特許第6915431号(P6915431)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6915431
(24)【登録日】2021年7月19日
(45)【発行日】2021年8月4日
(54)【発明の名称】タイヤ用ゴム組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 17/00 20060101AFI20210727BHJP
   C08L 9/00 20060101ALI20210727BHJP
   C08L 9/06 20060101ALI20210727BHJP
   C08K 3/36 20060101ALI20210727BHJP
   C08L 15/00 20060101ALI20210727BHJP
   C08L 47/00 20060101ALI20210727BHJP
   B60C 1/00 20060101ALI20210727BHJP
【FI】
   C08L17/00
   C08L9/00
   C08L9/06
   C08K3/36
   C08L15/00
   C08L47/00
   B60C1/00 Z
   B60C1/00 A
【請求項の数】6
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-148464(P2017-148464)
(22)【出願日】2017年7月31日
(65)【公開番号】特開2019-26757(P2019-26757A)
(43)【公開日】2019年2月21日
【審査請求日】2020年7月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001368
【氏名又は名称】清流国際特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100129252
【弁理士】
【氏名又は名称】昼間 孝良
(74)【代理人】
【識別番号】100155033
【弁理士】
【氏名又は名称】境澤 正夫
(72)【発明者】
【氏名】土方 健介
【審査官】 岡部 佐知子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−212377(JP,A)
【文献】 特開平08−041107(JP,A)
【文献】 特開昭56−024150(JP,A)
【文献】 特表2016−539242(JP,A)
【文献】 特開2016−102150(JP,A)
【文献】 特開2016−047889(JP,A)
【文献】 特開2014−196407(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2016/0115304(US,A1)
【文献】 特開昭60−212413(JP,A)
【文献】 特開2013−224356(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00−101/16
C08K 3/00−13/08
B60C 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
イソプレン系ゴム30質量部〜70質量部およびスチレンブタジエンゴム30質量部〜70質量部からなるジエン系ゴム100質量部に対して、CTAB吸着比表面積が100m2 /g〜250m2 /gであるシリカを30質量部〜150質量部、粉末再生ゴムを5質量部〜150質量部、チウラムスルフィド系化合物で官能化された変性再生ゴムを5質量部〜90質量部を配合したことを特徴とするタイヤ用ゴム組成物。
【請求項2】
前記粉末再生ゴムと前記変性再生ゴムとの配合量の比が1:1〜1:2であることを特徴とする請求項1に記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項3】
前記粉末再生ゴムの粒径が80メッシュ以上であることを特徴とする請求項1または2に記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項4】
軟化点が60℃〜150℃の石油系樹脂を前記ジエン系ゴム100質量部に対して2質量部〜20質量部配合したことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項5】
