における中央部分6623Aは、蓋体3によって容器本体開口部21が閉塞されているときに、第1実施形態における下側傾斜面622と同様に基板Wが摺動する下側傾斜面を構成する。これに対して奥側基板支持部6Aの奥側端縁支持部60Aの下側傾斜面622−2は、第1実施形態における下側傾斜面622よりも上下方向D2に対して大きな角度で傾斜しており、下側傾斜面622−2には、基板Wにほとんど当接せず摺動しない。取付部材66Aは、ポリブチレンテレフタレート(PBT)により構成されている。
【0066】
次に、上述した基板収納容器において、基板Wを基板収納空間27へ収納し、蓋体3によって容器本体開口部21を閉塞する際の動作について説明する。
先ず、
図1に示すように、前後方向D1及び左右方向D3が水平面に平行の位置関係となるように容器本体2を配置させる。次に、
図11に示すように、複数枚の基板Wを基板支持板状部5の板部51の凸部511、512、及び、奥側端縁支持部60Aの支持部下側凸部61の下側当接面611にそれぞれ載置する。
【0067】
次に、蓋体3(
図3等参照)を容器本体開口部21へ接近させてゆき、フロントリテーナ7のフロントリテーナ基板受け部73に当接させる。そして、更に蓋体3を容器本体開口部21へ接近させてゆくと、下側当接面611当接した状態の基板Wの縁部の裏面の端縁は、下側当接面611から浮き上がり、突出部傾斜面6622Aにおいて摺動してせり上がってゆく。
【0068】
この際、突出部傾斜面6622AはPBTにより構成されているため、突出部傾斜面6622Aに対する基板Wの摺動性が良好であり、基板Wの縁部の裏面の端縁と突出部傾斜面6622Aとの間の摺動は滑らかである。そして、
図11において一点鎖線で示すように、基板WがV字状溝64の頂点の位置にある基板支持部632に至ったときに、基板Wの裏面の端縁は、突出部傾斜面6622Aから浮き上がり、基板Wの表面の端縁と裏面の端縁とが基板支持部632にそれぞれ当接して、基板Wの縁部がV字状溝64において基板支持部632に支持される。
【0069】
基板収納容器が搬送されている最中に、基板Wの縁部が基板支持部632に支持されている状態のときには、基板支持部632は、第1実施形態と同様に、耐摩耗性がPBTよりも高いPCにより構成されているため、基板収納容器が振動を受けた場合に、基板支持部632が基板Wに対して摺動することによるパーティクルの発生が抑えられる。
【0070】
上記構成の本実施形態に係る基板収納容器によれば、以下のような効果を得ることができる。
PBTにより構成される第2部材は、PCにより構成される第1部材とは別の部品である取付部材66Aにより構成されて、第1部材に対して固定されている。この構成により、奥側基板支持部6Aの製造時に、インサート成形や二色成形により第1部材と第2部材とを一体としないで済むため、奥側基板支持部6Aの製造を容易とすることができる。
【0071】
本発明は、上述した実施形態に限定されることはなく、特許請求の範囲に記載された技術的範囲において変形が可能である。
【0072】
例えば、容器本体及び蓋体の形状、容器本体に収納可能な基板Wの枚数や寸法は、本実施形態における容器本体2及び蓋体3の形状、容器本体2に収納可能な基板Wの枚数や寸法に限定されない。即ち、側方基板支持部や、蓋体側基板支持部や、奥側基板支持部の構成は、基板支持板状部5と、フロントリテーナ7、奥側基板支持部6の構成に限定されない。また、本実施形態における基板Wは、直径300mmのシリコンウェーハであったが、この値に限定されない。
また、上述の実施形態においては、下側傾斜面622、突出部傾斜面6622Aの全面は第2部材としてのPBTにより構成されたが、この構成に限定されない。例えば、下側傾斜面、突出部傾斜面の少なくとも一部が第2部材により構成されていてもよい。
また、本実施形態においては、インサート成形や二色成形により第1部材と第2部材とを一体として構成したり、取付部材66Aを奥側端縁支持部60Aに固定したりしたが、これらの構成に限定されない。
また、下側当接面611は、PCにより構成されたが、これに限定されない。例えば、下側当接面611は、PBTにより構成されてもよい。
また、奥側基板支持部は、本実施形態では奥側基板支持部6により構成されたが、この構成に限定されない。例えば、容器本体に一体成形されて構成されたリアリテーナによって、奥側基板支持部が構成されてもよい。