特許第6915312号(P6915312)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6915312
(24)【登録日】2021年7月19日
(45)【発行日】2021年8月4日
(54)【発明の名称】無線通信機
(51)【国際特許分類】
   H04B 1/04 20060101AFI20210727BHJP
【FI】
   H04B1/04 P
【請求項の数】2
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-44779(P2017-44779)
(22)【出願日】2017年3月9日
(65)【公開番号】特開2018-148519(P2018-148519A)
(43)【公開日】2018年9月20日
【審査請求日】2019年9月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】308036402
【氏名又は名称】株式会社JVCケンウッド
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】横山 卓頼
(72)【発明者】
【氏名】堀内 賢雄
【審査官】 前田 典之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−338714(JP,A)
【文献】 特開2011−172206(JP,A)
【文献】 特開2012−010082(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パワー制御電圧に基づいて入力信号を増幅する増幅器と、
前記増幅器に流れる電流を検出する電流検出部と、
前記電流に応じた電圧と基準電圧とを比較し、比較結果に基づいて前記増幅器に流れる電流を一定に保つように制御するための前記パワー制御電圧を生成するパワー制御電圧生成部と、
前記増幅器の温度を検出する温度検出部と、
前記パワー制御電圧生成部へ供給する電源電圧を変更可能な可変レギュレータと、
前記温度に基づいて前記可変レギュレータから前記パワー制御電圧生成部へ供給される前記電源電圧を制御する制御部と、
を備え
前記制御部は、
前記温度と所定の閾値とを比較し、
前記温度が前記所定の閾値以下である場合には、前記電源電圧を第1の電圧に制御し、
前記温度が前記所定の閾値より高い場合には、前記電源電圧を前記第1の電圧より低い電圧である第2の電圧に制御する、
無線通信機。
【請求項2】
方向性結合器と、検波回路と、をさらに備え、
前記方向性結合器は、前記増幅器から出力されてアンテナから反射された反射信号を前記検波回路へ出力し、
前記検波回路は、前記反射信号の電力を検出し、
前記制御部は、さらに前記反射信号の電力に基づいて前記可変レギュレータの前記電源電圧を制御する、
請求項1に記載の無線通信機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は無線通信機に関し、特に送信パワーの制御を電流制御にて行う無線通信機に関する。
【背景技術】
【0002】
無線通信機の送信パワーの制御方法として、増幅器の電流を一定に保つ電流制御方法が知られている。また、特許文献1には、電流制御方法に関して、異常負荷等の過電圧時に備え、出力電力制御端子(VAPC)と増幅器の入力との間に過電圧制限のためのツェナーダイオードを設ける技術が開示されている。このツェナーダイオードによって、異常負荷等の過電圧時に、増幅器へ入力されるパワー制御電圧は制限される。これにより、特許文献1では、増幅器の所定のディレーティングを確保することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−242128号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に開示の技術では、ツェナーダイオードによる電圧制限が固定電圧であるため、異常負荷等によるパワー制御電圧の上限は、すべての条件において同じ固定電圧になる。このため、増幅器の温度プロテクション等の設定は、ディレーティングが一番厳しい条件で設定しなければならないという問題があった。
