【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成27年度国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「高性能・高信頼性太陽光発電の発電コスト低減技術開発 先端複合技術型シリコン太陽電池、高性能CIS太陽電池の技術開発」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第2の導電層が前記第1の配線に直接接している構成と、前記第4の導電層が前記第2の配線に直接接している構成との少なくとも1つの構成を有する、請求項1に記載の光電変換装置。
前記第2の導電層が前記第1の配線よりも酸化され易い金属からなる構成と、前記第4の導電層が前記第2の配線よりも酸化され易い金属からなる構成との少なくとも1つの構成を有する、請求項1または請求項2に記載の光電変換装置。
前記第2の導電層が前記第1の配線よりも硬度の高い金属からなる構成と、前記第4の導電層が前記第2の配線よりも硬度の高い金属からなる構成との少なくとも1つの構成を有する、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の光電変換装置。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰返さない。
【0032】
[実施の形態1]
図1は、実施の形態1による光電変換装置の平面図である。
図2は、
図1に示す線II−II間における光電変換装置の断面図である。
図3は、
図1に示す線III−III間における光電変換装置の断面図である。
図4は、
図1に示す線IV−IV間における光電変換装置の断面図である。なお、
図1は、光入射側と反対側から見た光電変換装置の平面図である。
【0033】
図1から
図4を参照して、実施の形態1による光電変換装置10は、半導体基板1と、反射防止膜2と、第1非晶質半導体層3と、第2非晶質半導体層4と、電極5,6と、導電性接着層7と、配線基板8と、絶縁性接着層9とを備える。
【0034】
半導体基板1は、例えば、n型単結晶シリコン基板からなり、100〜200μmの厚さを有する。また、半導体基板1は、例えば、(100)の面方位および1〜10Ωcmの比抵抗を有する。そして、半導体基板1は、光入射側の表面にテクスチャ構造を有する。
【0035】
反射防止膜2は、半導体基板1の光入射側の表面に配置される。反射防止膜2は、例えば、酸化シリコンおよびシリコンナイトライドの積層構造からなる。この場合、酸化シリコンが半導体基板1に接して配置され、シリコンナイトライドが酸化シリコンに接して配置される。そして、反射防止膜2は、例えば、100〜1000nmの膜厚を有する。
【0036】
第1非晶質半導体層3は、半導体基板1の光入射側の表面と反対側の表面に配置される。この場合、第1非晶質半導体層3は、x−y平面において第2非晶質半導体層4の周囲を囲むように配置される。そして、第1非晶質半導体層3は、i型非晶質半導体層31と、p型非晶質半導体層32とを含む。
【0037】
i型非晶質半導体層31は、半導体基板1に接して半導体基板1上に配置される。i型非晶質半導体層31は、例えば、i型非晶質シリコン、i型非晶質シリコンカーバイド、i型非晶質シリコンナイトライド、i型非晶質シリコンオキサイドおよびi型非晶質シリコンナイトライドオキサイド等からなる。そして、i型非晶質半導体層31は、例えば、5〜30nmの膜厚を有する。
【0038】
「i型」とは、完全な真性の状態だけでなく、十分に低濃度(n型不純物濃度が1×10
15個/cm
3未満、かつp型不純物濃度が1×10
15個/cm
3未満)であればn型またはp型の不純物が混入された状態のものも含む意味である。
【0039】
また、この発明の実施の形態において、「非晶質シリコン」には、シリコン原子の未結合手(ダングリングボンド)が水素で終端されていない非晶質シリコンだけでなく、水素化非晶質シリコンなどのシリコン原子の未結合手が水素等で終端されたものも含まれるものとする。
【0040】
p型非晶質半導体層32は、i型非晶質半導体層31に接してi型非晶質半導体層31上に配置される。p型非晶質半導体層32は、例えば、p型非晶質シリコン、p型非晶質シリコンカーバイド、p型非晶質シリコンナイトライド、p型非晶質シリコンオキサイドおよびp型非晶質シリコンナイトライドオキサイド等からなる。そして、p型非晶質半導体層32は、例えば、5〜30nmの膜厚を有する。
【0041】
p型非晶質半導体層32に含まれるp型不純物としては、例えば、ボロン(B)を用いることができる。また、この発明の実施の形態において、「p型」とは、p型不純物濃度が1×10
15個/cm
3以上の状態を意味する。
【0042】
第2非晶質半導体層4は、半導体基板1の光入射側の表面と反対側の表面において、第一の方向(x軸方向)に長い形状を有するように配置される。第2非晶質半導体層4は、第一の方向(x軸方向)に直交する方向である第2非晶質半導体層4の幅方向(y軸方向)における第1非晶質半導体層3の配置位置と異なる配置位置に配置される。そして、第2非晶質半導体層4は、i型非晶質半導体層41と、n型非晶質半導体層42とを含む。
【0043】
i型非晶質半導体層41は、半導体基板1に接して半導体基板1上に配置される。i型非晶質半導体層41は、例えば、i型非晶質シリコン、i型非晶質シリコンカーバイド、i型非晶質シリコンナイトライド、i型非晶質シリコンオキサイドおよびi型非晶質シリコンナイトライドオキサイド等からなる。そして、i型非晶質半導体層41は、例えば、5〜30nmの膜厚を有する。
【0044】
n型非晶質半導体層42は、i型非晶質半導体層41に接してi型非晶質半導体層41上に配置される。n型非晶質半導体層42は、例えば、n型非晶質シリコン、n型非晶質シリコンカーバイド、n型非晶質シリコンナイトライド、n型非晶質シリコンオキサイドおよびn型非晶質シリコンナイトライドオキサイド等からなる。そして、n型非晶質半導体層42は、例えば、5〜30nmの膜厚を有する。
【0045】
なお、n型非晶質半導体層42に含まれるn型不純物としては、例えば、リン(P)を用いることができる。また、この発明の実施の形態において、「n型」とは、n型不純物濃度が1×10
