(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1の転写工程と前記第2の転写工程との間に、前記第1の粘着シートの粘着力を低減させる粘着力低減工程を有することを特徴とする、請求項1に記載の実装方法。
前記ヘッドの前記半導体チップと接触する面の熱膨張係数と前記回路基板の前記半導体チップが転写される面の熱膨張係数は同等であり、前記実装工程では、前記ヘッドの前記半導体チップと接触する面の温度と前記回路基板の前記半導体チップが転写される面の温度が常に等しくなるように温度制御することを特徴とする、請求項1から3のいずれかに記載の実装方法。
前記ヘッドの前記半導体チップと接触する面の材料と前記回路基板の前記半導体チップが転写される面の材料は同一であることを特徴とする、請求項4に記載の実装方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1記載の実装方法は、半導体チップに接着層が残るおそれがあり、その接着層の量のばらつきにより安定した実装が困難であるという問題があった。
【0006】
本発明は、上記問題点を解決して、半導体チップを高精度に安定して回路基板に実装する実装方法および実装装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために本発明の実装方法は、キャリア基板に第1の面を保持されたダイシング後の半導体チップを回路基板に実装する実装方法であって、前記半導体チップの前記第1の面と反対側の面である第2の面側に第1の粘着シートを準備し、前記キャリア基板を透過させて前記半導体チップの前記第1の面にレーザを照射することにより、前記半導体チップが前記キャリア基板から剥離して前記第1の粘着シートに貼付けられるように前記半導体チップを前記第1の粘着シートへ転写させる第1の転写工程と、前記半導体チップの前記第1の面に第2の粘着シートを貼付け、前記半導体チップを前記第1の粘着シートから前記第2の粘着シートへ移し替える、第2の転写工程と、前記半導体チップの前記第2の面側に前記回路基板を準備し、前記第2の粘着シートを透過させて前記半導体チップの前記第1の面にレーザを照射することにより、前記半導体チップが前記第2の粘着シートから剥離して前記回路基板に配置されるように前記半導体チップを前記回路基板へ転写させる第3の転写工程と、前記半導体チップの前記第1の面へヘッドを当て、前記半導体チップと前記回路基板とを熱圧着させることにより前記半導体チップを前記回路基板に実装する実装工程と、を順次実行することを特徴としている。
【0008】
この実装方法により、接着層を用いずに半導体チップを回路基板へ実装するため、半導体チップの回路基板と対向する面に余計なものが残存することなく実装が可能であり、高精度に安定して回路基板に実装することができる。
【0009】
また、前記第1の転写工程と前記第2の転写工程との間に、前記第1の粘着シートの粘着力を低減させる粘着力低減工程を有すると良い。
【0010】
こうすることにより、第2の転写工程を容易に行うことができる。
【0011】
また、前記粘着力低減工程は、前記第1の粘着シート及び前記半導体チップを加熱することにより粘着力を低減させると良い。
【0012】
こうすることにより、容易に第1の粘着シートの粘着力を低減させることができる。
【0013】
また、前記ヘッドの前記半導体チップと接触する面の熱膨張係数と前記回路基板の前記半導体チップが転写される面の熱膨張係数は同等であり、前記実装工程では、前記ヘッドの前記半導体チップと接触する面の温度と前記回路基板の前記半導体チップが転写される面の温度が常に等しくなるように温度制御すると良い。
【0014】
こうすることにより、実装工程中に回路基板とヘッドとが熱膨張係数の差により位置ずれして半導体チップが回路基板から剥がされることを防ぐことができる。
【0015】
