特許第6916097号(P6916097)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6916097ボンディング装置およびボンディング方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6916097
(24)【登録日】2021年7月19日
(45)【発行日】2021年8月11日
(54)【発明の名称】ボンディング装置およびボンディング方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/52 20060101AFI20210729BHJP
【FI】
   H01L21/52 F
   H01L21/52 C
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-222940(P2017-222940)
(22)【出願日】2017年11月20日
(65)【公開番号】特開2019-96671(P2019-96671A)
(43)【公開日】2019年6月20日
【審査請求日】2020年6月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】000110859
【氏名又は名称】キヤノンマシナリー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【弁理士】
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【弁理士】
【氏名又は名称】熊野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100148987
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 礼子
(72)【発明者】
【氏名】永元 信裕
【審査官】 小池 英敏
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2014/155535(WO,A1)
【文献】 特開平02−246233(JP,A)
【文献】 特開平08−045993(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/52
H01L 21/60
H05K 13/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のチップが積層されてなるチップ積層体を有する半導体装置の製造に用いるものであり、吸着面を有するコレットにて吸着している最上層となるチップをボンディングポジションで、この最上層のチップの次の下位層のチップ上にはみ出し部を設けてボンディングするボンディング装置であって、
ボンディングポジションで最上層となるチップをボンディングする際に前記最上層のチップに、前記コレットの弾性部材からなるコレット本体における前記吸着面を介してボンディング荷重を付与する荷重付与手段と、
荷重付与手段にて最上層のチップにボンディング荷重を付与している際の最上層のチップからの反力を検出する反力検出手段と、
反力検出手段にて検出された反力検出値が増加途中で変動したときに、その変動した際のボンディング荷重を算出するボンディング荷重算出手段とを備え、
荷重付与手段による付与荷重を、ボンディング荷重算出手段にて算出したボンディング荷重を越えない荷重に設定することを特徴とするボンディング装置。
【請求項2】
前記荷重付与手段はコレットに荷重を付与して、最上層のチップにボンディング荷重を付与することを特徴とする請求項1に記載のボンディング装置。
【請求項3】
前記反力検出手段は、荷重測定器であるロードセルを用いたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のボンディング装置。
【請求項4】
前記変動が、最上層のチップにクラックが生じた際の反力検出値の減少であることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のボンディング装置。
【請求項5】
複数のチップが積層されてなるチップ積層体を有する半導体装置を製造するものであり、吸着面を有するコレットにて吸着している最上層となるチップをボンディングポジションで、この最上層のチップの次の下位層のチップ上にはみ出し部を設けてボンディングするボンディング方法であって、