【0005】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたものであり、通常負荷時の出力特性に影響を与えずに、異常負荷時における増幅器のディレーティングを適切に設定することができる無線通信機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこで、本発明は、パワー制御電圧に基づいて入力信号を増幅する増幅器と、前記増幅器に流れる電流を検出する電流検出部と、前記電流に応じた電圧と基準電圧とを比較し、比較結果に基づいて前記パワー制御電圧を生成するパワー制御電圧生成部と、前記増幅器の温度を検出する温度検出部と、前記パワー制御電圧生成部へ供給する電源電圧を変更可能な可変レギュレータと、前記温度に基づいて前記可変レギュレータから前記パワー制御電圧生成部へ供給される前記電源電圧を制御する制御部と、を備える無線通信機を提供する。
【0007】
また、本発明は、パワー制御電圧に基づいて入力信号を増幅する増幅器と、前記増幅器に流れる電流を検出する電流検出部と、前記電流に応じた電圧と基準電圧とを比較し、比較結果に基づいて前記パワー制御電圧を生成するパワー制御電圧生成部と、前記パワー制御電圧生成部へ供給する電源電圧を変更可能な可変レギュレータと、前記入力信号の周波数に基づいて前記可変レギュレータから前記パワー制御電圧生成部へ供給される前記電源電圧を制御する制御部と、を備える無線通信機を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、通常負荷時の出力特性に影響を与えずに、異常負荷時における増幅器のディレーティングを適切に設定することができる無線通信機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施の形態1にかかる無線通信機の構成例を示すブロック図である。
図2】実施の形態1にかかる無線通信機の常温時における通常負荷時と異常負荷時のパワー制御電圧を示すグラフである。
図3】実施の形態1にかかる無線通信機の高温時における通常負荷時と異常負荷時のパワー制御電圧を示すグラフである。
図4】実施の形態1にかかる無線通信機における異常負荷時の処理例を示すフローチャートである。
図5】実施の形態2にかかる無線通信機の構成例を示すブロック図である。
図6】実施の形態2にかかる無線通信機の常温時における通常負荷時と異常負荷時のパワー制御電圧を示すグラフである。
図7】実施の形態2にかかる無線通信機の高温時における通常負荷時と異常負荷時のパワー制御電圧を示すグラフである。
図8】実施の形態3にかかる無線通信機の構成例を示すブロック図である。
図9】実施の形態4にかかる無線通信機の構成例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。各図面において、同一又は対応する要素には同一の符号が付されており、説明の明確化のため、必要に応じて重複説明は省略される。
【0011】
実施の形態1
まず、図1のブロック図を用いて、本発明の実施の形態1にかかる無線通信機100の構成例について説明する。無線通信機100は、増幅器10と、電源20と、電流検出部30と、温度検出部40と、制御部50と、可変レギュレータ60と、パワー制御電圧生成部70と、を備えている。
【0012】
増幅器10は、パワー制御電圧をパワー制御電圧生成部70から受け取る。また、増幅器10は、受け取ったパワー制御電圧に基づいて入力信号を増幅する。そして、増幅器10は、増幅された信号を出力信号として出力する。なお、増幅器10は、例えば、無線通信機100における送信機の終段の高周波電力増幅器である。また、増幅器10は、例えばFET(Field Effect Transistor)により構成される。
【0013】
電源20は、電流検出部30を介して増幅器10へ電力を供給する電源である。なお、電源20は、例えば無線通信機100のバッテリーである。
【0014】
電流検出部30は、増幅器10に流れる電流を検出するものである。電流検出部30は、電源20と増幅器10との間に配置される。電流検出部30は、例えば、電源20と増幅器10との間に直列に接続された抵抗の両端の電圧を検出することにより増幅器10に流れる電流を検出する。そして、電流検出部30は、検出された電流値をパワー制御電圧生成部70へ出力する。
【0015】
温度検出部40は、増幅器10の近傍に配置され、増幅器10の温度を検出する。そして、温度検出部40は、検出された温度を制御部50へ出力する。なお、温度検出部40は、例えばサーミスタにより構成される。
【0016】
