特許第6916002号(P6916002)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6916002コンクリート部材と鋼板との接合構造、及びコンクリート部材と鋼板との接合方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6916002
(24)【登録日】2021年7月19日
(45)【発行日】2021年8月11日
(54)【発明の名称】コンクリート部材と鋼板との接合構造、及びコンクリート部材と鋼板との接合方法
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/30 20060101AFI20210729BHJP
   E04B 1/48 20060101ALI20210729BHJP
   E01D 11/04 20060101ALI20210729BHJP
【FI】
   E04B1/30 H
   E04B1/48 A
   E01D11/04
【請求項の数】7
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-31798(P2017-31798)
(22)【出願日】2017年2月23日
(65)【公開番号】特開2018-135715(P2018-135715A)
(43)【公開日】2018年8月30日
【審査請求日】2019年9月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000174943
【氏名又は名称】三井住友建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083138
【弁理士】
【氏名又は名称】相田 伸二
(74)【代理人】
【識別番号】100189625
【弁理士】
【氏名又は名称】鄭 元基
(74)【代理人】
【識別番号】100196139
【弁理士】
【氏名又は名称】相田 京子
(72)【発明者】
【氏名】篠崎 裕生
(72)【発明者】
【氏名】中積 健一
(72)【発明者】
【氏名】内堀 裕之
【審査官】 土屋 保光
(56)【参考文献】
【文献】 韓国公開特許第10−2006−0042561(KR,A)
【文献】 特開2005−325559(JP,A)
【文献】 実開昭57−004503(JP,U)
【文献】 特開平07−252891(JP,A)
【文献】 特開2005−016201(JP,A)
【文献】 特開平06−109182(JP,A)
【文献】 特開2002−004498(JP,A)
【文献】 特開2013−108346(JP,A)
【文献】 特開平10−204995(JP,A)
【文献】 特開2015−031011(JP,A)
【文献】 特許第5894039(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/00 − 1/36
E04B 1/38 − 1/61
E01D 1/00 −24/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリート部材と、該コンクリート部材に埋設された鋼板と、を接合する、コンクリート部材と鋼板との接合構造において、
前記鋼板に穿設された鋼板貫通孔に挿通されると共に前記鋼板と略直交する方向に延設されてなるねじ節鉄筋と、
該鋼板貫通孔の内部であって該ねじ節鉄筋との隙間に充填されてなる充填剤と、
該鋼板の表裏両面に当接するように該ねじ節鉄筋に螺合されることにより前記鋼板貫通孔を閉塞するように構成された一対のナット部材と、
を備え、
前記ねじ節鉄筋の少なくとも一部及び前記一対のナット部材は前記コンクリート部材に埋設され、
前記鋼板の一部であって前記ナット部材が当接する部分の厚みが漸次小さくなるように該鋼板の表裏両面であって該ナット部材が当接する表裏両面が勾配を有するように形成され、
前記ナット部材を締め付けた状態では前記ねじ節鉄筋は前記鋼板における厚みが小さい方に偏るように配置される、
ことを特徴とする、コンクリート部材と鋼板との接合構造。
【請求項2】
コンクリート部材と、該コンクリート部材に埋設された鋼板と、を接合する、コンクリート部材と鋼板との接合構造において、
前記鋼板に穿設された鋼板貫通孔に挿通されると共に前記鋼板と略直交する方向に延設されてなるねじ節鉄筋と、
該鋼板貫通孔の内部であって該ねじ節鉄筋との隙間に充填されてなる充填剤と、
該鋼板の表裏両面に当接するように該ねじ節鉄筋に螺合されることにより前記鋼板貫通孔を閉塞するように構成された一対のナット部材と、
を備え、