最上層となるチップに、前記コレットの弾性部材からなるコレット本体における前記吸着面を介してボンディング荷重を付与している際の、前記最上層のチップからの反力を検出し、検出された反力検出値が増加途中で変動したときに、その変動した際のボンディング荷重を算出し、その後、算出したボンディング荷重を越えない荷重でボンディングを行うことを特徴とするボンディング方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボンディング装置およびボンディング方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の製造においては、多数個の素子を一括して造り込まれたウェーハをダイシングして個々の半導体チップに分離し、これを一個ずつリードフレーム等の所定位置にボンディングするというチップボンディングの手法が採用されている。そして、このチップボンディングにはダイボンダ(ボンディング装置)が用いられる。
【0003】
ボンディング装置は、図7に示すように、供給部2の半導体チップ1を吸着するコレット3を有するボンディングアーム(図示省略)と、供給部2の半導体チップ1を観察する確認用カメラ(図示省略)と、ボンディング位置でリードフレーム4のアイランド部5を観察する確認用カメラ(図示省略)とを備える。
【0004】
供給部2は半導体ウェーハ6(図8参照)を備え、半導体ウェーハ6が多数の半導体チップ1に分割されている。すなわち、ウェーハ6は粘着シート(ダイシングシート)に貼り付けられ、このダイシングシートが環状のフレームに保持される。そして、このダイシングシート上のウェーハ6に対して、円形刃(ダイシング・ソー)等を用いて、個片化してチップ1を形成する。また、コレット3を保持しているボンディングアームは搬送手段を介して、ピックアップ位置とボンディング位置との間の移動が可能となっている。
【0005】
また、このコレット3は、その下端面に開口した吸着孔を介してチップ1が真空吸引され、このコレット3の下端面にチップ1が吸着する。なお、この真空吸引(真空引き)が解除されれば、コレット3からチップ1が外れる。
【0006】
次にこのダイボンダを使用したダイボンディング方法を説明する。まず、供給部2の上方に配置される確認用カメラにてピックアップすべきチップ1を観察して、コレット3をこのピックアップすべきチップ1の上方に位置させた後、矢印Bのようにコレット3を下降させてこのチップ1をピックアップする。その後、矢印Aのようにコレット3を上昇させる。
【0007】
次に、ボンディング位置の上方に配置された確認用カメラにて、ボンディングすべきリードフレーム4のアイランド部5を観察して、コレット3を矢印E方向へ移動させて、このアイランド部5の上方に位置させた後、コレット3を矢印Dのように下降移動させて、このアイランド部5にチップ1を供給する。また、アイランド部5にチップを供給した後は、コレット3を矢印Cのように上昇させた後、矢印Fのように、ピップアップ位置の上方の待機位置に戻す。
【0008】
コレット3は、移動機構(図示省略)にて、ピックアップポジションP上での矢印A方向の上昇および矢印B方向の下降と、ボンディングポジションQ上での矢印C方向の上昇および矢印D方向の下降と、ピックアップポジションPとボンディングポジションQとの間の矢印E、F方向の往復動とが可能とされる。移動機構は図示省略の制御手段にて前記矢印A、B、C、D、E、Fの移動が制御される。なお、移動機構としては、シリンダ機構、ボールねじ機構、リニアモータ機構等の種々の機構にて構成することができ,XYZ軸ステージ(ステージ装置)を使用することができる。
【0009】
ところで、半導体装置には、図9に示すように、複数のチップ(半導体チップ)11を基板10上に積層するものがある。すなわち、図9に示す半導体装置は、リードフレーム等の基板10上に、一段目の半導体チップ11(11A)が接着剤13Aを介して搭載され、この一段目の半導体チップ11(11A)の上に、二段目の半導体チップ11(11B)が接着剤13Bを介して搭載されている。
【0010】
このような半導体装置は、コレット15にて吸着された一段目の半導体チップ11Aを基板10上にボンディングした後、コレット15にて吸着された二段目の半導体チップ11Bを一段目の半導体チップ11A上にボンディングする。この場合のコレット15は、ゴム等の弾性部材にて構成される押圧部16を有するものであり、この押圧部16の下面平坦面が吸着面16aとなっている。すなわち、押圧部16の下面の吸着面16aに開口する吸引孔17がこのコレット15に形成され、この吸引孔17には、真空発生器が接続されている。このため、真空発生器が駆動すれば、吸引孔17のエアが吸引され、この吸着面16aに半導体チップ11(11A,11B)を吸着することができる。
