特許第6916077号(P6916077)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6916077
(24)【登録日】2021年7月19日
(45)【発行日】2021年8月11日
(54)【発明の名称】クッション構造体およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A47C 27/14 20060101AFI20210729BHJP
【FI】
   A47C27/14
   A47C27/14 A
【請求項の数】7
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-186981(P2017-186981)
(22)【出願日】2017年9月27日
(65)【公開番号】特開2019-58512(P2019-58512A)
(43)【公開日】2019年4月18日
【審査請求日】2020年5月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000119232
【氏名又は名称】株式会社イノアックコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100076048
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 喜幾
(74)【代理人】
【識別番号】100141645
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 健司
(72)【発明者】
【氏名】太田 胆斗
【審査官】 松江 雅人
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭50−135412(JP,U)
【文献】 実開平05−015860(JP,U)
【文献】 特開2001−204590(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47C 27/00−27/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定形状の開口部が多数開設された可撓性を有する板状の基体と、
前記開口部の内側形状よりも僅かに大きな外側形状を有する柱状体であって、該開口部の内縁に嵌入可能な陥合溝が凹設されている弾性ブロックとを備え
記弾性ブロック前記陥合溝に前記基体の開口部の内縁嵌入して係止されていると共に、
前記陥合溝の形成位置に対して前記弾性ブロックの厚み方向に離間した位置に弾性調節溝が凹設されている
ことを特徴とするクッション構造体。
【請求項2】
前記弾性調節溝により弾性が調節された複数種類の前記弾性ブロックが、前記基体の開口部に使用者の身体部位に応じたパターンで配列されている請求項記載のクッション構造体。
【請求項3】
所定形状の開口部が多数開設された可撓性を有する板状の基体と、
前記開口部の内側形状よりも僅かに大きな外側形状を有する柱状体であって、該開口部の内縁に嵌入可能な陥合溝が凹設されている弾性ブロックとを備え
前記陥合溝は前記弾性ブロックの厚み方向に複数凹設され、各陥合溝を複数の基体の開口部に嵌入させることで、該弾性ブロックが複数の基体に係止されている
ことを特徴とするクッション構造体。
【請求項4】
所定形状の開口部が多数開設された可撓性を有する板状の基体と、
前記開口部の内側形状よりも僅かに大きな外側形状を有すると共に内部にコイルスプリングが埋設されていない柱状体であって、該開口部の内縁に嵌入可能な陥合溝が凹設されている弾性ブロックとを備え、
前記弾性ブロックの前記陥合溝に前記基体の開口部の内縁が嵌入して係止されている
ことを特徴とするクッション構造体。
【請求項5】
板状の基体に開設された開口部に係止されるクッション用の弾性ブロックであって、
柱状体に形成された側面に開口部の内縁に嵌入可能な陥合溝が凹設されると共に、当該陥合溝の形成位置に対して厚み方向に離間した位置に弾性調節溝が凹設されている
ことを特徴とするクッション用の弾性ブロック。
【請求項6】
板状の基体に開設された開口部に係止されるクッション用の弾性ブロックであって、
内部にコイルスプリングが埋設されていない柱状体に形成されて側面に開口部の内縁に嵌入可能な陥合溝が凹設されると共に、当該陥合溝の形成位置から厚み方向に離間した位置に弾性調節溝が凹設されている
ことを特徴とするクッション用の弾性ブロック。
【請求項7】