前記ねじ節鉄筋の少なくとも一部及び前記一対のナット部材は前記コンクリート部材に埋設され、
前記充填剤を前記鋼板貫通孔の内部に充填するための充填用貫通孔が前記ナット部材に形成されてなる、
ことを特徴とする、コンクリート部材と鋼板との接合構造。
【請求項3】
前記鋼板と前記ナット部材との間にワッシャ部材が介装され、
前記充填剤を前記鋼板貫通孔の内部に充填するための充填用貫通孔が該ワッシャ部材に形成されてなる、
ことを特徴とする請求項1に記載の、コンクリート部材と鋼板との接合構造。
【請求項4】
前記鋼板と前記ナット部材との間に、テーパーを有すると共に該鋼板に接する面に突起部が設けられたワッシャ部材が介装され、
該鋼板の表面には該突起部が嵌め込まれる凹部が形成されて該突起部を該凹部に嵌め込むことにより前記ワッシャ部材の位置が適正位置に保持されるように構成され、
前記ナット部材を締め付けた状態では前記ねじ節鉄筋は前記ワッシャ部材における厚みが小さい方に偏るように配置される、
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の、コンクリート部材と鋼板との接合構造。
【請求項5】
請求項1又は請求項2記載のコンクリート部材と鋼板との接合構造を用いたコンクリート部材と鋼板との接合方法であって、
前記鋼板に穿設された前記鋼板貫通孔前記ねじ節鉄筋を挿通して該鋼板と略直交する方向に延設するように配置する工程と、
該鋼板貫通孔の内部であって該ねじ節鉄筋との隙間に前記充填剤を充填する工程と、
該鋼板の表裏両面に当接するように前記ナット部材を前記ねじ節鉄筋に螺合して該ねじ節鉄筋を所定位置に保持すると共に前記鋼板貫通孔を閉塞する工程と、
前記充填剤が硬化した後に、前記ねじ節鉄筋及び前記鋼板の少なくとも一部を覆うようにコンクリートを打設してコンクリート部材を形成する工程と、
を備えたことを特徴とする、コンクリート部材と鋼板との接合方法。
【請求項6】
前記充填剤の充填は、前記ナット部材、又は該ナット部材と前記鋼板と間に介装されるワッシャ部材に形成された充填用貫通孔から行う、
ことを特徴とする、請求項5記載の、コンクリート部材と鋼板との接合方法。
【請求項7】
前記ナット部材は、樹脂製の第1ナット部材と、鋼製の第2ナット部材から構成され、
前記第1ナット部材及び前記ワッシャ部材は透明な樹脂製であって前記充填剤の充填具合を外部から視認できるように構成されており、
該充填剤が硬化した後に該第1ナット部材及び該ワッシャ部材を取り外して第2ナット部材を前記ねじ節鉄筋に螺合させて該ねじ節鉄筋を前記鋼板に固定するようにした、
ことを特徴とする請求項6に記載の、コンクリート部材と鋼板との接合方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート部材と、該コンクリート部材に埋設された鋼板と、を接合する、コンクリート部材と鋼板との接合構造、及びコンクリート部材と鋼板との接合方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コンクリート部材と鋼板とを強固に接合する接合構造や接合方法については種々のものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図4は、橋梁の一形式である斜張橋の構造の一例を示す側面図であり、図中の符号100は橋台を示し、符号101は橋脚を示し、符号102は橋桁を示し、符号103は、該橋桁102の上に立ち上げられた主塔を示し、符号104,105は、該主塔103から前記橋桁102へ斜め下方に張架されたケーブルを示している。そして、この主塔103は、図5に詳示するように、左右一対のコンクリート部材103A,103Bを備えており、上述したケーブル104,105の端部104a,105aはそれぞれのコンクリート部材103A,103Bに係止されるようになっている。さらに、これらのコンクリート部材103A,103Bは、図5及び図6(a)(b)に示すように鋼板106が埋設されて連結されている。また、この鋼板106とコンクリート部材103A,103Bとの接合強度を確保するために、該鋼板106には複数の貫通孔(図7の符号106a参照)が形成されると共に、該貫通孔106aにはズレ止め用の棒鋼107,108が挿通されて該鋼板106と直交する方向に延設されている。これらのコンクリート部材103A,103Bにはケーブル104,105を介して引張力が作用するようになっており、上述した鋼板106はそれらの引張力を受けるような構成となっており、前記棒鋼107,108は、該鋼板106とコンクリート部材103A,103Bとの間の接合強度を確保するようになっている。