【0011】
ところで、複数の半導体チップ11A,11Bを基板13上に積層する半導体装置には、図10に示すように、二段目の半導体チップ11(11B)の一部(縁部)が一段目の半導体チップ11(11A)からはみ出すものがある。
【0012】
このような場合、二段目の半導体チップ11Bの全体をカバーするコレット15にてボンディングを行えば、ボンディング時にチップ11Bへの押圧力によって、このはみ出し部(張り出し部)18が折れてクラックが生じるおそれがあった。
【0013】
そこで、従来には、このような半導体装置の製造時(ボンディング時)にクラック等を生じさせないようにした半導体装置およびその製造方法が提案されている(特許文献1)。この特許文献1には、図11に示すように、二段目の半導体チップ11Bの張り出し部18と、基板10との間に架け渡される支持部19が形成された半導体装置が記載されている。このような支持部19が形成されることによって、張り出し部18が折れるのを防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2011−54725号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
前記特許文献1では、支持部19としては、接着剤を用いている。このため、接着剤として熱硬化樹脂を用い、チップ11を積層し加圧した後、加熱して硬化させるものである。この場合、コレット15にて、二段目のチップ11Bを一段目のチップ11Aに押圧すると、その図12に示すように、二段目のチップ11Bの張り出し部18がしなるとの記載がある。このように、しなればクラックが生じるおそれがあった。
【0016】
なお、特許文献1には、「張り出し部がしなって基板に接触するまで二段目の半導体チップを押圧しない」旨の記載がある。しかしながら、基板に接触しないようにするものであって、張り出し部がしなることを規制していない。このため、このように設定したとしても、クラックが生じるおそれがあった。
【0017】
したがって、従来では、ボンディングしてボンディング状態を観察し、クラックが発生している場合は、コレットに対してボンディング荷重を付与するボンディング荷重付与手段におけるパラメータを手動で変更して、クラックが発生しないボンディング荷重を導き出す必要があった。
【0018】
しかしながら、このようにボンディング荷重を導き出すものでは、品種が変更されれば、ボンディング荷重を導き出す作業を、品種が変更される毎に行う必要があり、生産性に劣り、さらには、作業者よってはその作業にバラツキが発生し、クラックの発生を安定して防止できない。また、外形形状が同サイズであっても厚さが相違するチップもあり、このような場合、再条件決めが必要となる。
【0019】
本発明は、上記課題に鑑みて、コレットの押圧部の弾性体の硬度、接合温度変化、コレットサイズ、ワークサイズ(チップサイズ)のばらつき、及び/又はチップのオーバーハング量(はみだし)の違いがあっても、ボンディング対象が複数のチップが積層されたものであっても、クラックを生じさせることなくボンディングが可能なボンディング装置およびボンディング方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明のボンディング装置は、複数のチップが積層されてなるチップ積層体を有する半導体装置の製造に用いるものであり、吸着面を有するコレットにて吸着している最上層となるチップをボンディングポジションで、この最上層のチップの次の下位層のチップ上にはみ出し部を設けてボンディングするボンディング装置であって、ボンディングポジションで最上層となるチップをボンディングする際に前記最上層のチップに、前記コレットの弾性部材からなるコレット本体における前記吸着面を介してボンディング荷重を付与する荷重付与手段と、荷重付与手段にて最上層のチップにボンディング荷重を付与している際の最上層のチップからの反力を検出する反力検出手段と、反力検出手段にて検出された反力検出値が増加途中で変動したときに、その変動した際のボンディング荷重を算出するボンディング荷重算出手段とを備え、荷重付与手段による付与荷重を、ボンディング荷重算出手段にて算出したボンディング荷重を越えない荷重に設定するものである。