可変レギュレータ60は、パワー制御電圧生成部70へ供給する電源電圧を変更することができるものである。また、可変レギュレータ60は、出力をオフすることも可能である。
【0017】
制御部50は、増幅器10の温度を温度検出部40から受け取る。そして、制御部50は、受け取った増幅器10の温度に基づいて、可変レギュレータ60からパワー制御電圧生成部70へ供給される電源電圧を制御する。なお、制御部50は、例えばCPU(Central Processing Unit)により構成される。
【0018】
パワー制御電圧生成部70において、可変レギュレータ60から供給されるパワー制御電圧生成部70の電源電圧が変更されることにより、パワー制御電圧の上限値が変更される。また、パワー制御電圧生成部70は、電流検出部30から電流値を受け取る。さらに、パワー制御電圧生成部70は、受け取った電流値に応じた電圧と基準電圧とを比較し、比較結果に基づいてパワー制御電圧を生成する。ここで、基準電圧とは、増幅器10の出力電力を所定の出力電力に設定するための電圧である。そして、パワー制御電圧生成部70は、生成されたパワー制御電圧を増幅器10へ出力する。増幅器10は、受け取ったパワー制御電圧に基づいて入力信号を増幅し、無線通信機100のアンテナへ出力する。アンテナのインピーダンスが所定の範囲で変化しても、増幅器10に流れる電流を一定に保つように、パワー制御電圧は制御されるが、その制御電圧の上限値は、可変レギュレータ60から供給されるパワー制御電圧生成部70の電源電圧により定まる。
【0019】
続いて、図2及び図3のグラフを用いて、パワー制御電圧生成部70により生成されるパワー制御電圧について説明する。
【0020】
図2は、常温時における通常負荷時と異常負荷時のパワー制御電圧を示すグラフである。ここで、異常負荷とは、例えば無線通信機100のアンテナが人の手や金属板に触れられていること等により増幅器10の負荷であるアンテナのインピーダンスが大きく変動し、異常になっている状態のことを示す。
【0021】
常温時には、パワー制御電圧生成部70へ供給される電源電圧は、VNTに制御される。これにより、常温時のパワー制御電圧の上限値は、VNTに設定される。なお、VNTを第1の電圧と呼んでもよい。
【0022】
常温時において、通常負荷時には、パワー制御電圧生成部70によって、基準電圧によりパワー制御電圧がVNTより小さい値でコントロールされる。また、異常負荷時には、基準電圧によるコントロールができず、送信が開始されるとパワー制御電圧はVNTまで一気に上昇する。
【0023】
図3は、高温時における通常負荷時と異常負荷時のパワー制御電圧を示すグラフである。なお、常温と高温とは、所定の閾値によりわけられる。すなわち、常温とは、所定の閾値以下の温度であり、高温とは、所定の閾値より高い温度である。
【0024】
高温時には、パワー制御電圧生成部70へ供給される電源電圧は、VHTに制御される。これにより、高温時のパワー制御電圧の上限値は、VHTに設定される。ここで、VHTはVNTより低い電圧である。なお、VHTを第2の電圧と呼んでもよい。
【0025】
高温時において、通常負荷時には、パワー制御電圧生成部70によって、基準電圧によりパワー制御電圧がVHTより小さい値でコントロールされる。また、異常負荷時には、基準電圧によるコントロールができず、送信が開始されるとパワー制御電圧はVHTまで一気に上昇する。
【0026】
続いて、図4のフローチャートを用いて、無線通信機100における異常負荷時の処理例について説明する。
【0027】
まず、温度検出部40は、増幅器10の温度を検出する(ステップS1)。次に、制御部50は、検出された温度が所定の閾値より高いか否かを判断する(ステップS2)。
【0028】
検出された温度が所定の閾値以下である場合(ステップS2でNO)、制御部50は、可変レギュレータ60の出力をVNTに制御する(ステップS3)。次に、パワー制御電圧生成部70の基準電圧を設定する(ステップS4)。次に、パワー制御電圧生成部70は、パワー制御電圧をVNTに設定する(ステップS5)。次に、増幅器10は、送信パワーを出力する(ステップS6)。ステップS6の後、ステップS1に戻る。
【0029】
他方、検出された温度が所定の閾値より高い場合(ステップS2でYES)、制御部50は、可変レギュレータ60の出力をVHTに制御する(ステップS7)。次に、パワー制御電圧生成部70の基準電圧を設定する(ステップS8)。次に、パワー制御電圧生成部70は、パワー制御電圧をVHTに設定する(ステップS9)。そして、増幅器10は、送信パワーを出力する(ステップS6)。ステップS6の後、ステップS1に戻る。
