(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を用いながら本発明の実施例を説明する。
【実施例1】
【0013】
先ず、
図1〜
図9を用いて、本発明の実施例1の電磁誘導加熱調理器を説明する。
【0014】
図1は、実施例1の電磁誘導加熱調理器のブロック図である。ここに示すように、本実施例の電磁誘導加熱調理器は、直流電圧を出力する電源回路10、3つのインバータ(100、200、300)、ドライブ回路61、共振電流検出回路62、制御回路70、入力電力設定部71を備えており、各々のインバータに対応する複数の加熱コイルにより、図示しないトッププレート上に載置された鍋などの被加熱物を加熱することができる。なお、各インバータの構成は同等であるので、以下では、第一のインバータ100を代表して説明する。
【0015】
第一のインバータ100は、スイッチング回路20、共振回路30、電流検出器31によって構成されている。スイッチング回路20は、電源回路10の正電極p点と負電極o点との間に接続されており、電源回路10から供給される直流電圧を高周波の交流電圧に変換して共振回路30に印加する。共振回路30は、加熱コイル5と共振コンデンサ6の直列回路であり、加熱コイル5にはスイッチング回路20から高周波電力が供給される。電流検出器31は、共振回路30に流れる電流を検出する。
【0016】
各インバータの電流検出器31の出力値は、共振電流検出回路62で演算され、演算結果は制御回路70に送られる。入力電力設定部71は、使用者が入力電力(火力)を設定するインターフェースであり、設定された火力に応じた信号を制御回路70に送る。制御回路70では、共振電流検出回路62からの演算結果と入力電力設定部71からの信号に応じた駆動信号を生成する。ドライブ回路61は駆動信号に基づいて、各インバータのスイッチング回路20を制御するドライブ信号波形を生成する。
【0017】
次に、第一のインバータ100の動作を説明する。一般に、IHクッキングヒータでは、共振型インバータを用いる。共振型のインバータは、スイッチング回路20の駆動周波数fs > 共振回路30の共振周波数frに設定し、共振負荷の特性を誘導性にすることで、共振回路30に流れる電流がスイッチング回路20の出力電圧に対し遅れ位相になるように制御するインバータである。これにより、スイッチング回路20での損失増加を抑制している。すなわち、
図1では、共振回路30に流れる電流ILが、スイッチング回路20と共振回路30の接続点である出力端子t点の電圧に対して遅れ位相になるように制御することでスイッチング回路20の損失を抑制することができる。
【0018】
しかしながら、駆動周波数fsを固定した状態で、スイッチング回路20の導通期間を変化させ電力制御を行うと、スイッチング回路20の導通期間に電流ILの極性が反転し、電流ILがスイッチング回路20の出力電圧より進み位相になる進相モードへ移行する場合もある。進相モードはスイッチング回路20の損失増加を招くので、共振型のインバータでは避けなければならないモードである。
【0019】
次に、
図2、
図3を用いて、本実施例の電磁誘導加熱調理器における、複数の加熱コイル5の配列について説明する。一般に、電磁誘導加熱調理器では、ガラス製のトッププレートの下に、加熱コイル5を配置し、この加熱コイル5に高周波電流を供給することで、トッププレート上に載置された被加熱物(金属製の鍋)を誘導加熱する。以下では、3つのインバータ(100、200、300)が内蔵する、3個の加熱コイル51,52,53を用いて、一つの鍋を加熱する電磁誘導加熱調理器を例に説明を進める。
【0020】
図2は、3個の加熱コイルの配列の一例であり、加熱コイル51,52,53が、各々の中心点が正三角形になるように配置されている。各加熱コイルは3つのインバータ(100、200、300)にそれぞれ接続される。各加熱コイルの下部には磁束を有効に鍋に誘導するためにフェライト54が放射状に配置されている。なお、
