(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
折り畳み位置で折り畳み可能であり、且つ折り畳まれた状態で屈曲している屈曲部と、前記屈曲部以外の平面部と、前記平面部に形成された曲げ部と、を有する筐体に配置される圧電フィルムと、
前記圧電フィルムの第1主面に形成された第1電極と、
前記圧電フィルムの第2主面に形成された第2電極と、
を備え、
前記圧電フィルムはスリットが設けられ、
前記スリットは、前記平面部において前記筐体の辺のうち前記屈曲部から離れて位置する端辺と前記屈曲部との中心より前記屈曲部に近い位置に設けられており、前記屈曲部には設けられていない、
変形センサ。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態に係る変形センサおよび変形センサを備えたタッチパネル、もしくは表示装置について、図を参照しながら説明する。なお、各図面において、説明の都合上、配線などは省略している。
【0011】
図1(A)は第一実施形態に係る変形センサを備えたタッチパネルの斜視図である。
図1(B)はその折り畳んだ状態の斜視図である。また、
図1(A)および
図1(B)に示すタッチパネルはあくまで本発明の一例であり、これに限るものではなく、仕様に応じて形状等を適宜変更することができる。
【0012】
図2(A)は
図1(A)に示すフレキシブルデバイスを
図1(A)に示すI−I線における断面図、
図2(B)はその折り畳まれた状態の断面図、
図2(C)はその開いた状態の平面図である。なお、
図2(A)および
図2(B)は模式的な図であり、説明の都合上、変形センサの各部品の厚み等が大きく表されている。また、
図2(B)においては、圧電フィルム10、筐体102および表面パネル103以外の図示は省略している。
【0013】
図1(A)に示すように、タッチパネル100は、略直方体形状の筐体102を備える。タッチパネル100は、筐体102に配置された平板状の表面パネル103を備える。表面パネル103は、ユーザが指またはペンなどを用いてタッチ操作を行う操作面として機能する。以下では、筐体102の幅方向(横方向)をX方向とし、長さ方向(縦方向)をY方向とし、厚み方向をZ方向として説明する。
【0014】
図2(B)に示すように、タッチパネル100の筐体102は、屈曲部3と、平面部4と、を有する。平面部4は、筐体102のうちの屈曲部3以外の部分である。屈曲部3は、可撓性を有する素材で形成されている。なお、平面部4も可撓性を有していてもよいが、屈曲部3より剛直な素材で形成されている。これにより、筐体102が折り畳み位置Lで折り畳まれたとき、屈曲部3は屈曲している。
【0015】
図1(B)に示すように、第一実施形態において、タッチパネル100は、X方向に沿った折り畳み位置Lを折れ曲がり線として折り畳むことができる。すなわち、タッチパネル100は、折り畳み位置Lを軸として開閉することができる。なお、タッチパネル100は、屈曲部3にヒンジまたは蛇腹構造等を設けることにより開閉可能としてもよい。
【0016】
筐体102における表面パネル103の反対側は、裏面105である。
図1(B)においては、タッチパネル100は、裏面105が内側になるように、すなわち表面パネル103が表側になるように折り畳み位置Lで折り畳まれている。なお、
図1(B)においては、表面パネル103が表側になるようにタッチパネル100が折り畳まれた状態を示したが、タッチパネル100は逆方向に折り畳むことも可能である。
【0017】
図2(A)に示すように、タッチパネル100は、筐体102の内側に変形センサ1を備える。変形センサ1は、表面パネル103の筐体102内側の面に形成されている。表面パネル103は透光性を有する。タッチパネル100は、筐体102の内側に表示部104を備える。表面パネル103および表示部104とは互いに積層されて配置される。変形センサ1が透明である場合、変形センサ1は表示部104よりタッチパネル100の表側に配置することができる。
【0018】
変形センサ1は、圧電素子20および不図示の処理部と、を備える。圧電素子20は、圧電フィルム10、第1電極11、および第2電極12を備える。
【0019】
図3(A)は第一実施形態に係る圧電素子の分解斜視図、
図3(B)はそのX−Y平面における平面図である。なお、
図3(A)および
図3(B)では、圧電フィルム10、第1電極11、および第2電極12以外の図示は省略している。
【0020】
図3(A)に示すように、圧電フィルム10は矩形状に形成されており、第1主面14および第1主面14に対向する第2主面15を有する。第1電極11および第2電極12は平膜状であり、平面視で圧電フィルム10と同様に矩形状に形成されている。なお、圧電フィルム10、第1電極11、および第2電極12の形状は、矩形状に限定されることなく、タッチパネル100の形状または用途に合わせて適宜変更することができる。
