(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記貫通孔が、前記絶縁層に加えて前記中間接着層にも形成されており、前記透光導電層が、当該貫通孔を介して前記コンタクト領域に直接接続されている、請求項2に記載の半導体発光装置。
前記第1金属層の形成前に、前記貫通孔内に前記コンタクト部として一部が埋め込まれるように、前記絶縁層上に透光導電層を形成する工程をさらに含む、請求項11〜13のいずれか一項に記載の半導体発光装置の製造方法。
前記貫通孔を形成する工程が、前記絶縁層の部分における前記貫通孔の縁部よりも横側に広がるように、前記中間接着層の部分にサイドエッチング部を形成する工程を含み、
前記透光導電層が、前記サイドエッチング部に入り込むように形成された凸部を含むように形成される、請求項15に記載の半導体発光装置の製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、半導体層と、絶縁層の貫通孔内のコンタクト部を介して半導体層に電気的に接続された金属層とを含むODR構造を備える半導体発光装置において、半導体層側のコンタクト領域の抵抗を低減しつつ、半導体層に対する絶縁層の密着性を向上させることができる半導体発光装置およびその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一実施形態に係る半導体発光装置は、発光領域を含むと共に光取り出し面としての表面およびその反対側の裏面を有し、前記裏面を形成するAl
xGa
1−xAs(0≦x<1)系半導体からなるコンタクト領域を含む半導体層と、前記半導体層の前記裏面側に配置され、貫通孔を有する絶縁層と、前記半導体層と前記絶縁層との間に配置され、(Al
yGa
1−y)
zIn
1−zP(0≦y≦1、0≦z≦1)系半導体からなる中間接着層と、前記絶縁層の前記半導体層の反対側に配置され、前記貫通孔内のコンタクト部を介して前記コンタクト領域に電気的に接続された金属層とを含む。
【0006】
この構成によれば、半導体層の裏面を形成するコンタクト領域がAl
xGa
1−xAs(0≦x<1)系半導体からなる。Al
xGa
1−xAs(0≦x<1)系半導体は、キャリア濃度を比較的容易に高くすることができる。そのため、コンタクト領域を厚く形成しなくても、十分高いキャリア濃度で不純物をドーピングすることができる。つまり、比較的薄い厚さのコンタクト領域に高濃度で不純物が含有されるので、コンタクト領域の抵抗を低減することができる。
【0007】
一方、Al
xGa
1−xAs(0≦x<1)系半導体と絶縁層との密着性が高くないため、上記の低抵抗化の達成には、半導体層から絶縁層が剥離しやすいという背反事象が発生する。しかしながら、この構成では、半導体層と絶縁層との間に、(Al
yGa
1−y)
zIn
1−zP(0≦y≦1、0≦z≦1)系半導体からなる中間接着層が介在するので、半導体層と絶縁層との間に高い密着性を確保することができる。
【0008】
本発明の一実施形態に係る半導体発光装置は、前記絶縁層と前記金属層との間に配置され、前記コンタクト部を含む透光導電層をさらに含んでいてもよい。
本発明の一実施形態に係る半導体発光装置では、前記貫通孔が、前記絶縁層に加えて前記中間接着層にも形成されており、前記透光導電層が、当該貫通孔を介して前記コンタクト領域に直接接続されていてもよい。
【0009】
この構成によれば、コンタクト領域と透光導電層との間にオーミックコンタクトを形成することができるので、半導体発光装置の順方向電圧(VF)を低減することができる。
本発明の一実施形態に係る半導体発光装置では、前記コンタクト領域が、不純物としての炭素(C)を1.0×10
19cm
−3以上の濃度で含有していてもよい。
コンタクト領域が1.0×10
19cm
−3以上の濃度で炭素(C)を含有することによって、コンタクト領域の低抵抗化を良好に達成することができる。
【0010】
本発明の一実施形態に係る半導体発光装置では、前記コンタクト領域が、500Å〜5000Åの厚さを有する層からなっていてもよい。
本発明の一実施形態に係る半導体発光装置では、前記貫通孔が、前記中間接着層の部分において、前記絶縁層の部分における前記貫通孔の縁部で覆われたサイドエッチング部を有し、前記透光導電層が、前記サイドエッチング部に入り込むように横側に広がって形成された凸部を含んでいてもよい。
【0011】
この構成によれば、透光導電層の凸部が、絶縁層の部分における貫通孔の縁部に引っ掛かるので、透光導電層を剥がれにくくすることができる。
本発明の一実施形態に係る半導体発光装置では、前記サイドエッチング部の側部と前記凸部との間には、空隙が形成されていてもよい。
この構成によれば、中間接着層の屈折率(n1>1)よりも小さい屈折率(n2=1)を有する空隙(空気)が中間接着層の一部に形成されるので、絶縁層と中間接着層との界面における光の反射率を向上させることができる。したがって、当該界面から中間接着層および透光導電層を通過し、金属層に至るまでの経路で発生する光のロスを低減することができる。
【0012】
本発明の一実施形態に係る半導体発光装置では、前記中間接着層が、InGaP層からなっていてもよい。
本発明の一実施形態に係る半導体発光装置では、前記絶縁層が、SiO
2、SiNまたはSiONからなっていてもよい。
本発明の一実施形態に係る半導体発光装置では、前記発光領域の発光波長が、800nm以上であってもよい。