前記スチレンブタジエンゴムにおけるスチレン量が25%以上であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物をトレッド部に用いたことを特徴とする空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃ゴム製品からリサイクルによって回収された再生ゴムを使用したゴム組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境保護やコスト低減の観点から、タイヤ等の使用済みのゴム製品(廃ゴム製品)の一部を、例えば粉砕処理等によって再生ゴムに加工して、これを新ゴムに配合して再利用することが行われている。しかしながら、このような再生ゴムは加硫後の物性が新ゴムに比して劣るため、再生ゴムを含有するゴム組成物の加硫後の物性も悪くなり、実用に堪えなかったり、使用対象が制限されるという問題があった。また、再生ゴムによって加硫後の物性が低下するため、原料中の再生材料比率(再生ゴムの比率)を高めることが難しく、環境負荷を低減する効果が限定的であるという問題もあった。
【0003】
このような問題に対して、例えば、上述の粉砕処理の後、脱硫処理や官能化処理を施して再生ゴム自体の反応性を高めて、加硫後のゴム物性を良好にすることが検討されている(例えば、特許文献1を参照)。しかしながら、このような処理を行った再生ゴムを配合したゴム組成物であっても、例えば破断特性等の物性が充分に得られず、特に空気入りタイヤ等に用いる場合に加工性や加硫物性などの性能が充分に得られないという問題があった。そのため、廃ゴム製品からリサイクルによって回収された再生ゴムを使用したゴム組成物において、加工性及び加硫物性を向上しながら、原料中の再生材料比率を高める更なる改善が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015‐212377号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、廃ゴム製品からリサイクルによって回収された再生ゴムを使用したゴム組成物であって、加工性及び加硫物性を向上しながら、原料中の再生材料比率を高めることを可能にしたゴム組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成する本発明のタイヤ用ゴム組成物は、イソプレン系ゴム30質量部〜70質量部およびスチレンブタジエンゴム30質量部〜70質量部からなるジエン系ゴム100質量部に対して、CTAB吸着比表面積が100m2 /g〜250m2 /gであるシリカを30質量部〜150質量部、粉末再生ゴムを5質量部〜150質量部、チウラムスルフィド系化合物で官能化された変性再生ゴムを5質量部〜90質量部を配合したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明のタイヤ用ゴム組成物は、イソプレン系ゴムとスチレンブタジエンゴムとを主体として、粉末再生ゴムと変性再生ゴムとを併用し、且つ、上述の配合材を配合しているので、再生ゴムを配合したゴム組成物であっても、加工性および加硫物性を向上することができる。また、上述の配合によって加工性および加硫物性が改善するので、再生ゴムの配合量を従来に比べて多くすることができ、原料中の再生材料比率を高めることができる。
【0008】
本発明においては、粉末再生ゴムと変性再生ゴムとの配合量の比が1:1〜1:2であることが好ましい。これにより、粉末再生ゴムと変性再生ゴムとのバランスが良好になり、原料中の再生材料比率(再生ゴム比率)を高めながら、加工性および加硫物性を向上するには有利になる。
【0009】
本発明においては、粉末再生ゴムの粒径が80メッシュ以上であることが好ましい。これにより、原料中の再生材料比率(再生ゴム比率)を高めながら、加工性および加硫物性を向上するには有利になる。尚、本発明において、粉末再生ゴムの粒径は、JIS K6220に準拠して測定する。また、本発明において「粒径が80メッシュ以上である」とは、粉末再生ゴムの70質量%以上が80メッシュを通過可能な粒径であることを意味し、30質量%未満の割合であれば上記粒径の範囲外のものを含むことが許容されるものとする。