【0021】
第1電極11は、圧電フィルム10の第1主面14に配置されている。第2電極12は、第1主面14に対向する圧電フィルム10の第2主面15に配置されている。第2電極12は、グランド電極である。従って、圧電素子20は、グランド電極を基準とした電圧を出力する。なお、本明細書において説明の便宜上、グランド電位を0Vとして説明を行う。また、第1電極11、または第2電極12のいずれか一方がグランド電極であればよい。
【0022】
図3(B)のように圧電素子20を平面視した時、第1電極11および第2電極12は、上面視で圧電フィルム10と完全に重なるか、または圧電フィルム10より面方向内側に位置していると良い。これにより、第1電極11および第2電極12との端部における短絡を抑制できる。
【0023】
表面パネル103にユーザが指またはペンなどを用いてタッチ操作を行うと、押圧力は表面パネル103を介して変形センサ1に伝わる。後で詳述するが、変形センサ1は、筐体102の曲げまたは、表面パネル103で受け付けた押圧操作による圧電フィルム10の変形により電位を出力する。
【0024】
圧電フィルム10は、屈曲部3と、平面部4とに亘って配置されている。すなわち、圧電フィルム10は、タッチパネル100の折り畳み位置Lを跨ぐように筐体102に配置されている。これにより、圧電フィルム10が筐体102に対して一枚配置させればよいため、製造工程を簡易にできる。
【0025】
図2(C)に示すように、筐体102は、曲げ部B1を有する。曲げ部B1は、筐体102の平面部4に形成されている。筐体102において曲げ部B1に相当する部分は、可撓性を有する素材で形成されている。平面部4が可撓性を有する素材で形成されている場合、平面部4の曲げ部B1に相当する部分は、平面部4の曲げ部B1以外の部分より柔らかい素材で形成されている。なお、平面部4の曲げ部B1に相当する部分は、平面部4の曲げ部B1以外の部分より薄く形成されていてもよい。また、曲げ部B1にヒンジ等を設けていてもよい。
【0026】
曲げ部B1は、筐体102を平面視した場合の長辺5および短辺6に亘る直線上に形成されている。すなわち、筐体102の角に曲げ部B1が形成されている。このため、ユーザが曲げ部B1から筐体102の角側をつまむように把持しやすく、筐体102を曲げ部B1に沿って曲げる操作性が向上する。
【0027】
ユーザが曲げ部B1より筐体102の角側を把持して筐体102を曲げ部B1に沿って折り曲げた場合、曲げ部B1の折り曲げの影響は屈曲部3に及ばない。従って、ユーザが曲げ部B1を繰り返し曲げた場合であっても、筐体102における屈曲部3の劣化が抑制でき、タッチパネル100の使用による劣化に対する耐久性が向上する。
【0028】
図3(B)に示すように、ユーザが筐体102を曲げ部B1で曲げた場合、圧電フィルム10においては、平面視して筐体102の曲げ部B1に対応する位置B2が曲げられる箇所となる。なお、
図3(B)においては、説明の便宜上、位置B2は第1電極11を透過させて示されている。以下、圧電フィルム10について説明する。
【0029】
図4(A)は圧電フィルム10を説明するための平面図、
図4(B)はタッチパネル100の使用方法を説明するための図である。
【0030】
圧電フィルム10は、キラル高分子から形成されるフィルムであってもよい。キラル高分子として、第一実施形態では、ポリ乳酸(PLA)、特にL型ポリ乳酸(PLLA)を用いている。キラル高分子からなるPLLAは、主鎖が螺旋構造を有する。PLLAは、一軸延伸されて分子が配向すると圧電性を有する。そして、一軸延伸されたPLLAは、圧電フィルム10の平板面が押圧されることにより、電荷を発生する。この際、発生する電荷量は、押圧量により平板面が当該平板面に直交する方向へ変位する変位量に依存する。
【0031】
第一実施形態では、圧電フィルム10(PLLA)の一軸延伸方向は、
図4(A)の矢印901に示すように、Y方向およびZ方向に対して45度の角度を成す方向としている。この45度には、例えば45度±10度程度を含む角度を含む。圧電フィルム10は、曲げの操作により電荷を発生する。ここで、圧電フィルム10は、延伸方向(矢印901)と平行または垂直の直線に沿って曲げられた場合には、正と負の電荷が同等発生するため互いに打ち消しあい、トータルとして電荷は生じない。また、圧電フィルム10が押圧されることにより電荷が発生する。
【0032】
筐体102の曲げ部B1は、圧電フィルム10の延伸方向(矢印901)と平行または垂直以外の直線に沿って形成される。圧電フィルム10の位置B2は、圧電フィルム10の延伸方向(矢印901)と平行または垂直以外の直線に沿って形成される。これにより、圧電フィルム10が位置B2に沿って曲げられることにより電荷が発生する。
【0033】