【0013】
この構成により、半導体層側のコンタクト領域の抵抗を低減しつつ、半導体層に対する絶縁層の密着性を向上できる、赤外発光半導体発光装置を提供することができる。
本発明の一実施形態に係る半導体発光装置の製造方法は、第1基板上に、発光領域を含むと共に、最上面にAl
xGa
1−xAs(0≦x<1)系半導体からなるコンタクト領域を含む半導体層を形成する工程と、前記半導体層上に、(Al
yGa
1−y)
zIn
1−zP(0≦y≦1、0≦z≦1)系半導体からなる中間接着層を形成する工程と、前記中間接着層上に、絶縁層を形成する工程と、前記絶縁層に貫通孔を形成する工程と、前記絶縁層上に、前記貫通孔内のコンタクト部を介して前記コンタクト領域に電気的に接続された第1金属層を形成する工程と、第2基板上に、第2金属層を形成する工程と、前記第1金属層および前記第2金属層を互いに接合することによって、前記第1基板と前記第2基板とを貼り合わせる工程と、前記貼り合わせ後、前記第1基板を除去する工程とを含む。
【0014】
この方法によって、本発明の一実施形態に係る半導体発光装置を製造することができる。
本発明の一実施形態に係る半導体発光装置の製造方法は、前記絶縁層の形成前に、前記中間接着層をアッシング処理する工程を含み、前記絶縁層が、アッシング処理された前記中間接着層の表面に形成されてもよい。
【0015】
中間接着層の表面のアッシング処理によって、中間接着層に対する絶縁層の摩擦力を増加させることができるので、絶縁層の密着性を向上させることができる。
本発明の一実施形態に係る半導体発光装置の製造方法では、前記アッシング処理が、酸素プラズマを使用して前記中間接着層の表面を処理する工程を含んでいてもよい。
本発明の一実施形態に係る半導体発光装置の製造方法は、前記第1金属層の形成前に、前記貫通孔内に前記コンタクト部として一部が埋め込まれるように、前記絶縁層上に透光導電層を形成する工程をさらに含んでいてもよい。
【0016】
本発明の一実施形態に係る半導体発光装置の製造方法では、前記貫通孔を形成する工程が、前記絶縁層に加えて前記中間接着層にも前記貫通孔を形成する工程を含み、前記透光導電層が、当該貫通孔を介して前記コンタクト領域に直接接続されるように形成されてもよい。
本発明の一実施形態に係る半導体発光装置の製造方法では、前記貫通孔を形成する工程が、前記絶縁層の部分における前記貫通孔の縁部よりも横側に広がるように、前記中間接着層の部分にサイドエッチング部を形成する工程を含み、前記透光導電層が、前記サイドエッチング部に入り込むように形成された凸部を含むように形成されてもよい。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下では、本発明の実施の形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る半導体発光装置1の模式的な平面図である。
図2は、本発明の一実施形態に係る半導体発光装置1の模式的な断面図である。なお、
図2は、
図1の半導体発光装置1の特定位置の断面を示しているものではなく、半導体発光装置1の断面構造を便宜的に表したものである。したがって、
図2において、
図1に示した構成要素と同一のものであっても、その大きさの比率が異なっている場合がある。
【0019】
半導体発光装置1は、基板2と、基板2上の金属層3と、金属層3上の透光導電層4と、透光導電層4上の絶縁層5と、絶縁層5上の本発明の半導体層の一例としてのIII−V族半導体構造6と、絶縁層5とIII−V族半導体構造6との間の中間接着層7と、基板2の裏面(III−V族半導体構造6と反対側の表面)に接触するように形成された裏面電極の一例としてのp側電極8と、III−V族半導体構造6の表面に接触するように形成された表面電極の一例としてのn側電極9とを含む。
【0020】
基板2は、この実施形態では、シリコン基板で構成されている。むろん、基板2は、たとえば、GaAs(ガリウム砒素)、GaP(リン化ガリウム)等の半導体基板で構成されていてもよい。基板2は、この実施形態では、
図1に示すように平面視略正方形状に形成されているが、基板2の平面形状は特に制限されず、たとえば、平面視長方形状であってもよい。また、基板2の厚さは、たとえば、50μm〜250μmであってもよい。また、基板2(シリコン基板)の屈折率は、3.705程度であってもよい。
【0021】
金属層3は、この実施形態では、AuまたはAuを含む合金で構成されている。金属層3は、Au層およびAu合金層それぞれの単層であってもよいし、これらの層および他の金属層が複数積層された層であってもよい。金属層3は、複数の積層構造である場合、少なくとも透光導電層4と接触する第1金属層31の透光導電層4との接触面がAu層またはAu合金層(たとえば、AuBeNi等)で構成されていることが好ましい。一方、少なくとも基板2と接触する第2金属層32の基板2との接触面がTi層で構成されていることが好ましい。この実施形態では、たとえば、金属層3は、(透光導電層4側)Au層33/Au層34/Ti層35(基板2側)で示される積層構造が挙げられる。さらに、金属層3は、金属層3を構成する複数の金属材料間に明瞭な境界が形成されず、当該複数の金属材料が、たとえば基板2側から順々に分布して構成されていてもよい。一方、この実施形態では、金属層3は、後述するように、成長基板44(後述)と基板2との貼り合わせによって第1金属層31と第2金属層32とが接合して形成されるものである。そこで、