【0021】
本発明のボンディング装置によれば、反力検出手段にて検出された反力検出値が増加途中で変動したときは、ボンディング荷重算出手段にてその変動が生じたときの荷重を算出することができる。そして、反力検出値が増加途中で変動したときは、最上層のチップの一部に折れ等の変位が生じている場合である。そこで、このボンディング装置では、この荷重付与手段にて付与されるボンディング荷重を前記算出手段にて算出した荷重を越えないように設定できる。
【0022】
前記荷重付与手段はコレットに荷重を付与して、最上層のチップにボンディング荷重を付与するもので構成できる。また、前記反力検出手段は、荷重測定器であるロードセルを用いたもので構成できる。ロードセルとは、作用した荷重を電気信号に変換する荷重変換器であり、一般に、磁歪式、静電容量型、ジャイロ式、圧電式、電磁式、音叉式、ひずみゲージ式などがある。この場合、精度が高く温度変化の影響が小さい、出力が電気信号で長距離伝送が可能、計測できる荷重に対し小型であるなどの特徴を有するひずみゲージ式を用いるのが好ましい。前記変動が、最上層のチップにクラックが生じた際の反力検出値の減少である場合がある。
【0024】
本発明のボンディング方法は、複数のチップが積層されてなるチップ積層体を有する半導体装置を製造するものであり、吸着面を有するコレットにて吸着している最上層となるチップをボンディングポジションで、この最上層のチップの次の下位層のチップ上にはみ出し部を設けてボンディングするボンディング方法であって、最上層となるチップに、前記コレットの弾性部材からなるコレット本体における前記吸着面を介してボンディング荷重を付与している際の、前記最上層のチップからの反力を検出し、検出された反力検出値が増加途中で変動したときに、その変動した際のボンディング荷重を算出し、その後、算出したボンディング荷重を越えない荷重でボンディングを行うものである。
【0025】
本発明のボンディング方法によれば、反力検出値が増加途中で変動したときは、その変動が生じたときの荷重を算出することができる。反力検出値が増加途中で変動すれば、最上層のチップの一部に折れ等の変位が生じている場合である。そこで、その後、ボンディング荷重を算出した荷重を越えないように設定できる。
【発明の効果】
【0026】
本発明では、チップの一部に折れ等が生じない範囲のボンディング荷重をチップに付与することができ、しかも、この荷重は、手動にて設定することなく自動かつ短時間で行うことができ、作業者によるバラツキを無くすことができる。このため、コレットの押圧部の弾性体の硬度、接合温度変化、コレットサイズ、ワークサイズ(チップサイズ)のばらつき、及び/又はチップのオーバーハング量(はみだし)の違いがあっても、ボンディング対象が複数のチップが積層されたものであっても、チップにクラックを生じさせることなくボンディング作業が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明のボンディング装置を示す簡略ブロック図である。
図2図1に示すボンディング装置の要部簡略断面図である。
図3】ボンディング中におけるチップとコレットとの関係を示す簡略断面図である。
図4】反力の変化を示すグラフ図である。
図5】本発明のボンディング方法のフローチャート図である。
図6】本発明のボンディング装置の動作を示す簡略図である。
図7】従来のボンディング方法の全体を示す簡略図である。
図8】チップを示す簡略斜視図である。
図9】従来のボンディング中のチップとコレットとの関係を示す簡略断面図である。
図10】二段目のチップが一段目のチップに対してずれている半導体装置におけるボンディング中のチップとコレットとの関係を示す簡略断面図である。
図11】従来の半導体装置の簡略断面図である。
図12】前記図11に示す半導体装置のボンディング中の簡略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下本発明の実施の形態を図1図6に基づいて説明する。
【0029】
図6は本発明に係るダイボンダ(ボンディング装置:半導体装置の製造装置)を示す。このようなボンディング装置は、ウェーハから切り出されるチップ(半導体チップ)21をピックアップポジションPにてコレット(吸着コレット)23でピックアップして、リードフレームなどの基材22のボンディングポジションQに移送(搭載)するものである。ウェーハは、金属製のリング(ウェーハリング)に張設されたウェーハシート(粘着シート25)上に粘着されており、ダイシング工程によって、多数のチップ21に分断(分割)される。