【0010】
本発明においては、軟化点が60℃〜150℃の石油系樹脂を前記ジエン系ゴム100質量部に対して2質量部〜20質量部配合することが好ましい。これにより粘着性を高めることができ、原料中の再生材料比率(再生ゴム比率)を高めながら、加工性および加硫物性を向上するには有利になる。
【0011】
本発明においては、スチレンブタジエンゴムにおけるスチレン含有量が20質量%以上であることが好ましい。このようにスチレン含有量を設定することで、加工性を高めるには有利になる。
【0012】
本発明のタイヤゴム組成物は、空気入りタイヤのトレッド部に用いることが好ましく、本発明のタイヤ用ゴム組成物をトレッド部に用いた空気入りタイヤは、ゴム組成物中に再生ゴムが含まれていても、従来の新ゴムのみを用いた空気入りタイヤと同等の優れた走行性能を発揮することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明のタイヤ用ゴム組成物において、ゴム成分はジエン系ゴムであり、イソプレン系ゴムおよびスチレンブタジエンゴムを必ず含む。イソプレン系ゴムとしては、各種天然ゴム、エポキシ化天然ゴム、各種合成ポリイソプレンゴムを挙げることができる。イソプレン系ゴムおよびスチレンブタジエンゴムはそれぞれ、タイヤ用ゴム組成物に通常用いられるゴムを使用することができる。これらの配合量は、ジエン系ゴム全体を100質量部としたとき、イソプレン系ゴムを30質量部〜70質量部、スチレンブタジエンゴムを30質量部〜70質量部、好ましくイソプレン系ゴムを40質量部〜60質量部、スチレンブタジエンゴムを40質量部〜60質量部である。これらゴムの配合量が上記範囲から外れると、本発明の所望の効果が充分に得られない。特に、本発明では、両者をバランスよく併用することが重要であり、イソプレン系ゴムの配合量が70質量部を超えると(スチレンブタジエンゴムの配合量が30質量部未満であると)、0℃におけるtanδが悪化する。スチレンブタジエンゴムの配合量が70質量部を超えると(イソプレン系ゴムの配合量が30質量部未満であると)、ゴム組成物の粘度が悪化する。
【0014】
本発明で使用するスチレンブタジエンゴムは、スチレン含有量が好ましくは20質量%以上、より好ましくは23質量%〜40質量%であるとよい。スチレン含有量を設定することで加工性を高めるには有利になる。スチレン含有量が20%未満であると、ゴム組成物の加工性が低下する。本発明において、スチレンブタジエンゴムのスチレン含有量はJIS K6239「原料ゴム‐溶液重合SBRのミクロ構造の求め方」という測定方法により求めることができる。
【0015】
本発明のタイヤ用ゴム組成物は、イソプレン系ゴムおよびスチレンブタジエンゴム以外の他のジエン系ゴムを含有してもよい。他のジエン系ゴムとしては、例えば、ブタジエンゴム、アクリロニトリル‐ブタジエンゴム等が挙げられる。これらジエン系ゴムは、単独又は任意のブレンドとして使用することができる。
【0016】
本発明のタイヤ用ゴム組成物は、シリカが必ず配合される。シリカを配合することでゴム組成物の強度を高めることができる。シリカの配合量は、ジエン系ゴム100質量部に対して、30質量部〜150質量部、好ましくは50質量部〜90質量部である。シリカの配合量が30質量部未満であると、ゴム組成物の機械的特性を改良する効果が充分に得られない。シリカの配合量が150質量部を超えると、ゴム組成物の発熱性が大きくなりタイヤにしたとき転がり抵抗が大きくなる。
【0017】
本発明で使用するシリカは、CTAB吸着比表面積が100m2 /g〜250m2 /g、好ましくは120m2 /g〜180m2 /gである。シリカのCTAB吸着比表面積が100m2 /g未満であると、ゴム組成物のゴム強度、ゴム硬度などの機械的特性が低下する。シリカのCTAB吸着比表面積が250m2 /gを超えると、シリカの分散性が低下し、ゴム組成物の60℃におけるtanδ(以下、tanδ(60℃)という)が大きくなる。尚、本発明において、シリカのCTAB吸着比表面積は、ISO 5794に準拠して測定するものとする。
【0018】