また、前記ヘッドの前記半導体チップと接触する面の材料と前記回路基板の前記半導体チップが転写される面の材料は同一であると良い。
【0016】
こうすることにより、実装工程中に回路基板とヘッドとが位置ずれすることをより防ぐことができる。
【0017】
また、上記課題を解決するために本発明の実装装置は、キャリア基板に第1の面を保持されたダイシング後の半導体チップを載置台に載置された回路基板に実装する実装装置であって、前記半導体チップの前記第1の面と反対側の面である第2の面を貼付ける第1の粘着シートを保持する第1の粘着シート保持部と、前記半導体チップの前記第1の面を貼付ける第2の粘着シートを保持する第2の粘着シート保持部と、レーザを照射するレーザ照射部と、前記載置台に載置された前記回路基板に配置された前記半導体チップに対し、加圧および加熱することが可能なヘッドと、を有することを特徴としている。
【0018】
この実装装置により、接着層を用いずに半導体チップを回路基板へ実装するため、半導体チップの回路基板と対向する面に余計なものが残存することなく実装が可能であり、高精度に安定して回路基板に実装することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の実装方法および実装装置により、半導体チップを高精度に安定して回路基板に実装することができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の実装方法について、
図1〜
図4を参照して説明する。
図1は、本発明における実装方法の第1の転写工程を説明する図である。
図2は、本発明における実装方法の粘着力低減工程および第2の転写工程を説明する図である。
図3は、本発明における実装方法の第3の転写工程を説明する図である。
図4は、本発明における実装方法の実装工程を説明する図である。
【0022】
なお、本発明において、半導体チップのもつ2つの主面のうち、キャリア基板に保持された面を第1の面とし、第1面と反対側の面を第2の面と定義し、第2の面にはバンプが形成されており、回路基板に接合されるものとする。
【0023】
まず、本発明の実装方法における第1の転写工程について、
図1を参照して説明する。
図1(a)は、キャリア基板2に第1の面が保持されたダイシング後の複数の半導体チップ1を示している。キャリア基板2は
図1の奥行き方向にも広がっていて円形又は四角形を有しており、シリコン、ガリウムヒ素、サファイヤ等からなっている。また、半導体チップ1もキャリア基板2の広がりに沿って2次元に複数個(数百個〜数万個)が配列されている。マイクロLEDと呼ばれる小型の半導体チップ1では、50um×50um以下のサイズであり、このサイズにダイシング幅を加えたピッチで配列されている。このような小型の半導体チップ1は、高精度(例えば、1um以下の精度)で回路基板6に実装することが求められている。本実施形態における半導体チップ1は、事前に各半導体チップ1を検査し不良の半導体チップを除去している。具体的には、後述のレーザリフトオフの場合よりも強いレーザ光を照射し、不良チップを焼失させている。また、半導体チップ1の第2の面にはバンプが形成されている。
【0024】
図1(b)は、半導体チップ1のキャリア基板2に保持された面である第1の面と反対側の面である第2の面を第1の粘着シート4aに貼付ける第1の粘着シート貼付け工程を示している。第1の粘着シート4aは、まず後述の第1の粘着シート載置部21に真空吸着により保持されており、半導体チップ1を貼付ける面には粘着膜3aが形成されている。本実施形態における粘着膜3aは常温では粘着性を有するが、加熱することによって粘着力が低減する特性を有している。この第1の粘着シート貼付け工程では、後述するロボットハンド40で半導体チップ1を保持したキャリア基板2を吸着、ハンドリングして、第1の粘着シート載置部21に保持された第1の粘着シート4aの粘着膜3a上に半導体チップ1の第2の面を貼付ける。