図2では、便宜的に第1金属層31と第2金属層32との境界(貼り合わせ面)を示しているが、この境界は、明瞭に視認できなくてもよい。
【0022】
金属層3は、基板2の表面全域を覆うように形成されている。また、金属層3のトータル厚さは、たとえば、4000Å〜10000Åであり、好ましくは、5000Å〜7000Åである。また、金属層3を構成する個々の層33〜35の厚さは、たとえば、Au層33=5000ű500Å程度、Au層34=1000ű100Å程度、Ti層35=500ű50Å程度であってもよい。
【0023】
透光導電層4は、この実施形態では、ITO(酸化インジウムスズ)で構成されている。むろん、透光導電層4は、たとえば、ZnO(酸化亜鉛)、IZO(酸化インジウム−酸化亜鉛)等の透明電極材料で構成されていてもよい。また、透光導電層4は、その光学膜厚が0.5λおよび1λ(ただし発光波長λ=800nm以上)であることが好ましく、物理膜厚が、500Å〜6000Å(たとえば2700Å程度)であってもよい。また、透光導電層4(ITO)の屈折率は、1.60程度(発光波長λ=870nm)であってもよい。
【0024】
絶縁層5は、透光性を有し、かつ導電性を有さない絶縁材料によって構成されており、この実施形態では、SiO
2(酸化シリコン)で構成されている。むろん、絶縁層5は、たとえば、SiN(窒化シリコン)、SiON(酸窒化シリコン)等の絶縁材料で構成されていてもよい。また、絶縁層5は、その光学膜厚が0.25λおよび0.75λ(ただし発光波長λ=800nm以上)であることが好ましく、物理膜厚が、1000Å〜2000Å(たとえば1500Å程度)であってもよい。
【0025】
中間接着層7は、(Al
yGa
1−y)
zIn
1−zP(0≦y≦1、0≦z≦1)系半導体によって構成されている。当該式で表される半導体としては、たとえば、InGaP、AlInGaP、GaP等が挙げられる。これらは、絶縁層5の種類によって適宜選択され、たとえば、絶縁層5がSiO
2やSiON等の酸素を含有する絶縁材料で構成されている場合は、InGaPが好ましく、絶縁層5がSiN等の窒素を含有する絶縁材料で構成されている場合は、GaPが好ましい。また、中間接着層7の厚さは、たとえば、50Å〜700Åであり、たとえば、500Å程度であってもよい。
【0026】
そして、この実施形態では、絶縁層5および中間接着層7を連続して貫通する貫通孔10が形成されている。貫通孔10は、
図1に示すように、基板2の面内に離散的に配列されている。たとえば、平面視四角形状のメサ部26(後述)内に行列状に配列されていてもよい。透光導電層4は、その一部がコンタクト部11として貫通孔10に埋め込まれ、III−V族半導体構造6に接続されている。これにより、半導体発光装置1には、ODR(Omni-Directional-Reflector)構造が形成されている。
【0027】
III−V族半導体構造6は、発光領域の一例としての発光層12と、第1導電型層の一例としてのp型半導体層13と、第2導電型層の一例としてのn型半導体層14とを含む。p型半導体層13は発光層12に対して基板2側に配置されており、n型半導体層14は発光層12に対してn側電極9側に配置されている。こうして、発光層12が、p型半導体層13およびn型半導体層14によって挟持されていて、ダブルヘテロ接合が形成されている。発光層12には、n型半導体層14から電子が注入され、p型半導体層13から正孔が注入される。これらが発光層12で再結合することによって、光が発生するようになっている。また、基板2の厚さとIII−V族半導体構造6の厚さとを合わせたトータル厚さは、たとえば、60μm〜260μmであってもよい。
【0028】
発光層12、p型半導体層13およびn型半導体層14を構成する各層の組成は、発光層12の発光波長の範囲によって適宜選択され、たとえば、発光波長が800nm以上の赤外波長域の場合には、主に、AlGaAs系半導体が選択され、発光波長が380nm〜780nm程度の可視光波長域の場合には、主に、AlInGaP系半導体が選択される。これらのうち、一例として、発光波長が800nm以上の赤外波長域の場合の発光層12、p型半導体層13およびn型半導体層14の層構成を、
図3および
図4を参照して説明する。
図3は、
図2のIII−V族半導体構造6の層構成の一例を示す図である。
図4は、
図3の発光層12の層構成の一例を示す図である。
図5は、AlGaAs層のAl組成と当該AlGaAs層の吸収端波長との関係を示す図である。
【0029】
図3に示すように、p型半導体層13は、基板2側から順に、p型コンタクト層15、p型ウィンドウ層16およびp型クラッド層17を積層して構成されている。一方、n型半導体層14は、発光層12の上に、順に、n型クラッド層18、n型ウィンドウ層19およびn型コンタクト層20を積層して構成されている。
p型コンタクト層15、p型ウィンドウ層16およびp型クラッド層17は、Al
xGa
1−xAs(0≦x<1)系半導体から構成されている。当該式中のAl組成は、発光層12の発光波長の範囲に合わせて適宜設定される。たとえば、800nm以上の赤外波長域の場合には、
図5に示すように、Al
xGa
1−xAs(0≦x<1)系半導体のAl組成が0.1未満(10%未満)であると、吸収端波長が800nm以上であるため、発光層12からの赤外光が各層で吸収され易くなる。そのため、Al