15個/cm
3以上の状態を意味する。
【0046】
電極5は、第1非晶質半導体層3上に配置される。電極5は、長さ方向(x軸方向)に分離された複数の電極50からなる。複数の電極50は、所定の間隔で配置される。
【0047】
電極5は、導電層51,52を含む。導電層51は、第1非晶質半導体層3に接して配置される。導電層51は、例えば、銀からなる。そして、導電層51は、例えば、50〜300nmの膜厚を有する。
【0048】
導電層52は、導電層51に接して導電層51上に配置される。導電層52は、良好な酸化被膜を作りやすく、かつ、電気化学的に安定な金属からなる。好ましくは、導電層52は、銀よりも酸化され易い金属からなり、または配線82,83よりも酸化され易い金属からなり、または配線82,83よりも硬度が高い金属からなる。導電層52は、例えば、銅、ニッケル、アルミニウム、モリブデン、チタンおよびこれらの合金からなる。これらの中で、銅、ニッケルおよびニッケル合金が導電層52の材料として好ましい。そして、導電層52は、例えば、100nm〜500nmの膜厚を有する。
【0049】
なお、電極5は、長さ方向(x軸方向)に繋がった構造であってもよい。
【0050】
電極6は、第2非晶質半導体層4上に配置される。電極6は、長さ方向(x方向)に分離された複数の電極60からなる。複数の電極60は、所定の間隔で配置される。
【0051】
電極6は、導電層61,62を含む。導電層61は、第2非晶質半導体層4に接して配置される。導電層61は、導電層51と同じ材料からなり、導電層51と同じ膜厚を有する。
【0052】
導電層62は、導電層61に接して導電層61上に配置される。そして、導電層62は、導電層52と同じ材料からなり、導電層52と同じ膜厚を有する。
【0053】
なお、電極6は、長さ方向(x軸方向)に繋がった構造であってもよい。
【0054】
導電性接着層7は、電極5の導電層52と配線基板8の配線82との間に導電層52および配線82に接して配置される(
図2参照)。また、導電性接着層7は、電極6の導電層62と配線基板8の配線83との間に導電層62および配線83に接して配置される(
図3参照)。そして、導電性接着層7は、例えば、低融点はんだ、導電性接着剤および導電性ペースト等からなる。導電性接着層7は、電極5,6の導電層52,62と配線基板8の配線82,83を電気的に接続するとともに、機械的にも接続する。
【0055】
配線基板8は、絶縁性基板81と、配線82,83とを含む。配線82,83は、絶縁性基板81上に配置される。配線82,83は、櫛形の平面形状を有する(
図1参照)。
【0056】
絶縁性接着層9は、電極5,6の周囲を囲む。
【0057】
図2においては、配線82は、導電性接着層7によって電極5(導電層52)に電気的に接続され、配線83は、電極6に対向する。また、
図3においては、配線83は、導電性接着層7によって電極6(導電層62)に電気的に接続され、配線82は、電極5に対向する。電極5,6上の絶縁性接着層9、および導電性接着層7が無い部分では、空間となっている。
【0058】
そして、配線82が導電性接着層7によって電極5に電気的に接続される場合、例えば、2箇所で導電性接着層7によって電極5(複数の電極50の各々)に接続される(
図1参照)。また、配線83が導電性接着層7によって電極6に電気的に接続される場合、例えば、2箇所で導電性接着層7によって電極6(複数の電極60の各々)に接続される(
図1,4参照)。
【0059】
絶縁性基板81は、絶縁性材料からなり、例えば、ポリエステル、ポリエチレンナフタレート、およびポリイミド等のフィルムからなる。
【0060】
配線82,83の各々は、導電性材料からなり、例えば、アルミニウム、銅、銀、スズおよび亜鉛等を積層した導電材料からなる。
【0061】
図5から
図7は、それぞれ、
図1から
図4に示す光電変換装置10の製造工程を示す第1から第3の工程図である。なお、
図5から
図7に示す工程図は、
図1に示す線IV−IV間における断面図を用いて示されている。
【0062】
図5を参照して、光電変換装置10の製造が開始されると、半導体基板1’を準備する(
図5の工程(a))。なお、半導体基板1’は、半導体基板1と同じ面方位、比抵抗、導電型および厚さを有する。
【0063】
そして、半導体基板1’の一方の面に保護膜20を形成する(
図5の工程(b))。保護膜20は、例えば、酸化シリコンおよび窒化シリコンからなり、例えば、スパッタリングによって形成される。
【0064】
その後、保護膜20が形成された半導体基板1’をNaOHおよびKOH等のアルカリ溶液(例えば、KOH:1〜5wt%、イソプロピルアルコール:1〜10wt%の水溶液)を用いてエッチングする。これによって、保護膜20が形成された半導体基板1’の面と反対側の表面が異方性エッチングされ、ピラミッド形状のテクスチャ構造が形成される。そして、保護膜20を除去することによって半導体基板1が得られる(
図5の工程(c)参照)。
【0065】
引き続いて、半導体基板1のテクスチャ構造が形成された表面に反射防止膜2を形成する(
図5の工程(d))。より具体的には、例えば、スパッタリング法によって、酸化シリコンおよびシリコンナイトライドを半導体基板1上に順次堆積することによって反射防止膜2を形成する。
【0066】
工程(d)の後、半導体基板1のテクスチャ構造が形成された表面と反対側の表面にi型非晶質半導体層21およびp型非晶質半導体層22を順次形成する(
図5の工程(e))。i型非晶質半導体層21およびp型非晶質半導体層22の形成方法は、特に限定されないが、例えば、プラズマCVD(Chemical Vapor Deposition)法が用いられる。
【0067】
i型非晶質半導体層21がi型非晶質シリコン、i型非晶質シリコンカーバイド、i型非晶質シリコンナイトライド、i型非晶質シリコンオキサイドおよびi型非晶質シリコンナイトライドオキサイド等からなる場合、プラズマCVD法を用いてi型非晶質半導体層21を形成するときの条件は、公知であるので、その公知の条件を用いてi型非晶質半導体層21を形成できる。
【0068】
