(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
速度データを出力するように構成される少なくとも1つの速度センサをさらに備えており、前記コントローラが、前記少なくとも1つの速度センサに通信可能に接続され、且つ少なくとも前記速度データを用いて前記ビークル動的特性を決定するようにさらに構成される、請求項1に記載のシステム。
前記コントローラが、ビークル速度がビークル速度閾値未満であると前記速度センサのデータが示す際に、前記ビークル動的特性が前記第2の動的範囲内にあると決定するように構成される、請求項3に記載のシステム。
ピッチ姿勢データを出力するように構成される少なくとも1つのピッチ姿勢センサをさらに備えており、前記コントローラが、前記少なくとも1つのピッチ姿勢センサに通信可能に接続され、且つ少なくとも前記ピッチ姿勢データを用いて前記ビークル動的特性を決定するようにさらに構成される、請求項1に記載のシステム。
高度データを出力するように構成される少なくとも1つの高度センサをさらに備えており、前記コントローラが、前記少なくとも1つの高度センサに通信可能に接続され、且つビークル高度が高度閾値未満であると前記高度データが示す際に、前記ビークル動的特性が前記第2の動的範囲内にあると決定するようにさらに構成される、請求項1に記載のシステム。
可動操縦翼面を有する少なくとも1つの翼をさらに備えており、前記コントローラが、可動操縦翼面構成を検出し、且つ少なくとも前記可動操縦翼面構成を用いて前記ビークル動的特性を決定するようにさらに構成される、請求項1に記載のシステム。
可動操縦翼面を有する少なくとも1つの翼をさらに備えており、前記コントローラが、前記可動操縦翼面の移動の度合いを制限することによって、前記許容可能なロールレートを制限するように構成され、前記可動操縦翼面が、補助翼、フラッペロン、スポイラー、フラップ、スラット、昇降舵、又は方向舵である、請求項1に記載のシステム。
前記コントローラが、前記ビークルの前記最新のロールレートに応答して、前記可動操縦翼面の移動の度合いを制限するようにさらに構成される、請求項8に記載のシステム。
速度データを出力するように構成される少なくとも1つの速度センサ、高度データを出力するように構成される少なくとも1つの高度センサ、及び可動操縦翼面を有する少なくとも1つの翼をさらに備えており、前記コントローラが、少なくとも、前記速度データ、前記高度データ、及び検出された可動操縦翼面構成を用いて前記ビークル動的特性を決定するようにさらに構成される、請求項1に記載のシステム。
【発明を実施するための形態】
【0008】
航空機構造体は、特定の荷重倍数(すなわち、翼に対する揚力に起因する、Gで表される航空機の加速度)に関連付けられる最大ロールレートに従って設計され得る。一般的には、最大ロールレートが高いことにより、航空機のより高い性能と、大きなバンク角から安全に回復する能力とが可能になる場合がある。しかしながら、通常の条件下で高い最大ロールレートの反復を安全に可能にするためには、航空機の構造体が高い最大ロールレートに順応するように設計されなければならず、このような順応は、より重量のある構造体を必要とする場合がある。したがって、典型的には、より重量のある構造体は、航空機の性能(航空機の最大限許容可能なペイロードなど)を低下させるか、且つ/又は航空機のコストを増大させ得る。
【0009】
本明細書に記載される技法及びシステムは、通常の飛行条件下で航空機をより低いロールレート制限に制限し得る。しかしながら、より高いロールレート制限が望ましい条件が検出された場合、航空機は、より低いロールレート制限を超過することが許容され得る。したがって、航空機の構造体は、より低いロールレート制限に対して適切に設計されてもよいが、緊急事態の間、航空機は、航空機の安全操作を可能にするためにより低いロールレート制限を安全に超過して制御を維持することができる。このような状況はめったにないため、航空機は、航空機の構造体寿命に対する著しい影響がない状態で、より低いロールレート制限を時折安全に超過するように設計され得る。特定の実装形態では、航空機は、より低いロールレート制限が超過された事例を判断し、このような事態を記録し、且つ航空機がより低いロールレート制限を超過した際に航空機に対して整備上の注意をより喚起するため、このような事態をオペレータ又は整備員に知らせることができる。
【0010】
図1は、本開示に係る例示的な航空機を示す。
図1では、航空機100は、エンジン102、胴体104、後方翼空力装置(aft wing aerodynamic device)106、方向舵108、昇降舵110、及び前方翼空力装置(forward wing aerodynamic device)112を含み得る。
【0011】