【0030】
以上のように、本発明の実施の形態1にかかる無線通信機100では、パワー制御電圧生成部70へ供給する電源電圧を変更可能な可変レギュレータ60と、温度検出部40により検出された温度に基づいて可変レギュレータ60からパワー制御電圧生成部70へ供給される電源電圧を制御する制御部50と、を備えた構成としている。これにより、本実施の形態1にかかる無線通信機100では、増幅器10の温度に基づいてパワー制御電圧の上限値を制御することができる。このため、無線通信機100では、通常負荷時の送信パワーや電流検出の分解能を変えずに、異常負荷時における増幅器10のディレーティングを適切に設定することができる。すなわち、通常負荷時の出力特性に影響を与えずに、異常負荷時における増幅器のディレーティングを適切に設定することができる。
【0031】
また、無線通信機100では、制御部50によって、温度検出部40により検出された温度と所定の閾値とを比較する構成としている。また、無線通信機100では、制御部50によって、温度が所定の閾値以下である場合には、パワー制御電圧生成部70に供給される電源電圧をVNTに制御し、温度が所定の閾値より高い場合には、当該電源電圧をVNTより低い電圧であるVHTに制御する構成としている。これにより、無線通信機100では、常温時のパワー制御電圧の上限値を、高温時のパワー制御電圧の上限値より高く設定することができる。
【0032】
さらに、無線通信機100では、可変レギュレータ60の出力をオフすることが可能な構成としている。これにより、無線通信機100による送信をオフする際に、可変レギュレータ60の出力をオフすることができる。すなわち、無線通信機100による送信をオフする際に、増幅器10へのパワー制御電圧の入力をカットすることができる。
【0033】
実施の形態2
続いて、図5のブロック図を用いて、本発明の実施の形態2にかかる無線通信機200の構成例について説明する。本実施の形態2にかかる無線通信機200は、実施の形態1にかかる無線通信機100の具体例である。無線通信機200は、増幅器10と、電源20と、電流検出部30と、温度検出部40と、制御部50と、可変レギュレータ60と、パワー制御電圧生成部70Aと、を備えている。
【0034】
パワー制御電圧生成部70Aは、比較器71と、アクティブフィルタ72と、を備えている。
【0035】
比較器71は、電流検出部30から電流値を受け取る。また、比較器71は、基準電圧を受け取る。さらに、比較器71は、受け取った電流値に応じた電圧と基準電圧とを比較し、比較結果をアクティブフィルタ72へ出力する。なお、比較器71は、例えばオペアンプにより構成される。また、比較器に入力される基準電圧は、後段にアクティブフィルタ72を備える構成のため、矩形波に近い波形とし、アクティブフィルタ72の特性により帯域制限され波形は滑らかになる。また、アクティブフィルタ72による時間の遅れが生じる為、立ち上がり、立ち下がりは実施例1より早くなる。
【0036】
アクティブフィルタ72の電源電圧は、可変レギュレータ60から供給される。アクティブフィルタ72において、可変レギュレータ60から供給される電源電圧が変更されることにより、パワー制御電圧の上限値が変更される。また、アクティブフィルタ72は、比較器71から比較結果を受け取る。さらに、アクティブフィルタ72は、受け取った比較結果に基づいてパワー制御電圧を生成する。そして、アクティブフィルタ72は、生成されたパワー制御電圧を増幅器10へ出力する。なお、アクティブフィルタ72は、例えば、ベッセル型等の多重帰還型フィルタであり、オペアンプにより構成される。
【0037】
続いて、図6及び図7のグラフを用いて、パワー制御電圧生成部70Aにより生成されるパワー制御電圧について説明する。
【0038】
図6は、常温時における通常負荷時と異常負荷時のパワー制御電圧を示すグラフである。常温時には、アクティブフィルタ72へ供給される電源電圧は、VNTに制御される。これにより、常温時のパワー制御電圧の上限値は、VNTに設定される。
【0039】
常温時において、通常負荷時には、パワー制御電圧生成部70Aによって、基準電圧によりパワー制御電圧がVNTより小さい値でコントロールされる。また、異常負荷時には、基準電圧によるコントロールができず、送信が開始されるとパワー制御電圧はVNTまで上昇する。