また、p型非晶質半導体層22がp型非晶質シリコン、p型非晶質シリコンカーバイド、p型非晶質シリコンナイトライド、p型非晶質シリコンオキサイドおよびp型非晶質シリコンナイトライドオキサイド等からなる場合、プラズマCVD法を用いてp型非晶質半導体層22を形成するときの条件は、公知であるので、その公知の条件を用いてp型非晶質半導体層22を形成できる。
【0069】
工程(e)の後、p型非晶質半導体層22上にエッチングペースト23を塗布する(
図6の工程(f))。ここで、エッチングペースト23としては、i型非晶質半導体層21およびp型非晶質半導体層22の積層体をエッチングすることができるものであれば、特に限定されない。
【0070】
次に、エッチングペースト23を加熱することによってi型非晶質半導体層21およびp型非晶質半導体層22の積層体の一部を厚さ方向にエッチングする(
図6の工程(g))。これによって、半導体基板1の裏面(テクスチャ構造が形成された面と反対側の表面)の一部を露出させる。また、i型非晶質半導体層31およびp型非晶質半導体層32を含む第1非晶質半導体層3が形成される。
【0071】
そして、半導体基板1の裏面の露出面およびp型非晶質半導体層32に接するようにi型非晶質半導体層24を形成し、その後、i型非晶質半導体層24の全面に接するようにn型非晶質半導体層25を形成する(
図6の工程(h))。i型非晶質半導体層24およびn型非晶質半導体層25の形成方法は、特に限定されないが、例えば、プラズマCVD法が用いられる。
【0072】
i型非晶質半導体層24がi型非晶質シリコン、i型非晶質シリコンカーバイド、i型非晶質シリコンナイトライド、i型非晶質シリコンオキサイドおよびi型非晶質シリコンナイトライドオキサイド等からなる場合、プラズマCVD法を用いてi型非晶質半導体層24を形成するときの条件は、公知であるので、その公知の条件を用いてi型非晶質半導体層24を形成できる。
【0073】
また、n型非晶質半導体層25がn型非晶質シリコン、n型非晶質シリコンカーバイド、n型非晶質シリコンナイトライド、n型非晶質シリコンオキサイドおよびn型非晶質シリコンナイトライドオキサイド等からなる場合、プラズマCVD法を用いてn型非晶質半導体層25を形成するときの条件は、公知であるので、その公知の条件を用いてn型非晶質半導体層25を形成できる。
【0074】
工程(h)の後、n型非晶質半導体層25上にエッチングマスク26を塗布する(
図6の工程(i))。エッチングマスク26としては、i型非晶質半導体層24およびn型非晶質半導体層25の積層体をエッチングする際にマスクとして機能することができるものであれば、特に限定されない。
【0075】
次に、エッチングマスク26をマスクとして用いてエッチングを行い、i型非晶質半導体層24およびn型非晶質半導体層25の積層体の一部を厚さ方向にエッチングし、その後、エッチングマスク26を除去する。これによって、p型非晶質半導体層32の表面の一部を露出させる(
図7の工程(j))。また、i型非晶質半導体層41およびn型非晶質半導体層42を含む第2非晶質半導体層4が形成される。
【0076】
そして、p型非晶質半導体層32上に電極5を形成し、n型非晶質半導体層42上に電極6を形成する(
図7の工程(k))。ここで、電極5,6は、メタルマスク等によるマスクを用いてスパッタリングまたは蒸着で形成することができる。メタルマスクは、電極を形成したい場所が開口されており、メタルマスクの機械的強度を維持するために、開口と開口していない部分との比率、最小開口幅、および形状等の制限があるので、開口は、矩形等の単純な形が望ましい。また、開口が様々な場所にあるよりも、開口が配列している方が、機械的強度を維持し易い。
【0077】
導電層51,52を連続して同一のメタルマスクを用いて成膜することにより電極5を形成でき、導電層61,62を連続して同一のメタルマスクを用いて成膜することにより電極6を形成できる。また、例えば、同一のスパッタリング装置を用いて真空中で連続して、導電層51,61および導電層52,62を成膜することにより電極5,6を形成することができる。これにより、コストを削減することができる。
【0078】
このように、メタルマスクを用いてスパッタリング装置等で成膜した場合、導電層51,61の概略上面を被覆するように導電層52,62を設けることができる。また、このようにして形成した電極5,6は、開口幅と形成条件により、膜厚が周辺部から中心部に向かって厚くなる場合がある。
【0079】
工程(k)の後、導電性接着層7として低融点はんだペーストを印刷等により電極5,6上の複数箇所にドット状に形成する。また、電極5,6を囲むように絶縁性接着層9を印刷等で塗布する(
図7の工程(l))。
【0080】
次に、150μm程度の絶縁性の配線基板81を用意し、配線82,83がそれぞれ電極5,6と略平行になるようにし、所定の位置で電気的接続が取れるように位置を調整して半導体基板1と配線基板8とを貼り合わせる。そして、貼り合わせた半導体基板1および配線基板8に両面から圧力を印加して加熱等することにより、電気的に接合する。これによって、光電変換装置10が完成する(
図7の工程(m))。
【0081】
光電変換装置10においては、電極5は、一部分が導電性接着層7を介して配線82に接続されており、残りの部分が配線82に面している。また、電極6は、一部が導電性接着層7を介して配線83に接続されており、残りの部分が配線83に面している。そして、電極5,6は、一部分で導電性接着層7を介してそれぞれ配線82,83に接続されているので、電極5,6がそれぞれ配線82,83に機械的な強度を持って接続されているとともに、電極5,6が一部分で配線82,83に接続されることにより、電極5,6に印加される応力を逃がすことができる。
【0082】
また、電極5,6は、それぞれ、p型非晶質半導体層32およびn型非晶質半導体層42に接し、かつ、主たる成分が銀である導電層51,61を含むので、反射率が高く、半導体基板1、p型非晶質半導体層32およびn型非晶質半導体層42で吸収されずに透過して来た光を、半導体基板1の光入射面側へ反射することができるので、短絡光電流が増加する。
【0083】
更に、主たる成分が銀である導電層51,61は、それぞれ、p型非晶質半導体層32およびn型非晶質半導体層42と、比較的、良好な電気的接触を得ることができる。