請求項1〜4の何れか一項に記載のクッション構造体の製造方法であって、
前記基体開口部に前記弾性ブロックを圧縮状態で挿入し、
前記弾性ブロックの陥合溝前記開口部の内縁を嵌入させて当該弾性ブロックを前記基体の開口部に係止させるようにした
ことを特徴とするクッション構造体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、異なる弾性度の領域を容易に分布させることができ、かつ可動領域を広く取り得ることで、使用者の体圧分散に適切に対応させ得るクッション構造体と、該クッション構造体の製造方法とに関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば就寝・休息用のベッドは、使用者に適度の弾力性を与えるために、多数のコイルスプリングを隣接して配列した内装体と、この内装体を意匠的に覆う外装体とから構成されたものが多い。殊に、個々のコイルスプリングを袋体に収納して、相互に独立性を持たせた所謂ポケットコイルを使用した内装体は、面でなく点で体重を支えるため身体の形状に適した沈み方をするので優れている。ところで、例えば介護用の分野では、使用者の希望する体位に応じてベッド面が斜めに上昇したり、下方へ傾動したり、更には、身体へのホールド性を高めるため、使用者の上半身が接する部位の両サイドが折れ曲がる可動部を備えた所謂リクライニングベッドの需要が多い。また、その利便性のために、一般家庭での就寝・休息用にもリクライニングベッドが普及し始めている。
【0003】
前記リクライニングベッドは、可動領域となる部位が複数あるため、前述したコイルスプリングを基材とする内装体では、その可動領域を細かく分割することが一般に困難である。このためリクライニングベッドの内装体としては、発泡ウレタンからなるマットレスを基材にすると共に、このマットレスに複数のスリットを形成することで複数の可動領域を与えるようにしたものが広く使用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017−70452号公報
【特許文献2】特開2001−204590号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
先に述べたように、ベッドの内装体として多数のコイルスプリング(ポケットコイル)を使用する場合は、多数の可動領域を有するリクライニングベッドへの適用がかなり困難である。また、多くのコイルスプリングを使用することは、製造に際しても、また廃棄するに際しても環境に与える負荷が大きくなる難点がある。更に、経年使用によりコイルスプリングの一部がベッド面に飛び出す危険も指摘される。
【0006】
このような観点からは、発泡ウレタンを基材とし、これに多数のスリットを付与して可動性を高めた前記マットレスは、リクライニングベッド等の用途に適している(例えば特開2001−204590号公報)。しかしながら、前記マットレスは一般に一枚物であるため、スリットの数により各部位における弾力性を調節するにしても限界がある。すなわち現今のマットレスには、使用者の身体部位に応じて多様な弾力領域の区分け(ゾーニング)と、多分割した可動領域の増大とが求められるが、従来のマットレスはこれらの要請に細かく応えるものではなかった。殊に近年では、マットレスに使用者の就寝姿勢に応じた細かい体圧の流動分散や、身体の各部位に合わせた快適な硬さ(乃至弾力性)が求められている。
また、前記リクライニングベッドの中には、ベッドの長手方向に屈曲するだけでなく、使用者の上半身に対するホールド性を向上させるため、上半身が接する部位の両サイド部分も折れ曲がるようにした商品が提案されている。しかし、ベッドに載置されるマットレスにスリットを設けただけでは、発泡ウレタンにおける何れかの部分が繋がっているために、上記のように複雑な屈曲をさせようとすると、弾性体である発泡ウレタン同士が屈曲部付近で干渉し合って可動性を制限し、滑らかな追従性を阻害する場合があった。このため、この種のベッドにも対応可能なものが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決し、所期の目的を達成するため第1の発明は、
所定形状の開口部が多数穿設された可撓性を有する板状の基体と、
前記開口部の内側形状よりも僅かに大きな外側形状を有する柱状体であって、該開口部の内縁に嵌入可能な陥合溝が凹設されている弾性ブロックとからなり、
前記夫々の弾性ブロックは前記基体の各開口部に挿入されると共に、前記陥合溝が該開口部の内縁に内側から嵌入して係止されていることを要旨とする。