エンジン102は、航空機100のために推力を供給し得る。航空機102は、任意の種類の航空機エンジンであってよい。特定の実施例では、エンジン102は、航空機100の制御に役立ち得る推力偏向をさらに提供し得る。
【0012】
胴体104は、航空機100の中心構造を形成し得る。航空機のバンキング及びその他の動的運動からの力は、少なくとも胴体104によって支持され得る。航空機100の動的運動は、前方翼空力装置112、後方翼空力装置106、昇降舵110、及び方向舵108の組み合わせによって制御され得る。
【0013】
前方翼空力装置112、後方翼空力装置106、方向舵108、及び/又は昇降舵110は、可動操縦翼面であってもよく、スラット、フラップ、補助翼、フラッペロン、スポイラー、及び/又は方向舵のうちの1つ又は複数の組み合わせを含み得る。前方翼空力装置112、後方翼空力装置106、昇降舵110、及び/又は方向舵108のうちの1つ又は複数は、航空機100のバンク姿勢の制御に役立ち得る。
【0014】
図2は、本開示に係る例示的なロールしている航空機を示す。
図2は、ロールしている
図1の航空機を示す。航空機100は、バンク角Aに対応するバンク角でロールしている。バンク角Aは、航空機が水平面から偏向している度合である。
【0015】
図2では、航空機は、ロールレート292を通して、バンク角を減少させ、その結果、水平に戻ろうとしている。ロールレート292は、航空機100に対して作用するモーメントによって引き起こされ得る。ロールレート292は、ことによると航空機100上に備え付けられた1つ又は複数のスラット、フラップ、補助翼、フラッペロン、スポイラー、及び/又は方向舵によってもたらされ得る。ロールレート292は、航空機100のロールに役立ち得る。より大きなロールレートは、より速い速度で航空機100を水平に安全に戻すことに役立ち得る。
【0016】
特定の状況で航空機100を制御するためにより大きなロールレートがさらに必要である場合がある。例示的な実施例として、航空機100は、最初は、水平線から離れた初期ロールモーメント(initial roll moment)の影響を受ける場合がある。この初期ロールモーメントによって、航空機100は、水平線から離れてバンク角Aへと回転し得る。しかしながら、
図2の場合、航空機100は、初期ロールモーメントに起因して、水平線から離れるようにさらに回転し得る。ロールレート292は、第2のモーメントから生成される場合があり、初期ロールレートに起因する水平線から離れる航空機100の回転を和らげるために比較的重要であり得る。しかしながら、特定の状況では、初期ロールモーメントが十分に大きければ、航空機100は、水平線から迅速に離れるようにさらに回転し得る。このような状況では、航空機100が水平線からかなり離れてローリングし、制御不能になることを防ぐため、第2のモーメントが大きくなければならない場合がある。しかしながら、このような大きなロールモーメントは、胴体104や翼及びその他の操縦翼面などの航空機100の機体に対して大きな応力をかける場合がある。そのため、典型的に、航空機は、より大きなロールモーメント又はロールレートからの応力に対処するためにより大きくてより重量のある機体を必要とする場合があるか、或いは、航空機の最大ロールモーメント又はロールレートをより低い量に制限しなければならない場合があり、これにより、航空機が制御不能状態から回復する性能マージン(performance margin)が低下し得る。
【0017】
図3は、本開示に係る例示的な航空機制御システムを示す。
図3は、飛行機状態センサ320、パイロットコントロール330、オートパイロット340、飛行制御コンピュータ350、飛行制御アクチュエータ、及びロール操縦翼面(roll control surface)360を含む。
【0018】
飛行制御コンピュータ350は、飛行機状態センサ320、パイロットコントロール330、及びオートパイロット340から入力を受信し得る。飛行機状態センサ320は、航空機の動的状態を検出し得る。オートパイロット340は、予め入力された経路指示に従って、航空機のコンピュータ制御されたガイダンスを可能にし得る。パイロットコントロール330は、飛行制御アクチュエータ及びロール操縦翼面360をどのように操縦すればよいかについて、パイロット又は副パイロットから入力を受信し得る。特定の実施例では、パイロットコントロール330は、フライバイワイヤ制御であってもよく、パイロットコントロール330は、飛行制御アクチュエータ及びロール操縦翼面360への電気接続のみを含み得る。
【0019】
このような実施例では、飛行機状態センサ320、パイロットコントロール330、及び/又はオートパイロット340からの受信は、飛行制御コンピュータ350によって受信且つ解釈され得る。飛行制御コンピュータ350は、次いで、受信された入力に応じて飛行制御アクチュエータ及びロール操縦翼面360のための適切な指示を計算し、飛行制御アクチュエータ及びロール操縦翼面360に指示を与え得る。