PLLAは、延伸等による分子の配向処理で圧電性を生じるため、PVDF等の他のポリマーまたは圧電セラミックスのように、ポーリング処理を行う必要がない。すなわち、強誘電体に属さないPLLAの圧電性は、PVDFまたはPZT等の強誘電体のようにイオンの分極によって発現するものではなく、分子の特徴的な構造である螺旋構造に由来するものである。このため、PLLAには、他の強誘電性の圧電体で生じる焦電性が生じない。焦電性がないため、ユーザの指の温度または摩擦熱による影響が生じないため、変形センサ1を薄く形成することができる。さらに、PVDF等は経時的に圧電定数の変動が見られ、場合によっては圧電定数が著しく低下する場合があるが、PLLAの圧電定数は経時的に極めて安定している。従って、周囲環境に影響されることなく、押圧による変位を高感度に検出することができる。
【0034】
圧電フィルム10の両主面に形成されている第1電極11および第2電極12は、アルミニウムまたは銅等の金属系の電極を用いることができる。また電極に透明性が求められる場合、第1電極11および第2電極12は、ITOまたはPEDOTなどの透明性の高い材料を用いることができる。このような第1電極11および第2電極12を設けることで、圧電フィルム10が発生する電荷を不図示の処理部に出力し、処理部の回路において電圧に変換することで、曲げの屈曲量または押圧量に応じた電圧値が検出される。
【0035】
図4(B)に示すように、ユーザが筐体102を曲げ部B1で曲げた場合、圧電フィルム10は位置B2に沿って曲げられる。圧電素子20は、圧電フィルム10の曲げの屈曲量に応じた電荷を不図示の処理部へ出力する。これにより、ユーザは、押圧操作以外の筐体102を曲げる操作で、タッチパネル100を容易に操作することができる。
【0036】
なお、タッチパネル100においては、筐体102を曲げ部B1で表面パネル103が内側になるように曲げる例を示したが、表面パネル103が外側になるように逆方向に曲げてもよい。筐体102の曲げる方向によって、圧電フィルム10に生じる電荷の向きが異なる。従って、筐体102の曲げる方向によるタッチパネル100の操作の種類が増える。
【0037】
筐体102を曲げ部B1で曲げた場合、曲げ部B1の長さが長い程、圧電フィルム10の曲がる位置B2が長くなる。曲げ部B1の長さが長い程、圧電フィルム10から発生する電荷の量が増える。従って、曲げ部B1の長さによって、圧電フィルム10から発生する電荷の量を調整することができる。このため、筐体102に長さの異なる複数の曲げ部B1を形成することによって、それぞれの曲げ部B1に応じたタッチパネル100の操作の種類を増やすことができる。
【0038】
なお、タッチパネル100においては、曲げ部B1は筐体102の四隅のうちの一か所に形成されているが、これに限らず、例えば筐体102の四隅全てに形成されていてもよい。これにより、曲げ部B1の箇所に応じてタッチパネル100にユーザが与える指示の選択肢を増やすことができる。
【0039】
図5(A)は第一実施形態の変形例に係るタッチパネルの平面図、
図5(B)はその使用方法を説明するための図である。第一実施形態の変形例に係るタッチパネル200は、曲げ部B11および曲げ部B12の配置が異なること以外は第一実施形態と概ね同様の構成となっている。従って、第一実施形態の変形例においては、第一実施形態と異なるところについてのみ説明を行い、後は省略する。
【0040】
図5(A)および
図5(B)に示すように、タッチパネル200は、曲げ部B11および曲げ部B12を有する。曲げ部B11および曲げ部B12は、筐体102を平面視した場合に対抗する長辺5同士に亘る直線上に形成されている。すなわち、曲げ部B11および曲げ部B12は、筐体102の二つの短辺6に平行にそれぞれ形成されている。このため、ユーザが筐体102の長手方向(Y方向)の端部をつまむように把持するまたは押すことにより、筐体102を曲げ部B11または曲げ部B12に沿って曲げることができる。
【0041】
図5(A)に示すように、ユーザが曲げ部B11のみを曲げた場合、タッチパネル200の圧電フィルム10においては、曲げ部B11の屈曲量に応じた電荷が生じる。同様にユーザが曲げ部B12のみを曲げた場合、タッチパネル200の圧電フィルム10においては、曲げ部B12の屈曲量に応じた電荷が生じる。また、ユーザが曲げ部B11および曲げ部B12を同時に曲げる場合は、タッチパネル200の圧電フィルム10においては、曲げ部B11および曲げ部B12の屈曲量に応じた電荷が生じる。これにより、曲げ部B11または曲げ部B12の箇所に応じた曲げ操作の選択肢を増やすことができる。
【0042】
図6(A)および
図6(B)は第二実施形態に係るタッチパネルを説明するための図である。第二実施形態に係るタッチパネル300は、圧電フィルム60にスリットS1およびスリットS2が形成されていること以外は第一実施形態と概ね同様の構成となっている。従って、第二実施形態においては、第一実施形態と異なるところについてのみ説明を行い、後は省略する。