【0025】
次に、上記の通りキャリア基板ごと半導体チップ1が貼付けられた第1の粘着シート4aに対し、キャリア基板除去工程を実行する。キャリア基板除去工程では、レーザリフトオフと呼ばれる方法により半導体チップ1をキャリア基板2から剥離させて除去する。例えば、マイクロLEDにおいては、キャリア基板2にエキシマレーザを照射することにより、キャリア基板2を透過させて半導体チップ1の第1の面にレーザ光11が照射され、半導体チップ1であるマイクロLEDのGaN層の一部をGaとNに分解させてサファイヤからなるキャリア基板2から半導体チップ1を剥離させる。全ての半導体チップ1にレーザ光11が照射されたキャリア基板2は、キャリア基板2が真空吸着されたロボットハンド40を第1の粘着シート4aから離間させることにより、除去する。
【0026】
このように第1の粘着シート貼付け工程とキャリア基板除去工程とを経て、
図1(c)に示すように半導体チップ1はキャリア基板2から第1の粘着シート4aに転写される。本説明では、半導体チップ1をキャリア基板2から第1の粘着シート4aに転写する工程を第1の転写工程と呼ぶ。
【0027】
なお、上記の説明では、第1の転写工程において半導体チップ1の第2の面を第1の粘着シート4aに貼付けてからキャリア基板2の除去を行っているが、それに限らず、第1の粘着シート4aが半導体チップ1の第2の面から若干離間した位置に準備された状態の下、キャリア基板2にレーザを照射した際にマイクロLEDのGaN層の一部がGaとNに分解することで生じる推進力により半導体チップ1が付勢され、キャリア基板2から第1の粘着シート4aへ飛行して第1の粘着シート4aへ貼り付くようにしても良い。なお、この場合は真空環境下でキャリア基板2からの半導体チップ1の剥離を実施することにより、空気抵抗の影響無くまっすぐに半導体チップ1を第1の粘着シート4aへ飛行させ、粘着シート4a上での半導体チップ1の位置ずれを防ぐことが可能である。
【0028】
また、本実施形態においては、キャリア基板除去工程にてキャリア基板2にレーザ光を照射してレーザリフトオフにより半導体チップ1からキャリア基板2を剥離して除去するようにしたが、必ずしもこれに限定されず適宜変更が可能である。例えば、キャリア基板2を半導体チップ1が設けられている側と反対側から削り落として除去するようにしてもよい。これは、バックグラインドと呼ばれ、特に赤色LEDの場合にはレーザリフトオフが適用できないのでこのバックグラインドの手法が用いられる。
【0029】
続いて、
図2(a)に示す粘着力低減工程が実行される。粘着力低減工程では、第1の粘着シート4aの粘着膜3aが所定温度に加熱されることにより粘着膜3aの粘着力が低減される。なお、本実施形態では、加熱によって粘着力が低減する特性を有する粘着膜3aが使用されているため、粘着力低減工程では粘着膜3aは加熱されるが、それに限らず、UV光など光の照射によって粘着力が変化する粘着膜3aが使用されている場合は、粘着膜3aに向かって光が照射されることによって粘着力低減工程が実施される。
【0030】
次に、
図2(b)および(c)に示す第2の転写工程を実行する。第2の転写工程では、ロボットハンドなどによって粘着膜3bを有する第2の粘着シート4bが搬送されて半導体チップ1をはさむように第1の粘着シート4aに接近し、
図2(b)に示すように半導体チップ1の第1の面が第2の粘着シートに貼付けられる。
【0031】
そして、
図2(c)のように第1の粘着シート4aと第2の粘着シート4bとが離間される。ここで、第1の粘着シート4aと第2の粘着シート4bとが離間するときにおける半導体チップ1に対する第2の粘着シート4b(粘着膜3b)の粘着力が第1の粘着シート4a(粘着膜3a)の粘着力より大きければ、半導体チップ1は第1の粘着シート4aから剥がれ、第2の粘着シート4bに移し替えられた状態となる。すなわち、半導体チップ1が第1の粘着シート4aから第2の粘着シート4bへ転写される。