【0084】
更に、電極5,6は、それぞれ、導電層51,61を被覆する導電層52,62を含むので、導電層52,62がそれぞれ導電層51,61よりも先に表面が酸化し、酸化膜が導電層52,62の表面に薄く形成され、酸素の侵入が減少し、導電層51,61(=銀)への酸素の透過を防ぐことができる。その結果、p型非晶質半導体層32およびn型非晶質半導体層42の酸化が抑制され、電極5,6の剥がれを抑制できる。
【0085】
従って、上述した要因によって、銀を電極の主たる成分として用いた光電変換装置10の特性の低下を抑制できる。
【0086】
従来、主たる成分が銀からなる電極を備えた光電変換装置を大気中に置いておくと、特性が低下する場合があった。これは、銀が酸化され難く、銀の中を酸素が透過して、p型非晶質半導体層および/またはn型非晶質半導体層に到達し、p型非晶質半導体層および/またはn型非晶質半導体層を酸化するためである。また、このようにして形成された酸化界面部分が界面での接着力を減少させることがある。
【0087】
大気中に放置しておいて太陽電池の電極が剥がれるのは、このためであると考えられる。特に、配線基板付きヘテロ接合型バックコンタクト太陽電池では、中実の銀からなる材料を電極に用いた場合、電極の膜厚を薄くすることができるので、影響が表れることがあることが分かった。なお、中実とは、電極を構成する物質の密度が構成する金属の密度の95%以上であることを言う。例えば、銀からなる電極の場合、元素の密度が10.49g/cm
3であるので、9.97g/cm
3以上であればよい。
【0088】
また、銀は、導電率が高いので、主たる成分が銀からなる電極の膜厚を薄くできるが、電極の膜厚が薄くなると、酸素が電極とp型非晶質半導体層32およびn型非晶質半導体層42との界面に到達し、p型非晶質半導体層32およびn型非晶質半導体層42が酸化される。
【0089】
しかし、光電変換装置10では、上述したように、導電層51,61は、それぞれ、導電層52,62によって被覆されることにより、酸素が導電層51,61へ侵入し難くなり、p型非晶質半導体層32およびn型非晶質半導体層42の酸化が抑制される。
【0090】
従って、上述した光電変換装置10の構成は、配線基板付きヘテロ接合型バックコンタクト太陽電池にとって好適な構成である。
【0091】
また、導電性接着層7は、電極材料によるが、電極および配線と接着層を作り、接合するので、電極中への混合が見られ、一部、空隙ができ、導電性接着層の近傍からの酸素の透過が増進すると考えられる。特に、中実でない、空隙が存在する電極の場合は、酸素の透過が顕著である。
【0092】
従って、光電変換装置10の導電層52,62は、適度に接着層をつくることで導電性接着層7との良好な接続を行うとともに、導電性接着層7の浸透を減じて、導電性接着層7の銀への拡散を防ぎ、また、導電性接着層7の近傍の空隙の増加を防いで、酸素の透過を防ぐ役目も同時に負っている。
【0093】
導電性接着層の近傍には、応力が印加されること、電流が集中することから、導電性接着層の近傍には、環境試験後に導電型の非晶質半導体層と銀との界面からの剥がれと考えられる現象や、導電型の非晶質半導体層と電極との接合不良の発生と考えられる電気特性不良が見られる場合があるが、導電層52,62を用いることによって、導電性接着層7の近傍の電極5,6の剥がれが減少するとともに、p型非晶質半導体層32およびn型非晶質半導体層42と電極5,6との接合不良の発生が抑制され、光電変換装置10の特性が改善されるとともに信頼性を増すことができる。
【0094】
導電性接着層7で接着されていない部分で、導電層52,62がそれぞれ配線82,83に面しており、導電層52,62の表面が、直接、酸素を含む雰囲気にさらされることで、導電層52,62に、より緻密な酸化膜ができ、酸素の侵入が減少し、銀への酸素の透過を防ぐことができる。
【0095】
この部分では、導電層52,62で表面が覆われていないと、銀の硫化が進むことがあり、信頼性の低下につながることがある。例えば、銀ペースト電極などの中実でない構成では、印刷で作製されるため、電極の膜厚が、比較的、厚く、銀表面の影響は、あまり、見られなかったが、スパッタや、蒸着、メッキなどで作製される電極は、中実であるので、薄くても、抵抗が低く、薄く作られるので、表面の硫化の影響を受けやすい。
【0096】
また、従来は、電極と配線との対向面の大部分が、導電性接着層で接続されていて、特に、問題にならなかったが、電極と配線が導電性接着層で接着された部分と接着されていない部分が混在することで、電気化学的に化学反応が進むことがあるので、電極と配線と導電性接着層との材質により、信頼性に影響する場合がある。
【0097】
導電層52,62がそれぞれ導電層51,61を覆っている場合は、より、緻密な酸化膜ができ、電気化学反応の進行を減じることができ、信頼性を向上できる。
【0098】
また、導電層52,62は、配線82,83よりも酸化され易い金属からなる構成であるので、配線82,83が先に酸化されるのを防ぎ、良好な電気接続を得ることができる。電極5,6が導電性接着層7で配線82,83と接続した部分と、電極5,6が導電性接着層7で接着されていない部分とが混在すると、電気化学的に化学反応が進むことがあるので、導電層52,62が配線82,83よりも酸化され易い金属からなる構成は、好適である。
【0099】
更に、導電層52,62は、配線82,83よりも硬度の高い金属よりなる構成であるので、傷の発生を防止することができる。導電性接着層7での接続を取るにあたり、電極5,6と配線82,83との接触による導電層52,62の傷の発生は、導電層51,61(=銀)への酸素の透過が進行する可能性があるので、避けるべきである。
【0100】
導電層52,62は、電極5,6が、一部分で導電性接着層7を介して、配線82,83に電気的に接続されている場合は、作製時および作製後に、電極5,6と配線82,83とが、直接、接する場合が多く、導電層52,62が配線82,83よりも硬度の高い金属よりなる構成は、好適である。
【0101】