【0020】
図3の航空機制御システムは、
図4でさらに例示され得る。
図4は、本開示に係る、さらなる例示的な航空機制御システムを示す。
図4は、飛行機状態センサ420、パイロットコントロール430、オートパイロット440、飛行制御コンピュータ450、飛行制御アクチュエータ、及びロール操縦翼面460を含む。
【0021】
飛行機状態センサ420は、1つ又は複数のロールレートセンサ、バンク角センサ、フラップ位置センサ、対気速度センサ、高度センサ、及び/又はピッチ姿勢センサを含み得る。ロールレートセンサは、航空機のロールレートを検出し得る。バンク角センサは、航空機のバンク角を検出し得る。フラップ位置センサは、航空機上の1つ又は複数のフラップが、上方位置、下方位置、又は別の可能な位置にあるかどうかを検出し得る。対気速度センサは、航空機の対気速度又は速度を検出し得る。高度センサは、航空機の相対高度又は絶対高度を検出し得る。絶対高度は、海水面に比べた場合の航空機の高度であり得る。相対高度は、航空機の下方又は周囲の地形特徴に相対する航空機の高度であり得る。したがって、例えば、航空機の相対高度は、航空機が丘や山の上方にある場合、絶対高度よりも低い場合がある。相対高度は、地形データなどの他のデータで決定されてもよい。ピッチ姿勢センサは、航空機のピッチ姿勢を決定し得る。したがって、ピッチ姿勢センサは、例えば、航空機が、機首上げ、機首下げ、又はニュートラルなピッチ姿勢にあるかどうかを決定し得る。
【0022】
パイロットコントロール430は、1つ又は複数の制御ホイール、ペダル、ジョイスティック、レバー及び他のハンドコントロール、スィッチ、ボタン、並びに/或いは又は他のコントロールを含み得る。特定の実施例では、パイロットコントロールは、飛行制御コンピュータ450に電気的に接続されてもよい。パイロットコントロール430によって受信されたパイロット入力は、飛行制御コンピュータ450に伝達され得る。飛行制御コンピュータ450は、次いで、パイロット入力、並びに飛行機センサ420などの航空機の他の部分からの他の入力を用いて、飛行制御アクチュエータ及びロール操縦翼面460に供給する適切な制御応答を決定し得る。
【0023】
図3のオートパイロット340と似たように、オートパイロット440は、予め入力された経路指示に従って、航空機のコンピュータ制御されたガイダンスを可能にし得る。オートパイロット440は、飛行制御コンピュータ450とインターフェースし得る。飛行制御コンピュータ450は、オートパイロット440の指示又は設定に従って指示を発行し得る。
【0024】
飛行制御コンピュータ450は、例えば、シングルコアプロセッサ又はマルチコアプロセッサ、マイクロコントローラ、ロジックデバイス、信号処理デバイス、実行可能命令を記憶するためのメモリ(例えば、ソフトウェア、ファームウェア、又は他の指示)、及び/又は本明細書に記載された様々な任意の操作を実行する任意の要素を含んでもよい。様々な実施例では、飛行制御コンピュータ450及び/又はその関連するオペレーションは、単一の装置として、又は、飛行制御コンピュータ450を集合的に構成する複数の装置(例えば、有線又は無線接続により通信できるよう連結されている装置)として、実装されてもよい。
【0025】
飛行制御コンピュータ450は、データ及び情報を記憶するための1つ又は複数のメモリ構成要素又は装置を含み得る。メモリは、揮発性及び不揮発性のメモリを含み得る。このようなメモリの例としては、RAM(ランダムアクセスメモリ)、ROM(読取専用メモリ)、EEPROM(電気的消去可能読取専用メモリ)、フラッシュメモリ、又は別の種類のメモリが挙げられる。特定の実施例では、飛行制御コンピュータ450は、本明細書に記載された様々な方法及びプロセスを実行するため、メモリ内に記憶された指示を実行するように適合され得る。
【0026】
特定の実施例では、飛行制御コンピュータ450は、ユーザとインターフェースし且つユーザ入力を受信するように適合された入力装置(例えば、ボタン、ノブ、スライダ、タッチスクリーン、タッチパッド、又は他の入力装置)をさらに含んでもよい。特定の実施例では、飛行制御コンピュータ450は、ディスプレイ又は他の入力装置の部分として統合され得るグラフィカルユーザーインターフェース(GUI)を含んでもよい。このような特定の実施例では、入力装置及びGUIは、単一の装置の中に含まれ得る。
【0027】
飛行制御コンピュータ450は、飛行機センサ420、パイロットコントロール430、オートパイロット440、並びに飛行制御アクチュエータ及びロール操縦翼面460に接続され得る。飛行制御アクチュエータ及びロール操縦翼面460は、アクチュエータ、モータ、及び航空機の飛行特性を制御する翼面を含み得る。例えば、補助翼、フラッペロン、スポイラー、方向舵、及び航空機の他の操縦翼面のうちの1つ又は複数は、アクチュエータ及びモータによって制御され得る。