この発明によれば、ポケットコイルを多数使用する従来の内装体や、発泡ウレタンにスリットを成形した内装体に比べて、可動領域を大きくとることができる。殊に、使用者が就寝や休息している時に、個々の弾性ブロックがポケットコイルのように作用して使用者の荷重を弾性的に支えるのみならず、リクライニング式のベッドやソファー等への応用が適切に図られる。すなわち、例えばリクライニングベッドの可動時に、個々の独立した弾性ブロックが各々変形するために、使用者の身体各部への屈曲追従性が極めて優れたものになる。また、可動屈曲時に、個々の弾性ブロックを変形させるのに要する力も従来に比べ少なくて済むため、小さな力で円滑に可動変形させることができ、モーター等の負荷が少なくて済む。更に、環境に与える負荷も少なくすることができる。
【0008】
第2の発明では、前記弾性ブロックの厚み方向には、前記陥合溝に隣接して必要数の弾性調節溝が凹設されていることを要旨とする。
この発明によれば、弾性調節溝を凹設する数を増減させることにより、クッション構造体が発揮する全体的な弾性力を好みに応じて調整することができる。
【0009】
第3の発明では、前記弾性調節溝により弾性が調節された複数種類の前記弾性ブロックが、前記基体の開口部に使用者の身体部位に応じたパターンで配列されていることを要旨とする。
この発明によれば、複数種類の弾性を有する弾性ブロックを所定パターンで配列し得るため、使用者の身体に応じて最も適切な体圧分散を図ることができる。
【0010】
第4の発明では、前記陥合溝は前記弾性ブロックの厚み方向に複数凹設され、各陥合溝を複数の基体の開口部に嵌入させることで、該弾性ブロックが複数の基体に係止されていることを要旨とする。
この発明によれば、使用する基体を複数枚にすることができるので、使用者の好みに応じた弾性度を一層細かく選定することができ、ユーザーフレンドリーなカスタマイズ化が達成される。
【0011】
前記課題を解決し、所期の目的を達成するため第5の発明は、
可撓性を有する板状の基体に多数穿設した開口部に、該開口部の内縁に嵌入可能な陥合溝を有する各弾性ブロックを圧縮状態で挿入し、
前記弾性ブロックの陥合溝を前記開口部の内縁近傍に位置したところで圧縮状態を解除することで、該弾性ブロックを前記基体の開口部に係止させるようにしたことを要旨とする。
この発明によれば、作業者による手作業は勿論、例えばロボットハンドを使用して自動化によるクッション構造体の大量生産を容易に実現できる。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係るクッション構造体によれば、可撓性を有する板状の基体に設けた多数の開口に、多数の弾力ブロックが独立して対応的に挿通されて、該弾性ブロックは基体の上下に延出した状態で拘束係止されている。このため、例えばリクライニングベッドの可動時に、個々の独立した弾性ブロックが各々変形して可動するため、極めて優れた屈曲追従性が得られる。しかも、長手方向の屈曲および左右方向(短手方向)の屈曲という複雑な可動部を有する介護ベッド等に載置して使用するのに適したクッション構造体になる。
またこれに付帯して、リクライニングベッド等の可動屈曲時に、個々の独立した(すなわち相互に別体として繋がっていない)弾性ブロックの変形に要する力も従来に比べ少なくて済む。このため、小さな力で円滑に可動変形させることができ、モーター等の負荷も少なくて済む利点がある。
更に、夫々の弾性ブロックにおける弾力性を調節して、使用者の身体部位に応じたパターンで該弾性ブロックを基体に配列するようにすれば、使用者に最も適した硬さ領域を持ったクッション構造体が提供される。また、可撓性のある基体に多数の弾性ブロックが夫々独立して係止されているため、多様な可動領域を容易に作り出すことができ、リクライニングベッド等に最適状態で使用し得る。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施例に係るクッション構造体の斜視説明図であって、基体に開設した開口に弾性ブロックが対応的に挿入される直前の状態を示している。
図2】実施例に係る弾性ブロックを基体の開口部に挿入して、弾性ブロックに凹設した陥合溝が該開口部の内縁に嵌入している状態を示す一部切欠断面図であって、弾性ブロックには陥合溝を挟んで上下に1本の弾性調節溝が凹設されている。
図3図2と同じ状態の一部切欠断面図であって、陥合溝を挟んで上下に2本の弾性調節溝が凹設されている。
図4図2と同じ状態の一部切欠断面図であって、陥合溝を挟んで上下に3本の弾性調節溝が凹設されている。