【0032】
ここで、本実施形態では上記の通り粘着力低減工程を有しており、第1の粘着シート4aと第2の粘着シート4bとが離間するときにおける半導体チップ1に対する第2の粘着シート4b(粘着膜3b)の粘着力が第1の粘着シート4a(粘着膜3a)の粘着力より大きい状態を容易に形成することができる。このように粘着力低減工程を有しておれば、粘着力低減前の粘着膜3aの粘着力が粘着膜3bの粘着力以上であっても、第2の転写工程において半導体チップ1を第1の粘着シート4aから第2の粘着シート4bへ転写することが可能である。
【0033】
一方、粘着力を低減させなくとも粘着膜3aの粘着力が粘着膜3bの粘着力より小さいのであれば、必ずしも粘着力低減工程は必要としない。
【0034】
また、粘着力低減工程において加熱によって第1の粘着シート4aの粘着力を低減させる場合、第1の粘着シート4aが熱膨張して半導体チップ1の配列間隔が広まった状態で第2の粘着シート4bに転写され、以降の工程が行われるおそれがある。この場合、回路基板半導体チップ1が実装されたときに半導体チップ1の実装位置にずれが生じる可能性がある。それを防ぐために、極力、第1の粘着シート4aは、石英、ガラスなど熱膨張係数が小さい素材を材料とすると良い。また、加熱によって粘着力は低下するがその後冷却しても粘着力は戻らない素材を粘着膜3aの材料とし、粘着力低減工程において第1の粘着シート4aを加熱した後、第2の粘着シート4bを貼付ける前に第1の粘着シート4aを加熱前の温度まで冷却すると良い。
【0035】
次に、
図3(a)および(b)に示す第3の転写工程が実行される。第3の転写工程では、
図3(a)に示すように粘着膜3bおよび半導体チップ1が下を向くように第2の粘着シート4bを保持し、また、第2の粘着シート4bの下方に回路基板6を配置させる。
【0036】
そして、
図3(a)に速度v1で示すようにレーザ光11の照射部に対して第2の粘着シート4bを相対移動させ、レーザ光11の照射部の直下に半導体チップ11が来るタイミングでレーザ光11が照射されることにより、レーザ光11が第2の粘着シート4bを透過して粘着膜3bと半導体チップ1の第1の面との界面に到達し、半導体チップ1がレーザーリフトオフされる。具体的には、レーザ光11の照射により粘着膜3bからガスが発生し、このガスの発生によって半導体チップ1が付勢され、第2の粘着シート4bから下方へ飛行する。また、半導体チップ1がGaNチップの場合は、レーザ光11の照射によりGaとNが分解しN2が発生し、膨張する事でレーザーリフトオフされることが可能である。
【0037】
このとき、
図3(a)に速度v2で示すように回路基板6を第2の粘着シート4bに対して相対移動させておくことにより、その相対移動速度に応じて
図3(b)に示すように任意の間隔で半導体チップ1を回路基板6に着弾させることができる。こうすることにより、キャリア基板2上でダイシングされて第2の粘着シート4b上までは密に並んでいた半導体チップ1を任意の間隔で回路基板6に配置することができる。たとえば、RGBといった3種の半導体チップ1を順に配列させるためには各種の半導体チップ1は少なくとも2チップ分以上の間隔を確保して回路基板6上に配置する必要があるが、上記の転写方法によりそれが可能となる。
【0038】
また、回路基板6に着弾した半導体チップ1は、第2の面(バンプが設けられている面)が回路基板6に対向する。
【0039】
ここで、真空環境下でレーザーリフトオフを実施することにより、空気抵抗の影響無くまっすぐに半導体チップ1を回路基板6へ飛行させ、回路基板6上での半導体チップ1の位置ずれを防ぐことが可能である。
【0040】
なお、上記の通りレーザーリフトオフを実施するためには、第2の粘着シート4bはレーザ光11を透過させる素材を材料とする必要がある。具体的には、石英、ガラスなどを材料とすることが好ましい。また、第2の粘着シート4bを薄いフィルム状にし、レーザ光11を透過させるようにしても良い。