【0040】
図7は、高温時における通常負荷時と異常負荷時のパワー制御電圧を示すグラフである。高温時には、アクティブフィルタ72へ供給される電源電圧は、VHTに制御される。これにより、高温時のパワー制御電圧の上限値は、VHTに設定される。
【0041】
高温時において、通常負荷時には、パワー制御電圧生成部70Aによって、基準電圧によりパワー制御電圧がVHTより小さい値でコントロールされる。また、異常負荷時には、基準電圧によるコントロールができず、送信が開始されるとパワー制御電圧はVHTまで上昇する。
【0042】
図6及び図7において、異常負荷時のパワー制御電圧の立ち上がり及び立ち下がりは、アクティブフィルタ72の伝達関数により、通常負荷時と同様の滑らかな過渡応答特性となる。これにより、異常負荷時のパワー制御電圧の立ち上がり及び立ち下がりのエンベロープにおける周波数の帯域制限が可能となる。
【0043】
以上のように、本発明の実施の形態2にかかる無線通信機200では、パワー制御電圧生成部70Aが、比較器71及びアクティブフィルタ72を備えた構成としている。また、無線通信機200では、アクティブフィルタ72の電源電圧が、可変レギュレータ60から供給される構成としている。これにより、無線通信機200では、実施の形態1の無線通信機100と同様の効果を奏することができる。
【0044】
また、無線通信機200では、アクティブフィルタ72が、多重帰還型フィルタである構成としている。これにより、無線通信機200では、異常負荷時のパワー制御電圧の立ち上がり及び立ち下がりのエンベロープにおける周波数の帯域制限が可能となる。すなわち、異常負荷時のパワー制御電圧の立ち上がり及び立ち下がりのエンベロープにおける不要な輻射を抑えることができる。
【0045】
実施の形態3
続いて、図8のブロック図を用いて、本発明の実施の形態3にかかる無線通信機300の構成例について説明する。本実施の形態3にかかる無線通信機300は、実施の形態1にかかる無線通信機100の具体例である。無線通信機300は、増幅器10と、電源20と、電流検出部30と、温度検出部40と、制御部50と、可変レギュレータ60と、パワー制御電圧生成部70Bと、を備えている。
【0046】
パワー制御電圧生成部70Bは、比較器71と、パッシブフィルタ73と、を備えている。
【0047】
比較器71の電源電圧は、可変レギュレータ60から供給される。比較器71において、可変レギュレータ60から供給される電源電圧が変更されることにより、パワー制御電圧の上限値が変更される。
【0048】
パッシブフィルタ73は、比較器71から比較結果を受け取る。また、パッシブフィルタ73は、受け取った比較結果に基づいてパワー制御電圧を生成する。具体的には、パッシブフィルタ73は、受け取った比較結果を積分することによりパワー制御電圧を生成する。そして、パッシブフィルタ73は、生成されたパワー制御電圧を増幅器10へ出力する。なお、パッシブフィルタ73は、例えば、コンデンサ及び抵抗を有するCRフィルタである。
【0049】
パワー制御電圧生成部70Bにより生成されるパワー制御電圧は、図2及び図3にて示したパワー制御電圧と同様であり説明及び図示を省略する。
【0050】
以上のように、本発明の実施の形態3にかかる無線通信機300では、パワー制御電圧生成部70Bが、比較器71及びパッシブフィルタ73を備えた構成としている。また、無線通信機300では、比較器71の電源電圧が、可変レギュレータ60から供給される構成としている。これにより、無線通信機300では、実施の形態1の無線通信機100と同様の効果を奏することができる。
【0051】
また、無線通信機300では、パワー制御電圧生成部70Bが、アクティブフィルタ72ではなくパッシブフィルタ73を備えた構成としている。これにより、無線通信機300では、実施の形態2の無線通信機200に比べて、電力消費を抑え、且つコストを安くすることができる。
【0052】
実施の形態4
続いて、図9のブロック図を用いて、本発明の実施の形態4にかかる無線通信機400の構成例について説明する。本実施の形態4にかかる無線通信機400は、実施の形態1にかかる無線通信機100の変形例である。無線通信機400は、増幅器10と、電源20と、電流検出部30と、温度検出部40と、制御部50Aと、可変レギュレータ60と、パワー制御電圧生成部70と、方向性結合器80と、検波回路90と、アンテナ1と、を備えている。