xGa
1−xAs(0≦x<1)系半導体のAl組成は、たとえば、10%〜70%(x=0.1〜0.7)に設定され、好ましくは、15%〜60%(x=0.15〜0.6)に設定される。Al組成が大きいほど吸収端波長が低くなるので、吸収端波長のみを考慮するのであれば、Al組成は60%を超えてもよい。しかしながら、Al組成が高くなると、AlGaAs層の表面が酸化し易く、Alの酸化によって表面に形成されるAl
2O
3(酸化アルミニウム)膜が原因で、AlGaAs層に対するオーミックコンタクトをとることが難しくなる。したがって、電極とのコンタクトが形成されるp型コンタクト層15に関しては、吸収端波長が若干高くなるが、Al組成が15%〜30%(x=0.15〜0.3)のAl
xGa
1−xAs(0≦x<1)系半導体から構成されることが好ましい。一方、p型ウィンドウ層16およびp型クラッド層17のAl組成については、30%〜60%(x=0.3〜0.6)程度であってもよい。p型ウィンドウ層16およびp型クラッド層17のAl組成をこの範囲にすることによって、これらの層16,17において赤外光が吸収されることを確実に防止することができる。
【0030】
また、p型コンタクト層15は、透光導電層4とのオーミックコンタクトをとるために低抵抗層となっていることが好ましく、p型ドーパントとしての炭素(C)や亜鉛(Zn)を高濃度で含有している。この実施形態では、p型コンタクト層15は、炭素(C)を1.0×10
19cm
−3以上の濃度で含有している。なお、p型ウィンドウ層16およびp型クラッド層17についても、上記p型ドーパントが、適切な濃度で含有されている。
【0031】
また、p型コンタクト層15、p型ウィンドウ層16およびp型クラッド層17の各層の厚さは、たとえば、p型コンタクト層15が500Å〜5000Åの厚さを有し、p型ウィンドウ層16が25000Å〜40000Åの厚さを有し、p型クラッド層17が7000Å〜15000Åの厚さを有していてもよい。
なお、p型コンタクト層15、p型ウィンドウ層16およびp型クラッド層17は、それぞれ、単層で形成されていてもよいし、たとえば、Al組成が互いに異なる複数の層で形成されていてもよい。
【0032】
n型コンタクト層20、n型ウィンドウ層19およびn型クラッド層18は、Al
xGa
1−xAs(0≦x<1)系半導体から構成されている。当該式中のAl組成は、発光層12の発光波長の範囲に合わせて適宜設定される。たとえば、800nm以上の赤外波長域の場合には、p型半導体層13と同様に
図5に倣って、Al
xGa
1−xAs(0≦x<1)系半導体のAl組成は、たとえば、10%〜70%(x=0.1〜0.7)に設定され、好ましくは、15%〜60%(x=0.15〜0.6)に設定される。
【0033】
n型コンタクト層20に関しては、p型コンタクト層15と同様に、n側電極9とのオーミックコンタクトを考慮して、Al組成が15%〜30%(x=0.15〜0.3)でもよいが、この実施形態では、Al組成が0%(x=0)のGaAsで構成されている。Al組成が0%であると、
図5に基づけば、吸収端波長が高くなり、発光層12からの赤外光がn型コンタクト層20で吸収され易くなることが懸念される。しかしながら、n型コンタクト層20は、後述するように、金属からなるn側電極9と同じパターンで形成されており、当該n側電極9で覆われた領域では、n側電極9に光が遮蔽されて放出されないので、当該領域(つまり、n型コンタクト層20)で赤外光の吸収が発生しても問題ない。
【0034】
一方、n型ウィンドウ層19およびn型クラッド層18のAl組成については、30%〜60%(x=0.3〜0.6)程度であってもよい。n型ウィンドウ層19およびn型クラッド層18のAl組成をこの範囲にすることによって、これらの層18,19において赤外光が吸収されることを確実に防止することができる。
また、n型コンタクト層20は、透光導電層4とのオーミックコンタクトをとるために低抵抗層となっていることが好ましく、n型ドーパントとしてのシリコン(Si)を高濃度で含有している。この実施形態では、n型コンタクト層20は、シリコン(Si)を1.0×10
18cm
−3以上の濃度で含有している。なお、n型ウィンドウ層19およびn型クラッド層18についても、上記n型ドーパントが、適切な濃度で含有されている。
【0035】
また、n型コンタクト層20、n型ウィンドウ層19およびn型クラッド層18の各層の厚さは、たとえば、n型コンタクト層20が500Å〜9000Åの厚さを有し、n型ウィンドウ層19が10000Å〜100000Åの厚さを有し、n型クラッド層18が500Å〜15000Åの厚さを有していてもよい。
なお、n型コンタクト層20、n型ウィンドウ層19およびn型クラッド層18は、それぞれ、単層で形成されていてもよいし、たとえば、Al組成が互いに異なる複数の層で形成されていてもよい。
【0036】
発光層12は、MQW(multiple-quantum well)構造(多重量子井戸構造)を有しており、電子と正孔とが再結合することによって光が発生し、その発生した光を増幅させるための層である。
発光層12は、この実施形態では、