【0028】
特定の実施例では、飛行機センサ420、パイロットコントロール430、及びオートパイロット440は、飛行制御コンピュータ450に対して電子データ又は指示を出力し得る。このような実施例では、パイロットコントロールは、制御ホイールの回転又はペダルの押下などのパイロットからの機械的入力を受信し得るが、次いでこの機械的入力を、制御ホイールの運動の度合い、入力の運動速度、又はペダルの変位の距離に関するデータを含む電気信号に変換し得る。
【0029】
特定の実施例では、飛行制御コンピュータ450は、ビークル動的特性計算452を実行し得る。ビークル動的特性計算452は、飛行機センサ420からの入力を用いて実行され得る。例示的な実施例として、ビークル動的特性計算452は、各センサからのデータを通して、航空機のバンク角、ロールレート、及びピッチ姿勢などの航空機の動的特性を決定することを含み得る。飛行制御コンピュータ450は、航空機上に備え付けられた飛行機センサ420又は他のセンサを通して、或いは、他のソースから受けた情報を通して、その他の動的特性をさらに決定し得る。
【0030】
さらに、飛行制御コンピュータ450は、少なくともパイロットコントロール430からの入力から、航空機力学における所望の変化を決定し得る。飛行制御コンピュータ450は、例えば、パイロットコマンドを解釈して、パイロットコマンドを航空機からの動的応答に変換し得る。したがって、飛行制御コンピュータ450は、パイロットコントロール430から受信された入力に基づいて、飛行制御アクチュエータ及びロール操縦翼面460に対して指示を出力し得る。このようなシステムは、フライバイワイヤシステムであり得る。
【0031】
飛行制御コンピュータ450は、ロールレート調節及び翼面コマンド計算454をさらに実行し得る。ロールレート調節計算は、例えば、航空機に対する最大ロールレート制限を計算することを含み得る。翼面コマンド計算は、少なくとも、計算された最大ロールレートと、可能であれば、飛行機センサ420からのデータと比較されたパイロットコントロール430からの入力を用いて決定され得る。翼面コマンド計算は、次いで、制御アクチュエータ及び航空機の翼面に出力され得る適切な制御応答を決定し得る。翼面コマンド計算は、例えば、航空機力学で望まれる変化を達成するために飛行制御アクチュエータ及びロール操縦翼面450に与える指示を決定することを含み得る。飛行制御アクチュエータ及びロール操縦翼面450に与える適切な指示を決定することの例は、例えば、航空機上の1つ又は複数のロール操縦翼面を何度回転させるべきかを決定すること、或いは、航空機の方向舵の適切な運動を決定することを含んでもよい。特定の実施例では、飛行制御アクチュエータ及びロール操縦翼面450に与えられた指示は、飛行機センサ420からの入力に基づいて更新されてもよい。したがって、飛行機センサ420は、操縦翼面の運動が、飛行制御コンピュータ450によって計算された値よりも航空機飛行力学においてより大きく変化したと検出した場合、飛行制御コンピュータ450は、次いで、制御アクチュエータ及び翼面に対して適切なフォローアップコマンドを発行し得る。
【0032】
図5では、ロールレート調節計算の例が示されている。
図5は、本開示に係る、例示的な最大ロールレート選択プロセスを詳細に描くフロー図を示す。
図5のプロセスは、飛行機センサ、パイロットコントロール、及びオートパイロットからの入力を使用して、飛行制御コンピュータによって実行され得る。プロセスの結果は、次いで、飛行制御アクチュエータ及びロール操縦翼面に出力又は通信され得る。
【0033】
ブロック502では、航空機の動的特性が決定され得る。動的特性は、例えば、航空機のバンク角、ロールレート、及びピッチ姿勢を含み得る。動的特性は、飛行機センサからの入力を用いて決定され得る。
【0034】
ブロック504では、構成及び飛行条件データが、様々な他の飛行機センサなどの様々なセンサから受信され得る。例えば、フラップ位置センサは、航空機のフラップが、上方位置、下方位置、又は中間位置にあるかどうかに関する情報を提供し得る。高度センサは、航空機の相対高度又は絶対高度に関する情報を提供し得る。対気速度センサは、航空機の対気速度に関する情報を提供し得る。
【0035】