【0030】
コレット23は、図6に示すように、ピックアップポジションP上での矢印A方向の上昇および矢印B方向の下降と、ボンディングポジションQ上での矢印C方向の上昇および矢印D方向の下降と、ピックアップポジションPとボンディングポジションQとの間の矢印E、F方向の往復動とが可能とされる。コレット23は、後述するボンディングヘッド34に付設され、このボンディングヘッド34はボンディングアーム(図示省略)に付設される。そこで、このボンディングアームが図示省略の制御手段にて制御されて、コレット23が前記矢印A、B、C、D、E、Fの移動が制御される。制御手段は、例えば、CPU(Central Processing Unit)を中心としてROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)等がバスを介して相互に接続されたマイクロコンピューターである。なお、ROMには、CPUが実行するプログラムやデータが格納されている。
【0031】
このボンディング装置は、図1に示すように、ボンディングポジションQでチップ21をボンディングする際にチップ21にコレット23を介してボンディング荷重を付与する荷重付与手段31と、荷重付与手段31にてチップ21にボンディング荷重を付与している際のチップ21からの反力を検出する反力検出手段32と、反力検出手段32にて検出された反力検出値が増加途中で変動したときに、その変動した際のボンディング荷重を算出するボンディング荷重算出手段33とを備える。
【0032】
荷重付与手段31は、図2に示すように、略L字形状のアーム35と、このアーム35を揺動させる駆動機構36とを備える。すなわち、アーム35が、水平方向に延びる第1バー35aと、この第1バー35aの基端部からこの第1バー35aと直角をなすように延びる第2バー35bとからなり、第1バー35aと第2バー35bとのコーナ部に荷重支点35cが設けられる。また、第1バー35aは、コレット23を支持しているボンディングヘッド34の上部に設けられている。
【0033】
駆動機構36は、ボールねじ機構、シリンダ機構、リニアモータ機構等の種々の機構にて構成できる。すなわち、駆動機構36の駆動によって、第2バー35bが矢印Gの方向の荷重を受け、これによって、アーム35が荷重支点35cを中心に矢印H方向に揺動し、第1バー35aは矢印Iの荷重を受ける。第1バー35aが矢印Iの荷重を受けると、ボンディングヘッド34を介してコレット23に矢印Iの荷重を付与することができる。
【0034】
コレット23は、コレット本体23aと、このコレット本体23aを支持する軸部材23bとを有する。軸部材23bは、軸本体部37aと、この軸本体部37aの下部に設けられる本体受け部37bとからなる。コレット本体23aはゴム材又は樹脂材等の弾性材から構成されている。そして、コレット23には、コレット本体23aの下面である吸着面23a1に開口する吸着孔(図示省略)が形成され、この吸着孔には、真空発生器(図示省略)が接続されている。このため、コレット23の吸着面23a1をチップと接触状として、真空発生器を駆動すれば、吸着孔のエアが吸引され、この吸着面23a1にチップ21を吸着することができる。なお、真空発生器としては、真空ポンプを使用した真空発生装置であっても、ノズルとディフューザと呼ばれる基本パーツで構成されるエジェクタ式の真空発生装置であってもよい。
【0035】
ところで、コレット23の軸部材23bの軸本体部37aが、ボンディングヘッド34内に、吊り下げられた状態で収容されている。また、軸本体部37aの上部には、反力検出手段32としてのロードセル41が配置されている。このため、図3に示すように、チップ21をコレット23にて吸着している状態で、コレット23に矢印Iの荷重が付与されれば、チップ21からの反力をコレット23が受け、この反力をロードセル41にて検出することができる。
【0036】
すなわち、コレット23が反力を受けない状態では、軸本体部37aとボンディングヘッド34との間に設けられる係合構造Mによって、コレット23はボンディングヘッド34に対して吊り下げられ、この状態では、コレット23はボンディングヘッド34に対して上昇が可能となっている。しかしながら、軸本体部37aとボンディングヘッド34の受け部材38との間にロードセル41が介在されているので、コレット23が反力を受ければ、コレット23が上昇しようとして、ロードセル41が上昇する荷重を受ける。このため、ボンディングヘッド34の受け部材38にロードセル41が押し付けられ、これによって、ロードセル41はチップ21からの反力を検出することができる。