上記においては、半導体基板1は、n型単結晶シリコン基板からなると説明したが、実施の形態1においては、これに限らず、半導体基板1は、n型多結晶シリコン基板、p型単結晶シリコン基板およびp型多結晶シリコン基板のいずれかからなっていてもよい。
【0102】
半導体基板1がp型単結晶シリコン基板またはp型多結晶シリコン基板からなる場合、上記の説明における第1非晶質半導体層3および第2非晶質半導体層4を相互に入れ替えればよい。
【0103】
国際公開第2015/060432号パンフレットは、第1導電層と第2導電層とからなる電極を開示する。第1導電層は、第1金属を主成分として含み、第2導電層は、第2金属を含む。第2金属は、第1金属よりも酸化されやすい(国際公開第2015/060432号パンフレットの段落[0009]参照)。国際公開第2015/060432号パンフレットにおいて、第1導電層は、
図1に開示された導電層26nに相当し、第2導電層は、
図1に開示された導電層28nに相当する。そして、国際公開第2015/060432号パンフレットの
図1によれば、導電層28nは、n型非晶質シリコン層20nに接して配置され、導電層26nは、導電層28nに接して配置される。つまり、国際公開第2015/060432号パンフレットは、より酸化されやすい金属からなる導電層28nをn型非晶質シリコン層20nに接して配置する構成を開示する。従って、国際公開第2015/060432号パンフレットにおいては、n型非晶質シリコン層20nと導電層28nの界面に酸化膜が形成され、n型非晶質シリコン層20nが酸化されることになる。その結果、国際公開第2015/060432号パンフレットに開示された構成では、上述した光電変換装置10における効果を得ることができず、電極の剥がれという問題も解決できない。
【0104】
従って、上述した光電変換装置10の構成は、国際公開第2015/060432号パンフレットに開示された構成と全く異なる構成であり、国際公開第2015/060432号パンフレットには、上述した光電変換装置10の構成に対する示唆もないので、当業者は、国際公開第2015/060432号パンフレットに基づいて、上述した光電変換装置10の構成に容易に想到することは困難である。
【0105】
[実施の形態2]
図8は、実施の形態2による光電変換装置の平面図である。
図9は、
図8に示す線IX−IX間における光電変換装置の断面図である。
図10は、
図8に示す線X−X間における光電変換装置の断面図である。
図11は、
図8に示す線XI−XI間における光電変換装置の断面図である。なお、
図8は、光入射側と反対側から見た光電変換装置の平面図である。
【0106】
図8から
図11を参照して、実施の形態2による光電変換装置10Aは、
図1から
図4に示す光電変換装置10の配線基板8を配線基板8Aに代えたものであり、その他は、光電変換装置10と同じである。
【0107】
図8に示す光電変換装置10Aの平面図は、
図1に示す光電変換装置10の平面図と同じである。
【0108】
図9から
図11を参照して、配線基板8Aは、
図2から
図4に示す配線基板8の絶縁性基板81を絶縁性基板81Aに代えたものであり、その他は、配線基板8と同じである。
【0109】
絶縁性基板81Aは、絶縁性基板81と同じ材料からなる。そして、絶縁性基板81Aは、絶縁性基板81よりも薄く、例えば、50μmの厚さを有する。
【0110】
図9を参照して、電極5は、導電性接着層7によって配線82に接続されている。
【0111】
一方、電極6は、配線83に接している。その結果、電極6は、配線83に電気的に接続されているが、機械的には、接続されていない。従って、電極6の導電層62は、光電変換装置10Aが大気中に置かれている場合、表面が酸素によって酸化される。
【0112】
絶縁性基板81Aは、薄いので、半導体基板1が配線基板8Aと張り合わされるときに加圧されることによって、配線83が配置された部分が電極6の方向へ突出するように屈曲した構造になる(
図9参照)。
【0113】
図10を参照して、電極5は、配線82に接している。その結果、電極5は、配線82に電気的に接続されているが、機械的には、接続されていない。従って、電極5の導電層52は、光電変換装置10Aが大気中に置かれている場合、表面が酸素によって酸化される。
【0114】
一方、電極6は、導電性接着層7によって配線83に接続されている。
【0115】
絶縁性基板81Aは、薄いので、半導体基板1が配線基板8Aと張り合わされるときに加圧されることによって、配線82が配置された部分が電極5の方向へ突出するように屈曲した構造になる(
図10参照)。
【0116】
図11を参照して、電極6は、導電性接着層7によって2箇所で配線83に接続されるとともに、導電性接着層7が存在しない部分で配線83の突出部831に接する。突出部831は、電極6の方向に突出している。その結果、電極6は、導電性接着層7によって電気的および機械的に配線83に接続されるとともに、配線83の突出部831に電気的に接続され、突出部831に機械的には接続されていない。従って、電極6の導電層62のうち、配線83の突出部831に接している部分は、光電変換装置10Aが大気中に置かれている場合、表面が酸素によって酸化される。
【0117】
なお、光電変換装置10Aにおいて、電極5が配置された部分のx軸方向に平行な線における断面図においては、電極5は、導電性接着層7によって2箇所で配線82に接続されるとともに、導電性接着層7が存在しない部分で配線82の突出部に接する。配線82の突出部は、電極5の方向に突出している。その結果、電極5は、導電性接着層7によって電気的および機械的に配線82に接続されるとともに、配線82の突出部に電気的に接続され、配線82の突出部に機械的には接続されていない。従って、電極5の導電層62のうち、配線82の突出部に接している部分は、光電変換装置10Aが大気中に置かれている場合、表面が酸素によって酸化される。
【0118】
なお、光電変換装置10Aは、
図5から
図7に示す工程(a)から工程(m)に従って製造される。この場合、半導体基板1が配線基板8Aと張り合わされることによって、絶縁性基板81Aの一部が電極5,6方向へ突出するとともに、配線82,83の一部がそれぞれ電極5,6方向へ突出する。その結果、光電変換装置10Aの断面図は、
図9から