ブロック504で得られた構成及び飛行条件データを使用して、ブロック506で、第1及び第2のロールレート制限、並びに関連付けられた動的範囲が決定され得る。第1のロールレート制限は、例えば、17度/秒のロールレートであってもよいが、第2のロールレート制限は、例えば、22度/秒のロールレートであってもよい。他の実施例は、他のロールレート制限を含み得る。したがって、例示的な例として、このような実施例は、毎秒5度から毎秒30度の間の第1のロールレート制限と、毎秒10度から毎秒35度の間の第2のロールレート制限とを含み得る。したがって、特定の実施例では、第1のロールレート制限は、通常の飛行条件に適切である、より低い制限であり得るが、第2のロールレート制限は、緊急事態又は要求の高い飛行条件に適切である、より高い制限であり得る。
【0036】
第1及び第2のロールレート制限は、第1及び第2の動的範囲に対応し得る。飛行制御コンピュータは、航空機が、第1の動的範囲内、第2の動的範囲内、又は第1の動的範囲と第2の動的範囲の間(特定の実施例では「遷移動的範囲」と呼ばれる場合がある)にあるかどうかを決定し得る。様々な実装形態では、第1の動的範囲は、航空機の通常の飛行中の動作条件(通常の航行条件の間など)に対応し得る。このような動作条件は、より高い最大ロールレートを必要としない場合がある。飛行制御が、航空機の動的特性によって航空機が第1の動的範囲内にあるように示されていると決定した場合、最大ロールレートは第1のロールレート制限に制限されてもよい。第2の動的範囲は、着陸中又は緊急操作中など、より高い最大ロールレートが有益であり得る状況に対応し得る。したがって、第2のロールレート制限に対応し得る、より高い最大ロールレートは、このような状況の間に許容され得る。
【0037】
さらに、特定の実施例では、第1の動的範囲と第2の動的範囲の間に動的範囲があってもよい。このような動的範囲は、本明細書では遷移動的範囲と呼ばれる場合があり、航空機のより高い操縦性、並びに、第1のロールレート制限と第2のロールレート制限の間の最大ロールレートが望ましい状況に対応し得る。このような状況では、最大ロールレートは、本明細書で計算されたロールレート制限と呼ばれる、第1のロールレート制限と第2のロールレート制限の間のロールレートであってもよい。このような幾つかの状況では、飛行制御コンピュータは、計算されたロールレート制限を算出し得る。他の実施例では、動的範囲は、3つ、4つ、又は5つ以上など、2つより多くてもよい。
【0038】
動的範囲は、インジケータであり得る。特定の実施例では、インジケータは、様々なセンサからのデータを用いて決定され得る。したがって、様々な実施例では、動的範囲は、ロールレート、バンク角、フラップ位置、対気速度、高度、ピッチ姿勢のうちの1つ又は複数の組み合わせ、並びにその他の航空機の動的条件、飛行条件、又は設定条件から決定されてもよい。
【0039】
動的範囲は、様々な異なる方法で決定され得る。例えば、特定の実装形態では、第1の動的範囲は、例えば、55度より低いバンク角であってもよいが、第2の動的範囲は、例えば、75度より大きいバンク角であってもよく、遷移動的範囲は、55から75度の間のバンク角に対応し得る。少なくともバンク角で第1及び第2の動的範囲を決定する他の実装形態では、第1の動的範囲に対応するバンク角は、様々な角度であってもよい。例えば、第1の動的範囲の上限は、40度、45度、50度、60度、65度以上、又は40度から65度の間の任意の角度のバンク角であってもよい。第1の動的範囲の下限は、例えば、0度のバンク角であってもよい。第2の動的範囲の下限は、例えば、55度未満、60度、65度、70度、80度、85度以上、又は55度から85度の間の任意の角度であってもよい。遷移動的範囲の範囲は、第1の動的範囲の上限及び第2の動的範囲の下限を画定する閾値間のバンク角に対応し得る。
【0040】
対気速度及び高度も動的範囲の要素となり得る。着陸は、航空機に対するさらなる制御が有益である状況である。それは、パイロットにとって航空機挙動を修正するウインドウが限られており、航空機の最大限の操縦性が望ましい場合があるためである。したがって、飛行制御コンピュータが、航空機が着陸中であると検出する場合、又は典型的に着陸と関連するセンサの読み出しを有する場合、飛行制御コンピュータは、航空機が第2の動的範囲内で動作していると決定し得る。
【0041】
したがって、飛行制御コンピュータは、速度センサを用いて航空機の対気速度を決定し得る。航空機の対気速度が速度閾値より低い場合、飛行制御コンピュータは、航空機が、着陸中又は下降中であり、且つ第2の動的範囲内で動作していると決定し得る。航空機の対気速度が速度閾値を越えている場合、飛行制御コンピュータは、対気速度及び他の要因に従って、航空機が、第1の動的範囲内、第2の動的範囲内、又は第1の動的範囲と第2の動的範囲の間で動作しているかを決定する。
【0042】
飛行制御コンピュータは、航空機の高度をさらに検出することができ、航空機の高度によって航空機が着陸中であると示される場合(例えば、航空機の高度が、5000フィートの相対高度などの閾値より低い状況、及び/又は、航空機の高度が特定の率で減少している状況)、飛行制御コンピュータは、航空機が第2の動的範囲内にあると決定し得る。航空機の高度によって航空機が着陸中であると示されない場合、飛行制御コンピュータは、高度及び他の要因に従って、航空機が、第1の動的範囲、第2の動的範囲、又は第1の動的範囲と第2の動的範囲の間で動作しているか決定し得る。