図4に示すように、InGaAs層からなる量子井戸層21(たとえば90Å厚程度)とAlGaAs層からなる障壁層22(たとえば110Å厚程度)とを交互に複数周期繰り返し積層して構成された多重量子井戸(MQW:Multiple-Quantum Well)構造23と、この多重量子井戸構造23を上下両側から挟む、p型ガイド層24およびn型ガイド層25とを有している。p型ガイド層24およびn型ガイド層25は、たとえば、Al組成が15%〜60%(x=0.15〜0.6)程度のAl
xGa
1−xAs(0<x<1)系半導体から構成されている。
【0037】
たとえば、量子井戸層21(InGaAs)と障壁層22(AlGaAs)とは交互に2〜50周期繰り返し積層されており、これにより、多重量子井戸構造の発光層12が構成されている。なお、
図4では、量子井戸層21および障壁層22の1周期構造のみ示されている。発光波長は、量子井戸層21のバンドギャップに対応しており、バンドギャップの調整はInまたはGaの組成比を調整すること、ならびに量子井戸層21の膜厚を調整することによって行うことができる。この実施形態では、発光層12の発光波長は、量子井戸層21(InGaAs)におけるInおよびGaの組成を調整することによって、800nm以上(たとえば870nm)とされている。
【0038】
図1および
図2に示すように、半導体発光装置1は、その一部が除去されることによって、メサ部26を形成している。より具体的には、III−V族半導体構造6の表面から、n型半導体層14、発光層12、p型半導体層13および中間接着層7がIII−V族半導体構造6の全周に亘ってエッチング除去され、横断面視略台形状のメサ部26が形成されている。より具体的には、メサ部26は、基板2側へ向かう方向に径が大きくなるテーパ状に形成された外周面26Bを有している。メサ部26の形状は、断面視略台形状に限らず、たとえば断面視略四角形状であってもよい。これにより、絶縁層5が、メサ部26から横方向に引き出された引き出し部27を構成している。
図1に示すように、平面視において、メサ部26は引き出し部27に取り囲まれている。
【0039】
なお、中間接着層7がエッチング除去されず、引き出し部27の表面27Aが中間接着層7で形成されていてもよいが、半導体発光装置1の製造時の歩留まりを考慮すれば、
図1のように、引き出し部27の表面27Aとして、絶縁層5が露出していることが好ましい。
図7Iにおいてメサ部26が形成され、その後、
図7Jに示すように微細な凹凸構造28(後述)が形成された後、ウエハ状態の基板2が個々のチップサイズにダイシングされるが、その際に、チッピングが生じにくい。すなわち、ダイシングブレードとの接触面が絶縁材料であれば、当該接触面がIII−V族半導体の場合に比べて、切断によって引き出し部27の表面27Aが欠けて散ることが少なく、散った小片で発光部であるメサ部26が傷付けられることを抑制することができる。
【0040】
メサ部26の表面26Aには、微細な凹凸構造28が形成されている。この微細な凹凸構造28によって、III−V族半導体構造6から取り出される光を拡散させることができる。この実施形態では、後述するようにn型コンタクト層20がn側電極9の形状と同じパターンで選択的に除去されることによってn型ウィンドウ層19が露出しており、この露出面に微細な凹凸構造28が形成されている。なお、
図1では、明瞭化のため微細な凹凸構造28を省略している。
【0041】
裏面電極としてのp側電極8は、この実施形態では、AuまたはAuを含む合金で構成されている。具体的には、(基板2側)Ti層81/Au層82で示される積層構造であってもよい。また、p側電極8は、基板2の裏面全域を覆うように形成されている。また、p側電極8のトータル厚さは、たとえば、1300Å〜1700Åである。また、p側電極8を構成する個々の層81,82の厚さは、たとえば、Ti層81=500ű50Å程度、Au層82=1000ű100Å程度であってもよい。
【0042】
表面電極としてのn側電極9は、この実施形態では、AuまたはAuを含む合金で構成されている。具体的には、(III−V族半導体構造6側)AuGeNi層91/Au層92で示される積層構造であってもよい。また、n側電極9のトータル厚さは、たとえば、15000Å〜20000Åである。また、n側電極9を構成する個々の層91,92の厚さは、たとえば、AuGeNi層91=2000ű200Å程度、Au層92=17000ű1700Å程度であってもよい。
【0043】
また、n側電極9は、略円形状のパッド電極部93と、当該パッド電極部93の周囲に一定の領域を区画するようにパッド電極部93から選択的に枝状に延びる枝状電極部94とを一体的に含む。
この実施形態では、平面視において、パッド電極部93がメサ部26の略中央に配置されており、当該パッド電極部93とメサ部26の4つの隅のそれぞれとの間に包囲領域29A,29B,29C,29Dを区画するように枝状電極部94が形成されている。各包囲領域29A〜29Dは、パッド電極部93からメサ部26の各周縁(もしくは端面)に向かって十字状に延びる枝状電極部94の中間部94Aと、当該十字型の中間部94Aに交差してメサ部26の互いに対向する一対の周縁(もしくは外周面26B)に沿って延びる枝状電極部の外周部94Bと、パッド電極部93によって取り囲まれている。
【0044】
そして、この実施形態では、n型コンタクト層20がn側電極9と同じ形状を有していることから、包囲領域29A〜29Dにn型半導体層14が露出している
図6Aは、
図2の絶縁層5と中間接着層7との界面近傍の構造を具体的に示す拡大図である。
図6Bは、