図3に示すように、加熱コイル直下に放射状に配置されるフェライトの一部を隣り合う加熱コイルのフェライトに連結した構造とすることで、隣り合う加熱コイルの磁気結合がより増大し、漏洩磁界のより低減させ、加熱効率をより向上させても良い。
【0021】
図2や
図3のように加熱コイル5を配置した場合、被加熱物の材質や形状、厚み、大きさ、配置、或いは、設定された入力電力(火力)の大きさに応じて、各加熱コイルに供給される電流が変化する。
図4に各加熱コイルの電流波形の一例を示す。鍋の配置により、各加熱コイルと鍋の磁気結合度が変化するため、各加熱コイル側からみた等価抵抗および等価インダクタスが異なることになる。したがって、等価抵抗および等価インダクタスに応じて各加熱コイルに流れる電流は、周波数、値とも異なった値になる。例えば、加熱コイル電流が正から負になるゼロクロスに着目すると、まず、加熱コイル52の電流値がゼロクロスし、そのt1後に加熱コイル51の電流値がゼロクロスし、さらにt2後に加熱コイル53の電流値がゼロクロスする。そして、これらの電流値を総和した「各加熱コイル電流値総和」は、
図4に示すように、大きな振幅を持っている。なお、同図中の各電流の振幅の大きさはイメージであり、厳密なものではない。
【0022】
このときに各加熱コイルから発生する磁束模式図を
図5に示す。ここに示すように各加熱コイル電流を制御せずに動作すると、加熱コイル毎に独立した磁束55が発生する。また、各加熱コイルの近接部(例えば、加熱コイル51と加熱コイル52に挟まれた領域)では磁束が集中し、鍋が局所的に発熱するため、加熱ムラが発生してしまう。
【0023】
これを改善するため、各加熱コイルの電流値を制御した場合の動作波形を
図6に示す。同図は、各加熱コイルの電流値総和が小さくなるように制御した結果、時間と共に当該総和の振幅が徐々に小さくなり、最終的にはほぼゼロとなった状況を示している。
【0024】
これを実現するため、まず、各インバータの電流検出器31を用いて各加熱コイルの電流値の瞬時値を検出し、共振電流検出回路62に出力する。共振電流検出回路62は、各加熱コイル電流値の総和を算出する。この総和の情報が入力された制御回路70は、加熱コイル電流値の総和がゼロに近づくように、t1、t2の値や各コイル電流値の振幅を変化させるように、ドライブ回路61を介して各インバータ内のスイッチング回路20を制御する。
【0025】
図7に各加熱コイル電流を上述の方法で制御した場合の磁束模式図を示す。
図5では加熱コイル毎に独立した磁束55を形成していたが、
図7では各加熱コイルが近接する部分において各加熱コイル同士が磁気結合するため、近接する加熱コイル間を跨ぐ磁束56が発生する。
図7の例では、加熱コイル51と52、加熱コイル52と53が強く結合されているが、コイル間での結合は時間的に変化するため、磁束56は分散されて鍋は均一に加熱される。このようにコイル間で磁束が結合することで、加熱コイルの周辺部で発生する磁束、すなわち、漏洩磁界が小さくなる。
【0026】
図8に各加熱コイル電流を制御しない場合の動作波形における磁界分布、
図9に各加熱コイル電流を制御した場合の動作波形における磁界分布を示す。本実施例の制御未適用時においては、
図8に示すように、加熱コイル群の周辺部から磁界が大きく広がっているのに対し、本実施例の制御適用時においては、
図9に示すように、加熱コイル群の周辺部から磁界が抑制されていることが分かる。
【0027】
以上で説明したように、各加熱コイルの電流の総和が小さくなるように(望ましくは、最小値になるように)制御する本実施例の電磁誘導加熱調理器によれば、加熱コイル周辺近傍の磁界分布が強くなり、加熱コイル周辺部からの広がりが小さくなる。従って、加熱コイルから発生する漏洩磁界を低減でき、鍋の加熱ムラの少なくし、鍋をより効率的に加熱することができるようになる。
【実施例2】
【0028】
次に、
図10から
図15を用いて、スイッチング回路にハーブブリッジ回路構成を採用した、本発明の実施例2の電磁誘導加熱調理器を説明する。なお、実施例1との共通点は重複説明を省略する。