本発明のタイヤ用ゴム組成物は、粉末再生ゴムおよび変性再生ゴムが必ず配合される。本発明において「粉末再生ゴム」とは、タイヤ等の使用済みのゴム製品(廃ゴム製品)の一部を粉砕処理して得られたゴム材料であり、脱硫処理や官能化等の変性処理は施されていないものである。この粉末再生ゴムは、脱硫処理が施された再生ゴムや後述の変性再生ゴムのように反応性は高くないが、これら処理が施された再生ゴムのみを用いた場合に低下し易い加硫物性(例えば破断エネルギー等の特性)を改善するのに有利な材料である。本発明において「変性再生ゴム」とは、タイヤ等の使用済みのゴム製品(廃ゴム製品)の一部を粉砕処理した後、脱硫処理を行い、更に、チウラムスルフィド系化合物で官能化することで得られたゴム材料である。この変性再生ゴムは、脱硫および官能化によりゴム中の架橋構造の一部が切断されて反応性が高まっているため、再生材料を用いた場合に懸念される硬度の低下、発熱性の悪化、未加硫ゴムの粘度の上昇等の問題を改善するのに有利な材料である。尚、変性再生ゴムの官能化処理に用いるチウラムスルフィド系化合物としては、アルキルチウラムスルフィド、アリールチウラムスルフィド、ヘテロ環式チウラムスルフィド、チウラムジスルフィド、チウラムポリスルフィド、テトラベンジルチウラムジスルフィド、テトラアルキルチウラムジスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィド、ジペンタメチルチウラムモノスルフィド等を例示することができる。上述の粉末再生ゴムと変性再生ゴムとを併用することで、再生ゴムを配合したゴム組成物であっても、加工性および加硫物性を向上することができる。
【0019】
粉末再生ゴムの配合量は、ジエン系ゴム100質量部に対して、5質量部〜150質量部、好ましくは10質量部〜120質量部である。粉末再生ゴムの配合量が5質量部未満であると、ゴム組成物の破断物性が悪化する。粉末再生ゴムの配合量が150質量部を超えると、ゴム組成物の物性(粘度、硬度、破断物性、発熱性)が悪化する。また、変性再生ゴムの配合量は、ジエン系ゴム100質量部に対して、5質量部〜90質量部、好ましくは10質量部〜80質量部である。変性再生ゴムの配合量が5質量部未満であると、ゴム組成物の物性(粘度)が悪化する。変性再生ゴムの配合量が90質量部を超えると、ゴム組成物の物性(粘度、硬度、破断物性、発熱性)が悪化する。
【0020】
粉末再生ゴムおよび変性再生ゴムを多く配合することで、原料中の再生材料比率を高めることができ、環境負荷を低減するには有利である。そのため、粉末再生ゴムおよび変性再生ゴムの総量(配合量の和)を、ジエン系ゴム100質量部に対して好ましくは20質量部以上、より好ましくは40質量部〜150質量部にするとよい。従来の再生ゴムを配合したゴム組成物では、再生ゴムの配合量がゴム組成物の主体となるジエン系ゴム100質量部に対して10質量部程度であったので、原料中の再生材料比率を大幅に高めることができる。粉末再生ゴムおよび変性再生ゴムの両者の配合量が多く、総量が160質量部を超えると、ゴム物性を改善する効果が限定的になり、粘度、硬度、破断伸び、発熱性が低下する。
【0021】
更に、粉末再生ゴムと変性再生ゴムとの配合量の比(粉末再生ゴム:変性再生ゴム)は、好ましくは1:1〜1:3、より好ましくは1:1〜1:2にするとよい。これにより、粉末再生ゴムと変性再生ゴムとのバランスが良好になり、原料中の再生材料比率(再生ゴム比率)を高めながら、加工性および加硫物性を向上するには有利になる。粉末再生ゴムと変性再生ゴムとの配合量の比が上記範囲から外れて、変性再生ゴムに対して粉末再生ゴムの配合量が多過ぎると、ゴム物性を改善する効果が限定的になり、粘度、硬度、破断物性、発熱性が低下し、粉末再生ゴムに対して変性再生ゴムの配合量が多過ぎると、ゴム物性を改善する効果が限定的になり、破断物性が低下する。
【0022】
本発明で使用する粉末再生ゴムは粒径が小さいことが好ましい。特に、粉末再生ゴムの粒径が、好ましくは80メッシュ以上、より好ましくは100メッシュ〜140メッシュであるとよい。これにより、原料中の再生材料比率(再生ゴム比率)を高めながら、加工性および加硫物性を向上するには有利になる。粉末再生ゴムの粒径が80メッシュ未満であると、粒径が大き過ぎて破断伸びを改善する効果が限定的になる。尚、変性再生ゴムは、上述の変性処理の後、シート状または板状に加工されて供される材料であるので、上記粉末再生ゴムのように粒径は考慮されない。
【0023】