図5図2のA-A線断面図であって、基体の開口部と弾性ブロックの陥合溝との嵌入状態を示している。
図6図1に示したクッション構造体であって、図2図4に示した弾力性の異なる3種類の弾性ブロックを1枚の基体に配置した状態を示す斜視図である。
図7】クッション構造体であって、2枚の基体に多数の弾性ブロックを配列した状態を示す側面図である。
図8図7に示すクッション構造体の斜視図である。
図9】実施例に係るクッション構造体の斜視図である。
図10図1のクッション構造体の如く、基本的に1枚の基体を使用する場合であっても、特定の領域に部分的に別の基体を追加して、細かい弾力調整を可能にした状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、本発明に係るクッション構造体につき、当該クッション構造体を製造する方法との関連において、添付図面を参照しながら説明する。本発明のクッション構造体は、例えば複数の可動領域を有するリクライニングベッドの内装体として好適に使用し得るものであるが、その用途はリクライニングベッドに限られるものではない。応接用のソファーや車両用のシート、その他体育・知育用のマット代用設備等においても、異なる弾力性を有する領域の配列パターンを自由に変更することができ、また多様な可動領域を持たせることができる。
【0015】
図1は、本発明に係るクッション構造体10の概略構成を示す斜視図であって、このクッション構造体10は、可撓性を有する樹脂(例えば10〜15mm厚の発泡ポリエチレンの板状体)を材質とし、矩形状の開口部14が基盤目状に多数開設された基体12と、前記矩形状の開口部14の内側形状よりも僅かに大きな外側形状を有する断面矩形状の角柱体であって、該開口部14の内縁に内側から嵌入可能な陥合溝18が側面に凹設された弾性ブロック16とから基本的に構成されている。そして、前記クッション構造体10は、図1および図9に示すように、前記基体12の各開口部14に前記弾性ブロック16を独立して(別々に)挿通し、中間で拘束係止させることで、拘束係止した状態で隣接し合う弾性ブロック16との間に隙間を設けることができ(図6図8参照)、全体として適切な弾性を有するベッド等の内装体を構成する。
【0016】
前記弾性ブロック16は、例えば軟質の発泡ウレタンを基材とし、かつ平面において矩形状をなす角柱体であって、実施例では縦155mm、横155mm、高さ290mmの寸法に設定されている。また、前記陥合溝18は、図2に示すように、弾性ブロック16における高さ(厚み)方向の略半分の位置に所要深さで凹設されて、該弾性ブロック16の周りで横方向に延在している。但し、本実施例では、陥合溝18を弾性ブロック16の全側面に亘り凹設したが、必ずしも全側面に設ける必要はなく、弾性ブロック16の両側面にだけ凹設するようにしてもよい。前記陥合溝18の深さ寸法と、基体12における開口部14の内縁寸法との関係は、図5に示す如きものであって、各開口部14に弾性ブロック16を挿入して該弾性ブロック16の陥合溝18が開口部14を嵌入させた際に、僅かな隙間が周囲に形成される程度とするのが、弾性部ブロック16を挿入し易くなる点で好ましい。しかし、前記弾性ブロック16は例えば発泡ウレタンを材質とし弾性および柔軟性を有しているから、実際のマットレスの使用に際しては、陥合溝18が開口部14の内縁に全面的に密着接触していてもよい。
【0017】
また、基体12に開設されて隣接し合う開口部14の位置は、図5に示す以下の関係を満足するように寸法設定して、隣接する弾性ブロック16,16の間に所定の空間(隙間)が確保されるようにしておくのが好ましい。
・開口部14の幅α+隣接する開口部14との距離β=弾性ブロック16の幅x+隙間y
・開口部14の幅α+隣接する開口部14との距離β>弾性ブロック16の幅x
すなわち図5に示し、かつ前述した寸法関係に設定しておくことにより、例えばリクライニングベッドが可動屈曲した際に、屈曲により弾性ブロック16同士が圧迫し合った際の逃げとして有効に作用する。また、より一層圧迫された場合には、弾性ブロック16における陥合溝18や弾性調整溝20も屈曲するため、発泡ウレタンが有する弾性と相俟って良好に変形して追従する。また、可動部が伸長される場合、溝加工された発泡ウレタンのように繋がった部分がなく、弾性ブロック16が各々独立していて、隣接する弾性ブロック16の間に隙間(空間)があるために、屈曲した際の動きが大きく規制されることがない。