【0029】
図10は実施例2の電磁誘導加熱調理器の回路構成である。本実施例の電磁誘導加熱調理器も実施例1と同様に、3つのインバータを備えているが、第二、第三のインバータ(200、300)の図示は省略して説明を進める。
【0030】
図10において、電源回路10は、商用電源1からの交流電圧を直流電圧に変換して第一のインバータ100に供給するものであり、交流電圧を整流する整流回路2とインダクタ3及びフィルタコンデンサ4で構成された平滑回路からなる。そして、フィルタコンデンサ4の正電極p点と負電極o点との間に、第一のインバータ100のスイッチング回路20が接続される。
【0031】
第一のインバータ100のスイッチング回路20は、パワー半導体スイッチング素子であるIGBT11とIGBT12が直列に接続されて構成される。IGBT11、12にはそれぞれダイオード21、22が逆方向に並列接続されており、IGBTのコレクタ端子にダイオードのカソード端子、エミッタ端子にアノード端子が接続されている。以下では、IGBT11とダイオード21で構成される回路を上アームと称し、IGBT12とダイオード22で構成される回路を下アームと称する。また、IGBT11、12にはそれぞれ並列にスナバコンデンサ23、24が接続されている。スナバコンデンサ23、24は、IGBT11またはIGBT12のターンオフ時の遮断電流によって充電あるいは放電される。スナバコンデンサ23、24の容量は、IGBT11、12のコレクタとエミッタ間の出力容量より十分に大きいため、ターンオフ時に両IGBTに印加される電圧の変化は低減され、ターンオフ損失は抑制される。
【0032】
IGBT11、12の接続点である出力端子t点と電源回路10の正電極p点および負電極o点には共振回路30が接続されている。本実施例の共振回路30は、加熱コイル5と共振コンデンサ6、7で構成される。ここで、出力端子t点から加熱コイル5に向かって流れる方向を共振電流ILの正方向とする。
【0033】
電流検出器31は、共振回路30に流れる電流を検出する。共振電流検出回路62は、各インバータの電流検出器31の出力信号レベルを制御回路70の入力レベルに適した信号に変換する。電流検出器32は、商用電源1から入力する電流を検出する。入力電流検出回路63は電流検出器31の出力信号レベルを制御回路70の入力レベルに適した信号に変換する。制御回路70は入力電流検出回路63で検出した入力電流と共振電流検出回路62で検出した共振電流の関係から被加熱物の材質や状態を判断し、加熱動作の開始又は停止を行う。被加熱物の判別は、磁性体と非磁性体とに区別する。区別する方法としては、加熱前に低電力(300W程度)で通電を行う。そのときの共振電流ILまたはIGBT11、12の電流値を検出し、その電流値により、被加熱物の材質を判別する。電流値が小さい場合には鉄などの磁性体、電流値が大きい場合は、非磁性ステンレスやアルミニウム、銅といった非磁性体の被加熱物と判別する。
図11に周波数20kHzにおける各被加熱物の抵抗値を示す。
図11のように、非磁性ステンレスでは鉄の1/3、アルミニウム1/20、銅では約1/25の抵抗値となる。
【0034】
また、制御回路70は、入力電力設定部75からの信号に応じてスイッチング回路20のIGBT11、12の導通期間を、ドライブ回路61を介して設定し入力電力を制御する。材質の検知は、過電流や過電圧の発生を防ぐために低電力かつ短時間で実施する必要がある。
【0035】
また、
図10に示すように、スイッチング回路20の上アームに流れる電流をIc1、下アームに流れる電流をIc2、共振点可変回路30に流れる電流をIc3、共振電流をILとする。上アームのIGBT11のコレクタ、エミッタ間の電圧をVc1、下アームのIGBT12のコレクタ、エミッタ間の電圧をVc2、共振コンデンサ6の共振電圧をVc3、共振コンデンサ7の共振電圧をVc4、インバータの電源電圧をVpとする。
【0036】