【0037】
ロードセルとは、作用した荷重を電気信号に変換する荷重変換器であり、一般に、磁歪式、静電容量型、ジャイロ式、圧電式、電磁式、音叉式、ひずみゲージ式などがある。この場合、精度が高く温度変化の影響が小さい、出力が電気信号で長距離伝送が可能、計測できる荷重に対し小型であるなどの特徴を有するひずみゲージ式を用いるのが好ましい。
【0038】
駆動機構36による第2バー35bの矢印G方向の荷重、延いては、コレット23への矢印I方向の荷重の付与は、例えば、マイクロコンピューター等からなる荷重制御手段45に制御されている。なお、係合構造Mとしては、この実施形態では、軸本体部37aに設けられる鍔部42と、ボンディングヘッド34の内径面に設けられる大径部43等で構成され、鍔部42がこの大径部43に上下動可能として嵌合している。
【0039】
また、ボンディング荷重算出手段33としてもマイクロコンピューター等から構成することができる。この場合、ボンディング荷重算出手段33とコレット23の移動を制御する図示省略の制御手段と荷重制御手段45とを共用しても、それぞれ別の制御手段を用いても、さらには、いずれか2つを共用するとともに他の一つを別の制御手段を用いるようにしてもよい。
【0040】
次に、前記のように構成されたボンディング装置(半導体装置の製造装置)にはチップ21をボンディングポジションQでボンディングする方法(半導体装置の製造方法)を説明する。この場合、図3に示すように、複数枚(図例では、3枚)のチップ21が積層されてなるチップ積層体20を有する半導体装置Sを成形する場合を示す。半導体装置Sのチップ積層体20は、基板46上に接着剤47(47A)を介して配置される第1のチップ21(21A)と、この第1のチップ21A上に接着剤47(47B)を介して配置される第2のチップ21(21B)と、この第2のチップ21B上に接着剤47(47C)を介して配置される第3のチップ21(21C)とで構成される。
【0041】
この半導体装置Sのチップ積層体20では、第2のチップ21Bは第1のチップ21Aに対して位置ずれすることなく配置されているが、第3のチップ21Cは第2のチップ21Bに対して位置ずれした状態で配置されている。すなわち、第3のチップ21Cは、その一部に、第2のチップ21Bからはみ出しているはみ出し部50が形成されている。
【0042】
このような半導体装置Sを成形する場合、まず、コレット23にて第1のチップ21Aを吸着し、この吸着している第1のチップ21Aを基板46上にボンディングする。この際、荷重付与手段31にて、予め設定されているボンディング荷重をコレット23を介してチップ21Aに付与することになる。
【0043】
その後、コレット23にて第2のチップ21Bを吸着し、この吸着している第2のチップ21Bを第1のチップ21A上にボンディングする。この際も、荷重付与手段31にて、予め設定されているボンディング荷重をコレット23を介してチップ21Bに付与することになる。
【0044】
次に、コレット23にて第3のチップ21Cを吸着し、この吸着している第3のチップ21Cを第2のチップ21B上にボンディングする。荷重付与手段31にて、予め設定されているボンディング荷重をコレット23を介してチップ21Cに付与することになる。しかしながら、この場合、第3のチップ21Cははみ出し部50を有するので、予め設定されているボンディング荷重を付与した場合、このはみ出し部50が折れ曲がる場合がある。このように折れ曲がれば、第3のチップ21Cにクラックが生じるおそれがある。
【0045】
そこで、本ボンディング装置では、図5に示すフローチャートのように動作するように制御される。第3のチップ21Cにボンディング荷重を付与していく。このようにボンディング荷重を付与していけば、反力検出手段32は第3のチップ21Cからの反力を受ける。このため、この反力を反力検出手段32が検出する(ステップS1)。反力は、図4に示すように、順次増加、つまり単調増加することになる。しかしながら、はみ出し部50が折れ曲がった場合、このグラフで示されるように、反力に変動(減少)が生じる。なお、図4では、単調増加から単調減少に変わった変動を示しているが、変動には、減少に限らず、減少も増加もしない場合も含まれる。