【0043】
図6(A)および
図6(B)に示すように、タッチパネル300の筐体102は、屈曲部3および平面部4を有する。圧電フィルム60には、スリットS1およびスリットS2が形成されている。スリットS1およびスリットS2は、筐体102の平面部4に対応する位置に設けられている。スリットS1およびスリットS2は、筐体102の辺のうち屈曲部3から離れて位置する端辺、すなわち短辺6と屈曲部3との中心Cより屈曲部3に近い位置に設けられている。
【0044】
タッチパネル300の筐体102を折り畳み位置Lで折り畳まれた状態において、屈曲部3における圧電フィルム10の変形は、スリットS1およびスリットS2によって遮断される。これにより、筐体102を折り畳み位置Lで折り畳んだ場合にであっても、筐体102の折り畳みの影響は、平面部4側に形成されている曲げ部B2に影響しない。従って、曲げ部B2の変形によって生じる出力は、筐体102の折り畳みの影響を受けにくくなるため、筐体102を折り畳んだ状態においても、筐体102を広げた状態と同様に曲げ部B2の操作による出力が得られる。
【0045】
図6(B)に示すように、ユーザが筐体102の平面部4における位置Pに押圧操作を加える場合について説明する。圧電フィルム10にスリットS1が形成されていることにより、圧電フィルム10は位置PのスリットS1側で固定されていない状態である。ユーザが位置Pに押圧操作を加えた場合、位置PのスリットS1側の圧電フィルム10の伸びが、短辺7側の圧電フィルム10の伸びに比べて小さくなる。このため、圧電フィルム10のY方向の伸びは、X方向の伸びに比べて小さくなる。ここで、ユーザが位置Pに押圧操作を加えた場合、X方向の伸びによって圧電フィルム60から生じる電荷が正の電荷であり、Y方向の伸びによって圧電フィルム60から生じる電荷が負の電荷である場合、発生する正の電荷は負の電荷に比べて大きい。従って、圧電フィルム60から生じる電荷の出力を増加させることができる。
【0046】
図7(A)は第三実施形態に係る表示装置を、
図7(B)は第四実施形態に係る表示装置を説明するための図である。
図7(A)においては、圧電素子21の形状および位置が第一実施形態の圧電素子20と異なること以外は第一実施形態と概ね同様の構成となっている。
図7(B)においては、圧電素子22、圧電素子23の形状および位置が第一実施形態の変形例の圧電素子20と異なること以外は第一実施形態と概ね同様の構成となっている。従って、第三実施形態および第四実施形態においては、第一実施形態または第一実施形態の変形例と異なるところについてのみ説明を行い、後は省略する。なお、
図7(A)および
図7(B)は、表示装置400および表示装置500の平面図であるが、圧電素子21、圧電素子22および圧電素子23を透過させて表している。
【0047】
図7(A)に示すように、第三実施形態に係る表示装置400は、圧電素子21を備える。圧電素子21は、曲げ部B1の形成されている箇所に配置されている。圧電素子21は、第一実施形態の圧電素子20と比べると小さい。このため、表示装置400は、より薄型に形成することができる。また、圧電素子21が、屈曲部3と離れて配置されているため、屈曲部3の筐体102の変形による影響を受けにくく耐久性が向上する。
【0048】
図7(B)に示すように、第四実施形態に係る表示装置500は、圧電素子22および圧電素子23を備える。圧電素子22は、曲げ部B11の形成されている箇所に配置されている。圧電素子23は、曲げ部B12の形成されている箇所に配置されている。圧電素子22および圧電素子23は、第一実施形態の変形例の圧電素子20と比べると小さい。このため、表示装置500は、より薄型に形成することができる。また、圧電素子22および圧電素子23が、屈曲部3と離れて配置されているため、屈曲部3の筐体102の変形による影響を受けにくく耐久性が向上する。
【0049】
なお、各実施形態において、変形センサを備えた例を示したが、これに限らず、さらに静電容量センサを備えていてもよい。例えば、タッチパネル100は、第1電極11および第2電極12とは別に不図示の静電容量検出用の電極を備えていてもよい。静電容量検出用の電極は、圧電フィルム10で生じる静電容量を出力する。これにより、タッチパネル100は押圧操作だけでなく、タッチ操作も検知することができる。
【0050】
最後に、前記実施形態の説明は、すべての点で例示であり、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上述の実施形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。さらに、本発明の範囲は、特許請求の範囲と均等の範囲を含む。