次に動作を説明する。
図12に本実施例のインバータのモード1から4までの動作波形を示す。なお、何れのモードにおいても、IGBT11およびIGBT12はデッドタイム期間を設け、相補に駆動する。
【0037】
図12に示すように、加熱コイル5には、正弦波状のコイル電流ILが流れており、この共振周波数frは、式1に示すように、加熱コイル5のインダクタンス値L、共振コンデンサ6および共振コンデンサ7から決定される。
【0038】
【数1】
【0039】
以下で、モード1〜モード4における詳細な動作を説明する。
(モード1)
IGBT11の電流Ic1の電流が0Aとなるタイミングからモード1が始まるものとする。モード1開始時にはIGBT11に電流は流れていないが、IGBT11はすでにオンしているため、モード1開始直後からIGBT11に電流Ic1が流れ始める。このときIGBT11の両端電圧(コレクタ端子、エミッタ端子間電圧Vc1)は0Vであるため、IGBT11には損失が発生しないZVZCSターンオンとなる。
(モード2)
IGBT11を遮断しモード2になると、ILは電源回路10、スナバコンデンサ23、加熱コイル5、共振コンデンサ7の経路と、加熱コイル5、共振コンデンサ6、スナバコンデンサ23の経路と、加熱コイル5、共振コンデンサ7、スナバコンデンサ24の経路に流れる。このとき、スナバコンデンサ23は充電され、スナバコンデンサ24は放電される。これにより、IGBT11の両端電圧は緩やかに上昇し、ZVSターンオフとなり、スイッチング損失を小さくできる。
【0040】
スナバコンデンサ23の電圧Vc1が電源電圧(p−o間電圧)以上になると、スナバコンデンサ24の電圧Vc2は0Vとなり、ダイオード22がオンし、加熱コイル電流ILが流れ続ける。ダイオード22に電流が流れている期間にIGBT12にオン信号を入力する。
(モード3)
IGBT12の電流Ic2の電流が0Aとなるタイミングからモード3が始まるものとする。モード3開始時にはIGBT12に電流は流れていないが、IGBT12はすでにオンしているため、モード3開始直後からIGBT12に電流Ic2が流れ始める。このときIGBT12の両端電圧(コレクタ端子、エミッタ端子間電圧Vc2)は0Vであるため、IGBT12には損失が発生しないZVZCSターンオンとなる。
(モード4)
IGBT12を遮断しモード4になると、ILは加熱コイル5、スナバコンデンサ24、電源回路10、共振コンデンサ6の経路と、加熱コイル5、スナバコンデンサ24、共振コンデンサ7の経路と、加熱コイル5、スナバコンデンサ23、共振コンデンサ6の経路に流れる。このとき、スナバコンデンサ24は充電され、スナバコンデンサ23は放電される。これにより、IGBT12の両端電圧は緩やかに上昇し、ZVSターンオフとなり、スイッチング損失を小さくできる。
【0041】
以上のモード1から4までの動作を繰り返し、加熱コイル5に高周波電流を流すことで、加熱コイル5から磁束を発生させる。この磁束により加熱コイル5の上に配置された鍋に渦電流が流れ、鍋自体が誘導加熱によって発熱する。
【0042】
次に電力制御方法について説明する。
図13に周波数と入力電力の関係を示す。IHクッキングヒータは共振現象を利用して加熱コイルに高周波の大電流を流す。このため入力電力の周波数特性は、共振特性を示す。
図11に示すように鉄鍋の抵抗は大きいため共振Qが小さくなり、なだらかな共振特性を示す。一方、アルミや銅といった低抵抗の材質では共振Qが大きくなるため、急峻な共振特性を示す。共振Qが小さい鉄鍋などは、ゆるやかな共振特性を利用して、周波数による電力制御が可能である。また、
図14にIGBT11のDutyと入力電力の関係を示す。共振Qが小さい鉄鍋などではDutyによる電力制御も可能である。一方、アルミなどの急峻な共振特性の場合は、周波数制御やDuty制御では難しく、電源回路10の出力電圧を制御することで電力を制御することができる。
【0043】
次に各加熱コイル電流の制御方法について説明する。