【0043】
動的範囲は、角度や速度などの数値因子だけによらずに決定され得る。フラップ位置は、航空機がどの動的範囲内で動作しているかを決定することにさらに役立ち得る。したがって、航空機の1つ又は複数のフラップが下方位置にある場合、航空機が着陸中であることを示し得る。したがって、航空機の1つ又は複数のフラップが、下方位置にあると決定された場合、飛行制御コンピュータは、航空機が第2の動的範囲内で動作していると決定し得る。さもなければ、飛行制御コンピュータは、他の要因を用いて、航空機が、第1の動的範囲、第2の動的範囲、又は第1の動的範囲と第2の動的範囲との間で動作しているかどうかを決定し得る。他の特定の実装形態は、複数のフラップ位置を含み得る。このような実装形態の飛行制御コンピュータは、航空機の1つ又は複数のフラップが特定のフラップ位置にある場合、航空機が第2の動的範囲内で動作していると決定し得る。このようなフラップ位置は、航空機の着陸を示す位置であり得る。
【0044】
さらに、動的範囲は、他のセンサからのデータを用いて決定され得る。例えば、ピッチ姿勢センサデータ及びロールレートデータは、航空機が、第1の動的範囲及び第2の動的範囲内、又は第1の動的範囲と第2の動的範囲の間で動作しているかを決定するためにさらに使用され得る。このような実装形態では、飛行制御コンピュータが、航空機が通常よりもピッチアップ又はピッチダウンしていると示すピッチ姿勢データを受信した場合、飛行制御コンピュータは、航空機が第1の動的範囲外(すなわち、第1の動的範囲と第2の動的範囲の間、或いは、第2の動的範囲内のいずれか)で動作していると決定し得る。さらに、飛行制御コンピュータが、航空機が高速でローリングしていると示すデータを受信した場合、飛行制御コンピュータは、航空機が第1の動的範囲外で動作していると決定し得る。
【0045】
特定の実施例では、飛行制御コンピュータは、飛行機センサによって検出された条件に応じて、第1及び/又は第2の動的範囲、並びに/或いは、第1及び/又は第2のロールレート制限を変動させることができる。したがって、飛行制御コンピュータは、例えば、航空機が加速又は減速していると検出した場合、第1の動的範囲の閾値を増大又は減少させ得る。このような動的範囲の増減は、例えば、航空機構造体が受けている力に基づいてもよい。
【0046】
ブロック508では、飛行制御コンピュータは、航空機の様々なシステムから入力を受信し、データが、航空機の動的特性は航空機が第1の動的範囲内で動作していると示しているかを決定し得る。航空機が第1の動的範囲内で動作しているかどうかは、本明細書に記載された航空機センサによって検出された様々な特性から決定され得る。したがって、例えば、飛行制御コンピュータが、55度より低いバンク角を検出した場合、航空機が第1の動的範囲内で動作していると決定し得る。飛行制御コンピュータが、航空機が第1の動的範囲内で動作していると決定した場合、ブロック510では、飛行制御コンピュータは、次いでロールレート制限を第1のロールレート制限に設定し得る。
【0047】
飛行制御コンピュータが、航空機が第1の動的範囲外で動作していると決定した場合、飛行制御コンピュータは、次いでブロック512に進んでもよい。ブロック512では、飛行制御コンピュータは、航空機が第2の動的範囲内で動作しているか決定し得る。例として、飛行制御コンピュータが75度以上のバンク角を検出した場合、航空機が第2の動的範囲内で動作していると決定し得る。飛行制御コンピュータが、航空機が第2の動的範囲内で動作していると決定した場合、ブロック514では、飛行制御コンピュータは、次いで、ロールレート制限を第2のロールレート制限に設定し得る。
【0048】
飛行制御コンピュータが、航空機が第1の動的範囲と第2の動的範囲の間(例えば、遷移動的範囲内)で動作していると決定した場合、飛行制御コンピュータは、次いで、ブロック516に進んでもよい。ブロック516では、飛行制御コンピュータは、計算されたロールレート制限を決定し、ロールレート制限を計算されたロールレート制限に設定し得る。計算されたロールレート制限は、例えば、第1のロールレート制限の値と第2のロールレート制限の値の間の制限であってもよい。特定の実施例では、計算されたロールレート制限は、第1のロールレート制限と第2のロールレート制限の間で線形に増減し得る。このような例では、動的範囲は、インジケータを通して決定されてもよく、計算されたロールレート制限は、例えば、インジケータ値に従って増減し得る。したがって、以前の例を用いて、航空機のバンク角が65度であると決定された場合、計算されたロールレート制限は、第1のロールレート制限と第2のロールレート制限の直接間にある閾値であり得る。