なお、前述した隣接し合う弾性ブロック16,16の隙間yについては、図5に示した横方向に隣接し合う弾性ブロック16,16の隙間に関してだけでなく、縦方向に配列されて隣接し合う弾性ブロック16,16の隙間も、前記yを満たすように寸法設定するのが好ましい。また、後述するように弾性ブロック16は角柱状である必要はなく、円柱状のブロック体にすることができる。このように弾性ブロック16が円柱状の場合も、隣接し合う円柱状の弾性ブロック16,16には前記の隙間yがあった方が良い。すなわち、弾性ブロック16が円柱状の場合は、前述した弾性ブロック16の幅xは円の直径となり、隣接し合う弾性ブロック16,16の隙間yは、平面視で弾性ブロック16,16の最大直径間の距離になる。また、円柱状の弾性ブロック16に合わせて、基体12における前記開口部14が円になる場合は、この開口部14の幅αは円の直径となり、隣接し合う円形開口部14,14との距離βは平面視で最大直径間の距離になる。
【0018】
前記弾性ブロック16の高さ(厚み)方向における外周には、図1および図2から判明するように、前記陥合溝18を挟んで上下に弾性調節溝20が凹設されている。この弾性調節溝20は、弾性ブロック16が全体として発揮する弾性力を段階的に調節し得るものであって、図1および図2の実施例では、陥合溝18の上下に夫々1本の弾性調節溝20が凹設されている。また、図3の実施例では、弾性ブロック16における陥合溝18を挟んで上下に夫々2本の弾性調節溝20が凹設され、また図4の実施例では、夫々3本の弾性調節溝20が凹設されている。そして、前記弾性ブロック16に凹設される弾性調節溝20の数が多い程、当然のことながら該弾性ブロック16が発揮する弾力性は弱く(低く)なる。従って、図2に示すように弾性ブロック16に凹設した前記弾性調節溝20が2本の弾性ブロック16における弾性度は硬く(H)なり、図3に凹設して示す弾性調節溝20が4本の弾性ブロック16における弾性度は中位(M)になり、また図4に凹設して示す弾性調節溝20が6本の弾性ブロック16における弾性度は柔く(S)なる。なお、図示した弾性ブロック16は角柱状のものであるが、前記基体12に開設した開口部14の内縁形状に応じて弾性ブロック16の柱形状は異なったものになる。
【0019】
例えば、前記開口部14が円形であれば、弾性ブロック16の前記陥合溝18は円形になり、基体12の開口部14の内縁が多角形であれば、弾性ブロック16の陥合溝18は多角形のものが選定される。前記弾性ブロック16は、充分な弾性および柔軟性を有しているため、その水平方向の断面形状が前記陥合溝18より大きくても、前記開口部14に挿入できる。更に、これらの開口部14(陥合溝18)の形状に合わせて、例えば開口部14(陥合溝18)が円形であれば、これに合わせて弾性ブロック16を円柱状のものにすることができる。また、基体12の開口部14(陥合溝18)の内縁が多角形であれば、弾性ブロック16を多角柱状のものにすることができる。すなわち、弾性ブロック16の形状を外観から判断することで、陥合溝18の形状が直ちに視覚的に確認でき、開口部14への挿入の際に陥合溝18の位置をイメージし易い。また、基体12と弾性ブロック16の結合状態が良好になり、それに伴いバランス良く弾性を発揮させることができる。
【0020】
(弾性ブロックを基体の開口部にセットする手順)
次に、図1に示す構成の弾性ブロック16を、基体12の開口部14に挿入して、該弾性ブロック16を該基体12にセットする手順(製造方法)を説明する。図1に示す如く、弾性ブロック16には、高さ方向の略中央となる部位に所定の深さで前記陥合溝18が凹設されている。なお、断面が矩形状をなす弾性ブロック16の外部形状は、前述した如く、前記基体12における開口部14の内部形状よりも僅かに大きくなるよう寸法設定されている。また、前記弾性ブロック16に凹設される陥合溝18の深さは、図5に示す如く、該弾性ブロック16を基体12にセットした際に、基体12における開口部14の内縁よりも少し奥まるように(若干の隙間が生じるように)寸法設定してあるが、先に述べたように、この寸法関係にすることは必ずしも要件でない。
【0021】