図15に各加熱コイル電流制御をした場合の動作波形を示す。
図15に示す波形は、各インバータの上アームIGBTのゲート信号波形と各インバータの加熱コイル電流である。各加熱コイルの瞬時値を検出し、ゲート信号の駆動タイミングと、インバータ駆動周波数またはDutyにより電力を制御し、すなわち、加熱コイル電流を制御することで、各加熱コイルの総和が小さくなるようにする。
【0044】
以上で説明した本実施例の電磁誘導加熱調理器によれば、ハーブブリッジ回路構成を採用した場合であっても、実施例1と同様に、加熱コイルから発生する漏洩磁界を低減でき、鍋の加熱ムラの少なくし、鍋をより効率的に加熱することができるようになる。
【実施例3】
【0045】
次に、
図16、
図17を用いて、スイッチング回路にフルブリッジ回路構成を採用した、本発明の実施例3の電磁誘導加熱調理器を説明する。なお、上述した実施例との共通点は重複説明を省略する。
【0046】
図16は、実施例3の電磁誘導加熱調理器の回路構成である。ここに示すフルブリッジ回路構成のインバータは、電源回路10の出力端子であるp−o間にスイッチング回路20、40が接続され、各スイッチング回路の上下アームの中点のt−r間に加熱コイル5と共振コンデンサ6の直列回路が接続された構成である。なお、本実施例のスイッチング回路20、40は、実施例2のスイッチング回路20と同構成のものであり、初期状態においては、スイッチング回路20のIGBT11とスイッチング回路40のIGBT14に同じ駆動信号を与え、スイッチング回路20のIGBT12とスイッチング回路40のIGBT13に同じ駆動信号を与えることで、IGBT11とIGBT12が相補に駆動し、IGBT13とIGBT14が相補に駆動するように制御する。
【0047】
IGBTのソフトスイッチング動作については、実施例2のハーフブリッジと同様の動作となるため、説明は省略するが、本実施例のフルブリッジでは加熱コイル5と共振コンデンサ6の直列回路に印加される電圧、すなわちインバータ出力電圧(t−r間電圧)がハーフブリッジの2倍の電圧を発生させることができる。このため、加熱コイル5の巻数を増やすことができ、加熱効率の向上が可能になる。
【0048】
電力制御方法としては前述した周波数制御とDuty制御のほかに、フルブリッジインバータに有効な位相シフト制御がある。位相シフト制御は、IGBTのDutyを固定し、スイッチング回路20とスイッチング回路40の位相をずらして電力を制御する方法であり、
図17に示すように、IGBT11オンから遅れ時間(シフト)を設けてIGBT14をオンにするとともに、IGBT12オンから遅れ時間(シフト)を設けてIGBT13をオンにする。シフト量を大きくするほど、IGBT11と14の同時オン期間、IGBT12と13の同時オン期間が短くなるため、
図16のt−r点間の通電期間が短くなり、インバータの出力電圧(t−r間電圧)が低くなり加熱コイル5が鍋に与える電力を低減できる。なお、位相シフト制御では、シフト量がゼロのときに最大電力を得ることができる。
【0049】
以上のような電力制御を用いることで、各インバータの電流検出器31で検出された各加熱コイル電流の総和が小さくなるように、各加熱コイルの電流値を制御することが可能になる。
【0050】
以上で説明した本実施例の電磁誘導加熱調理器によれば、フルブリッジ回路構成を採用した場合であっても、実施例1と同様に、加熱コイルから発生する漏洩磁界を低減でき、鍋の加熱ムラの少なくし、鍋をより効率的に加熱することができるようになる。
【実施例4】
【0051】
次に、
図18を用いて、本発明の実施例4の電磁誘導加熱調理器を説明する。なお、上述した実施例との共通点は重複説明を省略する。
【0052】