【0049】
一旦、ロールレート制限がブロック510、514、又は516で決定されると、ロールレート制限は、航空機のロールレートを制限する制御法則として飛行制御コンピュータによって使用されてもよい。したがって、飛行制御コンピュータは、典型的には、最大ロールを第1のロールレート制限に設定するのみであり得るが、より高いロールレート制限が望ましい状況を検出した場合、飛行制御コンピュータは、最大ロールレートを、第2のロールレート制限、或いは、計算されたロールレート制限などの第1のロールレート制限と第2のロールレート制限の間の値に設定し得る。
【0050】
航空機は、航空機の飛行制御アクチュエータ及び/又はロール操縦翼面の運動を制限することによって、ロールレートを制限し得る。したがって、一実施例では、航空機は、航空機の1つ又は複数の補助翼、フラッペロン、スポイラー、及び/又は方向舵の運動を、それぞれの構成要素の最大許容運動よりも低い量に制限し得る。別の実施例では、航空機は、航空機が、ロールレートやバンク角の閾値或いは他の動的閾値を超過するまで、様々な構成要素の最大限の運動を可能にし得る。航空機が閾値を通過した後、航空機は、次いで、航空機が最大ロールレートを超過することを防ぐため、飛行制御アクチュエータ及び/又はロール操縦翼面の運動を制限し得る。このような特定の実施例では、航空機は、ロールレートを制限する前に飛行制御アクチュエータ及び/又はロール操縦翼面の運動を制限し始める場合があり、それにより、航空機がロールレート制限を超過せずに円滑にロールレート制限に達することが可能となり、航空機構造体に対してかかる応力が減る。他の実施例では、航空機の様々な飛行制御アクチュエータ及び/又はロール操縦翼面の運動の制限、並びにこのような装置の運動をさらに制限する閾値を組み合わせて使用し得る。
【0051】
本開示の態様によると、バンク角データを出力するように構成される少なくとも1つのバンク角センサ、ロールレートデータを出力するように構成される少なくとも1つのロールレートセンサ、及び少なくとも1つのバンク角センサ及び少なくとも1つのロールレートセンサに通信可能に接続されるコントローラであって、少なくともバンク角データを用いてビークル動的特性を決定し、少なくともロールレートデータからビークルの最新のロールレートを決定し、ビークル動的特性が第1の動的範囲内にあるかどうかを決定し、第1の動的範囲内にある場合、許容可能なロールレートを第1のロールレート制限に制限し、ビークル動的特性が第2の動的範囲内にあるかどうかを決定し、第2の動的範囲内にある場合、許容可能なロールレートを第2のロールレート制限に制限し、且つビークル動的特性が第1の動的範囲と第2の動的範囲の間の遷移動的範囲内にあるかどうかを決定し、計算されたロールレート制限を決定し、遷移動的範囲内にある場合、許容可能なロールレートを計算されたロールレート制限に制限するように構成されるコントローラを備えるシステムが提供される。
【0052】
計算されたロールレート制限が、第1のロールレート制限と第2のロールレート制限の間の値を有するシステムがさらに開示される。
【0053】
このシステムは、速度データを出力するように構成される少なくとも1つの速度センサをさらに備えており、コントローラは、少なくとも1つの速度センサに通信可能に接続され、且つ少なくとも速度データを用いてビークル動的特性を決定するようにさらに構成される。
【0054】
コントローラが、ビークル速度がビークル速度閾値未満であると速度センサデータが示す際に、ビークル動的特性が第2の動的範囲内にあると決定するように構成されるシステムがさらに開示される。
【0055】
このシステムは、ピッチ姿勢データを出力するように構成される少なくとも1つのピッチ姿勢センサをさらに備えており、コントローラは、少なくとも1つのピッチ姿勢センサに通信可能に接続され、且つ少なくともピッチ姿勢データを用いてビークル動的特性を決定するようにさらに構成される。
【0056】
このシステムは、高度データを出力するように構成される少なくとも1つの高度センサをさらに備え、コントローラは、少なくとも1つの高度センサに通信可能に接続され、且つビークル高度が高度閾値未満であると高度データが示す際にビークル動的特性が第2の動的範囲内にあると決定するようにさらに構成される。
【0057】
このシステムは、可動操縦翼面を有する少なくとも1つの翼をさらに備えており、コントローラは、可動操縦翼面構成を検出し、且つ少なくとも可動操縦翼面構成を用いてビークル動的特性を決定するようにさらに構成される。
【0058】