そして、このような接合構造の場合、前記ケーブル104,105からの引張力は前記コンクリート部材103A,103Bを介するだけで溶接継手を介することなく前記鋼板106に伝達されるので、繰り返し疲労に強い接合構造を得ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第5894039号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、前記貫通孔106は、図7に詳示するように、該貫通孔106aに挿入する棒鋼107,108よりもやや大きめに形成しているため、上述したケーブル104,105及びコンクリート部材103A,103Bを介して引張力が作用する棒鋼107,108は、該貫通孔106aの中心より偏心した位置に押し付けられることとなる。したがって、該コンクリート部材103A,103Bを構築する際には該棒鋼107,108をその位置(つまり、貫通孔106aの中心より偏心した位置)に仮固定した状態で該貫通孔106aの内部(つまり、前記棒鋼107,108との隙間)にエポキシ樹脂を注入し、該エポキシ樹脂が硬化した後に生コンクリートを打設する必要がある。
【0006】
しかしながら、これらの棒鋼107,108の仮固定を鉄筋等の治具で行おうとすると溶接等をしなければならず、作業が煩雑になってしまうという問題があった。
【0007】
本発明は、上述の問題を解消することのできるコンクリート部材と鋼板との接合構造、及びコンクリート部材と鋼板との接合方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の観点は、図1乃至図3に例示するものであって、コンクリート部材(2)と、該コンクリート部材(2)に埋設された鋼板(3,13)と、を接合する、コンクリート部材と鋼板との接合構造(1)において、
前記鋼板(3,13)に穿設された鋼板貫通孔(3a,13a)に挿通されると共に前記鋼板(3,13)と略直交する方向(x)に延設されてなるねじ節鉄筋(4)と、
該鋼板貫通孔(3a,13a)の内部であって該ねじ節鉄筋(4)との隙間に充填されてなる充填剤(不図示)と、
該鋼板(3,13)の表裏両面に当接するように該ねじ節鉄筋(4)に螺合されることにより前記鋼板貫通孔(3a,13a)を閉塞するように構成された一対のナット部材(5,6)と、
を備え、
前記ねじ節鉄筋(4)の少なくとも一部及び前記一対のナット部材(5,6)は前記コンクリート部材(2)に埋設されてなることを特徴とする。
【0009】
本発明の第2の観点は、図3(a)に例示するように、前記鋼板(13)の一部であって前記ナット部材(5,6)が当接する部分の厚みが漸次小さくなるように該鋼板(13)の表裏両面(13b)であって該ナット部材(5,6)が当接する表裏両面(13b)が勾配を有するように形成され、
前記ナット部材(5,6)を締め付けた状態では前記ねじ節鉄筋(4)は前記鋼板(13)における厚みが小さい方に偏るように配置されることを特徴とする。
【0010】
本発明の第3の観点は、前記充填剤を前記鋼板貫通孔(3a,13a)の内部に充填するための充填用貫通孔(5a,6a)が前記ナット部材(5,6)に形成されてなることを特徴とする。
【0011】
本発明の第4の観点は、前記鋼板(3)と前記ナット部材(5,6)との間にワッシャ部材(7,17)が介装され、
前記充填剤を前記鋼板貫通孔(3a)の内部に充填するための充填用貫通孔(図3(c)の符号17a参照)が該ワッシャ部材(7,17)に形成されてなることを特徴とする。
【0012】
本発明の第5の観点は、図3(b)(c)に例示するように、前記鋼板(3)と前記ナット部材(5,6)との間に、テーパーを有すると共に該鋼板(3)に接する面に突起部(17b)が設けられたワッシャ部材(17)が介装され、
該鋼板(3)の表面には該突起部(17b)が嵌め込まれる凹部が形成されて該突起部(17b)を該凹部に嵌め込むことにより前記ワッシャ(17)の位置が適正位置に保持されるように構成され、
前記ナット部材(5,6)を締め付けた状態では前記ねじ節鉄筋(4)は前記ワッシャ部材(17)における厚みが小さい方に偏るように配置されることを特徴とする。
【0013】
本発明の第6の観点は、鋼板(3,13)に穿設された鋼板貫通孔(3a,13a)にねじ節鉄筋(4)を挿通して該鋼板(3,13)と略直交する方向(x)に延設するように配置する工程と、
該鋼板貫通孔(3a,13a)の内部であって該ねじ節鉄筋(4)との隙間に充填剤を充填する工程と、
該鋼板(3,13)の表裏両面に当接するように一対の第1ナット部材(5,6)を前記ねじ節鉄筋(4)に螺合して該ねじ節鉄筋(4)を所定位置に保持すると共に前記鋼板貫通孔(3a,13a)を閉塞する工程と、