図6Aの貫通孔10の拡大平面図である。
前述のように、この実施形態では、金属層3上に、透光導電層4、絶縁層5、中間接着層7およびIII−V族半導体構造6が、この順に積層されている。
【0045】
絶縁層5および中間接着層7には、これらを連続して貫通する貫通孔10が形成されている。貫通孔10は、絶縁層5の部分の第1部分36と、中間接着層7の部分の第2部分37とを含む。
第1部分36および第2部分37は、共に、透光導電層4からIII−V族半導体構造6へ向かう方向に径が小さくなるテーパ状に形成されている。第1部分36のテーパ面(側面)と第2部分37のテーパ面(側面)とは、この実施形態では、互いに連続した面として形成されておらず、
図6Bに示すように、第2部分37のテーパ面の始端37A(透光導電層4側の端)が、第1部分36のテーパ面の終端37B(III−V族半導体構造6側の端)に対して径方向外側に一定間隔を配置される段差面となっている。このような段差面は、後述するように、貫通孔10の第2部分37を形成する際に中間接着層7がサイドエッチングされることに起因する。
【0046】
これにより、貫通孔10の第2部分37は、第1部分36における貫通孔10の縁部38で覆われたサイドエッチング部39を有している。サイドエッチング部39は、
図6Bに示すように、貫通孔10の周方向の全周にわたって環状に形成されている。
透光導電層4は、貫通孔10に埋め込まれ、貫通孔10内に露出するp型コンタクト層15に直接接続されている。また、透光導電層4(コンタクト部11)は、貫通孔10の第2部分37においては、サイドエッチング部39に入り込むように横側に広がって形成された凸部40(
図6Bのハッチング部分)を有している。凸部40は、
図6Bに示すように、貫通孔10の周方向の全周にわたって環状に形成されていてもよいし、周方向の一部のみに曲線状に形成されていてもよい。また、この凸部40は、この実施形態では、サイドエッチング部39を完全に満たすように形成されておらず、サイドエッチング部39の側部と凸部40との間には、空隙41が形成されている。空隙41は、この実施形態では、
図6Bに示すように、貫通孔10の全周にわたって環状に形成されている。
【0047】
また、透光導電層4は、この実施形態では、絶縁層5の表面および貫通孔10の内面に沿って略一様な厚さで形成されており、貫通孔10上の部分において凹部42を有している。金属層3(第1金属層31)は、この凹部42を覆うように形成されており、透光導電層4と金属層3との間には、貫通孔10の部分において、凹部42からなる第2の空隙43が形成されている。第2の空隙43は、空隙41に取り囲まれるように形成されている。
【0048】
中間接着層7における絶縁層5との界面7Aは、後述するアッシング処理(
図8A参照)されており、微細な凹凸面となっている。この凹凸面によって、中間接着層7に対する絶縁層5の摩擦力を増加させることができるので、絶縁層5の密着性を向上させることができる。
そして、
図2を参照して、この半導体発光装置1では、p側電極8とn側電極9との間に順方向電圧が印加されると、発光層12に、n型半導体層14から電子が注入され、p型半導体層13から正孔が注入される。これらが発光層12で再結合することによって、光が発生する。この光は、n型半導体層14を透過して光取出し面としてのメサ部26の表面26Aから、微細な凹凸構造28を介して取り出される。一方、発光層12からp型半導体層13側に向かった光は、p型半導体層13および透光導電層4をこの順で透過して、金属層3で反射される。反射した光は、透光導電層4、p型半導体層13、発光層12、n型半導体層14をこの順で透過して、メサ部26の表面26Aから、微細な凹凸構造28を介して取り出される。
【0049】
この半導体発光装置1の構成によれば、III−V族半導体構造6の裏面を形成するp型コンタクト層15がAl
xGa
1−xAs(0≦x<1)系半導体からなる。Al
xGa
1−xAs(0≦x<1)系半導体は、キャリア濃度を比較的容易に高くすることができる。そのため、前述のように、p型コンタクト層15の厚さが500Å〜5000Å程度でも、1.0×10
19cm
−3以上の高い濃度で炭素(C)をドーピングすることができる。つまり、比較的薄い厚さのp型コンタクト層15に高濃度で不純物が含有されるので、p型コンタクト層15の抵抗を低減することができる。
【0050】
さらに、上記の構成によれば、Al
xGa
1−xAs(0≦x<1)系半導体からなるp型コンタクト層15に透光導電層4が直接接続されているので、両者の間にオーミックコンタクトを良好に形成することができる。その結果、半導体発光装置1の順方向電圧(VF)を低減することができる。
一方、Al
xGa
1−xAs(0≦x<1)系半導体と絶縁層5との密着性が高くないため、上記の低抵抗化の達成には、III−V族半導体構造6から絶縁層5が剥離しやすいという背反事象が発生する。しかしながら、この半導体発光装置1では、III−V族半導体構造6と絶縁層5との間に、(Al
yGa
1−y)
zIn
1−zP(0≦y≦1、0≦z≦1)系半導体からなる中間接着層7が介在するので、III−V族半導体構造6と絶縁層5との間に高い密着性を確保することができる。さらに、上記の構成によれば、透光導電層4の凸部40が、貫通孔10の縁部38に引っ掛かるので、透光導電層4を剥がれにくくすることもできる。
【0051】