【0046】
このため、この変動があったか否かを検出する(ステップS2)。この場合、予め設定された荷重まで付与する。ステップS2で変動がなければ、はみ出し部50が折れ曲がらなかったことになる。このため、ステップS3へ移行して、この第3のチップ21Cへのボンディング荷重を予め設定された荷重として、以後の第3のチップ21Cのボンディングをこの荷重で行う。
【0047】
ステップS2で変動があった場合、ステップS4へ移行してその変動があった場合のボンディング荷重を算出する。すなわち、この反力が生じた際の駆動機構36による第2バー35bの矢印G方向の荷重を荷重制御手段45にて制御することになる。この場合、この反力と矢印G方向の荷重とが同一の場合や相違する場合がある。
【0048】
その後の半導体装置Sにおける第3のチップ21Cのボンディング工程において、このステップS4で算出したボンディング荷重でボンディングを行うことになる(ステップS5)。その後は、このボンディング装置によるボンディングを終了するか判断し(ステップS6)、終了する場合は終了し、終了しない場合は、ステップS5へ戻る。
【0049】
本発明では、反力検出手段32にて検出された反力検出値が増加途中で変動したときは、ボンディング荷重算出手段33にてその変動(減少)が生じたときの荷重を算出することができる。そして、反力検出値が増加途中で変動(減少)したときは、チップ21の一部に折れ等の変位が生じている場合である。そこで、このボンディング装置では、この荷重付与手段31にて付与されるボンディング荷重を算出手段33にて算出した荷重を越えないように設定できる。
【0050】
このため、チップ21の一部に折れ等が生じない範囲のボンディング荷重をチップ21に付与することができ、しかも、この荷重は、手動にて設定することなく自動かつ短時間で行うことができ、作業者によるバラツキを無くすことができる。このため、コレット23の押圧部(コレット本体23a)の弾性体の硬度、接合温度変化、コレットサイズ、ワークサイズ(チップサイズ)のばらつき、及び/又はチップのオーバーハング量(はみだし)の違いがあっても、ボンディング対象が複数のチップ21が積層されたものであっても、クラックを生じさせることなくボンディングが可能である。
【0051】
本ボンディング装置は、複数のチップ21が積層されてなるチップ積層体20を形成する場合、最上層のチップ21にクラックが生じ易いので、このようなチップ積層体20を有する半導体装置Sの製造に用いるのが最適となる。
【0052】
本発明は前記実施形態に限定されることなく種々の変形が可能であって、例えば、荷重付与手段31として、前記実施形態では、略L字形状のアームを用いて、コレット23の同軸上に駆動機構36を配設しないようにしているが、駆動機構36をコレット23の同軸上に配設する機構のものであってもよい。なお、略L字形状のアームを用いた場合、装置レイアウト性に優れるとともに、また、荷重の増幅が可能となる等の利点がある。
【0053】
半導体装置Sとして、積層されるチップ21の数としては、3枚に限るものではなく、2枚であっても4枚以上であってもよい。また、積層されないもの、すなわち、基板に1枚のチップ21がボンディングされるものであってもよい。このように、積層されないものでも、クラックが形成されれば、反力に変動が生じ、その後、この時の荷重を越えないボンディング荷重の付与のボンディング工程を行うことができる。半導体装置Sとは、半導体特性を利用することで機能しうる装置全般を指し、電気光学装置、半導体回路および電子機器は全て半導体装置である。
【0054】
ところで、チップ21をピックアップするピックアップ時においても、チップ21を所定の荷重のピックアップ荷重を付与する。このため、本発明に係るボンディング装置(半導体装置の製造装置)を用いて、ピックアップ作業(ピックアップ工程)を行ってもよい。このように、このボンディング装置を用いてピックアップ工程を行えば、チップ21にクラック生じないピックアップ荷重をチップ21に付与することができ、安定したピックアップ作業を行うことができる。
【符号の説明】
【0055】
1 半導体チップ
21、21A、21B、21C チップ
23 コレット
31 荷重付与手段
32 反力検出手段
33 ボンディング荷重算出手段
41 ロードセル
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