本発明のタイヤ用ゴム組成物は、上記配合剤に加えて、更に、石油系樹脂を配合することができる。石油系樹脂とは、原油を蒸留、分解、改質などの処理をして得られた成分を重合して製造される芳香族系炭化水素樹脂、或いは、飽和または不飽和脂肪族系炭化水素樹脂である。石油系樹脂として、例えばC5 系石油樹脂(イソプレン、1,3‐ペンタジエン、シクロペンタジエン、メチルブテン、ペンテンなどの留分を重合した脂肪族系石油樹脂)、C9 系石油樹脂(α‐メチルスチレン、o‐ビニルトルエン、m‐ビニルトルエン、p‐ビニルトルエンなどの留分を重合した芳香族系石油樹脂)、C5 9 共重合石油樹脂などが挙げられる。これらの樹脂は、単独又は複数のブレンドとして使用することができる。これら石油系樹脂を配合することで、粘着性を高めることができる。石油系樹脂の配合量は、ジエン系ゴム100質量部に対して、好ましくは2質量部〜20質量部、より好ましくは5質量部〜15質量部である。石油系樹脂の配合量が2質量部未満であると、石油系樹脂によって付加される効果(粘着性)が充分に得られない。石油系樹脂の配合量が20質量部を超えると、耐摩耗性や加工性が低下する。
【0024】
本発明で使用する石油系樹脂は、軟化点が好ましくは60℃〜150℃、より好ましくは110℃〜130℃である。石油系樹脂の軟化点をこのような範囲内に設定することで、石油系樹脂によって付加される粘着性を効果的に高めることができる。石油系樹脂の軟化点が60℃未満であると、硬度が低下する。石油系樹脂の軟化点が150℃を超えると、粘度が増加する。尚、本発明において、石油系樹脂の軟化点は、JIS K6220−1(環球法)に準拠して測定するものとする。
【0025】
本発明のタイヤ用ゴム組成物には、上記以外の他の配合剤を添加することができる。他の配合剤としては、シリカ以外の他の補強性充填剤、加硫又は架橋剤、加硫促進剤、老化防止剤、液状ポリマー、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂など、一般的に空気入りタイヤに使用される各種配合剤を例示することができる。これら配合剤の配合量は本発明の目的に反しない限り、従来の一般的な配合量にすることができる。また混練機としは、通常のゴム用混練機械、例えば、バンバリーミキサー、ニーダー、ロール等を使用することができる。
【0026】
本発明のタイヤ用ゴム組成物は、空気入りタイヤのトレッド部に好適に用いることができる。本発明のタイヤ用ゴム組成物は、上述のように加工性や加硫物性が良好であるため、このタイヤ用ゴム組成物をトレッド部に用いた空気入りタイヤは、ゴム組成物中に再生ゴムが含まれていても、従来の新ゴムのみを用いた空気入りタイヤと同等の優れた走行性能を発揮することができる。
【0027】
以下、実施例によって本発明を更に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0028】
表1〜2に示す配合からなる21種類のゴム組成物(標準例1、比較例1〜8、実施例1〜12)を、それぞれ加硫促進剤および硫黄を除く配合成分を秤量し、1.8Lの密閉式バンバリーミキサーで5分間混練し、温度150℃でマスターバッチを放出し室温冷却した。その後、このマスターバッチを1.8Lの密閉式バンバリーミキサーに供し、加硫促進剤及び硫黄を加え2分間混合してゴム組成物を調製した。次に、得られたゴム組成物を所定の金型中で160℃、20分間プレス加硫して加硫ゴム試験片を作製した。尚、スチレンブタジエンゴムはオイル分を含むため、表1〜2においては、括弧内に正味のゴム量を記載した。
【0029】
得られた21種類のゴム組成物について、下記に示す方法により、粘度、硬度、破断エネルギー、0℃におけるtanδの評価を行った。
【0030】
粘度
得られたゴム組成物のムーニー粘度をJIS K6300に準拠して、ムーニー粘度計にてL型ロータ(38.1mm径、5.5mm厚)を使用し、予熱時間1分、ロータの回転時間4分、100℃、2rpmの条件で測定した。得られた結果は、標準例1の値を100とする指数として、表1〜2の「粘度」の欄に示した。この指数値が小さいほど粘度が小さく加工性が優れることを意味する。
【0031】
硬度
得られた試験片を用いて、JIS K6253に準拠し、デュロメータのタイプAにより温度20℃におけるゴム硬さを測定した。得られた結果は、標準例1の値を100とする指数として、表1〜2の「硬度」の欄に示した。この指数値が大きいほど硬度が大きいことを意味する。