【0041】
また、本実施形態では、回路基板6の半導体チップ1が着弾する面には転写層5が設けられており、半導体チップ1が転写層5上に着弾した後、転写層5が半導体チップ1のもつ熱によって固化されて、半導体チップ1が保持される。すなわち、実装工程により半導体チップ1が回路基板6に熱圧着される前の仮の保持が行われる。
【0042】
次に、
図3(a)および(b)に示す実装工程が実施される。実装工程では、後述する載置台31に載置された回路基板6に向かって後述のヘッド32が接近して半導体チップ1の第1の面と当接し、さらに加圧する。また、ヘッド32にはヒータ35が設けられており、半導体チップ1の加圧時にヒータ35が作動して半導体チップ1が有するバンプが溶融する温度までヘッド32の温度が上昇することにより、半導体チップ1のバンプが加熱されて溶融する。その結果、半導体チップ1が回路基板6に熱圧着されて強固に接合される。すなわち、半導体チップ1が回路基板6に実装される。
【0043】
そして、ヘッド32が回路基板6から離間することにより、半導体チップ1の回路基板6への実装が完了する。
【0044】
また、本実施形態では、
図3(b)のように1回の実装工程により複数の半導体チップ1の熱圧着を同時に行っている。特に半導体チップ1がマイクロLEDの場合、1つの回路基板6に実装される半導体チップ1は数万個にも及ぶ。この場合、たとえばFHD(Full High Definition)パネルでは1920×1080×3個の半導体チップ1が1つのパネルに配列されるが、全ての半導体チップ1を1つのヘッド32により一括して熱圧着することにより、実装にかかる時間を大幅に低減することができる。
【0045】
ここで、本実施形態では、ヘッド32の少なくとも半導体チップ1と接触する面(ヘッド32の先端)の熱膨張係数と回路基板6の半導体チップ1が転写される面の熱膨張係数が同等となるようにしている。また、ヘッド32の先端と回路基板6の半導体チップ1が転写される面の材料が同一であることがさらに好ましい。具体的には、回路基板6の材料がガラスであった場合、ヘッド32の先端の材料は回路基板6と同様にガラスが用いられる。また、回路基板6の材料が銅であった場合、ヘッド32の先端の材料はSUS304が用いられる。この場合、銅の熱膨張係数は16.8ppmであり、これに対しSUS304の熱膨張係数は17.3ppmであり、その差は3%程度である。
【0046】
そして、ヘッド32だけでなく載置台31にもヒータ34が設けられており、実装工程が実施される間、ヘッド32の先端の温度と回路基板6の半導体チップ1が転写される面の温度とが常に等しくなるようにヒータ34およびヒータ35が制御されている。こうすることにより、実装工程中に回路基板6とヘッド32とが熱膨張したとしても、ヘッド32の半導体チップ1と接触する箇所と回路基板6上で半導体チップ1のバンプが接合されている箇所との相対位置に変化が生じにくく、高精度な実装を安定して行うことができる。
【0047】
仮に、
図5のようにヘッド32のみヒータ35を有し、ヘッド32と回路基板6との間に温度差が生じた場合、もしくはヘッド32の熱膨張係数と回路基板6の熱膨張係数との間に大きな差があった場合、両者の熱膨張後の寸法の差にもとづきヘッド32の半導体チップ1と接触する箇所と回路基板6上で半導体チップ1のバンプが接合されている箇所との相対位置に変化が生じてしまう。
【0048】
ここで、半導体チップ1のZ軸方向の寸法には少なからずばらつきがあり、各半導体チップ1の第1の面においてヘッド32との間で生じる摩擦力にもばらつきがある。このとき、摩擦力が比較的低い半導体チップ1ではヘッド32の半導体チップ1と接触する面と回路基板6上で半導体チップ1のバンプが接合されている箇所との相対位置に変化が生じてもヘッド32と半導体チップ1との間ですべりが生じ、その後問題無く熱圧着を行うことは可能であるが、摩擦力が比較的高い半導体チップ1ではその摩擦力がバンプの接合力より高くなり、上記相対位置の変化によって半導体チップ1はヘッド32の方に付いていってしまい、半導体チップ1の位置ずれ、剥がれが生じるおそれがある。