図11に示すような断面構造になる。
【0119】
光電変換装置10Aにおいては、電極5,6は、導電性接着層7によってそれぞれ配線82,83に接続されるとともに、導電性接着層7が存在しない部分でそれぞれ配線82,83に接している。
【0120】
従って、光電変換装置10Aは、光電変換装置10よりも電極5,6が配線82,83と電気的に接続される部分を増加させることができる。その結果、光電変換装置10Aの特性を向上できる。
【0121】
実施の形態2におけるその他の説明は、実施の形態1における説明と同じである。
【0122】
[実施の形態3]
図12は、実施の形態3による太陽電池モジュールの平面図である。なお、
図12は、光入射側から見た太陽電池モジュールの平面図である。
【0123】
図12を参照して、実施の形態3による太陽電池モジュール100は、配線基板110と、複数の太陽電池120とを備える。
【0124】
複数の太陽電池120は、例えば、4行×6列に配線基板110上に配置される。そして、複数の太陽電池120は、例えば、電気的に直列に接続される。
【0125】
複数の太陽電池120の各々は、上述した光電変換装置10または光電変換装置10Aのうち、半導体基板1と、反射防止膜2と、第1非晶質半導体層3と、第2非晶質半導体層4と、電極5,6とを備える構成からなる。
【0126】
図13は、
図12に示す配線基板110の平面図である。
図13を参照して、配線基板110は、絶縁性基板111と、配線112〜114とを備える。
【0127】
絶縁性基板111としては、絶縁性の基材を用いることができ、例えば、ポリエステル、ポリエチレンナフタレートまたはポリイミドなどのフィルムを用いることができる。そして、絶縁性基板111は、絶縁性基板81または絶縁性基板81Aと同じ厚さを有する。
【0128】
配線112は、複数の配線1121と、配線1122とを含む。複数の配線1121は、相互に並列に配置され、一方端が配線1122に接続されるとともに、配線1122から一方方向に突出する。
【0129】
配線113は、配線1131と、複数の配線1132と、複数の配線1133とを含む。複数の配線1132は、相互に並列に配置され、複数の配線1133は、相互に並列に配置される。
【0130】
複数の配線1132は、一方端が配線1131に接続され、配線1131から一方方向に突出する。
【0131】
複数の配線1133は、一方端が配線1131に接続され、配線1131から複数の配線1132の突出方向と反対方向へ突出する。
【0132】
配線114は、複数の配線1141と、配線1142とを含む。複数の配線1141は、相互に並列に配置され、一方端が配線1142に接続されるとともに、配線1142から一方方向に突出する。
【0133】
配線基板110は、2個の配線112と、18個の配線113と、5個の配線114とを絶縁性基板111上に配置した構成からなる。この場合、配線112,113間においては、配線112の複数の配線1121は、配線113の複数の配線1132と噛み合うように配置される。また、隣接する2つの配線113間においては、一方の配線113の複数の配線1132が他方の配線113の複数の配線1133と噛み合うように配置される。更に、配線113,114間においては、配線113の複数の配線1132または複数の配線1133が配線114の複数の配線1141と噛み合うように配置される。
【0134】
その結果、24個の太陽電池120を配線基板110上に4行×6列に配置することによって、24個の太陽電池120は、電気的に直列に接続される。
【0135】
配線112〜114の各々は、導電性材料からなり、例えば、銅、銀メッキ銅、錫メッキ銅等からなる。
【0136】
なお、配線1131、および複数の配線1132,1133,1141は、例えば、絶縁性基材111の表面の全面に金属膜などの導電膜を形成した後に、その一部をエッチングなどにより除去してパターニングすることによって形成することができる。
【0137】
こうして得られた、配線基板付き裏面接合型太陽電池ストリングを、例えば、従来から公知の方法により樹脂等によって封止することによって、太陽電池モジュール100を作製することができる。
【0138】
このように接続した太陽電池ストリングを封止材であるEVA(エチレンビニルアセテート)フィルムで挟み込み、更に、このEVAフィルムを表面保護層であるガラス板とアクリル樹脂等で形成された裏面フィルムとで挟む。EVAフィルム間に入った気泡を減圧して抜き(ラミネート)、加熱(キュア)すると、EVAが硬化して裏面接合型太陽電池が封止される。その後、その外周にフレームであるアルミニウム枠を嵌め込み、外部に伸びる一対の外部端子に端子ボックスを接続して、太陽電池モジュール100が完成する。
【0139】
このような構成の太陽電池モジュール100についても、太陽電池モジュール100を構成する個々の裏面接合型太陽電池(太陽電池120)において、特性向上効果が発現するため、太陽電池モジュール100の特性は、相乗的に向上し、また、太陽電池モジュール100を構成する裏面接合型太陽電池(太陽電池120)同士の接続もそれぞれ容易となるため、太陽電池モジュール100の作製も容易となるとともに、信頼性が向上する。
【0140】
以下、実施例について説明する。
(実施例1)
実施例1は、実施の形態1に従って、光電変換装置を作製し、その特性の評価を行った。作製について、以下に具体的に説明する。
【0141】
まず、156mmのn型のバルクシリコンから150μmの厚さのウェーハを切り出し、ウェーハ表面のダメージ層を除去するためのエッチングと、厚さを調整するためのエッチングとを行った。
【0142】
これらのエッチングされたウェーハの片面に保護膜を形成する。保護膜としてシリコン窒化膜を形成した。保護膜が形成されたウェーハを、KOH:1〜5wt%、イソプロピルアルコール:1〜10wt%の水溶液を用いてウェットエッチングを行った。エッチング後に保護膜を除去した。
【0143】
引き続いて、半導体基板1の受光面に、シリコン酸化膜とシリコン窒化膜とからなる反射防止膜2を形成した。まず、半導体基板1の表面を熱酸化して基板の受光面に酸化膜を形成し、その後、受光面の酸化膜上にシリコン窒化膜を形成することにより反射防止膜2を形成した。