【0053】
アンテナ1は、増幅器10から方向性結合器80を介して受け取った信号を他の装置へ送信する。また、アンテナ1は、他の装置から受信された信号を、無線通信機400の図示しない受信回路へ出力する。
【0054】
増幅器10から方向性結合器80を介してアンテナ1へ出力された信号の一部は、方向性結合器80とアンテナ1との間の接続点2にて反射される。方向性結合器80は、接続点2にて反射された反射信号を検波回路90へ出力する。
【0055】
検波回路90は、受け取った反射信号の電力を検出する。そして、検波回路90は、検出された反射信号の電力を制御部50Aへ出力する。
【0056】
制御部50Aは、反射信号の電力を検波回路90から受け取る。また、制御部50Aは、増幅器10の温度を温度検出部40から受け取る。そして、制御部50Aは、受け取った増幅器10の温度及び反射信号の電力に基づいて、可変レギュレータ60からパワー制御電圧生成部70へ供給される電源電圧を制御する。例えば、制御部50Aは、反射信号の電力に基づいて増幅器10が異常負荷であるか否かを判断し、異常負荷である場合と異常負荷ではない場合とでパワー制御電圧生成部70へ供給される電源電圧を異なるように制御してもよい。なお、異常負荷であるか否かの判断は、反射信号の電力が閾値より大きい場合に異常負荷と判断し、反射信号の電力が閾値以下の場合に通常負荷と判断するようにしてもよい。
【0057】
また、制御部50Aは、例えば、異常負荷である場合に異常負荷時の処理を開始するようにしてもよい。なお、この異常負荷時の処理として、図4に示す処理を行ってもよい。
【0058】
また、制御部50Aは、パワー制御電圧生成部70へ供給される電源電圧を制御する際のパラメータとして、増幅器10の周波数特性を用いるようにしてもよい。すなわち、周波数特性とは、入力される信号の周波数に対する増幅器10の諸特性であり、例えば、増幅器10のゲインや効率の周波数特性である。無線通信機400は、図示しない発振器を備え、その発振器の発振周波数に基づいて通信で使用される送信周波数や受信周波数は定まる。入力される信号の周波数は、この場合は送信周波数にあたる。制御部50Aが、入力される信号の周波数の設定情報を得ることに特に困難な点はなく、制御部50Aが、発振器への発振周波数の設定情報を得る構成を備えるか、制御部50Aが、発振器への発振周波数の設定情報を与えてもよい。
【0059】
実施例では増幅器10に流れる電流を一定にする制御を行うが、増幅器10の周波数特性によって、電流値を一定にするパワー制御電圧が、周波数に応じて異なる場合がある。また、増幅器10に流れる電流を周波数に応じて異なる設定としたい場合がある。それら周波数に合わせた対応を行うべく、制御部50Aは、周波数に応じてパワー制御電圧生成部70へ供給される電源電圧を制御することで、通常負荷時の出力特性に影響を与えずに、異常負荷時における増幅器のディレーティングを適切に設定することができる。
【0060】
制御部50Aは、増幅器10の温度、及び増幅器10の周波数特性に基づいてパワー制御電圧生成部70へ供給される電源電圧を制御するようにしてもよい。これにより、温度及び周波数に応じたディレーティングを適切に設定することができる。
【0061】
以上のように、本発明の実施の形態4にかかる無線通信機400は、方向性結合器80及び検波回路90を備えた構成としている。また、無線通信機400では、制御部50Aが、増幅器10の温度及び反射信号の電力に基づいてパワー制御電圧生成部70へ供給される電源電圧を制御する構成としている。これにより、無線通信機400では、制御部50Aにより、反射信号の電力に基づいて増幅器10が異常負荷であるか否かを判断することができる。また、無線通信機400では、増幅器10が異常負荷である場合と異常負荷ではない場合とでパワー制御電圧生成部70へ供給される電源電圧を異なるように制御することができる。
【0062】
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。
【符号の説明】
【0063】
10 増幅器
30 電流検出部
40 温度検出部
50、50A 制御部
60 可変レギュレータ
70 パワー制御電圧生成部
100、400 無線通信機
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9