また、上記の構成によれば、中間接着層7の屈折率(n1>1)よりも小さい屈折率(n2=1)を有する空隙41(空気)が中間接着層7の一部に形成されるので、絶縁層5と中間接着層7との界面における光の反射率を向上させることができる。したがって、当該界面から中間接着層7および透光導電層4を通過し、金属層3に至るまでの経路で発生する光のロスを低減することができる。
【0052】
図7A〜
図7Jは、
図1〜
図3の半導体発光装置1の製造工程を工程順に示す図である。
図8A〜
図8Eは、中間接着層7、絶縁層5および透光導電層4の形成に関連する工程を工程順に示す図である。
半導体発光装置1を製造するには、たとえば
図7Aに示すように、GaAs等からなる第1基板の一例としての成長基板44(ウエハ)上に、エピタキシャル成長によってIII−V族半導体構造6および中間接着層7が形成される。III−V族半導体構造6の成長方法は、たとえば、分子線エピタキシャル成長法、有機金属気相成長法等、公知の成長方法を適用できる。この際、必要により、各層に対してドーパント(たとえば、前述したn型ドーパントまたはp型ドーパント)がドーピングされる。この段階では、III−V族半導体構造6は、成長基板44の側から順に、n型半導体層14、発光層12、p型半導体層13を含んでいる。
【0053】
次に、
図8Aに示すように、中間接着層7の表面7Aがアッシング処理される。アッシング処理は、たとえば酸素プラズマを使用して行われる。
次に、
図7Bおよび
図8Bに示すように、アッシング処理された中間接着層7の表面7Aに、たとえばCVD法によって、絶縁層5が形成される。絶縁層5の形成後、絶縁層5の成膜温度(たとえば、240℃〜300℃)よりも高い温度(たとえば、350℃〜500℃)で熱処理される。これにより、絶縁層5の応力が確定され、その後に熱処理工程が行われても、絶縁層5に余計な応力が発生することを抑制する。
【0054】
次に、
図8Cにより、たとえばHF(フッ酸)を使用したウエットエッチングによって、絶縁層5が選択的にパターニングされる。これにより、絶縁層5が等方的にエッチングされ、テーパ状の貫通孔10(第1部分36)が形成される。
次に、
図8Dに示すように、エッチング液を変え、具体的には、Cl系のエッチング液を使用したウエットエッチングによって、中間接着層7が第1部分36から連続してパターニングされる。これにより、中間接着層7が等方的にエッチングされ、テーパ状の貫通孔(第2部分37)が形成される。中間接着層7が等方的にエッチングされるため、当該エッチングが絶縁層5と中間接着層7との界面に沿う横方向にも進行し、サイドエッチング部39が形成される。こうして、
図7Cに示すように、p型コンタクト層15を露出させる貫通孔10が形成される。
【0055】
次に、
図7Dおよび
図8Eに示すように、たとえば蒸着法によって、絶縁層5上に透光導電層4が形成される。透光導電層4は、コンタクト部11として貫通孔10に埋め込まれ、貫通孔10内に露出するp型コンタクト層15に直接接続される。また、透光導電層4(コンタクト部11)は、貫通孔10の第2部分37においては、サイドエッチング部39に入り込むように横側に広がり、その広がった部分が凸部40として形成される。
【0056】
次に、
図7Eに示すように、たとえば蒸着法によって、透光導電層4上に第1金属層31が形成される。第1金属層31は、AuまたはAuを含む合金で構成されており、少なくとも最表面がAu層で構成されている。
次の工程は、成長基板44と基板2との貼合わせ工程である。貼合わせ工程では、成長基板44上の第1金属層31と基板2上の第2金属層32とが接合される。第2金属層32は、AuまたはAuを含む合金で構成されており、少なくとも最表面がAu層で構成されている。この第2金属層32は、貼合わせ前に、たとえば蒸着法によって、第2基板の一例としての基板2の表面(前述のp側電極8が形成される面の反対面)に形成されたものである。
【0057】
より具体的には、
図7Fに示すように、第1および第2金属層31,32同士を向い合せた状態で成長基板44と基板2とを重ね合わせ、第1および第2金属層31,32を接合する。第1および第2金属層31,32の接合は、たとえば熱圧着によって行ってもよい。熱圧着の条件は、たとえば、温度が250℃〜700℃、好ましくは約300℃〜400℃であり、圧力が10MPa〜20MPaであってもよい。この接合によって、
図7Fに示すように、第1および第2金属層31,32が合わさって金属層3が形成される。次に、たとえばウエットエッチングによって、成長基板44が除去される。
【0058】
次の工程は、n側電極9の形成工程である。この実施形態では、リフトオフ法によってn側電極9が形成される。より具体的には、まず、n側電極9の電極パターンと同一パターンの開口を有するレジスト(図示せず)が、III−V族半導体構造6(n型コンタクト層20)上に形成される。次に、たとえば蒸着法によって、III−V族半導体構造6上に電極材料膜(図示せず)が積層される。次に、当該レジスト上の電極材料膜が、レジストと共に除去される。これにより、n型コンタクト層20上に残った電極材料膜からなるn側電極9が形成される。その後、図示しないが、n側電極9から露出するn型コンタクト層20がエッチングによって除去される。これにより、n側電極9以外の部分にn型ウィンドウ層19が露出することになる。
【0059】
次に、
図7Hに示すように、たとえば蒸着法によって、基板2の裏面にp側電極8が形成される。