前記充填剤が硬化した後に、前記ねじ節鉄筋(4)及び前記鋼板(3,13)の少なくとも一部を覆うようにコンクリートを打設してコンクリート部材(2)を形成する工程と、を備えたことを特徴とするコンクリート部材と鋼板との接合方法に関する。
【0014】
本発明の第7の観点は、前記充填剤の充填が、前記第1ナット部材(5,6)、又は該第1ナット部材(5,6)と前記鋼板(3,13)との間に介装されるワッシャ部材(7,17)に形成された充填用貫通孔(図3(c)の符号17a参照)から行うことを特徴とする。
【0015】
本発明の第8の観点は、前記第1ナット部材(5,6)及び前記ワッシャ部材(7,17)は透明な樹脂製であって前記充填剤の充填具合を外部から視認できるように構成されており、
該充填材が硬化した後に該第1ナット部材(5,6)及び該ワッシャ部材(7,17)を取り外して鋼製の第2ナット部材(不図示)を前記ねじ節鉄筋(4)に螺合させて該ねじ節鉄筋(4)を前記鋼板(3)に固定するようにしたことを特徴とする。
【0016】
なお、括弧内の番号などは、図面における対応する要素を示す便宜的なものであり、従って、本記述は図面上の記載に限定拘束されるものではない。
【発明の効果】
【0017】
上記した第1,3,4,6及び7の観点によれば、前記ねじ節鉄筋の前記鋼板に対する固定は前記ナット部材によって行うことができて鉄筋等の治具を用いる必要が無いため、溶接等をする必要が無く、仮固定作業の簡素化を図ることができる。
【0018】
上記した第2及び5の観点によれば、前記ねじ節鉄筋を簡単に適正な位置に仮固定することができる。
【0019】
上記した第8の観点によれば、充填剤の充填不良を未然に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1は、本発明に係るコンクリート部材と鋼板との接合構造の一例を示す斜視図である。
図2図2は、本発明に係るコンクリート部材と鋼板との接合構造の要部の一例を示す拡大断面図である。
図3図3(a)〜(c)は、本発明に係るコンクリート部材と鋼板との接合構造の要部の各例を示す拡大断面図である。
図4図4は、橋梁の一形式である斜張橋の構造の一例を示す側面図である。
図5図5は、主塔部分の構造の一例を示す拡大側面図である。
図6図6(a)は図5のP−P断面図であり、図6(b)は図5のQ−Q断面図である。
図7図7は、貫通孔及び棒鋼の位置関係を説明するための断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図1乃至図3に沿って、本発明の実施の形態について説明する。
【0022】
本発明に係るコンクリート部材と鋼板との接合構造は、図1に符号1で例示するものであって、コンクリート部材2と、該コンクリート部材2に埋設された鋼板3と、を接合するためのものである。
【0023】
この鋼板3には、表裏を貫通する鋼板貫通孔(図2の符号3a参照)が複数穿設されており、該複数の鋼板貫通孔3aにはそれぞれねじ節鉄筋4が挿通されている。そして、これらのねじ節鉄筋4は、前記鋼板3と略直交する方向xに延設されている。また、該鋼板貫通孔3aの内部であって該ねじ節鉄筋4との隙間Aには充填剤(不図示)が充填されている。さらに、該ねじ節鉄筋4には該鋼板3の表裏両面に当接するように一対のナット部材(第1ナット部材)5,6が螺合されており、該一対のナット部材5,6によって前記鋼板貫通孔3a(正確には、該鋼板貫通孔3aの内部であって前記ねじ節鉄筋4との隙間)を閉塞するように構成されている。そして、前記ねじ節鉄筋4や前記一対のナット部材5,6は前記コンクリート部材2に埋設されている。なお、図1に示す例では、前記ねじ節鉄筋4は全長に亘って該コンクリート部材2に埋設されているが、もちろんこれに限られるものではなく、一部だけ該コンクリート部材2に埋設されていても良い。このねじ節鉄筋4は、外周面にネジが形成されている鉄筋(つまり、リブがネジになっている鉄筋)であり、ネジ棒を含む概念である。
【0024】
本発明によれば、前記ねじ節鉄筋4の前記鋼板3に対する仮固定は前記ナット部材5,6によって行うことができて鉄筋等の治具を用いる必要が無いため、溶接等をする必要が無く、仮固定作業の簡素化を図ることができる。
【0025】
ところで、図3(a)に例示するように、前記鋼板13の一部(具体的には、前記ナット部材5,6が当接する部分)の厚みが漸次小さくなるように該鋼板13の表裏両面13b(具体的には、該ナット部材5、6が当接する表裏両面)が勾配を有するように形成し、前記ナット部材5,6を締め付けた状態では前記ねじ節鉄筋4は前記鋼板13における厚みが小さい方(図示下方)に偏るように配置されるようにすると良い。そのようにした場合には、前記ねじ節鉄筋4を簡単に適正な位置に仮固定することができる。