【0032】
破断エネルギー
得られた試験片からJIS K6251に準拠してJIS3号ダンベル型試験片(厚さ2mm)を切り出し、この試験片の引張り破断強度および破断伸びを、JIS K6251に準拠し、温度23℃、引張り速度500mm/分の条件で測定し、これらの積を破断エネルギーとして算出した。得られた結果は、標準例1の値を100とする指数として、表1〜2の「破断エネルギー」の欄に示した。この指数値が大きいほど、引張り破断時のエネルギーが大きく、破断物性が優れることを意味する。
【0033】
0℃におけるtanδ
得られた試験片をJIS K6394に準拠して、東洋精機製作所社製粘弾性スペクトロメーターを用いて、初期歪み10%、振幅±2%、周波数20Hzの条件で、温度0℃における損失正接tanδを測定した。得られたtanδの結果は、標準例1の値を100とする指数として表1〜2の「tanδ(0℃)」の欄に示した。この指数値が大きいほど0℃におけるtanδが大きく、タイヤ(トレッド部)に利用したときのウェットグリップ性が優れることを意味する。
【0034】
【表1】
【0035】
【表2】
【0036】
表1〜2において使用した原材料の種類を下記に示す。
・NR:天然ゴム、STR20
・SBR1:スチレンブタジエンゴム、日本ゼオン社製 Nipol 1723(スチレン含有量:23.5質量%、ゴム成分100質量部に対しオイル分37.5質量部を含む油展品)
・SBR2:スチレンブタジエンゴム、日本ゼオン社製 Nipol 1739(スチレン含有量:40質量%、ゴム成分100質量部に対しオイル分37.5質量部を含む油展品)
・シリカ1:Solvay社製 ZEOSIL 1165MP(CTAB吸着比表面積:155m2 /g)
・シリカ2:Solvay社製 ZEOSIL 1085GR(CTAB吸着比表面積:80m2 /g)
・変性再生ゴム:Lehigh社製 EkoDyne、テトラベンジルチウラムスルフィドで官能化された変性再生ゴム
・粉末再生ゴム1:Lehigh社製 GF‐80 REPROCESSED GROUND RUBBER(粒径:80メッシュ)
・粉末再生ゴム2:Lehigh社製 140 MESH GROUND RUBBER(粒径:140メッシュ)
・シランカップリング剤:Evonik社製 Si69
・オイル:昭和シェル石油社製 エキストラクト4号S
・石油系樹脂1:JXTGエネルギー社製 日石ネオポリマー120(軟化点:120℃)
・石油系樹脂2:ヤスハラケミカル社製 YSレジンTO‐125(芳香族変性テルペン樹脂、軟化点:125℃)
・ステアリン酸:日新理化社製 ステアリン酸50S
・酸化亜鉛:正同化学工業社製 酸化亜鉛3種
・老化防止剤:LANXESS社製 VULKANOX 4020
・ワックス:日本精蝋社製 OZOACE‐0015A
・加硫促進剤1:大内新興化学工業社製 ノクセラーCZ‐G
・加硫促進剤2:住友化学社製 ソクシノール D‐G
・硫黄:細井化学工業社製 油処理イオウ(硫黄含量:95%)
【0037】
表1〜2から明らかなように、実施例1〜12のゴム組成物は、標準例1に対して粘度、硬度、破断エネルギー、0℃におけるtanδをバランスよく向上した。
【0038】
一方、比較例1のゴム組成物は、再生ゴムとして変性再生ゴムを単独で配合しているので、破断物性(破断エネルギー)が低下した。比較例2のゴム組成物は、粉末再生ゴムの粒径が140メッシュであるものの、再生ゴムとして粉末再生ゴムを単独で配合しているので、粘度が悪化した。比較例3のゴム組成物は、変性再生ゴムの配合量が多過ぎるため、破断物性が悪化した。比較例4のゴム組成物は、ゴム成分が天然ゴムのみで構成されるので、0℃におけるtanδが低下した。比較例5のゴム組成物は、天然ゴムの配合量が多過ぎる(スチレンブタジエンゴムの配合量が少な過ぎる)ため、tanδが悪化した。比較例6のゴム組成物は、スチレンブタジエンゴムの配合量が多過ぎる(天然ゴムの配合量が少な過ぎる)ため、粘度が悪化した。比較例7のゴム組成物は、ゴム成分がスチレンブタジエンゴムのみで構成されるので、粘度および破断物性(破断エネルギー)が悪化した。比較例8のゴム組成物は、シリカのCTAB吸着比表面積が小さ過ぎるため、破断物性(破断エネルギー)が低下した。