次に、
図7Iに示すように、III−V族半導体構造6の周縁部が選択的に除去されることによって、メサ部26および引き出し部27が形成される。メサ部26および引き出し部27の形成は、たとえば、ウエットエッチングによって行ってもよい。ウエットエッチングによって、メサ部26の外周面26Bは、基板2側へ向かう方向に径が大きくなるテーパ状に形成される。
【0060】
次に、
図7Jに示すように、たとえばフロスト処理(ウエットエッチング)等によって、メサ部26の表面26Aに微細な凹凸構造28が形成される。なお、フロスト処理は、ドライエッチングによって行ってもよい。
次に、図示しないが、基板2(ウエハ)が各チップサイズに分割されることによって、
図1〜
図3に示した半導体発光装置1が得られる。
【0061】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、他の形態で実施することもできる。
たとえば、前述の実施形態では、貫通孔10は、絶縁層5および中間接着層7を連続して貫通するように形成されていたが、たとえば
図9に示すように、絶縁層5のみに形成されていてもよい。この場合、透光導電層4は、(Al
yGa
1−y)
zIn
1−zP(0≦y≦1、0≦z≦1)系半導体からなる中間接着層7を介して、p型コンタクト層15に接続されていてもよい。
【0062】
また、貫通孔10の第1部分36と第2部分37とは、段差面となるように形成されていたが、たとえば
図10に示すように、互いにほぼ連続した面となるように形成されていてもよい。つまり、サイドエッチング部39および空隙41が形成されておらず、透光導電層4は、貫通孔10内において第2部分37の側部に接していてもよい。
さらに、図示はしないが、透光導電層4が設けられず、金属層3が、直接または貫通孔10に埋め込まれたコンタクト部(金属コンタクト等)を介して、p型コンタクト層15に接続されていてもよい。
【0063】
その他、本発明は、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
【実施例】
【0064】
次に、本発明を実施例に基づいて説明するが、本発明は下記の実施例によって限定されるものではない。
(1)絶縁層の密着性評価
実施例としてのInGaP層および参考例としてのAlGaAs層のそれぞれに対する絶縁層の密着性を評価した。
【0065】
具体的には、InGaP層およびAlGaAs層のそれぞれの表面に、
図8Aで示したアッシング処理を行い、SiO
2膜(n=1.46、厚さ=3000Å)を形成した。その後、テープ(日東電工社製「SPV−C−300(製品名)」)をSiO
2膜に貼り付け、テープを引っ張ることによって剥離試験を行った。剥離試験の結果、InGaP層上のSiO
2膜は剥離しなかったのに対し、AlGaAs層のSiO
2膜は剥離した。
【0066】
同様に、SiO
2膜に代えて、SiON膜の剥離試験も行った。結果は、InGaP層上のSiON膜は剥離しなかったのに対し、AlGaAs層のSiON膜は剥離した。
以上から、AlGaAs層に比べて、InGaP層の方が、絶縁層に対する密着性が高いことが分かった。
(2)p型コンタクト層の抵抗評価
p型コンタクト層の実施例としてのp−AlGaAs層(炭素ドープ、厚さ=2000Å)および参考例としてのp−GaP層(炭素ドープ、厚さ=3000Å)のそれぞれに対する透光導電層(ITO)のコンタクト抵抗を測定し、比較した。
【0067】
具体的には、p−AlGaAs層およびp−Gap層のそれぞれの表面に、
図11に示すTLM(Transmission Line Model)パターンでITO膜を形成し、このパターンを用いたTLM法によってI−V測定をし、当該I−V測定の結果に基づいて、ITOの接触抵抗をグラフ化した。I−V測定の結果を
図12に示し、接触抵抗の結果を
図13に示す。
【0068】
図12に示すように、AlGaAs層においては、電圧(VF)と電流(IF)とが比例関係になっており、これからAlGaAs層とITOとの間に良好なオーミックコンタクトが形成されていることが分かった。一方、
図12のGaP層のグラフに基づけば、GaP層とITOとの間には、オーミックコンタクトではなくショットキーコンタクトが形成されていると考えられる。
【0069】
また、
図13に示すように、GaP層に比べて、AlGaAs層の方が、ITOの接触抵抗を大幅に低減できることが分かった。
(3)p型コンタクト層の違いによるVF比較
前述の実施形態に従って、AlGaAsからなるp型コンタクト層を備える半導体発光装置と、GaPからなるp型コンタクト層を備える半導体発光装置をそれぞれ作製した。p型コンタクト層以外の構成については、互いに同一とした。また、各半導体発光装置において、チップサイズ(基板2のサイズ)=200μm×200μm、発光面積(メサ部26の表面サイズ)=175μm×175μm、電極径(パッド電極部93の径)=φ90μmとした。
【0070】
そして、各半導体発光装置について、半導体パラメーターアナライザを用いてI−V特性を測定した。結果を
図14に示す。
図14から、p型コンタクト層としてGaP層を用いる場合に比べて、AlGaAs層を用いた方が、順方向電圧(VF)を低減できることが分かった。たとえば、順方向電流(IF)=20mAでは、AlGaAs層の場合がGaP層の場合に比べて、0.1V程度、VFが低くなっていた。