【0049】
これに対し、ヘッド32の先端と回路基板6の熱膨張係数を同等もしくは同一とし、実装工程の間ヘッド32の先端と回路基板6の温度が常に等しくなるように温度制御することにより、半導体チップが回路基板から剥がされることを防ぐことができる。
【0050】
以上の実装方法により、半導体チップを高精度に安定して回路基板に実装することができる。
【0051】
次に本発明における実装装置を
図6に示す。
【0052】
実装装置100は、レーザ転写部10、貼付け部20、および実装部30を有しており、レーザ転写部10により第1の転写工程および第3の転写工程が行われ、貼付け部20により第2の転写工程が行われ、実装部30により実装工程が行われる。また、各装置間の基板(キャリア基板2、第1の粘着シート4a、第2の粘着シート4b、回路基板6)の搬送は、1種類以上のロボットハンド40により実施される。
【0053】
レーザ転写部10の詳細を
図7に示す。
【0054】
レーザ転写部10は、図示しない真空化部を備え、全体を真空チャンバーとして真空環境にすることができる。また、レーザ転写部10は、転写基板を保持しX軸方向に移動可能な転写基板保持部13、転写基板保持部13の下側にあって転写基板に隙間を有して対向するように被転写基板を保持し、X軸方向、Y軸方向、Z軸方向、及びθ方向に移動可能な被転写基板保持部14、レーザ光11を照射するレーザ照射部12、および図示しない制御部を備えている。
【0055】
レーザ照射部12は、レーザ転写部10に固定して設けられる。本実施形態においては、ライン状のレーザ光11を照射し、Y軸方向に並んだ半導体チップ1を同時にレーザリフトオフさせる。また、レーザ照射部12に近接した位置に図示しないカメラが設けられている。このカメラは、転写基板又は被転写基板の位置を認識し、被転写基板保持部14をX軸、Y軸、又はθ方向(Z軸方向を回転の中心とする中心方向)に移動させてアライメントを行う。
【0056】
また、転写基板保持部13は開口を有し、転写基板保持部13に保持された転写基板へこの開口を介してレーザ照射部12から発せられたレーザ光11を当てることができる。
【0057】
このレーザ照射部10では、第1の転写工程および第3の転写工程が行われるが、第1の転写工程のように転写基板(キャリア基板2)に保持された半導体チップ1と被転写基板(第1の粘着シート4a)との間に隙間を有さずに転写を行う場合は、被転写基板保持部14をZ軸方向に移動させて、転写基板保持部13に保持されたキャリア基板2の半導体チップ1と、被転写基板保持部14に保持された第1の粘着シート4aとを接触させる。そして、転写基板保持部13と被転写基板保持部14とをX軸方向に同じ速度で移動させながら所定の時間毎にレーザ照射部12からレーザ光11を断続して照射することによりキャリア基板2から第1の粘着シート4aへの転写を完了させる。
【0058】
なお、これに代わって、キャリア基板2が貼付けられた第1の粘着シート4aを被転写基板保持部14に保持させ、被転写基板保持部14のみX軸方向に移動させながら所定の時間毎にレーザ照射部12からレーザ光11を断続して照射する形態をとっても良い。
【0059】
なお、本説明では、被転写基板保持部14のように第1の転写工程において第1の粘着シート4aを保持する役割を果たす部材を第1の粘着シート保持部と呼ぶ。
【0060】
一方、第3の転写工程のように転写基板(第2の粘着シート4b)に保持された半導体チップ1と被転写基板(回路基板6)との間に隙間を有して転写を実行する場合は、第2の粘着シート4bを保持した転写基板保持部13がX軸方向に移動するか、又は回路基板6を保持した被転写基板保持部14が、X軸方向、Y軸方向、又はθ方向の少なくとも一方向に移動してアライメントすることが可能となる。