前記弾性ブロック16は、例えば発泡ウレタンを基材としていて柔軟性を有するので、該弾性ブロック16を基体12にセットするには、該弾性ブロック16の周囲を作業者の手またはロボットハンド(後述)で軽く圧縮してやる。これにより弾性ブロック16は内側へ収縮して、前記基体12の開口部14へ挿入可能になる。この状態で、水平方向に位置する基体12の開口部14に向かって、弾性ブロック16を矢印方向(垂直方向下方)へ移動させて、該弾性ブロック16を基体12の開口部14に挿入する。そして、弾性ブロック16の陥合溝18が前記開口部14に対応する位置へ到来した頃合をもって圧縮力を解放し、弾性ブロック16を弾力復帰させる。これにより弾性ブロック16の陥合溝18は、基体12における開口部14の内縁を内側から嵌入させるので、該弾性ブロック16は基体12に確実に拘束係止される。なお、弾性ブロック16を基体12に多数セットするには、手作業でも可能であるが多数のセット作業は極めて大変である。そこで、一例としてロボットハンドにより弾性ブロック16を把持し、圧縮した状態で基体12の開口部14へ挿入した後に、圧縮力を解除するようにすれば自動化が図られて効率が向上する。
【0022】
なお、図2図4に示す実施例の弾性ブロック16では、前記陥合溝18に隣接して弾性調節溝20が所要数だけ凹設されていたが、この弾性調節溝20を凹設することは本発明の必須要件ではない。すなわち、弾性ブロック16に陥合溝18だけが凹設されていて、弾性調節溝20は凹設されていなくても、本発明に係るクッション構造体10としての機能は達成される。また、図1および図9は、同じ弾性ブロック16を基体12に多数セットした場合を示したが、図6に示すように、図2の弾性ブロック16(2本の弾性調節溝20を有するもの)、図3の弾性ブロック16(4本の弾性調節溝20を有するもの)および図4の弾性ブロック16(6本の弾性調節溝20を有するもの)を所定パターンで混合的にセットすることにより、クッション構造体10の全体に得られる弾力性を局所的に変化させて多様な弾性力を付与することができる。更に、図7および図8に示すように、前記弾性ブロック16に2本の陥合溝18を高さ方向に所定の間隔を空けて凹設し、夫々の陥合溝18が基体12の各開口部14に嵌入するようにして、2枚の基体12を有するクッション構造体10としてもよい。勿論、基体12の枚数は必要に応じて更に増加させることが可能である。
【0023】
弾性ブロック16の陥合溝18に隣接して弾性調節溝20を凹設する場合であって、かつ図8に示すように複数の基体12を設けるときは、弾性調節溝20が前記陥合溝18の機能も果たし得るようにしておくのが便利である。このため、前記陥合溝18の凹設の幅と弾性調節溝20の凹設の幅とを略等しいものに寸法設定しておけば、厚みが同じ基体12を共通に用いることができる。また、例えば図2において、陥合溝18とこれに隣接する弾性調節溝20との間隔寸法をSとすれば、図3に示す弾性ブロック16における陥合溝18とこれに最も近く隣接する弾性調節溝20との間隔寸法もSに設定する。また、図4に示す弾性ブロック16では、陥合溝18と、これに対し2本目の弾性調節溝20との間隔寸法をSに設定する。このように、弾性調節溝20の数が異なっている弾性ブロック16であっても、陥合溝18と弾性調節溝20との間隔寸法Sを共通にしておくことができる。従って、図1図6のように1枚の基体12を基本的に使用する場合であっても、部分的に2枚の基体12を追加したいときは、図10に示すように、特定の領域に部分的に別の基体12を弾性調節溝20(間隔寸法Sだけ離間している)に嵌入させることが可能になる。これにより、クッション構造体10に関して部分的に一層細かい弾力調節を図ることができる。また、これにより、例えばリクライニングベッドを屈曲して使用する際に、基体12や弾性ブロック16同士が相互に干渉し合うことがなくなり、円滑にベッドを屈曲追従させることができる。なお、前述した基体12の材質としては、発泡ポリエチレンの板状体以外に、用途に応じてフェルトや金属板を採用してもよい。
【0024】
本発明に係るクッション構造体10は、可撓性を有する基体12の開口部14に対して、各種の弾力性に設定可能な弾性ブロック16を拘束係止させることで、適度の弾性力と柔軟性とを有し、かつリクライニングベッド等で要求される可動領域を広く任意に設定できるので、追従性に優れ操作性の良好なベッドやソファー等を実現できる。また、弾性ブロック16に弾性調節溝20を設ける場合は、その弾性調節溝20の数を増減させることにより多様な弾力性が得られ、また快適な通気性が実現される。従って、使用者の好みに応じて個人的な体圧分散度を測定して、カスタマイズされたリクライニングベッドやソファーその他シート等を提供できる利点がある。
【符号の説明】
【0025】
12 基体,14 開口部,16 弾性ブロック,18 陥合溝,20 弾性調節溝
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10