図18は、実施例4の電磁誘導加熱調理器の回路構成である。本実施例では、スイッチング回路20の出力端子t点と電源回路10の負電極o点の間に、加熱コイル5と共振コンデンサ5、8の直列回路からなる共振回路30を設けるとともに、共振コンデンサ5、8の接続点とスイッチング回路40の出力端子r点の間にリレー9を設け、SEPP(Single Ended Push Pull)インバータとフルブリッジインバータを切り替える構成となっている。誘導加熱装置の場合、加熱する負荷によってインバータ方式を切り替えることで、鉄や磁性ステンレスに代表される磁性金属製の金属負荷も、アルミニウムや同に代表される非磁性金属製の金属負荷も加熱することが可能になる。
【0053】
アルミニウムや銅といった低抵抗の非磁性材料は、SEPPインバータで加熱する。一方、鉄や磁性ステンレスなどの磁性材料は、金属の電気抵抗が大きいため、加熱コイルと共振コンデンサで構成される共振回路の大きな電圧を印加できるフルブリッジインバータで加熱する。インバータ方式の切り替えはリレー9をオフでSEPPインバータ、リレー9をオンでフルブリッジインバータに切り替える。各回路方式の動作については、実施例2、実施例3と同様であるため説明は省略する。
【実施例5】
【0054】
次に、
図19を用いて、本発明の実施例5の電磁誘導加熱調理器を説明する。なお、上述した実施例との共通点は重複説明を省略する。
【0055】
図19は、実施例5の電磁誘導加熱調理器の回路構成である。本実施例のスイッチング回路90(電圧共振インバータ)は、共振回路91とIGBT12が直列に接続されて構成されている。共振回路91は、加熱コイル5と共振コンデンサ6が並列に接続されて構成されている。また、IGBT12には逆並列にダイオード22が接続されている。
【0056】
次に、
図20を用いて、通常の加熱動作を説明する。ここで、加熱コイル5の電流の向きは、
図19の矢印方向を正とする。
(モード1):IGBT12のオフからIGBT12のコレクタ電圧のピークまでの期間である。モード1において、IGBT12をオフすると、IGBT12に流れていた電流が遮断され、加熱コイル5に蓄えられていたエネルギーにより、加熱コイル5と共振コンデンサ6の経路に電流が流れる。この時、IGBT12のコレクタ電圧が正弦波状に上昇し、ゼロ電圧スイッチング(以下、ZVS)となる。
(モード2):IGBT12のコレクタ電圧のピークから0Vになるまでの期間である。モード2において、IGBT12のコレクタ電圧がピークになると、加熱コイル5の電流が正から負に切り替わり、電流の向きが反転し、共振コンデンサ6、加熱コイル5の経路に電流が流れる。
(モード3):ダイオード22の通電期間である。モード3において、共振コンデンサ6が放電され、IGBT12のコレクタ電圧が0Vになると、ダイオード22がオンし、加熱コイル5、フィルタコンデンサ4、ダイオード22の経路に電流が流れる。このダイオード22の通電期間内にIGBT12のゲートをオンする。
(モード4):IGBT12の通電期間である。モード4において、加熱コイル5のエネルギーがなくなると、加熱コイル電流が負から正に切り替わる。このときIGBT12はすでにゲートがオンしているため電流が流れ始める。このときスイッチング損失の発生しないZVSになる。電流はフィルタコンデンサ4、加熱コイル5、IGBT12の経路と商用電源1、整流回路2、インダクタ3、加熱コイル5、IGBT12、整流回路2の経路に流れる。
以上のモード1からモード4を繰り返し動作することで、加熱コイル5に高周波の交流電流が流れ、鍋を加熱する。
【0057】
図21に周波数と入力電力の関係を示す。本実施例は加熱コイル5と共振コンデンサ6が並列に接続される並列共振回路となっている。したがって、
図21に示す周波数特性は下に凸になる特性を示す。並列共振においては共振点での電力が最低電力となり、周波数を下げることで電力を制御することができる。
【0058】
以上で説明したように、本実施例においても、上述した各インバータのIGBTのオンタイミング制御により、各インバータの電流検出器31で検出された各加熱コイル電流の総和が小さくなるように、各加熱コイル電流を制御することで、加熱コイルから発生する漏洩磁界を低減でき、鍋の加熱ムラの少なくし、鍋をより効率的に加熱することができるようになる。