【0026】
ところで、前記ナット部材5,6には、前記充填剤を前記鋼板貫通孔3aの内部に充填するための充填用貫通孔5a,6aを形成しておくと良い。この充填用貫通孔5aは、前記ナット部材5の周方向に沿って複数箇所(例えば、90度の角度で4箇所)に形成しておき、該ナット部材5を前記ねじ節鉄筋4に締め付けた状態で最も下方を向いている充填用貫通孔以外の貫通孔を塞ぎ、該最も下方を向いている充填用貫通孔から前記充填剤を注入するようにすると良い。また、他方のナット部材6にも充填用貫通孔6aを該ナット部材6の周方向に沿って複数箇所(例えば、90度の角度で4箇所)に形成しておき、該ナット部材6を前記ねじ節鉄筋4に締め付けた状態で最も上方を向いている充填用貫通孔以外の貫通孔を塞ぎ、該最も上方を向いている充填用貫通孔から空気が抜けるようにすると良い。
【0027】
一方、前記ナット部材5,6と前記鋼板3との間にワッシャ部材7,17を介装するようにし、前記充填剤を前記鋼板貫通孔3aの内部に充填するための充填用貫通孔(例えば、図3(c)の符号17a参照)を該ワッシャ部材7,17に形成するようにしても良い。そのようにした場合には、該充填剤の充填を簡単に行うことができると共に、該充填剤の漏れ止め対策を不要にできる。
【0028】
また、図3(b)に例示するように、前記鋼板3と前記ナット部材5,6との間にテーパーを有するワッシャ部材17を介装しておき、前記ナット部材5,6を締め付けた状態では前記ねじ節鉄筋4は前記ワッシャ部材17における厚みが小さい方(図示下方)に偏るように配置されるようにすると良い。そのようにした場合には、前記ねじ節鉄筋4を簡単に適正な位置に仮固定することができる。なお、該ワッシャ17の裏面(鋼板3に接する面)には突起部17bを設けておき、該鋼板3の表面には凹部を設けておいて、該突起部17bを該凹部に嵌め込むことにより、該ワッシャ17の位置を適正位置に保持できるようにすると良い。
【0029】
また一方、上述したナット部材5,6やワッシャ部材7,17を透明な樹脂製として、前記充填剤の充填具合を外部から視認できるようにしておくと良い。そのようにした場合には、該充填剤の充填不良を未然に防止することができる。なお、これらのナット部材5,6やワッシャ部材7,17は前記充填剤が硬化した段階で取り外すようにしても良い。
【0030】
本発明に係るコンクリート部材と鋼板との接合方法は、
・ 鋼板3に穿設された鋼板貫通孔3aにねじ節鉄筋4を挿通して該鋼板3と略直交する方向xに延設するように配置する工程と、
・ 該鋼板貫通孔3aの内部であって該ねじ節鉄筋4との隙間に充填剤を充填する工程と、
・ 該鋼板3の表裏両面に当接するように一対の第1ナット部材5,6を前記ねじ節鉄筋4に螺合して該ねじ節鉄筋4を所定位置に保持すると共に前記鋼板貫通孔3aを閉塞する工程と、
・ 前記充填剤が硬化した後に、前記ねじ節鉄筋4及び前記鋼板3の少なくとも一部を覆うようにコンクリートを打設してコンクリート部材2を形成する工程と、
を備えている。
【0031】
前記充填剤の充填は、前記ナット部材5,6、又は該ナット部材5,6と前記鋼板3との間に介装されるワッシャ部材7,17に形成された充填用貫通孔5a,…から行うようにすると良い。そのようにした場合には、該充填剤の充填を簡単に行うことができると共に、該充填剤の漏れ止め対策を不要にできる。
【0032】
また、前記第1ナット部材5,6及び前記ワッシャ部材7,17は透明な樹脂製であって前記充填剤の充填具合を外部から視認できるように構成しておくと良い。また、該充填材が硬化した後に該第1ナット部材5,6及び該ワッシャ部材7,17を取り外して鋼製の第2ナット部材(不図示)を前記ねじ節鉄筋4に螺合させて該ねじ節鉄筋4を前記鋼板3に固定するようにすると良い。そのようにした場合には、該充填剤の充填不良を未然に防止することができる。
【0033】
さらに、上述した充填剤としては、エポキシ樹脂等の樹脂や、モルタル等の公知の材料を用いることができる。
【符号の説明】
【0034】
1 コンクリート部材と鋼板との接合構造
2 コンクリート部材
3 鋼板
3a 鋼板貫通孔
4 ねじ節鉄筋
5,6 ナット部材(第1ナット部材)
5a,6a 充填用貫通孔
7 ワッシャ部材
13 鋼板
13a 鋼板貫通孔
17 ワッシャ部材
17b 突起部
x 鋼板と略直交する方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7