このシステムは、可動操縦翼面を有する少なくとも1つの翼をさらに備えており、コントローラは、可動操縦翼面の移動の度合いを制限することによって、許容可能なロールレートを制限するように構成されており、可動操縦翼面は、補助翼、フラッペロン、スポイラー、フラップ、スラット、昇降舵、又は方向舵である。
【0059】
コントローラが、ビークルの最新のロールレートに応答して、可動操縦翼面の移動の度合いを制限するようにさらに構成されるシステムがさらに開示される。
【0060】
このシステムは、速度データを出力するように構成される少なくとも1つの速度センサ、高度データを出力するように構成される少なくとも1つの高度センサ、及び可動操縦翼面を有する少なくとも1つの翼をさらに備えており、コントローラは、少なくとも、速度データ、高度データ、及び検出された可動操縦翼面構成を用いてビークル動的特性を決定するようにさらに構成される。
【0061】
このシステムは、少なくとも1つの速度センサ、ピッチセンサ、高度センサ、及び/又は可動操縦翼面構成センサをさらに備えており、コントローラは、少なくとも1つの速度センサ、ピッチセンサ、高度センサ、及び/又は可動操縦翼面構成センサによって出力されたデータから、ビークル動的特性が第1の動的範囲内及び/又は第2の動的範囲内にあるかどうかを決定するようにさらに構成される。
【0062】
ビークル動的特性がバンク角データから計算され、第1の動的範囲が55度以下のバンク角を有し、且つ第2の動的範囲が75度以下のバンク角を有する、システムがさらに開示される。
【0063】
第1のロールレート制限が毎秒17度のロールレートであり、第2のロールレート制限が毎秒22度のロールレートであるシステムがさらに開示される。
【0064】
本開示の別の態様によると、請求項1に記載のシステムを含む航空機が提供されており、この航空機は、胴体、可動操縦翼面を有する翼、及び/又はエンジンを備える。
【0065】
本開示のさらに別の態様によると、ビークル動的特性を決定すること、ビークル動的特性が第1のロールレート制限に関連付けられる第1の動的範囲外にあると決定すること、及び許容可能なロールレートを第1のロールレート制限とは異なるレートに制限することを含む方法が提供される。
【0066】
この方法は、ビークル動的特性が第1のロールレート制限とは異なる第2のロールレート制限に関連付けられる第2の動的範囲内にあると決定すること、及び許容可能なロールレートを第2のロールレート制限に制限することをさらに含む。
【0067】
ビークル動的特性がビークルのバンク角から計算される方法がさらに開示されており、この方法は、ビークルのバンク角がバンク角閾値を越えていると決定すること、及びビークルのバンク角がバンク角閾値を越えていると決定したことに応答して、ビークル動的特性が第2の動的範囲内にあると決定することをさらに含む。
【0068】
バンク角閾値が75度以上のバンク角である方法がさらに開示される。
【0069】
この方法は、ビークルの速度が速度閾値未満であると決定すること、及びビークルの速度が速度閾値未満であると決定したことに応答して、ビークル動的特性が第2の動的範囲内にあると決定することをさらに含む。
【0070】
この方法は、ビークルの高度が高度閾値未満であると決定すること、及びビークルの高度が高度閾値未満であると決定したことに応答して、ビークル動的特性が第2の動的範囲内にあると決定することをさらに含む。
【0071】
この方法は、ビークル動的特性が第1の動的範囲と第2の動的範囲の間の遷移動的範囲内にあると決定すること、計算されたロールレート制限を算出すること、及び許容可能なロールレートを計算されたロールレート制限に制限することをさらに含む。
【0072】
この方法は、第1のロールレート量よりも大きいビークルのロールレートを検出すること、及び第1のロールレート量よりも大きいビークルのロールレートを検出したことに応答して、ビークルの少なくとも一部を点検することをさらに含む。
【0073】
本開示の別の態様によると、ビークル動的特性を決定すること、ビークル動的特性が第1のロールレート制限に関連付けられる第1の動的範囲外にあると決定すること、及び許容可能なロールレートを第1のロールレート制限とは異なるレートに制限することを含む方法を実行するように構成される航空機が提供される。
【0074】
本開示の別の態様によると、ビークル動的特性を決定すること、ビークル動的特性が第1のロールレート制限に関連付けられる第1の動的範囲外にあると決定すること、及び許容可能なロールレートを第1のロールレート制限とは異なるレートに制限することを含む方法を実行するように構成されるコードを有するコンピュータ可読媒体が提供される。
【0075】
上述の実施例は、本発明を説明するが、本発明を限定するものではない。さらに、本発明の原則に従って数多くの修正例及び変形例が可能であることを理解するべきでる。したがって、本発明の範囲は、下記の請求項のみによって定義される。