【0144】
次に、i型非晶質半導体膜31として、実質的に真性で、水素を含有する非晶質シリコン膜をプラズマCVD装置によって5nm形成した。プラズマCVD装置が備える反応室に導入される反応ガスは、シランガスおよび水素ガスを用いた。そして、半導体基板1の温度を200℃に設定し、水素ガス流量を100sccm、シラン(SiH
4)ガスの流量を40sccm、反応室内の圧力を100Paに設定し、高周波(13.56MHz)電力の密度を10mW/cm
2に設定した条件を用いて成膜した。
【0145】
続いて、i型非晶質半導体膜31上に、p型非晶質半導体膜32を10nm形成した。
【0146】
p型非晶質半導体膜32は、プラズマCVD法を用いて形成した。プラズマCVD装置が備える反応室に導入される反応ガスは、シランガス、水素ガス、及び水素希釈されたジボラン(B
2H
6)ガス(ジボラン濃度は2%)を用いた。そして、水素ガス流量を100sccm、シランガス流量を40sccm、ジボランガス流量を40sccmに設定し、半導体基板1の温度を200℃に設定し、反応室内の圧力を100Paに設定し、高周波電力の密度を10mW/cm
2に設定した条件を用いて成膜した。
【0147】
p型非晶質半導体膜32上に市販のエッチングペースト23をスクリーン印刷によって塗布する。次に、エッチングペースト23を200℃に10分間、加熱することによって、i型非晶質半導体膜31およびp型非晶質半導体膜32の積層体の一部を厚さ方向にエッチングした。エッチングされたシリコン膜、およびエッチングペーストの固溶物は、超音波洗浄槽に10分間、浸漬することで除去した。これにより、
図6の工程(g)に示すように、半導体基板1の裏面の一部を露出させた。
【0148】
次に、i型非晶質半導体膜24として、実質的に真性で、水素を含有する非晶質シリコン膜をプラズマCVD装置によって5nm形成した。プラズマCVD装置が備える反応室に導入される反応ガスは、シランガスおよび水素ガスを用いた。そして、半導体基板1の温度を200℃に設定し、水素ガス流量を100sccm、SiH
4ガスの流量を40sccm、反応室内の圧力を100Pa、高周波(13.56MHz)電力の密度を10mW/cm
2に設定した条件を用いて成膜した。
【0149】
引き続いて、i型非晶質半導体膜24上に、n型非晶質半導体膜25を10nm形成した。
【0150】
n型非晶質半導体膜25は、プラズマCVDを用いて形成した。プラズマCVD装置が備える反応室に導入される反応ガスは、シランガス、水素ガス、及び水素で希釈されたホスフィン(PH
3)ガス(ホスフィン濃度は、例えば、1%)を用いた。そして、半導体基板1の温度を170℃、水素ガスの流量を100sccm、シランガスの流量を40sccm、ホスフィンガスの流量を40sccm、反応室内の圧力を40Pa、高周波(13.56MHz)電力の密度を8.33mW/cm
2に設定した条件を用いて成膜した。
【0151】
次に、
図6の工程(i)に示すように、n型非晶質半導体膜25上に市販のレジスト剤からなるエッチングマスク26をスクリーン印刷にて塗布し、十分乾燥させた。次に、エッチングマスク26をマスクとして、1%のKOH液に浸漬した。エッチングを行うことによって、i型非晶質半導体膜24およびn型非晶質半導体膜25の積層体の一部を厚さ方向にエッチングし、i型非晶質半導体膜24およびn型非晶質半導体膜25の積層体を一部露出させた。その後、エッチングマスク26をSPM洗浄液にて除去した。
【0152】
次に、n型非晶質半導体膜42の形成後、p型非晶質半導体膜32およびn型非晶質半導体膜42上に、それぞれ、電極5,6を形成した。
【0153】
電極5,6は、一括のメタルマスクを半導体基板1上に配置し、スパッタ法によって、導電層51,61として、チタンを0.5%wt含む銀電極を200nm、導電層52,62として、ニッケル電極を300nm連続で形成した。
【0154】
メタルマスクのパターンは、次の通りとした。電極5の幅を900μmとし、電極6の幅を200μmとし、繰り返しピッチを1.5mmとした。電極6の外縁部の端部は、基板の端部より、1000μm、電極5の外縁部の端部は、基板の端部より、500μm、内側とした。非開口部の幅は、200μmとなった。メタルマスクの厚さは、機械的強度を鑑みて、200μmとした。また、機械的強度を鑑みて、開口は、長手方向に約10mmごとに分割し、200μmの非開口部を設けた。
【0155】
引き続き、
図7の工程(l)に示すように、電極5,6上に導電性接着剤7として、市販の主成分がビスマス、およびスズよりなる低融点はんだペーストを印刷により、電極5,6に配置するように形成した。低融点はんだペーストの印刷ピッチは、おおむね、1mm間隔であり、スポットサイズは、150μmとした。次に、電極5,6の周囲に市販の絶縁性接着層9を印刷にて形成した。
【0156】
次に、
図7の工程(m)に示すように、150μm程度の絶縁基板81と、50μmの銅よりなる配線82,83とを備える配線基板8を用意し、電極5,6と配線82,83とが、略平行となるように設定し、所定の位置で電気的接続が取れるように位置を調整して、半導体基板1と配線基板8とを貼り合わせた。
【0157】
次に、貼り合わせた半導体基板1と配線基板8に両面から圧力を印加して、200℃、10分間、加熱することにより、電気的に接合を行った。このようにして、配線基板付きヘテロ接合型バックコンタクト太陽電池120を20枚作製した。
【0158】
以上のように作製したヘテロ接合型バックコンタクト太陽電池120のうち、10枚を大気中に、10日間、放置した。半導体基板1と配線基板8を剥離する方向に、軽く引っ張ったところ、特に変化はなかった。
【0159】
残り10枚の太陽電池120の半導体基板1を市販のガラス、PET樹脂よりなるバックシート、EVAに挟んで、ラミネートし、モジュールを作製した。
(実施例2)
実施例2は、実施の形態2に従って、光電変換装置を作製し、その特性の評価を行った。
【0160】
図7の工程(m)に示すように、50μm程度の絶縁基板81Aと、50μmの銅よりなる配線82,83とを備える配線基板8Aを用意し、電極5,6と配線82,83が略平行となるように設定し、所定の位置で電気的接続が取れるように位置を調整して、半導体基板1と配線基板8Aとを貼り合わせた。