【0061】
そして、アライメント後に転写基板保持部13と被転写基板保持部14とをX軸方向に移動させ、所定の時間毎にレーザ照射部12からレーザ光11を断続して照射することにより第2の粘着シート4bに貼り付いた半導体チップ1を剥離させ、被転写基板保持部14に保持された回路基板6に向かって付勢することによって転写される。この場合は、レーザ転写部10内を真空化部によって真空環境とすることにより、付勢された半導体チップ1が空気抵抗の影響を受けず位置ずれを防止できる。
【0062】
また、転写基板保持部13と被転写基板保持部14の間の相対移動速度を変化させることにより、前述の通り回路基板6に着弾する半導体チップ1の間隔を調節することができる。
【0063】
なお、本実施形態においては、被転写基板保持部14がX軸方向、Y軸方向、Z軸方向、及びθ方向に移動可能に構成したが、必ずしもこれに限定されるものではなく、都合により適宜変更が可能である。例えば、回転アライメントが不要であれば、θ方向の移動は必要がなく、また、転写基板と被転写基板の間隔を変更する必要がなければZ軸方向の移動は必要がない。また、転写基板保持部13をY軸方向に移動可能としてもよい。
【0064】
次に、貼付け部20の詳細を
図8に示す。
【0065】
貼付け部20は、第1の粘着シート載置部21と第2の粘着シート22、および図示しない制御部を有している。
【0066】
第1の粘着シート載置部21の上面は、第1の粘着シート4aを真空吸着可能であり、また、ロボットハンド40が進入可能な溝部が設けられており、レーザ転写部10により半導体チップ1が貼付けられた第1の粘着シート4aがロボットハンド40により搬送され、粘着膜3aを上にして第1の粘着シート載置部21の上面に載置される。また、レーザ転写部10に搬送される前の第1の粘着シート4aをこの第1の粘着シート載置部21に仮置きしておいても良い。
【0067】
第2の粘着シート載置部22の上面は、第2の粘着シート4bを真空吸着可能であり、また、ロボットハンド40が進入可能な溝部が設けられており、第1の粘着シート4aに貼付けられた半導体チップ1に貼付けられる前の第2の粘着シート4bが粘着膜3bを上にして仮置きされる。
【0068】
半導体チップ1が転写された第1の粘着シート4aがロボットハンド40により搬送され、第1の粘着シート載置部21の上面に載置されると、ロボットハンド40は次に第2の粘着シート載置部22に載置されている第2の粘着シート4bを受け取る。そして、上下を反転させて粘着膜3bが下を向くように第2の粘着シート4bを第1の粘着シート4aの上方に位置させた後、第2の粘着シート4bを下方に移動させ、半導体チップ1の第1の面が第2の粘着シート4bに貼り付いた状態とする。その後、第2の粘着シート4bを上方に持ち上げることにより、半導体チップ1は第1の粘着シート4aから第2の粘着シート4bに移し替えられ、第2の転写工程が完了する。
【0069】
なお、本説明では、ロボットハンド40のように、第1の粘着シート4aに貼付けられ、キャリア基板2から剥離した半導体チップ1の第1の面を貼りつける第2の粘着シート4bを保持する役割を有する部材を、第2の粘着シート保持部と呼ぶ。
【0070】
また、本実施形態では、第1の粘着シート載置部21はヒータ23を有しており、第1の粘着シート載置部21の上面の温度を制御することが可能となっている。そして、半導体チップ1が貼付けられた第1の粘着シート4aが第1の粘着シート載置部21の上面に載置された状態においてヒータ23が加熱することにより、第1の粘着シート4aの粘着膜3aの粘着力が低下する。すなわち、上述の実装方法における粘着力低減工程が行われる。なお、本実施形態の粘着シート載置部21およびヒータ23のように第1の粘着シート4aの粘着力を低下させる部材を本説明では粘着力低減部と呼ぶ。