【0161】
次に、貼り合わせた半導体基板1と配線基板8Aを両面から圧力をかけて、190℃、12分間、加熱することにより、電気的に接合を行った。このようにして、配線基板付きヘテロ接合型バックコンタクト太陽電池120を20枚作製した。
【0162】
以上のように作製したヘテロ接合型バックコンタクト太陽電池120のうち、10枚を大気中に、10日間、放置した。半導体基板1と配線基板8Aを剥離する方向に、軽く引っ張ったところ、特に変化はなかった。
【0163】
残り10枚の太陽電池120の半導体基板1を市販のガラス、PET樹脂よりなるバックシート、EVAに挟んで、ラミネートし、モジュールを作製した。
【0164】
それ以外は、実施例1と同様に作製した。
(実施例3)
実施例3は、実施の形態2に従って、光電変換装置を作製し、その特性の評価を行った。
【0165】
電極5,6は、一括のメタルマスクを半導体基板1上に配置し、スパッタ法によって、導電層51,61として、チタンを0.5%wt含む銀電極を200nm、導電層52,62として、チタン電極を300nm連続で形成した。
【0166】
引き続き、
図7の工程(l)に示すように、電極5,6上に導電性接着剤7として、市販の銀ペーストを印刷により、形成した。銀ペーストの印刷ピッチは、1mm間隔であり、スポットサイズは、150μmとした。
【0167】
次に、貼り合わせた半導体基板1と配線基板8Aを両面から圧力をかけて、190℃、12分間、加熱することにより、電気的に接合を行った。このようにして、配線基板付きヘテロ接合型バックコンタクト太陽電池120を20枚作製した。
【0168】
以上のように作製したヘテロ接合型バックコンタクト太陽電池120のうち、10枚を大気中に、10日間、放置した。半導体基板1と配線基板8Aを剥離する方向に、軽く引っ張ったところ、導電性接着剤7に剥がれがあるものが1枚あった。若干、導電層52,62と導電性接着層7との機械的強度が低いことを反映していると考えられる。
【0169】
残り10枚の太陽電池120の半導体基板1を市販のガラス、PET樹脂よりなるバックシート、EVAに挟んで、ラミネートし、モジュールを作製した。
【0170】
それ以外は、実施例2と同様に作製した。
<比較例1>
比較例1として、導電層52,62を設けずに作製した。
【0171】
以上のように作製したヘテロ接合型バックコンタクト太陽電池のうち、10枚を大気中に、10日間、放置した。半導体基板1と配線基板8Aを剥離する方向に、軽く引っ張ったところ、電極の一部に剥がれがあるものが1枚あった。
【0172】
残り10枚の太陽電池の半導体基板1を市販のガラス、PET樹脂よりなるバックシート、EVAに挟んで、ラミネートし、モジュールを作製した。
その他は、実施例1と同様に作製した。
<比較例2>
比較例2として、比較例1に対して、導電層51,61の下に接着層としてチタンの層を5nm、設けて作製した。
【0173】
以上のように作製したヘテロ接合型バックコンタクト太陽電池のうち、10枚を大気中に、10日間、放置した。半導体基板1と配線基板8Aを剥離する方向に、軽く引っ張ったところ、特に変化はなかった。
【0174】
残り10枚の太陽電池の半導体基板1を市販のガラス、PET樹脂よりなるバックシート、EVAに挟んで、ラミネートし、モジュールを作製した。
その他は、実施例1と同様に作製した。
<比較例3>
比較例3として、導電性接着層7をライン状に設けて、半導体基板1全体において、電極5,6と配線82,83の対向面の重なり部分の、おおむね、80%以上の面積とした。
【0175】
その他は、実施例1と同様に作製した。10枚のうち、5枚は、若干、半導体基板1が反っているのが確認された。
【0176】
以上のように作製したヘテロ接合型バックコンタクト太陽電池のうち、10枚を大気中に、10日間、放置した。半導体基板1と配線基板8Aを剥離する方向に、軽く引っ張ったところ、1枚にクラックが発生していることが分かった。
【0177】
残り10枚の半導体基板1を市販のガラス、PET樹脂よりなるバックシート、EVAに挟んで、ラミネートし、モジュールを作製した。その他は、実施例1と同様に作製した。
【0178】
大気中に放置した10枚は、放置する前後で、電気的特性を評価した。また、モジュールとした10枚は、環境試験の前後で電気的特性を評価した。
【0179】
ソーラーシュミレータを用いて、作製した光電変換装置の変換効率を測定し、平均値を算出したところ、実施例1の変換効率に対して、実施例2の変換効率は、1.02、実施例3の変換効率は、0.99であり、比較例1の変換効率は、0.99、比較例2の変換効率は、0.93、比較例3の変換効率は、1.00であった。初期変換効率は、実施例1,2,3が比較例2よりも優れた特性を有していることが分かった。
【0180】
大気放置後の変換効率は、実施例1の変換効率に対して、実施例2の変換効率は、1.02、実施例3の変換効率0.99であり、比較例1の変換効率は、0.91、比較例2の変換効率は、0.93、比較例3は、0.99であったであった。
【0181】
大気放置後の変換効率は、実施例1,2,3は、比較例1、2よりも、優れた特性を有していることが分かった。
【0182】
また、作製したモジュールを温度85℃、湿度85%の高温高湿槽に1か月放置した後に、再度、ソーラーシュミレータを用いて、変換効率を測定したところ、実施例1の変換効率に対して、実施例2の変換効率は、1.01、実施例3の変換効率は、0.99であり、比較例1の変換効率は、0.90、比較例2の変換効率は、0.93、比較例3の変換効率は、0.98であった。実施例1、2、3は、比較例1、2、3よりも優れた特性を有していることが分かった。
【0183】
実施例1、及び実施例2のコストを比較例3のコストと比較したところ、2%の減少となった。実施例3のコストは、実施例1及び実施例2の1%の増加となった。
【0184】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えれるべきである。本発明の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。