【0071】
次に、実装部30の詳細を
図9に示す。
【0072】
実装部30は、載置台31、ヘッド32、および2視野光学系33を備え、また、図示しない制御部を備えている。
【0073】
載置台31は、回路基板6を載置して真空吸着により動かないように保持することができ、XYステージによりX、Y軸方向に移動可能に構成されている。
【0074】
また、本実施形態では載置台31はヒータ34を有し、制御部によって載置台31の表面の温度(≒載置台31に載置された回路基板6の温度)を制御することが可能である。また、載置台31には図示しない温度計が設けられ、この温度計により計測された載置台31の温度をフィードバックして温度制御を行うことが可能である。
【0075】
ヘッド32は実装工程時に回路基板6上の半導体チップ1の第1の面と接触し、加圧する。また、ヘッド32はヒータ35を有し、制御部によってヘッド32、特に半導体チップ1と接触する先端部の温度を制御することが可能である。また、ヘッド32には図示しない温度計が設けられ、この温度計により計測されたヘッド32の温度をフィードバックして温度制御を行うことが可能である。
【0076】
また、ヘッド32はZ軸方向、およびθ方向(Z軸方向を回転の中心とする中心方向)に移動可能に構成され、載置台31のX、Y軸方向への移動とヘッド32のZ軸、θ方向の移動と連動させることによって、回路基板6の上に配置された半導体チップ1を熱圧着し、実装することができる。
【0077】
ここで、本実施形態ではヒータ34およびヒータ35を同時に制御し、実装工程中に載置台31の表面の温度とヘッド32の先端部の温度が常に等しくなるようにしている。こうすることにより、前述の通り、実装工程中に回路基板6とヘッド32とが熱膨張したとしても、ヘッド32の半導体チップ1と接触する箇所と回路基板6上で半導体チップ1のバンプが接合されている箇所の位置との相対位置に変化が生じにくく、高精度な実装を安定して行うことができる。
【0078】
なお、本実施形態においては、ヘッド32がZ軸、θ方向に移動し、載置台31はX、Y軸方向に移動するように構成したが、必ずしもこれに限定されず、装置の都合により適宜変更が可能である。例えば、ヘッド32がX軸、Y軸、θ方向に移動し、載置台31はZ軸方向に移動する構成としてもよい。また、θ方向の移動機構は必要がなければ省略することが可能である。例えば、半導体チップ1及び回路基板6の位置に回転ずれがない場合はθ方向の移動機構は省略できる。
【0079】
2視野光学系33は、載置台31に回路基板6が載置されている際にヘッド32と回路基板6との間に進入して双方の画像を撮像することができる。撮像された各画像は、制御部で画像処理されてそれぞれの位置ずれを認識する。そして、制御部は、この位置ずれを考慮して、ヘッド32の所定の箇所が回路基板6上の所定の位置の半導体チップ1に接触して半導体チップ1の第2の面側を回路基板6に接合するように制御することにより、半導体チップ1をX、Y軸方向に高精度に実装する。
【0080】
以上に述べた実装装置100により、本発明における実装方法を実行できる。
【0081】
以上の実装方法および実装装置により、半導体チップを高精度に安定して回路基板に実装することが可能である。
【0082】
ここで、本発明の実装方法および実装装置は、以上で説明した形態に限らず本発明の範囲内において他の形態のものであってもよい。たとえば、上記の説明ではレーザ照射部12はライン状のレーザ光11を照射するが、それに限らず、スポット状のレーザ光を照射し、1回の照射では1つの半導体チップのみレーザーリフトオフさせるものであっても良い。さらに、そのレーザの照射位置をガルバノミラーを利用して変化させるものであっても良い。
【0083】
また、上記の説明では、第1の転写工程および第3の転写工程は真空環境下で実施されているが、大気中で行われても良い。